説明

ファインダ装置および光学装置

【課題】使用者の目の疲れを精度良く検知し、過度の目の疲れを効果的に防止しうるファインダ装置および光学装置を提供する。
【解決手段】
接眼部18の振動を検出する検出手段26と、前記検出手段26からの検出信号から、使用者のまばたきの周期を算出する周期算出手段58と、前記周期算出手段58で算出された前記まばたきの周期に基づき、警告信号を発生させる信号発生手段58と、を有することを特徴とするファインダ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファインダ装置および光学装置、特に使用者の目の疲れに配慮したファインダ装置および光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の光学装置に装備されたファインダを、使用者が長時間のぞき続けた場合、使用者の目に負担がかかり、眼精疲労等の原因となることが問題となっている。
【0003】
ファインダを長時間覗き続けることによって発生する目の疲れを軽減する従来技術としては、例えば特許文献1に示すものがある。特許文献1のような従来技術は、LED光などの光源および受光器を用いることによって使用者の接眼動作を検知し、使用者がファインダを連続して覗き続けている時間を測定することができる。そして、前記測定した時間が所定の時間を超えるとファインダ視野内に警告表示がなされ、使用者に光学装置の使用を中断して目の疲労を回復させることを促すものである。
【0004】
しかし目の疲れの進行度は、ファインダの表示内容の明るさ(照度)や使用者自身の体調などにも影響を受けるため、従来技術では目の疲れの検知精度が不十分な場合があった。
【特許文献1】特開2001−352466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、使用者の目の疲れを精度良く検知し、過度の目の疲れを効果的に防止しうるファインダ装置および光学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るファインダ装置は、
接眼部(18)の振動を検出する検出手段(26)と、
前記検出手段(26)からの検出信号から、使用者のまばたきの周期を算出する周期算出手段(58)と、
前記周期算出手段(58)で算出された前記まばたきの周期に基づき、警告信号を発生させる信号発生手段(58)と、
を有することを特徴とする。
【0007】
例えば、本発明に係るファインダ装置において、
前記検出手段は加速度センサであり、当該加速度センサは前記接眼部に取り付けられていても良い。
【0008】
例えば、本発明に係るファインダ装置において、
前記加速度センサは、一方向の振動のみを検出しても良い。
【0009】
例えば、本発明に係るファインダ装置において、
前記周期算出手段は、前記検出信号から手ぶれによる検出信号とまばたきによる検出信号とを区別し、前記まばたきによる検出信号から前記まばたきの周期を算出しても良い。
【0010】
例えば、本発明に係るファインダ装置において、
前記信号発生手段は、前記まばたきの周期を、あらかじめ設定された所定の値と比較し、
比較結果に基づき、前記警告信号を発生させても良い。
【0011】
本発明に係る光学装置は、上に記載のファインダ装置のうちいずれかのファインダ装置を有する。
【0012】
なお上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために一実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。さらに、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るカメラ全体を模式的に示した概略断面図、
図2は、図1に示すカメラの接眼部を拡大した要部拡大図、
図3は、本発明の一実施形態に係るカメラの背面図、
図4は、本発明の一実施形態に係るカメラの制御系を表すブロック図、
図5は、本発明の一実施形態に係る加速度センサからの振動信号を表す波形図、
図6は、本発明に係る振動信号から周期を算出する過程を例示した一連の波形図、
図7は、本発明の一実施形態に係るカメラによる目の疲れを防止するための一連の処理を示したフローチャート、
図8は、本発明の一実施形態に係るカメラによる警告表示の一例を表したイメージ図である。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るファインダ装置を有するカメラ全体を模式的に示した概略断面図である。図1に示すように、カメラ2は、カメラボディ4を有し、カメラボディ4の前面には、撮影レンズ6を備えるレンズ鏡筒8が備え付けられている。カメラボディ4の背面には、図3に示すように、背面液晶パネル12、電子ビューファインダ20の接眼部18、ファンクションキー28および十字キー30が設けられている。ファンクションキー28は、背面液晶パネル12の表示を、撮影モードまたは再生モードに切り替えたり、撮影時のフラッシュの設定を切り替えたりする際に使用するものである。また十字キー30は、再生モードで背面液晶パネル12に表示された画像をコマ送りしたり、背面液晶パネル12に表示されるカーソルを移動させたりする際に使用する。背面液晶パネル12は、図1に示すように、配線82を介して接続される液晶パネル制御系52によって表示画像等を制御される。
【0015】
カメラボディ4の内部には、撮影レンズ6を通過した被写体光を撮像する撮像素子10が配設されている。撮像素子10は、配線82を介して接続される撮像素子制御系54によって、画像信号の出力等を制御される。
【0016】
さらにカメラボディ4の内部には、電子ビューファインダ用液晶パネル14と、接眼レンズ16と、接眼部18とを有する電子ビューファインダ20が配設されている。本実施形態では、図2に示すように、使用者はカメラ背面の上部に設けられた電子ビューファインダ20内をのぞき込みながら撮影を行うことができる。電子ビューファインダ用液晶パネル14は、図1に示すように、背面液晶パネル12と同様、配線82を介して接続される液晶パネル制御系52によって表示画像等を制御される。電子ビューファインダ用液晶パネル14による表示光は、接眼レンズ16を介して、使用者の目22に導かれる。
【0017】
図2に示すように、接眼部18には、使用者がファインダ20内をのぞき込む際に、目周辺の皮膚等の一部を接触させ、目とカメラの相対的位置を安定させるためのアイピース24が設けられている。さらにアイピース24の内部には、アイピース24に伝わる振動を検出する加速度センサ26が配設されている。本実施形態に係るカメラでは、図3に示すように、加速度センサ26はアイピース24の内部表面に配設されている。加速度センサ26を配設する場所としては、接眼部18であれば特に限定されないが、目周辺の皮膚が接触するアイピース24のような部材の内部又は外部表面上に設置されることが望ましい。本実施形態における加速度センサ26は、図2における上下方向Zの振動のみを検出する1軸型の加速度センサを採用しているが、3軸型の加速度センサであっても良い。なお、1軸型の加速度センサの場合における上下方向Zは、使用者の目22のまばたきの向きと一致している。
【0018】
図2に示すように、加速度センサ26は、配線82を介して接続される加速度センサ制御系56によって制御される。加速度センサ制御系56は、手振れ防振用等としてカメラ2に配設された他の加速度センサの制御系として併用されていても良い。
【0019】
図4は本実施形態に係るカメラ2の制御系を表すブロック図である。撮像素子制御系54は、撮像素子10で得られる画像信号を、液晶パネル制御系52に送ることができる。液晶パネル制御系52は、得られた画像信号をもとに、背面液晶パネル12および電子ビューファインダ用液晶パネル14に画像を出力することができる。
【0020】
一方、加速度センサ制御系56は、加速度センサ26で得られた振動信号を、信号解析判断系58に送ることができる。信号解析判断系58では、振動信号から使用者のまばたきの周期を算出した後、算出したまばたきの周期に基づいて液晶パネル制御系52に警告信号を送ることができる。液晶パネル制御系52は、信号解析判断系58からの警告信号を受けた場合、電子ビューファインダ14等に所定の警告を表示させることができる。
【0021】
図5は、加速度センサ26によって検出された振動信号の一例を表している。図5に示すように、加速度センサ26から得られる振動信号は、通常まばたきによる振動信号w2以外にも、手振れによる振動信号w1等の、まばたき以外の原因による振動信号を含んでいる場合が多い。
【0022】
本実施形態に係る信号解析判断系58では、第1段階の処理として、加速度センサ制御系56から送られてきた振動信号から、手振れによる振動信号w1とまばたきによる振動信号w2とを区別する。図5に示すように、まばたきによる振動信号w2の振幅f2は、手振れによる振動信号w1の振幅f1に対して明瞭に区別される程度に小さい。
【0023】
また、まばたきによる振動信号w2の振動周期t2は、手振れによる振動信号w2の振動周期t1に対して明瞭に区別される程度に小さい。したがって、信号解析判断系58は、振動信号の振幅および振動周期を解析することにより、加速度センサから得られる振動信号から、まばたきによる振動信号w2を得ることができる。
【0024】
本実施形態に係る信号解析判断系58では、第2段階の処理として、まばたきによる振動信号w2から、まばたきの周期を算出する。図6(A)は、目が疲れていない使用者のまばたきによる振動信号の一例である。本実施形態では、振動信号w2の間隔T0およびT1を、それぞれの区間におけるまばたきの周期Tとしている。
【0025】
図6(B)は、目が疲れていない使用者のまばたきによる振動信号の他の一例である。図6(B)のn1〜n3で示されるまばたき振動のように、使用者はひとかたまりに数回のまばたきを行う場合がある。この場合も、振動信号w2の間隔T0、T1、Tn12およびTn23をそれぞれの区間におけるまばたきの周期Tとすることができる。
【0026】
図6(C)は、目が疲れている使用者のまばたきによる振動信号の一例である。特に振動信号前半におけるまばたきの間隔T2、T3が、目が疲れていない場合の間隔T0およびT1(例えば5〜10秒)より長くなっているのがわかる。本実施形態では、間隔T2、T3、Tn12が、それぞれの区間におけるまばたきの周期Tとなる。
【0027】
さらに本実施形態に係る信号解析判断系58では、第3段階の処理として、所定の値Tok(例えば30秒)と、算出されたまばたきの周期Tを比較し、まばたきの周期Tが所定の値Tokを上回る場合には、液晶パネル制御系に対して警告信号を送る。なお、所定の値Tokは、30秒に限らず、自由に設定可能である。
【0028】
図7は、本発明の一実施形態に係るカメラによる目の疲れを防止するための一連の処理を示したフローチャートである。
【0029】
まず、加速度センサ26の振動信号を、加速度センサ制御系56を介して読み取る(ステップS1)。読み取られた振動信号は、信号解析判断系58にて手振れ振動信号とまばたき振動信号に区別される(ステップS2)。手振れ振動信号とまばたき振動信号は、例えば図5に関連して説明したように、各振動信号の振幅および/または振動周期によって区別される。
【0030】
次に信号解析判断系58において、読み取られた振動信号から区別されたまばたき信号を基に、使用者のまばたきの周期を算出する(ステップS3)。まばたきの周期の算出は、例えば図6に関連して説明したように、まばたきによる振動信号の間隔から算出される。
【0031】
そして信号解析判断系58において、算出されたまばたきの周期Tを、あらかじめ設定された所定の値Tokと比較する(ステップS4)。前記比較の結果、まばたきの周期Tが所定の値Tokと同等以下の場合は一連の処理を終了させるが、まばたきの周期Tが所定の値Tokを上回る場合は、警告信号を発生し、液晶パネル制御系52等に警告動作を行わせる(ステップS5)。
【0032】
すなわち本実施形態において所定の値Tokは、目が疲れていない場合のまばたきの間隔T0、T1より長く、目が疲れている場合のまばたきの間隔T2、T3より短い時間(例えば30秒)に設定されている。したがって本実施形態のカメラ2は、加速度センサ26が図6(C)に示すような目が疲れている際のまばたきの振動信号を検出した際に、液晶パネル制御系52等に警告動作を行わせることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、ステップS4において、計測されたまばたきの周期Tを、逐次、Tokと比較している。すなわち、図6(A)〜図6(C)に示す全てのまばたきの間隔T0、T1、T2、T3、Tn12、Tn23をTokと比較している。その際に、使用者がひとかたまりに数回のまばたきを行うときのまばたきの間隔Tn12、Tn23などは、無視しても良い。
【0034】
警告動作としては、信号解析判断系58からの警告信号を受け取った液晶パネル制御系52が、図8に示すような警告マーク32およびコメント33を、電子ビューファインダ用液晶パネル14に表示させても良い。また他の警告動作としては、信号解析判断系58からの警告信号をカメラ内に内蔵されたスピーカー等に送ることによって、警告音を発生させても良い。
【0035】
カメラの使用者は、警告表示や警告音によって、自己の目の疲れを認識することができるため、ファインダをのぞき込むことを一時中断する等の適切な行為を行うことにより目の疲れを回復させ、過度の目の疲れを防止することができる。
【0036】
本実施形態に係るカメラの使用者は、警告表示や警告音によって自己の目の疲れを認識することができるため、ファインダをのぞき込むことを一時中断するなどして、過度の目の疲れを効果的に防止することができる。
【0037】
すなわち本実施形態に係るカメラは、使用者のまばたきの周期に基づいて目の疲れを判断することができるため、ファインダをのぞき込む時間に基づいて目の疲れを判断する従来技術に比べて、より精度良く目の疲れを検出することができる。さらに、本実施形態に係るカメラは、精度良く判断された結果を基に警告動作を行うことで、使用者に対して目の疲れを認識させることができる。したがって本実施形態に係るカメラは、目が疲れた使用者に対して、目の疲れを回復させるための適切な動作を促し、ファインダをのぞき込むことによって使用者の目の疲れが過度に進行することを効果的に防止することができる。
【0038】
また本実施形態に係るカメラは、カメラに従来から使用されている手振れ防止用加速度センサおよび/または加速度センサ制御系を、前記目の疲れの検出に流用できるので、その場合は新規光学デバイスの追加を抑制することができる。したがって、目の疲れを防止する機能を有しつつも、シンプルで安価なカメラを実現することができる。
【0039】
上述した実施形態では、本発明の一実施形態に係るファインダ装置をカメラに適用したが、スチルカメラに限らずビデオカメラ、顕微鏡、双眼鏡等のその他の光学装置にも適用できる。また、上述した実施形態では、検出手段として加速度センサを使用しているが、その他の振動を検出する装置を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るカメラ全体を模式的に示した概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示すカメラの接眼部を拡大した要部拡大図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係るカメラの背面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るカメラの制御系を表すブロック図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る加速度センサからの振動信号を表す波形図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る振動信号から周期を算出する過程を示した一連の波形図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係るカメラによる目の疲れを防止するための一連の処理を示したフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係るカメラによる警告表示の一例を表したイメージ図である。
【符号の説明】
【0041】
2… カメラ
14… 電子ビューファインダ用液晶パネル
20… 電子ビューファインダ
24… アイピース
26… 加速度センサ
56… 加速度センサ制御系
58… 信号解析判断系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接眼部の振動を検出する検出手段と、
前記検出手段からの検出信号から、使用者のまばたきの周期を算出する周期算出手段と、
前記周期算出手段で算出された前記まばたきの周期に基づき、警告信号を発生させる信号発生手段と、
を有することを特徴とするファインダ装置。
【請求項2】
前記検出手段は加速度センサであり、当該加速度センサは前記接眼部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のファインダ装置。
【請求項3】
前記加速度センサは、一方向の振動のみを検出することを特徴とする請求項1または2に記載のファインダ装置。
【請求項4】
前記周期算出手段は、
前記検出信号から手ぶれによる検出信号とまばたきによる検出信号とを区別し、前記まばたきによる検出信号から前記まばたきの周期を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のファインダ装置。
【請求項5】
前記信号発生手段は、
前記まばたきの周期を、あらかじめ設定された所定の値と比較し、
比較結果に基づき、前記警告信号を発生させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のファインダ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のファインダ装置を有する光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−241928(P2008−241928A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80020(P2007−80020)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】