説明

ファクシミリ装置

【課題】相手先装置が受信できる符号化画像データを好適に生成し、好適なファクシミリ送信を行うことできる、ファクシミリ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ファクシミリ装置では、相手先装置に対応する相手先情報と、第一種又は第二種の符号化方式とを関連付けた符号化情報が記憶され、ファクシミリ送信に用いる通信帯域を、第二の通信帯域より高速である第一の通信帯域、又は、第二の通信帯域の何れかが設定される。ファクシミリ送信のために入力された入力済みの相手先情報に、何れの符号化方式も関連付けられていないと判断された場合、ファクシミリ装置では、第一種の符号化方式で符号化された第一種の符号化画像データが生成され(S200)、第一の通信帯域で、ファクシミリ送信される(S208)。第一種の符号化方式は、第二種の符号化方式の第二の圧縮率より圧縮率が低い第一の圧縮率の符号化方式である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ファクシミリ装置に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1のファクシミリ装置では、宛先伝送モードが宛先毎に記憶されると共に、宛先伝送モードに対応した符号化方式で画情報が符号化されて画像メモリに蓄積される。ファクシミリ装置では、伝送前手順において宛先伝送モードが変更されていることが検出された場合、その時点で伝送手順が一旦終了し、宛先に対応した宛先伝送モードが更新され、画像メモリに蓄積された符号化画情報は、更新された宛先伝送モードに対応した符号化方式で改めて符号化される。新規な宛先が選択されている場合、標準的なモードに設定されたデフォルト値にて、画情報が符号化されて画像メモリに蓄積される。
【0003】
特許文献2のファクシミリ装置では、各送信先毎に、その送信先ファクシミリ装置の画情報の符号化方式と画情報のデータ伝送速度と単位時間当たりの通信料金とが記憶される。ファクシミリ装置では、画像メモリに蓄積された画情報のデータ量と前述の符号化方式とデータ伝送速度とに基づいて画情報の送信に要する送信時間が算出され、その送信時間と前述の単位時間当たりの通信料金とに基づいて画情報送信に要する通信料金が算出され、その通信料金が画情報の送信を開始する前に表示される。なお、市外局番から始まる電話番号を利用した帯域確保型のデータ通信サービスが提供されている(例えば、非特許文献1参照)。このサービスにはNGNが利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−262364号公報
【特許文献2】特開昭64−37165号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】東日本電信電話株式会社、“News Release 「ひかり電話」を利用した帯域確保型データ通信サービス 「データコネクト」の提供および大容量・多チャネルでの通信を実現する「ひかり電話ナンバーゲート」の提供について”、[online]、平成22年5月31日、[平成23年6月28日検索]、インターネット< http://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20100531_05.html >
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、送信先となるファクシミリ装置(相手先装置)とファクシミリ通信を行う場合、送信元のファクシミリ装置では、読み取られた原稿に対応する画像データは、符号化された形式で送信される。その際、送信元のファクシミリ装置と、相手先装置との間では、ファクシミリ送信に用いる符号化方式等がネゴシエーションされる。送信元のファクシミリ装置は、このネゴシエーションによって決定された符号化方式で、符号化された符号化画像データを生成し、これを送信する。ここで、符号化画像データを送信する方法の1つとして、メモリ送信がある。
【0007】
送信元のファクシミリ装置において、モノクロ送信が選択されている場合のメモリ送信を例に、解決すべき課題を説明する。モノクロ送信の場合の符号化方式としては、例えば、圧縮率の高い順に、MMR、MR、MHが採用される。なお、JBIGによる符号化方式が採用される場合もある。メモリ送信では、原稿の読み取りと、圧縮率の高い例えばMMRによる符号化と、符号化画像データの所定の記憶領域への記憶(蓄積)といった一連の処理が行われる。全頁分の符号化画像データが記憶された状態で、ネゴシエーションが行われる。ネゴシエーションの結果、相手先装置が、MMRに対応していないファクシミリ装置である場合、送信元のファクシミリ装置では、MMR形式の符号化画像データが復号され、復号された画像データが、相手先装置が受信できる符号化方式で再符号化される。その後、再符号化された符号化画像データが送信される。このように、メモリ送信において再符号化が実行される場合、処理に要する時間が長くなる。例えば、上述したような帯域確保型のデータ通信サービスが利用される場合、高速通信のメリットが失われる。NGNが利用された帯域確保型のデータ通信サービスにおける通信帯域(通信速度)は、64kbps、512kbps、1000kbps(1Mbps)程度である。
【0008】
本発明は、相手先装置が受信できる符号化画像データを好適に生成し、好適なファクシミリ送信を行うことできる、ファクシミリ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題に鑑みなされた本発明の一側面は、帯域確保型のIPネットワークに接続された相手先装置に、読み取られた原稿に対応する画像データを符号化した符号化画像データを、前記IPネットワークを介してファクシミリ送信するファクシミリ装置であって、原稿を読み取る読取部と、前記読取部で読み取られた原稿に対応する画像データから、第二の圧縮率より圧縮率が低い第一の圧縮率の第一種の符号化方式で符号化された第一種の符号化画像データと、前記第二の圧縮率の第二種の符号化方式で符号化された第二種の符号化画像データと、を生成する生成部と、前記生成部で生成された、第一種の符号化画像データ及び第二種の符号化画像データを記憶する第一記憶部と、前記生成部で第一種の符号化画像データが生成された場合、第一種の符号化画像データを前記第一記憶部に記憶し、前記生成部で第二種の符号化画像データが生成された場合、第二種の符号化画像データを前記第一記憶部に記憶する、記憶制御部と、前記IPネットワークに接続される通信部と、前記通信部を制御する通信制御部と、相手先装置に対応する相手先情報と、相手先装置が受信できる符号化画像データの符号化方式として、前記第一種の符号化方式又は前記第二種の符号化方式と、を関連付けた符号化情報を記憶する第二記憶部と、ファクシミリ送信に用いる通信帯域を、第二の通信帯域より高速である第一の通信帯域、又は、前記第二の通信帯域の何れかに設定する帯域設定部と、前記第二記憶部に記憶された前記符号化情報に従い、ファクシミリ送信のために前記ファクシミリ装置に入力された入力済みの相手先情報に、前記第一種の符号化方式又は前記第二種の符号化方式が、関連付けられているかについて判断する第一判断部と、を備え、前記生成部は、前記第一判断部で、前記入力済みの相手先情報に、何れの符号化方式も関連付けられていないと判断された第一の場合、第一種の符号化画像データを生成し、前記帯域設定部は、前記第一の場合、前記通信帯域を、前記第一の通信帯域に設定し、前記通信制御部は、前記第一の場合、前記通信部を制御し、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置に、前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶された第一種の符号化画像データを、前記帯域設定部で設定された前記第一の通信帯域で、ファクシミリ送信する、ファクシミリ装置である。
【0010】
これによれば、上述した第一の場合、圧縮率が低い第一種の符号化方式で符号化された第一種の符号化画像データと、通信帯域が高速である第一種の通信帯域との組み合わせによるファクシミリ送信を実現することができる。即ち、低圧縮でデータ容量が大きくなる場合、通信帯域が高速である第一種の通信帯域とすることが可能となり、ファクシミリ送信のための通信時間を短縮することができる。ところで、送信される符号化画像データの符号化方式に関し、圧縮率が低い方式は、既存のファクシミリ装置の多くが対応しており、従って、再符号化を回避できる。そのため、再符号化のための処理時間が必要なく、ファクシミリ送信のための通信時間を短縮することができる。
【0011】
このファクシミリ装置は、次のようにすることもできる。前記生成部は、前記第一判断部で、前記入力済みの相手先情報に、前記第一種の符号化方式又は前記第二種の符号化方式が関連付けられていると判断された第二の場合、前記入力済みの相手先情報に関連付けられた前記第一種の符号化方式又は前記第二種の符号化方式で、符号化された第一種の符号化画像データ又は第二種の符号化画像データを生成し、前記帯域設定部は、前記第二の場合、前記通信帯域を、前記第一の通信帯域に設定し、前記通信制御部は、前記第二の場合、前記通信部を制御し、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置に、前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶された第一種の符号化画像データ又は第二種の符号化画像データを、前記帯域設定部で設定された前記第一の通信帯域で、ファクシミリ送信する、ようにしてもよい。これによれば、上述した第二の場合、相手先装置が受信できる符号化画像データと、通信帯域が高速である第一種の通信帯域との組み合わせによるファクシミリ送信を実現することができる。即ち、再符号化を回避し、且つ、高速である第一種の通信帯域を設定することで、ファクシミリ送信のための通信時間を短縮することができる。
【0012】
また、前記ファクシミリ装置は、前記生成部が、前記読取部で読み取られた原稿に対応する画像データから、第二種の符号化画像データを生成するのに要する第一時間を計測する計時部と、前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶された第二種の符号化画像データのデータ容量を取得する容量取得部と、前記計時部で計測された第一時間と、第二種の符号化画像データを復号し、復号された画像データから第一種の符号化画像データを生成するのに要する第二時間と、の対応を定めた対応時間情報を記憶する第三記憶部と、前記第三記憶部に記憶された前記対応時間情報に従い、前記計時部で計測された第一時間に対応する第二時間を取得する時間取得部と、前記容量取得部で取得されたデータ容量と、前記時間取得部で取得された第二時間と、から、基準通信速度を取得する速度取得部と、前記通信制御部によって前記通信部で受信された能力信号であって、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置からの能力信号から、相手先装置が受信できる符号化画像データの符号化方式のための受信機能力情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部で取得された受信機能力情報に従い、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置が受信できる符号化画像データの符号化方式について判断する第二判断部と、前記ファクシミリ装置の動作モードを、第一種のモード、又は、第二種のモードの何れかに設定するモード設定部と、を、さらに備え、前記生成部は、前記第一判断部で、前記入力済みの相手先情報に、何れの符号化方式も関連付けられていないと判断され、且つ、前記ファクシミリ装置の動作モードが、前記モード設定部にて、第一種のモードに設定されている第三の場合、第一種の符号化画像データを生成し、前記第一判断部で、前記入力済みの相手先情報に、何れの符号化方式も関連付けられていないと判断され、且つ、前記ファクシミリ装置の動作モードが、前記モード設定部にて、第二種のモードに設定されている第四の場合、第二種の符号化画像データを生成し、第二種の符号化画像データが、前記第四の場合において前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶され、且つ、前記第二判断部で、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置が、前記第二種の符号化方式に対応しておらず、前記第一種の符号化方式に対応していると判断された第五の場合、前記第一記憶部に記憶された第二種の符号化画像データを復号し、復号された画像データから第一種の符号化画像データを生成し、前記帯域設定部は、前記第三の場合、前記通信帯域を、前記第一の通信帯域に設定し、前記第五の場合、前記通信帯域を、前記速度取得部で取得された前記基準通信速度以下又は未満である、前記第一の通信帯域又は前記第二の通信帯域に設定し、前記通信制御部は、前記第三の場合、前記通信部を制御し、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置に、前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶された第一種の符号化画像データを、前記帯域設定部で設定された前記第一の通信帯域で、ファクシミリ送信し、前記第五の場合、前記通信部を制御し、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置に、前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶された第一種の符号化画像データを、前記帯域設定部で設定された前記第一の通信帯域又は前記第二の通信帯域で、ファクシミリ送信する、ようにしてもよい。
【0013】
これによれば、上述した第三の場合、既に説明した第一の場合と同様のファクシミリ送信を実現することができる。この点に関する説明は、省略する。上述した第五の場合、第二種の符号化画像データを、復号し、第一種の符号化画像データに符号化するといった再符号化に要する時間に対応した通信帯域を、ファクシミリ送信に用いる通信帯域として設定することができる。即ち、不必要に高速な通信帯域が、ファクシミリ送信に用いる通信帯域として設定されることを防止することができる。複数のパターンに対応したファクシミリ送信を、両立することができる。なお、高速な通信帯域を用いるほど、ファクシミリ送信のための課金額が高額となるような場合、このようなファクシミリ装置は、課金額を抑制することができ、好適である。
【0014】
本発明の他の側面は、帯域確保型のIPネットワークに接続された相手先装置に、読み取られた原稿に対応する画像データを符号化した符号化画像データを、前記IPネットワークを介してファクシミリ送信するファクシミリ装置であって、原稿を読み取る読取部と、前記読取部で読み取られた原稿に対応する画像データから、第二の圧縮率より圧縮率が低い第一の圧縮率の第一種の符号化方式で符号化された第一種の符号化画像データと、前記第二の圧縮率の第二種の符号化方式で符号化された第二種の符号化画像データと、を生成する生成部と、前記生成部で生成された、第一種の符号化画像データ及び第二種の符号化画像データを記憶する第一記憶部と、前記生成部で第一種の符号化画像データが生成された場合、第一種の符号化画像データを前記第一記憶部に記憶し、前記生成部で第二種の符号化画像データが生成された場合、第二種の符号化画像データを前記第一記憶部に記憶する、記憶制御部と、前記IPネットワークに接続される通信部と、前記通信部を制御する通信制御部と、相手先装置に対応する相手先情報と、相手先装置が受信できる符号化画像データの符号化方式として、前記第一種の符号化方式又は前記第二種の符号化方式と、を関連付けた符号化情報を記憶する第二記憶部と、ファクシミリ送信に用いる通信帯域を、第二の通信帯域より高速である第一の通信帯域、又は、前記第二の通信帯域の何れかに設定する帯域設定部と、前記第二記憶部に記憶された前記符号化情報に従い、ファクシミリ送信のために前記ファクシミリ装置に入力された入力済みの相手先情報に、前記第一種の符号化方式又は前記第二種の符号化方式が、関連付けられているかについて判断する第一判断部と、前記生成部が、前記読取部で読み取られた原稿に対応する画像データから、第二種の符号化画像データを生成するのに要する第一時間を計測する計時部と、前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶された第二種の符号化画像データのデータ容量を取得する容量取得部と、前記計時部で計測された第一時間と、第二種の符号化画像データを復号し、復号された画像データから第一種の符号化画像データを生成するのに要する第二時間と、の対応を定めた対応時間情報を記憶する第三記憶部と、前記第三記憶部に記憶された前記対応時間情報に従い、前記計時部で計測された第一時間に対応する第二時間を取得する時間取得部と、前記容量取得部で取得されたデータ容量と、前記時間取得部で取得された第二時間と、から、基準通信速度を取得する速度取得部と、前記通信制御部によって前記通信部で受信された能力信号であって、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置からの能力信号から、相手先装置が受信できる符号化画像データの符号化方式のための受信機能力情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部で取得された受信機能力情報に従い、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置が受信できる符号化画像データの符号化方式について判断する第二判断部と、を備え、前記生成部は、前記第一判断部で、前記入力済みの相手先情報に、何れの符号化方式も関連付けられていないと判断された第一の場合、第二種の符号化画像データを生成し、第二種の符号化画像データが、前記第一の場合において前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶され、且つ、前記第二判断部で、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置が、前記第二種の符号化方式に対応しておらず、前記第一種の符号化方式に対応していると判断された第六の場合、前記第一記憶部に記憶された第二種の符号化画像データを復号し、復号された画像データから第一種の符号化画像データを生成し、前記帯域設定部は、前記第六の場合、前記通信帯域を、前記速度取得部で取得された前記基準通信速度以下又は未満である、前記第一の通信帯域又は前記第二の通信帯域に設定し、前記通信制御部は、前記第六の場合、前記通信部を制御し、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置に、前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶された第一種の符号化画像データを、前記帯域設定部で設定された前記第一の通信帯域又は前記第二の通信帯域で、ファクシミリ送信する、ファクシミリ装置である。
【0015】
これによれば、上述した第六の場合、既に説明した第五の場合と同様のファクシミリ送信を実現することができる。この点に関する説明は、省略する。上述した何れかのファクシミリ装置において、第一記憶部及び第二記憶部、又は、第一記憶部、第二記憶部及び第三記憶部は、ハードウェア的には、それぞれ別体の記憶部によって構成されていてもよいが、例えば、1つの記憶部によって構成されていてもよい。なお、何れか2つの記憶部が、ハードウェア的に1つの記憶部によって構成され、残りの1つの記憶部が、別体の記憶部であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、相手先装置が受信できる符号化画像データを好適に生成し、好適なファクシミリ送信を行うことできる、ファクシミリ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ファクシミリ通信システムの一例、及び、ファクシミリ装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図2】(A)は、符号化情報テーブルの一例を示す図である。(B)は、ダイヤル番号と符号化方式との関連付けを含む短縮ダイヤルテーブルの一例を示す図である。(C)は、対応時間情報テーブルの一例を示す図である。(D)は、通信帯域テーブルの一例を示す図である。
【図3】FAX送信処理のフローチャート(その1)である。
【図4】FAX送信処理のフローチャート(その2)である。
【図5】第一種モード処理のフローチャートである。
【図6】(A)は、INVITEメッセージのSDPの一例を示す図である。(B)は、200OKメッセージのSDPの一例を示す図である。
【図7】第二種モード処理のフローチャートである。
【図8】高圧縮符号化処理のフローチャートである。
【図9】通信帯域設定処理のフローチャートである。
【図10】相手先対応処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。また、他の構成を含むようにしてもよい。
【0019】
<ファクシミリ通信システム>
ファクシミリ通信システム(以下、「FAX通信システム」という)1について、図1を参照して説明する。図1に示すFAX通信システム1は、次世代ネットワーク(NGN(Next Generation Network)。以下、「NGN」という)網3によって構築される。具体的に、FAX通信システム1は、例えば上述した非特許文献1に示されるような、市外局番から始まる電話番号(以下、「ダイヤル番号」という)を利用した帯域確保型のデータ通信サービスによって構築される。即ち、FAX通信システム1は、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社によって既に提供されている、帯域確保型のデータ通信サービスによって構築される。この帯域確保型のデータ通信サービスは、データコネクト(登録商標)と称されている。NGN網3を利用した帯域確保型のデータ通信サービスは、既に実用化された技術であるため、その説明は、省略する。
【0020】
FAX通信システム1は、図1に示すように、少なくとも、送信元となるファクシミリ装置(以下、「FAX装置」という)10と、送信先(受信側)となるファクシミリ装置(以下、「相手先装置」という)50とを含む。また、FAX通信システム1は、SIP(Session Initiation Protocol)サーバ80を含む。FAX装置10と、相手先装置50と、SIPサーバ80とは、NGN網3に接続されている。SIPサーバ80は、FAX装置10のIPアドレス及びSIPURI(SIP Uniform Resource Identifier)を対応付けて記憶し、相手先装置50の、IPアドレス及びSIPURIを対応付けて記憶している。SIPサーバ80は、SIPを用いて、FAX装置10と相手先装置50との間の通信を制御する。T.38FAX通信において、FAX装置10と相手先装置50との間でSIPに従った手順に基づく各種の信号(指令)は、SIPサーバ80を経由して送受信される。この他、FAX通信システム1は、交換機90を含む。FAX装置10と相手先装置50とは、交換機90によって構成された公衆電話交換回線網(PSTN(Public Switched Telephone Networks)。以下、「PSTN」という)5にも接続されている。交換機90は、既に実用化された構成であるため、その説明は、省略する。
【0021】
<FAX装置>
FAX装置10は、T.38ベースのIPFAX(Internet Protocol FAX 以下、「T.38FAX」という)通信と、一般FAX通信とを行うための機能を有する。T.38は、IPプロトコルを用いて、G3FAX通信を行うための伝送制御プロトコルである。T.38FAX通信は、SIPURIを用いて、NGN網3を介して、符号化された画像データ(以下、「符号化画像データ」という)を通信(送受信)するものである。一般FAX通信は、PSTN5を介して、符号化画像データを通信するものである。T.38FAX通信及び一般FAX通信では、相手先装置50に対応する相手先情報として、ダイヤル番号が用いられる。ダイヤル番号としては、例えば、0ABJやE.164形式が例示され、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社から割り当てられる。FAX装置10は、T.38FAX通信によって、符号化画像データを、相手先装置50に送信(以下、「T.38FAX送信」という)できる。FAX装置10は、一般FAX通信によって、符号化画像データを、相手先装置50に送信(以下、「一般FAX送信」という)できる。FAX装置10は、カラー及びモノクロの送信に対応している。
【0022】
FAX装置10は、図1に示すように、表示部12と、操作部14と、読取部16と、印刷部18と、ネットワークインターフェース(ネットワークI/F)20と、PSTNインターフェース(PSTN I/F)22と、計時部24とを備える。FAX装置10は、CPU30と、プログラムROM32と、RAM34と、フラッシュROM36とを備える。これら各部12〜36は、バスライン26に接続されている。表示部12は、諸情報を表示するためのディスプレイである。操作部14は、複数のキーによって構成される。操作部14は、0〜9等のテンキー、短縮ダイヤルキー、スタートキー、選択キー及び停止キー等で構成される。テンキー及び短縮ダイヤルキーは、例えば、ダイヤル番号を入力する際に押下される。スタートキーは、T.38FAX送信又は一般FAX送信を行う際に、押下される。例えば、相手先装置50に、モノクロ送信を行う場合、モノクロ送信のためのスタートキーが押下される。選択キーは、所定の選択肢を選択等する際に押下される。例えば、後述するアドレス帳データベースに登録された相手先装置50に対応するダイヤル番号から、所望のダイヤル番号を選択する際に用いられる。選択キーによって所望のダイヤル番号を選択することでも、ダイヤル番号を入力することができる。停止キーは、開始された処理又は動作等を、停止等させる際に押下される。ユーザは、操作部14を構成する各種の処理に対応付けられたキーを操作することで、各種の指示をFAX装置10に入力することができる。
【0023】
読取部16は、原稿を読み取る。印刷部18は、FAX装置10で受信された符号化画像データに対応する画像を、記録用紙に印刷する。ネットワークI/F20は、NGN網3に接続され、FAX装置10をNGN網3に接続する。PSTN I/F22は、PSTN5に接続され、FAX装置10をPSTN5に接続する。計時部24は、時間経過を計測する。計時部24は、例えば、時計又はタイマである。CPU30は、演算処理を実行する。プログラムROM32は、図3〜図5及び図7〜図10に基づき後述するような各種の処理等のためのコンピュータプログラムを記憶する。RAM34は、CPU30が各種のコンピュータプログラムを実行する際に利用される記憶領域となる。RAM34には、入力されたダイヤル番号を記憶する領域、SIPによる接続の可否を表す接続フラグのための領域、変数Iの領域、帯域(S)の領域、及び、その他後述する処理で利用される情報(データ)のための領域が確保される。CPU30は、プログラムROM32に記憶された各種のコンピュータプログラムを実行する等して、FAX装置10を制御する。これによって、FAX装置10では、各種の処理が実行され、各種の機能が実現される。
【0024】
フラッシュROM36は、各種のデータを記憶する。各種のデータは、フラッシュROM36、所定の記憶領域毎に、それぞれ、記憶される。例えば、フラッシュROM36には、相手先装置50に関連付けて、相手先装置50に対応するダイヤル番号等が登録されたアドレス帳データベースと、SIPサーバ80のドメイン名が記憶される。ユーザは、操作部14等を介して、相手先装置50を含む受信側のFAX装置のダイヤル番号等をアドレス帳データベースに登録し、また、SIPサーバ80のドメイン名を記憶させる。本実施形態では、SIPサーバ80のドメイン名は、「sipuri.com」であるとする。フラッシュROM36には、FAX装置10で、優先させるファクシミリ送信の通信方式に関する設定が記憶される。具体的に、通信方式に関する設定として、T.38FAX送信又は一般FAX送信の何れかが記憶される。例えば、相手先装置50へのファクシミリ送信に関し、T.38FAX送信を優先させる場合、ユーザは、操作部14を介して、優先させる通信方式として、T.38FAX送信を入力する。CPU30は、優先させるファクシミリ送信の通信方式に関する設定として、T.38FAX送信を、フラッシュROM36に記憶する。一般FAX送信を優先させる場合、フラッシュROM36には、一般FAX送信が記憶される。
【0025】
フラッシュROM36には、ダイヤル番号と、そのダイヤル番号の相手先装置50が対応する符号化方式とを関連付けた、図2(A)に示すような、符号化情報テーブルが記憶される。ダイヤル番号に対応する相手先装置50に関し、符号化方式が特定されていない場合、そのダイヤル番号には、符号化方式は関連付けられない。符号化情報テーブルは、FAX装置10で、相手先装置50のダイヤル番号が管理された他の用途のテーブル(データベース)を利用した形態としてもよい。例えば、図2(B)に示すように、短縮ダイヤルキーによるダイヤル番号の入力を可能とするための短縮ダイヤルテーブルを利用した形態としてもよい。短縮ダイヤルテーブルは、複数の短縮ダイヤルキーと、ダイヤル番号とがそれぞれ関連付けられたテーブルである。短縮ダイヤルテーブルによる場合、短縮ダイヤルキーに関連付けられたダイヤル番号に、さらに、符号化方式が関連付けられる。この他、上述したアドレス帳データベースを利用し、又は、ファクシミリ送信及び/又は受信が管理された通信管理テーブル、若しくは、所謂、ワンタッチダイヤルのためのワンタッチダイヤルテーブルを利用した形態としてもよい。これらについては、短縮ダイヤルテーブルと同様の形態とされる。
【0026】
フラッシュROM36には、FAX装置10の動作モードに関する設定が記憶される。具体的に、第一種のモード又は第二種のモードの何れかが記憶される。詳細は後述するが、FAX送信処理(図3参照)で、符号化情報テーブル(図2(A)参照)から、入力されたダイヤル番号の相手先装置50が対応する符号化方式が判断できない場合(図3のS106:No参照)、FAX装置10では、第一種のモードに対応する第一種モード処理(図3のS110、詳細は図5参照)、又は、第二種モードに対応する第二種モード処理(図3のS112、詳細は図7参照)が、動作モードに関する設定に応じて、実行される。第一種のモードは、相手先装置50が対応する符号化方式が判断できない場合、読み取られた原稿に対応する画像データを、低圧縮率の符号化方式(例えば、MH)で符号化した符号化画像データを生成し、これを、通信速度を高速とすることができる通信帯域を介して、T.38FAX送信するモードである。このモードは、例えば、高速な通信帯域を設定することによる課金額の増加より通信速度を優先させたいユーザが設定する動作モードとして機能する。第二種のモードは、読み取られた原稿に対応する画像データを、一旦、高圧縮率の符号化方式(例えば、MMR)で符号化した符号化画像データを生成し、これを、相手先装置50が対応する符号化方式の符号化画像データに再符号化すると共に、再符号化に要する時間に対応させた通信速度となる通信帯域を介して、T.38FAX送信するモードである。このモードは、例えば、通信速度より課金を優先させたいユーザが設定する動作モードとして機能する。ユーザは、操作部14を操作し、FAX装置10の動作モードを、何れの動作モードとするかを、予め入力する。CPU30は、入力された第一種のモード又は第二種のモードを、フラッシュROM36に動作モードに関する設定として記憶する。
【0027】
フラッシュROM36には、通信帯域設定処理(図9参照)で用いられる、対応時間情報テーブル(図2(C)参照)及び通信帯域テーブル(図2(D)参照)が記憶される。対応時間情報テーブルは、第一時間、詳細には、所定の範囲の第一時間と、第一種の第二時間及び第二種の第二時間とが関連付けて記憶されたテーブルである。第一時間は、1回のT.38FAX送信において、読取部16で読み取られた全ての原稿に対応する全頁分の画像データを、MMRで符号化し、MMR形式の符号化画像データを生成するのに要する時間であって、高圧縮符号化処理(図8参照)で計測される時間(図8のS404、S414参照)である。第二時間は、全頁分のMMR形式の符号化画像データを、復号し、復号された画像データを、MR形式又はMH形式の符号化画像データに再符号化するのに要する時間(推定時間)である。MR形式の符号化画像データに再符号化する場合を、第一種の第二時間といい、MH形式の符号化画像データに再符号化する場合を、第二種の第二時間という。第一時間(第一時間の範囲)と第一種の第二時間との対応、及び、第一時間(第一時間の範囲)と第二種の第二時間との対応は、実験又は計算等によって求められる。通信帯域テーブルは、通信帯域識別子(図2(D)では、0、1及び2)と、NGN網3が利用された帯域確保型のデータ通信サービスにおける通信帯域(64kbps、512kbps、1000kbps)との対応を定めたテーブルである。図4(D)から明らかな通り、通信帯域テーブルでは、通信帯域識別子「0」と通信帯域「1000」とが関連付けられたレコードが先頭とされ、次に、通信帯域識別子「1」と通信帯域「512」とが関連付けられたレコードが登録され、最後に、通信帯域識別子「2」と通信帯域「64」とが関連付けられたレコードが登録されている。即ち、通信帯域が降順となるように登録されている。相手先装置50は、FAX装置10と同様又は従来から用いられているFAX装置である。相手先装置50は、図1に示すように、FAX装置10の各部12〜36に対応する、各部52〜76を備える。相手先装置50に関する説明は、省略する。
【0028】
<FAX送信処理>
FAX装置10で実行されるFAX送信処理について、図3及び図4等を参照して説明する。以下では、メモリ送信によるモノクロ送信が対象とされる。FAX送信処理の開始に際し、ユーザは、FAX装置10に、送信対象の原稿をセットし、相手先装置50のダイヤル番号を入力する。ダイヤル番号は、上述した通り、操作部14のうち、テンキー若しくは短縮ダイヤルキーを用いて、又は、選択キーによるアドレス帳データベースから、入力される。FAX送信処理は、ユーザが相手先装置50のダイヤル番号を入力し、スタートキーを押下した場合に開始される。CPU30は、前述のような何れかの方法によって入力されたダイヤル番号を、取得する(S100)。その後、CPU30は、フラッシュROM36にアクセスし、優先させるファクシミリ送信の通信方式に関する設定が、T.38FAX送信であるかについて、判断する(S104)。
【0029】
通信方式に関する設定が、T.38FAX送信である場合(S104:Yes)、CPU30は、符号化情報テーブル(図2(A)参照)において、S100で取得されたダイヤル番号(以下、「取得済みダイヤル番号」という)に、符号化方式が関連付けられているかについて判断する(S106)。符号化情報テーブルが、例えば、図2(B)に示すような形態であった場合、S106の判断は、短縮ダイヤルテーブルを用いて行われる。図2(A)に示す、符号化情報テーブルに基づき、S106を具体的に説明する。例えば、取得済みダイヤル番号が「234-567-8901」であった場合、図2(A)では、これに一致するダイヤル番号には、符号化方式が関連付けられていない。このような場合、CPU30は、S106の判断を否定し(S106:No)、処理をS108に移行する。取得済みダイヤル番号が符号化情報テーブルに未登録である場合も、CPU30は、符号化方式が関連付けられていない場合と同様、S106の判断を否定(S106:No)する。取得済みダイヤル番号が「123-456-7890」であった場合、図2(A)では、これに一致するダイヤル番号に、符号化方式「MR」が関連付けられている。このような場合、CPU30は、S106の判断を肯定し(S106:Yes)、処理をS114に移行する。S108で、CPU30は、フラッシュROM36にアクセスし、FAX装置10の動作モードについて判断する。FAX装置10が、第一種のモードである場合(S108:第一種のモード)、CPU30は、第一種モード処理を実行する(S110)。FAX装置10の動作モードが、第二種の動作モードである場合(S108:第二種のモード)、CPU30は、第二種モード処理を実行する(S112)。S114でCPU30は、相手先対応処理を実行する。S110の第一種モード処理、S112の第二種モード処理、及び、S114の相手先対応処理については、後述する。
【0030】
S110、S112又はS114を実行した後、CPU30は、第一種モード処理、第二種モード処理又は相手先対応処理で設定された接続フラグが接続エラーであるかについて判断する(S115)。接続フラグについては、後述する。接続フラグが、接続エラーであった場合(S115:Yes)、CPU30は、処理を、図4のS118に移行する。接続フラグが、接続エラーではなかった場合(S115:No)、CPU30は、FAX送信処理を終了する。
【0031】
説明をS104に戻す。通信方式に関する設定が、一般FAX送信であって、T.38FAX送信ではない場合(S104:No)、CPU30は、処理を図4のS116に移行し、MMR形式の符号化画像データを生成する。具体的に、CPU30は、読取部16を制御し、FAX装置10にセットされた原稿を読み取り、読取部16で読み取られた原稿に対応する画像データ(例えば、ビットマップデータ。以下、同じ)を、RAM34に記憶する。画像データは、詳細には、RAM34上に確保された読取バッファ領域に記憶される。続けて、CPU30は、RAM34に記憶された画像データをMMRで符号化し、MMR形式の符号化画像データを生成する。生成されたMMR形式の符号化画像データは、RAM34、詳細には、RAM34に確保された送信用メモリ領域に記憶される。CPU30は、S116を、FAX装置10にセットされた全ての原稿に対して行う。従って、RAM34(送信用メモリ領域)には、読み取られた全ての原稿に対応する全頁分の符号化画像データが記憶される。全頁分の符号化画像データが記憶された時点で、メモリ送信の準備が完了する。CPU30は、一般FAX送信のために、取得済みダイヤル番号に従った、発呼を実行する(S118)。具体的に、CPU30は、PSTN I/F22を制御し、PSTN5への回線閉結を行うと共に、取得済みダイヤル番号に従った、発呼を実行する。これによって、交換機90から、ダイヤル番号に対応する相手先装置50に対して呼出信号が送信され、相手先装置50においても、PSTN5への回線閉結が行われる。続けて、CPU30は、PSTN I/F22を制御し、一般FAX送信の通信規格に従い、相手先装置50と通信し、相手先装置50から送信される能力信号としてのDISを受信する。DISは、画像データの符号化方式に対応する復号化能力に関する受信機能力情報を含む指令(信号)である。DISに含まれる受信機能力情報によれば、取得済みダイヤル番号の相手先装置50が受信できる符号化画像データの符号化方式、換言すれば、この相手先装置50が対応している符号化方式を、特定することができる。
【0032】
DISを受信した後、CPU30は、DISに含まれる受信機能力情報によって特定された符号化方式と、S116における画像データの符号化方式(MMR)との同一性について判断する(S120)。具体的に、CPU30は、特定された符号化方式が、MMRではないかを判断する。特定された符号化方式が、MMRではなく、MR又はMHである場合、CPU30は、S120の判断を肯定し(S120:Yes)、処理をS122に移行する。S122で、CPU30は、RAM34に記憶されたMMR形式の符号化画像データを、特定された符号化方式で符号化した符号化画像データへと再符号化(符号−符号変換)しつつ、PSTN I/F22を制御し、再符号化された、新たな形式の符号化画像データを、相手先装置50に送信する。例えば、特定された符号化方式が、MRである場合、CPU30は、RAM34に記憶されたMMR形式の符号化画像データを、復号し、復号された画像データを、MRで符号化し、MR形式の符号化画像データを、相手先装置50に送信する。特定された符号化方式が、MMRである場合、CPU30は、S120の判断を否定し(S120:No)、処理をS124に移行する。S124で、CPU30は、PSTN I/F22を制御し、RAM34に記憶されているMMR形式の符号化画像データを、相手先装置50に送信する。CPU30は、送信に際し、再符号化(符号−符号変換)を行わない。S122及びS124による送信は、一般FAX送信の通信規格による手順に従い行われる。一般FAX送信の通信規格は、従来から利用されている通信規格であるため、本実施形態では、この通信規格による手順に関する説明は、省略する。図4のS122又はS124を実行した後、CPU30は、FAX送信処理を、終了する。
【0033】
<第一種モード処理>
図3のS110で実行される第一種モード処理について、図5等を参照して説明する。第一種モード処理を開始したCPU30は、読取部16を制御し、FAX装置10にセットされた原稿を読み取り、読取部16で読み取られた原稿に対応する画像データを、MHで符号化し、MH形式の符号化画像データを生成する(S200)。S200について、この他の点は、上述した図4のS116と同様であるため、説明は省略する。続けて、CPU30は、ネットワークI/F20を制御し、通信帯域が1000kbpsに設定されたINVITEを送信する(S202)。INVITEは、図6(A)に示すような、T.38FAX通信に関する情報等を含む。図6(A)において、「m=application 9 TCP t38」は、T.38FAX通信を定義するための記述である。「b=AS:1000」は、通信帯域を1000kbpsに設定するための記述である。「a=T38FaxVersion:1」は、T.38FAX通信のバージョンを定義するための記述である。「a=T38FaxRateManagement:localTCP」は、使用するプロトコルがTCPであることを定義するための記述である。INVITEは、既に実用化されたSDPに従って記述されたメッセージである。そのため、図6(A)のINVITEに関するこの他の説明は、省略する。S202を実行した後、CPU30は、SIPによる接続が成功したかについて判断する(S204)。SIPによる接続が失敗した場合(S204:No)、CPU30は、接続フラグとして接続エラーを設定する(S205)。接続フラグは、SIPによる接続の可否を表すフラグであって、接続エラーは、SIPによる接続に失敗したことを表す。S205を実行した後、CPU30は、第一種モード処理を終了する。この場合、CPU30は、続けて実行される、図3のS115の判断を肯定し(図3のS115:Yes)、処理を図4のS118に移行し、S118以降の処理を、上述したように実行する。即ち、FAX装置10では、NGN網3を介したT.38FAX送信が行えない場合、PSTN5を介した一般FAX送信が実行される。SIPによる接続が成功した場合(S204:Yes)、CPU30は、S202でのINVITE送信後、これを受信した相手先装置50から送信されるDISを受信する(S206)。DISは、上述した通りであり、説明は省略する。
【0034】
S202〜S206について、より具体的に説明する。S202で、CPU30は、フラッシュROM36からSIPサーバ80のドメイン名「sipuri.com」を読み出し、読み出したドメイン名と、取得済みダイヤル番号とから、SIPURIを生成する。例えば、取得済みダイヤル番号が「234-567-8901」であったとする。この場合、CPU30は、ドメイン名「sipuri.com」と、ダイヤル番号「234-567-8901」とから、SIPURI「2345678901@sipuri.com」を生成する。続けて、CPU30は、FAX装置10の通信設定を、SIP通信設定とする。これによって、FAX装置10は、SIPに従って、SIPサーバ80を経由して、取得済みダイヤル番号に対応する相手先装置50と通信することができる状態となる。CPU30は、ネットワークI/F20を制御し、生成されたSIPURIを送信先として、INVITEを送信する。その後、CPU30は、S202で送信されたINVITEを受信した相手先装置50から送信される200OKが、ネットワークI/F20で受信されるまで待機する。200OKは、リクエストとしてのINVITEが理解され、受け入れられたことを示す応答コードである。200OKは、例えば図6(B)に示すような、SDPに従った記述を含む。200OKは、図6(A)の場合と同様、T.38FAX通信に関する情報を含む。例えば、「m=application 49152 TCP t38」は、T.38FAX通信の了解を定義するための記述である。「b=AS:1000」は、通信帯域を1000kbpsに設定するための記述である。200OKメッセージは、既に実用化されたSDPに従って記述された応答コードである。そのため、図6(B)の200OKに関するこの他の説明は、省略する。
【0035】
S204の判断は、200OKの受信の有無に従ってなされる。即ち、200OKが受信できない場合、CPU30は、SIPによる接続は失敗したとして、S204の判断を否定し(S204:No)、処理を図4のS118に移行する。200OKが受信できない場合としては、相手先装置50が、NGN網3に接続されていない等が例示される。詳細は省略するが、この場合、200OK以外の信号(メッセージ)が受信される。200OKが受信できた場合、CPU30は、SIPによる接続は成功したとして、S204の判断を肯定する(S204:Yes)。続けて、CPU30は、生成されたSIPURIを送信先として、SIPサーバ80に、ACKを送信する。ACKは、INVITEメッセージに対する応答を受け取ったことを通知するためのメッセージ(メソッド)である。送信されたACKは、SIPサーバ80を経由して、相手先装置50に送信され、相手先装置50は、このACKを受信する。ACKを送信した後、CPU30は、FAX装置10の通信設定を、T.38通信設定とする。これによって、以降の相手先装置50との通信は、SIPサーバ80を経由せず、相手先装置50と、直接、T.38に従って行われる。CPU30は、ネットワークI/F20を制御し、ACKの送信に応じて、相手先装置50から送信されるDISを受信する(S206)。DISが受信された場合、CPU30は、このDISを解析し、DISに含まれる受信機能力情報を取得し、例えば、RAM34に保存する。その後、CPU30は、T.38に従った所定の手順を実行し、S200で生成され、RAM34に記憶されたMH形式の符号化画像データを、直接、相手先装置50に送信する(S208)。このとき、CPU30は、MH形式の符号化画像データを、他の符号化方式の符号化画像データに再符号化しない。S208では、上述したINVITE及び200OKの送受信によって、ネゴシエーションされた通信帯域(1000kbps)が用いられる。
【0036】
全頁分のMH形式の符号化画像データを送信した後、CPU30は、通信設定を、再度、SIP通信設定とする。これによって、以降の相手先装置50との通信は、SIPに従って、SIPサーバ80を経由して行われる。続けて、CPU30は、ネットワークI/F20を制御し、BYEを送信する等して、相手先装置50(SIPサーバ80)との今回の通信を切断する(S210)。BYEは、INVITEによるコールを終了することを通知するためのメッセージ(メソッド)である。CPU30は、取得済みダイヤル番号と、S206で受信されたDISに含まれ、RAM34に記憶された受信機能力情報とに基づき、符号化情報テーブル(図2(A)参照)を更新する(S212)。例えば、取得済みダイヤル番号が「234-567-8901」であって、受信機能力情報によって特定された符号化方式が「MR」であったとする。このような場合、CPU30は、符号化情報テーブルの「234-567-8901」に関連付けて、新たに「MR」を追加する。取得済みダイヤル番号が符号化情報テーブルに未登録である場合、CPU30は、取得済みダイヤル番号と、受信機能力情報によって特定された符号化方式とを関連付けて、符号化情報テーブルに追加登録する。符号化情報テーブルが、例えば、図2(B)に示すような形態であった場合、S212は、短縮ダイヤルテーブルを対象として実行される。符号化方式が、ダイヤル番号に関連付けて、既に、登録されているとする。このような状態で、特に、受信機能力情報が、登録済みの符号化方式と異なる場合、登録済みの符号化方式は、今回、新たにRAM34に記憶された符号化方式に上書きされる。次に、CPU30は、接続フラグとして接続OKに設定する(S214)。接続OKは、SIPによる接続に成功したことを表す接続フラグである。S214を実行した後、CPU30は、第一種モード処理を終了する。第一種モード処理を終了したCPU30は、図3のS115を実行する。
【0037】
<第二種モード処理>
図3のS112で実行される第二種モード処理について、図7等を参照して説明する。第二種モード処理を開始したCPU30は、高圧縮符号化処理を実行し(S300)、通信帯域設定処理を実行する(S302)。S300の高圧縮符号化処理、及び、S302の通信帯域設定処理については、後述する。S302を実行した後、CPU30は、ネットワークI/F20を制御し、INVITEを送信する(S304)。S304で送信されるINVITEは、図6(A)に示すINVITEと同様である。ただし、S304で送信されるINVITEは、通信帯域に係る設定が、後述する通信帯域設定処理(図9)のS512でRAM34等の所定の領域に記憶された帯域(S)の値とされる。例えば、図6(A)における「b=AS:1000」との設定は、図9のS512で、帯域(S)が、「512」kbpsとされた場合、「b=AS:512」とされ、「64」kbpsとされた場合、「b=AS:64」とされる。図9のS512で、帯域(S)が、「1000」kbpsであれば、図6(A)と同じとされる。S304について、この他の点は、上述した図5のS202と同様であるため、説明は省略する。S304を実行した後、CPU30は、SIPによる接続が成功したかについて判断する(S306)。SIPによる接続が失敗した場合(S306:No)、接続フラグとして接続エラーを設定する(S307)。S307を実行した後、CPU30は、第二種モード処理を終了する。この場合、CPU30は、続けて実行される、図3のS115の判断を肯定し(図3のS115:Yes)、処理を図4のS118に移行し、S118以降の処理を、上述したように実行する。SIPによる接続が成功した場合(S306:Yes)、CPU30は、S202でのINVITE送信後、これを受信した相手先装置50から送信されるDISを受信する(S308)。S306及びS308は、上述した図5のS204及びS206と同様であるため、説明は省略する。S304でのINVITEの送信に応じて、これを受信した相手先装置50から送信される200OKは、上述したINVITEと同様、通信帯域に係る設定が、図6(B)の「b=AS:1000」から、変更される場合がある。
【0038】
S308を実行した後、CPU30は、T.38に従い、ネットワークI/F20を制御し、所定の形式の符号化画像データを、相手先装置50に送信する(S310)。送信される符号化画像データは、S308で受信されたDISに含まれる受信機能力情報によって特定された符号化方式にて符号化された形式とされる。S310で、CPU30は、RAM34に記憶された相手先装置50の受信機能力情報に従って、相手先装置50が、MMR形式の符号化画像データを受信できるかについて判断する。相手先装置50が、MMR形式の符号化画像データを受信できない、換言すれば、相手先装置50がMMRに対応していないと、判断された場合、CPU30は、RAM34に記憶されたMMR形式の符号化画像データを、S308で受信されたDISに含まれる受信機能力情報によって特定された符号化方式の符号化画像データに変換する。例えば、特定された符号化方式が、MHであったとする。この場合、CPU30は、MMR形式の符号化画像データを復号し、復号された画像データを、MHで符号化し、MH形式の符号化画像データを生成しつつ、ネットワークI/F20を制御し、相手先装置50に送信する。相手先装置50が、MMR形式の符号化画像データを受信できる場合、CPU30は、再符号化のための処理を実行することなく、ネットワークI/F20を制御し、RAM34に記憶されたMMR形式の符号化画像データを、相手先装置50に送信する。S310では、INVITE及び200OKの送受信によって、ネゴシエーションされた通信帯域が用いられる。S310で、全頁分の符号化画像データを送信した後、CPU30は、通信設定を、再度、SIP通信設定とし、相手先装置50(SIPサーバ80)との今回の通信を切断する(S312)。続けて、CPU30は、取得済みダイヤル番号と、S308で受信されたDISに含まれ、RAM34に記憶された受信機能力情報とに基づき、符号化情報テーブル(図2(A)参照)を更新する(S314)。S312及びS314は、それぞれ、図5のS210及びS212に対応する処理であり、上記同様にして実行される。これに関する説明は、省略する。次に、CPU30は、接続フラグとして接続OKに設定する(S316)。S316を実行した後、CPU30は、第二種モード処理を終了する。第二種モード処理を終了したCPU30は、図3のS115を実行する。
【0039】
<高圧縮符号化処理>
図7のS300で実行される高圧縮符号化処理について、図8等を参照して説明する。高圧縮符号化処理を開始したCPU30は、読取部16を制御し、FAX装置10にセットされた原稿を読み取る(S400)。CPU30は、読取部16で読み取られた原稿に対応する画像データを、RAM34上に確保された読取バッファ領域に記憶する(S402)。CPU30は、計時部24を制御し、計時部24による時間経過の計測を開始する(S404)。続けて、CPU30は、符号化画像データのデータ容量をカウントするための符号化画像データ容量の値を「0」に初期化する(S406)。その後、CPU30は、RAM34上の読取バッファ領域に記憶された画像データのうち、1頁分の原稿に対応した画像データを、MMRで符号化し、MMR形式の符号化画像データを生成し、MMR形式の符号化画像データを、RAM34上の送信用メモリ領域に記憶する(S408)。CPU30は、S408で生成されたMMR形式の符号化画像データのデータ容量を、符号化画像データ容量に加算し、新たな値に更新する(S410)。例えば、S408で新たに生成された符号化画像データのデータ容量が、10kBであったとする。高圧縮符号化処理が開始された後、S408が初めて実行される場合であれば、符号化画像データのデータ容量は、「0」であるから(S406参照)、今回のS410によって、符号化画像データ容量は、「10」に更新される。既に、S412の判断が否定(S412:No)され、且つ、S408及びS410が実行されており、その結果、符号化画像データ容量が「50」であったとする。この場合、「50」に、今回のS408による10kBが加算され、符号化画像データ容量は、「60」に更新される。
【0040】
S410を実行した後、CPU30は、読み取られた原稿に対応する全頁分の画像データに対して、S408による符号化が完了したかについて判断する(S412)。RAM34上の読取バッファ領域に画像データが記憶され、全頁分の符号化が完了していない場合(S412:No)、CPU30は、処理をS408に戻し、S408及びS410を、繰り返して実行する。全頁分の符号化が完了した場合(S412:Yes)、CPU30は、計時部24での計測をストップさせる(S414)。その後、CPU30は、計時部24で計測された時間を、第一時間として、RAM34又はフラッシュROM36の所定の領域に記憶(保存)する(S416)。第一時間は、上述した通りであり、全頁分の画像データをMMRで符号化し、MMR形式の符号化画像データを生成するのに要する時間である。S416を実行した後、CPU30は、高圧縮符号化処理を終了する。高圧縮符号化処理を終了したCPU30は、通信帯域設定処理(図7のS302参照)を実行する。なお、S400、S402、S408及びS412は、図4のS116、図5のS200、及び、後述する図10のS600に対応する処理である。
【0041】
<通信帯域設定処理>
図7のS302で実行される通信帯域設定処理について、図9等を参照して説明する。通信帯域設定処理を開始したCPU30は、第二時間を取得する(S500)。S500について、具体的に説明する。CPU30は、図8のS416で、RAM34等に記憶された第一時間を特定する。続けて、CPU30は、フラッシュROM36に記憶された、図2(C)に示す対応時間情報テーブルにアクセスし、特定された第一時間に関連付けられた、詳細には、特定された第一時間を含む第一時間の範囲に関連付けられた、第一種の第二時間又は第二種の第二時間の何れか一方を、取得する。第一種の第二時間又は第二種の第二時間の何れか一方の取得に際し、CPU30は、何れか長い時間を取得する。続けて、CPU30は、基準通信速度を取得する(S502)。基準通信速度は、次のようにして取得される。CPU30は、図8のS410でカウントした、全頁分の符号化画像データのデータ容量を、符号化画像データ容量に従い特定する。続けて、CPU30は、特定された全頁分の符号化画像データのデータ容量を、S500で取得された第二時間で除して、基準通信速度を算出する。
【0042】
S502を実行した後、CPU30は、通信帯域識別子のための変数Iを、「0」に初期化する(S504)。変数Iは、図2(D)に示す通信帯域テーブルの通信帯域識別子に対応する。CPU30は、変数Iの値に一致する通信識別子に関連付けられた通信帯域を、帯域(S)に設定する(S506)。通信帯域設定処理が開始された後、S506が初めて実行される場合であれば、変数Iは、「0」であるから、帯域(S)は、「1000」kbpsに設定される。既に、S510が実行されている場合、変数Iは、カウントアップされているため、対応した通信帯域が、設定される。例えば、S510が既に2回実行され、変数Iが「2」であれば、帯域(S)は、「64」に設定される。その後、CPU30は、S502で取得した基準通信速度が、S506で設定した帯域(S)以上であるかについて判断する(S508)。基準通信速度が、帯域(S)より小さく、帯域(S)以上ではない場合(S508:No)、CPU30は、変数Iを、「1」増加させ(S510)、処理をS506に戻し、S506及びS508を、繰り返して実行する。基準通信速度が、帯域(S)以上である場合(S508:Yes)、CPU30は、その時点における帯域(S)を、INVITEに含める通信帯域として、RAM34又はフラッシュROM36の所定の領域に記憶する(S512)。S512を実行した後、CPU30は、通信帯域設定処理を終了する。通信帯域設定処理を終了したCPU30は、図7のS304を実行する。S508の判断に関し、「基準通信速度>帯域(S)」としてもよい。
【0043】
<相手先対応処理>
図3のS114で実行される相手先対応処理について、図10等を参照して説明する。相手先対応処理を開始したCPU30は、読取部16を制御し、FAX装置10にセットされた原稿を読み取る(S600)。S600で、CPU30は、符号化情報テーブル(図2(A)参照)において、取得済みダイヤル番号に関連付けられた符号化方式を特定し、読取部16で読み取られた原稿に対応する画像データを、特定された符号化方式で符号化し、特定された符号化形式の符号化画像データを生成する。例えば、取得済みダイヤル番号が「123-456-7890」であった場合、図2(A)では、これに一致するダイヤル番号に、符号化方式「MR」が関連付けられている。そこで、S600で、CPU30は、MR形式の符号化画像デーを生成する。符号化情報テーブルが、例えば、図2(B)に示すような形態であった場合、S600は、短縮ダイヤルテーブルを対象として実行される(S608、S616及びS618において同じ)。S600について、この他の点は、上述した図4のS116と同様であるため、説明は省略する。続けて、CPU30は、S602〜S606を、順次、実行する。S602〜S606は、上述した図5のS202〜S206と、同様の処理であり、上記同様にして実行される。これに関する説明は、省略する。なお、S600では、相手先装置50が受信できる符号化方式として、符号化情報テーブルに登録された符号化方式による符号化が実行される。従って、相手先装置50は、この符号化方式による符号化画像データを受信できる可能性が高く、再符号化は不要であると考えられる。そのため、S602で送信されるINVITEに設定される通信帯域は、最も高速である帯域(1000kbps)にすることとしている。S604の判断が否定された場合(S604:No)についても、図5のS204の判断が否定された場合(S204:No)と同様、S605で、CPU30は、接続フラグとして接続エラーを設定し、相手先対応処理を終了し、図3のS115の判断を肯定し(図3のS115:Yes)、図4のS118以降の処理を、上述したように実行する。
【0044】
S606を実行した後、CPU30は、S606で受信されたDISに含まれ、RAM34に記憶された受信機能力情報によって特定された符号化方式が、符号化情報テーブルで、取得済みダイヤル番号に関連付けられた符号化方式より、低圧縮率であるかについて判断する(S608)。受信機能力情報によって特定された符号化方式が、関連付けられた符号化方式より、低圧縮率ではない場合(S608:No)、CPU30は、処理をS610に移行する。S610でCPU30は、T.38に従い、ネットワークI/F20を制御し、RAM34に記憶された符号化画像データを、直接、相手先装置50に送信する(S610)。このとき、CPU30は、再符号化を実行しない。S610では、上述したINVITE及び200OKの送受信によって、ネゴシエーションされた通信帯域(1000kbps)が用いられる(後述するS612についても同じ)。受信機能力情報によって特定された符号化方式が、関連付けられた符号化方式より、低圧縮率である場合(S608:Yes)、CPU30は、処理をS612に移行する。S612で、CPU30は、T.38に従い、ネットワークI/F20を制御し、受信機能力情報によって特定された符号化方式の符号化画像データに再符号化された符号化画像データを、直接、相手先装置50に送信する。再符号化は、RAM34に記憶された符号化画像データを、復号し、復号された画像データを、受信機能力情報によって特定された符号化方式で符号化して行われる。
【0045】
S610又はS612で、全頁分の符号化画像データを送信した後、CPU30は、通信設定を、再度、SIP通信設定とし、相手先装置50(SIPサーバ80)との今回の通信を切断する(S614)。この点については、図5のS210等と同様であるため、説明は省略する。続けて、CPU30は、受信機能力情報によって特定された符号化方式が、符号化情報テーブルで、取得済みダイヤル番号に関連付けられた符号化方式と異なっているかについて判断する(S616)。両符号化方式が異なっている場合(S616:Yes)、CPU30は、取得済みダイヤル番号と、S606で受信されたDISに含まれ、RAM34に記憶された受信機能力情報とに基づき、符号化情報テーブルを更新する(S618)。S618は、図5のS212と同様の処理であり、上記同様にして実行される。これに関する説明は、省略する。両符号化方式が同一である場合(S616:No)、又は、S618を実行した後、CPU30は、接続フラグとして接続OKに設定し(S620)、相手先対応処理を終了する。相手先対応処理を終了したCPU30は、図3のS115を実行する。
【0046】
<本実施形態による効果>
(1)上記では、図5に示す第一種モード処理で、MH形式の符号化画像データを生成し(図5のS200参照)、且つ、通信帯域を1000kbpsに設定(図5のS202)することとした。従って、相手先装置50が受信できるMH形式の符号化画像データを、1000kbpsといった高速で送信することができる。即ち、再符号化による通信時間の増加を抑制しつつ、T.38FAX送信の通信時間を短縮することができる。
【0047】
(2)上記では、図9に示す通信帯域処理で、基準通信速度は、再符号化に、より長い時間を要する符号化方式に従い求められる(図9のS500、S502参照)。従って、図7に示す第二種モード処理のS304では、通信帯域が、基準通信速度以下(未満)である、帯域が設定されたINVITEが送信される。そのため、S310で再符号化が実行されたとしても、再符号化が間に合わず、送信する符号化画像データがなくなるといった事態の発生を防止することができる。T.38FAX送信のために設定された通信帯域を、有効に利用することができる。再符号化待ちの状態では、高速な通信帯域が設定されたとしても、送信する符号化画像データがなく、結果的に、通信時間が、低速な通信帯域の場合と同等となってしまう。通信帯域が高速になれば、課金額が高額になるような場合、課金額を抑制することが可能となる。
【0048】
(3)上記では、図10に示す相手先対応処理で、S608の処理を採用することとした。取得済みダイヤル番号に対応する相手先装置50が、符号化情報テーブルにおける関連付けがなされた時点から、別のFAX装置に交換される場合がある。交換された新たなFAX装置が、交換前のFAX装置と比較し、高圧縮率の符号化方式の符号化画像データを受信できる場合は、新たなFAX装置は、符号化情報テーブルにおいて関連付けがなされた符号化方式の符号化画像データを受信することができる。即ち、MMRに対応したFAX装置は、MR及びMHにも対応できる。MRに対応したFAX装置は、MHにも対応できる。しかし、交換された新たなFAX装置が、交換前のFAX装置と比較し、低圧縮率の符号化方式の符号化画像データしか受信できない場合、新たなFAX装置は、符号化情報テーブルにおいて関連付けがなされた符号化方式の符号化画像データを受信することができない。このような場合、S600で生成された符号化画像データを、そのまま、送信すると、相手先装置50では、符号化画像データを受信することができない。従って、相手先対応処理では、S608を採用し、取得済みダイヤル番号に対応する相手先装置50に送信されることとなる符号化画像データを、そのまま送信するか(図10のS610)、再符号化した後に送信するか(図10のS612参照)を、判断することとした。そのため、相手先装置50が、例えば、符号化情報テーブルに符号化方式が登録された時点から、異なるFAX装置に変更された場合であっても、受信可能な符号化画像データを、好適に送信することができる。S608において判断の条件を、「低圧縮率」としているのは、高圧縮率の符号化方式の符号化画像データが受信できる場合、それより低圧縮率の符号化方式の符号化画像データは、受信できることに基づくものである。
【0049】
<変形例>
(1)上記では、図4に示すFAX送信処理のS116で、MMRで符号化し、MMR形式の符号化画像データを生成することとした。この他、S116での符号化方式は、MR又はMHとしてもよい。S116での符号化方式を、MR又はMHとした場合、図4のS120は、MR又はMHに基づき、判断される。S116での符号化方式がMRである場合、図4のS122では、MR形式の符号化画像データが、DISに含まれる受信機能力情報によって特定された符号化方式に従い、MMR又はMH形式の符号化画像データに再符号化され、上記同様、相手先装置50に送信される。S116での符号化方式がMHである場合、図4のS122では、MH形式の符号化画像データが、DISに含まれる受信機能力情報によって特定された符号化方式に従い、MMR又はMR形式の符号化画像データに再符号化され、上記同様、相手先装置50に送信される。
【0050】
(2)上記では、FAX装置10が、第一種モード処理(図5参照)、第二種モード処理(図7等参照)及び相手先対応処理(図10参照)を、実行する構成とした。この他、これら各処理の少なくとも1つ、例えば、第一種モード処理を実行せず、第二種モード処理を実行するFAX装置としてもよい。この場合、相手先対応処理の実行の可否については、諸条件の下、決定される。第一種モード処理が実行されない場合、上述した動作モード(第一種のモード、第二種のモード)に関する設定は、省略される。
【符号の説明】
【0051】
3 次世代ネットワーク網(NGN網)、 5 公衆電話交換回線網(PSTN)
10 ファクシミリ装置、 12 表示部、 14 操作部、 16 読取部
18 印刷部、 20 ネットワークインターフェース(ネットワークI/F)
22 PSTNインターフェース(PSTN I/F)、 24 計時部
26 バスライン、 30 CPU、 32 プログラムROM、 34 RAM
36 フラッシュROM
50 ファクシミリ装置(相手先装置)、 80 SIPサーバ、 90 交換機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯域確保型のIPネットワークに接続された相手先装置に、読み取られた原稿に対応する画像データを符号化した符号化画像データを、前記IPネットワークを介してファクシミリ送信するファクシミリ装置であって、
原稿を読み取る読取部と、
前記読取部で読み取られた原稿に対応する画像データから、第二の圧縮率より圧縮率が低い第一の圧縮率の第一種の符号化方式で符号化された第一種の符号化画像データと、前記第二の圧縮率の第二種の符号化方式で符号化された第二種の符号化画像データと、を生成する生成部と、
前記生成部で生成された、第一種の符号化画像データ及び第二種の符号化画像データを記憶する第一記憶部と、
前記生成部で第一種の符号化画像データが生成された場合、第一種の符号化画像データを前記第一記憶部に記憶し、前記生成部で第二種の符号化画像データが生成された場合、第二種の符号化画像データを前記第一記憶部に記憶する、記憶制御部と、
前記IPネットワークに接続される通信部と、
前記通信部を制御する通信制御部と、
相手先装置に対応する相手先情報と、相手先装置が受信できる符号化画像データの符号化方式として、前記第一種の符号化方式又は前記第二種の符号化方式と、を関連付けた符号化情報を記憶する第二記憶部と、
ファクシミリ送信に用いる通信帯域を、第二の通信帯域より高速である第一の通信帯域、又は、前記第二の通信帯域の何れかに設定する帯域設定部と、
前記第二記憶部に記憶された前記符号化情報に従い、ファクシミリ送信のために前記ファクシミリ装置に入力された入力済みの相手先情報に、前記第一種の符号化方式又は前記第二種の符号化方式が、関連付けられているかについて判断する第一判断部と、を備え、
前記生成部は、前記第一判断部で、前記入力済みの相手先情報に、何れの符号化方式も関連付けられていないと判断された第一の場合、第一種の符号化画像データを生成し、
前記帯域設定部は、前記第一の場合、前記通信帯域を、前記第一の通信帯域に設定し、
前記通信制御部は、前記第一の場合、前記通信部を制御し、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置に、前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶された第一種の符号化画像データを、前記帯域設定部で設定された前記第一の通信帯域で、ファクシミリ送信する、ファクシミリ装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記第一判断部で、前記入力済みの相手先情報に、前記第一種の符号化方式又は前記第二種の符号化方式が関連付けられていると判断された第二の場合、前記入力済みの相手先情報に関連付けられた前記第一種の符号化方式又は前記第二種の符号化方式で、符号化された第一種の符号化画像データ又は第二種の符号化画像データを生成し、
前記帯域設定部は、前記第二の場合、前記通信帯域を、前記第一の通信帯域に設定し、
前記通信制御部は、前記第二の場合、前記通信部を制御し、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置に、前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶された第一種の符号化画像データ又は第二種の符号化画像データを、前記帯域設定部で設定された前記第一の通信帯域で、ファクシミリ送信する、請求項1に記載のファクシミリ装置。
【請求項3】
前記ファクシミリ装置は、
前記生成部が、前記読取部で読み取られた原稿に対応する画像データから、第二種の符号化画像データを生成するのに要する第一時間を計測する計時部と、
前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶された第二種の符号化画像データのデータ容量を取得する容量取得部と、
前記計時部で計測された第一時間と、第二種の符号化画像データを復号し、復号された画像データから第一種の符号化画像データを生成するのに要する第二時間と、の対応を定めた対応時間情報を記憶する第三記憶部と、
前記第三記憶部に記憶された前記対応時間情報に従い、前記計時部で計測された第一時間に対応する第二時間を取得する時間取得部と、
前記容量取得部で取得されたデータ容量と、前記時間取得部で取得された第二時間と、から、基準通信速度を取得する速度取得部と、
前記通信制御部によって前記通信部で受信された能力信号であって、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置からの能力信号から、相手先装置が受信できる符号化画像データの符号化方式のための受信機能力情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部で取得された受信機能力情報に従い、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置が受信できる符号化画像データの符号化方式について判断する第二判断部と、
前記ファクシミリ装置の動作モードを、第一種のモード、又は、第二種のモードの何れかに設定するモード設定部と、を、さらに備え、
前記生成部は、
前記第一判断部で、前記入力済みの相手先情報に、何れの符号化方式も関連付けられていないと判断され、且つ、前記ファクシミリ装置の動作モードが、前記モード設定部にて、第一種のモードに設定されている第三の場合、第一種の符号化画像データを生成し、
前記第一判断部で、前記入力済みの相手先情報に、何れの符号化方式も関連付けられていないと判断され、且つ、前記ファクシミリ装置の動作モードが、前記モード設定部にて、第二種のモードに設定されている第四の場合、第二種の符号化画像データを生成し、
第二種の符号化画像データが、前記第四の場合において前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶され、且つ、前記第二判断部で、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置が、前記第二種の符号化方式に対応しておらず、前記第一種の符号化方式に対応していると判断された第五の場合、前記第一記憶部に記憶された第二種の符号化画像データを復号し、復号された画像データから第一種の符号化画像データを生成し、
前記帯域設定部は、
前記第三の場合、前記通信帯域を、前記第一の通信帯域に設定し、
前記第五の場合、前記通信帯域を、前記速度取得部で取得された前記基準通信速度以下又は未満である、前記第一の通信帯域又は前記第二の通信帯域に設定し、
前記通信制御部は、
前記第三の場合、前記通信部を制御し、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置に、前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶された第一種の符号化画像データを、前記帯域設定部で設定された前記第一の通信帯域で、ファクシミリ送信し、
前記第五の場合、前記通信部を制御し、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置に、前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶された第一種の符号化画像データを、前記帯域設定部で設定された前記第一の通信帯域又は前記第二の通信帯域で、ファクシミリ送信する、請求項1又は請求項2に記載のファクシミリ装置。
【請求項4】
帯域確保型のIPネットワークに接続された相手先装置に、読み取られた原稿に対応する画像データを符号化した符号化画像データを、前記IPネットワークを介してファクシミリ送信するファクシミリ装置であって、
原稿を読み取る読取部と、
前記読取部で読み取られた原稿に対応する画像データから、第二の圧縮率より圧縮率が低い第一の圧縮率の第一種の符号化方式で符号化された第一種の符号化画像データと、前記第二の圧縮率の第二種の符号化方式で符号化された第二種の符号化画像データと、を生成する生成部と、
前記生成部で生成された、第一種の符号化画像データ及び第二種の符号化画像データを記憶する第一記憶部と、
前記生成部で第一種の符号化画像データが生成された場合、第一種の符号化画像データを前記第一記憶部に記憶し、前記生成部で第二種の符号化画像データが生成された場合、第二種の符号化画像データを前記第一記憶部に記憶する、記憶制御部と、
前記IPネットワークに接続される通信部と、
前記通信部を制御する通信制御部と、
相手先装置に対応する相手先情報と、相手先装置が受信できる符号化画像データの符号化方式として、前記第一種の符号化方式又は前記第二種の符号化方式と、を関連付けた符号化情報を記憶する第二記憶部と、
ファクシミリ送信に用いる通信帯域を、第二の通信帯域より高速である第一の通信帯域、又は、前記第二の通信帯域の何れかに設定する帯域設定部と、
前記第二記憶部に記憶された前記符号化情報に従い、ファクシミリ送信のために前記ファクシミリ装置に入力された入力済みの相手先情報に、前記第一種の符号化方式又は前記第二種の符号化方式が、関連付けられているかについて判断する第一判断部と、
前記生成部が、前記読取部で読み取られた原稿に対応する画像データから、第二種の符号化画像データを生成するのに要する第一時間を計測する計時部と、
前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶された第二種の符号化画像データのデータ容量を取得する容量取得部と、
前記計時部で計測された第一時間と、第二種の符号化画像データを復号し、復号された画像データから第一種の符号化画像データを生成するのに要する第二時間と、の対応を定めた対応時間情報を記憶する第三記憶部と、
前記第三記憶部に記憶された前記対応時間情報に従い、前記計時部で計測された第一時間に対応する第二時間を取得する時間取得部と、
前記容量取得部で取得されたデータ容量と、前記時間取得部で取得された第二時間と、から、基準通信速度を取得する速度取得部と、
前記通信制御部によって前記通信部で受信された能力信号であって、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置からの能力信号から、相手先装置が受信できる符号化画像データの符号化方式のための受信機能力情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部で取得された受信機能力情報に従い、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置が受信できる符号化画像データの符号化方式について判断する第二判断部と、を備え、
前記生成部は、
前記第一判断部で、前記入力済みの相手先情報に、何れの符号化方式も関連付けられていないと判断された第一の場合、第二種の符号化画像データを生成し、
第二種の符号化画像データが、前記第一の場合において前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶され、且つ、前記第二判断部で、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置が、前記第二種の符号化方式に対応しておらず、前記第一種の符号化方式に対応していると判断された第六の場合、前記第一記憶部に記憶された第二種の符号化画像データを復号し、復号された画像データから第一種の符号化画像データを生成し、
前記帯域設定部は、前記第六の場合、前記通信帯域を、前記速度取得部で取得された前記基準通信速度以下又は未満である、前記第一の通信帯域又は前記第二の通信帯域に設定し、
前記通信制御部は、前記第六の場合、前記通信部を制御し、前記入力済みの相手先情報に対応する相手先装置に、前記生成部で生成され、前記記憶制御部にて前記第一記憶部に記憶された第一種の符号化画像データを、前記帯域設定部で設定された前記第一の通信帯域又は前記第二の通信帯域で、ファクシミリ送信する、ファクシミリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−31020(P2013−31020A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166108(P2011−166108)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】