説明

ファスナー付き袋体

【課題】物品収納空間ごとに収納物品の円滑な入れ出し作業を簡便に実現できると共に、物品収納空間ごとに収納物品を区分け管理できるファスナー付き袋体を提供すること。
【解決手段】仕切り壁110が、ファスナー120との間に、物品収納時に隣り合う物品収納空間S1〜S4における収納物品T1〜T8の相互移動を阻止するとともに収納物品取り出し時に物品収納空間S1〜S4の奥行きを縮小する間口拡大用間隙(幅H)を介して設けられ、収納物品T1〜T8取り出し時に取り出し対象となる物品収納空間S1〜S4の開口を拡大させるとともに次期取り出し対象となる収納物品の不用意な外部飛び出しを阻止するスライダー130の一時停止位置141を示す一時停止位置表示部140が、ファスナー120に沿って各区画ごとに袋本体101に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切り壁を有するファスナー付き袋体に関し、特に、利用者が、区画された物品収納空間ごとに収納されている物品を所定時間間隔を置いて順次使い切って使用する形態で用いられるファスナー付き袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数個の収納袋を一体に連結して一枚のシート状体に形成した折畳可能な整理用収納袋が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、大小異にする2種類の単体袋体の頂部の開口部にそれぞれファスナーとこのファスナーを開閉するスライダーとを備えたファスナー付き合成樹脂製袋が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、咬合具付合成樹脂製袋の数枚を1組とした連続袋が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
さらに、袋体などの開口部を大きく開くことなく収納物をスムーズに取り出しでき、密封性のあるスライドファスナ付き合成樹脂製袋が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】登録実用新案第3010218号公報
【特許文献2】特許第2816803号明細書
【特許文献3】特公昭46−15346号公報
【特許文献4】特開2000−142733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した特許文献1に示す従来の整理用収納袋では、それぞれの収納袋ごとに開閉用のファスナーとスライダーとが付属しており、スライダーの付属数分だけ製造コストが高価となり、また、それぞれの収納袋を開口して収納物品などを取り出す際に開閉用ファスナーの存在などが開口操作の障害となって十分な開口状態を確保することができないという問題があった。
【0007】
また、前述した特許文献2に示す従来のファスナー付き合成樹脂製袋では、大小異にする2種類の単体袋体を表裏方向で重ね合わせているため、利用者の使用したい収納物品が表裏いずれの単体袋体に収納されているのかを一目で確認することが困難であり、しかも、それぞれ別個に摺動する2個のスライダーを必要として2種類の単体袋体に対して一連の開口操作を達成することができないという問題があった。
【0008】
また、前述した特許文献3に示す従来の連続袋では、咬合具と熔接部との交点を押潰し軸によって平たく押し潰す必要があるという製造上の厄介な問題があった。
【0009】
さらに、前述した特許文献4に示す従来のスライドファスナ付き合成樹脂製袋では、スライドさせたスライドファスナの貫通孔を介して袋体の開口部を開くように形成しているため、複雑なスライドファスナ構造であり、収納物品を各収納用空間ごとに出し入れするための作業が困難であるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上述したような課題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、ファスナー上の一時停止位置にスライダーを確実に一時停止させて物品収納空間ごとに収納物品の円滑な入れ出し作業を簡便に実現できるとともに隣接する物品収納空間への収納物品の移動を回避して物品収納空間ごとに収納物品を区分け管理できるファスナー付き袋体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本請求項1に係る発明は、袋体の開口端縁に沿って設けた一連のファスナーと、該ファスナーと係合してファスナーを開閉するスライダーと、該ファスナーに沿って袋体内を区画して複数の物品収納空間を形成する仕切り壁とを備えてなるファスナー付き袋体において、前記仕切り壁が、前記ファスナーとの間に、物品収納時に隣り合う物品収納空間における収納物品の相互移動を阻止するとともに収納物品取り出し時に物品収納空間の奥行きを縮小する間口拡大用間隙を介して設けられ、前記収納物品取り出し時に取り出し対象となる物品収納空間の間口を拡大させるとともに次期取り出し対象となる収納物品の不用意な外部飛び出しを阻止するスライダーの一時停止位置を示す一時停止位置表示部が、前記ファスナーに沿って各区画ごとに設けられていることによって、上記目的を達成するものである。
【0012】
また、本請求項2に係る発明のファスナー付き袋体は、本請求項1の発明の構成に加えて、前記一時停止位置表示部が、一時停止位置におけるスライダーの後端と仕切り壁の上端とを結ぶ直線と前記仕切り壁の上端からファスナーに向けた垂直延長線とで形成される挟角をαと規定したとき、α=45°の条件を満足するように、次期取り出し対象となる区画内に配置されていることによって、上記目的を達成するものである。
【0013】
さらに、本請求項3に係る発明のファスナー付き袋体は、本請求項1または本請求項2の発明の構成に加えて、前記スライダーが、電車、バス、自動車のような乗物や、犬、猫、ウサギのような動物をデザイン化した形態を備えていることによって、上記目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のファスナー付き袋体は、袋体の開口端縁に沿って設けた一連のファスナーと、該ファスナーと係合してファスナーを開閉するスライダーとこのファスナーに沿って袋体内を区画して複数の物品収納空間を形成する仕切り壁とを備えることにより、物品収納空間ごとに収納物品を区分け管理できるとともに、以下のような本発明に特有の構成を備えて格別の効果を奏することができる。
【0015】
すなわち、本請求項1に係る発明のファスナー付き袋体によれば、前記仕切り壁が、前記ファスナーとの間に、物品収納時に隣り合う物品収納空間における収納物品の相互移動を阻止するとともに収納物品取り出し時に物品収納空間の奥行きを縮小する間口拡大用間隙を介して設けられていることにより、各物品収納空間における収納物品の取り出し間口が仕切り壁の設置間隔幅より広がり且つ各物品収納空間の奥行きが縮小して物品収納空間ごとの収納物品の円滑な入れ出し作業が簡便に実現できるとともに隣接する物品収納空間への収納物品の移動を回避して物品収納空間ごとに収納物品を確実に区分け管理でき、しかも、スライダーが袋体の開口端縁に沿って設けた一連のファスナー上を円滑に摺動走行できる。
そして、スライダーの一時停止位置を示す一時停止位置表示部がファスナーに沿って各区画ごとに設けられていることによって、収納物品取り出し時に取り出し対象となる物品収納空間の間口を拡大させるとともに次期取り出し対象となる収納物品の不用意な外部飛び出しを阻止できる。
【0016】
また、本請求項2に係る発明のファスナー付き袋体は、本請求項1の発明の構成に加えて、前記一時停止位置表示部が、一時停止位置におけるスライダーの後端と仕切り壁の上端とを結ぶ直線と前記仕切り壁の上端からファスナーに向けた垂直延長線とで形成される挟角をαと規定したとき、α=45°の条件を満足するように、次期取り出し対象となる区画内に配置されているため、本請求項1の発明が奏する効果に加えて、利用者が一時停止位置にスライダーを停止させた場合に、次期取り出し対象となる区画の物品収納空間内に収納されている収納物品がそのまま外部あるいは隣接する物品収納空間へ移動を回避して物品収納空間ごとに収納物品をより一段と確実に区分け管理できる。
【0017】
また、本請求項3に係る発明のファスナー付き袋体は、本請求項1または本請求項2の発明の構成に加えて、前記スライダーが、電車、バス、自動車のような乗物や、犬、猫、ウサギのような動物をデザイン化した形態を備えているため、本請求項1または本請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、興趣を持たせて、更なる遊び心を付与して子供や女性等に好まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
まず、図1乃至図3は、本発明の一実施例であるファスナー付き袋体を示すものであって、図1は、ファスナー付き袋体の全体構成図であり、図2は、スライダーの停止位置を示す説明図であり、図3は、ファスナー付き袋体の使用態様図である。
【0019】
図1に示す本発明の一実施例であるファスナー付き袋体100は、粒状やカプセル等のサプリメントや薬等の物品を収納するものであって、特に、利用者が、区画された物品収納空間ごとに収納されているサプリメントや薬を所定時間間隔を置いて順次使い切って使用する形態で用いられるファスナー付き袋体に適用されるものである。
【0020】
本実施例のファスナー付き袋体100は、袋本体101の開口端縁Mに沿って設けた一連のファスナー120と、このファスナー120と係合してファスナー120を一通方向で開閉するスライダー130と、前記ファスナー120に沿って袋本体101内を区画して複数の物品収納空間Sをそれぞれ形成する仕切り壁110(110A〜110C)とを備えている。
【0021】
そして、前記仕切り壁110(110A〜110C)は、ファスナー120との間に、物品収納時に隣り合う物品収納空間(S1〜S4)における収納物品(T1〜T8)の相互移動を阻止するとともに収納物品取り出し時に物品収納空間(S1〜S4)の奥行きを縮小する間口拡大用間隙(幅H)を介して設けられている。
【0022】
さらに、本実施例のファスナー付き袋体100には、収納物品(T1〜T8)取り出し時に取り出し対象となる物品収納空間(S1〜S4)の開口を拡大させるとともに次期取り出し対象となる収納物品の不用意な外部飛び出しを阻止するスライダー130の一時停止位置141を示す一時停止位置表示部140が、ファスナー120に沿って各物品収納空間(S1〜S4)を形成する各区画ごとに袋本体101に設けられている。
【0023】
また、仕切り壁110(110A〜110C)が、ファスナー120との間に、前述した収納物品の相互移動を阻止するばかりでなく、次期取り出し対象となる収納物品(T3〜T8)の不用意な外部飛び出しを阻止するような前述の間口拡大用間隙(幅H)を介して設けられ、一時停止位置表示部140(140B〜140D)が、一時停止位置におけるスライダーの後端と仕切り壁の上端とを結ぶ直線と前記仕切り壁の上端からファスナーに向けた垂直延長線とで形成される挟角をαと規定したとき、0°<α≦45°の条件、より好ましくは、15°≦α≦45°の条件を満足するように、次期取り出し対象となる区画内に配置されている。
なお、本実施例の場合には、α=45°の条件を満足するように、次期取り出し対象となる区画内に配置されているため、利用者が一時停止位置にスライダーを停止させた場合に、次期取り出し対象となる区画の物品収納空間内に収納されている収納物品がそのまま外部あるいは隣接する物品収納空間へ移動を回避するようになっている。
【0024】
また、仕切り壁110(110A〜110C)が、ファスナー120との間に、前述の収納物品の相互移動を阻止し、次期取り出し対象となる収納物品の不用意な外部飛び出しを阻止するばかりでなく、隣り合う区画(S1〜S4)間を移行するスライダー130の走行障害を回避する前述の間口拡大用間隙(幅H)を介して設けられている。
【0025】
ところで、前述した間口拡大用間隙の幅Hは、収納物品の相互移動を阻止し、かつ、収納物品取り出し時に物品収納空間の奥行きを縮小して収納物品を取り出し易くするとともに、次期取り出し対象となる収納物品の不用意な外部飛び出しを阻止するため、収納物品のサイズ及び形状、各収納部の壁間の幅、仕切り壁の幅等に応じて適宜決定される。
【0026】
なお、図1に示す実施例では、例えば、シール等により実現される表示部140に、スライダー停止位置141を示す内容として、スライダー130の横幅と同じ間隔の停止線と、この停止線に合せてスライダーを停止させることを利用者に通知する為の「スライダー停止位置」という文字情報が印刷されている。
また、その停止線の間隔は、前記スライダー130の横幅と同じ間隔に限定されるものではなく、スライダー130の横幅より広い間隔に設定しても良い。ただし、その場合はその停止線の範囲内に位置させたスライダーの後端が、前述した0°<α≦45°の条件、より好ましくは15°≦α≦45°の条件を満足するものであって、利用者がこの範囲内にスライダーを一時停止させた場合に、前述の収納物品の相互移動を阻止し、次期取り出し対象となる収納物品の不用意な外部飛び出しが阻止されるようになっているものである。
【0027】
また、前述の表示部140(140A〜140D)は、好ましい実施形態の例として、単にスライダー130の停止位置を示すだけでなく、その表示部が備えられている物品収納空間に収納されている物品の使用時期142(142A〜142D)を示す役割を更に兼ねている。
なお、図1に示す実施例では、物品収納空間S1に収納されている物品が「朝食前」(142A)に使用されることを、物品収納空間S2に収納されている物品が「朝食後」(142B)に使用されることを、物品収納空間S3に収納されている物品が「昼食後」(142C)に使用されることを、物品収納空間S4に収納されている物品が「夜食後」(142D)に使用されることをそれぞれ表示するために、前述したようなシール等の各表示部(140A〜140D)ごとに「朝食前」,「朝食後」,「昼食後」,「夜食後」という文字情報が更に印刷されている。
このように、表示部140が、スライダー停止位置と物品の使用時期の両方を表示することにより、スライダー停止位置を明示する表示部以外の箇所に、物品の使用時期が明示されている構成に比べ、はるかに表示内容が注意喚起される。
【0028】
また、具体的に、表示部140A〜140Dは、図2に示すように、スライダー130のファスナー120を開ける開放方向Aに対する仕切り壁110の手前上端縁部(点P3)からファスナー120に延長した垂直延長線(P3−P1線)と、仕切り壁110の手前上端縁部(点P3)から開放方向Aに対するスライダー後方側面のファスナー120の雌雄かみ合い部121と交差する箇所(点P4)とを結ぶ直線(P3−P4線)との内角αが、α=45°の条件を満足するようにスライダー後方側面部を配置せしめるスライダー停止位置141を示している。
実際に、スライダー130を開放方向Aに押しやろうとする力(以下、推進力という)は、隣接の物品収納空間から物品を出し入れする際に該物品収納空間の間口を広げようとすることにより発生するものである。この為、推進力の発生源は、P4よりもP3の近くに位置しており、その結果、該推進力は、P4よりもP3により伝わりやすく、この為、仕切り壁110で推進力が吸収されることになる。また、スライダー130に作用する力は、P4からP1方向にいくほど大きくなる。
すなわち、そのような点を考慮して、前述したようなスライダー停止位置141を示す表示部140を設けることで、利用者が、前述の内角α=45°の条件を満足するようにスライダー後方側面部を配置させるようにスライダーを停止させていれば、仕切り壁110で前述の推進力がほとんど全て吸収されることになり、これにより、口が開放されている隣接の物品収納空間から収納されている物品を取り出す作業を行ったとしても、スライダー130がファスナーの開放方向Aに押しやられることがない。
なお、前述の点P4は、厳密には、口が開放されている隣接の物品収納空間から収納されている物品を取り出す際のファスナーを開けようとする力をスライダー130に伝達する雌雄かみ合い部の所定箇所となる。
【0029】
また、図2に示すように、前述した間口拡大用間隙の幅Hは、P4,P5,P2により形作られる三角形(トライアングル)が収納物品の移動を拘束するようにP3とP1間の間隙を決定することで設定されている。これにより、区画間の収納物品の相互移動を阻止し、かつ、収納物品取り出し時に物品収納空間の奥行きを縮小して収納物品を取り出し易くするとともに、次期取り出し対象となる収納物品の不用意な外部飛び出しを阻止することができる。
そして、前記仕切り壁110は、図1に示すようにファスナー120が接着部122によって袋本体101に接着されている場合は、そのファスナー120の取り付け阻害を阻止し、また、ファスナー120が袋本体101に直接一体成形されている場合(図示省略)を含め、スライダー130の走行阻害を阻止する間口拡大用間隙の幅Hを形成するように備えられ、前記間口拡大用間隙の幅Hは、収納する物品のサイズ及び形状、各収納部の仕切り壁間の幅、仕切り壁の幅等等に応じて適宜決定される。
【0030】
なお、前記仕切り壁110については、接着材等により袋体の内側を接着にて形成しても良いし、袋体を熱で溶かして溶着(ヒートシール)により形成するようにしても良い。
また、袋本体101については、例えば、透明、不透明を問わず、表裏一体の樹脂フィルムが端部102A,端部102Bで溶着(ヒートシール)され矩形形状を有するように形成されている。また、ファスナー120及びスライダー130は、例えば、合成樹脂材料で形成される。
さらに、開口端縁Mは本実施例のように、袋本体101のトップに持ってくる形でファスナー120を一体化しているが、袋本体101の中間部にファスナー120を一体化した開口端縁Mを設けても良い。
【0031】
このようにして得られた本実施例のファスナー付き袋体100は、各物品収納空間の間口が仕切り壁同士の間隔幅より広がり、各物品収納空間の奥行きを縮小させることによって収納物品を取り出し易くなると共に、各物品収納空間内の収納物品が相互に他の物品収納空間に移動するのを防止でき、かつ、次期取り出し対象となる収納物品の不用意な外部飛び出しを防止することができる。更に、スライダー停止位置の確認及び表示部の表示内容の確認によって収納物品の取り扱いに間違いを生じることがなくなる。
【0032】
そこで、図3に示すような収納物品が飲み薬である場合について本実施例のファスナー付き袋体100における使用態様を詳しく説明する。
まず、利用者は、朝食を食べた後に、図3に示すようなスライダー停止状態のファスナー付き袋体100を見て、スライダー130の停止位置を確認する。このとき、物品収納空間S2の表示部140Bのスライダー停止位置141Bに合せてスライダー130が停止しているので、利用者は、次に服用する飲み薬が朝食後用の飲み薬(T3,T4)であることを確認することができる。
つぎに、利用者は、物品収納空間S2に収納されている朝食後用の飲み薬T3及び飲み薬T4を取り出す為に、スライダー130を次の停止位置に移動して停止させる。すなわち、利用者は、スライダー130を物品収納空間S3の表示部140Cのスライダー停止位置141Cに合せて停止させる。この時、利用者は次の服薬が昼食後であることを確認することができる。その後、利用者は、物品収納空間S2の開放された口(間口)から飲み薬T3及び飲み薬T4を取り出す。
それ以降も、利用者は、昼食後にスライダー130の停止位置を確認して前述と同様の作業を行うことで、所望の昼食後用の飲み薬(T5,T6)を取り出すことができ、この時、利用者は次の服薬が夜食後であることを確認することができる。
このようにして確認及び飲み薬の取り出し作業を利用者が繰り返し行うことにより、薬の飲み忘れや服薬時期の誤りによる誤飲を防止することができる。
また、前述の確認及び服薬の繰り返し作業において、開放されていない他の物品収納空間では、ファスナー120が閉じた状態であるので、収納されている薬を間違って取り出して飲んでしまうという事態を防ぐことができる。
さらに、前述の確認及び服薬の繰り返し作業において、例えば、朝食後の飲み薬を取り出そうとして口を広げることによって、後段側に隣接する物品収納空間S3部分のファスナーが開いてしまうことが懸念されるが、ファスナー120を開こうとする力は、仕切り壁110Bで遮断されるため、物品収納空間S3の表示部140Cのスライダー停止位置に合せて停止しているスライダー130は動かず停止したままであり、人がスライダー130を意識して動かさなければファスナー120が開ききってしまうことはない。
【0033】
また、前述したような実施例のファスナー付き袋体100では、挟角α=45°の条件を満足するようにスライダー後方側面部を配置せしめるスライダー停止位置141を明示する表示部140を設けたが、本発明における挟角αは45°に限定されるものでなく、スライダーが前述の推進力で押し出され、かつ、収納物品の取り出し易さの効果が小さくなるものであれば、前述した挟角αが、0<α≦45°の条件を満足するようにスライダー後方側面部を配置せしめるスライダー停止位置を示した表示部140を設けるようにしても良い。換言すると、挟角がα≦0°の場合には、収納物品の取り出し易さがなくなり、挟角がα>45°の場合には、収納物品が外部に飛び出してしまう恐れがある。要するに、特許文献1に示すような従来の収納袋ごとにスライダーを備えた整理用収納袋では各物品収納袋の開口端にスライダーが停止することになるので、そのスライダーの横幅分までも考慮すると、本実施例のファスナー付き袋体100の方が、はるかに収納物品を取り出し易くなっている。
例えば、仕切り壁110が幅の狭い線状タイプである場合には、α=15°とすることで、スライダー130が停止位置で停止している場合に前述のP4,P5,P2により形作られる三角形(トライアングル)が収納物品の移動を拘束し、外部に収納物品が飛び出すのを防ぐことができる。また、仕切り壁110が幅の広い幅太タイプである場合には、α=45°とすることで、収納物品の取り出し易さを最大限に発揮することができる。
【0034】
なお、近年では、利用者による入力情報に基づき個々の症状に合せてサプリメントを調合して販売する自動販売機が提供されつつある。このような自動販売機に本発明のファスナー付き袋体を適用した場合、ファスナー付き袋体丸ごと使い切りで用いられる形態を想定した場合を考慮し、前述した実施形態のように、スライダー停止位置と合せて使用時期を示す表示部を用意するのではなく、スライダー停止位置だけ示す表示部を用意するとともに、「朝」、「昼」、「夜」等の使用時期を示した紙媒体などを各物品収納空間ごとに薬と一緒に封入するようにしても良い。
【0035】
また、前述したような実施例のファスナー付き袋体100では、仕切り壁が3つある場合を例示したが、これに限定されず、増減あるいは仕切り壁を1つだけ有している構成にしても良い。
【0036】
さらに、前述したスライダー停止位置を示す表示部140を電車やバス等のステーションをイメージする形に表示することにより、興趣を持たせることができる。さらに、表示部140だけでなく、前述したスライダー130を電車やバスを模倣した形に成形することにより、より一層興趣を持たせることができる。
また、前述のようにスライダー130を電車やバスのような乗物以外に、犬、猫、ウサギのような動物をデザイン化したものとしたり、収納される収納物品に関する情報表示もデザイン化したものとしてもよい。例えば、収納物品が薬である場合には、時計表示などが考えられる。これにより、スライダーのステーションという遊び心に加えて、更なる遊び心並びに癒し効果を付与することができる。特に、子供や女性等に好まれ、販売促進を図ることができる。
【0037】
また、本実施例のファスナー付き袋体100では、表示部を平面的なシール等にて実現する場合について述べたが、本発明のファスナー付き袋体はこれに限定されず、例えば、前述したような表示内容を示す表示部を直接袋本体に印刷するようにしても良い。また、その他、袋本体の外表面上に立体的な突起部を形成し、この突起部によりスライダー停止位置及び収納物品の使用時期を示すようにしても良い。
【0038】
以上のようにして得られた本実施例のファスナー付き袋体100は、ファスナー120と仕切り壁110との間に間口拡大用間隙を設けていることにより各物品収納空間の間口が壁間幅より広がり且つ各物品収納空間の奥行きが縮小して物品収納空間ごとの収納物品の入れ出し作業が容易で、特に、物品収納空間の壁間幅が従来と同じ場合に収納物品を従来と比べてはるかに取り出し易くすることができ、さらに、スライダーの一時停止位置を示す一時停止位置表示部に合わせて停止しているスライダーの停止位置を利用者が確認するだけで、使用時期ごとの収納物品の確認が容易に行えて収納物の誤使用を防ぐことができることにより利用者の使い勝手を向上することができる。
また、一時停止位置表示部が、一時停止位置におけるスライダーの後端と仕切り壁の上端とを結ぶ直線と仕切り壁の上端からファスナーに向けた垂直延長線とで形成される角度をαと規定したとき、α=45°の条件を満足するように、次期取り出し対象となる区画内に配置されているため、利用者が、スライダー停止位置に合わせてスライダーを停止させることにより、スライダー停止位置前の物品収納空間から物品を取り出す際にスライダーがファスナー開放方向に押し出されることを防ぐとともに、スライダー停止位置前の物品収納空間から最大限物品を取り出し易くなる。
また、仕切り壁が、ファスナーとの間に、隣り合う区画間を移行するスライダーの走行障害を回避する間口拡大用間隙を介して設けられているため、仕切り壁によりスライダーの走行が阻害されるのを防ぎ、スライダー走行性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例であるファスナー付き袋体の全体構成図。
【図2】スライダーの停止位置を示す説明図
【図3】ファスナー付き袋体の使用態様図。
【符号の説明】
【0040】
100…ファスナー付き袋体
101…袋本体
102(102A,102B)…端部
110(110A〜110C)…仕切り壁
120…ファスナー
121…雌雄かみ合い部
122…接着部
130…スライダー
140(140A〜140D)…表示部
141(141A〜141D)…スライダー停止位置を示す表示内容
142(142A〜142D)…物品の使用時期を示す表示内容
S(S1〜S4)…物品収納空間
T(T1〜T8)…物品
M…開口端縁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体の開口端縁に沿って設けた一連のファスナーと、該ファスナーと係合してファスナーを開閉するスライダーと、該ファスナーに沿って袋体内を区画して複数の物品収納空間を形成する仕切り壁とを備えてなるファスナー付き袋体において、
前記仕切り壁が、前記ファスナーとの間に、物品収納時に隣り合う物品収納空間における収納物品の相互移動を阻止するとともに収納物品取り出し時に物品収納空間の奥行きを縮小する間口拡大用間隙を介して設けられ、
前記収納物品取り出し時に取り出し対象となる物品収納空間の間口を拡大させるとともに次期取り出し対象となる収納物品の不用意な外部飛び出しを阻止するスライダーの一時停止位置を示す一時停止位置表示部が、前記ファスナーに沿って各区画ごとに設けられていることを特徴とするファスナー付き袋体。
【請求項2】
前記一時停止位置表示部が、一時停止位置におけるスライダーの後端と仕切り壁の上端とを結ぶ直線と前記仕切り壁の上端からファスナーに向けた垂直延長線とで形成される挟角をαと規定したとき、α=45°の条件を満足するように、次期取り出し対象となる区画内に配置されていることを特徴とする請求項1記載のファスナー付き袋体。
【請求項3】
前記スライダーが、電車、バス、自動車のような乗物や、犬、猫、ウサギのような動物をデザイン化した形態を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のファスナー付き袋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−199311(P2006−199311A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10552(P2005−10552)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000147316)株式会社生産日本社 (34)
【Fターム(参考)】