説明

ファン式害虫防除装置

【課題】装置本体に複数の抵抗素子や選択回路を設けることなく、電池寿命と薬剤の持続時間とを対応させることができるようにすることで、装置を全体的にコンパクトにするとともに低コストにし、しかも、回路構成をシンプルにして製造工数の低減を図るとともに不具合が起こり難くする。
【解決手段】カートリッジ3に、薬剤保持体20と、電池21の寿命が害虫防除成分の持続時間と対応するように該電池21を消耗させるための抵抗素子22とを設ける。抵抗素子22は、カートリッジ3が装置本体へ装着された状態で、モーター及び電池21と共に電気回路を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンを内蔵した害虫防除装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の害虫防除装置として、害虫防除成分を含む薬剤を保持した薬剤保持体と、薬剤保持体が着脱可能にセットされる装置本体と備え、薬剤保持体の寿命が尽きたときに交換できるように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の装置本体には、ファン、ファンを駆動するモーター、及び電池が内蔵されている。そして、電池の電力によってモーターを作動させ、ファンにより薬剤保持体に送風して害虫防除成分を空気中に拡散させるようになっている。
【0004】
また、特許文献1の装置本体は、電池の消耗度合いを変えるための2種類の抵抗素子と、これら抵抗素子のうち、1つを選択するためのスイッチが設けられた選択回路とを備えている。そして、薬剤の持続時間が短い短時間タイプの薬剤保持体が装置本体にセットされた場合には、その持続時間に対応するように電池を消耗させる抵抗素子を選択回路によって選択し、また、持続時間が長い長時間タイプの薬剤保持体が装置本体にセットされた場合には、その時間と対応するように電池を消耗させる抵抗素子を選択回路によって選択するようになっている。これにより、電池の寿命と害虫防除成分の持続時間とを略一致させることができ、例えば薬剤が無いのにファンだけが作動しているといった空運転を回避でき、ファンの作動中(装置の作動中)は常に害虫の防除能力を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−142054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ファン式害虫防除装置はコンパクト化の要求が強く、特に、近年、需要が高まっている携帯型の装置ではその要求はより一層強いものとなる。
【0007】
しかしながら、特許文献1の害虫防除装置では、装置本体に2種類の抵抗素子と、スイッチを有する選択回路とを内蔵しているので、害虫防除装置の大型化を招く。
【0008】
また、上述のように害虫防除装置の作動時には、一方の抵抗素子のみを使用し、他方の抵抗素子は使用していない。よって、2種類の抵抗素子を装置本体に持たせておくことはコストの面で不利である。
【0009】
さらに、2つの抵抗素子をスイッチで選択するように構成された選択回路は複雑であるため、製造工数が増大するとともに、不具合等が起こりやすくなることも考えられる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電池を備えたファン式害虫防除装置において、装置本体に複数の抵抗素子や選択回路を設けることなく、電池寿命と薬剤の持続時間とを対応させることができるようにすることで、装置を全体的にコンパクトにするとともに低コストにし、しかも、回路構成をシンプルにして製造工数の低減を図るとともに不具合が起こり難くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、装置本体に着脱可能に取り付けられるカートリッジに、薬剤保持体と、該薬剤保持体に対応した電池寿命とするための抵抗素子とを設け、この抵抗素子を利用して電気回路を構成するようにした。
【0012】
第1の発明は、害虫防除成分を含む薬剤を保持した薬剤保持体と、上記薬剤保持体に送風するためのファンと、上記ファンを回転駆動するためのモーターと、上記モーターに電力を供給する電池とを備え、上記モーターで駆動された上記ファンにより上記薬剤保持体に送風して害虫防除成分を空気中に拡散させるように構成されたファン式害虫防除装置であって、上記薬剤保持体を有するとともに、装置本体に対し着脱可能に取り付けられるカートリッジを備え、上記カートリッジには、上記電池の寿命が害虫防除成分の持続時間と対応するように該電池を消耗させるための抵抗素子が設けられ、上記抵抗素子は、上記カートリッジが装置本体へ装着された状態で、上記モーター及び電池と共に電気回路を構成することを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、カートリッジに、害虫防除成分の持続時間と対応するように電池を消耗させるための抵抗素子を設けたので、カートリッジを交換するだけで、そのカートリッジの薬剤保持体の持続時間に対応する電池寿命とすることが可能になる。従って、複数の抵抗素子や、抵抗素子を選択するためのスイッチを有する選択回路を設けることなく、電池の寿命を薬剤保持体の持続時間に対応した寿命として空運転が行われてしまうのを回避することが可能になる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、カートリッジには、電池が収容される電池収容部が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、カートリッジを交換する際に電池も一緒に交換される。これにより、使用者が薬剤保持体のみを取り替えて、電池を取り替え忘れてしまう事態が無くなる。
【0016】
第3の発明は、第1または2の発明において、カートリッジには、薬剤保持体が収容される薬剤収容部と、抵抗素子を保持する抵抗素子保持部とが設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、薬剤保持体と、該薬剤保持体に対応した抵抗素子とをセットにしてカートリッジに容易に組み付けることが可能になる。
【0018】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、カートリッジ側の電気導通部は、該カートリッジの外面に露出するように配置され、装置本体側の電気導通部は、上記カートリッジが上記装置本体に装着された状態で該カートリッジ側の電気導通部と接触するように配置されていることを特徴とするものである。
【0019】
この構成によれば、カートリッジを装置本体に装着するだけで、カートリッジ側の導通部と装置本体側の導通部とが導通するようになる。
【0020】
第5の発明は、害虫防除成分を含む薬剤を保持した薬剤保持体に、電池で作動するモーターで駆動されたファンにより送風して害虫防除成分を空気中に拡散させるように構成されたファン式害虫防除装置に着脱可能に取り付けられるカートリッジにおいて、上記薬剤保持体と、上記電池の寿命が害虫防除成分の持続時間と対応するように該電池を消耗させるための抵抗素子とを備え、上記抵抗素子は、上記モーター及び上記電池と共に電気回路を構成することを特徴とするものである。
【0021】
この構成によれば、第1の発明と同様に、複数の抵抗素子や抵抗素子の選択回路を設けることなく、薬剤保持体に対応した電池寿命として空運転を回避することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、薬剤保持体を有するカートリッジに、電池の寿命が害虫防除成分の持続時間と対応するように該電池を消耗させるための抵抗素子を設け、カートリッジの装着状態で、抵抗素子が電気回路を構成するようにしたので、複数の抵抗素子やスイッチを有する選択回路を設けることなく、電池寿命を薬剤保持体の持続時間に対応した寿命とすることができる。これにより、害虫防除装置を全体的にコンパクトにできるとともに低コスト化を図ることができ、しかも、電気回路の構成をシンプルにして製造工数を低減できるとともに不具合の起こり難い害虫防除装置とすることができる。
【0023】
第2の発明によれば、カートリッジに電池収容部を設けたので、薬剤保持体と電池とを同時に交換できる。これにより、電池の取り替え忘れを無くすことができ、必要なときに害虫防除能力を確実に発揮させることができる。
【0024】
第3の発明によれば、カートリッジに、薬剤保持体が収容される薬剤収容部と、抵抗素子を保持する抵抗素子保持部とを設け、これらに薬剤保持体及び抵抗素子を取り付けることができるようにしたので、薬剤保持体と抵抗素子とをセットにして容易に組み付けることができ、個々のカートリッジの製造を容易に行うことができる。
【0025】
第4の発明によれば、カートリッジ側の電気導通部を露出させ、装置本体側の電気導通部を、カートリッジの装着状態でカートリッジ側の電気導通部と接触するように配置したので、カートリッジを装着するだけで、両電気導通部を導通させることができ、カートリッジの交換作業時に電気導通部同士を接続するための作業を別途行わずに済み、交換作業性を良好にできる。
【0026】
第5の発明によれば、カートリッジが、薬剤保持体と、電池の寿命が害虫防除成分の持続時間と対応するように該電池を消耗させるための抵抗素子とを備えている。これにより、第1の発明と同様に、複数の抵抗素子やスイッチを有する選択回路を設けることなく、電池寿命を薬剤保持体の持続時間に対応した寿命とすることができる。よって、装置を全体的にコンパクトにできるとともに低コスト化を図ることができ、しかも、回路をシンプルにして製造工数を低減できるとともに不具合が起こり難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態にかかる害虫防除装置の背面図である。
【図2】害虫防除装置の右側図である。
【図3】害虫防除装置の左側図である。
【図4】害虫防除装置の平面図である。
【図5】カートリッジを取り出した状態の害虫防除装置の斜視図である。
【図6】放電用抵抗素子の組付を説明するカートリッジの斜視図である。
【図7】図1におけるVII−VII線断面図である。
【図8】図1におけるVIII−VIII線断面図である。
【図9】害虫防除装置の電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態にかかるファン式害虫防除装置1を示すものである。このファン式害虫防除装置1は、図5に示すように、装置本体2と、装置本体2に着脱可能に取り付けられるカートリッジ3とを備えている。害虫防除装置1は、例えば、屋内等に置かれて使用される。
【0030】
図7及び図8に示すように、装置本体2は、ファン10と、ファン10を回転駆動するモーター11と、ファン10及びモーター11を収容するケーシング12とを備えている。
【0031】
一方、カートリッジ3は、図6に示すように、害虫防除成分を含む薬剤を保持した薬剤保持体20と、電池21と、放電用抵抗素子22とを備えている。そして、モーター11へはカートリッジ3の電池21から電力が供給され、これによりファン10が回転して薬剤保持体20に送風することにより、害虫防除成分を空気中に拡散させて害虫の防除効果が得られるようになっている。詳細は後述するが、カートリッジ3の放電用抵抗素子22によって電池21を消耗させることで、電池21の寿命が害虫防除成分の持続時間と対応するようになっている。
【0032】
(装置本体の構造)
図1〜図5に示すように、装置本体2のケーシング12は、直方体に近い形状とされており、床面等の載置面に置いたときに、上下方向に長く、正面視における幅方向(左右方向)の寸法は奥行き方向の寸法よりも長く設定されている。
【0033】
図2や図3に示すように、ケーシング12の後壁部12aは、後方へ向けて滑らかに湾曲している。また、ケーシングの前壁部12bは、前方へ向けて滑らかに湾曲している。後壁部12a及び前壁部12bを湾曲させたことで、害虫防除装置1を見る者に柔らかな印象を与えることができるようになっている。
【0034】
前壁部12bの湾曲度合いは、後壁部12aの湾曲度合いよりもきつくなっている。図1に示すように、後壁部12aには、多数の吸気孔15が形成されている。吸気孔15は、空気をケーシング12内に吸入するためのものである。この実施形態では、吸気孔15は略円形とされ、後壁部12aの上下方向中間部において左右方向に5列、上下方向に5列並ぶように形成されている。図7に示すように、吸気孔15の周壁部は、ケーシング12内へ向けて突出しており、吸気孔15の長さは後壁部12aの厚み寸法よりも長くなっている。また、吸気孔15におけるケーシング12外側の縁部は、外側へ向けて拡径するようなフレア形状とされている。前壁部12bには、吸気孔15や凹凸形状が無く、よって、表面は全体が滑らかな面で構成されてシンプルな形状となる。本害虫防除装置1の使用時には、前壁部12bが主に見えるように置かれるので、一見、害虫防除のための装置には見えず、インテリアの装飾具の一つのように見える。
【0035】
尚、吸気孔15は、円形でなくてもよく、例えば楕円、長円、角孔であってもよく、また、ケーシング12の上下に延びるスリット形状や、左右に延びるスリット形状、円を描くように延びるスリット形状、波を描くように延びるスリット形状であってもよい。また、様々な大きさの吸気孔15を形成してもよい。さらに、吸気孔15の数や配置は上記に限られるものではなく、任意に設定することが可能であり、例えば、1つであってもよい。
【0036】
ケーシング12の底壁部は略平坦に形成されている。図2や図3に示すように、ケーシング12の右壁部12c、上壁部12d、左壁部12eには、右壁部12cから上壁部12d、左壁部12eまで連続する凹部16が形成されている。凹部16は、各壁部12c〜12eの前部近傍から後部近傍に亘る所定領域に形成されている。
【0037】
凹部16の底面には、複数のリブ17がケーシング12の前後方向に略等間隔に形成されている。リブ17は、右壁部12cを下側から上方へ略直線状に延びた後、上壁部12dを右へ略直線状に延び、そして、左壁部12eを下側へ向けて略直線状に延びている。リブ17の突出方向先端面は、ケーシング12の外面と略同一面上に位置している。このようにケーシング12の右壁部12c、上壁部12d、左壁部12eまで連なる複数のリブ17を設けたことで、ケーシング12の剛性向上だけでなく、従来の害虫防除装置にはない、意匠性の向上が図られている。
【0038】
図2に示すように、右壁部12cの凹部16の底面には、複数の上側排気孔18及び下側排気孔19が形成されている。上側及び下側排気孔18,19は、凹部16の底面において、前後方向に並ぶリブ17,17の間に開口しており、リブ17に沿って上下方向に直線状に延びるスリット状をなしている。上側排気孔18は、右壁部12cの上部近傍から上下方向中央部近傍まで延びており、また、下側排気孔19は、右壁部12cの上側排気孔18よりも下方に離れた部位から該右壁部12cの下部近傍まで延びている。図3に示すように、左壁部12eにも右壁部12cと同様に上側排気孔18及び下側排気孔19が形成されている。
【0039】
尚、排気孔18,19の形状は、吸気孔15と同様に任意の形状にすることができるとともに、数や配置も任意に設定することができる。
【0040】
ケーシング12の後壁部12aの大部分は、蓋30で構成されており、図5に示すように、この蓋30を外すことで、ケーシング12が後方へ向けて大きく開放するようになっている。蓋30は、ケーシング12の下端部から上部近傍に亘る大きさの平板状部材である。この蓋30に吸気孔15が形成されている。
【0041】
ケーシング12には、蓋30を開閉方向に案内するためのレール部(図示せず)が形成されている。レール部は、ケーシング12の上下方向に延びている。蓋30の左右両縁部がレール部に係合して蓋30がケーシング12の上下方向に案内されるようになっている。
【0042】
蓋30の後面(表面)には、吸気孔15よりも上方に複数の突部34が形成されている。これら突部34は、蓋30の開閉を手で行う際の滑り止めとして機能するようになっている。また、図示しないが、蓋30には、閉状態でケーシング12の本体部分と係合する爪が形成されており、蓋30が不意に開かないようになっている。
【0043】
図7及び図8に示すように、ケーシング12の内部には、その前側部分と後側部分とを仕切るように略上下に延びる隔壁40が形成されている。ケーシング12の内部の隔壁40よりも後側部分は、上記カートリッジ3を収容するためのカートリッジ収容部41とされ、また、隔壁40よりも前側部分はファン10やモーター11等を収容するための送風機構収容部42とされている。
【0044】
カートリッジ収容部41の後方には、吸気孔15が位置しており、カートリッジ収容部41は、吸気孔15を介してケーシング12外部と連通している。また、送風機構収容部42の左右両側方には、上記上側及び下側排気孔18,19がそれぞれ位置している。従って、送風機構収容部42は排気孔18,19を介してケーシング12外部と連通している。
【0045】
上記隔壁40の上下方向中央部には、前後方向に貫通する貫通孔40aが形成されている。カートリッジ収容部41と送風機構収容部42とは貫通孔40aを介して連通している。
【0046】
送風機構収容部42の上下方向中央部には、モーター11を固定するための固定板45が設けられている。モーター11は、その回転軸11aがケーシング12の前後方向に延びる姿勢で固定板45に固定されており、回転軸11aの先端部は、固定板45よりもケーシング12後方へ向けて突出している。
【0047】
固定板45の周囲には、空気流路47が形成されており、この空気流路47にファン10が配置されている。ファン10の中心部はモーター11の回転軸11aの先端部に固定されている。ファン10の回転によって空気が吸気孔15からケーシング12内に吸入されて、カートリッジ収容部41及び貫通孔40aを通って送風機構収容部42の空気流路47に達し、空気流路47から上側及び下側排気孔18,19を通ってケーシング12外部に排気されるようになっている。
【0048】
送風機構収容部42の上部には、回路基板50が配設されている。回路基板50には、本害虫防除装置1の運転及び停止を切り替えるためのON/OFFスイッチ51と、運転中にのみ点灯するランプ52とが設けられている。
【0049】
ケーシング12の上壁部12dには、ON/OFFスイッチ51を操作するための操作ボタン53が設けられている。操作ボタン53は、図4にも示すように、ケーシング12の左右方向略中央部に配置されている。この操作ボタン53はケーシング12の外部から押し操作できるように構成されている。また、操作ボタン53は透光性を有する材料で構成されており、ランプ52の光は操作ボタン53を透過して外部に照射されるようになっている。
【0050】
図5に示すように、ケーシング12の右壁部12c内面には、右側の電気導通部を構成する右側導体55が設けられ、また、ケーシング12の左壁部12e内面には左側の電気導通部を構成する左側導体56が設けられている。右側導体55及び左側導体56は、伝導性を有する金属材料で構成されており、カートリッジ収容部41に臨んでいる。
【0051】
右側導体55は、カートリッジ3の放電用抵抗素子22と導通するようになっている。左側導体56は、カートリッジ3の電池21と導通するようになっている。
【0052】
右側導体55及び左側導体56は、カートリッジ3がカートリッジ収容部41に収容されて装置本体2に装着された状態で、特別な接続作業を行うことなく、それぞれ、放電用抵抗素子22及び電池21と接触して導通するように位置付けられている。本害虫防除装置1の電気回路の構成については後述する。
【0053】
(カートリッジの構造)
図6に示すように、カートリッジ3は、樹脂製の箱状の部材に、薬剤保持体20及び電池21を収容可能に構成されている。カートリッジ3は、装置本体2のカートリッジ収容部41の形状に対応した大きさであり、ケーシング12の上下方向に長く、奥行き方向の寸法が幅方向の寸法よりも短い略直方体形状とされている。
【0054】
図7に示すように、カートリッジ3の内部における下部寄りの部分には、内部を上下に仕切るための隔壁60が設けられている。カートリッジ3の内部における隔壁60よりも下側の部分は、電池21を収容するための電池収容部61とされ、隔壁60よりも上側の部分は、薬剤保持体20を収容するための薬剤収容部62とされている。薬剤収容部62の方が電池収容部61よりも大きい。
【0055】
電池収容部61には、一般の単3型や単4型の乾電池である電池21が2本収容されるようになっている。電池21は、カートリッジ3の左右方向に延びる姿勢で、2本が上下から見て一部が重なり、かつ、前後から見ても一部が重なるように収容されている。電池収容部61は、蓋63によって開閉されるようになっている。
【0056】
また、図6に示すように、電池収容部61の右側には、放電用抵抗素子22を保持する抵抗素子保持部64が形成されている。この抵抗素子保持部64に保持される放電用抵抗素子22は、板状をなしている。抵抗素子保持部64は、放電用抵抗素子22がカートリッジ3の右壁部に沿って延びるような姿勢で保持するように構成されており、電池収容部61と同様に開放している。抵抗素子保持部64は、電池収容部61の蓋63によって一緒に開閉されるようになっている。
【0057】
カートリッジ3の右壁部には、抵抗素子保持部64に対応する部位に、右側切欠部65が形成されている。右側切欠部65は、放電用抵抗素子22の接点部22aを外部に露出させるためのものである。また、カートリッジ3の左壁部には、左側切欠部66が形成されている。左側切欠部66は、電池21の端子を外部に露出させるためのものである。本発明のカートリッジ3側の電気導通部は、電池21の端子と、放電用抵抗素子22の接点部22aである。
【0058】
カートリッジ3の薬剤収容部62には、害虫防除成分を含む薬剤を保持した布で構成された薬剤保持体20が波形に折り曲げられた状態で収容されている。薬剤は、従来から害虫防除用に用いられていて揮発性を有するものであればよく、特に限定されない。
【0059】
図7に示すように、カートリッジ3の前壁部における薬剤収容部62に対応する部分には、複数の貫通孔69が形成されている。また、図6に示すように、カートリッジ3の後壁部における薬剤収容部62に対応する部分は、グリル70で覆われている。従って、カートリッジ3の薬剤収容部62には前後方向に空気が流通するようになっている。
【0060】
カートリッジ3の製造時には、薬剤保持体20と電池21と放電用抵抗素子22とを本体部分に組み付けることになる。カートリッジ3の本体部分とグリル70とは全ての種類のカートリッジ3に共通する部品である。よって、使用可能日数等が異なる複数種のカートリッジ3間で、専用設定の必要な部品点数は少なくて済み、低コストなカートリッジ3が得られる。
【0061】
尚、カートリッジ3は使い捨てである。
【0062】
また、カートリッジ3の構造は、上記した構造に限られるものではなく、例えば、図示しないが、薬剤保持体20を、カートリッジ3の本体部分とは別部品のケースに収容して、このケースをカートリッジ3の本体部分に組み付けるような構造としてもよい。
【0063】
(電気回路の構成)
図9に示すように、害虫防除装置1の電気回路は、モーター11、ランプ52、ランプ点灯用抵抗素子71、ON/OFFスイッチ51、電池21、放電用抵抗素子22とを備えている。これらのうち、モーター11、ランプ52、ランプ点灯用抵抗素子71、ON/OFFスイッチ51は装置本体2に設けられており、電池21及び放電用抵抗素子22は、カートリッジ3に設けられている。
【0064】
2本の電池21は直列に接続されている。また、ランプ52及びランプ点灯用抵抗素子71も直列に接続されている。モーター11、ランプ52、放電用抵抗素子22は、電池21に対し並列に接続されている。
【0065】
また、放電用抵抗素子22の接点部22aと、装置本体2の右側導体55とは上記のようにカートリッジ3の着脱操作によって接続と非接続とに切り替えられ、また、電池21の端子と、装置本体1の左側導体56とも、同様に、接続と非接続とに切り替えられる。つまり、カートリッジ3が装着されたときにのみ、電気回路が構成される。
【0066】
上記放電用抵抗素子22の抵抗値は、電池21の寿命が薬剤保持体20に保持されている薬剤の害虫防除成分の持続時間と対応するように電池21を消耗させるためのものである。すなわち、電池21の寿命を害虫防除成分の持続時間と略一致させることのできる抵抗値を有する抵抗素子である。例えば、害虫防除装置1を1日8時間使用すると仮定した場合、害虫防除成分が60日間持続するものである場合には、電池21の寿命が、8時間×60日=480時間となるように放電用抵抗素子22の抵抗値が設定されている。尚、放電用抵抗素子22の抵抗値は、電池21の本数や、電池容量等に基づいて予め算出可能であるし、実際にモーター11を回転させて電池寿命を計測し、その結果に基づいて得ることも可能である。
【0067】
(害虫防除装置の使用要領)
カートリッジ3は、複数種用意されるものであり、使用者が任意に選択できる。例えば、持続期間が60日のカートリッジ(60日用カートリッジ)3には、害虫防除成分が約60日間持続する薬剤保持体20が収容されるとともに、電池21の寿命が約60日間となるように電池21を消耗させることのできる放電用抵抗素子22が取り付けられる。120日用カートリッジであれば、害虫防除成分が約120日間持続する薬剤保持体20が収容されるとともに、電池21の寿命が約120日間となるように電池21を消耗させることのできる放電用抵抗素子22が取り付けられる。尚、電池21の寿命と、害虫防除成分の持続時間とは完全に一致しなくてもよく、例えば、60日用カートリッジ3において両者の差が数日程度であれば問題とならない。つまり、電池21の寿命が害虫防除成分の持続時間と対応しているとは、両者が完全に一致している場合の他、両者の差が数日程度である場合も含む意味である。
【0068】
カートリッジ3を装置本体2に装着する際には、まず、図5に示すように、ケーシング12の蓋30をケーシング12の下方へスライドさせてカートリッジ収容部41を開放する。その後、使用者が適宜選択したカートリッジ3をカートリッジ収容部41に収容する。すると、カートリッジ3の電池21の端子が装置本体2の左側導体56に接触して導通状態となり、放電用抵抗素子22の接点部22aが装置本体1の右側導体55に接触して導通状態となる。これにより、図9に示すような電気回路が構成される。カートリッジ3の装着状態では、重量物である電池21が害虫防除装置1の下部に位置することになるので低重心化が図られ、害虫防除装置1が安定する。
【0069】
次いで、ケーシング12の蓋30を閉じた後、操作ボタン53を押してON/OFFスイッチ51をONにすると、電池21からモーター11へ電力が供給されてモーター11が作動し、ファン10が回転する。これと同時にランプ52が点灯し、運転中であることが使用者に報知される。
【0070】
ファン10が回転すると、空気が吸気孔15からカートリッジ収容部41に吸入されてカートリッジ3のグリル70を通って薬剤保持体20を通過する。このとき、害虫防除成分が揮発して空気に混入する。この空気は、カートリッジ3の貫通孔69、ケーシング12の隔壁40の貫通孔40a、空気流路47を順に流れて上側及び下側排気孔18,19から排出される。上側及び下側排気孔18,19は、ケーシング12の左右両壁部12c,12eにそれぞれ形成されているので、害虫防除成分が広い範囲に拡散して害虫の防除効果が十分に得られる。
【0071】
使用中には、放電用抵抗素子22によっても電池21が放電される。これにより、電池21の寿命と害虫防除成分の持続時間とが対応するようになるので、害虫防除成分の持続時間が経過した頃、または持続時間が経過する直前に電池21の寿命が尽きる。よって、害虫防除装置1の空運転が防止される。
【0072】
このように、カートリッジ3に害虫防除成分の持続時間に対応した放電用抵抗素子22を設けたことで、装置本体2には、従来例のような複数の抵抗素子やスイッチを有する選択回路を設けずに済み、モーター11とON/OFFスイッチ51等を接続して簡単な回路構成にでき、製造工数を低減できるとともに、不具合の発生が抑制される。さらに、複数の抵抗素子や選択回路が不要になる分、装置本体2の小型化が可能になるとともに、低コスト化が図られる。
【0073】
電池21の寿命が尽きたら、使用者はケーシング12の蓋30を開けてカートリッジ3を交換する。カートリッジ3をケーシング12のカートリッジ収容部41から取り出すことで、薬剤保持体20と電池21とを一度に取り外すことができる。また、新たなカートリッジ3を装着することで、薬剤保持体20と電池21とを一度に取り付けることができる。これにより、電池21の交換忘れが無くなる。また、放電用抵抗素子22を交換するようにしたことで、放電用抵抗素子22の経年劣化による故障も無くなる。
【0074】
また、使用済みカートリッジ3の蓋63を外すことで電池21及び放電用抵抗素子22を取り出すことができるので、分別廃棄が容易に行える。
【0075】
以上説明したように、この実施形態にかかる害虫防除装置1によれば、薬剤保持体20を有するカートリッジ3に、電池21の寿命が害虫防除成分の持続時間と対応するように該電池21を消耗させるための放電用抵抗素子22を設けたので、複数の抵抗素子やスイッチを有する選択回路を設けることなく、電池21の寿命を薬剤保持体20の持続時間に対応した寿命とすることができる。これにより、害虫防除装置1を全体的にコンパクトにできるとともに低コスト化を図ることができ、しかも、電気回路の構成をシンプルにして製造工数を低減できるとともに不具合の起こり難い害虫防除装置1とすることができる。
【0076】
また、カートリッジ3に電池収容部61を設けて薬剤保持体20と電池21とを同時に交換するようにしたので、電池21の取り替え忘れを無くすことができ、必要なときに害虫防除能力を確実に発揮させることができる。
【0077】
また、カートリッジ3に、薬剤保持体20が収容される薬剤収容部62と、放電用抵抗素子22を保持する抵抗素子保持部64とを設け、薬剤保持体20及び放電用抵抗素子22を組み付けることができるようにしたので、薬剤保持体20と放電用抵抗素子22とをセットにして容易に組み付けることができ、個々のカートリッジ3の製造を容易に行うことができる。
【0078】
また、カートリッジ3を装着するだけで電気回路を構成することができるので、カートリッジ3の交換作業時に配線の接続作業等を別途に行わずに済み、交換作業性を良好にできる。
【0079】
尚、上記実施形態では、電池21をカートリッジ3に収容するにしたが、これに限らず、装置本体1に電池収容部を設け、電池21を装置本体2に収容するようにしてもよい。また、電池21の本数は2本に限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上説明したように、本発明にかかる害虫防除装置は、例えば、一般家庭等で用いるのに適している。
【符号の説明】
【0081】
1 害虫防除装置
2 装置本体
3 カートリッジ
10 ファン
11 モーター
20 薬剤保持体
21 電池
22 放電用抵抗素子
22a 接点部(カートリッジ側の電気導通部)
55 右側導体(装置本体側の電気導通部)
56 左側導体(装置本体側の電気導通部)
61 電池収容部
62 薬剤収容部
64 抵抗素子保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫防除成分を含む薬剤を保持した薬剤保持体と、
上記薬剤保持体に送風するためのファンと、
上記ファンを回転駆動するためのモーターと、
上記モーターに電力を供給する電池とを備え、
上記モーターで駆動された上記ファンにより上記薬剤保持体に送風して害虫防除成分を空気中に拡散させるように構成されたファン式害虫防除装置であって、
上記薬剤保持体を有するとともに、装置本体に対し着脱可能に取り付けられるカートリッジを備え、
上記カートリッジには、上記電池の寿命が害虫防除成分の持続時間と対応するように該電池を消耗させるための抵抗素子が設けられ、
上記抵抗素子は、上記カートリッジが装置本体へ装着された状態で、上記モーター及び電池と共に電気回路を構成することを特徴とするファン式害虫防除装置。
【請求項2】
請求項1に記載のファン式害虫防除装置において、
カートリッジには、電池が収容される電池収容部が設けられていることを特徴とするファン式害虫防除装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のファン式害虫防除装置において、
カートリッジには、薬剤保持体が収容される薬剤収容部と、抵抗素子を保持する抵抗素子保持部とが設けられていることを特徴とするファン式害虫防除装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のファン式害虫防除装置において、
カートリッジ側の電気導通部は、該カートリッジの外面に露出するように配置され、
装置本体側の電気導通部は、上記カートリッジが上記装置本体に装着された状態で該カートリッジ側の電気導通部と接触するように配置されていることを特徴とするファン式害虫防除装置。
【請求項5】
害虫防除成分を含む薬剤を保持した薬剤保持体に、電池で作動するモーターで駆動されたファンにより送風して害虫防除成分を空気中に拡散させるように構成されたファン式害虫防除装置に着脱可能に取り付けられるカートリッジにおいて、
上記薬剤保持体と、
上記電池の寿命が害虫防除成分の持続時間と対応するように該電池を消耗させるための抵抗素子とを備え、
上記抵抗素子は、上記モーター及び上記電池と共に電気回路を構成することを特徴とするカートリッジ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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