説明

フィルタなどの処理設備を洗浄する方法

本発明は液体の生産に使用する処理設備を洗浄する方法に関し、特に、例えば膜フィルタを洗浄する方法に関する。設備にペルオキシ二硫酸塩を接触させる。洗浄工程は15℃〜95℃の温度で実施するのが特に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前提部に記載された方法に関する。発明は、特にメンブランフィルタのようなフィルタとしての処理設備を洗浄する方法に関し、このフィルタはミルク(またはミルク製品)、フルーツジュース、ビール、ソフトドリンク(レモネードなど)、サイダー、ワイン、シェリー、ポートワイン、蒸留水などの液体食品の生産に使用される。
【背景技術】
【0002】
食品工業および汚水浄化プラントにおいては、特に、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(ポリビニルピロリドンの有無を問わない)およびある種のポリアミドのような重合膜のメンブランフィルタと、飲料その他の液体から不溶性物質を取り除くセラミック膜のメンブランフィルタとがますます広範に使用されている。このような膜によって、好ましくない成分、特に、藻類、菌類、酵母およびバクテリア(浸出液)などの微生物が適切に確実に除去される。
【0003】
しかしながら、このようなメンブランフィルタの浸透性(透過流量とも呼ぶ)は時間の経過とともに減少し、比較的短時間の後であっても、ときには1時間以内であっても膜は閉塞される。なぜなら、処理される物質からの成分が設備の表面に吸着または吸収または沈殿するからであり、このことは好ましくない。その結果、膜を洗浄するためには処理工程を停止しなければならないことになる。例えば逆洗として知られる処理でフィルタを反対方向から水洗することによって、閉塞したフィルタは回復できる。これは機械的な解決方法とみなされる。しかしながら、この方法は複雑な処理となり、一時的な解決にはなるが、満足のいく解決にはならない。その理由は、工程ごとに、(同一通過膜圧における)初期の透過流量は順次低下し、長期間経過後にはフィルタが完全に閉塞される程度にまで汚染物質が堆積するからである。さらに、この方法では、潜伏期の長いある種の有機汚染物質を除去することが困難となる。
【0004】
膜を洗浄するために酵素処理が提案されている。国際特許出願のWO98/45029には、ビールメンブランフィルタをアルカリで前処理した後で膜を洗浄するためセルラーゼおよびアミラーゼを使用することが記載されている。同様に、日本特許出願の特開平4−267933には、分離膜を洗浄するためプロテアーゼおよびセルラーゼを使用することが記載されている。
【0005】
しかし、前述の成分を有効に除去するのにかなりの反応時間が必要となるので、これらの非酸化処理は通常、完全には満足できるものではない。
国際特許出願のWO97/45523には、ビールセットリングモジュールを洗浄するため、ニトロキシル化合物として2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)の使用が、また再酸化試薬として次亜塩素酸塩または次亜臭素酸塩の使用について記載されている。しかし、残留ハロゲン、特に残留臭素の存在は腐食特性があるため設備には非常に好ましくない。
【0006】
国際特許出願のWO03/060052には、TEMPOまたはその4−アセトアミド誘導体または4−アセトキシ誘導体などの環状ニトロキシル化合物を使用した臭素フリー処理およびハロゲンフリー酸化システムでフィルタを洗浄する処理が記載されている。共基質として酸素または過酸化水素を使用した酵素方法によって、または過酢酸、過硫酸(カロー酸)、過マンガン酸またはヒドロペルオキシドなどの過酸と組み合わせた金属触媒酸化によって、ニトロキシル化合物を酸化し対応するイオンにすることができる。
【0007】
また、他の酸化方法も記載される。国際特許出願のWO06/012691には、膜を洗浄するためヒドロキシルラジカルの生成について記載されている。この方法は、膜がフッ素ポリマー型ででき、そのため化学試薬に対して非常に不活性である場合に特に適している。
【0008】
国際特許出願のWO03/095078にも酸化をベースにした方法が記載され、この方法はポリフェノールを転化する目的があり、逆洗を行うと非常に有効となる。この方法は、ポリフェノールが最初に膜表面に付着して汚染層開始の原因となるという仮定に基づいている。しかし、提供されたデータからわかるように、実施例に挙げられた酸化化学物質のうちマンガン触媒を使用した過酸化水素しか有効ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO98/45029
【特許文献2】特開平4−267933
【特許文献3】WO97/45523
【特許文献4】WO03/060052
【特許文献5】WO06/012691
【特許文献6】WO03/095078
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、制限することなしに、ソフトドリンク、ミルク(製品)、ワイン、シェリー、ポートワイン、蒸留ドリンク、フルーツジュース、レモネード、沈殿したビールや残留ビールのようなビールの濾過だけでなく、ウワート/使用済み穀物の分離、高温醸造分離および低温醸造分離も含む一般に周知の処理に使用するフィルタの洗浄を目的とするものである。
【0011】
ビールを醸造する場合には、発明はとりわけ、麦芽を準備する間、麦芽および/または麦芽になっていない穀物のウワートへ変換する間、およびホップなどの追加成分の添加、不添加にかかわらずビール醗酵の際にウワートをさらに処理する間に使用する設備に関する。また発明は、これらの処理に使用し、これらの処理からの本流または支流に接するすべての補助設備にも関する。
【0012】
したがって、適切に洗浄することができ、好ましくは比較的短時間(好ましくは120分以内)で実施でき、その間にほとんどすべての汚染物質が除去できる前述の液体食品生産用の設備を洗浄する有効な洗浄システムが必要となる。
【0013】
調査で判明したことであるが、設備、特にフィルタは生産の間に、重要成分がポリサッカライド、オリゴサッカライド、タンパク質、βグルカン、脂肪およびポリフェノールであるあらゆる種類の化合物の組合せによって汚染される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によると、方法はペルオキシ二硫酸塩を使用して実施する。最も広い側面では、発明は処理設備を洗浄する方法に関し、この方法にはペルオキシ二硫酸塩の溶液に設備を接触させる工程を含むことを特長とする。本発明は、ペルオキシ二硫酸塩を含有する溶液に汚染設備を暴露することで、食品および清浄水の生産に使用する設備、例えばメンブランフィルタおよび処理設備を十分に洗浄することが可能であるという驚くべき効果に基づいてなされた。好ましい物質はペルオキシ二硫酸ナトリウム(NaSO)である。
【0015】
さらに好ましい実施形態は以下の開示および残りの請求項のとおりである。
ペルオキシ二硫酸塩はラジカルの生成に知られており、したがって有機基質の酸化は非選択性処理であると予期される。
【0016】
ビールの主成分は多糖およびオリゴ糖、タンパク質およびポリフェノールである。
比較的短時間(60分未満)で洗浄工程の実施を可能にする典型的な条件は高い温度である。使用するペルオキシ二硫酸ナトリウムの濃度は200〜3000ppmが好ましく、500〜2500ppmが一般的であり、500〜2000ppmが一層好ましい。試薬の消費量はヨウ素還元滴定法によってモニターすることができ、加える試薬の量はこのモニターに基づいて行うことができる。
【0017】
膜は処理後に完全に回復するので、化学薬品でさらに処理する必要はない。
比較的高いpHおよび高い温度にもかかわらず、膜は安定している。用語の「比較的高い」および「高い」は膜劣化技術分野の専門家に知られた値に関係する。
【0018】
発明による処理は、食品および飼料工業で使用し、また水浄化用に使用するメンブランフィルタの洗浄に使用できる。乳製品、ビール、ワイン、フルーツジュース(アップル、パイナップル、グレープフルーツ、オレンジ)、野菜ジュースおよびその他のドリンクの生産に使用するメンブランフィルタの洗浄に使用できる。設備には、パイプ、チューブおよび混合装置が含まれる。フィルタのタイプは、PVP,ポリスルホン、ポリエーテル−スルホンおよび特にポリアミドおよびセラミック膜でできたものを含むどのようなタイプでもよい。
【0019】
発明による処理は、多糖およびタンパク質の可溶化および/または分解を良好にする酸化によって進行する。処理は静的(バッチ的)処理として実施できる。洗浄に必要な時間は5分から120分が好ましい。
【0020】
また、液体がシステム内を循環する場合は、連続または部分連続処理が可能である。洗浄後に促進化合物は適当な液体(水が好ましい)ですすいで取り除くことができる。
ペルオキシ二硫酸化合物は、ナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩などの可溶性のペルオキシ二硫酸塩、例えばペルオキシ二硫酸ナトリウムとするのが好ましい。pHはアルカリ性で、pH>7が好ましく、pH>9が一層好ましく、pH>11がさらに一層好ましい。一般に、これらの陽イオンに対しては明瞭な優位はないようである。ペルオキシ二硫酸ナトリウムが使用される場合は、適当な濃度は前述の範囲内にある。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0021】
(一般)
使用する膜はポリエーテルスルホン/PVPタイプ製の中空糸膜タイプであり、表面積が0.0235mのモジュールに長さ300mmの20本の繊維が含まれる。ポンプを使ってビールを1バールの開始圧力で繊維に通す。
【0022】
1 膜に対する標準汚染処置
温度0(±1)℃のビールを、クロスフロー条件(速度2m/s)で107リットル/(m・h・バール)の一定の透過流量で膜を通して濾過する。処置はトランス膜圧力が1.6バールを超過するまで続ける(通常、4時間かかる)。汚染後、清浄水の透過流量は7500−15000リットル/(m・h・バール)である。
【0023】
2 酸化洗浄工程(例えばペルオキシ二硫酸塩)の前洗浄および/または後洗浄には1つ以上の次の処置が含まれる。
a 次の工程からなる逆洗の実施:20秒間、逆浸透水で逆洗、次に180秒間、0.01MのNaOHH溶液で逆洗、最後に140秒間、逆浸透水で逆洗、
b pH12、60℃のNaOH溶液でアルカリ処理実施、
c 10分間、室温でpH2の硝酸を使って酸処理実施、
d (または)過酸化水素およびNaOHで酸化処理実施。
【0024】
未使用膜モジュールの透過流量は50000−55000リットル/(m・h・バール)である。
次に発明の実施例を示す、これは発明の範囲を限定するものではない。各実施例における清浄水の透過流量の測定は同時に清浄水洗浄工程を形成することにもなる。実施例1,2および4のpH値はpH11からpH13の間である。
【0025】
(実施例1−4)ペルオキシ二硫酸塩/水酸化ナトリウムによる洗浄
汚染膜を前述の逆洗で洗浄する。次いで、ペルオキシ二硫酸塩と水酸化ナトリウムを含む溶液をモジュールに通して45分間循環させる。溶液の温度は高温に維持する(さらなる実験詳細については表1を参照)。この洗浄工程の後、モジュールを取り外してアルカリ性溶液で洗浄する。
【0026】
実験で使用したペルオキシ二硫酸ナトリウムの濃度は、ペルオキシ二硫酸塩および水酸化ナトリウムの溶液(それぞれの最終濃度は6.3mMおよび0.1M)として添加して1500ppm(6.3mM)である。
【0027】
実験の結果は表1に示す。
【0028】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理設備を洗浄する方法において、前記方法はペルオキシ二硫酸塩の溶液を設備に接触させる工程を含むことを特徴とする。
【請求項2】
ペルオキシ二硫酸塩溶液は6〜14のpH値で使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ペルオキシ二硫酸塩溶液は6以上のpH値で使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
洗浄工程は15〜95℃の温度で使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ペルオキシ二硫酸塩化合物は0.0005〜2Mの濃度で使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸化剤はペルオキシ二硫酸ナトリウムまたはペルオキシ二硫酸カリウムであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項7】
前記処理設備はフィルタ、好ましくは膜フィルタであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。













【公表番号】特表2010−535098(P2010−535098A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519165(P2010−519165)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050488
【国際公開番号】WO2009/017401
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(510025795)
【Fターム(参考)】