説明

フィルタの再生方法、及びこの方法が適用されるガス化発電プラント

【課題】化石燃料や電力を無駄に消費することがなく、設備コストの徒な上昇を招くこともなく、比較的小規模なガス化発電プラントにも適用しやすいフィルタの再生方法を提供する。
【解決手段】燃料をガス化するためのガス化炉1と、このガス化炉1の生成ガスからダストを取り除くためのフィルタとを備えたガス化発電プラントにおいて、ガス化炉1の運転を停止した後に、時間の経過とともに低下するフィルタ温度がダストの着火温度よりも低くなる前に、フィルタエレメント5へ下方から空気を供給して、付着しているダストに含まれているチャーを燃焼させる。温度センサ22,23により検出されるフィルタ上部、下部の温度T1,T2及びその勾配ΔT1,ΔT2に基づいて、きめ細かく給気量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばバイオマス等をガス化させて燃焼させるようにしたガス化発電プラント等の施設において、ガス化炉の生成ガスからダストを取り除くためのフィルタの再生に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に開示されるように、流動層ガス化炉においてバイオマスをガス化し、その生成ガスをガスタービンやガスエンジン等に供給して燃焼させるようにしたガス化発電プラントは公知である。同文献には、サイクロンやフィルタのような除塵装置をガス化炉と同じケーシング内に収容し、放熱を抑えるようにしたものが記載されている。
【0003】
そのように放熱を抑制し、ガス化炉からの生成ガスを高温のまま除塵してガスタービン等に供給するようにすれば、タールトラブルが起こり難いというメリットがある。また、システム全体として耐火物等の蓄熱材がないので、停止後の再起動時間が短くなり、さらに、ガス化炉から除塵装置への外部配管がないことで設備コストの低減も図られる。
【0004】
ところで、従来一般的にガス化炉からの生成ガス中のダストを除去するためのフィルタは、目詰まりを防ぐためにプラントの運転中、所定の時間間隔でフィルタの下流側から逆洗ガスを吹き付けるようにしているが(いわゆる逆洗)、これでは、タールや水分を多く含んだ付着性の強いダストを除塵面から完全に除去することはできない。
【0005】
また、プラントの運転中にフィルタの逆洗を行うために、その逆洗ガスは窒素のような不活性なガスでなくてはならず、コストが高くなる。さらに、逆洗に用いた不活性なガスの一部が混入することによって生成ガスのカロリーが低下したり、その流量が変動してガスタービン等の燃焼状態が悪くなるおそれもある。
【0006】
そのような逆洗に付随する問題点に着目して、例えば特許文献2に記載の発明では、ディーゼルエンジンの排ガスの浄化処理に用いられる触媒化セラミックフィルタを対象として、排ガスの温度が80〜400℃、その酸素濃度が5〜20%になるようにエンジンを運転し、その排ガスを通気してフィルタの温度を500℃に維持することにより、付着したダストをゆっくりと酸化(おき燃焼)させて除去するようにしている。
【0007】
また、特許文献3には、石炭ガス化炉からの生成ガス中のチャー(未燃物)を捕獲するためのポーラスフィルタを対象として、このフィルタを、窒素の流量調整により酸素濃度を管理したガスでもって灰化させるという再生方法について開示されている。このものでは、フィルタを電気ヒータにより加熱して400〜450℃に保持し、且つ酸素濃度が5〜15%の灰化ガスを供給してチャーを灰化させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−808号公報
【特許文献2】特開平8−309151号公報
【特許文献3】特開2006−192337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献2のようにフィルタの再生にエンジンの排ガスを利用するためには、エンジンを運転し続ける必要があり、フィルタの再生のためだけに化石燃料を使用することになるから、不経済であるとともに環境への悪影響も大きくなってしまう。
【0010】
しかも、比較的高温の排ガスが流れる配管の耐熱性を確保しなくてはならず、コストアップの懸念がある。また、特許文献2のものでは排ガスの温度は調整できるものの、これが供給されるフィルタにおける「おき燃焼」による温度の上昇が十分に考慮されておらず、排ガスの流量が多かったり、その酸素濃度が高かったりすると一時的に急激な燃焼が起きてしまい、フィルタに損傷を与えるおそれもある。
【0011】
一方、特許文献3のようにフィルタの再生のために大容量の電気ヒータを設け、これによりフィルタを加熱するというのは不経済であり、環境への悪影響も大きい。しかも、同文献のシステムでは酸素濃度の調整のために高価な窒素発生器を設けるとともに、燃焼状態の把握には酸素濃度計を用いており、設備コストが上昇する。よって、例えばバイオマスを用いたガス化発電設備のような比較的小規模なプラントに適用することは困難である。
【0012】
そこで、本発明の目的は、設備コストの上昇を招くことがなく、フィルタの再生のための化石燃料や電力の消費が殆どなく、しかも、比較的小規模なガス化発電プラントにも適用できるフィルタの再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するための本発明は、ガス化炉の生成ガスからダストを取り除くためのフィルタを対象として、そのフィルタから付着したダストを除去し、除塵機能を回復させる再生方法に関するものである。
【0014】
本発明の再生方法では、ガス化炉の運転を停止した後に、時間の経過とともに低下するフィルタの温度がダストに含まれるチャーの着火温度よりも低くなる前に、当該フィルタへの空気の供給を開始し、前記チャーを燃焼させてダストを除去する。なお、具体的に空気の供給を開始する時期は予め実験等によって決定すればよいが、要するにダストの着火温度以上であれば、そこに空気を供給するだけでダストが燃焼を始めるのである。
【0015】
そうしてガス化炉の運転停止後にフィルタに空気を供給するだけで、チャーを燃焼させてダストを除去することができるから、従来例に比べて化石燃料や電力の消費が少なく、また、フィルタには外気を供給するだけでよいから、設備コストはあまり上昇しない。よって、比較的小規模なガス化発電プラントにも適用しやすい。
【0016】
但し、その場合にはフィルタ表面でダストに含まれるチャーが燃焼することから、フィルタの温度乃至その上昇勾配が大きいとダストに含まれている灰が溶融したり、或いはフィルタ自体に溶融が生じて、当該フィルタの強度劣化やその濾過面積の減少を生じる心配がある。一方、そうならないように空気の供給量を絞りすぎると時間ばかりかかってしまい、付着しているダストを除去しきれない可能性もある。そこで、フィルタの温度状態を検出するためのセンサを設け、このセンサにより検出される温度乃至その勾配(温度の上昇乃至下降の変化率)に応じて空気の供給量を調整するのが好ましい。
【0017】
より好ましくは前記センサを複数設けておき、フィルタの再生時には、検出温度が上昇しているセンサの中でその検出温度の最も高いものからの信号に応じて、空気の供給量を調整すればよい。
【0018】
また、前記フィルタにおいて生成ガスの通過する壁部に、所定方向に離間させて前記センサを複数、配設しておき、フィルタの再生時には前記所定方向の一方から空気を供給して、初期の所定期間はその所定方向の一方のセンサからの信号に応じて空気の供給量を調整し、所定期間の経過後は前記所定方向の他方のセンサからの信号に応じて空気の供給量を調整してもよい。
【0019】
すなわち、フィルタに所定方向の一方から空気を供給すると、当該フィルタに付着したダスト中のチャーがその一方の端から燃え始め、新たな空気の供給に連れて徐々に他方に向かって燃え進むようになるから、初期の所定期間はフィルタの前記一方の部位の温度状態に応じて、また、その所定期間の経過後はフィルタの他方の部位の温度状態に応じて空気の供給量を適切に調整することによって、急な燃焼によるフィルタの損傷を防止しながら、付着しているダスト中のチャーを燃やしきることが可能になる。
【0020】
具体的には前記のように、検出温度の高いセンサからの信号に応じて空気の供給量を調整するようにすれば、空気の供給を開始してから暫くの間はフィルタの一方の部位の温度が高くなり、この一方の部位の温度状態に応じて空気の供給量が調整されるようになり、その後、フィルタの他方の部位の温度が高くなればこの他方の部位の温度状態に応じて、空気の供給量が調整されるようになる。
【0021】
そして、そのようにしてフィルタに付着したダスト中のチャーが一方から他方に向かい所定方向に徐々に燃えていって、その全てが燃え尽きてしまえば、それ以上はいくら空気量を増やしてもフィルタ温度が上昇しなくなり、むしろ空気によって冷やされることになる。よって、前記所定方向の他方のセンサによる検出温度の上昇割合が所定値未満になったときに、フィルタ再生の終了時期を判定することができる。
【0022】
その際、付着しているダストの量によってフィルタの通気抵抗が変化することを考慮して、該フィルタを通過する生成ガスの流量とその上流側及び下流側の差圧とから圧力損失を計算し、この点も加味してフィルタの再生終了時期を判定するようにしてもよい。
【0023】
見方を変えれば本発明は、燃料をガス化するためのガス化炉と、このガス化炉の生成ガスからダストを取り除くためのフィルタとを備えたガス化発電プラントが対象であって、そのフィルタには温度状態を検出するためのセンサを複数、配設するとともに、そのフィルタに空気を供給可能であり、且つその供給量を調整可能なバルブを備えた空気供給手段を設ける。
【0024】
そして、前記センサからの信号に応じて前記バルブの開度を制御し、前記空気の供給量を調整する制御手段を備え、この制御手段は、前記ガス化炉の運転停止後に、前記複数のセンサのいずれかにより検出されるフィルタ温度が時間の経過とともに低下して、前記ダストに含まれるチャーの着火温度よりも低くなる前に当該フィルタへの空気の供給を開始し、前記チャーを燃焼させてダストを除去するように構成したものである。
【0025】
好ましくは前記制御手段は、前記センサにより検出されるフィルタの温度乃至その上昇及び下降勾配に基づいて空気の供給量を調整するものとすればよく、また、前記複数のセンサのうち、その検出温度が上昇しているものの中で該検出温度の最も高いセンサからの信号に応じて、空気の供給量を調整するものとしてもよい。
【0026】
また、前記フィルタにおいて生成ガスの通過する壁部に前記複数のセンサを所定方向に離間させて配設し、前記空気供給手段は、前記フィルタに前記所定方向の一方から空気を供給するように構成しておいて、前記制御手段を、前記空気供給手段によるフィルタへの空気の供給を開始した後、初期の所定期間は前記所定方向の一方のセンサからの信号に応じて空気の供給量を調整し、その所定期間の経過後は前記所定方向の他方のセンサからの信号に応じて空気の供給量を調整するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
以上より、本発明に係るフィルタの再生方法によると、例えばガス化発電プラントにおいてガス化炉の運転を停止した後に、除塵フィルタの温度が、付着しているダストに含まれているチャーの着火温度よりも低くなる前に空気を供給することによって、このチャーを燃焼させてダストを除去することができるから、その際に化石燃料や電力を無駄に消費することがない。また、フィルタには外気を供給するだけでよいから、設備コストの上昇を招くこともなく、比較的小規模なガス化発電プラントにも適用しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係るガス化発電プラントの一例を示す系統図である。
【図2】同プラントにおけるフィルタの構造の一例を示し、図(a)は、ケーシングの中心線に沿った縦断面図であり、その(b)-(b)線における横断面図が図(b)である。
【図3】同フィルタを再生するための制御系の一例を示すブロック図である。
【図4】フィルタ再生制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】再生の開始から終了までのフィルタ温度の変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、実施の形態に係るガス化発電プラントの系統図であり、ここでは例えばバイオマスのような低カロリの燃料をガス化炉1において比較的低温でガス化し、よりエネルギ変換効率の高いガスに改質した上で、発電設備の運転に利用するようにしている。
【0030】
−プラントの全体構成−
図の例ではバイオマスは、例えば製材所木屑、間伐材、建築廃材等の木質系バイオマスであり、これらが例えばホッパやコンベアからなる供給機構2により、チップの状態でガス化炉1へ投入される。また、図示のガス化炉1は一例として流動層式のものであり、図2にも示すように炉内の下部に流動砂の層1aが形成されていて、下方から送り込まれる空気によって流動化されている。
【0031】
そうして下方から送り込まれる空気は、後述する圧縮機9により加圧されるとともに昇温されており、この空気により流動化される流動砂によってバイオマスが分散されながら加熱され、その一部が燃焼することも相俟って短時間で熱分解される。この際、燃焼するバイオマスの量は空気の供給量によって決まるので、まず、所望の発熱量からバイオマスの投入量を決めて、これに応じて空気の供給量を制御することにより、炉内を適切な温度に維持するようにしている。
【0032】
また、バイオマスの熱分解によって生成されるガスはガス化炉1の上部から排出され、サイクロン3において比較的大きなダストが遠心分離された後に、フィルタ室4へと導かれる。詳しくは後述するが、フィルタ室4へと導かれた生成ガスがフィルタエレメント5を通過するときには、サイクロン3では分離できなかった小さなダストが捕集される。フィルタエレメント5を通過したガスは生成ガス管6によってガスタービン燃焼器7へと導かれる。
【0033】
そして、そのガスタービン燃焼器7において生成ガスが燃焼され、高温高圧の排ガスがタービン8に供給される。図の例ではタービン8には圧縮機9及び発電機10が接続されており、タービン8の回転によって発電機10が動作するとともに、圧縮機9が空気を圧縮して加圧給気管11によりガス化炉1及びガスタービン燃焼器7へと供給するようになっている。
【0034】
すなわち、加圧給気管11は、圧縮機9に接続されている上流側の共通管11aと、これの下流側で二股に分かれた第1及び第2分岐管11b,11cとからなり、その第1分岐管11bの下流端がガスタービン燃焼器7の空気取入口に接続されて、前記のように生成ガスを燃焼させるための空気を供給するようになっている。この第1分岐管11bには、空気の流量を調整するためのバルブ12が配設されている。
【0035】
一方、第2分岐管11cの下流端はガス化炉1の下部の空気取入口1b(図2参照)に接続されており、これにより供給される空気が、前記したように炉内の流動層に下方から送り込まれて流動砂を流動化させる。なお、第1及び第2分岐管11b,11cの中を流れる空気は共通の熱交換器13においてタービン8からの排ガスと熱交換し、暖められるようになっている。また、熱交換器13を通過した排ガスはボイラ14において蒸気の生成に利用されるようになっており、廃熱の利用が図られている。なお、ボイラ14を通過した排ガスは煙突15から排気される。
【0036】
前記のようにして加圧され且つ昇温された空気がガス化炉1に供給されることで、バイオマスのガス化が促進される。バイオマスは通常、650℃くらいと比較的低温でガス化するものであるが、その温度状態を維持するためにはガス化炉1においてバイオマスの一部を燃焼させる必要がある。ガス化炉1に送り込む空気を前記のように加圧し且つ昇温すれば、それだけ多くの熱量を炉内に持ち込むことができ、燃焼させるバイオマスの量が少なくて済む。
【0037】
また、そのように加圧した空気を供給することでガス化炉1内を、ガスタービン燃焼器7内と概ね同じ圧力状態とすることができる。このことで、ガス化炉1において生成したガスを冷却することなくガスタービン燃焼器7に導入することができ、このガス中に含まれているタール成分を除去することなく燃焼させることができる。このことで、燃料の利用効率が向上するとともにタール分の付着等に起因するハンドリングトラブルが回避される。
【0038】
なお、図1において符号16として示すように、生成ガス流の方向に見てフィルタ室4の上流側及び下流側の差圧を検出するための差圧センサが設けられている。また、詳しくは後述するが符号22,23は、フィルタ室4の上部及び下部の温度状態をそれぞれ検出するための温度センサである。
【0039】
−フィルタの構造−
この実施形態のガス化発電プラントにおいては、前記したようにサイクロン3で比較的大きなダストを分離した後に生成ガスをフィルタ室4へ導いて、フィルタエレメント5により小さなダストまで除去するようにしている。図2には、ガス化炉1及びフィルタ室4の具体的な構造の一例を示し、この例ではフィルタ室4は、ガス化炉1を収容する二重殻構造のケーシング20内に形成されている。
【0040】
この二重殻構造のケーシング20は、一例として特許文献1に記載されているものと同じなので、詳しい説明は省略するが、ケーシング20は、上端及び下端がそれぞれ閉塞された概略円筒状のものであり、図示のように内殻20aと外殻20bとの中間に空間部20cを有している。この空間部20cは例えば空気層としても、ここに遮熱材を充填してもよく、或いは真空にすることによって断熱性能を高めることもできる。このような二重殻構造のケーシング20内に収容することで、ガス化炉1やフィルタエレメント5の放熱を抑制し、その温度状態を維持する上で有利になる。
【0041】
図の例では、上下に延びるケーシング20内のほぼ中心線に沿ってガス化炉1が配置され、その概略上半分を取り囲むように円周方向に互いに間隔をあけて複数のフィルタエレメント5が並んでいる。また、ケーシング20内は、ガス化炉1の上端よりも上方において仕切板21により上下に仕切られていて、その下方には、生成ガスの流れの上流側であるフィルタ上流室4aが、また上方には同じくフィルタ下流室4bが、それぞれ形成されている。
【0042】
前記の仕切板21には、図2(b)に示すよう外周寄りに複数の丸穴が円周上に並んで形成されていて、これら丸穴のそれぞれに前記フィルタエレメント5の上部が内挿されている。フィルタエレメント5は例えばセラミックフィルタからなり、上下方向に延びる円筒状の周壁部とその下端を閉ざす半球状の底壁部とを有していて、それらの壁部をフィルタエレメント5の外側から内側へ通過するガス中のダストを捕集するようになっている。
【0043】
図の例では、生成ガスをサイクロン3からフィルタ室4へ導く導入管3aがフィルタエレメント5とほぼ同じ円周上に配置されていて、ここからフィルタ室4における仕切板21の下方、即ちフィルタ上流室4aに導かれた後に生成ガスは当該フィルタ上流室4a全体に拡散する。こうして拡散した生成ガスは、フィルタエレメント5の壁部を通過してその内部に至り、自然に上昇した後にフィルタエレメント5の上端開口から仕切板21の上方のフィルタ下流室4bに流入する。そして、このフィルタ下流室4bに臨むようにケーシング20を貫通して設けられている生成ガス管6へと流出する。
【0044】
この実施形態では、前記のようにフィルタエレメント5を通過する生成ガスの温度状態を検出し、その温度が高くなりすぎないよう監視するために、当該フィルタエレメント5の周壁部の上部に対応づけて上部温度センサ22を配設している。この上部温度センサ22は、一例として図(b)に示すように、サイクロン3からの生成ガスが導入される導入管3aの近傍に位置するフィルタエレメント5に設けられている。
【0045】
また、この実施形態では、前記の上部温度センサ22だけでなく、フィルタエレメント5の周壁部の下部に対応づけて下部温度センサ23も配設されている。図の例では下部温度センサ23は、前記のように上部温度センサ22の設けられているフィルタエレメント5に対して、ガス化炉1を取り囲む円周上のほぼ対角位置にある別のフィルタエレメント5に設けられている。
【0046】
それらの温度センサ22,23は、いずれもフィルタエレメント5に直接、接触させるのではなくて、フィルタエレメント5の周壁部の外周面、即ち生成ガスの流れの上流側面に対して所定の間隔をあけて配置されている。この間隔は一例として、フィルタエレメント5の周壁部に付着するダストの想定される最大の厚みに対応するものであり、換言すれば温度センサ22,23は、フィルタの再生を開始する際のダストとの境界層に接触するように配置されている。
【0047】
このようにダスト境界層に接触する程度の間隔をあけて配設されていることから、温度センサ22、23によってフィルタエレメント5の温度状態を所要の精度でもって検出することができるとともに、例えば地震動のような外的な振動が加わったときでも温度センサ22,23がフィルタエレメント5に直接、接触して損傷を与える心配がない。
【0048】
ところで、前記のようにフィルタエレメント5の上部だけでなく下部にも温度センサ23を設けているのは、以下に説明するようにフィルタエレメント5に付着したダストを除去して除塵機能を回復させる、いわゆるフィルタの再生を行うためである。すなわち、この実施形態のガス化発電プラントでは、ガス化炉1の運転を停止した後に暫くして、未だ高温状態にあるフィルタエレメント5に空気を供給し、付着しているダストを燃焼させて除去するようにしており、このときのフィルタ温度の検出に前記の温度センサ22,23を用いるのである。
【0049】
また、そのフィルタ再生時にはフィルタ室4に下方から空気(外気)を供給するようにしており、前記の図1に示すように例えば電動のエアポンプ24が設けられていて、その吐出口に接続された外気供給管25の下流端がフィルタ室4の下方に接続されて、エアポンプ24からの空気を供給するようになっている。図2にのみ示すが、一例として外気供給管25の下流端は3つに分岐していて、それぞれがケーシング20の下部を貫通する貫通部25aによりフィルタ室4に連通されている。同図(b)に示すように、この例では3つの貫通部25aは円周方向に等間隔に並んでいる。
【0050】
さらに、その外気供給管25の途中には空気の流量を調整可能なバルブ26と、その流量を検出するための流量センサ27とが配設されており、以下に詳細に述べるようにフィルタエレメント5の温度状態に基づいて空気の供給量を調整するようになっている。
【0051】
なお、図の例では外気供給管25の途中から分岐して加圧給気管11の第2分岐管11cに至る分岐管28が設けられ、この分岐管28にも空気の流量を調整可能なバルブ29が配設されている。これらは、プラントの運転を停止した後に、翌日の運転再開に備えて或る程度の高温状態を維持するべく、ガス化炉1を種火運転するときに使用するものである。
【0052】
−フィルタの再生−
以下に、この実施形態のガス化発電プラントにおけるフィルタの再生について図3〜5を参照して詳細に説明する。図3は、フィルタ再生のための制御系の一例を示すブロック図であり、図4はフィルタ再生の制御手順の一例を示すフローチャートである。また、図5は、再生時のフィルタ温度の変化の一例を示すタイムチャートである。
【0053】
まず、図3に模式的に示すように、この実施形態ではガス化発電プラントのプロセスコントローラ30によって所定の状態でフィルタの再生が実行される。この際、プロセスコントローラ30は、図示のように上部及び下部の温度センサ22,23からの信号と、差圧センサ16からの信号と、流量センサ27からの信号とを少なくとも入力し、バルブ26の開度を制御することによって、外気供給管25によるフィルタ室4への空気の供給量を調整する。
【0054】
すなわち、プロセスコントローラ30は、温度センサ22,23からの信号に応じてフィルタ再生の開始判定を行う開始判定部30aと、該温度センサ22,23からの信号に応じて、フィルタ室4へ供給する空気の流量を調整する調整部30bと、該温度センサ22,23からの信号に応じてフィルタ再生の終了時期を判定する終了判定部30cと、を備えている。
【0055】
また、図の例ではプロセスコントローラ30は、差圧センサ16からの信号と流量センサ27からの信号とを受け入れて、フィルタエレメント5における空気の流通抵抗、即ち圧損係数を演算する圧損係数演算部30dも備えており、前記の終了判定部30cは、温度センサ22,23により検出されるフィルタの温度状態だけでなく、前記の圧損係数も加味してフィルタ再生の終了時期を判定する。
【0056】
なお、それら開始判定部30a、空気量調整部30b、終了判定部30c、圧損係数演算部30dはいずれも、プロセスコントローラ30がフィルタ再生のための制御プログラムを実行することによって具現化されるものであり、言い換えると、この実施形態においてプロセスコントローラ30は、前記の各制御部30a〜30dをそれぞれソフトウエアの態様で備えている。
【0057】
次に、フィルタ再生制御の具体的な手順について図4のフローチャートを参照して説明する。まず、オペレータの操作入力によって予めフィルタ再生を行うことが選択されている場合に、ガス化発電プラントの通常運転を停止して所定の時間が経過すれば、プロセスコントローラ30の開始判定部30aにおいて、上部及び下部の温度センサ22,23によりそれぞれ検出されるフィルタ温度が所定値になったかどうかの判定が行われる(ステップS1:開始条件の成立?)。
【0058】
すなわち、この実施形態のガス化発電プラントにおいては通常運転の停止後に、ガス化炉1に残っているバイオマスを燃やしきるための停止準備運転を行う。これは、例えば翌日に運転を再開するときにバイオマスが残っていると、これがガス化炉1の昇温運転の途中で一気に燃焼し始めて、急激な温度上昇を招くおそれがあるからである。停止準備運転は、新たなバイオマスは投入せずにガス化炉1に空気を供給して、残っているバイオマスを徐々に燃焼させるものであり、ガス化炉1のいわゆる「運転」には含まれない。
【0059】
こうしてガス化炉1に残っているバイオマスを徐々に燃焼させることから、その排ガスの温度は低くなり、これが流通するフィルタエレメント5の温度は徐々に低下してゆく。また、そのように残っているバイオマスを燃焼させる間に、ガス化炉1内の圧力も徐々に低下させてゆくので、その後、引き続いて行うフィルタ再生時には出力の小さなエアポンプ24でもって、ガス化炉1に空気を供給することができる。
【0060】
なお、前記のフィルタ温度の所定値というのは、フィルタエレメント5に付着しているダスト中のチャーの着火温度(チャーの成分によって異なるが、一例として200〜300℃)以上であればよく、これに適当な値を加えて予め設定すればよい。着火温度よりも低くなるとチャーが燃えなくなり、フィルタの再生が行えなくなるからである。
【0061】
前記のように徐々に低下してゆくフィルタエレメント5の温度は、一例を図5のグラフの左端に示すように通例、フィルタエレメント5の下部の温度T2が上部の温度T1よりも低いので、前記ステップS1において、下部温度センサ23により検出されるフィルタ下部の温度T2が前記の所定値になれば(YES)、エアポンプ24の動作とともに空気供給管25のバルブ26を開いて、フィルタ室4への空気の供給を始める(ステップS2)。つまり、前記のようにガス化炉1の通常運転の停止後に、時間の経過とともに徐々に低下するフィルタ温度T1,T2が、ダスト中のチャーの着火温度よりも低くなる前に、フィルタ室4への空気の供給を開始する。
【0062】
その際、最初に供給される空気によって急に燃焼が立ち上がることがないよう、バルブ26の開度の初期値は予め実験等により適切に設定すればよい。このバルブの開度の初期値は一定値でもよいが、例えばフィルタ温度T1,T2に対応づけてテーブル等に設定しておいてもよいし、プラントの運転履歴、即ち運転時間や投入したバイオマスの総量等も加味してバルブ26の開度の初期値を設定してもよい。
【0063】
そして、前記のように供給される空気は、フィルタエレメント5に対して下方から供給されるので、該フィルタエレメント5の下部において付着しているダストの燃焼(正確にはダスト中のチャーの燃焼であるが、以下、簡略化してダストの燃焼ともいう)が開始し、これによりフィルタ下部の温度が上昇し始める(図5の時刻t1を参照)。そこで、まず、下部温度センサ23により検出されるフィルタ下部の温度、及びその上昇勾配を監視して、それらがいずれも適正範囲に含まれるように空気の供給量(以下、簡略に給気量ともいう)を調整する。
【0064】
すなわち、最初に上部及び下部のフィルタ温度の勾配ΔT1,ΔT2の値がいずれも負であるかどうか判定し(ステップS3)、いずれも負値であれば(YES)未だダストの燃焼が始まっていないので待機する。一方、いずれかが正値であれば(NO)ステップS4に進み、ここではフィルタ上部の温度勾配ΔT1が零以上かどうか、即ち温度勾配ΔT1が零若しくは正値であるか、それとも負値であるか判定する。
【0065】
この判定がYESの場合、フィルタ下部の温度勾配ΔT2も零以上である可能性があるので、これを判定すべく後述のステップS10に進む。一方、判定がNOでフィルタ上部の温度勾配ΔT1が負値であれば、前記ステップS3でNOであったことから、フィルタ下部の温度勾配ΔT2は零以上でなくてはならないので、フィルタエレメント5の下部においてダストの燃焼が開始したとみなして、このフィルタ下部の検出温度T2を空気量の制御に用いるフィルタ温度Tfとする(ステップS5)。
【0066】
そして、前記フィルタ温度Tf、及びその勾配ΔTfがいずれも適正範囲に含まれるかどうか判定して(ステップS6)、例えばフィルタの温度上昇が所定以上に急である等、フィルタ温度Tf乃至その上昇勾配ΔTfが高すぎるときにはステップS7に進み、予め決めてある設定値だけバルブ26の開度を小さくして、フィルタへ供給する空気の量を減少させる。
【0067】
反対に、例えばフィルタ温度Tfが所定値未満である等、温度Tf乃至その上昇勾配ΔTfが低すぎるときにはステップS8に進み、予め決めてある設定値だけバルブ26の開度を大きくして、フィルタへの給気量を増大させる。また、それらのいずれでもないとき、即ちフィルタ温度Tf乃至その上昇勾配ΔTfが何れも適正範囲にあるときには、バルブ26の開度は変更しない。
【0068】
続くステップS9ではプロセスコントローラ30の終了判定部30cが、後述するようにフィルタ再生の終了時期かどうか判定し、終了時期でなければ(NO)ステップS3に戻って前記した制御手順を繰り返し実行する(ステップS3〜S8)。
【0069】
つまり、フィルタエレメント5の下方から徐々にダストが燃焼することに着目し、再生初期の所定期間はフィルタ下部の温度状態、即ちその温度T2乃至上昇勾配ΔT2に応じてバルブ26の開度を制御し給気量を調整するものであり、こうすることで、フィルタ再生の初期に給気量が多くなりすぎて燃焼が急に立ち上がることを阻止しながら、速やかにダストを燃焼させて除去することが可能になる。
【0070】
そうしてフィルタエレメント5におけるダストの燃焼がその下部から上方に向かって進行すると、暫くして上部温度センサ22による検出温度T1が低下から上昇に転じるから、前記ステップS4においてYESと判定してステップS10に進み、ここではフィルタ下部の温度勾配ΔT2が零以上かどうか、即ち温度勾配ΔT2が零若しくは正値であるか、それとも負値であるか判定する。この判定がNOであれば後述のステップS12に進む一方、判定がYESであればステップS11に進んで、今度はフィルタ上部の検出温度T1が下部の検出温度T2以下かどうか判定する(T1≦T2?)。
【0071】
この判定がYESでT1≦T2であれば前記ステップS5に進んで、温度の高い方のフィルタ下部の検出温度T2を空気量の制御に用いるフィルタ温度Tfとする一方、判定がNOでT1>T2であればステップS12に進んで、フィルタ上部の検出温度T1をフィルタ温度Tfとする。そして、前記したステップS6〜S8に進んでフィルタ温度Tfに基づくバルブ26の開度の制御を実行する。
【0072】
つまり、この実施形態では、フィルタ上部、下部の検出温度T1,T2のいずれか一方のみが上昇しているときには、その温度をフィルタ温度Tfとし、いずれもが上昇しているときにはそのうちの高い方をフィルタ温度Tfとして、フィルタへの給気量の制御に用いる。こうすると、フィルタ再生の初期にその下部の温度が高い所定期間は、当該フィルタ下部の温度状態に基づいて給気量の制御が行われ、その後、ダストの燃焼部位がフィルタ上部に移行して、この上部の温度が高くなるのに伴い、当該フィルタ上部の温度状態に基づく給気量の制御に切替わることになる。
【0073】
その後は前記のようにステップS6〜S8において、上部温度センサ22からの信号に応じてバルブ26の開度を制御し、フィルタエレメント5への給気量を調整するとともに、プロセスコントローラ30においては圧損係数演算部30dが差圧センサ16からの信号と流量センサ27からの信号とに応じて、フィルタ上下の空気流の圧損係数を演算しており、こうして演算される圧損係数と前記上部温度センサ22による検出温度T1とに基づいて終了判定部30cが、フィルタ再生の終了時期を判定する(ステップS9)。
【0074】
例えば、上部温度センサ22による検出温度T1が所定値以下にまで低下するか、或いは、前記のような調整部30bによる給気量の調整によって給気量を増やしても、フィルタ上部温度T1が殆ど上昇しなくなり、その上昇割合ΔT1が所定値未満になれば、フィルタエレメント5の上部にも残存するダストがなくなったと判断し(終了条件成立:ステップS9でYES)、バルブ26を閉じてフィルタ室4への空気の供給を停止し(ステップS13)、フィルタ再生制御を終了する(エンド)。
【0075】
−再生時のフィルタ温度の変化−
次に、前記の如き制御によるフィルタ再生の開始から終了までに亘って、フィルタ温度T1,T2が変化する様子の一例を図5に示す。このグラフは横軸に時間の経過を表し、縦軸にはフィルタ温度T1,T2を表したもので、実線で示すグラフが下部温度センサ23によるフィルタ下部の温度T2の検出値であり、破線で示すのはフィルタ上部の温度T1の検出値である。
【0076】
まず、プラントの運転停止後には、前記したように停止準備運転が行われるが、このとき、図の左端に示すようにフィルタ室4の温度は上部及び下部の双方で同様に低下する。フィルタ室4の上部には相対的に暖かいガスが対流するので、破線のグラフに示すように上部の温度の方が高くなっている。そして、時刻t1において、実線のグラフで示すフィルタ下部の温度T2が所定値になってフィルタ再生が開始されると、フィルタ室4に下方から供給される空気によってダストの燃焼が始まり、フィルタ下部の温度T2が上昇し始める。
【0077】
こうしてフィルタ下部においてダストの燃焼が始まる一方で、これにより空気が消費されることから暫くの間、フィルタ上部でのダストの燃焼は始まらず、破線のグラフで示すようにフィルタ上部の温度T1は低下を続ける。そして、新たな空気の供給に連れて徐々にフィルタエレメント5の上側に向かって燃焼が進んでゆくと、フィルタ上部の温度T1が低下から上昇に転ずる(時刻t2)。
【0078】
その後、暫くの間はフィルタ上部及び下部の双方で同じように温度が上昇するが、或るところでフィルタ下部の温度の上昇が鈍り(時刻t3)、徐々に低下するようになる。この結果として、図の例では時刻t3においてフィルタ上部温度T1がフィルタ下部温度T2を上回り、フィルタ室4への給気量の調整が、フィルタ上部温度T1に基づくものに切替わっている。
【0079】
図の例では破線で示すフィルタ上部の温度T1が時刻t3以降も上昇しているが、これは、前記したように上部温度センサ22からの信号に応じてバルブ26の開度が制御され、フィルタ室4への空気の供給量が調整されるためである。このときのフィルタ上部の温度T1は、一例としてダスト中の灰の溶融温度(例えば600℃くらい)よりも少しだけ低くなるように維持される。一方、フィルタ下部の温度T2は時間の経過とともに徐々に低下してゆく。
【0080】
そして、フィルタエレメント5に付着していたダストが概ね燃え尽きると、その後は、いくら給気量を増やしてもフィルタ上部の温度T1を維持できなくなって、図の右端に示すように破線のグラフも低下するようになり、これが所定値になった頃に(時刻t4)フィルタの再生が終了することになる。
【0081】
以上、説明した実施の形態に係るフィルタの再生方法によると、ガス化発電プラントにおいてガス化炉1の運転を停止した後に、フィルタ室4の温度がダスト中のチャーの着火温度よりも低くなる前に、そこへ空気(外気)を供給することによって、フィルタエレメント5に付着しているダスト中のチャーを燃焼させて、そのダストを除去することができる。その際、化石燃料や電力を無駄に消費することがないから経済的であり、環境適合性も高い。
【0082】
しかも、フィルタ再生の際にフィルタ室4にはエアポンプ24によって外気を供給するだけであり、設備コストの上昇は最低限で済むから、比較的小規模なガス化発電プラントにも適用しやすい。
【0083】
また、この実施形態においてはフィルタ室4に下方から空気を供給し、上下に延びるフィルタエレメント5のダストが下部から上方に向かって徐々に燃え進むようにしており、そのときに給気量を、フィルタ下部の温度T2が高い初期の所定期間はその下部の温度状態に基づいて、また、その後はフィルタ上部の温度状態に基づいて調整することにより、フィルタエレメント5の損傷を防止しながら、付着しているダストを速やかに燃焼除去することができる。
【0084】
また、フィルタ温度T1,T2だけでなくその上昇勾配ΔT1,ΔT2に基づいて給気量をきめ細かく調整することにより、フィルタエレメント5の損傷をより確実に防止することができる。温度センサ22,23によるフィルタ温度の検出値は、あくまでセンサ付近の雰囲気温度であり、これがあまり高くないとしてもその上昇勾配が大きいときには、局所的に燃焼が激しくなって温度が急上昇し、その部位のみにてダスト中の灰が溶融したり、フィルタ自体が溶融したりするおそれがあるからである。
【0085】
さらに、前記の実施形態ではフィルタ再生の終了時期を、フィルタ上部の温度T1だけでなく、フィルタ上下の差圧とガス流量とを加味して、即ちフィルタエレメント5における通気抵抗も考慮して判定するようにしているので、その判定の精度が向上し、フィルタエレメント5に付着しているダストを十分に除去して、除塵機能を回復させることができる。
【0086】
−他の実施形態−
なお、上述した実施形態の説明は本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、或いはその用途を制限することを意図するものではない。例えば、前記実施形態においてはフィルタ再生の際に2つの温度センサ22,23によってフィルタの上部及び下部の双方の温度T1,T2を検出し、その温度勾配ΔT1,ΔT2が零乃至正値であるもののうちの高い方の温度に基づいて、フィルタへの給気量を調整するようにしているが、これに限るものではない。
【0087】
例えば、フィルタ再生の初期は下部温度センサ23からの信号に基づいて給気量の制御を行うものとし、その後、ダストの燃焼がフィルタ下部から上方に向かって進行して、下部温度センサ23による検出温度の勾配ΔT2が所定値以下になるか、該下部温度センサ23による検出温度T2が上部温度センサ22による検出温度T1と同じになるか、或いは該上部温度センサ22による検出温度T1が低下から上昇に転じるか等、種々のタイミングでフィルタ上部温度T1に基づく給気量調整に切替えるようにしてもよい。
【0088】
また、温度センサの数は、前記実施形態のように上部、下部の2つには限定されず、簡略には1つであってもよいし、反対に3つ以上としてもよい。3つ以上の温度センサを用いるのであれば、上述した実施形態と同じく、その検出温度が上昇しているものの中で温度の最も高いセンサからの信号に応じて、給気量の制御を行うようにするのが好ましい。
【0089】
また、そうして複数のセンサを用いる場合の各センサの配置についても何ら限定されるものではない。前記の実施形態では上下に長いフィルタエレメント5の形状に対応して、その上部及び下部にそれぞれ温度センサ22,23を配設しているが、これに限ることはない。フィルタエレメント5を一方向に長い形状とする必要もなく、その長手方向に並べて複数の温度センサを配置する必要もない。
【0090】
フィルタエレメント5の形状に依らず、それに所定方向の一方から空気を供給して、他方に向かい徐々にダストを燃焼させる場合には、その所定方向の一方から他方に向かい互いに離間させて複数の温度センサを配設するのが好ましい。この場合には、フィルタ再生の初期には、前記の所定方向一方の温度センサからの信号に応じて給気量を制御し、フィルタ再生の終盤になれば、前記所定方向の他方の温度センサからの信号に応じて給気量を制御するのがよい。
【0091】
また、前記の実施形態においてフィルタエレメント5はセラミックフィルタであるが、これは、SUSやインコネルのような金属製のフィルタであってもよい。前記実施形態においてフィルタエレメント5は、ガス化炉1と共通の二重殻構造のケーシング20内に収容されているが、これに限ることもなく、ケーシング20は二重殻構造でなくてもよいし、フィルタエレメント5をガス化炉1と共通のケーシング20に収容しなくてもよい。
【0092】
また、前記実施形態においては図2に示すように、フィルタエレメント5をガス化炉1の回りを囲むように配置しているが、これに限らず、例えば図1に模式的に示すように、フィルタエレメント5を専用のフィルタハウジングに収容して、ケーシング20内においてガス化炉1の隣に配置してもよい。この場合にはフィルタ室4は、ガス化炉1のケーシング20内に形成されるのではなく、それとは別個に前記フィルタハウジング内に形成される。
【0093】
また、前記実施形態においてはガス化発電プラントとして、バイオマスを燃料とするものを例示しているが、これは、例えば石炭ガス化発電プラントのようにバイオマス以外の燃料をガス化して用いるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係るフィルタの再生方法は、フィルタに付着したダストを燃焼させて除去する際に化石燃料や電力を無駄に消費することがなく、設備コストの上昇を最小限に抑制できるもので、例えばバイオマスを燃料とするガス化発電プラントのような比較的小規模なプラントに適用して好適である。
【符号の説明】
【0095】
1 ガス化炉
4 フィルタ室
5 フィルタエレメント
20 ケーシング
22 上部の温度センサ
23 下部の温度センサ
24 エアポンプ(空気供給手段)
25 外気供給管(空気供給手段)
26 バルブ(空気供給手段)
30 プロセスコントローラ(制御手段)
30a 開始判定部
30b 調整部
30c 終了判定部
30d 圧損係数演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化炉の生成ガスからダストを取り除くためのフィルタを対象として、そのフィルタから付着したダストを除去し、除塵機能を回復させる再生方法であって、
前記ガス化炉の運転を停止した後に、時間の経過とともに低下する前記フィルタの温度が前記ダストに含まれるチャーの着火温度よりも低くなる前に、当該フィルタへの空気の供給を開始し、前記チャーを燃焼させてダストを除去することを特徴とするフィルタの再生方法。
【請求項2】
前記フィルタの温度状態を検出するためのセンサを設け、このセンサにより検出される温度乃至その上昇及び下降勾配に基づいて空気の供給量を調整する、請求項1に記載のフィルタの再生方法。
【請求項3】
前記センサを複数設け、その検出温度が上昇しているものの中で該検出温度の最も高いセンサからの信号に応じて空気の供給量を調整する、請求項2に記載のフィルタの再生方法。
【請求項4】
前記フィルタにおいて生成ガスの通過する壁部に、所定方向に離間させて前記センサを複数、配設し、
前記フィルタに前記所定方向の一方から空気を供給して、初期の所定期間はその所定方向の一方のセンサからの信号に応じて空気の供給量を調整し、その所定期間の経過後は前記所定方向の他方のセンサからの信号に応じて空気の供給量を調整する、請求項2又は3のいずれかに記載のフィルタの再生方法。
【請求項5】
前記複数のセンサ全てによる検出温度の上昇割合が所定値未満になったとき、前記フィルタの再生の終了時期と判定する、請求項3又は4のいずれかに記載のフィルタの再生方法。
【請求項6】
さらに、前記フィルタを通過する生成ガスの流量と、その上流側及び下流側の差圧とを加味して該フィルタの再生終了時期を判定する、請求項5に記載のフィルタの再生方法。
【請求項7】
燃料をガス化するためのガス化炉と、このガス化炉の生成ガスからダストを取り除くためのフィルタとを備えたガス化発電プラントであって、
前記フィルタにはその温度状態を検出するためのセンサが複数、配設され、
前記フィルタに空気を供給するとともに、その供給量を調整可能なバルブを備えた空気供給手段と、
前記センサからの信号に応じて前記バルブの開度を制御し、前記空気の供給量を調整する制御手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、
前記ガス化炉の運転停止後に、前記複数のセンサのいずれかにより検出されるフィルタ温度が時間の経過とともに低下して、前記ダストに含まれるチャーの着火温度よりも低くなる前に当該フィルタへの空気の供給を開始し、前記チャーを燃焼させてダストを除去するように構成されている、ことを特徴とするガス化発電プラント。
【請求項8】
前記制御手段は、前記センサにより検出されるフィルタの温度乃至その上昇及び下降勾配に基づいて空気の供給量を調整するものである、請求項7に記載のガス化発電プラント。
【請求項9】
前記制御手段は、前記複数のセンサのうち、その検出温度が上昇しているものの中で該検出温度の最も高いセンサからの信号に応じて、空気の供給量を調整するものである、請求項7又は8のいずれかに記載のガス化発電プラント。
【請求項10】
前記フィルタにおいて生成ガスの通過する壁部には、前記複数のセンサが所定方向に離間して配設され、
前記空気供給手段は、前記フィルタに前記所定方向の一方から空気を供給するように構成され、
前記制御手段は、前記空気供給手段によるフィルタへの空気の供給を開始した後、初期の所定期間は前記所定方向の一方のセンサからの信号に応じて空気の供給量を調整し、その所定期間の経過後は前記所定方向の他方のセンサからの信号に応じて空気の供給量を調整するものである、請求項7〜9のいずれか1つに記載のガス化発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−1649(P2012−1649A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138984(P2010−138984)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構、バイオマスエネルギー地域システム化実験事業 高知県仁淀川流域エネルギー自給システムの構築において考案された発明であり、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】