説明

フィルタエレメントを製造する方法及び該方法により得られるフィルタエレメント

【課題】
【解決手段】本発明は、多孔質の本体を有するフィルタエレメントであって、該本体は、底部分と、頂部分とから成り、上記底部分と頂部分とは、その間にキャビティ構造体を画成し、該キャビティ構造体は、該キャビティ構造体内に蓄積したろ液を排出するための出口を有する、上記フィルタエレメントを製造する方法に関する。骨の折れる後処理すなわちアフタートリートメントを回避するため、本発明の方法は、上記底部分を第一の鋳型内にて粉末射出成形するステップと、第一の鋳型を開放するステップと、本体の所望のキャビティ構造体に相応する形状のコアエレメント部分を底部分上に配置するステップと、上記頂部分を第二の鋳型内にて上記底部分及びコア部分上に粉末射出成形するステップと、第二の鋳型を開放し且つ、このようにて製造されたコア部分を有する未焼成のフィルタエレメントを除去するステップとを備える、未焼成のフィルタエレメントを形成するステップと、未焼成のフィルタエレメントを焼結するステップとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質の本体を有するフィルタエレメント、特に、ディスク形状のフィルタエレメントであって、上記本体が底部分と頂部分とから成り、上記底部分と頂部分とがその間にキャビティ構造体を画成し、該キャビティ構造体が該キャビティ構造体内に蓄積したろ液を排出するための出口を有する、上記ディスク形状のフィルタエレメントを製造する方法に関する。更に、本発明は、かかる方法にて得ることのできるフィルタエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
媒質をろ過するため、ディスク形状のフィルタエレメントがしばしば使用される。円板状のフィルタプレートの形態をしたフィルタエレメントは、例えば、フィルタエレメントがクロスフローろ過にて使用し得る設計とされた、国際公開第WO01/85317号パンフレットから既知である。
【0003】
この目的のため、中央の通り穴を有する複数のフィルタプレートが積み重ねた形態にて中空シャフト上に組み立てられ、該中央の通り穴は中空シャフトを受け入れる。フィルタプレートには、ろ液の内部排出通路の形態をしたキャビティ構造体が設けられており、該ろ液の排出通路は、排出通路内に蓄積したろ液を排除すべく中空シャフトの内部に開放している。
【0004】
上記公開公報に開示されたフィルタプレートは、その間に、ろ液の排出通路を画成する多孔質のセラミック材料で出来た2つの本体部分を備えている。該2つの本体部分は、互いに接合され且つ、それらの外面上に少なくとも1つの膜フィルタ層が設けられている。フィルタプレートは、中空シャフトに固定状態に接続され且つ、クロスフローろ過する間、シャフトと共に回転する。
【0005】
フィルタプレートの積み重ね体は、処理すべき媒質が供給されるハウジング内に配置されている。ろ液は、フィルタプレートのセラミック材料の孔に侵入し且つ、ろ液の排出通路内に収集され、また、中空シャフトの内部空間内に排出され、この内部空間から回収される。処理すべき媒質の、保持され、セラミック材料の孔内に入らない部分は、別個の出口を介してハウジングから除去される。
【0006】
クロスフローろ過において、国際公開第WO01/85317号パンフレット及び国際公開第WO00/47312号パンフレットに記載されたように、フィルタプレートは、複数の中空シャフト上に積み重ね体の形態にて設けられ且つ、互いにかみ合う形態に配置されている。シャフトが回転状態に駆動されると、1つの積み重ね体のフィルタプレートは、他の1つの積み重ね体のフィルタプレートに対して動いて乱流を生じさせ、この乱流は、フィルタプレートの膜表面上に堆積した固体粒子を除去する。その結果フィルタ装置の作動時間をより長くできることになる。かかる操作は、顕著な力に耐えることのできる高精度フィルタプレートを必要とする。
【0007】
国際公開第WO01/85317号パンフレットによれば、フィルタプレートは、スリップ鋳造法により製造され、又はこれと代替的に、乾燥粉末を圧縮することにより製造される。
【0008】
その双方の方法において、最初に、ろ過の排出通路を含むフィルタエレメント本体が製造される。その後、該本体の外面の頂部にろ過層が設けられる。
その双方の方法によれば、フィルタエレメント本体の底部分が最初に製造される。未だ鋳型内にある間、底部分には、ろ液の排出通路を形成する働きをする鋳型コアが配置される。その後、第二の本体部分が底部分の頂部及びコアエレメントに形成される。最後に、フィルタエレメントの本体の表面頂部にろ過層が提供される。
【0009】
スリップ鋳造法を用いるとき、コアエレメントは、例えば、ワックス、樟脳、繊維状ウェブ、マット又はマイクロセルラーゴムのような、熱が侵入したとき、蒸発する材料にて作られる。
【0010】
乾燥粉末が使用され且つ圧縮されるとき、コアエレメントは、より高い温度及び(又は)化学物質が加えられたとき、蒸発し又は溶解する材料にて作られる。
【特許文献1】国際公開第WO01/85317号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO00/47312号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記双方の方法は、特に、フィルタプレートに対しその最終的に高精度の形状を提供するように、フィルタプレートを仕上げるべく、追加的なアフタートリートメントを必要とするという不利益な点を有する。
【0012】
本発明の目的は、ろ液を除去するため上記本体内にキャビティ構造体を有する多孔質の材料からフィルタプレートを製造する方法であって、骨の折れるポストトリートメントまたはアフタートリートメントを不要にする製造方法を提供することである。更に、本発明の1つの目的は、かかる方法によって得ることのできるフィルタ本体を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、以下のステップを含む方法によって、実現される。
a)未焼成のフィルタエレメントを形成するステップであって、上記底部分を第一の鋳型内にて粉末射出成形するステップと、第一の鋳型を開放するステップと、本体の所望のキャビティ構造体に相応する形状のコアエレメント部分を底部分上に配置するステップと、上記頂部分を第二の鋳型内にて上記底部分及びコア部分上に粉末射出成形するステップと、第二の鋳型を開放するステップと、このように製造されたコア部分を有する未焼成のフィルタエレメント(green filter element)を除去するステップとを備える、未焼成のフィルタエレメントを形成するステップ、及び
b)上記未焼成のフィルタエレメントを焼結するステップ。
【0014】
本発明の基本的な特徴は、粉末射出成形法を使用する点にある。粉末射出成形法において、材料、特に、セラミック、プラスチック又は金属粉末は、可塑剤と混合され、最終的に、接着剤と混合され、成形可能な出発原料を製造する。この出発原料は、高温度にて鋳型内に供給される。好ましくは、可塑剤は、同時に接着剤としても役立つように選ばれる。
【0015】
本発明のフィルタエレメントは、特に、上述したようにクロスフロー技術にて使用されるとき、円板状の形態にあることがしばしばである。しかし、本発明は、かかる円板状の構造体にのみ限定されず、任意のその他の形状、特にかなり複雑な幾何学的設計のフィルタエレメント及びフィルタ本体を製造するのに特に、適している。
【0016】
出発原料としてプラスチック、セラミック又は金属粉末が使用される場合、射出成形法にて製造された成形本体は、冷却され且つ、次に、鋳型から取り出される。かかる本体は、素地(green body)と称される。このステップの後、出発原料の可塑剤/接着剤が除去され、その後、素地が焼結されることになる。
【0017】
粉末射出成形法において、極めて高品質の表面が得られ、このため、研削または研磨(abradingまたはpolishing)のような全てのアフタートリートメントは不要である。同様に、フィルタ本体のいかなるアフタートリートメント又はポストトリートメントも行わずに、高い寸法精度が得られる。更に、本発明の方法は、特別な表面構造体を製造することも可能性にする。特に、本体の随意的で且つ極めて複雑な内部及び(又は)外部の設計を自由度に富み且つ、経済的な方法にて実現することができる。更に、本発明の方法は、スクラップ比率を減少させることを許容する。更に、製造されたフィルタエレメントは、上述したように、フィルタエレメントがクロスフローろ過技術にて使用されるならば、重要な前提条件である、機械的応力に対する高い抵抗性を示す。
【0018】
本発明の第一の特定の実施の形態に従い、キャビティ構造体を提供するコアエレメントが製造される。このコアエレメントは、未だ未焼成の状態にある間に、本体の底部分上に配置され、次に、頂部分が射出成形される。
【0019】
本体の頂部分は、底部分が未だ未焼成状態にある間に(且つ、最終的に、可塑剤/接着剤を除去する前に)製造され、その結果、好ましくは、2つの本体部分は単一構造体のように振舞う程度まで2つの部分間にピッタリと合う形態が形成されることになる。
【0020】
所望のキャビティ構造体によっては、互いに相互に接続されていない幾つかのコアエレメント部分から成るコアエレメントを使用することが望ましいことがある。単一のコアエレメントの設計を使用することが好ましいその他の場合がある。
【0021】
本発明の更に特定の実施の形態において、コアエレメントは、所望のキャビティ構造体を提供する中空ファイバにより実現される。好ましくは、円板状のフィルタプレートの場合、中空ファイバは、ディスクの中央まで伸びる半径方向に配置されるものとする。
【0022】
好ましくは、中空ファイバは、フィルタ本体と同一の化学的組成を有する材料にて出来たものとする。
本発明の別の実施の形態において、フィルタ本体内にキャビティ構造体を提供するコアエレメントは、射出成形法が終わったとき、溶媒(例えば、水)により溶解させ且つ、除去することのできる、可溶性材料、特に、水溶性材料にて出来たものとすることができる。
【0023】
コアエレメントの原材となる材料は、粉末を乾燥状態にてコアエレメントの所望の形態に圧縮するとき、所望の構造体となるような形状とすることができる。好ましい材料は、例えば、砂糖又は塩である。
【0024】
本発明の更に別の実施の形態において、コアエレメントは、可溶性のバインダ材料により互いに接着された、例えば、細砂のような、微細に粒状化した不活性な粉末にて出来たものとすることができる。好ましくは、例えば、シロップ又はアミラーゼのような、水溶性のバインダ材料、特に水溶性の炭水化物であるものとする。かかる接着材料は、射出成形法の後、溶剤により、特に、水により溶解し、次に、本体を振るか又は分離した不活性なコアエレメント材料を吸い出すことにより、不活性な粉末材料を除去することができる。このことは、溶解させるべきものは接着材料のみであるという利点を有する。
【0025】
本発明の同様に好ましい実施の形態において、コアエレメントは、接着材料と混合される微細な粒状化した不活性な粉末材料にて出来ている一方、接着材料は、150℃以上の温度にて蒸発し又は焼け尽きる。
【0026】
この点にて好ましい接着剤は、例えば、多糖類、ポリビニルアルコール、澱粉調合剤及びセルロース誘導体である。
コアエレメントが熱の侵入及び材料を蒸発させることにより除去される、国際公開WO01/85317号の教示と相違して、不活性な微細な粒子材料又は粉末ではなくて、接着材料の部分のみを除去すればよく、また、この部分は、加熱炉の排気を介して出るから、上述した代替法は、焼結段における加熱炉の排気の負荷を遥かに少なくする。
【0027】
製造する間、フィルタ本体の底部分及び頂部分と同一の化学的組成を有し且つ、それ自体、ろ液の排出口を提供するキャビティ構造体を有する材料にて出来たコアエレメントを最初に製造することが望ましい。好ましくは、かかるコアエレメントは、また、上述した粉末射出成形法を使用して製造されるものとする。
【0028】
かかる場合、第一に、コアエレメントの下側部分は、その未焼成の状態に製造され、また、この未焼成の状態にあるとき、上側部分は、下側部分に射出成形される。この場合にも、下側部分が未だその未焼成状態にあり且つ、接着材料を除去する前に、上側部分を製造することにより、必要であるならば、中空のコアエレメントの上側部分と下側部分との間にピッタリと合う形態が実現されよう。
【0029】
本発明の更に別の実施の形態において、粗く粒状化した多孔質の材料のコアエレメントはフィルタエレメントの底部分上に配置される。平均孔寸法は、20μmないし150μm、より好ましくは、40μmないし80μmの範囲にあることが好ましい。
【0030】
フィルタ本体の頂部分を射出成形する間、粗に粒状化した多孔質の材料の孔を開放し且つ非閉塞状態に保つ働きをするかかるコアエレメントに圧力が同時に加えられよう。これらの孔は、ろ液を収集し且つ、ろ液を排出するのに必要なキャビティ構造体を提供する。好ましくは、粗く粒状化した多孔質のコアエレメントは、フィルタエレメントの底部分及び頂部分と同一の化学的組成の材料にて出来たものとする。
【0031】
本発明の別の代替的な方法によれば、粒子寸法の異なる2つの粉末を射出成形する一方、第一の粗いほうの粉末は、鋳型の内側部分内に射出され、より微細なほうの粉末は、鋳型の外側部分内に射出される。このため、粗く粒状化した材料は、粗い孔を備えるコア部分又はコア構造体を形成し、より微細な破砕された微粒子材料は、フィルタ本体の外側部分を形成する。
【0032】
より微細に粒状化した粉末は、5μmないし50μm、好ましくは、10μmないし35μmの範囲の粒子寸法を有し、また、より粗い粉末は、80μmないし400μm、好ましくは、100μmないし250μmの範囲の粒子寸法を有することが望ましい。
【0033】
更なる代替的な方法に従って、キャビティ構造体が提供され、該キャビティ構造体内にて、特定の中空空間を開放状態に保つ働きをする気体が所定の領域内にてフィルタエレメントの鋳型内に吹き込まれる。気体は、射出成形過程の間、複数のノズルを通じて鋳型内に吹き込まれ、所望のキャビティ構造体を提供する。
【0034】
好ましくは、射出成形中、気体を吹き込むことによりキャビティ構造体を実現する中空部分の清掃は、使用される鋳型の表面におけるリブ状突起により向上される。リブ状突起のため、本体のより厚い領域及びより薄い領域が形成される。鋳型の内部にて中空部分を空にし又は中空部分を提供するために使用される気体は、より厚い部分に向けられ且つ、これら領域にて中空部分を次第に作り出すことが好ましい。
【0035】
本発明の主たる有利な点は、例えば、国際公開第WO01/85317号パンフレットに記載されたようにファイバのマット又はウェブ、膨張ゴム又はワックスのような、温度が上昇したとき溶解し又は蒸発する材料で出来たいわゆるロストコア構造体を使用することに伴う不利益な点を回避する点にある。かかる型式のロストコア構造体を使用することは、フィルタ本体を加圧したとき、コア構造体の材料は弾性的に変形する一方、成形過程自体に起因する圧力を除去した後、フィルタ本体に裂け目又は亀裂を生じさせるのに十分なコア構造体の復帰力が作用するという危険性を含む。このことは、最終的に、高いスクラップ率の原因となる。
【0036】
粉末射出成形技術において、概して2つの異なるタイプの方法がある。第一の方法は、熱成形法又は低圧射出成形法と称され、他方の方法は実際的な意味にて射出成形法と称される。
【0037】
射出成形するとき、可塑剤(plastifier)及び、最終的には熱可塑性樹脂又はデュロプラスチック(duroplastic)樹脂から選択された接着剤を使用し、この接着剤を焼結粉末と混合させて粘性を持つ溶融可能な集合体(約100ないし1000Pasの粘度)となるようにする。
【0038】
焼結する粉末は、可塑剤/接着剤と共に、加熱された混練機内にて混合され、その後、集合体が粒状化される。可塑剤/接着剤とは別に、更に、軟化剤及び滑り剤が存在するようにしてもよい。射出成形用の混合体は、成形品(フィルタ本体)を製造するため射出成形機にて使用される。この過程は、約120ないし200℃の温度及び典型的に50MPa以上の作動圧力にて行われる。可塑剤/接着剤を素地から除去するため、これら素地は、使用される可塑剤/接着剤の性質によって決まる温度まで加熱しなければならない。ポリオレフィンベースの可塑剤/接着剤が使用されるとき、典型的に、素地は、第一のステップにて150ないし170℃の温度、また、第二のステップにて約300℃の温度まで加熱される。
【0039】
付与される高圧力及び高温度の理由のため、鋳型はスチール等にて出来たものでなければならない。このため、かかる型式の鋳型の高コストに釣り合う多量の数にて製品を製造するときのみ射出成形法は有用である。
【0040】
少量の製品のみを製造する場合は、いわゆる熱鋳造法のほうが好ましい。熱鋳造のとき、例えば、パラフィン又はその他のワックスを主成分とする焼結粉末及び可塑剤/接着剤が加熱したボールミル内にて混合される。これにより作られた混合体は冷えた鋳型内に直接供給され、この鋳型にて、混合体は鋳造に伴って凝固する。この過程にて使用される温度は、典型的に、60ないし100℃の範囲にあり、付与された圧力は、典型的に、0.2ないし5MPaの範囲にある。可塑剤/接着剤を除去するとき、鋳型を250℃以上の温度まで加熱する必要はない。相対的に穏やかな圧力及び温度状態のため、ケイ素を主成分とする鋳型を使用することができる。これらの鋳型はより複雑な設計も許容する。
【0041】
粉末射出成形法及び熱鋳造技術の詳細な説明は、1995年、ケルン、ドイチャー・ベルトシュアフツディエンスト(Deutscher Wirtschaftsdienst)のイーデー.ジョセンクリエゲスマン(Ed.Jochen Kriegesmann)による「Technische keramische Werkstoffe」第3.4.8.0及び第3.4.8.1章にみられる。
【0042】
好ましくは、フィルタ本体の外面には、少なくとも1つのろ過層が提供されるものとする。好ましくは、該ろ過層は微細な多孔質膜であるものとする。この膜は1つ又は幾つかの層にて出来たものとすることができ、また、通常、フィルタ本体の寸法と比較して、極めて薄い。かかる膜は、アルミナ、炭化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ケイ素、ジルコニア、アルミン酸カルシウム、ゼオライト及び(又は)アルモシリケイト(alumosilicate)を主成分として作られたものとすることができる。アルミナ、炭化ケイ素及び二酸化ケイ素はまたフィルタ本体自体の製造用としても使用可能である。膜は0.005μmないし1.2μmの範囲の平均孔径を有することが好ましい。
【0043】
本発明に従った、フィルタ本体は、色々なキャビティ構造体を有することができる。本発明のフィルタ本体のキャビティ構造体は、連続的なもの、すなわち、相互に接続し又は単一の、板の中央の中空空間に対して開放した構造体とすることができ、又は、該構造体は、例えばフィルタプレートの中央開口部のような共通の出口に達する複数のキャビティとして設計することもできる。
【0044】
特に、回転するフィルタ本体を使用するクロスフローろ過用の装置にて使用するため、ある種のら旋状のキャビティ構造体を使用することが望ましい。これは、半径方向に伸びる湾曲リッジによって実現することができる。
【0045】
好ましくは、本発明の方法は、次のようにして行われる、すなわち、フィルタ本体の底部分が第一の鋳型内にて形成された後、第一の鋳型の上半体が除去され、底部分が第一の鋳型の下半体内に保持され、コアエレメントが底部分上に配置され、そして、フィルタエレメントの全体を収容する第二の鋳型を形成し得るよう第一の鋳型の下半体と相補的な更なる上鋳型半体が使用されるような閉じた鋳型が提供されるようにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明は、幾つかの実施例及び図面を通じて更に説明される。
図1aには、円板状フィルタエレメント1の形態をした本発明の1つの実施の形態が概略断面図にて示されている。該フィルタエレメント1は、半径方向に伸びるリッジ3aないし3hにより互いに部分的に分離された、相互に接続された空隙容積からなるキャビティ構造体2を備えている。該フィルタエレメント1は、フィルタエレメント及びそのキャビティ構造体からそれぞれ受け取ったろ液に対する導管として機能する中空シャフトを受け入れる作用を果たす中央通り穴4を有している。リッジ3aないし3hは、中央通り穴4にて始まり且つ、フィルタエレメントの周縁に対する方向に向けて伸びるが、周縁から特定の距離の手前にて終わり、リッジにより分離された隣接する空隙容積間の接続部を提供し、空隙容積の各々が互いに相互に接続され且つ、キャビティ構造体2を形成するようにする。
【0047】
図1bには、図1aのものと同様の設計を有するフィルタエレメント1の1つの代替的な実施の形態が示されている。これら2つの実施の形態の相違点は、リッジ3aないし3hの幾何学的形態にある。図1bのリッジ3aないし3hには、ろ液流体に対する通り穴4の方向に向けてモーメントを付与することにより、作動する間、円板状フィルタエレメント1が回転するとき、ろ液をキャビティ構造体2から排出するのを助ける湾曲形態の設計のものが示されている。このモーメントは、円板状フィルタエレメントが回転されたとき、ろ液流体に加わる遠心力に反作用する。
【0048】
図2a及び図2bに示した設計は、図1a及び図1bに関してそれぞれ説明した実施の形態と相違しており、リッジ3aないし3hは、通り穴4から始まり、円板形状のフィルタエレメント1の縁まで伸びている。これにより、互いに相互に接続されず、中央通り穴4に対して開放する個別的な分離した空隙容積2aないし2hが形成され、該中央通り穴4は、ろ液流体に対する導管として作用する中空シャフトを同様に受け入れる。
【0049】
図3aには、本発明に従った円板形状のフィルタエレメントを製造するため画成された鋳型5の設計が示されている。該鋳型5は、中央通り穴を有しており、この中央通り穴内には、等距離に配置された多数の射出ノズル6が配置されおり、これらのノズルは、気体を鋳型内に吹き込むことを許容する。フィルタ本体を形成するため射出成形過程中、気体が同時に粉末材料の射出方向と平行に吹き込まれる。気体が吹き込まれる領域にて、粉末射出成形過程にて使用した粉末材料は、堆積せず、このため、必要なキャビティ構造体を形成するための空隙容積が残る。この結果は、図3bに概略図にて示されている。本発明のこの特定の実施の形態に従って製造したフィルタエレメント1は、フィルタエレメント1の本体内に形成された多数の空隙容積7を内蔵しており、これらの空隙容積7は、フィルタエレメントの中央開口部4の周りにて規則的に配置され、また、通り穴4と流体的に連通する。通り穴4は、同様に、ろ液流体を空隙容積7から排出することを許容する中空シャフトを受け入れ得る設計とされている。
【0050】
図3aに示した鋳型5において、リッジ8が形成されており、これら部分における鋳型の内部空間を狭小にし、ノズル6を通じて射出された気体を空隙容積7に相応する制限領域に導くことを許容する。このように、リッジ8は、ノズル6を介して吹き込まれた気体を導くのみならず、キャビティ7が過大になるのも防止する。フィルタエレメント1が鋳型5から取り出されたとき、表面には、鋳型のリッジ8に相応する切欠きが観察される。場合によっては、フィルタ本体の外面を平坦にすることが望ましく、かかる場合、接着剤を除去し且つ、未焼成のフィルタ本体を焼結する前、これらの切欠きには、別個のステップにて焼結する材料を充填することができる。
【実施例1】
【0051】
焼結可能な粉末(平均粒子寸法30μmのAl)が、混合機内にてポリオレフィンベースの可塑剤/接着材料と混合され且つ粒状化される。かかる可塑剤/接着材料は、2つのステップにて除去できる点にて、好ましい。
【0052】
フィルタエレメントの底部分は、第一の(閉じた)鋳型内にて射出成形される(シリンダ温度は約140ないし150℃)。射出成形過程用に使用した装置は、機械型式オールラウンダ820S(ドイツ、ローフバーグのアーバーグ(Arburg)GmbH+Co.)であった。第一の鋳型の上側部分が除去される。底部分は第一の鋳型の下側部分に残される。
【0053】
この底部分上の頂部に、圧縮した砂糖又は塩で出来たコアエレメントが配置される。第一の鋳型の下側部分を別の上側部分と相補的なものとすることにより第二の鋳型が形成され、上述した材料を使用してフィルタエレメントの頂部分が射出成形される。この過程により、素地が製造される。この素地は第一のステップにて水で洗浄され、その結果、コア部分又はコアエレメントは分解され、また、第二のステップにおいて、素地は接着剤を除去し得るように160℃ないし300℃まで加熱される。その後、焼結ステップ(焼結温度は約1750℃)が続き、仕上がったフィルタ本体が形成される。
【0054】
典型的に、円板状フィルタエレメントの本体は、6mmの厚さを有する一方、クロスフローろ過にて使用されるコアエレメントの厚さは約1.5mmである。円板状フィルタエレメントの典型的な直径は、200mmである。
【0055】
砂糖又は塩で出来たコア部分は、円板状フィルタ本体1(図1a及び図1b参照)が中空シャフトを収容する中央開口部4を有するように、形成される。この構造体は、中空シャフトがフィルタ本体1と共に回転するクロスフローろ過過程にて使用される。キャビティ構造体は、リッジ3aないし3hにより互いに部分的に分離された、相互に接続した空隙容積により構成される。
【実施例2】
【0056】
この実施例におけるコアエレメントは、接着剤としてアミラーゼに基づくシロップ又は澱粉調合剤と混合させた石英粉末(平均粒子寸法50μm)の混合体にて出来ている。粒子寸法は決定的ではないが、平均値にて50μmとなるように選ぶことが好ましい。
【0057】
使用される射出成形粉末は、焼結粉末材料と、加熱するだけで除去することのできる可塑剤/接着剤(実施例1参照)とから成っている。コアエレメント内に保持されたシロップ又は澱粉調合剤は、接着剤を射出成形粉末から除去する前に、洗い流される。シロップ又は澱粉調合剤が分解したならば、石英粉末をルーズな形態にてキャビティから除去することができる。
【0058】
素地を洗う間に分解しなかったコア接着材料の部分は、素地を加熱する間、接着剤を除去するとき、焼け尽きる。上述した成分の場合、洗うステップを省略して焼け尽きさせるだけでコアエレメントから接着剤を除去することも可能である。フィルタ本体を焼結する前、分離したコアエレメントから生じる石英粉末を除去する。
【0059】
更なる処理に関しては、実施例1を参照。
【実施例3】
【0060】
フィルタエレメントの底部分が実施例1に従って射出成形され、粗い多孔質のコアエレメントが底部分に配置される。コアエレメントを製造するため、平均粒子寸法が100ないし200μmの範囲のAl粉末が使用される。
【0061】
フィルタエレメントの更なる製造過程は、実施例1にて説明した過程に従う。
実施例1におけるフィルタエレメントと相違して、コアエレメントは、フィルタ本体内に恒久的に留まり、コアエレメントの空隙容積はフィルタエレメントの本体のキャビティ構造体を実現する。
【実施例4】
【0062】
この実施例に従った製造過程は、コアエレメントが実施例3と同様にアルミナから成り且つ半径方向に配置された中空(セラミック)ファイバの形態であることを条件として、実施例3に対応する。使用可能なファイバは、例えばA.ゴールドバッハ(Goldbach)等のKeramische Zeitschrift 53(2001年)、1012ページないし1016ページの記載から既知のものである。
【0063】
適切な中空セラミックファイバは、好ましくは1mm以下、より好ましくは約0.6mmの外径を有する。中空ファイバの肉厚は50ないし100μmの範囲にあることが好ましい。かかる寸法は、上述したクロスフローろ過技術にて使用されるフィルタエレメントに特に当て嵌まる。
【0064】
フィルタ本体の頂部には、平均孔寸法0.01μmないし0.05μmの二酸化チタン(例えば、ドイツ国特許公開第195 03 703 A1号明細書を参照)で作られたろ過層が置かれる。
【0065】
更なる詳細については、実施例1にて説明した課程を参照。
【実施例5】
【0066】
実施例4と同様の過程において、フィルタプレートの表面の頂部には、更に、平均粒子寸法0.05μmないし0.1μmのジルコニアのろ過層が置かれる。
【実施例6】
【0067】
実施例4と同様の過程において、素地を焼結した後、フィルタ本体1の外面は平均孔寸法0.5ないし1.0μmのアルミナで出来た微細な多孔質膜によって覆われる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第一の実施の形態に従ったフィルタ本体の図である。
【図2】本発明の更なる実施の形態に従ったフィルタ本体の図である。
【図3】図3aは、本発明に従ってフィルタ本体を製造する鋳型の図であり、図3bは、図3aに示した鋳型を使用して製造されたフィルタ本体の図である。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の本体を有するフィルタエレメントを製造する方法であって、前記本体が底部分と頂部分とから成り、前記底部分と前記頂部分とがこれらの間にキャビティ構造体を画成し、該キャビティ構造体が該キャビティ構造体内に蓄積したろ液を排出するための出口を有するように構成されている、前記フィルタエレメントを製造する方法において、
a)未焼成のフィルタエレメントを形成するステップであって、
前記底部分を第一の鋳型内にて粉末射出成形するステップと、
前記第一の鋳型を開放するステップと、
本体の所望のキャビティ構造体に相応する形状のコアエレメント部分を前記底部分
上に配置するステップと、
前記頂部分を、第二の鋳型内にて、前記底部分及びコア部分の上に粉末射出成形す
るステップと、
第二の鋳型を開放するステップと、
このように製造された、前記コア部分を有する未焼成のフィルタエレメントを除去
するステップと
を備える、前記未焼成のフィルタエレメントを形成するステップ、及び、
b)前記未焼成のフィルタエレメントを焼結するステップ
を備える、フィルタエレメントを製造する方法。
【請求項2】
請求項1記載のフィルタエレメントを製造する方法において、
前記フィルタエレメントが円板状の形状を有する、方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のフィルタエレメントを製造する方法において、
前記キャビティの前記出口が前記フィルタエレメントの中央開口部と連通する、方法。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1項記載のフィルタエレメントを製造する方法において、
使用される前記コア部分が2つ以上の個別の部品から成る、方法。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1項記載のフィルタエレメントを製造する方法において、
前記コア部分を構成するため中空ファイバが使用される、方法。
【請求項6】
請求項5記載のフィルタエレメントを製造する方法において、
前記中空ファイバが、前記底部分の上に所定のパターンにて配置される、方法。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1項記載のフィルタエレメントを製造する方法において、
前記コア部分が、溶媒中で溶解することのできる材料にて形成される、方法。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか1項記載の方法において、
前記コア部分が、不活性な微細な粒子材料と、可溶性の接着剤とから形成される、方法。
【請求項9】
請求項8記載のフィルタエレメントを製造する方法において、
前記接着剤は水溶性剤である、方法。
【請求項10】
請求項1ないし6の何れか1項記載のフィルタエレメントを製造する方法において、
前記コア部分が、不活性な微細な粒子材料と、150℃以上の温度にて蒸発し且つ/または焼け尽きる接着剤とから形成される、方法。
【請求項11】
請求項1又は2の何れか1項記載のフィルタエレメントを製造する方法において、
前記コア部分自体が、粉末射出成形され且つ未焼成の状態にて前記底部分上に配置される、方法。
【請求項12】
請求項1又は2の何れか1項記載のフィルタエレメントを製造する方法において、
前記コア部分が粗い孔を有する材料にて形成される、方法。
【請求項13】
請求項11記載のフィルタエレメントを製造する方法において、
前記頂部分を粉末射出成形する間、前記コア部分が気体源によって加圧される、方法。
【請求項14】
キャビティを含む多孔質の構造体からなる本体を有するフィルタエレメントを製造する方法において、
a)未焼成のフィルタエレメントを形成するステップであって、
2つの異なる粉末材料を同時に射出することにより前記フィルタエレメントを鋳型
内にて粉末射出成形するステップであって、第一の材料が前記コア部分を形成し得
るように前記鋳型の内側部分内に射出され、第二の材料が前記コア部分を取り囲む
外壁部分を形成し得るように前記鋳型内に射出される、ステップと、
未焼成のフィルタエレメントを前記鋳型から除去するステップと
を備える、前記未焼成のフィルタエレメントを形成するステップ、及び
b)前記未焼成のフィルタエレメントを焼結するステップ
を備える、キャビティを含む多孔質の構造体を有するフィルタエレメントを製造する方法。
【請求項15】
ろ液を収集するためのキャビティを含む多孔質の構造体からなる本体を有するフィルタエレメントを製造する方法において、
a)未焼成のフィルタエレメントを形成するステップであって、
前記フィルタエレメントの前記本体を鋳型内にて粉末射出成形しつつ、気体を前記
鋳型の所定の領域内に同時に射出してキャビティ構造体を形成するステップと、
未焼成のフィルタエレメントを前記鋳型から除去するステップと
を備える、前記未焼成のフィルタエレメントを形成するステップ、及び
b)前記未焼成のフィルタエレメントを焼結するステップ
を備える、キャビティを含む多孔質の構造体を有するフィルタエレメントを製造する方法。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れか1項記載の方法において、
前記粉末射出成形ステップにて使用した鋳型が溝付き表面部分を有する、方法。
【請求項17】
請求項1ないし16の何れか1項記載の方法において、
前記粉末射出成形は熱鋳造法として実施される、方法。
【請求項18】
請求項1ないし17の何れか1項記載の方法において、
前記フィルタエレメントの外面の頂部にろ過層が施される、方法。
【請求項19】
請求項1ないし18の何れか1項記載の方法にて得ることができる、キャビティ構造体を有する本体を備えるフィルタエレメント。
【請求項20】
請求項19記載のフィルタエレメントにおいて、
円板の形状を有する、フィルタエレメント。
【請求項21】
請求項20記載のフィルタエレメントにおいて、
前記円板形状のフィルタエレメントは中央通り穴を備え、前記フィルタエレメントの前記本体内の前記キャビティが、前記中央通り穴と妨害されずに流体的に接続している、フィルタエレメント。
【請求項22】
請求項19ないし21の何れか1項記載のフィルタエレメントにおいて、
前記キャビティが、相互に接続された複数の空隙容積から成る、フィルタエレメント。
【請求項23】
請求項22記載のフィルタエレメントにおいて、
前記空隙容積が、前記フィルタエレメントの前記中央通り穴を介して相互に接続される、フィルタエレメント。
【請求項24】
請求項21ないし23の何れか1項記載のフィルタエレメントにおいて、
前記空隙容積は中央通り穴から半径方向に伸びる、フィルタエレメント。
【請求項25】
請求項20ないし24の何れか1項記載のフィルタエレメントにおいて、
前記空隙容積の各々は湾曲した経路に従う、フィルタエレメント。

【公表番号】特表2006−513841(P2006−513841A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−567735(P2004−567735)
【出願日】平成15年2月5日(2003.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2003/001098
【国際公開番号】WO2004/069375
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(590000950)ポール・コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】PALL CORPORATION
【Fターム(参考)】