説明

フィルタモジュール

機器の排気から大気汚染物質を分離するフィルタ・モジュールであって、機器の排気が通過する入口及び出口を有するフィルタ・ハウジングと、フィルタ・モジュールを機器に固定する少なくとも1つの固定部材と、フィルタ・ハウジング内に配置されたフィルタ組立体とを含む。フィルタ組立体が、流れ方向に前後に配置される少なくとも2つのフィルタ群を有し、フィルタ群が、複数の平行な棒形状のフィルタ部材から構成され、フィルタ部材が、フィルタ媒質を備え、一定の中心間距離を有し、部材の長手方向軸線が流れ方向と概ね直角である。隣接する2つのフィルタ群のフィルタ部材は、互いに平行であり、長手方向軸線及び流れ方向と直角方向にずらされて配置される。複数のフィルタ部材は、少なくとも1つのフィルタ保持体と結合されて、取外し可能にフィルタ・ハウジング2に結合される少なくとも1つのフィルタ挿入体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の排気から空気汚染物質を除去するためのフィルタ・モジュールに関するものである。とりわけ、機器の排気が通過する出入口を有するフィルタ・ハウジングと、フィルタ・モジュールを機器に取付けるための少なくとも1つの取付け部材と、フィルタ・ハウジング内に配置され、少なくとも2つのフィルタ群から成るフィルタ組立体とを含んでおり、このフィルタ群が、流れ方向にタンデム(直列)配置され、かつフィルタ媒質を有する棒形状のフィルタ部材から成り、このフィルタ部材が、一定の中心間距離を有し、互いに平行であり、フィルタ部材の長手方向軸線が流れ方向と概ね直交するように配置され、2つの隣接フィルタ群のフィルタ部材が、互いに平行であり、長手方向軸線及び流れ方向と直交する方向に互いにずらされて配置されるフィルタ・モジュールに係るものである。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6726749号には、機器、特に事務機器の排気から大気汚染物質を除去するように設計されたこの種類のフィルタ装置が示されている。このフィルタ装置は、フィルタ・ハウジング内に、流体容器から流体を供給されるフィルタ・バーと、機器にフィルタ・ハウジングを取り付けるための固定具とを有しており、フィルタ・バーが排気流内に配置されている。上記米国の刊行物の図7に見られるように、一実施例では、フィルタ・バーが列をなして配置され、各列が互いにずらされている。大気汚染物質は、フィルタ通過時に、流体で加湿されたフィルタ・バーにより吸収され、排気流から除去される。
【0003】
このシステムの欠点は、フィルタ・バーの各々が、別々にフィルタ・ハウジングに取り付けられているため、フィルタ・バーの保守又は交換が相応に面倒で手間がかかる点である。また、フィルタ使用時に流体が消費され、使用期間を延ばすためには、定期的に流体容器に再充填して、フィルタ・バーの湿り気を維持しなければならないことも欠点である。この充填作業は、汚染を避けるために十分な注意又は付加的な付属用具を必要とする。流体供給とは無関係に、フィルタ・バーを長期使用した後や、機器の排気が著しく汚染しているためにフィルタ・バーの汚れが酷い場合には、フィルタ・バー又はフィルタ装置全体の再生洗浄又は交換が必要になるが、フィルタ・バーが個別に取り付けられているため、再生費の増大や完全な交換による高額の出費が伴う。
【特許文献1】米国特許第6726749号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、より適用が簡単で、製造や使用に費用のかからないことを特徴とする上記の種類のフィルタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、請求項1に記載された特徴を有するフィルタ・モジュールにより達成される。
【0006】
本発明のフィルタ・モジュールの一利点は、フィルタ部材を少なくとも1つのフィルタ保持体と結合させることにより、フィルタ・ハウジングから取り外し可能な少なくとも1つのフィルタ挿入体を形成することである。こうすることにより、フィルタ挿入体をフィルタ・ハウジングとは別個に扱うことができ、それによって、例えばフィルタ部材又はフィルタ媒質をより容易に洗浄したり、個々のフィルタ部材又はフィルタ挿入体全体を交換したりすることができる。フィルタ保持体は、条片状の部材でよく、保持体には個々のフィルタ部材が、好ましくは直角にかつ互いに平行に、一定の中心間距離で取り付けられる。フィルタ保持体は、またフレーム形状に構成して、例えば個々のフィルタ部材の両端が固定されるようにしてもよい。フィルタ媒質は、フィルタ部材表面の穴を介して排気と接触可能な場合、例えば、フィルタ部材が籠形状の構造を有する場合には、フィルタ部材の外表面とフィルタ部材の内部との両方に配置できる。
【0007】
別の有利な効果は、特に、複数列のフィルタ部材、好ましくは個々のフィルタ群を、各々フィルタ保持体と結合することにより、複数個のフィルタ挿入体を構成することにより達せられる。これにより、個々のフィルタ列又はフィルタ群は、汚れの度合いに応じて互いに個別に洗浄又は交換でき、それによって、まだ使用可能なフィルタ挿入体は使用を続けられるため、フィルタ挿入体交換の費用が低減される。
本発明のフィルタ・モジュールの別の具体例によれば、流れ方向にタンデム配置される2つのフィルタ群のフィルタ部材を中心間距離の半分の距離だけずらして配置することにより、排気がフィルタ部材を通過する際に最大の変向を生じ、それによりフィルタ・モジュールの汚染除去率が改善される。
【0008】
フィルタ・ハウジングにフィルタ挿入体を挿入するための挿入口を設けることにより、出入口を介するよりも、個々のフィルタ挿入体に、より直接かつ容易に接近可能になる。出入口を介する場合には、個々のフィルタ挿入体に順次にしか接近できないからである。しかし、この挿入口を、一連の開口として構成し、それらの開口を通してフィルタ部材をフィルタ・ハウジング内へ突入させ、フィルタ保持体はフィルタ・ハウジング外に残すようにすることもできる。
別の改良点によれば、フィルタ・ハウジング内にフィルタ挿入体を安定的に位置決めするために、組み込み位置を安定化させるための案内手段を設けることができる。これらの案内手段は、長手方向案内の形態にして、案内手段に沿ってフィルタ挿入体がフィルタ・ハウジング内へ挿入されるようにするか、又は局所的な案内手段の形態にして、フィルタ挿入体が本来の挿入位置に着く少し前に、案内手段が有効に働くようにすることができる。
【0009】
組み込み位置にフィルタ挿入体を位置付ける好ましい一選択肢は、本発明の別の具体例によれば、挿入口を案内手段として構成し、この案内手段が、僅かな遊びでフィルタ保持体を受容し、それにより組み込まれたフィルタ挿入体が挿入方向に対して横方向に固定されるようにすることである。また、各フィルタ挿入体ごとに別個の挿入口を設けるか、又はフィルタ挿入体を、1つの共通の挿入口から互いに滑りばめにより密接配置することもできる。
別の従属請求項によれば、付加的な案内手段を、フィルタ・ハウジングの挿入口とは反対側に凹部又は開口によって形成し、この凹部又は開口内へ、1つ以上のフィルタ部材又はフレーム形状のフィルタ保持体が突入するようにすることができる。この凹部は、ハウジング壁のみに限定することもできるが、スリーブ状の着座部材によって形成し、この着座部材が、フィルタ・ハウジング内部へ突入するようにして、フィルタ部材又はフィルタ挿入体の端部領域を受容するようにすることもできる。
【0010】
タンデム配置されたフィルタ列のフィルタ部材をずらして配置するには、個々のフィルタ挿入体用の案内手段を互いにずらして配置することが好ましい。そうすることによって、清浄化効果を作り出すのに必要な、排気流の変向が保証される。
経済的な効率と使用者に対する配慮から、別の従属請求項によれば、フィルタ組立体を形成するフィルタ挿入体を一様な構成にすることが好都合である。そうすることによって、量産による、より費用対効果の高い製造、並びに費用対効果の高い貯蔵が可能になる一方、使用者が混乱する虞が低減する。
使用者への更なる配慮は、本発明の別の特徴によれば、フィルタ挿入体を対称的に構成することにより達せられる。フィルタ挿入体が有する対称面が多ければ、それだけフィルタ・ハウジング内への不正確な挿入の危険が低減され、技術的な非熟練者でも容易にフィルタ交換が可能になる。2つ又は3つの対称面を有する具体例による個々のフィルタ挿入体をずらして配置するに、案内手段及び/又は挿入口をずらして設けられることができる。
【0011】
更に別の具体例では、フィルタ部材が大きい有効横断面を有するように(換言すると、フィルタ群内で、流れ方向と直角の平面に投影されるフィルタ部材の面積が、流れ方向と直角の平面に投影されるフィルタ部材間の自由通過領域よりも大きくなるように)構成されており、この構成が、タンデム配置されたフィルタ列間のずれと組み合わされことにより、排気流の急激な変向が可能になり、排気に含まれる大気汚染物質が高い確率で吸収される。除去率を更に高めるに、3つ以上のフィルタ挿入体をタンデム配置するか、複数個のフィルタ・モジュールをタンデム配置することができるが、それによって流れ抵抗も増大する。この流れ抵抗の増大は、排気を生じる機器からの熱の除去を妨害することは容認できないので、限られた程度でしか許容されない。
【0012】
更に別の従属請求項によれば、フィルタ挿入体の費用を低減する1つの可能性は、フィルタ保持体にフィルタ部材を取外し可能に結合することにあり、それによって、個別にフィルタ部材を交換することもできる。特に、個々のフィルタ部材が、流れ条件により異なるレベルで大気汚染物質又は塵埃粒子を負荷される場合、個別にフィルタ部材を交換できることは好都合である。フィルタ部材は、また別々に取外しでき、これにより、フィルタ部材の一定の具体例(例えば星形断面を有するフィルタ部材)の場合又はフィルタ挿入体の場合には、洗浄が容易に可能になる。
更に別の従属請求項によれば、フィルタ部材がプレスばめによりフィルタ保持体に取付けられ、付加的な取付け手段を要しないのが長所である。
【0013】
フィルタ・モジュールの上記の一具体例によれば、フィルタ媒質の材料を、多孔質材料、繊維メッシュ、パルプ材料、発泡プラスチックから成る群から選択すると、フィルタ・モジュールの除去率に好影響を与えるのに有利である。一方で、これらの材料内の多孔質成分及び繊維成分は、補助的な機械的捕集表面として働き、他方、これらの材料は、また大気汚染物質を吸着又は吸収する化学的及び/又は物理的な活性流体の貯蔵材料として役立つことができる。多孔質材料は、例えばセラミック発泡体又は金属発泡体により形成することができる。これらの発泡体は、高レベルの機械的安定性を有し、したがって、組立て又は洗浄時に損傷しにくい。無機又は有機の繊維製及び天然繊維製の繊維メッシュ、例えばセルローズ、セルローズ・アセテート、ポリエステル等も、また高い濾過効果を特徴としている。発泡プラスチック又は発泡ラテックスも、またフィルタ媒質として使用でき、特にPU発泡体のような連続気泡材料は、湿式フィルタ媒質として広く用いられている。特定の目的の場合、数種の異なるフィルタ媒質をフィルタ組立体内に使用して、それらの各々の好ましい特性を組み合わせることができる。
【0014】
フィルタ媒質と同じ材料でフィルタ部材を形成することにより、フィルタ体積を著しく増すことができ、それによりフィルタ挿入体の使用寿命を延ばすこと、又は流体の貯蔵体積を増すことができる。更に、使用材料の数が低減されることにより、フィルタ部材の製造費が低減できる。
フィルタ媒質とフィルタ部材とを単一体に構成することは、特定の具体例の場合には、特に、フィルタ媒質が十分な強さを有していてフィルタ挿入体の組立て時及び取扱い時に生じる力に損傷なしに耐え得る場合、例えば、フィルタ媒質が十分に圧縮されている場合には、往々にして好都合である。この構成は、また、材料選択が適切であれば、製造費の節減にも役立つ。
【0015】
フィルタ・モジュールの別の具体例では、フィルタ媒質が各フィルタ部材の一部領域にのみ配置される。したがって、例えば、材料節約のため、流れの当るフィルタ部材片面にのみフィルタ媒質を配置することができる。また、フィルタ媒質の広がりをフィルタ部材の内部の一領域に限定することもできる。特に、フィルタ部材の両端部は、フィルタ媒質なしに構成することにより、ソケット接続部を介してフィルタ保持体又はフィルタ・ハウジングに容易に取付けることができる。
【0016】
更に別の従属請求項によれば、フィルタ部材表面にフィルタ媒質を配置することにより、支持するフィルタ部材の形状に対する広範囲の設計の可能性が開け、フィルタ部材の洗浄が必要な場合には、接近が容易になる。上記のフィルタ媒質の場合、複雑な横断面形状を作ることは幾分難しい。したがって、その場合には、フィルタ部材の表面に後から取り付けるほうが容易である。フィルタ媒質とフィルタ部材との接合は、機械式に、例えばフィルタ媒質をクランプするか又は締付けることにより可能だが、別個の接着剤層を用いても可能であり、あるいはフィルタ媒質を粘着状態にしてフィルタ部材に塗布し、例えば、硬化した状態でフィルタ媒質となる材料を発砲させて、フィルタ媒質を形成することも可能である。
【0017】
更に別の従属請求項によれば、フィルタ・モジュールの濾過効果は、フィルタ媒質を、グリセリン、シリコーン油、精油、パラフィン油及び/又はラテックス乳濁液の流体群から選択した流体で加湿することにより改善できる。機器の排気内の大気汚染物質、例えば塵埃、微細な埃、極小粒子、花粉、胞子、細菌、固体又は液体の粒子を含有するその他のエーロゾルが、また事務機器の場合には、特にトナー及び/又は紙の埃が、加湿されたフィルタ媒質に接触すると、効果的に物理的に吸着される。また、気体状の汚染物質、例えばオゾン、ベンゾール、フェノール、二酸化炭素、フォルムアルデヒド、不快な臭気も、流体と接触することにより化学的に吸収及び/又は中性化される。この流体の一つの好ましい効果は、蒸気圧が低く、かつ相応に蒸発速度が低いために、使用寿命が長いことである。更に、これらの流体の粘度は、フィルタ媒質の加湿時に生じる毛管効果で流体がフィルタ媒質内に均等に分配されることを助成する。粘度及び表面張力のレベルを相応に調節することで、フィルタ部材の直接加湿も可能であり、これによりフィルタ媒質が流体によって形成される。
【0018】
フィルタ・モジュールの更に別の具体例では、流体に匂い物質が添加され、これにより、フィルタ・モジュールからの流出空気が芳香を発することができる。この匂い物質の濃度及び蒸発速度を適宜に調節することにより、芳香発散の持続時間を流体の使用寿命に合わせて調節することができ、時間の経過による芳香の消失度が、フィルタ部材又は流体の交換の必要度の指示として役立つ。
更に別の従属請求項によれば、流体に抗菌性物質、抗ヴィルス性物質、抗真菌性物質、又は殺菌性物質を添加することも好ましく、それにより、一方では、機器から発する細菌やカビの胞子が、流体に触れることで無害化され、他方では、フィルタ部材が細菌、ヴィルス、カビの濃縮又は繁殖の温床となることが防止される。
流体で加湿されたフィルタ媒質及び/又はフィルタ部材の洗浄又は廃棄による環境破壊を防止するためには、一従属請求項による具体例の場合、生物分解可能な加湿流体を使用することができる。廃水の生物分解に対する生化学的な要求(例えばBSB5値)及び水質危険分類(Water Hazard Classification)は、できるだけ低い値にすべきである。
【0019】
更に、フィルタ・モジュールの別の具体例によれば、フィルタ媒質に抗菌性表面を備えるようにすることが好ましい。この措置は、例えば、銀、特にナノ規模の銀又は銀化合物をコーティング又は含浸することにより実現できる。
更に別の具体例によれば、流体は、フィルタ部材内部の空所内に貯蔵し、小さい穴又はスリット等の開口を介してフィルタ媒質へ徐々に放出することが好ましい。こうすることにより、蒸発によるフィルタ媒質からの流体損失が連続的に補償され、フィルタ部材の使用寿命を延長することができる。
更に別の可能な改良点は、フィルタ媒質の少なくとも一部を、汚染ガス及び臭気の高い吸収能力を特徴とする活性炭素により形成する点にある。したがって、フィルタ媒質に活性炭素成分を有するフィルタ部材は、芳香放出フィルタ部材と組み合わせる場合、流れ方向で見て、芳香放出フィルタ部材の前方に配置すべきである。
【0020】
機器から出る鉄の磨耗屑等の強磁性粒子を除去するには、一具体例によれば、1つ以上のフィルタ部材に磁性部材又は磁性構成材を備えるようにする。この磁性部材又は磁性構成は永久磁石又は電磁石にすることができる。
フィルタ・モジュールの更に別の具体例は、棒形状のフィルタ部材が、伸張形状の横断面を有している点、換言すると、長手方向軸線が長い横断面を有する点が特徴である。これにより、フィルタ部材の面積対体積の比が大きくなり、比較的小さい空間内に大きいフィルタ面積を収容することができる。
続く従属請求項によれば、流れ方向と直交するように横断面の長手方向軸線を配向することにより、大きい作用面と排気の急激な変向が生じる。フィルタ部材をこのように構成することにより、フィルタ・モジュールは、フィルタ挿入体のタンデム配置により、流れ方向で見て短く構成することができる。
【0021】
フィルタ・モジュールの更に別の具体例によれば、フィルタ部材の横断面は、長方形、三角形、星形、または丸い形に構成できる。長方形、三角形、丸い形、特に円形のフィルタ部材の具体例は、製造技術的には製造が容易であり、長方形及び円筒形も、フィルタ挿入体の対称的な構成には好都合である。これに対して星形断面では、フィルタ部材の面積対体積比の大きい値が得られ、比較的小さい空間に大きいフィルタ面積を収容することができる。横断面形状は、またフィルタ組立体を通過する排気流に影響を与えるために利用でき、例えば、流れに不都合な長方形断面等の断面形状で渦流を生じさせて、排気をフィルタ媒質に集中的に接触させることができ、あるいはまた、機器からの排気が強力な乱流で、破壊力を潜在させている場合には、流れに好都合な断面形、例えば三角形の断面形状により流れを静かにすることができる。
【0022】
排気を発生する機器にフィルタ・モジュールを取付ける部材は、接着剤層、接着ストリップ、ヴェルクロ(面ファスナー)・ストリップ、ねじ、ロックピン、またはスナップ結合手段から成ることが好ましいが、これらの可能な固定手段は、単に例として列挙したもので、他の固定手段を使用することもできる。フィルタ・ハウジングと機器とのヴェルクロ・ストリップによる結合は、使用者には特に取付け及び取扱いが容易である。ヴェルクロ・ストリップのフック・テープとループ・テープとの密接な結合は、また機器とフィルタ・ハウジングとの間のシールとしても作用するので、排気流は、大部分がフィルタ・モジュールを通って案内される。しかし、接着剤付きスポンジゴム・ストリップ等の別個のシール部材をシールとして使用することもできる。
取り付け部材は、小さくて、費用対効果の高い取り付け部材を実現するためにフィルタ・ハウジングの入口開口領域に配置して、目立たないようにすることが好ましい。
【0023】
フィルタ・モジュール取付けの、他の好ましい選択肢は、機器に面したフィルタ・ハウジング背面に溝を形成し、この溝に山形断面の連結部材を挿入することにより実現されるが、この連結部材は、取付け部材、好ましくはヴェルクロ・ストリップにより機器に取り付けられる。
更に別の従属請求項によれば、フィルタ・ハウジングが、付加的フィルタ・モジュールに結合されるための1つ以上の連結手段を備えることが好ましい。機器の排気口に合わせてフィルタ・モジュールの寸法を調節することは、もちろん可能だが、均一の寸法のフィルタ・モジュールを作り、複数のフィルタ・モジュールを連結することで適宜な寸法のフィルタ装置を組み立てるほうが、一般に費用対効果が高い。フィルタ・モジュールを取付ける機器の種類や寸法は様々なので、多数の特定寸法の製品を作るよりも、標準寸法のものから個別の組立体を作るほうが実際的である。
【0024】
更に別の具体例によれば、2つのフィルタ・モジュール間の結合は、ロック・ピン、取付けレール、取付け溝、あり継ぎ手、又はヴェルクロ・ストリップにより形成できる。しかし、他のどのような種類の連結形式、例えば接着、ねじ結合、クランプ、スナップ結合等も使用できる。
別の請求項による具体例では、2つのフィルタ・ハウジングの2つの境界壁の縁部が、クランプ部材によって、好ましくはフィルタ・ハウジングの前側及び/又は後側のところで取り囲まれる。クランプ部材は、例えばU形材として構成され、使用時にはプレスばめによりクランプ効果を発揮する。
フィルタ挿入体を扱いやすくするためには、更にフィルタ挿入体が、フィルタ保持体にハンドル部材を有するようにすることが好ましい。このハンドル部材により、使用者は、取り付けられたフィルタ挿入体を掴むことができる。
【0025】
一従属請求項によれば、フィルタ・モジュール、特にフィルタ・ハウジング、フィルタ保持体、フィルタ部材の構成部材を、プラスチックの射出成形を用いて製造することは、大量生産を要する時には特に経済的であり、一貫して高い工作物精度レベル及び品質が達成される。使用するプラスチックの選択に当っては、使用中、排気温度の結果、フィルタ・モジュールの構成部材に許容不可能の変形が生じることがないように、排気温度を考慮しなければならない。
フィルタ挿入体とフィルタ・ハウジング間の分離可能な結合の容易に製造可能な構成は、更に別の請求項によれば、非噛み合いスナップ接合であり、特に、係止凹部に係合する球形の係止突起による結合である。
【0026】
更に別の具体例によれば、フィルタ・モジュールは、出口のところに、つまり目に見える前側のところに覆いとなる格子板を備えることができる。これにより、特に流体で加湿されている場合に、フィルタ部材に意図せずに接触することが防止される一方、フィルタ・モジュールの前面を見場のよいように設計する可能性が与えられる。格子の棒を薄板状に構成することにより、流出する濾過空気の流れを、例えば特定方法へ変向するように影響を与えることもできる。覆いとなる格子板を付加する場合には、また、あらゆる取付け形式、例えばねじ、クランプ、接着等が可能である。
【実施例】
【0027】
始めに注意しておきたいのは、異なる実施例を説明する場合、同じ部材には同じ符号及び部材名が付されている点であり、また説明全体に含まれている開示内容は、当然、同じ符号又は同じ部材名を有する対応部材に転用することができる。また、説明中に選択されている、例えば上方、下方、側方等の位置情報は、そこで説明されるかまたは示される図面に関連した位置であり、位置を変更する場合には、当然、新たな位置に転用される。更に、図示又は説明された実施例の個別の特徴又は構成の組合わせは、本発明における独立した、発明性のある、具体化された解決となりうるものである。
【0028】
図1は、機器の排気から大気汚染物質を除去するための、本発明によるフィルタ・モジュール1の一実施例を示している。この排気は、多くの異なる機器から出るものでよく、本発明のフィルタ・モジュール1の用途の重要な分野は、人のいる囲まれた空間内で排気を放出する機器である。とりわけ、広く用いられているコピー機、プリンタ、ファックスに適用される。除去又は濾過されるべき大気汚染物質は、埃、微細な粉塵、極微細粒子、花粉、胞子、細菌等の微生物、その他固体又は液体の粒子を含有するエーロゾル、事務機器の場合には特にトナー又は紙の粉塵、気体状の汚染物質、例えばオゾン、ベンゾール、フェノール、プリンタのインキや染料の溶剤、二酸化炭素、フォルムアルデヒド、不快な臭気等である。
【0029】
本発明によるフィルタ・モジュールの以下の追加の適用分野は、多くの潜在的な適用例として列挙したものである。パイプ又は煙突の排出口内又は排出口上への配置、真空掃除機のバックアップ・フィルタや補助フィルタとしての使用、自動車での、例えば補助空気フィルタ又は車両内部の空気フィルタとしての使用、例えば花粉フィルタとしての使用、発電設備での工業用フィルタとしての使用、空調装置又は通風装置等の室内空気システム用フィルタとしての使用である。これと関連して、極めて広範囲の種類の機器用の供給空気、周囲空気、吸気のためのフィルタとして使用できることも、明らかにしておく。
【0030】
フィルタ・モジュール1の本体は、機器からの排気が通過する通路として構成されたフィルタ・ハウジング2によって形成される。排気流又は排気の流れ方向3は矢印3で示されている。図示の実施例の場合、フィルタ・ハウジング2は、4つの境界壁4を有する長方形のフレームとして構成されているが、流れ方向3から見て、別の、例えば円形の横断面を有していても、より大きい広がりを有していてもよく、したがって管状に構成されていてもよい。更に、流れ方向3における横断面は一定でも調節可能でもよい。排気は、フィルタ・ハウジング2の入口5から出口6へ流れるが、これら出入口の最大可能な自由横断面により、損失の少ない通過が可能になる。
【0031】
排気は、フィルタ・ハウジング2内に配置されたフィルタ組立体7により濾過され、フィルタ組立体は、流れ方向3にタンデム配置された少なくとも2つのフィルタ群8から成っている。各フィルタ群8は、数個の棒形状のフィルタ部材10から成り、これらのフィルタ部材は、部材の長手方向軸線が流れ方向3と概ね直交するように配置され、互いに平行であり、一定の中心間距離を有している。少なくとも2つの隣接するフィルタ群8のフィルタ部材10も、互いに平行である。フィルタ組立体7が3つ以上のフィルタ群8を有する場合には、1つ以上のフィルタ群8が、2つの平行な隣接フィルタ群8とは異なる配向を有するフィルタ部材10を有していてもよい。
【0032】
このようにタンデム配置されるフィルタ群8に分割することとは無関係に、それぞれ複数のフィルタ部材10は、フィルタ保持体11と結合されて、1つのフィルタ挿入体12を形成する。図示の実施例では、フィルタ挿入体12は、概ね平らな構造体であり、その面は、流れ方向3に対して直角方向を向いている。個々のフィルタ部材10は棒形状で長方形の横断面を有し、長方形の長辺側は流れ方向3と直交するように配向されている。この条片状の構成の代替形態としては、特に冒頭で述べた効果が達せられるような別の形状、例えば方形、三角形、星型、円筒形、楕円形の各断面形状も可能である。
【0033】
フィルタ保持体11は、数個のフィルタ部材10を連結するが、図示の実施例では、流れ方向3と直角の平面内に配置されるフィルタ部材10が結合されることから、正確に1つのフィルタ群8が1つのフィルタ挿入体12に包含されることになる。しかし、フィルタ組立体7のフィルタ部材10は、フィルタ保持体11の構成を変更することによって極めて様々な形式で連結でき、例えば条片状のフィルタ保持体11を流れ方向に配向することにより、異なるフィルタ群8のフィルタ部材10を互いに連結することもできる。また、すべてのフィルタ部材を1つのフィルタ保持体11で連結することにより、フィルタ組立体7を1つのフィルタ挿入体12だけで形成することもできる。
【0034】
タンデム配置された2つのフィルタ群8のフィルタ部材10は、流れ方向3から見て一直線上に配置されるのではなく、流れ方向3と直交方向にずらされて、互いに平行に配置される。図1に示した実施例では、2つの同じ構成のフィルタ挿入体12が、互いに中心距離9の半分だけ互いにずらされてフィルタ・ハウジング2内に配置され、このため、タンデム配置されたフィルタ部材10も互いにずらされ、入口側の隣接フィルタ群8のフィルタ部材10の中心が、出口側のフィルタ群8の2つの隣接フィルタ部材10間の隙間の背後に位置している。フィルタ部材10の幅が、図示の実施例のように、中心間距離9の半分より大きければ、フィルタ組立体7を直進的に通過することはできず、流過する排気は強制的に著しく変向されることにより濾過効果が増大する。
【0035】
フィルタ挿入体12は、適宜に寸法付けすることにより、流れ方向に対し軸線方向にフィルタ・ハウジング2内へ入口5及び/又は出口6から挿入することができるが、実施例が示すように、単数又は複数のフィルタ挿入体12用の別個の挿入口13をフィルタ・ハウジング2に設けておくのが実際的である。挿入口13は、互いにずらされている2つの隣接フィルタ保持体11が、小さな遊びで挿入されるように構成されている。あるいはまた、別個の挿入口13は、タンデム配置されるフィルタ群8間に比較的大きい間隔を置いて各フィルタ挿入体12ごとに設けることもできる。同時に、挿入口13は、組立てた状態のフィルタ挿入体12を小さな遊びで受容する案内手段14を形成し、それによってフィルタ挿入体の位置が固定される。
【0036】
フィルタ・ハウジング2内の凹部15により付加的な案内手段14が形成され、挿入フィルタ部材10の自由端がこの凹部に係合する。しかし、多くの場合、案内は、挿入口13によりフィルタ保持体11が固定されることで十分である。
フィルタ・モジュール1には、複数フィルタ・モジュール1を連結するために、複数の連結手段16が境界壁4に備えられ、これによって、個々のフィルタ・モジュール1から、より大きいフィルタ装置を簡単に組立てることができる。図1には、例として、2種類の連結手段16が示されており、その場合、1つのフィルタ・モジュール1に異なる連結手段を設けても、同じ連結手段だけを設けてもよい。垂直の境界壁4には、それぞれ、あり形レール17とあり溝18とが設けられ、水平方向にフィルタ・モジュール1を連結するために用いられる。
垂直方向での連結用には、4つの穴19が水平の境界壁4に設けられ、この穴へ固定ピン(図示せず)が挿入され、フィルタ・モジュール1を鉛直方向に連結することができる。
【0037】
図2には、フィルタ・モジュール1が垂直断面図で示されているが、この断面図により、フィルタ・ハウジング2内へ挿入されたフィルタ挿入体12の様子が分かる。排気流内に位置するフィルタ部材10には、網状線によって部分的に示されているように、フィルタ媒質20が配置されている。フィルタ媒質20は多孔質材料であり、この多孔質材料は、中空スペース及び/又は毛管を内包し、流体を含浸できる。この流体は、ヴァッカー化学(Wacker Chemie)社製のシリコーン油AK2000だが、既述のどの流体で代替することもできる。内包されている細孔により、フィルタ媒質20の作用面は、滑らかな面の場合よりも著しく拡大される一方、同時に、細孔が流体の貯蔵に必要な容積体を形成する。
【0038】
この実施例の場合、フィルタ媒質20は、圧縮して繊維複合材料にされたポリエステル繊維から成っている。この種の、また類似のフィルタ媒質は、例えばフィルトローナ(Filtrona)社から入手できる。もちろん、フィルタ媒質20を構成するには、他の材料も使用できる。この複合材料は強度を有するので、フィルタ部材10全体をフィルタ媒質20の材料で作ることが可能である。従って、フィルタ部材10とフィルタ媒質20とは、一体部材として費用効果よく構成できる。フィルタ部材10は、プレスばめによりフィルタ保持体11に取付けられ、交換するには、フィルタ部材を引き出し、別のフィルタ部材を挿入するだけでよい。
フィルタ挿入体12をフィルタ・ハウジング2から取出す際に、更に掴みやすくするには、各フィルタ挿入体にハンドル部材21を設けておく。
【0039】
図3はフィルタ・モジュールの2つの実施例を水平断面で示したものである。それぞれ、フィルタ・モジュール1は、特に、フィルタ・ハウジング2の入口5が機器の排気口23の延長上に位置するように、機器のハウジング22に固定されている。このことが達成されるように、フィルタ・ハウジング2は、取付け部材24を介して機器ハウジング22に取付けられている。この実施例の取付け部材24は、協働するループ・テープとフック・テープとを有するヴェルクロ・ストリップから成り、この場合、フック・テープが、例えば接着剤によりフィルタ・ハウジング2に、ループ・テープが機器ハウジング22に取付けられているが、逆に取付けてもよい。
【0040】
図3aでは、取付け部材24が、直接に境界壁4に配置されているが、図3bでは、取付け部材24が、山形の連結部材25に配置されている。この連結部材は、機器に面するフィルタ・ハウジング2の背面の溝26内に配置され、溝26内で連結部材25の脚を移動させることによりフィルタ・モジュール1と機器ハウジング22との間の距離が調節できる。連結部材25は、フィルタ・モジュール1全体よりも可撓性が大きいので、機器ハウジング22の平らでない領域に、より容易に順応でき、フィルタ・モジュールを平らでない機器ハウジング22へも取付けることができる。同時に、連結部材25は、排気が、機器ハウジング22とフィルタ・モジュールとの間から横方向へ逃げることを防止する。
【0041】
フィルタ・ハウジング2の出口6には、覆いとなる格子板27が固定され、フィルタ部材を意図しない接触から保護する一方、格子部材28(原文のまま)の構成によって排気流に影響を与えることができる。
図4a〜図4fには、フィルタ保持体11又はフィルタ挿入体12をフィルタ・ハウジング2又は上部境界壁4に結合する種々の例が示されている。
図4aに示された連結板28は、フィルタ・ハウジング2とフィルタ保持体11との2つの隣接縁部をまたいで、例えば接着ストリップよって取外し可能にハウジング及びブラケットに結合される。
図4bに示されたフィルタ保持体11は、挿入口13の領域でフィルタ・ハウジング2に重ねられ、この場合は、重ねた領域には取外し可能な結合手段29、例えば複数回使用可能な接着フィルム又はヴェルクロ・ストリップが配置される。
図4cにも、フィルタ保持体11とフィルタ・ハウジング2とが重ね合わされたものが示されているが、この場合は、双方が、ねじ30によって結合されている。
【0042】
図4dに示した実施例の場合は、フィルタ保持体11が、フィルタ・ハウジング2に結合された連結条片31に載せられている。連結条片31は、別個の構成部材として、又はフィルタ・ハウジング2と一体の部材として構成できる。
図4eに示した解決策の場合、個々のフィルタ部材10が、開口32からフィルタ・ハウジング2内へ突出し、フィルタ保持体11がフィルタ・ハウジング2上に載せられている。
図4fに示したフィルタ保持体11とフィルタ・ハウジング2との間の非噛み合いの(non−positive)スナップ接続の場合は、組み合わせ位置で、フィルタ保持体11の球形係止突起33が、フィルタ・ハウジングの係止溝34に係止される。
【0043】
図4g〜図4jには、フィルタ・ハウジング2内でのフィルタ部材10及び/又はフィルタ挿入体12の位置決め例が示されている。
図4gには凹部35が示され、該凹部内へフィルタ挿入体12のフィルタ保持体11が突入している。挿入を容易にするために、凹部35は、図示されていないが、面取り部を設けることができる。
図4hに示したソケット状取付け部36は、境界壁4の内側に設けられている。該取付け部は、境界壁4と一体形成されるか、又は別個の構成部材として境界壁4に固定されて構成される。
図4iに示した位置決めピン37は、フィルタ部材10又はフィルタ保持体11の表面の凹部に突入している。位置決めピン37は、尖った先端を有することもでき、その場合には、特にフィルタ部材を相対的に軟質に構成すると、特別な凹部は不要である。
図4jの場合には、境界壁4に貫通穴38が設けられ、この貫通穴が、フィルタ部材10及び/又はフィルタ保持体11用の案内として役立っている。
【0044】
図5には、フィルタ挿入体12の種々の実施例が、前面図と平面図とで略示されている。
図5aに示したフィルタ挿入体12は、明確な長手方向軸線39、鉛直軸線40、横軸線41を有し、フィルタ保持体11と、該保持体に取付けられた互いに平行な4つのフィルタ部材10とから成っている。フィルタ挿入体12は、長手方向軸線39と鉛直軸線40とにより形成される平面に関してのみ対称的である。図5aに示したタンデム配置の2個のフィルタ挿入体12では、タンデム配置されるフィルタ部材10間のずれは、鉛直軸線40を中心としてフィルタ挿入体12を半回転させることによって達せられるが、その場合、フィルタ保持体11は互いにずらされない。
【0045】
図5bに示したフィルタ挿入体12は、2つの対称平面、すなわち長手方向軸線39と鉛直軸線40との間に形成される平面と、鉛直軸線40と横軸線41とにより形成される平面とを有している。タンデム配置されたフィルタ部材10の間のずれを実現するために、タンデム配置されたフィルタ保持体11は互いにずらされねばならない。この実施例の長所は、個々のフィルタ挿入体12をフィルタ・ハウジング2内で裏返して、前側と後側の濾過面を同じように完全利用することにより、使用寿命を延長できることである。
図5cに示したフィルタ挿入体12は、長手方向軸線39と横軸線41との間に形成される第3の対称平面を有している。このためには、フィルタ部材10の両端がフィルタ保持体11に固定されねばならない。均一の構造の2つのフィルタ保持体11又は単一枠状のフィルタ保持体11が、この目的に使用できる。
【0046】
図6には、長方形断面を有するフィルタ部材10の2つの実施例が略示斜視図で示されている。
図6aには、長方形の基底を有するフィルタ部材10が示されている。このフィルタ部材10の場合、その一部にだけフィルタ媒質20が配置されている。この実施例では、フィルタ部材10の自由端部を容易にフィルタ保持体11内へプレスばめできる。この非対称的な実施例では、組立て時にフィルタ媒質20の配向に注意しなければならない。
図6bに示した長方形フィルタ部材10の場合には、フィルタ媒質20が全周部にわたって配置されている。この実施例では、フィルタ挿入体12は向きを変えることにより、使用寿命を延ばすことができる。フィルタ部材10の内部には、永久磁石から成る磁性部材42が配置され、これによって、排気流内の強磁性粒子に対する捕集効果が増大する。
【0047】
図7には、円形断面を有する2つのフィルタ部材10が略示斜視図で示されている。
図7aに示した円筒形フィルタ部材10は、その全体がフィルタ媒質20を形成している。多孔質のフィルタ媒質20内には、吸着流体が貯蔵され、毛管効果の結果として広く均等に分配される。この実施例は、極めて費用効果の高い製造が可能である。
図7bに示した円筒形フィルタ部材10は、外表面にフィルタ媒質20が配置された円筒形容器43を含んでいる。前記フィルタ媒質は、例えば小孔又はスリット等の開口44を介して容器43の内部と流体連通している。容器43は、流体の貯蔵容器として役立ち、使用中、開口44を介してフィルタ媒質20へ流体を供給する。
【0048】
図8には、2つのフィルタ・モジュール1の変形例が示されている。クランプ部材45が、結合部材として役立ち、2つのフィルタ・ハウジング2又はフィルタ・モジュール1の2つの境界壁4を摩擦接続により結合している。クランプ部材45はU形材として構成され、該U形材が2つの境界壁4の2つの隣接縁部にはめ込まれている。これにより、クランプ部材45は、弾性変形され、締付け固定された境界壁間に作用する接触力の結果として摩擦接続を生じさせる。クランプ部材45は、フィルタ・ハウジング2の前側及び/又は後側に配置できる。クランプ結合が一方の側にのみ使用される場合には、境界壁4間の間隔は、他方の側へ力を加えることによって調節でき、それにより、数フィルタ・モジュールの複合体に一定の融通性が与えられ、平らでない機器ハウジング22に順応できる。
【0049】
誤りのないように、終わりに当って、フィルタ・モジュール1のよりよき理解のため、上記のフィルタ・モジュール及び/又はその構成部材は、一部は縮尺なしで及び/又は拡大されて及び/又は縮小されて示されていることを指摘しておく。
実施例はフィルタ・モジュール1の可能な変化形を示したものだが、ここで注意すべきは、本発明は具体的に示した変形例に限定されるものではなく、個々の変形例を種々に組み合わせることも可能である。この変形は、具体的な本発明を利用して技術的な処理を行う教示に基づくものであり、この技術分野の当業者の能力があれば可能である。したがって、開示された個々の細目を組み合わせることにより実現可能な、考え得るすべての変形例形が、保護の範囲内に含まれる。
とりわけ、図1〜図8に示した実施例は、独立的な発明性ある解決策の客体となることが可能である。これと関連する本発明の目的及び具体化された解決策は、これらの図面の詳細な説明から知ることができよう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】フィルタ挿入体を部分的に引き出して示したフィルタ・モジュールの斜視図。
【図2】図3のII‐II線に沿って切断したフィルタ・モジュールの略示垂直断面図。
【図3】図2のIII‐III線に沿って切断したフィルタ・モジュールの略示水平断面図。
【図4】フィルタ挿入体/フィルタ・ハウジング間の分離可能な結合形式を示す数実施例の略示断面図。
【図5】それぞれ1面、2面、3面の対称面を有する各実施例の略示前面図及び平面図。
【図6】フィルタ部材の2つの実施例を示す略示斜視図。
【図7】フィルタ部材の2つの追加実施例を示す略示斜視図。
【図8】2つのフィルタ・モジュール間の結合形式の一実施例を示す略示断面図。
【符号の説明】
【0051】
1 フィルタ・モジュール
2 フィルタ・ハウジング
3 流れ方向
4 境界壁
5 入口
6 出口
7 フィルタ組立体
8 フィルタ群
9 中心距離
10 フィルタ部材
11 フィルタ保持体
12 フィルタ挿入体
13 挿入口
14 案内手段
15 凹部
16 連結部材
17 あり形レール
18 あり溝
19 穴
20 フィルタ媒質
21 ハンドル部材
22 機器ハウジジング
23 排気口
24 取付け部材
25 連結部材
26 溝
27 格子板
28 連結板
29 結合手段
30 ねじ
31 連結条片
32 開口
33 係止突起
34 係止凹部
35 凹部
36 取付け部
37 位置決めピン
38 貫通穴
39 長手方向軸線
40 鉛直軸線
41 横軸線
42 磁気部材
43 容器
44 開口
45 クランプ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の排気から大気汚染物質を除去するフィルタ・モジュール(1)であって、該フィルタ・モジュールが、
機器の排気を通す入口(5)及び出口(6)を有するフィルタ・ハウジング(2)と、
機器に前記フィルタ・モジュール(1)を取り付けるための少なくとも1つの取付け部材(24)と、
前記フィルタ・ハウジング(2)内に配置され、少なくとも2つのフィルタ群(8)から成るフィルタ組立体(7)と
を含んでおり、
前記フィルタ群が、流れ方向(3)にタンデム配置され、フィルタ媒質(20)を備えた棒形状のフィルタ部材(10)から成り、
前記フィルタ部材は、一定の中心間距離(9)をおいて互いに平行に配置され、かつ前記フィルタ部材の長手方向軸線が流れ方向(3)と概ね直交するように配置され、
2つの隣接するフィルタ群(8)のフィルタ部材(10)が、互いに平行であり、かつ前記フィルタ部材の長手方向軸線及び流れ方向と直交する方向に互いにずらされて配置されている、フィルタ・モジュールにおいて、
前記フィルタ部材(10)が、少なくとも1つのフィルタ保持体(11)を介して連結されて、少なくとも1つのフィルタ挿入体(12)を形成し、
前記フィルタ挿入体(12)が、前記フィルタ・ハウジング(2)に取外し可能に結合されていることを特徴とする、フィルタ・モジュール。
【請求項2】
前記フィルタ組立体(7)の前記フィルタ部材(10)が、2つ以上のフィルタ保持体(11)を介して結合され、複数個のフィルタ挿入体(12)が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項3】
流れ方向にタンデム配置された2つの前記フィルタ群(8)の前記フィルタ部材(10)が、前記フィルタ部材の長手方向軸線及び流れ方向に直交する方向に、中心間距離(9)の半分だけ互いにずらされて配置される、請求項1又は請求項2に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項4】
前記フィルタ・ハウジング(2)が、前記フィルタ挿入体(12)を流れ方向(3)と直交する方向に挿入するための少なくとも1つの挿入口(13)を備えていることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項5】
組立て状態に前記フィルタ挿入体(12)を位置決めするために、少なくとも1つの案内手段(14)が、前記フィルタ・ハウジング(2)に設けられることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項6】
前記案内手段(14)が、前記挿入口(13)によって形成されることを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの案内手段(14)が、前記挿入口(13)とは反対側に、前記フィルタ・ハウジング(2)内の凹部(15)又は貫通孔によって形成されることを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項8】
流れ方向(3)にタンデム配置された2つの前記フィルタ挿入体(12)の各々のための案内手段(14)が、前記フィルタ部材(10)の長手方向軸線及び流れ方向(3)と直交するように、互いにずらされて配置されることを特徴とする、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項9】
前記フィルタ組立体(7)の前記フィルタ挿入体(12)が均一の構造を有することを特徴とする、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項10】
前記フィルタ挿入体(12)が、1つ又は2つ又は3つの対称面を有することを特徴とする、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項11】
前記フィルタ群(8)内部で、流れ方向と直角の平面に投影される前記フィルタ部材(10)の面積が、流れ方向(3)と直角の平面へ投影される前記フィルタ部材(10)同士間の自由通過面積よりも大きいことを特徴とする、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項12】
前記フィルタ部材(10)が、前記フィルタ保持体(11)と分離可能に結合されていることを特徴とする、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項13】
前記フィルタ部材(10)が、プレスばめにより前記フィルタ保持体(11)に結合されていることを特徴とする、請求項12に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項14】
前記フィルタ部材(10)が、多孔質材料、繊維メッシュ、パルプ材料及び/又は発泡プラスチックを含む群から選択されたフィルタ媒質(20)を有することを特徴とする、請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項15】
前記フィルタ媒質(20)と前記フィルタ部材(10)とが同じ材料で作られていることを特徴とする、請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項16】
前記フィルタ媒質(20)と前記フィルタ部材(10)とが単一部材として構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項17】
前記フィルタ媒質(20)が、各フィルタ部材(10)の一部分にのみ配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項18】
前記フィルタ媒質(20)が、前記フィルタ部材(10)の表面に配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項17までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項19】
前記フィルタ媒質(20)の一成分が、グリセリン、シリコーン油、精油、パラフィン油及び/又はラテックス乳濁液の群から選択された流体であることを特徴とする、請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項20】
前記流体が匂い物質を含有することを特徴とする、請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項21】
前記流体が、抗菌性、抗ウィルス性、抗真菌性、または殺菌性の物質を含有することを特徴とする、請求項1から請求項20までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項22】
前記流体が生物分解性であることを特徴とする、請求項1から請求項21までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項23】
前記フィルタ媒質(20)が、抗菌性、抗ウィルス性、抗真菌性及び/又は殺菌性の表面を有することを特徴とする、請求項1から請求項22までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項24】
前記フィルタ部材(10)が、流体を保留するように設計された空所を有し、該空所が、穴又はスリット等の開口(44)を介してフィルタ媒質(20)と流体連通していることを特徴とする、請求項1から請求項23までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項25】
前記フィルタ媒質(20)が、少なくとも部分的に活性炭素により形成されている、請求項1から請求項24までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項26】
前記フィルタ部材(10)が、磁性部材(42)又は磁性構成材を含むことを特徴とする、請求項1から請求項25までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項27】
前記フィルタ部材(10)が、伸張形状の横断面を有することを特徴とする、請求項1から請求項26までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項28】
前記横断面の長手方向軸線が、流れ方向(3)に直交するように配向されることを特徴とする、請求項27に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項29】
前記フィルタ部材(10)が、長方形、三角形、星型、又は丸い形の横断面を有することを特徴とする、請求項1から請求項28までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項30】
前記取付け部材(24)が、接着層、接着ストリップ、ヴェルクロ・ストリップ、ねじ、ロックピン、スナップ結合具、又はその他の幾つかの固定手段を含む、請求項1から請求項29までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項31】
前記取付け部材(24)が、フィルタ・ハウジング(2)の入口(5)の領域に配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項30までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項32】
溝(26)が、フィルタ・ハウジング(2)の、機器に面した背面に形成され、前記溝(26)内へ山形断面を有する連結部材(25)が挿入され、前記連結部材(25)が、前記取付け部材(24)を介して機器に取付けられることを特徴とする、請求項1から請求項31までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項33】
前記フィルタ・ハウジング(2)が、1つ以上の付加的フィルタ・モジュール(1)と結合するための少なくとも1つの連結手段(16)を有することを特徴とする、請求項1から請求項32までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項34】
前記連結手段(16)が、ロックピン、取付けレール若しくは取付け溝、あり継ぎ手(17,18)、又はヴェルクロ接合部(面ファスナー)により形成されることを特徴とする、請求項1から請求項33までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項35】
前記連結手段(16)が、2つのフィルタ・ハウジング(2)の境界壁(4)の2つの縁部を結合するクランプ部材(45)によって形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項33までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項36】
前記フィルタ挿入体(12)が、前記フィルタ保持体(11)上にハンドル部材(21)を有することを特徴とする、請求項1から請求項35までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項37】
前記フィルタ・ハウジング(2)及び/又は前記フィルタ保持体(11)及び/又は前記フィルタ部材(10)が、射出成形されたプラスチックにより作製されていることを特徴とする、請求項1から請求項36までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項38】
前記フィルタ挿入体(12)と前記フィルタ・ハウジング(2)との分離可能な結合が、非噛み合いのスナップ接続により、例えば、係止突起(33)とフィルタ・ハウジング(2)の係止溝(34)との係合により、フィルタ挿入体(12)に形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項37までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。
【請求項39】
前記フィルタ・ハウジング(2)の出口(6)に、出口を覆う格子板(27)が配置されることを特徴とする、請求項1から請求項38までのいずれか1項に記載されたフィルタ・モジュール(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【図4g】
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【図4h】
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【図4i】
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【図4j】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−506887(P2009−506887A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529407(P2008−529407)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国際出願番号】PCT/AT2005/000359
【国際公開番号】WO2007/028176
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(508073597)デックスウェット ユーエスエー エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】