説明

フィルタユニット

【課題】クリーンルームの消毒または燻蒸作業において、フィルタユニットの空気吹出口を覆うためのビニールの取り付けを完全かつ容易に行なうことのできるフィルタユニットを提供する。
【解決手段】上部側壁に空気流入口3を、下端面に空気吹出口を形成したケーシング2と、高性能フィルタ10とからなるフィルタユニットにおいて、ケーシング2の側壁に天井面13に当てた鍔状の受板12を一体に設け、ケーシング先端部14を形成すると共に、鍔状の受板12に接するまでケーシング2の周囲を取り囲むにように形成した筒板16と、一端は蝶番を介して多孔板19の一側面と連結し、他端は側面を取外し自在に取付けた多孔板取付枠17とを固定することにより、シートの取付けを簡単容易にしかもシールを確実に行なえるようにしたフィルタユニットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ研究室、製薬工場、食品工場や医療施設などのクリーンルームの天井開口部にフィルタユニットを設置し、フィルタユニットの空気流入口より空気を取入れ、フィルタユニットに収納したフィルタで濾過して清浄空気として空気吹出口より吹出すようにしたフィルタユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオ研究室、製薬工場、食品工場や医療施設などのクリーンルームにおいては、空調運転を停止して、消毒または燻蒸処理が行なわれる作業場があり、この作業場での消毒または燻蒸処理は、アルコールまたは燻蒸ガスなどを一定時間充満して行なわれている。その際、充満したアルコールまたは燻蒸ガスなどが、図6に示すように、フィルタユニット101の多孔板106を通過してフィルタ102を経由して逆に空気流入口103より外部へ漏洩しないように、天井開口面104に設置されたフィルタユニット101のフランジ105に取付けた多孔板106をシート107で覆っていた。
【0003】
しかし、天井開口面104とフランジ105とのスペースが狭い上この種のクリーンルームは床面から天井面までの高さが高く、高い足場に乗って行なうため、テープなどでシートを止める取付け作業にかなりの手間を要し、取付け作業を遂行し難く、その分完全なシールを行なうことが難しかった。
さらに一般的には多孔板106はフランジ105にボルト108で取付けられているので着脱する際には、多孔板106の重さと大きさのため、その取り扱いは容易でない問題があった。
【発明の開示】

【発明が解決しょうとする課題】
【0004】
そこで、本発明は天井開口面に設置されたフィルタユニットの空気吹出口にシートを簡単容易に取付け出来、しかもシールを確実に行ない得るようにすると共に、多孔板を片開き自在に取付けて多孔板の取付け取外しを容易にしたフィルタユニットを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決手段は上部側壁に空気流入口を、下端面に空気吹出口を形成したケーシングと、空気流入口と空気吹出口とを仕切るようにケーシング内部に取付けた高性能フィルタとからなるフィルタユニットにおいて、ケーシングの側壁に天井面に当てた鍔状の受板を一体に設けて、天井面より延出するケーシング先端部を形成し、このケーシング先端部に、鍔状の受板に接するまでケーシングの周囲を取り囲むにように形成した筒板と、一端は蝶番を介して多孔板の一側面と連結し、他端は多孔板の対向する側面を取外し自在に取付けた多孔板取付枠とを取付けると共に、鍔状の受板と天井面および筒板との接触部にシール材で気密に保持したものである。
【0006】
上記のケーシング側壁に設けた鍔状の受板は天井面に当てるようになっているが、かならずしも当たらなくてもよい。
【0007】
次に、天井面より延出するケーシング先端部の寸法は鍔状の受板により確定される寸法であるが、数値に限定されるものではなく、容易にシートの取付け作業が行なえる寸法であればよい。
【0008】
さらに、ケーシング先端部に取付ける筒板と多孔板取付枠は一体に形成しても良く、それぞれ別体のものにしても良い。
【0009】
また、上記課題解決手段による作用は次の通りである。すなはち、ケーシングの上部側壁に形成された空気流入口にはダクトが接続されており、図示しない空調装置から取り入れられた空気が前記ダクトから空気流入口を介してケーシング内に供給される。そして、供給された空気は高性能フィルタを通過して濾過された後、ケーシング下端面の空気吹出口に取付けられた多孔板で拡散されながらクリンルーム内に吹き出される。
【0010】
そして、バイオ研究室、製薬工場、食品工場や医療施設などのクリーンルームにおいては、クリンルーム内を常時無菌に維持しておかねばならないため定期的に消毒または燻蒸処理が行なわれる。
【0011】
そのため、消毒または燻蒸処理に当たってはまず、空調装置を停止し空気の流れを止める。次にクリンルーム内で発生するアルコールまたは燻蒸ガスが高性能フィルタを介して外部に漏れないように非通気性のシートをケーシング下端面空気吹出口全面にわたって覆い、ビニールテープなどのテープで空気漏れのないようにして筒板に止めるようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
上述したように本発明のフィルタユニットは次のような効果が得られる。
(1)天井面よりケーシング先端部を所定寸法延ばしたので、シートの取付け作業が容易な上、確実にシールすることができる。
(2)ケーシングの側壁に取付けた筒板にシートをテープで巻きつけるだけで済むので操作簡単で且つ確実である。
(3)多孔板の一側面を蝶番に、対向する側面を片開き自在に取付けるようにしたので、フィルタ交換作業時などで、高い足場に乗って行なう場合でも一人で作業が出来る上、確実に実施することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るフィルタユニットを添付図1〜5に基づいて説明する。
(実施形態)
クリンルームの天井開口面1に、吊りボルトで吊り下げられた角筒形状をなすケーシング2が設置されている。ケーシング2の上部側壁に空気を取り入れる空気流入口3が形成され、ケーシング2の下端面には空気を吹き出す空気吹出口4が形成されている。また、ケーシング2の内側にはシール板5が固定され、その下方には支持金具6が固定されている。支持金具6にはフィルタ固定用ボルト7が固定されている。フィルタ固定用ボルト7には平らな金属板からなる押え金具8が嵌合し、さらにその下部にナット9が螺着して取付けられている。これにより濾材折り込み形の高性能エアフィルタ10のガスケット11を前記シール板5に押さえ付けながら、ナット9を締付けることにより押え金具8が上昇して、シール板5とガスケット11とをそれぞれしっかり密着させている。これにより十分な気密性を保持して高性能エアフィルタ10からクリンルーム内に清浄な空気を供給できるようになっている。
【0014】
ケーシング2の側壁には鍔状の受板12が固定され、この鍔状の受板12が天井面13に当たるようになっている。そして鍔状の受板12から先のケーシング先端部14は天井面13より延びている。さらにケーシング先端部14は内方L型に折れた鍔部15が形成されている。前記鍔部15には筒板16と多孔板取付枠17が固定されている。筒板16はケーシング2の側壁を取り囲むように鍔状の受板12に接するまで延びている。前記多孔板取付枠17の一端には蝶番18が取付けられている。そしてこの蝶番18には多孔板19の一側面が固定されている。一方、多孔板19の対向する側面は化粧ビス20で多孔板取付枠17に取り外し自在に取付けられている。
【0015】
天井面13と鍔状の受板12および筒板16との接触部にはシール材21が充填され、シール材21で気密に維持されると共に接触部が確実に保持されるようになっている。
【0016】
図5は筒板16に通気性のないシート22をテープ23で取付けた状態を示すものである。
【0017】
尚、本実施例では、本発明の一実施例を示したもので、これに限定されることなく、種々変更しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明はクリーンルームにおいて、消毒または燻蒸作業を行う際、天井面13より延びた筒板16に通気性のないシート22をテープ23で取付ければ良い上、高性能エアフィルタ10の取付けの際には、多孔板19を一側面は蝶番に、対向する他側面は多孔板取付枠に取付け取外し自在に取付けたので、多孔板19は片開きで操作出来、特に研究所や工場などのクリーンルームなどのように床面から天井板までの高さが高いところの作業でも適したものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例を示すフィルタユニットの側面図である。
【図2】図1のA−A’縦断面図である。
【図3】図2のB−B’縦断面図である。
【図4】図1に示す多孔板が開いた状態を示す図である。
【図5】図1に示すフィルタユニットに通気性のないシートをテープで取付けた状態を示す図である。
【図6】従来のフィルタユニットを示す概略図である。
【符号の説明】
【0020】
1・・・天井開口面 2・・・ケーシング 3・・・空気流入口
4・・・空気吹出口 12・・・鍔状の受板 14・・・ケーシング先端部
16・・・筒板 17・・・多孔板取付枠 18・・・蝶番
19・・・多孔板 21・・・シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流入口と空気吹出口とを形成し且つクリーンルームの天井開口面に設置したケーシングと、ケーシング内部に収納したフィルタとからなるフィルタユニットにおいて、ケーシング側壁に天井面に当てた鍔状の受板を設け、ケーシング先端部には筒板と多孔板取付枠とを取付けて、筒板はケーシング周囲を取り囲むように鍔状の受板に接するまで形成し、多孔板取付枠は一端を多孔板の一側面を蝶番を介して連結し、他端を前記一側面に対向する多孔板の他側面を取付け取外し自在にしたことを特徴とするフィルタユニット。
【請求項2】
鍔状の受板と天井面および筒板との接触部に、シール材で気密に保持したことを特徴とする請求項1記載のフィルタユニット。
【請求項3】
筒板に通気性のないシートをテープで取付けられ易くしたことを特徴とする請求項1記載のフィルタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−297359(P2006−297359A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150093(P2005−150093)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(599130081)株式会社総合設備計画 (2)
【出願人】(000193047)進和テック株式会社 (36)
【出願人】(390040888)日本エアー・フィルター株式会社 (45)
【Fターム(参考)】