説明

フィルターエレメントの改質方法

【課題】フィルターエレメント表面を特有の反応性官能基で化学的に改質するフィルターエレメントの改質方法を提供するものである。
【解決手段】本発明に係るフィルターエレメントの改質方法は、燃料やオイルなどの液体を濾過して、その液体中に含まれる泡や気泡を微小化、低減するフィルターエレメントの改質方法であって、フィルターエレメント本体を、そのフィルターエレメント本体を構成する繊維と反応する1つ以上の反応性官能基を有する改質薬剤の溶液に浸漬して改質薬剤を繊維に含浸させ、しかる後、そのフィルターエレメント本体に、乾燥処理、及び加熱、光、電子線による化学反応処理を施し、繊維表面に上記改質薬剤を化学的に結合させて固定化するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料やオイルなどの液体を濾過するフィルターエレメントに係り、詳しくは自動車用エンジン等のコモンレール式燃料噴射システムに適用される燃料循環系に装備されて、燃料中の異物を除去するとともに燃料中の泡や気泡を低減させる燃料フィルターに好適に使用されるフィルターエレメントの改質方法及びそのフィルターエレメントを用いた輸送機用燃料フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼルエンジン搭載車両、例えば、トラックや産業用車両などの排気ガスの黒煙中に含まれる粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)などの有害物質が社会問題となっており、地球温暖化現象に見られる環境問題が、世界的規模で重要課題となっている。このような背景から、車両用ディーゼルエンジンの排気ガスに対する規制は、一段と厳しさを増しており、排気ガスを浄化するための新しい技術開発が急務となっている。
【0003】
このような状況の中で、コモンレール式と呼ばれる燃料噴射システムは、車両用ディーゼルエンジンからの排気ガスを浄化する技術として、既に実用化されている。コモンレール式燃料噴射システムは、噴射の前にコモンレール内に燃料を高圧状態で貯留しておき、コモンレール内に貯留された高圧燃料を適宜のタイミングでインジェクタを制御することによりシリンダ内に噴射するシステムである。このコモンレール式燃料噴射システムは、従来の燃料噴射ポンプによりノズルを介してシリンダ内に燃料を噴射する燃料噴射システムとは異なり、低速域から高圧噴射が可能であり、低速域における黒煙やNOxの発生が大幅に低減され、騒音の抑制や燃費の改善などの利点が挙げられる。
【0004】
このようなコモンレール式燃料噴射システムにおいて、最近、燃料中に比較的多量に含まれる空気(泡や気泡)によるエンストやエンジン回転不安定、あるいは黒物、いわゆるデポジットの発生などといった好ましくない現象が認められるようになってきた。
【0005】
一方、本来、燃料タンクヘの燃料給油時の泡立ちの抑制を主とした目的であるが、燃料中の気泡の発生を抑制する方法として、消泡剤、例えば、シリコン系化合物、ポリエーテル系化合物などを燃料中に添加することが知られている(特許文献1〜3)。また、液体用、気体用の濾材として、ポリビニルアセタール系多孔質体よりなる濾材の製造方法が知られている(特許文献4)。
【0006】
また、燃料中の気泡や空気を微小化、低減するフィルタ、装置が既に提案されている(特許文献5〜8)。
【0007】
【特許文献1】特表平7−509533号公報
【特許文献2】特開平7−207288号公報
【特許文献3】特開2000−178571号公報
【特許文献4】特許第2869210号明細書
【特許文献5】特開2006−104968号公報
【特許文献6】特開平5−157014号公報
【特許文献7】特開平8−193550号公報
【特許文献8】特開2003−328888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3記載の方法では、燃料の消費とともに、常に消泡剤を補填する必要があるので非効率であり、さらに燃料油組成物として消泡剤を含ませた場合には、燃料のコストアップになり、望ましいものではなかった。
【0009】
また、特許文献4記載の方法では、製造工程で、気孔形成材及び未反応の架橋剤、触媒を除去しており、これらは濾材表面に固定化されるものではなかった。
【0010】
一方、特許文献5〜8記載の発明は、フィルターエレメント自体ではなく、物理的な手段又は装置構造により、燃料中の気泡や空気を微小化、低減するものであり、その分、装置コストの上昇を招いていた。
【0011】
本発明は前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、フィルターエレメント表面を特有の反応性官能基で化学的に改質するフィルターエレメントの改質方法、及びそのフィルターエレメントを燃料循環系に設置することで循環する燃料中の泡や気泡を低減することを可能にする新規な燃料フィルターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、燃料やオイルなどの液体を濾過して、その液体中に含まれる泡や気泡を微小化、低減するフィルターエレメントの改質方法であって、
フィルターエレメント本体を、そのフィルターエレメント本体を構成する繊維と反応する1つ以上の反応性官能基を有する改質薬剤の溶液に浸漬して改質薬剤を繊維に含浸させ、しかる後、そのフィルターエレメント本体に、乾燥処理と、加熱、光、又は電子線による化学反応処理とを施し、繊維表面に上記改質薬剤を化学的に結合させて固定化することを特徴とするフィルターエレメントの改質方法である。
【0013】
請求項2の発明は、上記化学反応処理後の上記フィルターエレメント本体に、更に第2の乾燥処理を施す請求項1記載のフィルターエレメントの改質方法である。
【0014】
請求項3の発明は、上記化学反応処理が、加熱エネルギーによる加熱処理であり、その加熱処理温度が100〜180℃、加熱処理時間が10分〜5時間である請求項1又は2記載のフィルターエレメントの改質方法である。
【0015】
請求項4の発明は、上記フィルターエレメント本体を構成する繊維が、セルロース系の天然繊維である請求項1〜3いずれか記載のフィルターエレメントの改質方法である。
【0016】
請求項5の発明は、上記改質薬剤が、分子内に、エポキシ基及び/又はSi(OR')3[R'は、水素、アルキル基、アルコキシアルキル基から選択される1種類以上の官能基]の反応性官能基を有する請求項1〜4いずれか記載のフィルターエレメントの改質方法である。
【0017】
請求項6の発明は、上記改質薬剤が、分子内に、OH基(ヒドロキシル基)、COOH基(カルボキシル基)、CHO基(アルデヒド基)、NR3基(Rは、H及び/又はアルキル基)、SH基(チオール基)、NCO基(イソシアネート基)、又はC=C不飽和基から選択される1つ以上の反応性官能基を有する請求項1〜4いずれか記載のフィルターエレメントの改質方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フィルターエレメント本体の表面が特有の反応性官能基で化学的に改質された改質フィルターエレメントを得ることができ、この改質フィルターエレメントに、燃料やオイルなどの液体を透過させるだけで、その液体中に含まれる泡や気泡を微小化、低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、必ずしも記載された実施形態に限定されるものではない。
【0020】
フィルタの少なくとも一部に樹脂を用いたものとして、表面ろ材をシリコーン、フェノールなどで表面コーティングしたもの(特開2001−212412号公報)、ろ布の縦糸と横糸の接触部にメラミン樹脂を付着残留させたもの(特開平6−327918号公報)、又は燃料フィルタのフィルタ本体を樹脂液内に浸し、樹脂を含浸させたもの(特開2003−193929号公報)が知られている。また、フィルタ体をポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の繊維で構成したもの(特開2004−218607号公報)が知られている。
【0021】
本発明者らは、フィルターエレメント本体の表面を特有の反応性官能基で化学的に改質することで、物理的な手段、装置を用いることなく、燃料やオイルなどの液体を透過させるだけで、その液体中に含まれる泡や気泡を微小化、低減できるフィルターエレメントを得ることができることを見出した。
【0022】
本発明の好適一実施の形態に係るフィルターエレメントの改質方法は、フィルターエレメント本体を、そのフィルターエレメント本体を構成する繊維と反応する1つ以上の反応性官能基を有する改質薬剤の溶液に浸漬して改質薬剤を繊維に含浸させ、しかる後、そのフィルターエレメント本体に、第1の乾燥処理(風乾処理)と、加熱、光、又は電子線による化学反応処理とを施し、繊維表面に改質薬剤を化学的に結合させて固定化することに特徴がある。
【0023】
具体的には、セルロース系の単独繊維で構成されるフィルターエレメント本体を、分子内に、エポキシ基及び/又はSi(OR')3[R'は、水素、アルキル基、アルコキシアルキル基から選択される1種類以上の官能基]の反応性官能基を有する改質薬剤の溶液に浸漬して改質薬剤を繊維に含浸させた後、溶液から引き上げる。しかる後、そのフィルターエレメント本体に、第1の乾燥処理として風乾処理を12〜36時間施す。
【0024】
その後、フィルターエレメント本体を加熱炉に入れ、加熱エネルギーによる化学反応処理を行い、繊維に改質薬剤を化学的に結合させて固定化する。このように、フィルターエレメント本体を構成する繊維の表面を、その繊維と反応する1つ以上の反応性官能基を有する改質薬剤によって改質処理することにより、繊維の表面に改質薬剤を化学的に結合させて固定化することができる。
【0025】
最後に、そのフィルターエレメント本体に、第2の乾燥処理として風乾処理を24〜72時間施す。これによって、改質フィルターエレメントが得られる。
【0026】
本実施の形態に係る改質方法により得られた改質フィルターエレメントを用いたフィルター、例えば燃料フィルターによれば、燃料が改質フィルターエレメントを透過する際、フィルターエレメント本体の表面に結合した反応性官能基が、燃料中の泡や気泡の空気層に分子レベルで入り込む。これによって、泡が不安定化し、破泡を起こすと考えられる。このようなメカニズムにより、燃料を改質フィルターエレメントに透過させるだけで、燃料中の気泡や泡を微小化又は低減することができる。
【0027】
よって、表面が特有の反応性官能基で化学的に改質されたフィルターエレメントを備えた燃料フィルターを、燃料循環系に設置することで、循環する燃料中の泡や気泡を微小化又は低減することができ、その結果、燃料中に比較的多量に含まれる空気によるエンストやエンジン回転不安定、あるいは黒物、いわゆるデポジットの発生などといった好ましくない現象を防止できるという効果が得られる。
【0028】
また、改質フィルターエレメント自体で気泡や泡の微小化又は低減を行うことができるため、従来のように泡除去のための特別の装置を必要としなくなることから、コスト低減及び装置(液体循環系)のコンパクト化を図ることができる。
【0029】
この改質フィルターエレメントは、燃料フィルターのみに適用を限定するものではなく、オイルフィルターや他産業用液体フィルターにも適用できることはいうまでもない。
【0030】
フィルターエレメント本体を構成する繊維は、反応性官能基を有するものであれば、特に制限するものではないが、セルロース系の天然繊維が特に好ましく、その他に、ガラス繊維、炭素繊維、岩石繊維などの無機繊維、タンパク質系の天然繊維、反応性官能基を有するポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリロニトリル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系などの合成繊維などが挙げられる。これら繊維は、バインダーなどによって予め化学修飾(繊維補強)したものであっても良い。また、これら繊維は、単独のもの又は混合したもののいずれであっても良いが、セルロース系の単独繊維が、反応性や製造コストの面からも好ましい。
【0031】
フィルターエレメント本体の形態(型、種類)は、特に制限するものではないが、ロールオンタイプや菊折タイプが部品形状の観点から好ましい。
【0032】
改質薬剤(反応薬剤)としては、フィルターエレメント本体を構成する繊維と反応する反応性官能基を分子内に1つ以上有するものであれば、特に制限することはないが、例えば、分子内に、エポキシ基及び/又はSi(OR')3[R'は、水素、アルキル基、アルコキシアルキル基から選択される1種類以上の官能基]の反応性官能基を有するものが挙げられる。具体的には、アルキルシランとして、KBM-3103(信越化学工業製)、フルオロアルキルシランとして、TSL8233(GE東芝シリコーン製)、ポリアルキレングリコールエポキシとして、グリシエールPP-300P(三洋化成工業製)などが挙げられる。例えば、フィルターエレメント本体の繊維をセルロースで構成した場合、これらの改質薬剤は、セルロースのOH基と化学反応して新たにエーテル結合を形成し、セルロース表面に固定される。
【0033】
その他の改質薬剤として、分子内に、OH基(ヒドロキシル基)、COOH基(カルボキシル基)、CHO基(アルデヒド基)、NR3基(Rは、H及び/又はアルキル基)、SH基(チオール基)、NCO基(イソシアネート基)、又はC=C不飽和基から選択される1つ以上の反応性官能基を有する成分が挙げられる。
【0034】
フィルターエレメント本体の表面において、改質薬剤を化学的に結合させて固定化することができるのであれば、改質薬剤をフィルターエレメント本体を構成する繊維表面に付着させる方法は特に制限するものではなく、例えば、浸漬法、塗布法などが挙げられるが、浸漬法がより好ましい。具体的には、改質薬剤を含む溶液にフィルターエレメント本体を浸漬し、その繊維に改質薬剤を含浸させた後、引き上げて乾燥させ、しかる後、加熱炉などで加熱処理(焼付け処理)を行う方法が、生産性の上から好ましい。この際、改質薬剤の溶液に、フィルターエレメント本体の力学的強度保持のためのバインダーや、熱硬化性樹脂、抗酸化剤、又は安定剤などの各種添加剤を適宜混合してもよい。
【0035】
フィルターエレメント本体ヘの改質薬剤の付着量は、フィルターエレメント本体の圧力損失などといった性能特性に応じて適宜決められるものであるが、改質薬剤を含む溶液の濃度や浸漬時間などを調整することにより、任意に制御可能である。
【0036】
第1の乾燥処理の処理時間は、フィルターエレメント本体の大きさ、改質薬剤を含む溶液に応じて適宜決定されるものであり、特に限定するものではないが、例えば、12〜36時間、好ましくは24時間前後(20〜30時間)とされる。
【0037】
フィルターエレメント本体に対する化学反応処理は、加熱エネルギー、光エネルギー、又は電子線エネルギーを用いて行う。この化学反応処理として、加熱エネルギーを用いる場合、例えば、加熱処理温度は100〜180℃、加熱処理時間は10分〜5時間とされる。
【0038】
化学反応処理後のフィルターエレメント本体には、更に第2の乾燥処理を施すことが好ましい。この第2の乾燥処理(風乾処理)の処理時間は、フィルターエレメント本体の大きさ、改質薬剤に応じて適宜決定されるものであり、特に限定するものではないが、第1の乾燥処理時間よりも長く行うことが好ましい。例えば、処理時間は24〜72時間、好ましくは48時間前後(40〜60時間)とされる。
【実施例】
【0039】
以下に具体的な例を挙げて説明をするが、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0040】
なお、性能評価については、未改質フィルターおよび各改質フィルターを用いて、軽油燃料を流通させ、フィルター透過後に軽油燃料の流れから垂直方向に分岐させた計量器内に蓄積された空気量が20ccになるまでの時間を、未改質フィルターでの時間を基準(1.0)として相対時間で示した。つまり、この時間が長いほど、気泡の低減および消泡性に優れた性能を有することを示している。
【0041】
また、フィルター透過後の軽油燃料中における気泡の大きさや個数も目視観察した。
【0042】
(実施例1;アルキルシラン変性)
ビーカーにイソプロパノール600mlを入れ、攬絆しながら、酢酸3mlを滴下した。均一になったことを確認して、攬絆を続けながら、改質薬剤としてKBM−3103(信越化学工業製;デシルトリメトキシシラン)を滴下しながら18ml加えた。この溶液に燃料フィルター(セルロース繊維製、ロールオンタイプ)を入れ、1晩浸漬した。その後、燃料フィルターを1昼夜(24時間)風乾(乾燥処理)した後、100℃で約5時間加熱処理し、さらに風乾(第2の乾燥処理)を2昼夜(48時間)行った。
【0043】
(実施例2;フルオロアルキルシラン変性)
イソプロパノール500ml、酢酸2.5ml、改質薬剤としてTSL8233(GE東芝シリコーン製;ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン)を6mlに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0044】
(実施例3;ポリアルキレングリコールエポキシ変性)
ビーカーにアセトン600mlを入れ、攪拌しながら、改質薬剤としてグリシエールPP−300P(三洋化成工業製;ポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル)を18ml滴下しながら加えた。この溶液に燃料フィルター(セルロース繊維製、ロールオンタイプ)を入れ、1晩浸漬した。その後、燃料フィルターを1昼夜風乾後、100℃で約5時間加熱処理した。
【0045】
(比較例1)
実施例1〜3で用いた燃料フィルター(セルロース繊維製、ロールオンタイプ)を、そのまま(未改質のまま)評価に供した。
【0046】
実施例1〜3及び比較例1の結果を表1にまとめて示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示した結果から、上記改質薬剤で処理したロールオンタイプの燃料フィルター(実施例1〜3)においては、計量器内に蓄積される空気量が20ccになるまでの時間は、未改質の燃料フィルター(比較例1)のそれに比べて長く、また、気泡の大きさは小さく、気泡の個数は少なくなっており、消泡性に優れた性能であることが示された。実施例2の気泡の個数は、比較例1よりも少なく、実施例1よりは多かった。実施例3の気泡の個数は、比較例1とあまり変わらなかった。
【0049】
(実施例4)
ビーカーにイソプロパノール320mlを入れ、攪拌しながら、酢酸5.5mlを滴下した。均一になったことを確認して、攪拌を続けながら、改質薬剤としてKBM−3103(信越化学工業製;デシルトリメトキシシラン)を滴下しながら32ml加えた。この溶液に燃料フィルター(セルロース繊維製、フェノール樹脂含浸硬化済みの菊折型)を入れ、1晩浸漬した。その後、燃料フィルターを1昼夜風乾後、100℃で約5時間加熱処理し、さらに風乾を2昼夜行った。
【0050】
(比較例2)
実施例4で用いた燃料フィルター(フェノール樹脂含浸硬化済みの菊折型)を、そのまま(未改質のまま)評価に供した。
【0051】
実施例4及び比較例2の結果を表2にまとめて示す。
【0052】
【表2】

【0053】
表2に示した結果から、上記改質薬剤で処理した菊折型の燃料フィルター(実施例4)においては、計量器内に蓄積される空気量が20ccになるまでの時間は、未改質の燃料フィルター(比較例2)のそれに比べて長く、また、気泡の大きさは小さく、気泡の個数は少なくなっており、消泡性に優れた性能であることが示された。
【0054】
(実施例5)
ビーカーに、10mlのフェノール樹脂溶液(フェノール58%含有メタノール溶液)と、3mlのアルキルシラン溶液(メタノール(50ml)、KBM−3103(10ml)、酢酸(0.5ml)の混合液から採取)を37mlのメタノールで希釈したものとを混合し、その溶液に菊折型フィルター原紙(セルロース繊維製)を浸漬した。フィルター原紙が全体的に湿潤した後に引き上げ、風乾を1〜2日行った。その後、180℃×10分で加熱処理した。
【0055】
(比較例3)
比較例2として用いた燃料フィルター(フェノール樹脂含浸硬化済みの菊折型)を、そのまま(未改質のまま)評価に供した。
【0056】
実施例5及び比較例3の結果を表3にまとめて示す。
【0057】
【表3】

【0058】
表3に示した結果から、上記改質薬剤で処理した菊折型のフィルター原紙(実施例5)においては、計量器内に蓄積される空気量が20ccになるまでの時間は、未改質の燃料フィルター(比較例3)のそれに比べて長く、また、気泡の大きさは小さく、気泡の個数は少なくなっており、消泡性に優れた性能であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料やオイルなどの液体を濾過して、その液体中に含まれる泡や気泡を微小化、低減するフィルターエレメントの改質方法であって、
フィルターエレメント本体を、そのフィルターエレメント本体を構成する繊維と反応する1つ以上の反応性官能基を有する改質薬剤の溶液に浸漬して改質薬剤を繊維に含浸させ、しかる後、そのフィルターエレメント本体に、乾燥処理と、加熱、光、又は電子線による化学反応処理とを施し、繊維表面に上記改質薬剤を化学的に結合させて固定化することを特徴とするフィルターエレメントの改質方法。
【請求項2】
上記化学反応処理後の上記フィルターエレメント本体に、更に第2の乾燥処理を施す請求項1記載のフィルターエレメントの改質方法。
【請求項3】
上記化学反応処理が、加熱エネルギーによる加熱処理であり、その加熱処理温度が100〜180℃、加熱処理時間が10分〜5時間である請求項1又は2記載のフィルターエレメントの改質方法。
【請求項4】
上記フィルターエレメント本体を構成する繊維が、セルロース系の天然繊維である請求項1〜3いずれか記載のフィルターエレメントの改質方法。
【請求項5】
上記改質薬剤が、分子内に、エポキシ基及び/又はSi(OR')3[R'は、水素、アルキル基、アルコキシアルキル基から選択される1種類以上の官能基]の反応性官能基を有する請求項1〜4いずれか記載のフィルターエレメントの改質方法。
【請求項6】
上記改質薬剤が、分子内に、OH基(ヒドロキシル基)、COOH基(カルボキシル基)、CHO基(アルデヒド基)、NR3基(Rは、H及び/又はアルキル基)、SH基(チオール基)、NCO基(イソシアネート基)、又はC=C不飽和基から選択される1つ以上の反応性官能基を有する請求項1〜4いずれか記載のフィルターエレメントの改質方法。

【公開番号】特開2008−221138(P2008−221138A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63376(P2007−63376)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【出願人】(000130259)株式会社コベルコ科研 (174)
【出願人】(000220804)東京濾器株式会社 (84)
【Fターム(参考)】