説明

フィルタープレスの濾板構造

【課題】濾布との間に設けて排水を促進するネット部材の取り付けが容易にできるフィルタープレスの濾板構造を提供すること。
【解決手段】複数の濾板3を重ね合わせて圧締し、隣接する濾板3間に形成される濾室3cに濾布7を介して被濾過物を圧送し、脱水するフィルタープレスの濾板本体3aの表面に、荷重支持ボス部3eおよび供給孔3dを除いて配置される排水促進用のネット部材3gを、固定リング部材11aや固定枠部材12b、固定係止リング13bなどのネット固定手段11,12,13によって取り付けることで、弾性被覆部材3h上に確実かつ簡単に取り付けることができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィルタープレスの濾板構造に関し、濾布との間に設けて排水を促進するネット部材の取り付けを容易にできるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
工場廃液や各種作業現場からの汚泥等を含むスラリーの無害化処理のため固液分離を図り、液分は無害化して清澄水として河川等に排水し、有害な固形部分は焼却埋立て処理したり、回収してリサイクル的に有効再利用すること等が行なわれている。
【0003】
このようなスラリーの処理を確実に行うことができる装置のひとつとしてフィルタープレスが用いられている。
【0004】
このフイルタープレスでは、例えば特許文献1に開示されたものを図6に示すように、ベース1に一対のスタンド2,2を立設し、これらスタンド2、2間に複数の濾板3,3…をガイドレール4に沿って往復移動自在に支持するとともに、一方のスタンド2側に油圧シリンダ5を設けて各濾板3を圧締状態にしたり、離間させることができるようにし、圧締した状態で隣接する濾板3,3間に形成される濾室内に濾布を介して被濾過物を圧送し、固液分離された濾液を排液シュート6を介して排出するとともに、各濾板3を離間させて脱水された固化分のケーキを濾布から剥離落下させて排出除去するようになっている。
【0005】
このようなフィルタープレスの各濾板3は、例えば図7および開枠状態の一部分の断面を図8に示すように、略正方形状の鉄板製の濾板本体3aを備え、濾板本体3aの表裏の周囲に枠部材3bが設けられて額縁状とされ、枠部材3bの内側の凹部が濾室3cとされてその中央部に被濾過物の供給孔3dが設けてある。この濾室3cには、荷重支持用のボス部3eが複数形成され、圧締状態で隣接するボス部3e同士を当接させて荷重を支持するようにしてある。
【0006】
そして、これら濾板本体3a、枠部材3b、濾室3c、ボス部3eの表面が図示しない弾性材料からなる被覆部材で被覆してあり、これらの腐食を防止するとともに、圧締時の密着性の確保や衝撃緩和を図るようにしてある。
【0007】
さらに、この濾板3には、分離した濾液を外部に排出するため排出路3fが濾板本体3aに設けられて被覆部材の表面に開口するとともに、被覆部材の表面には、ネット部材3gが設けてあり、濾布7と濾板3との間の濾過液を排出路3fに導くようにしてある。
【0008】
この濾板3に表裏両面に設けるネット部材3gは、合成樹脂製あるいは金属製とされており、ゴムなどの弾性材料の被覆部材上に配置されることから、通常、接着剤で固定することが行なわれている。
【特許文献1】国際公開WO2005/097288A1公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、このような濾板3の構造では、ゴムなどの弾性材料の被覆部材上に合成樹脂製あるいは金属製のネット部材3gを接着剤で固定することから、接着強度の確保が難しく、剥がれ易いという問題がある。
【0010】
また、ゴムなどの弾性材料の被覆部材を設けない濾板の構造でも、止め金具を用いてネット部材を取り付けたり、濾板本体を貫通する孔をあけて水糸等で表裏のネット部材を縫い付けて固定するようにしているが、取り付けが煩雑であるという問題がある。
【0011】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、濾布との間に設けて排水を促進するネット部材の取り付けが容易にできるフィルタープレスの濾板構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる従来技術の課題を解決するこの発明の請求項1記載のフィルタープレスの濾板構造は、複数の濾板を重ね合わせて圧締し、隣接する濾板間に形成される濾室に濾布を介して被濾過物を圧送し、脱水するフィルタープレスの濾板構造であって、周囲に枠部材を備え中間部に複数の荷重支持ボス部を備えるとともに、被濾過物の供給孔および濾液の排出路を備えた濾板本体と、この濾板本体を覆う弾性被覆部材と、前記枠部材の内側の前記弾性被覆部材で被覆された濾板本体表面に、前記荷重支持ボス部および前記供給孔を除いて配置される排水促進用のネット部材と、を有してなり、前記ネット部材を、ネット固定手段を設けて前記弾性被覆部材上に取り付けたことを特徴とするものである。
【0013】
このフィルタープレスの濾板構造によれば、複数の濾板を重ね合わせて圧締し、隣接する濾板間に形成される濾室に濾布を介して被濾過物を圧送し、脱水するフィルタープレスの濾板構造で、周囲に枠部材を備え中間部に複数の荷重支持ボス部を備えるとともに、被濾過物の供給孔および濾液の排出路を備えた濾板本体と、この濾板本体を覆う弾性被覆部材と、前記枠部材の内側の前記弾性被覆部材で被覆された濾板本体表面に、前記荷重支持ボス部および前記供給孔を除いて配置される排水促進用のネット部材と、を有してなり、前記ネット部材を、ネット固定手段を設けて前記弾性被覆部材上に取り付けるようにしており、ネット固定手段によってネット部材を取り付けることで、弾性被覆部材上に確実かつ簡単に取り付けることができるようになる。
【0014】
また、この発明の請求項2記載のフィルタープレスの濾板構造は、請求項1記載の構成に加え、前記ネット固定手段を、前記荷重支持ボス部に嵌め込んで固定する固定リング部材で構成したことを特徴とするものである。
【0015】
このフィルタープレスの濾板構造によれば、前記ネット固定手段を、前記荷重支持ボス部に嵌め込んで固定する固定リング部材で構成してあり、荷重支持ボス部を利用して固定リング部材を嵌め込んでネット部材を挟むことで、確実かつ簡単に取り付けることができるようになる。
【0016】
さらに、この発明の請求項3記載のフィルタープレスの濾板構造は、請求項1または2記載の構成に加え、前記ネット固定手段を、前記濾板本体または/および前記弾性被覆部材に設ける前記枠部材の内側で表面から突出する固定用突出部と、この固定用突出部に嵌め込んで固定する固定枠部材とで構成したことを特徴とするものである。
【0017】
このフィルタープレスの濾板構造によれば、前記ネット固定手段を、前記濾板本体または/および前記弾性被覆部材に設ける前記枠部材の内側で表面から突出する固定用突出部と、この固定用突出部に嵌め込んで固定する固定枠部材とで構成してあり、濾板本体または/および前記弾性被覆部材に設けた固定用突出部に固定枠部材を嵌め込んでネット部材を挟むことで、確実かつ簡単に取り付けることができるようになる。
【0018】
また、この発明の請求項4記載のフィルタープレスの濾板構造は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記ネット固定手段を、前記弾性被覆部材に形成され前記供給孔の内壁部および表裏部を囲み供給孔より大径の表裏に突き出す外周面を備えた係止部と、この係止部外周に嵌め込んで係止固定する固定係止リングとで構成したことを特徴とするものである。
【0019】
このフィルタープレスの濾板構造によれば、前記ネット固定手段を、前記弾性被覆部材に形成され前記供給孔の内壁部および表裏部を囲み供給孔より大径の表裏に突き出す外周面を備えた係止部と、この係止部外周に嵌め込んで係止固定する固定係止リングとで構成してあり、弾性被覆部材に供給孔より大径の表裏に突き出す外周面を備えた係止部を設けて、この係止部外周に固定係止リングを嵌め込んでネット部材を挟むことで、確実かつ簡単に取り付けることができるようになる。
【0020】
さらに、この発明の請求項5記載のフィルタープレスの濾板構造は、請求項4記載の構成に加え、前記ネット固定手段を、前記固定係止リングに代え、前記係止部外周に前記濾板本体を挟んで前記弾性被覆部材の表裏に配置される固定リングと、これら表裏の固定リングを貫通して固定する締結部材とで構成したことを特徴とするものである。
【0021】
このフィルタープレスの濾板構造によれば、ネット固定手段を、前記固定係止リングに代え、前記係止部外周に前記濾板本体を挟んで前記弾性被覆部材の表裏に配置される固定リングと、これら表裏の固定リングを貫通して固定する締結部材とで構成してあり、弾性被覆部材に供給孔より大径の表裏に突き出す外周面を備えた係止部を設けて、この係止部外周の表裏の固定リングでネット部材を挟み貫通する締結部材で締め付けることで、確実かつ簡単に取り付けることができるようになる。
【0022】
また、この発明の請求項6記載のフィルタープレスの濾板構造は、請求項5記載の構成に加え、前記固定リングを、金属リングを弾性被覆部材で覆って構成したことを特徴とするものである。
【0023】
このフィルタープレスの濾板構造によれば、前記固定リングを、金属リングを弾性被覆部材で覆って構成してあり、金属リングの錆を防止し、確実かつ簡単に取り付けることができるようになる。
【0024】
さらに、この発明の請求項7記載のフィルタープレスの濾板構造は、請求項1〜6のいずれかに記載の構成に加え、前記ネット固定手段を、前記枠部材を覆う前記弾性被覆部材の表面より低く形成してなることを特徴とするものである。
【0025】
このフィルタープレスの濾板構造によれば、前記ネット固定手段を、前記枠部材を覆う前記弾性被覆部材の表面より低く形成してあり、これらのネット固定手段に圧締時の荷重が加わらないようにし、簡単な構造にできるようにしている。
【発明の効果】
【0026】
この発明の請求項1記載のフィルタープレスの濾板構造によれば、複数の濾板を重ね合わせて圧締し、隣接する濾板間に形成される濾室に濾布を介して被濾過物を圧送し、脱水するフィルタープレスの濾板構造で、周囲に枠部材を備え中間部に複数の荷重支持ボス部を備えるとともに、被濾過物の供給孔および濾液の排出路を備えた濾板本体と、この濾板本体を覆う弾性被覆部材と、前記枠部材の内側の前記弾性被覆部材で被覆された濾板本体表面に、前記荷重支持ボス部および前記供給孔を除いて配置される排水促進用のネット部材と、を有してなり、前記ネット部材を、ネット固定手段を設けて前記弾性被覆部材上に取り付けるようにしたので、ネット固定手段によってネット部材を取り付けることで、弾性被覆部材上に確実かつ簡単に取り付けることができる。
【0027】
また、この発明の請求項2記載のフィルタープレスの濾板構造によれば、前記ネット固定手段を、前記荷重支持ボス部に嵌め込んで固定する固定リング部材で構成したので、荷重支持ボス部を利用して固定リング部材を嵌め込んでネット部材を挟むことで、確実かつ簡単に取り付けることができる。
【0028】
さらに、この発明の請求項3記載のフィルタープレスの濾板構造によれば、前記ネット固定手段を、前記濾板本体または/および前記弾性被覆部材に設ける前記枠部材の内側で表面から突出する固定用突出部と、この固定用突出部に嵌め込んで固定する固定枠部材とで構成したので、濾板本体または/および前記弾性被覆部材に設けた固定用突出部に固定枠部材を嵌め込んでネット部材を挟むことで、確実かつ簡単に取り付けることができる。
【0029】
また、この発明の請求項4記載のフィルタープレスの濾板構造によれば、前記ネット固定手段を、前記弾性被覆部材に形成され前記供給孔の内壁部および表裏部を囲み供給孔より大径の表裏に突き出す外周面を備えた係止部と、この係止部外周に嵌め込んで係止固定する固定係止リングとで構成したので、弾性被覆部材に供給孔より大径の表裏に突き出す外周面を備えた係止部を設けて、この係止部外周に固定係止リングを嵌め込んでネット部材を挟むことで、確実かつ簡単に取り付けることができる。
【0030】
さらに、この発明の請求項5記載のフィルタープレスの濾板構造によれば、ネット固定手段を、前記固定係止リングに代え、前記係止部外周に前記濾板本体を挟んで前記弾性被覆部材の表裏に配置される固定リングと、これら表裏の固定リングを貫通して固定する締結部材とで構成したので、弾性被覆部材に供給孔より大径の表裏に突き出す外周面を備えた係止部を設けて、この係止部外周の表裏の固定リングでネット部材を挟み貫通する締結部材で締め付けることで、確実かつ簡単に取り付けることができる。
【0031】
また、この発明の請求項6記載のフィルタープレスの濾板構造によれば、前記固定リングを、金属リングを弾性被覆部材で覆って構成したので、金属リングの錆を防止し、確実かつ簡単に取り付けることができる。
【0032】
さらに、この発明の請求項7記載のフィルタープレスの濾板構造によれば、前記ネット固定手段を、前記枠部材を覆う前記弾性被覆部材の表面より低く形成したので、これらのネット固定手段に圧締時の荷重が加わらないようにし、簡単な構造にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図5は、この発明のフィルタープレスの濾板構造の一実施の形態にかかり、図1は圧締状態の部分縦断面図、図2は荷重支持ボス部分の部分断面図、図3は枠部材部分の部分断面図および部分正面図、図4は被濾過物の供給孔部分の部分断面図、図5は被濾過物の供給孔部分の他のネット固定手段による部分断面図および部分正面図である。
【0034】
この発明のフィルタープレスの濾板構造10が適用される濾板は、すでに図1〜図3で説明した濾板3と基本構造が同一であり、略正方形状の鉄板製の濾板本体3aを備え、濾板本体3aの表裏の周囲に枠部材3bが溶接等で設けられて額縁状とされ、枠部材3bの内側の凹部が濾室3cとされてその中央部に被濾過物の供給孔3dが設けてある。この濾室3cには、荷重支持用のボス部3eが複数形成され、図示例では、4個のボス部3eが設けてあり、圧締状態で隣接する濾板3のボス部3e同士を対向させて当接することで、荷重を分散して均一に支持するようになっている。
【0035】
そして、これら濾板本体3a、枠部材3b、濾室3c、ボス部3eの表面が弾性材料からなる被覆部材3hで被覆してあり、これらの腐食を防止するとともに、圧締時の密着性の確保や衝撃緩和を図るようにしてある。
【0036】
さらに、この濾板3には、分離した濾液を外部に排出するため排出路3fが濾板本体3aの下部に設けられて被覆部材の表面に開口するとともに、濾板本体3aを貫通して底部に開口している。
【0037】
また、被覆部材3hの表面には、ネット部材3gが設けてあり、濾布7と濾板3との間の濾過液を排出路3fに導くようにしてある。
【0038】
このような濾板3に適用される濾板構造10では、ゴムなどの弾性材料の被覆部材3h上に配置される排液促進用の合成樹脂製あるいは金属製のネット部材3gの固定をネット固定手段11〜14を用いることで、これまでの接着剤で固定する場合などに比べ、簡単かつ確実に取り付けることができるようにしている。
【0039】
この濾板構造10のネット固定手段11〜14は、荷重支持用ボス部3eへの固定のためのもの11、枠部材3bの周囲への固定のためのもの12、供給孔3dへの固定のためのもの13,14のように固定箇所によってそれぞれ異なる。
【0040】
まず、荷重支持用ボス部3eへのネット固定について、図1および図2により説明する。
濾板3には、鉄製などの円柱状の荷重支持用のボス部3eが鉄板製の濾板本体3aの表裏の濾室3cとなる凹部に溶接で複数取り付けられ、これらボス部3eおよび濾板本体3aなどの濾板3全体がゴムなどの弾性被覆部材3hで覆われたゴムライニング状態とされ、弾性被覆部材3hでゴムライニングされたボス部3eを除く濾室3cの表裏にそれぞれネット部材3gが配置されている。
【0041】
この荷重支持用ボス部3eへのネット部材3gのネット固定手段11では、図1および図2に示すように、ゴムライニングされたボス部3eの外径に対応して嵌め込むことができるゴム製のリング状の固定リング部材11aが用いられ、側面を円錐面とすることで、底面積を大きくしてネット部材3gとの接触面積を大きくし、また円錐形状とすることで濾布の損傷を防止できるようにしてある。また、この固定リング部材11aは、高さをゴムライニングされたボス部3eより低くしてあり、濾板3を圧締した状態で、固定リング部材11aに荷重が作用しないようにしてある。
【0042】
このような固定リング部材11aは、ゴムライニングされたボス部3eを貫通させることができる取り付け穴が裁断加工されたネット部材3gを濾板3の濾板本体3aのゴムライニングされた表面に取り付けた後、ボス部3eに固定リング部材11aを嵌め込んで、固定リング部材11aの底面とゴムライニングとの間にネット部材3gを挟むようにして固定する。このとき、必要に応じて固定リング部材11aの底面に接着剤を塗布したり、固定リング部材11aの内周面に接着剤を塗布することで、一層確実に固定することができる。
【0043】
これにより、濾板3を濾布7を介して複数枚重ね合わせて圧締し、脱水処理したり、その後、各濾板3を離間させて濾室3c内の脱水ケーキを落下させる場合でも、安定した状態でネット部材3gを濾板3のボス部3eで固定することができ、しかも取り付けもゴムなどの固定リング部材11aをボス部3eに嵌めるだけで簡単にできる。
【0044】
次に、濾板3の枠部材3bの内側周囲へのネット固定について、図1および図3により説明する。
濾板3には、略正方形状の鉄板製の濾板本体3aの表裏の周囲に枠部材3bが溶接されて取り付けられて額縁状とされ、この枠部材3bの内側の凹部が濾室3cとされ、これら枠部材3bおよび濾板本体3aなどの濾板3全体がゴムなどの弾性被覆部材3hで覆われたゴムライニング状態とされ、弾性被覆部材3hでゴムライニングされた濾室3cの表裏にそれぞれネット部材3gが配置されている。
【0045】
この枠部材3bの内側周囲へのネット部材3gの固定のためのネット固定手段12では、図1および図3に示すように、弾性被覆部材3hに枠部材3bのゴムライニング面の内側周囲と間隔をあけて濾室3c表面から外側に突き出すように断面矩形の固定用突出部12aが一体に形成してあり、枠状に配置されている。なお、この固定用突出部12aは、図示例のように、弾性被覆部材3hに一体に形成する場合に限らず、濾板本体3aに鉄板などを溶接して枠状に配置し、これにゴムライニングを施して形成しても良く、強度を一層高めることができる。
【0046】
この固定用突出部12aには、ゴム製などの固定枠部材12bを嵌め込んでその底面でネット部材3gを挟むことができるようにする。
この固定枠部材12bは、その横断面形状が、上下が平行で外側面が垂直面とされ、内側面が傾斜面とされて底面が広く形成され、この底面に開口して固定用突出部12aへの嵌め込み孔が形成してあり、嵌め込み孔を固定用突出部12aに嵌め込んだ状態で外側面が弾性被覆部材3hの内側周囲にも嵌合されるようにしてある。また、この固定枠部材12bは、高さをゴムライニングされた枠部材3bより低くしてあり、濾板3を圧締した状態で、固定枠部材12bに荷重が作用しないようにしてある。そして、このような固定枠部材12bは、棒状のものを枠部材3bのコーナ部分で45度の角度で突き合せるようにして接合することで枠状とされる。なお、この枠状とする接合は、取り付け前であっても取り付け時に接合しながら組み付けるようにしても良い。
【0047】
このような固定枠部材12bは、ゴムライニングされた固定用突出部12aを貫通させることができる取り付け穴が裁断加工されたネット部材3gを濾板3の濾板本体3aのゴムライニングされた表面に取り付けた後、固定用突出部12aに固定枠部材12bを嵌め込んで、固定枠部材12bの底面とゴムライニングとの間にネット部材3gを挟むようにして固定する。このとき、必要に応じて固定枠部材12bの底面に接着剤を塗布したり、固定枠部材12bの外周面に接着剤を塗布することで、一層確実に固定することができる。
【0048】
これにより、濾板3を濾布7を介して複数枚重ね合わせて圧締し、脱水処理したり、その後、各濾板3を離間させて濾室3c内の脱水ケーキを落下させる場合でも、安定した状態でネット部材3gを濾板3の周囲で固定することができ、しかも取り付けもゴムなどの固定枠部材12bを固定用突出部12aに嵌めるだけで簡単にできる。
【0049】
次に、濾板3の被濾過物の供給孔3dへのネット固定について、図1および図4により説明する。
濾板3には、略正方形状の鉄板製の濾板本体3a中央部に表裏を貫通して被濾過物を圧送する供給孔3dが形成してあり、これら濾板本体3aおよび供給孔3dなどの濾板3全体がゴムなどの弾性被覆部材3hで覆われたゴムライニング状態とされ、弾性被覆部材3hでゴムライニングされた濾室3cの表裏にそれぞれネット部材3gが配置されている。
【0050】
この濾板3の供給孔3dの周囲へのネット部材3gの固定のためのネット固定手段13では、図1および図4に示すように、供給孔3dの円筒状の内壁面および濾板本体3aの表裏面を囲んで弾性被覆部材3hで被覆され、この弾性被覆部材3hの表裏に、供給孔3dより大径の円柱状の外周面を備えた係止部13aが一体に形成してあり、この外周面で構成された係止部13aが濾室3cの表面から段差状に突き出ている。
【0051】
この円柱状の外周面を備えた係止部13aには、円板状の固定係止リング13bを嵌め込んでネット部材3gを挟むことができるようにする。
【0052】
この固定係止リング13bは、鉄製の円板の外側をゴム等で被覆したゴムライニングが施してあり、係止部13aに嵌め込んだ状態で内周面が嵌合されるようにしてある。また、これら係止部13aおよび固定係止リング13bは、高さをゴムライニングされた枠部材3bやボス部3eより低くしてあり、濾板3を圧締した状態で、これら係止部13aおよび固定係止リング13bに荷重が作用しないようにしてある。
【0053】
このようなネット固定手段13では、弾性被覆部材3hの係止部13aを貫通させることができる取り付け穴が裁断加工されたネット部材3gを濾板3の濾板本体3aのゴムライニングされた表面に取り付けた後、係止部13aに固定係止リング13bを嵌め込んで、濾板本体3aのゴムライニングとの間にネット部材3gを挟むようにして固定する。このとき、必要に応じて固定係止リング13bに接着剤を塗布したり、固定係止リング13bの内周面に接着剤を塗布することで、一層確実に固定することができる。
【0054】
これにより、濾板3を濾布7を介して複数枚重ね合わせて圧締し、脱水処理したり、その後、各濾板3を離間させて濾室3c内の脱水ケーキを落下させる場合でも、安定した状態でネット部材3gを濾板3の供給孔3dの周囲で固定することができ、しかも取り付けもゴムなどで被覆された固定係止リング13bを係止部13aに嵌めるだけで簡単にできる。
【0055】
また、濾板3の被濾過物の供給孔3dの周囲へのネット固定手段14としては、図5に示すように、ネット固定手段13と同様に、弾性被覆部材3hの表裏に、供給孔3dより大径の円柱状の外周面を備えた係止部13aを一体に形成しおき、この円柱状の外周面を備えた係止部13aに、鉄製の円板の外側をゴム等で被覆した円板状の固定係止リング14aを嵌め込むでネット部材3gを挟むとともに、表裏の固定係止リング14aに貫通孔14bを形成し、濾板本体3aにも貫通孔を形成し、ボルト・ナットなどの締結部材14cで締め付けて固定するようにしてある。
【0056】
これら係止部13a、固定係止リング14aおよびボルト・ナットなどの締結部材14cは、その高さや長さをゴムライニングされた枠部材3bやボス部3eより低くあるいは短くしてあり、濾板3を圧締した状態で、これら係止部13a、固定係止リング14aおよびボルト・ナットなどの締結部材14cに荷重が作用しないようにしてある。
【0057】
このようなネット固定手段14では、弾性被覆部材3hの係止部13aを貫通させることができる取り付け穴が裁断加工されたネット部材3gを濾板3の濾板本体3aのゴムライニングされた表面に取り付けた後、係止部13aに固定係止リング14aを嵌め込んで、濾板本体3aのゴムライニングとの間にネット部材3gを挟むようにし、貫通孔14bを介してボルト・ナットなどの締結部材14cで締め付けて固定する。このとき、必要に応じて固定係止リング14aに接着剤を塗布することで、一層確実に固定することができる。
【0058】
これにより、濾板3を濾布7を介して複数枚重ね合わせて圧締し、脱水処理したり、その後、各濾板3を離間させて濾室3c内の脱水ケーキを落下させる場合でも、安定した状態でネット部材3gを濾板3の供給孔3dの周囲で固定することができ、しかも取り付けもゴムなどで被覆された固定係止リング14aを係止部13aに嵌め、ボルト・ナットなどの締結部材14cで締め付けるだけで簡単にできる。
【0059】
以上、説明したネット固定手段11〜13(14)は、それぞれを単独で実施しても良く、相互に組み合わせて実施しても良いが、相互に組合わせることで、濾板3に確実かつ簡単に排液促進用のネット部材3gを取り付けることができる。
【0060】
なお、上記実施の形態では、濾板の形状を略正方形状とした場合を例に説明したが、円板状など他の形状の濾板であっても同様に適用することができる。
【0061】
また、上記実施の形態では、ネット固定手段のゴムなどの弾性被覆材の材質については、濾板の弾性被覆部材と同一材料であっても異なる材料であっても良いが、接着剤で接着することを組み合わせる場合には、同一材料の方が強固に接着できる場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明のフィルタープレスの濾板構造の一実施の形態にかかる圧締状態の部分縦断面図である。
【図2】この発明のフィルタープレスの濾板構造の一実施の形態にかかる荷重支持ボス部分の部分断面図である。
【図3】この発明のフィルタープレスの濾板構造の一実施の形態にかかる枠部材部分の部分断面図および部分正面図である。
【図4】この発明のフィルタープレスの濾板構造の一実施の形態にかかる被濾過物の供給孔部分の部分断面図である。
【図5】この発明のフィルタープレスの濾板構造の一実施の形態にかかる被濾過物の供給孔部分の他のネット固定手段による部分断面図および部分正面図である。
【図6】この発明が適用されるフィルタープレスの概略構成図である。
【図7】この発明が適用されるフィルタープレスの濾板の一部分を切り欠いた部分正面図である。
【図8】従来のフィルタープレスの濾板構造の一部分の概略断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ベース
2 スタンド
3,3 濾板
3a 濾板本体
3b 枠部材
3c 濾室
3d 供給孔
3e ボス部
3f 排出路
3g ネット部材
3h 弾性被覆部材
4 ガイドレール
5 油圧シリンダ
6 排液シュート
7 濾布
10 フィルタープレスの濾板構造
11〜14 ネット固定手段
11a 固定リング部材
12a 固定用突出部
12b 固定枠部材
13a 係止部
13b 固定係止リング
14a 固定係止リング
14b 貫通孔
14c 締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の濾板を重ね合わせて圧締し、隣接する濾板間に形成される濾室に濾布を介して被濾過物を圧送し、脱水するフィルタープレスの濾板構造であって、
周囲に枠部材を備え中間部に複数の荷重支持ボス部を備えるとともに、被濾過物の供給孔および濾液の排出路を備えた濾板本体と、
この濾板本体を覆う弾性被覆部材と、
前記枠部材の内側の前記弾性被覆部材で被覆された濾板本体表面に、前記荷重支持ボス部および前記供給孔を除いて配置される排水促進用のネット部材と、を有してなり、
前記ネット部材を、ネット固定手段を設けて前記弾性被覆部材上に取り付けたことを特徴とするフィルタープレスの濾板構造。
【請求項2】
前記ネット固定手段を、前記荷重支持ボス部に嵌め込んで固定する固定リング部材で構成したことを特徴とする請求項1記載のフィルタープレスの濾板構造。
【請求項3】
前記ネット固定手段を、前記濾板本体または/および前記弾性被覆部材に設ける前記枠部材の内側で表面から突出する固定用突出部と、この固定用突出部に嵌め込んで固定する固定枠部材とで構成したことを特徴とする請求項1または2記載のフィルタープレスの濾板構造。
【請求項4】
前記ネット固定手段を、前記弾性被覆部材に形成され前記供給孔の内壁部および表裏部を囲み供給孔より大径の表裏に突き出す外周面を備えた係止部と、この係止部外周に嵌め込んで係止固定する固定係止リングとで構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフィルタープレスの濾板構造。
【請求項5】
前記ネット固定手段を、前記固定係止リングに代え、前記係止部外周に前記濾板本体を挟んで前記弾性被覆部材の表裏に配置される固定リングと、これら表裏の固定リングを貫通して固定する締結部材とで構成したことを特徴とする請求項4記載のフィルタープレスの濾板構造。
【請求項6】
前記固定リングを、金属リングを弾性被覆部材で覆って構成したことを特徴とする請求項5記載のフィルタープレスの濾板構造。
【請求項7】
前記ネット固定手段を、前記枠部材を覆う前記弾性被覆部材の表面より低く形成してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフィルタープレスの濾板構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−132428(P2008−132428A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320274(P2006−320274)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)
【出願人】(500277467)東福商事有限会社 (11)
【Fターム(参考)】