説明

フィルター用フェルト

【解決課題】本発明は、ポリフェニレンサルファイド繊維を含むバグフィルターなどに用いるフェルトに関するものであり、長期安定して排ガス中のダストを効率良くろ過を行うことができ、従来のフェルトに比べ強力低下をおさえることができる高効率集塵バグフィルター用ろ過フェルトを提供する事を可能とした。
【解決手段】0.5dtex以上5dtex以下で扁平断面ポリフェニレンサルファイド短繊維と下記条件を満たす丸断面ポリフェニレンサルファイド短繊維を50/50〜90/10の比率で含有した不織布を少なくとも1層以上使用することを特徴とするフィルター用フェルト。
0.6≦B/A≦1.3
A:扁平断面の短辺長(μm)
B:丸断面の直径(μm)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンサルファイド繊維を含むバグフィルターなどに用いるフェルトに関するものであり、長期安定して排ガス中のダストを効率良くろ過を行うことができ、従来のフェルトに比べ強力低下をおさえることができる高効率集塵バグフィルター用ろ過フェルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭焚きボイラー、都市ゴミ焼却炉、産業廃棄物焼却炉等から排出される排ガス中には煤塵のみならずダイオキシン等の有害物質も含まれており、大気汚染防止として各種排ガス集塵は非常に重要である。また、ダイオキシン生成抑制及び排出抑制の観点からも、バグフィルターによる排ガスろ過が大きく期待されている。また、大きなろ過速度で目詰まりなしの低圧損運転できれば、ろ過面積やバグフィルター設置面積も小さくでき、コストダウンにもつながる。また、ダイオキシン類や重金属などの有害物質対策として、ガス化溶融炉や灰溶融炉が使用されるようになり、ダストはより小さくなる傾向にある。
【0003】
ダスト払い落とし性が良好で、尚且つダスト吹き漏れ量が小さく長期安定して排ガスろ過を行う方法として、様々な方法が検討されている。
例えば、既に製品として存在する不織布あるいは織物のろ過面にポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)からなり細孔径が約2〜3μm程度のメンブレンを接着させ払い落とし性を向上させたものがある。
また、不織布あるいは織物のろ過面にフィルムの延伸方向にスリットを入れた一軸延伸フィルムを貼り合わせ、μm径オーダーの微少な粒子を捕捉可能としたろ過布(例えば、特許文献1)が提案されている。
ポリフェニレンサルファイド(以下、「PPS」という)繊維よりなるフェルトに限っては、ろ過面層に細繊度繊維を用い、更には太さ勾配をつけたもの(例えば、特許文献2)、異形繊度繊維を使用することにより、繊維表面積を大きくしたしたもの(例えば、特許文献3)が知られている。
【0004】
上記のPTFEメンブレンをろ布に接着させたものは、パルスジェット方式や逆洗方式によるダスト払い落とし性は優れるが、初期より圧損が大きく、さらに、他素材との接着性に劣るPTFEは長期にわたるダスト払い落とし操作によりPTFEメンブレン自体がろ過面から剥がれたり、ダスト払落し屈曲疲労によってシワができ、破損に至るという問題がある。また、バグフィルター用フェルトは、ろ過と同時に塩化水素などの酸性ガスをろ過面のケーキ層で消石灰などにより反応除去するという機能も有している。しかし、メンブレンを使用するとケーキ層まで払落ししてしまうため、酸性ガスの除去率が低下するといった問題があった。さらに、メンブレン加工のコストが非常に高く、現在あるバグフィルター用ろ布としては最も高いものとなっている。
【0005】
特許文献1のものは、ろ過層内部のフィルムによりろ布を通過しようとしたダストを補足することができるが、繊維からなるろ過層自体の空隙率が大きいため、目詰まりを起こし長期安定して排ガスろ過を行えないという問題がある。
【0006】
特許文献2のものは、繊度が2.0dtex以下であるPPS短繊維を表層に配している。これは、ろ過性能は向上するものである。しかし、フェルト作成時の生産性が低くなる問題がある。
【0007】
また、特許文献3では、繊度が5.6dtex以下で、Y型の異形断面PPS繊維を使用して性能向上するものである。しかし、これらの技術で表層のろ過性能を向上することはできても、断面の形状から強力の低下が大きくなる問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開平2−253814号公報
【特許文献2】特開平10−165729号公報
【特許文献3】特開2000−117027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術のバグフィルター用フェルトの持つ問題点に対し、PPS繊維を含むバグフィルターなどに用いるフェルトにおいて、長期安定して排ガス中のダストを効率良くろ過を行うことができ、従来のフェルトに比べ強力低下をおさえることができる高効率集塵バグフィルター用ろ過フェルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、以下の通りである。
1.0.5dtex以上5dtex以下で扁平断面のポリフェニレンサルファイド短繊維と下記条件を満たす丸断面のポリフェニレンサルファイド短繊維を40/60〜90/10の比率で含有した不織布を少なくとも1層以上使用することを特徴とするフィルター用フェルト。
0.6≦β/α≦1.3
α:扁平断面の短辺長(μm)
β:丸断面の直径(μm)
2.前記扁平断面ポリフェニレンサルファイドの長辺長/短辺長で求められる扁平率が2〜6であることを特徴とする上記1に記載のフィルター用フェルト。
3.前記扁平断面ポリフェニレンサルファイドが、その断面の長辺に3〜5個の円形部を有することを特徴とする上記1または2に記載のフィルター用フェルト。
4.前記扁平断面ポリフェニレンサルファイドの結節強力が1.5cN/dtex以上であることを特徴とする上記1から3のいずれかに記載のフィルター用フェルト。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、PPS繊維を含む不織布層からなるバグフィルター用フェルトで、長期安定して排ガス中のダストを効率良くろ過を行うことができ、従来のフェルトに比べ強力低下をおさえることができる高効率集塵バグフィルター用ろ過フェルトを提供する事を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いるフェルトは扁平断面を有するPPS短繊維と丸断面を有するPPS短繊維を混綿したフェルトからなる。扁平断面のPPS短繊維の繊度は0.5dtex以上、5dtex以下、好ましくは1.0dtex以上4dtex以下である。0.5dtexより細くなるとフェルト作成時のカード通過性が悪く、生産性を落とす必要がある。5dtexより太くなると通気度を下げるためには目付けを大幅に上げる必要があり、経済的ではない。
【0013】
また、扁平断面を有するPPS短繊維の断面の長辺長/短辺長から求められる扁平率は2〜6が好ましい。扁平率が2より小さくなると、丸断面との差が少なくなり、効率良くフェルトの通気度を下げることができない。また、扁平率が6より大きくなると、繊維の強度が得られにくく、また、カード通過性が悪くなる。この扁平断面繊維は扁平であるとともに、その長辺に3〜5個の円形部を有することが好ましい。これによりさらに重量当たりの表面積を大きくすることができるため捕集効率を向上させることができるためである。
【0014】
以上により得られる扁平断面PPS短繊維の結節強力は1.5cN/dtex以上であることが好ましい。扁平断面とすることで、繊維の強力が落ちやすくなり、特に結節強力が低下することにより、カード工程での繊維の破断が大きくなり、風綿(カード上で切断された繊維が飛び散る現象)が起こり、結果として、フェルトの強力を下げる原因となる。従って、結節強力は1.5cN/dtex以上が好ましい。結節強力は大きいほど好ましいが、PPS樹脂を使用した本願繊維では技術的な問題から通常は5.0cN/dtex以下である。
【0015】
丸断面PPS短繊維は、扁平断面PPS短繊維の短辺長の60%〜130%の直径であることが好ましい。すなわち扁平断面PPS短繊維の短辺長をα(μm)、丸断面の直径をβ(μm)とした場合、0.6≦β/α≦1.3の関係を満たす繊度とすることが望ましい。さらに好ましくは0.8≦β/α≦1.2である。これは丸断面PPS短繊維の直径が、扁平断面PPS短繊維の短辺長の60%より小さくなるような丸断面PPS短繊維を使用したフェルトの通気度を下げることは容易でも、生産性が悪く、フェルトの強度が得られにくいことなどの問題が発生するためである。また、130%より大きくなるとフェルトの空隙率が大きくなり、通気度を下げることが困難になり好ましくない。
【0016】
上記の扁平断面PPS短繊維および丸断面PPS短繊維を40/60〜90/10の重量比率で混合することが好ましい。扁平断面PPS短繊維の重量比率が40%より少なくなると、扁平断面PPS短繊維の効果が少なくなり、通気度を効率良く下げることができなくなり好ましくない。また90%より多くなっても同様に通気度を効率良く下げることができなくなり好ましくない。
【0017】
次にこのPPS短繊維を得るために用いる樹脂について説明する。用いる樹脂は線状PPSポリマーが好ましく、ASTM D−1238−82法で荷重49N、温度315.6℃の条件で測定したPPSのメルトフローレートが50〜160g/10minがより好ましい。バグフィルター用フェルトのように厳しい環境で使用される各種用途には単なる耐熱性や耐薬品性のみならず、例えばフィルター形体に必要な強度なども併せ持つ必要がある。そのため、例えば繊維としての高い強力を得るために、重合段階でトリクロロベンゼンなどを用いて未反応の塩素基を残しておき、紡糸前のポリマーの段階で酸素雰囲気あるいはチッソ雰囲気での高温処理によって未反応塩素基により架橋反応を起こさせ重合度を増し、繊維として必要な初期強度を得る方法がある。また、比較的メルトフローレート(低分子量)の低いポリマーでも、紡糸前に、酸素雰囲気で一時的に架橋させて分子量を大きくすることによっても繊維自体は強力など必要物性を満足させることができる。しかし、この様な方法では比較的低分子量ポリマーを一次的な架橋反応によって得られたポリマーよりなる繊維であり、ESCAなどでイオウ原子を中心とする結合を測定すると既に−SO−や−SO−の結合が含まれ、一次的に架橋や酸化により重合度を高くしたこの様な方法では長期に渡る耐熱性を得る事はできない。本発明のPPSは、ASTM D‐1238‐82法で荷重49N、温度315.6℃の条件で測定したPPSのメルトフローレートが50〜160g/10minからなる線状ポリマーを紡糸してなることであり、例えば、ESCAでイオウ原子を中心とする結合状態を測定しても、その95アトミック%以上がサルフィド結合であり、さらに好ましくは98アトミック%以上であり、さらに好ましくは100アトミック%がスルフィド結合である事が好ましい。
【0018】
本発明でいうPPSに代表されるポリアリーレンサルフィドは、−Ar−S−(Arはアリーレン基)で表されるアリーレンサルフィドを繰返し単位とする芳香族ポリマーである。アリーレン基としては、p−フェニレンの他に、例えばm−フェニレン、ナフチレン基などさまざまなものが知られているが、その耐熱性、加工性、経済的観点から言ってもp−フェニレンサルフィドの繰返し単位が最も優れる。
【0019】
本発明でいうPPSのASTM D‐1238‐82法で荷重49N、温度315.6℃の条件で測定したメルトフローレートは50〜160g/10minである。十分な長期耐熱性や強度を得るためには線状ポリマーでなおかつ重合度がより高いほうが好ましい。しかし、メルトフローレートが50g/10min以下では高温でもあまりにも粘性が高く、紡糸時の圧損上昇などから生産性と言う面では好ましくない。また、メルトフローレートが160g/10min以上になる、即ち分子量が小さくなると紡糸時の圧損上昇などは抑える事ができるが、分子量分布が大きくなり、低圧損状態でより高分子量ポリマーが含まれると、高分子量ポリマーの溶融状態が悪く紡糸時の糸切れなどに影響を及ぼす可能性がある。また、長期耐熱性の観点からも低分子量化は望ましくない。この様な観点からPPSのメルトフローレートは50〜160g/10min、さらに好ましくは80〜140g/10minの範囲である。また、線状ポリマーのPPSは、架橋型や半架橋型のPPSに比べると、長期耐熱性に優れるばかりでなく溶融時の熱安定性も優れるため加工性にも優れる。
【0020】
本発明で使用するPPSは、極性有機溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物を重合反応させる方法により得る事ができる。アルカリ金属硫化物は、例えば、硫化ナトリウム、硫化リチウム、硫化カリウム等、あるいはこれらの混合物などが使用する事ができる。これらの中でも硫化ナトリウムが最も経済的に優れる事から一般的に用いられる。
【0021】
また、ジハロ化合物としては、例えば、p−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼンなどのジハロベンゼン、1,4−ジクロロナフタレン等のジハロナフタレン、その他、ジハロ安息香酸、ジハロベンゾフェノン、ジハロフェニルエーテルなどを上げる事ができるが、物性および経済的観点よりp−ジクロロベンゼンが最も好ましく使用される。その他、一般的には、多少の分岐構造を得るために1分子当り2個ではなく3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を少量併用することも知られており、トリクロロベンゼンなどが上げられるが、本発明でいう線状ポリマーとはこの様な半架橋構造を実質的に有さないものである。
【0022】
次に本発明の扁平断面および丸断面PPS繊維を得る方法について説明する。前記した樹脂を用い、溶融紡糸法により得ることができる。ノズルより押し出し500〜2000m/minの速度で紡糸し、未延伸糸を得る。このときノズル形状は得たい断面に相当する形状のものを用いる必要がある。得られた未延伸糸は常法により、1.1〜4.0倍に延伸後、クリンパーにて捲縮を付与し、所定の長さにカットすることでPPS短繊維を得ることができる。通常延伸時には収縮を抑えるため90〜280℃の高温下で行われる。
【0023】
以上により得られた繊維はフィルター用フェルトとするため、一般的にはカードによりウェッブを作成し、ニードルパンチあるいはウォーターパンチにより交絡させる。目付けを上げるためにはクロスレイにより積層後ニードルパンチを施すことが好ましい。また、バグフィルターなどではフィルター表面にてろ過することが一般的であるため通常は二層以上のフェルトとすることが多い。二層のフェルトを作成する場合は通気度の低い密なフェルト層(ろ過層)と、厚みがあり疎な密度のフェルト層(支持層)の構成が多く用いられ、本発明のフェルトは通気度の低い密なフェルトに好ましく用いられる。このろ過層と支持層は積層一体化処理にも、ニードルパンチ、あるいはウォーターパンチいずれかの方法によって行うことが出来る。また、ろ過層と支持層の積層一体化後、140〜270℃の加熱プレスを行ってもよい。さらに、支持層とろ過層を積層一体化し熱プレスした後に、180℃以上の熱処理後、ろ過層表面の毛焼きを行う、あるいは、180℃の熱処理後に赤外線、電熱バーによるろ過層表面溶融処理を行うことが出来る。あるいは、ろ過層最表面をより平滑化させるために、毛焼き処理の後に、熱カレンダー処理を行う事も出来る。
また、ろ過層と支持層の積層一体化、熱プレス、熱処理、フェルト表面処理などを行った後にフッ素系などの樹脂加工をする事が出来る。
【0024】
ろ過層、支持層には、PPS繊維の他、要求により、m−アラミド繊維、ポリイミド繊維、PTFE繊維などを併用することができる。しかし、回収後の処理の観点からはPPS繊維100%で構成されることが望ましい。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
実施例中の測定方法は以下の通りである。
【0026】
繊度:JIS L−1015(1999)−8.5の方法に準じて測定した。
【0027】
扁平断面の短辺長、長辺長、および丸断面の直径:SEMあるいは光学顕微鏡により断面を撮影し、1μmの単位まで求めた。
【0028】
結節強力:JIS L−1015(1999)−8.8方法に準じて測定した。
【0029】
ろ過性能:ドイツ規格、VDI N3926に準じて測定した。
ろ過速度:2.0mm/min、ダスト濃度:5g/m3、ダスト種類:Pural NF、温度:130℃、ダスト払い落とし:1000Pa、エージング間隔:5s、タンク圧:0.5MPa、パルスエアー圧:1017mbar、パルス時間:60ms
手順
(1)サンプルを装着した段階で、ダストのない状態で、サンプルフェルトの持つ初期圧損Paを測定する。
(2)第1段階:圧損が1000Paに達したときにダスト払い落としを行う。この操作を30回繰り返す。その時の、払い落とし直後の残留圧損Paと排気濃度(mg/m)を測定する。
(3)第2段階:ダスト無で、5s間隔による1000回のエージングを行う。
(4)第3段階:安定化操作として、ダスト無でパルスエアーによる払い落とし操作のみを10回行う。
(5)第4段階:ダストを流し、圧損1000Paでのダスト払い落としを2時間実施する。その時の、圧損Paと排気濃度(mg/m)を測定する。
【0030】
カード通過性:フェルト作成時のカードドッファーからの風綿発生状況を目視で確認した。風綿の発生量が相対的に少ない場合を○、多い場合を×、中間として△とした。
しかし、支持層による影響を除くため7.8dtex、60mmカット、丸断面のポリフェニレンサルファイド(東洋紡績株式会社製プロコン(登録商標))を30g/mのカーウェッブとし用いた。積層については実施例の通りニードルパンチにより実施した。
【0031】
(扁平断面ポリフェニレンサルファイド短繊維A)
メルトフローレートが110g/10minであるPPSポリマーを扁平型ノズル(ノズル孔の形状は図1のものを使用)よりポリマー温度を300℃とし、単孔吐出量=0.5g/minにて押し出し、1200m/minにて紡糸した。その後トータルデニールが1,000,000dtexとし、延伸倍率2.0、延伸温度160℃にて延伸し、乾燥後60mmにカットし短辺長=15μm、長辺長=30μm、扁平率=2.0、繊度=2.2dtex、結節強力=3.3cN/dtexの扁平断面ポリフェニレンサルファイド短繊維Aを得た。
【0032】
(扁平断面ポリフェニレンサルファイド短繊維B)
メルトフローレートが110g/10minであるPPSポリマーを扁平型ノズル(ノズル孔の形状は図1のものを使用)よりポリマー温度を300℃とし、単孔吐出量=0.3g/minにて押し出し、1200m/minにて紡糸した。その後トータルデニールが1,000,000dtexとし、延伸倍率1.9、延伸温度160℃にて延伸し、乾燥後60mmにカットし短辺長=15μm、長辺長=41μm、扁平率=2.7、繊度=1.6dtex、結節強力=3.8cN/dtexの扁平断面ポリフェニレンサルファイド短繊維Bを得た。
【0033】
(扁平断面ポリフェニレンサルファイド短繊維C)
メルトフローレートが110g/10minであるPPSポリマーを扁平型ノズル(ノズル孔の形状は図2のものを使用)よりポリマー温度を300℃とし、単孔吐出量=0.3g/minにて押し出し、1200m/minにて紡糸した。その後トータルデニールが1,000,000dtexとし、延伸倍率1.9、延伸温度160℃にて延伸し、乾燥後60mmにカットし短辺長=7μm、長辺長=35μm、扁平率=5.0、繊度=1.6dtex、結節強力=1.5cN/dtexの扁平断面ポリフェニレンサルファイド短繊維Cを得た。
【0034】
(扁平断面ポリフェニレンサルファイド短繊維D)
メルトフローレートが110g/10minであるPPSポリマーを扁平型ノズル(ノズル孔の形状は図2のものを使用)よりポリマー温度を300℃とし、単孔吐出量=1.8g/minにて押し出し、1200m/minにて紡糸した。その後トータルデニールが1,000,000dtexとし、延伸倍率2.0、延伸温度160℃にて延伸し、乾燥後60mmにカットし短辺長=28μm、長辺長=75μm、扁平率=2.7、繊度=7.8dtexの扁平断面ポリフェニレンサルファイド短繊維Dを得た。
【0035】
(扁平断面ポリフェニレンサルファイド短繊維E)
メルトフローレートが110g/10minであるPPSポリマーを扁平型ノズル(ノズル孔の形状は図2のものを使用)よりポリマー温度を300℃とし、単孔吐出量=0.3g/minにて押し出し、1200m/minにて紡糸した。その後トータルデニールが1,000,000dtexとし、延伸倍率1.9、延伸温度160℃にて延伸し、乾燥後60mmにカットし短辺長=26μm、長辺長=32μm、扁平率=1.2、繊度=1.4dtexの扁平断面ポリフェニレンサルファイド短繊維Eを得た。
【0036】
(扁平断面ポリフェニレンサルファイド短繊維F)
メルトフローレートが110g/10minであるPPSポリマーを扁平型ノズル(ノズル孔の形状は図1のものを使用)よりポリマー温度を300℃とし、単孔吐出量=1.8g/minにて押し出し、1200m/minにて紡糸した。その後トータルデニールが1,000,000dtexとし、延伸倍率2.0、延伸温度160℃にて延伸し、乾燥後60mmにカットし短辺長=10μm、長辺長=70μm、扁平率=7、繊度=7.8dtexの扁平断面ポリフェニレンサルファイド短繊維Fを得た。
【0037】
(丸断面ポリフェニレンサルファイド短繊維G)
メルトフローレートが110g/10minであるPPSポリマーを丸型ノズルよりポリマー温度を300℃とし、単孔吐出量=0.6g/minにて押し出し、1200m/minにて紡糸した。その後トータルデニールが1,000,000dtexとし、延伸倍率2.4、延伸温度160℃にて延伸し、乾燥後60mmにカットし直径=15μm、繊度=2.2dtexの丸断面ポリフェニレンサルファイド短繊維Gを得た。
【0038】
(丸断面ポリフェニレンサルファイド短繊維H)
メルトフローレートが110g/10minであるPPSポリマー丸型ノズルよりポリマー温度を300℃とし、単孔吐出量=0.4g/minにて押し出し、1200m/minにて紡糸した。その後トータルデニールが1,000,000dtexとし、延伸倍率2.3、延伸温度60℃にて延伸し、乾燥後60mmにカットし直径=12μm、繊度=1.5dtexの丸断面ポリフェニレンサルファイド短繊維Hを得た。
【0039】
(丸断面ポリフェニレンサルファイド短繊維I)
メルトフローレートが110g/10minであるPPSポリマーを丸型ノズルよりポリマー温度を300℃とし、単孔吐出量=2.2g/minにて押し出し、1200m/minにて紡糸した。その後トータルデニールが1,000,000dtexとし、延伸倍率160、延伸温度60℃にて延伸し、乾燥後60mmにカットし直径=27μm、繊度=7.8dtexの丸断面ポリフェニレンサルファイド短繊維Iを得た。
【0040】
表1の混率により上記繊維を用い、ろ過層用フェルトを作成した。あらかじめ7.8dtex丸断面PPS繊維(東洋紡績株式会社製プロコン(登録商標))100%をクロスレイヤーによりウエブを積層し、ニードルパンチにより支持層フェルトを作成した。この支持層フェルトに上記ろ過層用カードウェッブを積層し、さらに支持層側よりニードルパンチで一体化させた。得られたフェルトを210℃の熱カレンダーによってプレスおよび、熱セットを行い、ろ過層には、ガス毛焼きを施して、目付、500g/m、厚さ1.7mmのバグフィルター用フェルトを得た。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明では、PPS繊維を含む不織布層からなるバグフィルター用フェルトで、長期安定して排ガス中のダストを効率良くろ過を行うことができ、従来のフェルトに比べ強力低下をおさえることができる高効率集塵バグフィルター用ろ過フェルトを提供する事を可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例の扁平断面PPS短繊維A、B、Fの製造で使用した扁平型ノズルの形状である。
【図2】実施例の扁平断面PPS短繊維C、D、Eの製造で使用した扁平型ノズルの形状である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5dtex以上5dtex以下で扁平断面のポリフェニレンサルファイド短繊維と下記条件を満たす丸断面のポリフェニレンサルファイド短繊維を40/60〜90/10の比率で含有した不織布を少なくとも1層以上使用することを特徴とするフィルター用フェルト。
0.6≦β/α≦1.3
α:扁平断面の短辺長(μm)
β:丸断面の直径(μm)
【請求項2】
前記扁平断面ポリフェニレンサルファイドの長辺長/短辺長で求められる扁平率が2〜6であることを特徴とする請求項1に記載のフィルター用フェルト。
【請求項3】
前記扁平断面ポリフェニレンサルファイドが、その断面の長辺に3〜5個の円形部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のフィルター用フェルト。
【請求項4】
前記扁平断面ポリフェニレンサルファイドの結節強力が1.5cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフィルター用フェルト。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−161802(P2008−161802A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354162(P2006−354162)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】