説明

フィルムの巻きズレ修正装置およびその巻きズレ修正方法

【課題】フィルムの巻きズレ修正時に、フィルムに作用する不当な応力を最小限に抑えて、フィルムの破損を低減しつつ、フィルムの巻きズレ精度を高精度に維持する。
【解決手段】ガラスフィルムGの側縁位置が長手方向に沿って変化する変化領域Xに第1側縁位置検出センサ7を配置し、ガラスフィルムGの側縁位置が長手方向に沿って実質的に変化しない非変化領域Yに第2側縁位置検出センサ8を配置する。制御部9の基準位置補正部9aで、第2側縁位置検出センサ8で検出された側縁位置と基準位置との間のズレ量に基づいて第1側縁位置検出センサ7の基準位置を補正する。制御部9の巻きズレ修正部9bで、第1側縁位置検出センサ7で検出された側縁位置と基準位置補正部9aで補正された基準位置との間のズレ量に基づいて巻出機構2の幅方向位置を修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィルムなどの各種フィルムの巻きズレを修正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、近年における映像表示装置は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどに代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)が主流となっている。これらのFPDは、軽量化が推進されていることから、当該FPDに使用されるガラス基板は、薄板化の一途を辿っている。
【0003】
また、有機ELは、ディスプレイのように微細な三原色をTFTにより明滅させずに、単色(例えば白色)のみで発光させて屋内照明の光源などの平面光源として利用されつつある。そして、有機ELの照明装置は、ガラス基板が可撓性を有すれば、自由に発光面を変形させることが可能である。したがって、この種の照明装置に使用されるガラス基板においても、十分な可撓性を確保する観点から大幅な薄板化が推進されている。
【0004】
そして、このような薄板化の要請を受けて、フィルム状(例えば、厚みが300μm以下)まで薄板化が図られたガラスフィルムが開発されるに至っている。このガラスフィルムは、適度な可撓性を有することから、巻芯の回りにロール状に巻き取ったガラスフィルムロールの状態で収容される場合がある(例えば、特許文献1参照)。このようにすれば、ロール・トゥー・ロール(Roll to Roll)装置で、上流側のガラスフィルムロールから巻き出したガラスフィルムに対して、切断や成膜などの各種処理を連続的に施すことが可能となり、生産効率の大幅な向上を図ることができる。
【0005】
しかしながら、ロール状に巻き取ったガラスフィルムロールの状態では、ガラスフィルムに巻きズレが生じる場合がある。特に、成形されるガラスフィルムを直接巻き取ってガラスフィルムロールを製作した場合には、この巻きズレが顕著になる。これは次の理由による。すなわち、ガラスフィルムは、オーバーフローダウンドロー法やスロットダウンドロー法などのダウンドロー法によって薄板状に成形されるのが一般的である。そのため、ガラスフィルムを巻き取る際に張力をかけすぎると(例えば、幅1mのガラスフィルムに対して100N程度)、成形体付近の軟化状態のガラスフィルムに対して過度な引張り力(張力)が作用し、ガラスフィルムが所望の厚みよりも薄くなったり、場合によっては断裂するという致命的な問題が生じる。したがって、成形されるガラスフィルムを直接巻き取ってガラスフィルムロールを製作する場合には、ガラスフィルムに十分な張力を掛けて巻き取ることが実用上難しく、上述のように巻き取られたガラスフィルムに巻きズレが生じる要因となる。
【0006】
そして、このようにガラスフィルムに巻きズレが生じた状態のまま、ロール・トゥー・ロール装置などで、ガラスフィルムロールからガラスフィルムを巻き出して所定の処理を施すと、種々の不具合が生じる。具体的には、巻き出したガラスフィルムを所定の幅寸法に切断する場合には、巻き出されたガラスフィルムが巻きズレに起因して幅方向に蛇行するため、直線上に切断できなかったり、割れが発生するなどの切断不良が生じ得る。また、ガラスフィルムの表面に成膜する場合にも、巻き出されたガラスフィルムの表面に蛇行に起因する皺が生じていれば、均質な膜を形成することができずに成膜不良が生じ得る。
【0007】
また、このような問題は、樹脂フィルムや紙等のガラスフィルム以外のフィルム(ウエブ)においても、同様に生じ得る。すなわち、樹脂フィルム等においても、種々の処理を施す場合があり、巻きズレによって巻き出されたフィルムが蛇行すると、フィルムの切断不良や、フィルムの表面への印刷不良(例えば、印刷ズレ)などの処理不良が生じ得る。
【0008】
そのため、このような不具合を解消するためには、ガラスフィルムを始めとする各種フィルムをロール・トゥー・ロール装置などで連続的に処理する前に、フィルムの巻きズレを修正することが必要となる。そのため、ガラスフィルムに関するものではないが、樹脂フィルムなどにおいては、フィルムの巻きズレを修正するための対策が種々提案されている。
【0009】
具体的には、従来のフィルムの巻きズレ修正装置としては、図6に示すように、フィルムロール11から巻出機構12によって巻き出されたフィルムWの側縁位置を側縁位置検出センサ13で検出するとともに、制御部14によって、検出されたフィルムWの側縁位置と基準位置(ガラスフィルムGに巻きズレがないときの側縁の位置)との間の幅方向のズレ量に基づいて巻出機構12を幅方向(図中の矢印A方向)に移動させ、フィルムWの巻きズレを修正するように構成されたものが一般的である(例えば、特許文献2を参照)。
【0010】
そして、巻出機構2で巻き出されたフィルムWは、間隔を置いて配置された複数のローラ群15によって下流側へ搬送される構成とされている。このローラ群15は、上流側に巻出機構2の幅方向移動に追随する幅方向可動ローラ15aを有し、下流側に巻出機構12の幅方向移動に追随しない幅方向非可動ローラ15bを有する。なお、幅方向非可動ローラ15bは、図外に複数配列されているものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−132350号公報
【特許文献2】特公平6−57580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、巻出機構12で巻き出されたフィルムWは、最初(最上流)の幅方向非可動ローラ15bと接触した後、その幅方向非可動ローラ15bの回転軸と直交する方向(図中の矢印B方向)に直進しやすい。そのため、巻出機構12を幅方向に移動させてフィルムWの巻きズレを修正した場合、フィルムWの巻きズレは、主として最初の幅方向非可動ローラ15bの上流側の領域で修正される。換言すれば、最初の幅方向非可動ローラ15bを境界として、上流側がフィルムWの側縁位置が長手方向に沿って変化する変化領域Xとされ、下流側がフィルムWの側縁位置が長手方向に沿って実質的に変化しない非変化領域Yとされる。したがって、フィルムWの巻きズレを正確に修正する観点からは、フィルムWの変化領域Xおよび非変化領域Yを考慮して、側縁位置検出センサ13の配置位置を決定する必要がある。
【0013】
しかしながら、特許文献2には、フィルムの長手方向における側縁位置検出手段(ウエブエッジ位置検出器)の配置位置を如何に設定すればよいかという点について何ら開示されていない。
【0014】
そこで、図6に示したように、側縁位置検出センサ13をフィルムWの非変化領域Yに配置することも考えられるが、この場合には、次のような問題が生じ得る。すなわち、この場合には、側縁位置検出センサ13と巻出機構12との離間距離が大きくなるため、巻出機構2で修正したフィルムWの側縁位置が、側縁位置検出センサ13の検出エリアに到達し、修正結果が反映されるまでに時間を要する。その結果、側縁位置検出センサ13の検出結果に基づいて、巻出機構12をフィルムWのズレ方向と反対側に移動させ続けると、実際の巻きズレを修正するのに必要な修正量(移動量)以上に巻出機構12が幅方向に移動し、巻きズレの修正精度が悪くなると共に、変化領域XにおいてフィルムWが過度に捻じれるおそれがある。そのため、フィルムWに大きな応力が作用して、場合によってはフィルムWが破損するという事態が生じる。
【0015】
このような問題は、側縁位置検出センサ13と巻出機構12との離間距離が大きいことに起因して生じるものであるため、側縁位置検出センサ13を巻出機構12に接近させれば、このような問題は解消するようにも考えられる。
【0016】
しかしながら、側縁位置検出センサ13を巻出機構12に接近させようとすると、図7に示すように、側縁位置検出センサ13を、フィルムWの変化領域Xに配置する必要が生じる。しかしながら、この場合には、側縁位置検出センサ13の検出エリアの下流側に位置する変化領域Xで、更にフィルムWの側縁位置が変動することがあり、フィルムWの巻きズレ修正精度が低下するという問題が生じ得る。
【0017】
本発明は、以上の実情に鑑み、フィルムの巻きズレ修正時に、フィルムに作用する不当な応力を最小限に抑えて、フィルムの破損を低減しつつ、フィルムの巻きズレ精度を高精度に維持することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために創案された本発明に係る装置は、フィルムロールからフィルムを巻き出す巻出手段と、前記巻出手段で巻き出された前記フィルムの側縁位置を検出する側縁位置検出手段と、前記側縁位置検出手段で検出された側縁位置と基準位置との間の幅方向のズレ量に基づいて前記巻出手段の幅方向位置を修正する制御手段とを備え、前記制御手段で前記巻出手段の幅方向位置を修正する際に、前記フィルムの長手方向の上流側から順に、前記フィルムの側縁位置が長手方向に沿って変化する変化領域と、前記フィルムの側縁位置が長手方向に沿って実質的に変化しない非変化領域とが形成されるフィルムの巻きズレ修正装置であって、前記側縁位置検出手段は、前記変化領域に配置された第1側縁位置検出手段と、前記非変化領域に配置された第2側縁位置検出手段とを備え、前記制御手段は、前記第2側縁位置検出手段で検出された側縁位置と前記第2側縁位置検出手段の基準位置との間の幅方向のズレ量に基づいて前記第1側縁位置検出手段の基準位置を補正する基準位置補正部と、前記第1側縁位置検出手段で検出された側縁位置と前記基準位置補正部で補正された第1側縁位置検出手段の基準位置との間の幅方向のズレ量に基づいて前記巻出手段の幅方向位置を修正する巻きズレ修正部とを有することに特徴づけられる。
【0019】
このような構成によれば、フィルムの非変化領域に配置された第2側縁位置検出手段で検出された側縁位置のズレ量に基づいて、フィルムの変化領域に配置された第1側縁位置検出手段の基準位置が補正される。そして、第1側縁位置検出手段で検出された側縁位置と、補正された第1側縁位置検出手段の基準位置との間の幅方向のズレ量に基づいて巻出手段の幅方向位置が修正される。そのため、フィルムの変化領域に配置される第1側縁位置検出手段で巻出手段の幅方向位置を修正したとしても、第1側縁位置検出手段の基準位置は、フィルムの非変化領域に配置された第2側縁位置検出手段の検出結果を反映したものであるので、第1側縁位置検出手段の下流側において、フィルムの側縁位置が大きく変化することがなく、フィルムの巻きズレの修正精度が低下するという事態を確実に防止することができる。しかも、フィルムの変化領域は、巻出手段の近傍に形成されるので、巻出手段の幅方向の修正結果は、第1側縁位置検出手段での検出結果に直ちに反映されることになる。そのため、巻出手段の幅方向位置の修正量(移動量)が、実際の巻きズレを修正するのに必要な修正量(移動量)から超過する割合が極めて小さくなり、フィルムに不当な応力が作用し難くなる。
【0020】
上記の構成において、前記フィルムが、厚み300μm以下のガラスフィルムであることが好ましい。
【0021】
すなわち、このようなガラスフィルムであれば、巻きズレ修正時に無理な捻れなどが生じれば、その際に作用する応力によって破損を来たす可能性が高い。そのため、フィルムに不当な応力が作用するという事態を防止できる本願発明の利点を最大限発揮することができる。
【0022】
上記課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、巻出手段でフィルムロールからフィルムを巻き出しながら側縁位置検出エリアで前記フィルムの側縁位置を検出し、前記検出された側縁位置と基準位置との間の幅方向のズレ量に基づいて前記巻出手段の幅方向位置を修正すると共に、前記巻出手段の幅方向位置を修正する際に、前記フィルムの長手方向の上流側から順に、前記フィルムの側縁位置が長手方向に沿って変化する変化領域と、前記フィルムの側縁位置が長手方向に沿って変化しない非変化領域とが形成されるフィルムの巻きズレ修正方法であって、前記側縁位置検出エリアとして、前記変化領域に第1側縁位置検出エリアを設けると共に、前記非変化領域に第2側縁位置検出エリアを設け、前記第2側縁位置検出エリアで検出された側縁位置と前記第2側縁位置検出手段の基準位置との間の幅方向のズレ量に基づいて前記第1側縁位置検出エリアの基準位置を修正しながら、前記修正された基準位置と前記第1側縁位置検出エリアで検出された側縁位置との間の幅方向のズレ量に基づいて前記巻出手段の幅方向位置を修正することに特徴づけられる。
【0023】
このような方法によれば、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、フィルムの非変化領域の側縁位置検出エリアにおけるズレ量に基づいて、フィルムの変化領域の側縁位置検出エリアにおけるズレ量が補正される。したがって、フィルムの変化領域で、フィルムの非変化領域の状態も考慮したズレ量の検出が可能となることから、フィルムの巻きズレを高精度に修正することが可能となる。
【0025】
しかも、巻出手段の修正結果は、フィルムの変化領域の側縁位置検出エリアに直ちに反映されるので、巻出手段が必要な移動量に対して過度に移動するという事態を防止することができる。そのため、フィルムの変化領域において、フィルムが過度に捻れるなどの不具合が生じ難く、フィルムに不当な応力が作用するという事態を可及的に低減することができる。したがって、フィルムの巻きズレ修正時に、フィルムが破損するという事態を確実に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係るガラスフィルムの巻きズレ修正装置の要部を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガラスフィルムの巻きズレ修正装置の要部を示す側面図である。
【図3】図1の巻出機構を幅方向に移動させた状態を示す図である。
【図4】ガラスフィルムの巻きズレ修正時に、図1に示す基準位置補正部で実行されるフローチャートである。
【図5】ガラスフィルムの巻きズレ修正時に、図1に示す巻きズレ修正部で実行されるフローチャートである。
【図6】従来のガラスフィルムの巻きズレ修正装置の要部を示す平面図である。
【図7】従来のガラスフィルムの巻きズレ修正装置の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0028】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係るフィルムの巻きズレ修正装置を示す図である。これら各図に示すように、この巻きズレ修正装置は、ガラスフィルムロール1から順次ガラスフィルムGを巻き出す巻出機構2を備えている。図2に示すように、巻出機構2は、可動ステージ3の上に搭載されている。可動ステージ3は、固定ベース4上に設けられたスライドガイド5に沿ってガラスフィルムGの幅方向(図1中の矢印A方向)に移動可能とされている。そのため、可動ステージ3の移動によって、巻出機構2がガラスフィルムGの幅方向に移動し、これに伴って、ガラスフィルムロール1から巻き出されるガラスフィルムGの側縁(幅方向の端縁)の位置が調整されるようになっている。
【0029】
巻出機構2によって巻き出されたガラスフィルムGは、ガイドローラ群6(ガイドローラ6a,6b,及び図外の複数のガイドローラ)に案内された状態で、張力を付与されながら搬送方向下流側(図1中の矢印B方向)へと搬送され、図外の搬送経路の下流端で再びガラスフィルムロールの状態に巻き取られるようになっている。このガイドローラ群6のうち、図中の第1ガイドローラ6aは、巻出機構2と一体的に可動ステージ3側に搭載されており、第1ガイドローラ6aの下流側の第2ガイドローラ6bは、固定ベース4側に搭載されている。すなわち、第1ガイドローラ6aが、幅方向可動ローラとされ、第2ガイドローラ6bが、幅方向非可動ローラとされる。そのため、巻出機構2を幅方向に移動させると、巻出機構2によって巻き出されたガラスフィルムGの側縁位置は、第2ガイドローラ6bの上流側で主として変化し、第2ガイドローラ6bの下流側では、第2ガイドローラ6bの回転軸と直交する方向(図中の矢印B方向)に直進して変化し難い。したがって、第2ガイドローラ6bを境界として、その上流側がガラスフィルムGの側縁位置が変化する変化領域Xとされ、その下流側がガラスフィルムGの側縁位置が実質的に変化しない非変化領域Yとされる。ここで、非変化領域YでのガラスフィルムGの側縁位置の変動幅は、例えば、0.01〜0.5mm以下の範囲となる。
【0030】
なお、ガイドローラ群6は、この実施形態では、ガラスフィルムGの移動速度に応じて駆動回転してガラスフィルムGに送りを付与するように構成されているが、駆動回転せずに従動回転するように構成されていてもよい。また、ガイドローラ群6に含まれる第1ガイドローラ(幅方向可動ローラ)6aは、適宜省略してもよい。更に、ガラスフィルムGの保護のために、ガラスフィルムロール1の状態で、ガラスフィルムGに重ねて保護シートが巻き取られていてもよい。この場合、巻出機構2によってガラスフィルムGを巻き出す際に、ガラスフィルムGから保護シートを剥離する。
【0031】
また、ガラスフィルムGは、例えば、厚みが10〜300μmで、幅が5〜2000mmの長尺体であり、液晶ディスプレイ・プラズマディスプレイ・有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、太陽電池、リチウムイオン電池、デジタルサイネージ、タッチパネル、電子ペーパー等のデバイスのガラス基板や、有機EL照明等のカバーガラス、医療品のガラス容器、窓板ガラス、積層軽量窓ガラスなどに利用される。
【0032】
そして、ガラスフィルムGの変化領域Xには、第1側縁位置検出センサ7が配置され、ガラスフィルムGの非変化領域Yには、第2側縁位置検出センサ8が配置されている。
【0033】
第1側縁位置検出センサ7および第2側縁位置検出センサ8は、ガラスフィルムGの搬送経路上の定位置で、ガラスフィルムGの幅方向の一端側にのみ配置されており、ガラスフィルムGが各検査エリアを通過することで、ガラスフィルムGの側縁位置を順に検出するようになっている。
【0034】
なお、これら側縁位置検出センサ7,8としては、光学式、超音波式、風量式等などの種々の方式のセンサを使用することができる。光学式センサを使用する場合には、図2に示すように、ガラスフィルムGの表裏面の一方側に投光部が配置され、他方側に受光部が配置される。また、側縁位置検出センサ7,8は、ガラスフィルムGの幅方向の両端側にそれぞれ配置されていてもよい。
【0035】
第1側縁位置検出センサ7および第2側縁位置検出センサ8には、制御部9が接続されており、この制御部9が、各側縁位置検出センサ7,8の検出結果に基づいて可動ステージ3の移動量、換言すれば、可動ステージ3に搭載された巻出機構2の移動量を制御するようになっている。
【0036】
詳細には、制御部9は、基準位置補正部9aと、巻きズレ修正部9bとから構成されている。
【0037】
基準位置補正部9aは、第2側縁位置検出センサ8で検出されたガラスフィルムGの側縁位置と第2側縁位置検出センサ8の基準位置との間の幅方向のズレ量に基づいて第1側縁位置検出センサ7の基準位置を補正する。すなわち、第1側縁位置検出センサ7の基準位置は、第2側縁位置検出センサ8でガラスフィルムGの側縁位置のズレが検出された場合、第2側縁位置検出センサ8で検出されたズレと反対方向へズレ量相当分だけ補正される。そのため、第1側縁位置検出センサ7の基準位置は、非変化領域YにおけるガラスフィルムGのズレ量を反映した値に補正される。
【0038】
巻きズレ修正部9bは、第1側縁位置検出センサ7で検出された側縁位置と基準位置補正部9aで補正された第1側縁位置検出センサ7の基準位置との間の幅方向のズレ量に基づいて可動ステージ3を移動させ、巻出機構2の幅方向位置を修正する。
【0039】
ここで、第1側縁位置検出センサ7は、次のような理由で、変化領域Xに含まれる第1ガイドローラ6aと第2ガイドローラ6bの間で、第1ガイドローラ6aに接近させて配置される。すなわち、第1側縁位置検出センサ7と第1ガイドローラ6aとの距離が近いほど、巻出機構2の移動結果が、第1側縁位置検出センサ7の検出結果に反映されるまでの時間を短くできる。そのため、検出結果に反映させるまでの時間が短くなれば、実際のガラスフィルムGの巻きズレ修正に必要な移動量以上に過度に巻出機構2を移動させるという不具合を防止でき、巻きズレ修正時にガラスフィルムGに不当な応力が作用して破断するという事態を可及的に低減することが可能となる。なお、第1側縁位置検出センサ7は、変化領域X内であれば、第1ガイドローラ6aの上流側に配置してもよい。
【0040】
また、第2側縁位置検出センサ8は、次のような理由で、第2ガイドローラの下流側(非変化領域Y)に配置される。すなわち、図3に示すように、巻出機構2を移動させた場合(図中の矢印A’方向)、巻出機構2によって巻き出されたガラスフィルムGは、主に第1ガイドローラ6aと第2ガイドローラ6bとの間で捻れる。そのため、第2側縁位置検出センサ8を第2ガイドローラ6bよりも上流側に配置すると、第2側縁位置検出センサ8の検出エリアの下流側に位置する変化領域Xで、ガラスフィルムGの側縁位置が更に変動するおそれがある。その結果、第1側縁位置検出センサ7の基準位置の補正が適正に行えず、ガラスフィルムGの巻きズレの修正精度が低下してしまう。そこで、第2側縁位置検出センサ8は、このような不具合を解消するために非変化領域Yに配置している。ガラスフィルムGは、第2ガイドローラ6bの下流側の領域において、第2ガイドローラ6bの回転軸に対して垂直な方向に直進するように矯正されるため、第2ガイドローラ6bの下流側の非変化領域Yにおいて、ガラスフィルムGの最終的な側縁位置が確定する。したがって、この領域Yに第2ガイドローラ6bを配置すれば、第1側縁位置検出センサ7の基準位置に対して、最終的なガラスフィルムGの側縁位置を反映した適切な補正をかけることができ、ガラスフィルムGの巻きズレを精度よく修正することが可能となる。
【0041】
なお、図1に示すように、第1ガイドローラ6aと第2ガイドローラ6bとの軸芯間距離L1は、ガラスフィルムGの幅方向寸法L2の0.25倍以上であることが好ましく、0.4倍以上であることが更に好ましい。すなわち、この軸芯間距離L1が、ガラスフィルムGの幅方向寸法L2の0.25倍未満となると、ガラスフィルムGの変化領域Xが短くなりすぎて、僅かな修正動作であってもガラスフィルムGに過度な捻れが生じるおそれがある。したがって、軸芯間距離L1は、上記の数値範囲であることが好ましく、この範囲であれば、修正動作時にガラスフィルムGに過度な捻れが生じるという事態をより確実に防止することができる。なお、軸芯間距離L1は長くなりすぎると、ガラスフィルムGの側縁位置が蛇行するおそれがあるので、軸芯間距離L1は、上記の数値範囲内でできるだけ小さく設定することが好ましい。
【0042】
次に、以上のように構成されたフィルムの巻きズレ修正装置の動作を、図4及び図5に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、図4は、制御部9の基準位置補正部9aで実行されるフローチャートであって、図5は、制御部9の巻きズレ修正部9bで実行されるフローチャートである。
【0043】
図4に示すように、基準位置補正部9aでは、まず、ステップS1で、第2側縁位置検出センサ8の検出結果から、第2側縁位置検出センサ8の検査エリア(非変化領域Y)において、ガラスフィルムGの側縁位置が第2側縁位置検出センサ8の基準位置からズレているか否かが判断される。その結果、ガラスフィルムGの側縁位置にズレが生じている場合には、ステップS2で、第2側縁位置検出センサ8で検出された側縁位置のズレと反対方向に、そのズレ量分だけ第1側縁位置検出センサ7の基準位置を補正する。そして、第1側縁位置検出センサ7の補正された基準位置を巻きズレ修正部9bに出力する。
【0044】
一方、図5に示すように、巻きズレ修正部9bでは、ステップS3で、基準位置補正部9aから上述の手順で決定された第1側縁位置検出センサ7の補正された基準位置が入力される。そして、ステップS4で、第1側縁位置検出センサ7の検出結果から、変化領域Xに位置する第1側縁位置検出センサ7の検査エリアにおいて、ガラスフィルムGの側縁位置が第1側縁位置検出センサ7の補正された基準位置からズレているか否かが判断される。その結果、ガラスフィルムGの側縁位置のズレが検出された場合には、ステップS5で、ズレの反対方向(ズレを修正する方向)に巻きズレ修正に必要な移動量だけ巻出機構2を幅方向に移動させ、ガラスフィルムGの巻きズレを修正する。
【0045】
ここで、巻出機構2の移動量は、第1側縁位置検出センサ7で検出されたズレ量と等しい値であってもよいが、ガラスフィルムGが過度に捻れて割れるのを防ぐため、修正量の上限値を設けるようにすることが好ましい。すなわち、ズレ量が上限値を超える場合には、巻出機構2の移動量を、上限値までとするように制御することが好ましい。
【0046】
なお、第2側縁位置検出センサ8でガラスフィルムGの側縁位置と基準位置との間にズレが検出されない場合には、第1側縁位置検出センサ7の基準位置として、直前の補正基準位置をそのまま使用するものとする。
【0047】
以上のような本実施形態に係るガラスフィルムの巻きズレ修正装置によれば、ガラスフィルムGの非変化領域Yに配置された第2側縁位置検出センサ8で検出された側縁位置のズレ量に基づいて、ガラスフィルムGの変化領域Xに配置された第1側縁位置検出センサ7の基準位置が順次補正される。そして、このように補正された第1側縁位置検出センサ7の基準位置と第1側縁位置検出センサ7で検出された側縁位置との間の幅方向のズレ量に基づいて巻出機構2の幅方向位置が適宜修正される。そのため、ガラスフィルムGの変化領域Xに配置される第1側縁位置検出センサ7で巻出機構2の幅方向位置を修正したとしても、第1側縁位置検出センサ7の基準位置は、ガラスフィルムGの非変化領域Yに配置された第2側縁位置検出センサ8の検出結果を反映したものであるので、第1側縁位置検出センサ7の下流側において、ガラスフィルムGの側縁位置が大きく変化することがなく、ガラスフィルムGの巻きズレの修正精度が低下し難い。しかも、ガラスフィルムGの変化領域Xは、巻出機構2の近傍に形成されるので、巻出機構2の幅方向の修正結果は、第1側縁位置検出センサ7での検出結果に直ちに反映される。そのため、巻出機構2の幅方向位置の修正量(移動量)が、実際の巻きズレを修正するのに必要な修正量(移動量)から超過する割合が極めて小さくなり、ガラスフィルムGに不当な応力が作用し難くなる。したがって、巻出機構2の移動によりガラスフィルムGが破損するという事態を低減しつつ、ガラスフィルムGの巻きズレを高精度に修正することが可能となる。
【0048】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で実施することができる。例えば、上記の実施形態では、巻きズレ修正の対象としてガラスフィルムGを例示したが、樹脂フィルム、紙、金属などのガラスフィルム以外のフィルムを巻きズレ修正の対象としてもよい。
【0049】
また、巻出機構2から巻き出されたガラスフィルムGの巻きズレを修正した後、その巻きズレを修正したガラスフィルムGを図外の巻取機構で再度ガラスフィルムロールの状態に巻取る場合を説明したが、巻取機構から取り出したガラスフィルムロールを再び巻出機構2に設置し、同一のガラスフィルムGに対して2回以上の巻きズレ修正工程を実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ガラスフィルムロール
2 巻出機構
3 可動ステージ
4 固定ベース
5 スライドガイド
6 ガイドローラ群
6a 第1ガイドローラ(幅方向可動ローラ)
6b 第2ガイドローラ(幅方向非可動ローラ)
7 第1側縁位置検出センサ
8 第2側縁位置検出センサ
9 制御部
9a 基準位置補正部
9b ズレ修正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムロールからフィルムを巻き出す巻出手段と、前記巻出手段で巻き出された前記フィルムの側縁位置を検出する側縁位置検出手段と、前記側縁位置検出手段で検出された側縁位置と基準位置との間の幅方向のズレ量に基づいて前記巻出手段の幅方向位置を修正する制御手段とを備え、前記制御手段で前記巻出手段の幅方向位置を修正する際に、前記フィルムの長手方向の上流側から順に、前記フィルムの側縁位置が長手方向に沿って変化する変化領域と、前記フィルムの側縁位置が長手方向に沿って実質的に変化しない非変化領域とが形成されるフィルムの巻きズレ修正装置であって、
前記側縁位置検出手段は、前記変化領域に配置された第1側縁位置検出手段と、前記非変化領域に配置された第2側縁位置検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記第2側縁位置検出手段で検出された側縁位置と前記第2側縁位置検出手段の基準位置との間の幅方向のズレ量に基づいて前記第1側縁位置検出手段の基準位置を補正する基準位置補正部と、前記第1側縁位置検出手段で検出された側縁位置と前記基準位置補正部で補正された第1側縁位置検出手段の基準位置との間の幅方向のズレ量に基づいて前記巻出手段の幅方向位置を修正する巻きズレ修正部とを有することを特徴とするフィルムの巻きズレ修正装置。
【請求項2】
前記フィルムが、厚み300μm以下のガラスフィルムであることを特徴とする請求項1に記載のフィルムの巻きズレ修正装置。
【請求項3】
巻出手段でフィルムロールからフィルムを巻き出しながら側縁位置検出エリアで前記フィルムの側縁位置を検出し、前記検出された側縁位置と基準位置との間の幅方向のズレ量に基づいて前記巻出手段の幅方向位置を修正すると共に、
前記巻出手段の幅方向位置を修正する際に、前記フィルムの長手方向の上流側から順に、前記フィルムの側縁位置が長手方向に沿って変化する変化領域と、前記フィルムの側縁位置が長手方向に沿って実質的に変化しない非変化領域とが形成されるフィルムの巻きズレ修正方法であって、
前記側縁位置検出エリアとして、前記変化領域に第1側縁位置検出エリアを設けると共に、前記非変化領域に第2側縁位置検出エリアを設け、前記第2側縁位置検出エリアで検出された側縁位置と前記第2側縁位置検出手段の基準位置との間の幅方向のズレ量に基づいて前記第1側縁位置検出エリアの基準位置を補正しながら、前記補正された基準位置と前記第1側縁位置検出エリアで検出された側縁位置との間の幅方向のズレ量に基づいて前記巻出手段の幅方向位置を修正することを特徴とするフィルムの巻きズレ修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−236676(P2012−236676A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106353(P2011−106353)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】