説明

フィルムアンテナ

【課題】アンテナ性能及び耐久性に優れたフィルムアンテナを提供する。
【解決手段】導電パターンが形成された基材上に、少なくとも誘電層及び導電層を有する電波吸収部材が、該導電層と導電パターンとが電気的に絶縁されるように設けられたフィルムアンテナであって、基材、誘電層、導電層の順に積層されており、該誘電層と該導電層の間に、該誘電層の成分と該導電層の成分が混在した領域を有しており、誘電層と導電層の間に層界面が無いことを特徴とする、フィルムアンテナ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ性能及び耐久性に優れるフィルムアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムアンテナは、プラスチックフィルム上にアンテナ回路を形成した、フィルム上のアンテナであり、例えば自動車の窓ガラス、住宅用窓ガラス、携帯端末、ICタグ等のRFID(Radio Frequency Identification)等に貼付され又は組み込まれて用いられ、高透明化や軽量化が求められている。特に自動車の窓ガラスに多用されており、この場合、運転者の注意力を低減させず、且つ視野を遮らないことが重要である。従って、高透明化と軽量化を達成し易い有機材料を用いたフィルムアンテナの検討が進められているが、性能及び生産性の観点から充分なものは未だ提案されておらず、更なる改良の余地がある。
ところで、フィルムアンテナの基材としては、光透過性、平滑性、耐熱性及び機械的強度の観点から、従来から、ポリエステル、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等が使用されている。しかし、基材の表面にハードコート層を設ける場合、基材とハードコート層との密着性が低く、耐久性に乏しいという問題があった。そこで、密着性を向上させるために、基材の表面にコロナ処理を施して基材の表面を荒したり、基材の表面にプライマー層を設ける等の前処理を行うといった工夫がされてきたが、この場合、フィルムアンテナの製造工程が煩雑となり、生産コストが高まるという問題があった。
このような問題を解決する方法として、ポリエステルフィルム基材表面に前処理を必要とせず高い密着性を有し、優れた硬度を有する硬化膜を形成するための組成物を提供することを意図して、特定の水酸基価を有するポリエステル樹脂、熱架橋剤、光重合反応性モノマー等を含有する組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−184515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された方法は、その実施例においても示されているように、ポリエステル基材との密着性向上に寄与するポリエステル樹脂と、ハードコート層のマトリクスとなる光重合反応性モノマーとが混合されて単一の組成物としてポリエステル基材表面に塗布され、紫外線照射によりハードコート層が形成されている。このようなポリエステル樹脂と光重合反応性モノマーを含む単一の組成物を用いると、本来、ポリエステル基材との密着性を向上させるために当該ポリエステル基材と接する部分にのみ存在していればよいポリエステル樹脂がハードコート層全体に分散しているため、光重合反応性モノマー同士の架橋反応を阻害し、ハードコート層の硬度が必ずしも十分には向上しないことが判明した。また、この方法では、基材との密着性しか考慮されておらず、基材上に多数の層を積層する場合に、それら全ての層間の密着性を高める方法ではなく、フィルムアンテナの耐久性を高めるには更なる改良の余地がある。
基材上に多数の層を積層する方法としては、複数の塗工液を用いて、塗布と乾燥処理を繰り返すタンデム塗工方式がよく知られている。しかし、タンデム塗工方式を利用して積層体を形成して得られたフィルムアンテナは、タンデム塗工方式が塗布と乾燥処理を繰り返す方法であるがゆえに、各層間に気泡や不純物が入り込んでいることが多く、このため、長期使用により層間が剥離し易いため耐久性に乏しいという問題及び十分なアンテナ性能を発揮しないという問題がある。
本発明は、このような状況下になされたものであり、アンテナ性能及び耐久性に優れたフィルムアンテナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、導電パターンが形成された基材上に、少なくとも誘電層及び導電層を有する電波吸収部材が、該導電層と導電パターンとが電気的に絶縁されるように設けられたフィルムアンテナであって、前記誘電層と導電層の間に、該誘電層と導電層の各成分が混在した領域を有し、且つ誘電層と導電層の間に層界面が無いフィルムアンテナであれば、従来のものよりもアンテナ性能及び耐久性に優れること、及びさらにハードコート層を設けた場合には、実用上十分な硬度をフィルムアンテナに付与することができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[3]に関する。
[1]導電パターンが形成された基材上に、少なくとも誘電層及び導電層を有する電波吸収部材が、該導電層と導電パターンとが電気的に絶縁されるように設けられたフィルムアンテナであって、基材、誘電層、導電層の順に積層されており、該誘電層と該導電層の間に、該誘電層の成分と該導電層の成分が混在した領域を有しており、誘電層と導電層の間に層界面が無いことを特徴とする、フィルムアンテナ。
[2]前記電波吸収部材が、さらにハードコート層を有し、基材、誘電層、導電層、ハードコート層の順に積層されており、該ハードコート層と該導電層の間に、該ハードコート層の成分と該導電層の成分が混在した領域を有しており、ハードコート層と導電層の間に層界面が無い、上記[1]に記載のフィルムアンテナ。
[3]前記基材がポリエチレンテレフタレートフィルムである、上記[1]又は[2]に記載のフィルムアンテナ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフィルムアンテナは、アンテナ性能及び耐久性に極めて優れている。また、ハードコート層(保護層)を設けた場合には、実用上、十分な硬度のフィルムアンテナを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】同時多層塗工方法を行う装置の一例を示す模式図である。
【図2】実施例1で用いたスライドコーター(中間層用のスリットの描写は省略)の模式図である。
【図3】実施例1で得られたフィルムアンテナの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[フィルムアンテナ]
本発明のフィルムアンテナは、導電パターンが形成された基材上に、少なくとも誘電層及び導電層を有する電波吸収部材が、該導電層と導電パターンとが電気的に絶縁されるように設けられたものである。また、本発明のフィルムアンテナは、少なくとも該誘電層と該導電層の間に、該誘電層の成分と該導電層の成分が混在した領域を有しており、誘電層と導電層の間に層界面が無い。
【0010】
(基材)
基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム;セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム等のセルロース系フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等の塩化ビニル系フィルム;ポリビニルアルコールフィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等のビニル系共重合体フィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリメチルペンテンフィルム;ポリスルホンフィルム;ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム等のポリエーテル系フィルム;ポリイミドフィルム;フッ素樹脂フィルム;ポリアミドフィルム;アクリル樹脂フィルム;ノルボルネン系樹脂フィルム;シクロオレフィン樹脂フィルム等が挙げられる。
これらの基材は、透明、半透明のいずれであってもよく、また、着色されていてもよいし、無着色のものでもよいが、自動車の窓ガラス、住宅用窓ガラス等の用途では、視野を遮らないという寒天及び美観を確保する観点等から、透明又は半透明であることが好ましく、透明であることがより好ましい。
基材の厚さに特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、導電パターンの形成に際する基材の変形を抑制する観点から、通常、好ましくは10〜300μm、より好ましくは30〜200μmの範囲である。
また、基材は、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法等により表面処理が施されていてもよい。
【0011】
本発明では、基材として、導電パターンが形成されたものを用いる。導電パターンの形成には、例えば、金属、溶剤、及び必要に応じて熱硬化性樹脂や分散剤を混練して分散液としたものが好ましく用いられる。該金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、鉄等が挙げられ、導電性の観点から、銀、銅が好ましく、経済性の観点から、銅がより好ましい。金属は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。使用する金属の形状に特に制限は無く、箔、板状のもの、粉体状のもの、及びフィラー等を用いもよい。溶剤としては、例えば、水;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)等のエーテル類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。分散剤としては、界面活性剤等を用いることができる。
【0012】
導電パターンは、任意の形状(好ましくはループ状)に形成することができる。導電パターンは、スクリーン印刷、グラビア印刷、スプレーコート、スピンコート、バーコート、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等の方法によって基材上に前記分散液を塗布(印刷)し、次いで焼成することにより形成することができるが、特にこれに制限されない。
導電パターンの線の幅は、視認性及び美観の観点から、好ましくは0.1〜1mm、より好ましくは0.2〜0.5mmである。導電パターンの厚みは、好ましくは5〜50μm、より好ましくは5〜20μmである。焼成後の導電パターンの体積抵抗率は、好ましくは200μΩ・cm以下であり、より好ましくは100μΩ・cm以下、さらに好ましくは20μΩ・cm以下である。
なお、導電パターンの形成方法は、適宜、特開2009−181946号公報に記載の方法を参照できる。
【0013】
(電波吸収部材)
本発明のフィルムアンテナは、前記基材の上に、少なくとも誘電層及び導電層を有する電波吸収部材が、導電層と導電パターンとが電気的に絶縁されるように設けられたものである。導電層と導電パターンとが電気的に接続された状態であると、アンテナとしての機能が失われる。
−誘電層−
誘電層は、通常、比誘電率が2以上である樹脂層のことを指す。誘電層の比誘電率は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは25以上である。該誘電層の成分としては、フィルムアンテナの導電層に用いられる通常の誘電体を用いることができる。
該誘電体としては、誘電層の比誘電率が2以上となるものが好ましく、例えばチタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛等のチタン酸塩;酸化ケイ素、窒化ケイ素等のケイ素化合物等が挙げられる。これらの中でも、比誘電率が10以上であるチタン酸塩が好ましく、製造コスト等の観点からは、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウムがより好ましい。
誘電層の厚みは、好ましくは80〜300μm、より好ましくは100〜200μm、さらに好ましくは120〜180μmである。
なお、誘電層を形成する際には、該誘電体は適宜溶剤と混合した塗工液が用いられる。該溶剤としては、例えば、水;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族系有機溶剤;トルエン、キシレン、ブロモベンゼン等の芳香族系有機溶剤;塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤;エチルセロソルブ等のセロソルブ系有機溶剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。さらに、溶剤に誘電体を分散させる際は、湿潤分散剤を用いて十分に分散させることが好ましい。該塗工液中の前記誘電体の含有割合は、塗工液中の固形分濃度は、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは20〜40質量%である。なお、分散剤の粘度については、塗工可能な粘度であれば特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
【0014】
−導電層−
導電層の成分としては、フィルムアンテナの導電層に用いられる通常の導電材料(一般的に電気抵抗値が10MΩ・cm以下のもの)を使用でき、特に制限されるものではないが、例えば、ポリチオフェン、オリゴチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリイソチアナフテン及びそれらの誘導体等の導電性ポリマー;スズ酸化物、スズ−アンチモン系酸化物、インジウム−スズ系酸化物、酸化チタン/スズ−アンチモン系酸化物等の無機導電材料等が挙げられる。なお、オリゴチオフェンとは、通常チオフェンの3量体〜7量体を指し、これよりも重合度が高いものをポリチオフェンと云う。前記導電性ポリマーの重量平均分子量は、モノマーの分子量により異なるが、通常、好ましくは1万〜8万であり、より好ましくは2.5万〜6.5万である。この重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定することができる。
前記導電性ポリマーの例示中の「誘導体」としては、π電子共役系重合体の溶媒に対する溶解性、製膜性及びフィルムにした場合の柔軟性等を付与する等の目的で、環上に置換基、例えばアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基等が導入されたものや、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー等の共重合体等を挙げることができる。
これらの中でも、導電性の観点から、導電性ポリマーが好ましい。
導電材料の電気抵抗値は、好ましくは3MΩ・cm以下、より好ましくは1KΩ・cm以下である。導電層の厚みは、通常、好ましくは5〜30μm、より好ましくは5〜20μmである。
なお、導電層を形成する際には、該誘電体は適宜溶剤と混合した塗工液が用いられる。該溶剤としては、前記誘電層を形成する場合と同じものが挙げられる。該塗工液中の固形分濃度は、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%、さらに好ましくは30〜45質量%である。
前述の通り、本発明のフィルムアンテナは、これらの基材、誘電層、導電層がこの順に積層されたものであり、該誘電層と該導電層の間には、該誘電層の成分と該導電層の成分が混在した領域を有しており、誘電層と導電層の間に層界面が無く、アンテナ性能及び耐久性に極めて優れたフィルムアンテナである。なお、本明細書において、「層界面が無い」とは、例えば上層を青色に着色し、下層を赤色に着色した場合(但し、実際にフィルムアンテナを着色するわけではない)に、青色と赤色が混在した領域が存在し、「青のみ−青(多い)/赤(少ない)−青/赤−青(少ない)/赤(多い)−赤のみ」という、青から赤へのグラデーションができている状態を言う。つまり、誘電層の成分と導電層の成分が混在した領域と誘電層との間にも層界面が無く、誘電層の成分と導電層の成分が混在した領域と導電層との間にも層界面が無い。
【0015】
電波吸収部材には、さらに他の機能層、例えばハードコート層や防汚層等が形成されていてもよい。
−ハードコート層(保護層)−
ハードコート層は、JIS K5600−5−4に規定する鉛筆硬度試験(加重:4.9N)にて、「H」以上の硬度を示す層を言う。該ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性の化合物に、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することにより、架橋、硬化させて形成することができる。この活性エネルギー線硬化性の化合物としては、活性エネルギー線硬化型オリゴマー及び/又は活性エネルギー線硬化型モノマーを用いることができる。
【0016】
活性エネルギー線硬化型オリゴマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエーテルアクリレート系オリゴマー、ポリブタジエンアクリレート系オリゴマー、シリコーンアクリレート系オリゴマー等が挙げられる。
ここで、ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応させてエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。
ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオールアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
活性エネルギー線硬化型オリゴマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法で測定した標準ポリスチレン換算の値で、好ましくは500〜100,000、より好ましくは1,000〜70,000、さらに好ましくは3,000〜40,000である。
活性エネルギー線硬化型オリゴマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
活性エネルギー線硬化型モノマーとしては、例えばジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオールエステル、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールアジペートエステル、ジ(メタ)アクリル酸ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、ジ(メタ)アクリル酸カプロラクトン変性ジシクロペンテニル、ジ(メタ)アクリル酸エチレンオキシド変性リン酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸アリル化シクロヘキシル、ジ(メタ)アクリル酸イソシアヌレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパンエステル、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸プロピオンオキシド変性トリメチロールプロパンエステル、イソシアヌル酸トリス(アクリロキシエチル)、ペンタ(メタ)アクリル酸プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールエステル、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、ヘキサ(メタ)アクリル酸カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。活性エネルギー線硬化型モノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
なお、ハードコート層を形成する際には、活性エネルギー線硬化性の化合物を、必要に応じて光重合開始剤、溶剤、表面調整剤(レベリング剤)、老化防止剤等と混合した塗工液が用いられる。
光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−メチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン)等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。光重合開始剤の使用量は、用いる活性エネルギー線硬化性の化合物の種類に応じて適宜選定すればよい。
表面調整剤(レベリング剤)としては、公知のものを使用でき、例えばシリコーン系、フッ素系、ポリエーテル系、アクリル系、チタネート系等の各種界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、フッ素系界面活性剤が好ましく、パーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤[例えば、商品名「MCF−350−5」(DIC株式会社製)等。]がより好ましい。
【0019】
老化防止剤としては、公知のものを使用でき、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物が挙げられる。
溶剤としては、前記誘電層を形成する場合と同じものが挙げられる。ハードコート層用の塗工液中の固形分濃度は、好ましくは20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。なお、分散剤の粘度については、塗工可能な粘度であれば特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
【0020】
−防汚層−
防汚層は、フィルムアンテナの汚れを抑制するための層であり、公知の成分を用いることができる。例えば、フッ素樹脂や、シリコーン化合物及び/又はその縮合物を主成分とする防汚層、又はポリエステル等の樹脂に二酸化チタン等の光触媒を含有させた防汚層等が挙げられる。
なお、ハードコート層同様、防汚層を形成する際には、必要に応じて光重合開始剤、溶剤、表面調整剤(レベリング剤)、老化防止剤等を混合した塗工液を用いればよい。
【0021】
前述の通り、本発明のフィルムアンテナは、これらの基材、誘電層、導電層とその他の機能層(例えばハードコート層や防汚層等)がこの順に積層されたものも含んでおり、該誘電層と該導電層の間には、該誘電層の成分と該導電層の成分が混在した領域を有しており、誘電層と導電層の間に層界面が無いと同時に、該導電層とその他の機能層(ハードコート層等)との間に、該導電層の成分とその他の機能層(ハードコート層等)の成分が混在した領域を有しており、誘電層と導電層の間に層界面が無く、アンテナ性能及び耐久性に極めて優れたフィルムアンテナである。
【0022】
さらに、本発明のフィルムアンテナは、基材と誘電層との密着性を高めるために、基材と誘電層の間に密着層が設けられていてもよい。密着性の観点から、該密着層の成分は、基材と同種の樹脂を主体とする組成物であることが好ましい。
【0023】
(フィルムアンテナの製造方法)
本発明のフィルムアンテナは、前記の通り、誘電層と導電層間、及び導電層とその他の機能層(例えばハードコート層や防汚層等)間に界面が無い構造であり、このようなフィルムアンテナを簡便に製造する方法としては、以下の多層塗工膜の製造方法を利用できる。
−多層塗工膜の製造方法−
複数の塗工液をあらかじめ多層化し、多層化した塗工液を基材上に転移させる工程を有する多層塗工膜の製造方法において、積層しようとする2種の塗工液間に、該2種の塗工液のそれぞれに含まれる被膜形成成分の両方を含み、かつその合計濃度が、前記2種の塗工液の各濃度よりも高い塗工液を中間層として挿入することにより多層化する、多層塗工膜の製造方法。
【0024】
前記多層塗工膜の製造方法は、上層塗工液(以下、上層塗工液Aと称することがある)及び下層塗工液(下層塗工液Bと称することがある)をあらかじめ多層化し、多層化した塗工液を、基材上に転移させて多層塗工膜を製造する工程を含む。誘電層と導電層に着目すると、誘電層用の塗工液が下層塗工液、導電層用の塗工液が上層塗工液である。さらに導電層とその他の機能層(例えばハードコート層や防汚層等)に着目すると、導電層用の塗工液が下層塗工液であり、その他の機能層用の塗工液が上層塗工液である。該その他の機能層が複数層ある場合にも同様に考えればよい。このように、2層の形成のみならず、3層以上の形成も可能な製造方法である。
上層塗工液A及び下層塗工液Bをあらかじめ多層化する方法に特に制限は無いが、例えば(1)傾斜したスライド面上にて多層化させる方法、(2)水平な平面状にて多層化させる方法、(3)円形シリンダー上にて多層化させる方法、(4)傾斜した放物面上にて多層化させる方法等が挙げられる。これらの中でも、通常、方法(1)が好ましく利用される。
本発明は、フィルムアンテナの前記各層間の界面をなくすため、積層しようとする2種の塗工液間に、該2種の塗工液A及びBのそれぞれに含まれる被膜形成成分の両方を含み、かつその合計濃度が、前記2種の塗工液の各濃度よりも高い「混合塗工液A/B」を中間層として挿入することで、境界面が無いものの、全体としては層分離構造が確保された多層塗工膜を形成するものである。該中間層が、層分離構造を確保しつつ、上下層の界面をなくしながら「上下層の成分が混在した領域」を作り出す。
なお、該中間層を挿入しない場合、塗工液AとBは混ざり合ってしまい、層分離構造を保つことはできない。
【0025】
本発明においては、前記中間層として用いる混合塗工液A/Bにおける主要成分(誘電層用の塗工液であれば誘電体、導電層用の塗工液であれば導電材料、ハードコート層用の塗工液であれば活性エネルギー線硬化性の化合物)の濃度が、積層しようとする2種の塗工液A及びBにおける各被膜形成成分の濃度よりも、少なくとも5質量%高いことが、積層しようとする2種の塗工液の混合抑制の観点から好ましい。塗工液Aと塗工液Bとの混合抑制効果及び混合塗工液A/Bの粘度の観点から、該濃度は、積層しようとする2種の塗工液A及びBの濃度いずれよりも、10〜40質量%高いことがより好ましい。
また、積層しようとする2種の塗工液A及びBにおける被膜形成成分の濃度に特に制限は無いが、塗工液の粘度、多層塗工膜形成性及び生産性等のバランスの観点から、通常、それぞれ好ましくは20〜50質量%である。積層しようとする2種の塗工液A及びBにおける被膜形成成分の濃度の比率(塗工液Aにおける被膜形成成分濃度/塗工液Bにおける被膜形成成分濃度)は、通常、3/1〜1/3が好ましい。
さらに、中間層として用いる混合塗工液A/B中における塗工液Aの被膜形成成分濃度と塗工液Bの被膜形成成分濃度との割合は、積層しようとする上層塗工液Aにおける被膜形成成分濃度と下層塗工液Bにおける被膜形成成分濃度との比率に近いことが好ましく、具体的には、好ましくは3/1〜1/3の範囲で適宜選択すればよく、この範囲であれば、積層しようとする2種の塗工液の混合を効率的に抑制できる。
【0026】
前記中間層を挿入することにより、上層塗工液Aと下層塗工液Bとが混合するのを抑制しながら、各層の界面をなくすことができる。該中間層は、ウェット膜厚として、1μm〜100μmで挿入することが好ましく、5μm〜80μmで挿入することがより好ましい。
挿入された前記中間層は、はじめは完全な混合状態であるが、2種の塗工液と接触後、中間層中の被膜形成成分の濃度が高いため、より濃度の低い部分へと移動すると考えられる。特に、親和性の高い同質成分、即ち、上下2種の塗工液に向かってそれぞれ移動しようとして分離を始めるため、上下の2種の塗工液同士が混合するのを抑制できるものと推測される。中間層と上下層との濃度勾配がある程度緩和された段階で、前記移動及び分離が停止するため、各層の境界面近傍から界面が消失している。
【0027】
前述の通り、フィルムアンテナの製造に利用し得る多層塗工膜の製造方法には、複数の塗工液をあらかじめ多層化し、多層化した塗工液を基材上に転移させる方法が採られる。
多層化する際に傾斜したスライド面を利用する場合、塗工液を流動させるための、傾斜したスライド面を有するものとしては、例えば図1や図2に示すようなスライドコーターが好ましく挙げられる。なお、本発明においては、スライド面2上の塗工液A及びB用スリット間に、混合塗工液A/B用のスリットを設ける。フィルムアンテナの層の数が増えると共に、スリットの数も増加させればよい。
効率的に多層塗工膜を形成する観点から、スライド面の傾斜角度は、水平方向に対して5〜40度が好ましく、10〜35度がより好ましく、15〜35度がさらに好ましい。また、効率的に多層塗工膜を形成する観点から、スライド面上への塗工液の吐出口の中心と、隣り合う塗工液の吐出口の中心との距離は、8〜30cmが好ましく、10〜28cmがより好ましく、12〜26cmがさらに好ましい。さらに、効率的に多層塗工膜を形成する観点から、複数のスライド面上への塗工液の吐出口の内、塗工液を基材へ転移する部位に最も近い吐出口の中心と、基材との距離は、2〜14cmが好ましく、3〜12cmがより好ましく、4〜11cmがさらに好ましい。特に、このように設計されたスライドコーターを使用した場合に、本発明の効果が顕著に現れる傾向にある。
以下に、図1のスライドコーターを参照して、塗工液を多層化する方法の一例を詳細に説明する。
少なくとも3つのスリット状の吐出口を有する塗布ヘッド1における各吐出口から、それぞれ塗工液A、混合塗工液A/B及び塗工液Bを押し出し、傾斜したスライド面2上を重力の作用により自然流下させ、塗工液A及びBを混合塗工液A/Bを介して多層化する。多層化した塗工液(塗工膜)は、ロール3によって走行する基材4上に転移させる。
【0028】
多層化した塗工液(塗工膜)を基材4上に転移させた後、加熱乾燥させることにより、多層塗工膜を形成することができる。加熱乾燥温度は、通常、好ましくは50〜130℃、より好ましくは70〜130℃である。加熱乾燥時間に特に制限は無いが、通常、1分〜5分間程度必要である。
こうして得られた積層体の層分離構造は、例えばスラブ型光導波路分光法を利用した界面紫外可視分光測定装置を用いて確認することができる。また、断面の走査型電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡によっても確認することができる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0030】
製造例1(誘電層用塗工液の調製;第1層)
チタン酸カルシウム(株式会社高純度化学研究所製)、湿潤分散剤「DISPERBYK−108」(ビックケミー・ジャパン株式会社製、チタン酸カルシウムに対して0.8質量%)、及びトルエン[チタン酸カルシウム:トルエン=30:70(質量比)]を、ビーズミルにて30分間分散し、次いで分散メディアを除去することにより、誘電層用塗工液を調製した。
【0031】
製造例2(導電層用塗工液の調製;第2層)
溶剤可溶性PEDOT[ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、表面電気抵抗値:1MΩ・cm、シグマアルドリッチ社製]と、プロプレングリコールモノメチルエーテル(関東化学株式会社製)[PEDOT:プロプレングリコールモノメチルエーテル=40:60(質量比)]とを室温にて混合及び攪拌して、均一な導電層用塗工液を調製した。
【0032】
製造例3(ハードコート層(保護層)用塗工液の調製;第3層)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート35質量部、2−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(光重合開始剤)2質量部、メチルエチルケトン50質量部とを室温にて混合及び攪拌して、均一なハードコート層用塗工液を調製した。
【0033】
製造例4[第1中間層用塗工液の調製;第1層−第2層間]
湿潤分散剤「DISPERBYK−108」と、溶剤可溶性PEDOT[ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、シグマアルドリッチ社製]とを、質量比2:1で、プロプレングリコールモノメチルエーテル(関東化学株式会社製)に溶解させ、第1中間層塗工液(固形分濃度60質量%)を調製した。
【0034】
製造例5[第2中間層用塗工液の調製;第2層−第3層間]
溶剤可溶性PEDOT[ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、シグマアルドリッチ社製]とジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとを、質量比1:2で、プロプレングリコールモノメチルエーテル(関東化学株式会社製)に溶解させ、第2中間層塗工液(固形分濃度60質量%)を調製した。
上記製造例1〜5で得た塗工液中の被膜形成成分及びその濃度について、表1にまとめる。
【0035】
【表1】

【0036】
以下の各例で得られたフィルムアンテナについて、誘電層の比誘電率、層間の密着性、耐久性、硬度及びアンテナ性能について以下の様にして評価した。
(比誘電率)
ソーラトロン社製の1260型インピーダンスアナライザ(2端子法)を用い、周波数範囲1KHz〜100KHz、測定温度25℃にて比誘電率を測定した。
(密着性)
旧JIS K5400の基盤目試験方法に準拠し、下記評価方法によって層間の密着性を評価した。
各例で得られたフィルムアンテナに基盤目の切れ込みを100マス(1マス=1mm×1mm)入れた後、密着試験用テープを基盤目へ貼り付け、そして剥がし、残留したマスの数を確認した。
100マス中、95マス以上が残留していれば、層間の密着性に非常に優れていると言える。
(耐久性)
上記密着性の評価において、温度80℃、湿度90%の環境下に50時間保持した後のフィルムアンテナを用いて同様にして評価を行い、製造初期のアンテナフィルムの密着性との比較により、耐久性を評価した。密着性の差が小さいほど、耐久性に優れる。
(硬度)
JIS K5600−5−4に準拠して、鉛筆法によるひっかき試験を行い、フィルムアンテナの表面の硬度を調査した。
(アンテナ性能)
WELZ社製のSWR計「SP−200」を用い、周波数2〜3GHzにおける定在波比(SWR値)を測定し、アンテナ性能の指標とした。なお、通信対象周波数帯域は、2.4GHz帯とした。
一般的に、SWR値は1.5以下が理想であり、3が実用上の限界とされる。
【0037】
実施例1(フィルムアンテナの製造)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム「コスモシャインA4100」(東洋紡績(株)製)に、「ドータイトFA−705BN」(藤倉化成株式会社製、成分;銀−エポキシ樹脂)をスクリーン印刷し、次いで150℃で焼結することにより、ループ状の導電性パターンを形成し、基材として用いた。
図2に示すような装置(但し、スライド面2に示した各スリット間に、中間層用塗工液用のスリット1つずつを設けた装置を使用。スライド面の傾斜角度;水平方向に対して25度、隣り合う吐出口の距離;8cm、塗工液を基材へ転位する部位に最も近い吐出口の中心と基材との距離;10cm)を用いて、上記基材上に、前記製造例1〜5で調製した塗工液を、基材側から「誘電層用塗工液−第1中間層用塗工液−導電層用塗工液−第2中間層用塗工液−ハードコート層用塗工液」の順に積層するよう同時に塗工した後、120℃のオーブン中で3分間乾燥し、次いで100mJ/m2の露光量にて紫外線照射を行ってハードコート層を硬化させ、多層積層型の透明なフィルムアンテナを製造した。
得られたフィルムアンテナの層厚、並びに層間の密着性、硬度及びアンテナ性能の評価結果を表2に示す。
【0038】
比較例1(タンデム塗工方式を利用したフィルムアンテナの製造)
第1中間層用塗工液、第2中間層用塗工液をいずれも用いず、以下のタンデム塗工方式によりフィルムアンテナを製造した。
基材に誘電層用塗工液を塗布した後に80℃で3分乾燥し、次いで、導電層用塗工液を塗布した後に80℃で1分乾燥し、さらにハードコート層用塗工液を塗布した後に80℃で1分乾燥してから100mJ/m2の露光量にて紫外線照射を行ってハードコート層を硬化させ、多層積層型の透明なフィルムアンテナを製造した。なお、こうして製造したフィルムアンテナは、誘電層−導電層−ハードコート層の各層間に、明瞭な界面が存在しており、従来のフィルムアンテナに相当する。
得られたフィルムアンテナの層厚、並びに層間の密着性、硬度及びアンテナ性能の評価結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
表2より、本発明のフィルムアンテナは、従来のフィルムアンテナに比べ、層間の密着性及び耐久性が極めて高く、且つアンテナ性能に非常に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のフィルムアンテナは、自動車の窓ガラス用フィルムアンテナ、住宅用窓ガラス用フィルムアンテナ、携帯端末用フィルムアンテナ、ICタグ等のRFID(Radio Frequency Identification)用フィルムアンテナ等として利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1:塗布ヘッド
2:スライド面
3:ロール
4:基材
A:上層塗工液
B:下層塗工液
5:誘電層用塗工液用のスリット
6:導電層用塗工液用のスリット
7:ハードコート層用塗工液用のスリット
8:上下層の成分が混在した領域
9:電波吸収部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電パターンが形成された基材上に、少なくとも誘電層及び導電層を有する電波吸収部材が、該導電層と導電パターンとが電気的に絶縁されるように設けられたフィルムアンテナであって、基材、誘電層、導電層の順に積層されており、該誘電層と該導電層の間に、該誘電層の成分と該導電層の成分が混在した領域を有しており、誘電層と導電層の間に層界面が無いことを特徴とする、フィルムアンテナ。
【請求項2】
前記電波吸収部材が、さらにハードコート層を有し、基材、誘電層、導電層、ハードコート層の順に積層されており、該ハードコート層と該導電層の間に、該ハードコート層の成分と該導電層の成分が混在した領域を有しており、ハードコート層と導電層の間に層界面が無い、請求項1に記載のフィルムアンテナ。
【請求項3】
前記基材がポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項1又は2に記載のフィルムアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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