フィルムパック
【課題】内容物を二つの収容空間に分けて収容することができると共に、嵩張ることなく十分な量の内容物を収容することが可能な可食性のフィルムパックを提供する。
【解決手段】フィルムパック1は、第一凹部11及びその開口15の周縁から外側に延設された第一周縁部12を備える可食性の第一フィルム10と、第二凹部21及びその開口25の周縁から外側に延設された第二周縁部22を備える可食性の第二フィルム20と、開口15及び開口25を向かい合わせた状態の第一フィルムと第二フィルムとの間に位置し開口15を被覆し第一周縁部と溶着されていると共に、開口25を被覆し第二周縁部と溶着されている可食性の被覆フィルム30とを具備し、第一凹部と被覆フィルムとの間の内部空間、及び、第二凹部と被覆フィルムとの間の内部空間には、それぞれ内容物M1,M2が封入されている。
【解決手段】フィルムパック1は、第一凹部11及びその開口15の周縁から外側に延設された第一周縁部12を備える可食性の第一フィルム10と、第二凹部21及びその開口25の周縁から外側に延設された第二周縁部22を備える可食性の第二フィルム20と、開口15及び開口25を向かい合わせた状態の第一フィルムと第二フィルムとの間に位置し開口15を被覆し第一周縁部と溶着されていると共に、開口25を被覆し第二周縁部と溶着されている可食性の被覆フィルム30とを具備し、第一凹部と被覆フィルムとの間の内部空間、及び、第二凹部と被覆フィルムとの間の内部空間には、それぞれ内容物M1,M2が封入されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食性フィルムで袋状に形成された容器に薬剤や食品等の内容物が封入されたフィルムパックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、可食性フィルムで形成された袋状の容器に薬剤が封入された製剤包装体を提案している(特許文献1参照)。この製剤包装体100は、図11に示すように、可食性フィルム101を二重に重ね合わせ、外周縁に沿って溶着してシール部102を形成することにより袋状の容器とし、その内部の収容部104に中に薬剤105が封入されたものである。
【0003】
これによれば、可食性の容器ごと薬剤を服用することができるため、一回分の定量の薬剤をこぼすことなく確実に服用することができる。また、薬剤が粉末や細かな顆粒であっても、むせたり咳き込んだりするおそれが低減されると共に、薬剤の味や匂いを強く感じることなく服用することができる。加えて、可食性フィルムの容器に味付けや香り付けをすることも可能であるため、薬剤の味や匂いをマスキングし、より服用しやすくすることもできる。また、可食性フィルムの容器を小型化し、或いは唾液促進剤を含有させることにより、水なしで容易に服用することもできる。加えて、服用に先立ってオブラートで薬剤を包む場合とは異なり、手間を要さず服用したいときに直ちに定量の薬剤を服用することができるため、手軽であると共に携帯にも便利である。
【0004】
また、本出願人は、図12に示すように、内側に非水溶性層212が積層された水溶性の可食フィルム211で形成された袋状の容器に、水系液体Wが収容された液体収容部210と、可食性フィルム221で形成された袋状の容器に薬物Dが収容された薬物収容部220とが、隣接して配されている経口投与製剤200を提案している(特許文献2)。これによれば、口腔内の水分によって水溶性の可食フィルム211が溶解し液体収容部210が崩壊することによって、液体収容部210に保持されていた水系液体Wが口腔内に広がるため、水系液体Wの助けにより薬物収容部220を容易に服用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の技術を更に発展させたものであり、可食性フィルムで形成された容器に内容物が封入されたフィルムパックであって、内容物を二つの収容空間に分けて収容することができると共に、嵩張ることなく十分な量の内容物を収容することが可能なフィルムパック、の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるフィルムパックは、「凹状の第一凹部、及び、該第一凹部の開口の周縁から外側に向かって延設された第一周縁部を備える可食性の第一フィルムと、凹状の第二凹部、及び、該第二凹部の開口の周縁から外側に向かって延設された第二周縁部を備える可食性の第二フィルムと、前記第一凹部の開口及び前記第二凹部の開口を向かい合わせた状態の前記第一フィルムと前記第二フィルムとの間に位置し前記第一フィルムの前記第一凹部の開口を被覆し前記第一周縁部と溶着されていると共に、前記第二凹部の開口を被覆し前記第二周縁部と溶着されている可食性の被覆フィルムとを具備し、前記第一凹部と前記被覆フィルムとの間の内部空間、及び、前記第二凹部と前記被覆フィルムとの間の内部空間には、それぞれ内容物が封入されている」ものである。
【0007】
可食性の「第一フィルム」、「第二フィルム」及び「被覆フィルム」は、平滑な基面上に固定したベースフィルム上に、可食性のフィルム形成剤を含有する溶液または懸濁液を流延し、流延された溶液または懸濁液を乾燥させフィルム化することにより形成することができる。可食性のフィルム形成剤としては、水溶性、胃溶性、または腸溶性のフィルム形成剤を使用することができる。ここで、水溶性のフィルム形成剤としては、特に限定されないが、プルラン、ゼラチン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、水溶性ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、加工澱粉を例示することができる。また、胃溶性のフィルム形成剤としては、特に限定されないが、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーEを例示することができる。更に、腸溶性のフィルム形成剤としては、特に限定されないが、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートを例示することができる。
【0008】
なお、「第一フィルム」、「第二フィルム」及び「被覆フィルム」は、同一のフィルム形成剤により形成されたフィルムであっても、異なる種類のフィルム形成剤により形成されたフィルムであっても良い。また、「第一フィルム」、「第二フィルム」及び「被覆フィルム」は、それぞれ単一の種類のフィルム形成剤により形成されたものであっても、複数種類のフィルム形成剤を適宜配合して形成されたものであっても良い。
【0009】
ここで、本発明において「フィルム」とは、厚さ1μm〜500μmの薄片を指している。なお、「第一フィルム」、「第二フィルム」及び「被覆フィルム」の厚さは、同一であっても異なっていても良い。
【0010】
「内容物」としては、散剤(粉末剤)、顆粒剤、丸剤、錠剤、オイル剤、ペースト状剤、これらの内の複数を混合した薬剤を例示することができ、いわゆる西洋薬であっても生薬や生薬を組み合わせた漢方薬であっても良い。更に、本発明の「内容物」は、医薬品に限定されるものではなく、ビタミンやミネラル等の栄養補助成分を補うための食品であっても良い。加えて、本発明のフィルムパックは、可食性フィルムの容器ごと全体を経口摂取する用途に限らず、例えば、水溶性のフィルム形成剤を使用し、水や湯にフィルムパックを投入して可食性フィルムの容器を崩壊または溶解させ、内容物を飲食する用途も可能であり、その場合の内容物としては、粉茶、粉末コーヒー、粉乳、粉末ジュース、粉末スープ、砂糖などの調味料を含む種々の食品を選択可能である。
【0011】
第一フィルムに「第一凹部」を、第二フィルムに「第二凹部」を形成する方法としては、例えば、底面または側面に貫通孔が設けられた凹状の成形型の上に可食性フィルムを配し、貫通孔を介してエアを吸引することにより、成形型の形状に合わせて可食性フィルムを変形させる方法を挙げることができる。
【0012】
各可食性フィルム間の「溶着」は、例えば、加熱された金属板などでフィルムを押圧する熱板式のヒートシール、フィルムにヒーターを押し当てた状態で瞬間的に大電流を流してヒーターを発熱させるインパルス式のヒートシール、フィルムを加圧しながらホーンから超音波を照射する内部発熱式のヒートシールによって行うことができる。
【0013】
上記構成により、本発明では、第一フィルム及び第二フィルムにそれぞれ第一凹部及び第二凹部が設けられていることにより、二枚のフィルムを重ね合わせて三方シールまたは四方シールして形成された平面的な袋状の容器に比べて、内容物を充填し易く、且つ、十分な量の内容物を充填することが可能である。また、本発明のフィルムパックでは、第一凹部と第二凹部が被覆フィルムを介してそれぞれの開口を突き合わせるように溶着されているため、第一凹部と被覆フィルムとの間に内容物が封入されている部分と、第二凹部と被覆フィルムとの間に内容物が封入されている部分が上下に重畳している。これにより、二種類の内容物をそれぞれ封入している部分が隣接して配される場合と比べて、フィルムパック全体としての長さを小さくすることができ、可食性フィルムの容器ごと経口摂取する場合であっても口腔内で嵩張りにくいものとなる。
【0014】
そして、本発明のフィルムパックは、上記構成により種々の用途が考えられると共に、種々の機能を発揮する可能性を有する。例えば、第一フィルム及び第二フィルムを、体内での溶解速度が異なるフィルム形成剤で形成することにより、二種類の薬剤を同時に服用しながら、それぞれの薬剤の薬効が現れる時間をずらすことができる。また、例えば、第一フィルムを腸溶性とし、腸で作用させたい薬物を第一凹部と被覆フィルムとの間に封入すると共に、第二フィルムを水溶性とし、甘味剤や口当たりの良い食品を第二凹部と被覆フィルムとの間に封入したフィルムパックとすることができる。これにより、口腔内で第二フィルムが溶解または崩壊してゼリー状となり、腸溶性の第二フィルムが嚥下し易いものとなることに加え、甘味剤や口当たりの良い食品の助けによって、更に服用し易いものとなる。
【0015】
本発明にかかるフィルムパックは、上記構成において、「前記被覆フィルムは、前記第一凹部の開口を被覆し、前記第一周縁部と溶着されている第一被覆フィルム、及び、前記第二凹部の開口を被覆し、前記第二周縁部と溶着されている第二被覆フィルムの積層構造であり、前記第一被覆フィルム及び前記第二被覆フィルムは、前記第一周縁部及び第二周縁部に挟み込まれている部分で溶着されており、前記第一凹部の開口を被覆している部分及び前記第二凹部の開口を被覆している部分は溶着されていない」ものとすることができる。
【0016】
上記構成により、第一凹部と第一被覆フィルムとの間の内部空間に内容物が封入され、第二凹部と第二被覆フィルムとの間の内部空間に内容物が封入される。
【0017】
フィルムパックが上記構成であることにより、次のような方法で製造することが可能となる。まず、第一凹部に内容物を充填した上で、第一被覆フィルムで被覆し第一周縁部と溶着して単層のフィルムパックを作製する。一方で、第二凹部に内容物を充填した上で、第二被覆フィルムで被覆し第二周縁部と溶着して単層のフィルムパックを作製する。その後、二つの単層のフィルムパックを、第一被覆フィルムと第二被覆フィルムとが当接するように重ね合わせ、この状態で第一周縁部及び第二周縁部を相対的に押圧しながらヒートシールする。すなわち、上記構成ゆえに、内容物が単層のフィルムパックに封入された状態としてから、二つの単層のフィルムパックを重ね合わせて一つのフィルムパックとする製造方法が可能となるため、積層構造のフィルムパックを容易に製造することができる。
【0018】
本発明にかかるフィルムパックは、上記構成において、「前記第一被覆フィルムの厚さは前記第一フィルムの厚さより小さいと共に、前記第二被覆フィルムの厚さは前記第二フィルムの厚さより小さい」ものとすることができる。
【0019】
本発明のフィルムパックにおいて、第一フィルム及び第二フィルムは外部の環境と接する構成であるため、内容物を保護できるだけの強度が要求される。これに対し、第一被覆フィルム及び第二被覆フィルムは外部に現れない構成であるため、さほど強度は要求されない。従って、第一被覆フィルムを第一フィルムより薄く、且つ、第二被覆フィルムを第二フィルムより薄くすることにより、フィルムパック全体の厚さを薄くすることができ、可食性フィルムの容器ごと経口摂取する場合であっても、口腔内での違和感を低減することができる。
【0020】
また、第一被覆フィルム及び第二被覆フィルムが薄いことにより、上記のように、第一被覆フィルムを第一周縁部と溶着し、第二被覆フィルムを第二周縁部と溶着する際に、溶着のための押圧力が小さくて済み、ヒートシールのための温度も低くて済む。従って、上記構成ゆえに、エネルギー消費を低減して効率良く、積層構造のフィルムパックを製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の効果として、可食性フィルムで形成された容器に内容物が封入されたフィルムパックであって、内容物を二つの収容空間に分けて収容することができると共に、嵩張ることなく十分な量の内容物を収容することが可能なフィルムパックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)本発明の第一実施形態のフィルムパックの斜視図、(b)第一実施形態のフィルムパックの縦断面図、及び(c)第二実施形態のフィルムパックの縦断面図である。
【図2】図1のフィルムパックの製造に使用される成形型の斜視図である。
【図3】第一成形工程S1を説明する図である。
【図4】一次シール工程S3を説明する図である。
【図5】単層フィルムパックを説明する図である。
【図6】二次シール工程S6を説明する図である。
【図7】図6に引き続き、二次シール工程S6を説明する図である。
【図8】二次シール工程S6を経て形成されたシートを、第一フィルム側から見た平面図である。
【図9】二次シール工程P7を説明する図である。
【図10】(a)製造方法Aの工程図であり、(b)製造方法Bの工程図である。
【図11】特許文献1の製剤包装体の(a)平面図、及び(b)縦断面図である。
【図12】特許文献2の経口投与製剤の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第一実施形態であるフィルムパック1の構成について、図1(a),(b)を用いて説明する。フィルムパック1は、凹状の第一凹部11、及び、第一凹部11の開口15の周縁から外側に向かって延設された第一周縁部12を備える可食性の第一フィルム10と、凹状の第二凹部21、及び、第二凹部21の開口25の周縁から外側に向かって延設された第二周縁部22を備える可食性の第二フィルム20と、第一凹部11の開口15及び第二凹部21の開口25を向かい合わせた状態の第一フィルム10と第二フィルム20との間に位置し、開口15を被覆し第一周縁部12と溶着されていると共に、開口25を被覆し第二周縁部22と溶着されている可食性の被覆フィルム30とを具備し、第一凹部11と被覆フィルム30との間の内部空間、及び、第二凹部21と被覆フィルム30との間の内部空間には、それぞれ内容物M1,M2が封入されている。
【0024】
より具体的には、第一凹部11は高さの小さい有底円筒状で、開口15の周縁からは帽子の庇のように円環状の第一周縁部12が延設されている。同じく、第二凹部21は高さの小さい有底円筒状で、開口25の周縁から円環状の第二周縁部22が延設されており、第二凹部21は第一凹部11と形状及び大きさがほぼ等しく、第一周縁部12は第二周縁部22と形状及び大きさがほぼ等しい設定とされている。そして、被覆フィルム30は膨出した部分のない平面状で、一方の面で第一凹部11の開口15を被覆し、他方の面で第二凹部21の開口25を被覆している。
【0025】
上記構成のフィルムパック1は、次のような製造方法Aで製造することができる。すなわち、製造方法Aは、図10(a)に示すように、第一フィルム10に第一凹部11を形成する第一成形工程S1と、第一凹部11に内容物M1を充填する第一充填工程S2と、内容物が充填された第一凹部11を被覆フィルム30で被覆し第一周縁部12と溶着し、単層のフィルムパック40(以下、「単層フィルムパック40」と称する)を作製する一次シール工程S3と、第二フィルム20に第二凹部21を形成する第二成形工程S4と、第二凹部21に内容物M2を充填する第二充填工程S5と、単層フィルムパック40を反転させて第二フィルム20に被せ、第一周縁部12、被覆フィルム30、及び第二周縁部22を溶着する二次シール工程S6と、第一周縁部12、被覆フィルム30、及び第二周縁部22の溶着により形成されたシール部51で第一凹部11及び第二凹部21を囲むように切断する切断工程S7とを具備している。
【0026】
より詳細に説明すると、第一成形工程S1及び第二成形工程S4では、第一凹部11及び第二凹部21の成形のために、図2及び図3に示すように、複数の凹部71が設けられている成形型70を使用することができる。ここで、凹部71の形状は成形すべき第一凹部11及び第二凹部21の形状に応じて設定され、本実施形態では真上から見た形状が円形の凹部71が設けられている。また、凹部71の大きさは、例えば、直径10mm〜50mm、深さ1mm〜10mmとすれば、経口摂取できる小型のフィルムパック1の製造に好適である。なお、図3は、構成を明確に示すため簡略化して示したものであり、成形型70における凹部71の数、凹部71おける孔部72の数、凹部71の大きさに対する孔部72の大きさ等は、図示したものに限定されない。
【0027】
それぞれの凹部71の底面には、小径の貫通する孔部72が分散して多数穿設されている。また、成形型70の内部には、成形型70の一端で開口する開口部76を有する中空部74が形成されており、中空部74の内部空間Sと複数の孔部72とは連通している。かかる構成により、開口部76を介して図示しないポンプ等により内部空間Sを脱気すれば、複数の孔部72を介して外部から内部空間Sへエアが吸引される。
【0028】
従って、第一成形工程S1では、ベースフィルム(図示しない)に積層された状態で巻かれている可食性の第一フィルム10のロールから、ベースフィルムを剥離しつつ第一フィルム10を連続的に引き出し、第一フィルム10を成形型70の上に送る(図3(a)参照)。そして、孔部72を介して内部空間Sを脱気すれば、第一フィルム10が成形型70に吸着され、凹部71に沿った形状に変形して凹状の第一凹部11が形成される(図3(b)参照)。このとき、凹部71を除く成形型70の上面に当接する凸型81bを底面に備えた押圧体81によって、第一フィルム10を成形型70に向けて押圧すれば、凹部71の周縁部及びその近傍において、成形型70の上面と凸型81bとの間に第一フィルム10が挟み込まれるため、凹部71に沿って第一フィルム10が変形する際に、凹部71の周縁部及びその近傍において、すなわち、第一フィルム10の第一周縁部12において、シワが発生することが有効に抑制される。また、第二成形工程S4は、第二フィルム20を用いて、第一成形工程S1と同様に行う。
【0029】
なお、第一成形工程S1及び第二成形工程S4において、第一フィルム10または第二フィルム20が溶融しない程度に軟化する温度に成形型70を加熱すれば、フィルム10,20が凹部71に沿って変形し易く、第一周縁部12及び第二周縁部22におけるシワの発生を更に抑制して成形することができ、後のシール工程における溶着がより確実なものとなるため、好適である。
【0030】
第一凹部11が形成された第一フィルム10は、成形型70ごと第一充填工程S2に送られ、第一凹部11の上方から内容物M1が供給される。そして、内容物M1が第一凹部11に充填された第一フィルム10は、一次シール工程S3に送られる。一方、第二凹部21が形成された第二フィルム20は、成形型70ごと第二充填工程S5に送られ、第二凹部21の上方から内容物M2が供給される。
【0031】
一次シール工程S3は、図4に示すように、ベースフィルム38に積層された被覆フィルム30を、被覆フィルム30側が第一フィルム10に当接するように供給しつつ、加熱された円柱状のローラー82をベースフィルム38を介して被覆フィルム30上で転動させることにより行うことができる。これにより、第一フィルム10と被覆フィルム30はローラー82によって線状に押圧され、直線状の押圧点の集合はローラー82の転動に伴いローラー82の進行方向に移動する。そして、ローラー82を移動させるのと同時に、被覆フィルム30を第一フィルム10に被せていくと、被覆フィルム30と第一フィルム10との間の空気は、一点鎖線の矢印で図示したように、ローラー82の進行方向に徐々に押し出されるように逃がされる。そのため、被覆フィルム30を第一フィルム10の上に一気に被せる場合とは異なり、空気の圧力によって内容物M1が舞い上がったり飛散したりするおそれを防止して、内容物M1が充填された第一凹部11を被覆フィルム30で被覆することができる。なお、図4においては、成形型70における孔部72、中空部74、開口部76等の構成を省略して図示しており、以下の図でも同様である。
【0032】
そして、ローラー82の押圧力と熱によって、第一フィルム10の第一周縁部12は被覆フィルム30と溶着される。ここで、後述のように二次シール工程S6において、十分にヒートシールを行うため、一次シール工程S3は可食性のフィルムが大きくは熱収縮しない程度の低い温度で行うことができる。また、一次シール工程S3においては、第一周縁部12と被覆フィルム30とを完全に溶着させることまでは要求されず、内容物M1が外部に漏れ出たり、後述のように単層フィルムパック40を反転させた際に内容物M1が落下したりしない程度のシール状態で足る。そのため、一次シール工程S3におけるシールは、第一周縁部12と被覆フィルム30が部分的に溶着された状態、あるいは、第一フィルム10及び被覆フィルム30が開口15の周縁に沿って接着しているものの、完全な溶着には至らない弱い接着力で接着している状態の“仮シール”とすることができる。
【0033】
その後、被覆フィルム30からベースフィルム38を剥離すると、図5に示すように、第一フィルム10の第一凹部11が被覆フィルム30で被覆され、被覆フィルム30と第一周縁部12が溶着され、内容物M1が封入された単層フィルムパック40が、成形型70における凹部71の数に応じて複数連設されたシート60が形成される。そこで、このシート60を成形型70から抜き、次に二次シール工程S6を行う。
【0034】
二次シール工程S6では、図6に示すように、シート60を反転させ、第二凹部21に内容物M2が充填された状態の第二フィルム20の上に重ね合わせる。このとき、第一凹部11の開口15と第二凹部21の開口25とが被覆フィルム30を挟んで向かい合うように、すなわち、第一フィルム10の第一周縁部12と第二フィルム20の第二周縁部22とが被覆フィルム30を介して重畳するように配置する。
【0035】
そして、第二凹部21には接触することなく、被覆フィルム30を挟んだ状態の第二周縁部22及び第一周縁部12を成形型70に対して押圧可能な断面コ字状の押圧型83を加熱しながら、成形型70に対して押圧する。これにより、第一周縁部11、被覆フィルム30、及び第二周縁部22が十分に溶着されてシール部51が形成され、上記構成のフィルムパック1が複数連設されたシート69が形成される。ここで、一般的に可食性フィルムは、プラスチックフィルムに比べてヒートシールされにくいため、二次シール工程S6を複数回行うこともできる。二次シール工程S6を複数回行うことにより、溶着のために加熱し押圧する総時間を増加させることができる。或いは、複数回行われる二次シール工程S6で、最初の工程は可食性フィルムに熱収縮の生じにくい低い温度でヒートシールを行い、後の工程ほど加熱温度を徐々に高めることにより、熱収縮に伴うシワの発生を抑制しつつ十分に溶着することができる。
【0036】
その後、切断工程S7で、シート69のシール部51において第一凹部11及び第二凹部21の外周を囲む切断線51bで切断すれば(図7,図8参照)、個々のフィルムパック1が得られる。なお、切断に先立ち、開口部76を介して成形型70に冷却用の気体を導入することにより、或いは、成形型70或いは押圧型83に冷却盤を押し当てることによりシール部51を冷却すれば、切断刃へのフィルム10,20の付着やフィルム10,20の変形を抑制することができ、好適である。
【0037】
次に、第二実施形態のフィルムパック2の構成について、図1(c)を用いて説明する。ここで、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。第一実施形態との相違は、被覆フィルムが第一被覆フィルム31と第二被覆フィルム32との積層構造である点である。そして、第一被覆フィルム31は第一凹部11の開口15を被覆し、第一周縁部12と溶着されおり、第二被覆フィルム32は第二凹部21の開口25を被覆し、第二周縁部22と溶着されている。そして、第一被覆フィルム31及び第二被覆フィルム32は、第一周縁部12及び第二周縁部22に挟み込まれている部分で溶着されており、開口15を被覆している部分及び25開口を被覆している部分では溶着されていない。
【0038】
加えて、第二実施形態では、第一被覆フィルム31の厚さは第一フィルム10の厚さより小さいと共に、第二被覆フィルム32の厚さは第二フィルム20の厚さより小さい設定とされている。
【0039】
上記構成のフィルムパック2は、次のような製造方法Bで製造することができる。すなわち、製造方法Bは、図10(b)に示すように、第一フィルム10に第一凹部11を形成する第一成形工程P1と、第一凹部11に内容物M1を充填する第一充填工程P2と、内容物M1が充填された第一凹部11を第一被覆フィルム31で被覆し第一周縁部12と溶着し、単層のフィルムパック41(以下、「第一単層フィルムパック41」と称する)を作製する第一の一次シール工程P3と、第二フィルム20に第二凹部21を形成する第二成形工程P4と、第二凹部21に内容物M2を充填する第二充填工程P5と、内容物M2が充填された第二凹部21を第二被覆フィルム32で被覆し第二周縁部22と溶着し、単層のフィルムパック42(以下、「第二単層フィルムパック42」と称する)を作製する第二の一次シール工程P6と、単層フィルムパック41及び単層フィルムパック42の一方を反転させて重ね合わせ、第一周縁部12、第一被覆フィルム31、第二被覆フィルム32、及び第二周縁部22を溶着する二次シール工程P7と、第一周縁部12、第一被覆フィルム31、第二被覆フィルム32、及び第二周縁部22の溶着により形成されたシール部52で第一凹部11及び第二凹部21を囲むように切断する切断工程P8とを具備している。
【0040】
より具体的には、第一成形工程P1及び第二成形工程P4は、それぞれ上記の第一成形工程S1及び第二成形工程S4と同様であり、第一充填工程P2及び第二充填工程P5は、それぞれ上記の第一充填工程S2及び第二充填工程S5と同様である。第一の一次シール工程P3では、第一凹部11を第一被覆フィルム31で被覆し第一周縁部12と溶着する。一方、第二の一次シール工程P6では、第二凹部21を第二被覆フィルム32で被覆し第二周縁部22と溶着する。
【0041】
ここで、第一の一次シール工程P3及び第二の一次シール工程P6は、上記の一次シール工程S3と同様に、加熱されたローラー82を用いて行うことができる。このようにすることにより、第一凹部11を第一被覆フィルム31で被覆する際も、第二凹部21を第二被覆フィルム32で被覆する際も、ローラー82の使用によって空気を逃がしながら被覆フィルム31,32を徐々に被せることができるため、内容物M1,M2が何れも粉体や細かな顆粒であっても、その舞い上がりや飛散を防止して封入することができる。
【0042】
また、製造方法Bにおいても、二次シール工程P7で十分にヒートシールを行うため、第一の一次シール工程P3及び第二の一次シール工程P6は、上記の一次シール工程S3と同様に、可食性フィルムが大きくは熱収縮しない程度の低い温度で行うことができ、第一の一次シール工程P3及び第二の一次シール工程P6におけるシールは、一次シール工程S3のシールと同様に、完全には溶着させない仮シールとすることができる。
【0043】
加えて、本実施形態のフィルムパック2では、第一被覆フィルム31は第一フィルム10より薄く、第二被覆フィルム32は第二フィルム20より薄いため、ローラー82による押圧力を小さくし、或いは、ローラー82を加熱する温度を低くすることにより、エネルギー消費を低減して、第一の一次シール工程P3及び第二の一次シール工程P6を行うことができる。
【0044】
その後、第一被覆フィルム31及び第二被覆フィルム32から、それぞれベースフィルムを剥離する。上記の工程を経て、第一フィルム10及び第一被覆フィルム31により形成された容器に内容物M1が封入された第一単層フィルムパック41が複数連設されたシート61と、第二フィルム20及び第二被覆フィルム32により形成された容器に内容物M2が封入された第二単層フィルムパック42が複数連設されたシート62が、それぞれ形成される。
【0045】
次に、シート61及びシート62の一方を成形型70から抜き、反転させて、図9に示すように、第一被覆フィルム31及び第二被覆フィルム32が当接するように両者を重ね合わせる。ここでは、シート61を成形型70から抜き出した場合を例示する。そして、上記の押圧型83を加熱し、第一周縁部12、第一被覆フィルム31、第二被覆フィルム32、及び、第二周縁部22を成形型70に対して押圧する二次シール工程P7を行う。これにより、第一周縁部12、第一被覆フィルム31、第二被覆フィルム32、及び、第二周縁部22が十分にヒートシールされてシール部が形成され、第一単層フィルムパック41と第二単層フィルムパック42が積層された構成であるフィルムパック2が複数連接されたシートが得られる。
【0046】
その後、切断工程P8で、図8と同様に、シール部において第一凹部11及び第二凹部21の外周を囲むように切断すれば、個々のフィルムパック2が得られる。
【0047】
以上のように、第一実施形態のフィルムパック1及び第二実施形態のフィルムパック2によれば、可食性フィルム製の容器となる第一フィルム10及び第二フィルム20に、それぞれ第一凹部11及び第二凹部21が設けられているため、平面的な袋状の容器に比べて、それぞれ十分な量の内容物M1,M2を充填することができる。
【0048】
また、フィルムパック1,2では、内容物M1が封入されている部分と内容物M2が封入されている部分とが上下に重畳しているため、フィルムパック1,2全体としての長さが短く、嵩張りにくい。
【0049】
更に、第二実施形態のフィルムパック2では、被覆フィルムが第一被覆フィルム31と第二被覆フィルム32との積層構造であるため、第一単層フィルムパック41及び第二単層フィルムパック42をそれぞれ形成してから、両者を重ね合わせてフィルムパック2を製造する製造方法Bを採用することが可能となる。これにより、内容物M1,M2の落下や飛散を防止して、容易にフィルムパック2を製造することができる。
【0050】
加えて、第二実施形態のフィルムパック2では、外部に現れず強度がさほど要求されない第一被覆フィルム31及び第二被覆フィルム32が、それぞれ第一フィルム10及び第二フィルム20より薄いため、フィルムパック2全体の厚さが薄く、より嵩張りにくいものとなっている。
【0051】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0052】
例えば、上記の実施形態では、平面視の形状(真上から見た形状)が円形のフィルムパック1,2を例示したが、フィルムパックの形状はこれに限定されず、例えば、平面視で楕円形、三角形、四角形、六角形、八角形など種々の形状とすることができる。
【符号の説明】
【0053】
1,2 フィルムパック
10 第一フィルム
11 第一凹部
12 第一周縁部
15 第一凹部の開口
20 第二フィルム
21 第二凹部
22 第二周縁部
25 第二凹部の開口
30 被覆フィルム
31 第一被覆フィルム
32 第二被覆フィルム
M1,M2 内容物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開2009−61108号公報
【特許文献2】国際公開第2009/125464号
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食性フィルムで袋状に形成された容器に薬剤や食品等の内容物が封入されたフィルムパックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、可食性フィルムで形成された袋状の容器に薬剤が封入された製剤包装体を提案している(特許文献1参照)。この製剤包装体100は、図11に示すように、可食性フィルム101を二重に重ね合わせ、外周縁に沿って溶着してシール部102を形成することにより袋状の容器とし、その内部の収容部104に中に薬剤105が封入されたものである。
【0003】
これによれば、可食性の容器ごと薬剤を服用することができるため、一回分の定量の薬剤をこぼすことなく確実に服用することができる。また、薬剤が粉末や細かな顆粒であっても、むせたり咳き込んだりするおそれが低減されると共に、薬剤の味や匂いを強く感じることなく服用することができる。加えて、可食性フィルムの容器に味付けや香り付けをすることも可能であるため、薬剤の味や匂いをマスキングし、より服用しやすくすることもできる。また、可食性フィルムの容器を小型化し、或いは唾液促進剤を含有させることにより、水なしで容易に服用することもできる。加えて、服用に先立ってオブラートで薬剤を包む場合とは異なり、手間を要さず服用したいときに直ちに定量の薬剤を服用することができるため、手軽であると共に携帯にも便利である。
【0004】
また、本出願人は、図12に示すように、内側に非水溶性層212が積層された水溶性の可食フィルム211で形成された袋状の容器に、水系液体Wが収容された液体収容部210と、可食性フィルム221で形成された袋状の容器に薬物Dが収容された薬物収容部220とが、隣接して配されている経口投与製剤200を提案している(特許文献2)。これによれば、口腔内の水分によって水溶性の可食フィルム211が溶解し液体収容部210が崩壊することによって、液体収容部210に保持されていた水系液体Wが口腔内に広がるため、水系液体Wの助けにより薬物収容部220を容易に服用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の技術を更に発展させたものであり、可食性フィルムで形成された容器に内容物が封入されたフィルムパックであって、内容物を二つの収容空間に分けて収容することができると共に、嵩張ることなく十分な量の内容物を収容することが可能なフィルムパック、の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるフィルムパックは、「凹状の第一凹部、及び、該第一凹部の開口の周縁から外側に向かって延設された第一周縁部を備える可食性の第一フィルムと、凹状の第二凹部、及び、該第二凹部の開口の周縁から外側に向かって延設された第二周縁部を備える可食性の第二フィルムと、前記第一凹部の開口及び前記第二凹部の開口を向かい合わせた状態の前記第一フィルムと前記第二フィルムとの間に位置し前記第一フィルムの前記第一凹部の開口を被覆し前記第一周縁部と溶着されていると共に、前記第二凹部の開口を被覆し前記第二周縁部と溶着されている可食性の被覆フィルムとを具備し、前記第一凹部と前記被覆フィルムとの間の内部空間、及び、前記第二凹部と前記被覆フィルムとの間の内部空間には、それぞれ内容物が封入されている」ものである。
【0007】
可食性の「第一フィルム」、「第二フィルム」及び「被覆フィルム」は、平滑な基面上に固定したベースフィルム上に、可食性のフィルム形成剤を含有する溶液または懸濁液を流延し、流延された溶液または懸濁液を乾燥させフィルム化することにより形成することができる。可食性のフィルム形成剤としては、水溶性、胃溶性、または腸溶性のフィルム形成剤を使用することができる。ここで、水溶性のフィルム形成剤としては、特に限定されないが、プルラン、ゼラチン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、水溶性ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、加工澱粉を例示することができる。また、胃溶性のフィルム形成剤としては、特に限定されないが、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーEを例示することができる。更に、腸溶性のフィルム形成剤としては、特に限定されないが、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートを例示することができる。
【0008】
なお、「第一フィルム」、「第二フィルム」及び「被覆フィルム」は、同一のフィルム形成剤により形成されたフィルムであっても、異なる種類のフィルム形成剤により形成されたフィルムであっても良い。また、「第一フィルム」、「第二フィルム」及び「被覆フィルム」は、それぞれ単一の種類のフィルム形成剤により形成されたものであっても、複数種類のフィルム形成剤を適宜配合して形成されたものであっても良い。
【0009】
ここで、本発明において「フィルム」とは、厚さ1μm〜500μmの薄片を指している。なお、「第一フィルム」、「第二フィルム」及び「被覆フィルム」の厚さは、同一であっても異なっていても良い。
【0010】
「内容物」としては、散剤(粉末剤)、顆粒剤、丸剤、錠剤、オイル剤、ペースト状剤、これらの内の複数を混合した薬剤を例示することができ、いわゆる西洋薬であっても生薬や生薬を組み合わせた漢方薬であっても良い。更に、本発明の「内容物」は、医薬品に限定されるものではなく、ビタミンやミネラル等の栄養補助成分を補うための食品であっても良い。加えて、本発明のフィルムパックは、可食性フィルムの容器ごと全体を経口摂取する用途に限らず、例えば、水溶性のフィルム形成剤を使用し、水や湯にフィルムパックを投入して可食性フィルムの容器を崩壊または溶解させ、内容物を飲食する用途も可能であり、その場合の内容物としては、粉茶、粉末コーヒー、粉乳、粉末ジュース、粉末スープ、砂糖などの調味料を含む種々の食品を選択可能である。
【0011】
第一フィルムに「第一凹部」を、第二フィルムに「第二凹部」を形成する方法としては、例えば、底面または側面に貫通孔が設けられた凹状の成形型の上に可食性フィルムを配し、貫通孔を介してエアを吸引することにより、成形型の形状に合わせて可食性フィルムを変形させる方法を挙げることができる。
【0012】
各可食性フィルム間の「溶着」は、例えば、加熱された金属板などでフィルムを押圧する熱板式のヒートシール、フィルムにヒーターを押し当てた状態で瞬間的に大電流を流してヒーターを発熱させるインパルス式のヒートシール、フィルムを加圧しながらホーンから超音波を照射する内部発熱式のヒートシールによって行うことができる。
【0013】
上記構成により、本発明では、第一フィルム及び第二フィルムにそれぞれ第一凹部及び第二凹部が設けられていることにより、二枚のフィルムを重ね合わせて三方シールまたは四方シールして形成された平面的な袋状の容器に比べて、内容物を充填し易く、且つ、十分な量の内容物を充填することが可能である。また、本発明のフィルムパックでは、第一凹部と第二凹部が被覆フィルムを介してそれぞれの開口を突き合わせるように溶着されているため、第一凹部と被覆フィルムとの間に内容物が封入されている部分と、第二凹部と被覆フィルムとの間に内容物が封入されている部分が上下に重畳している。これにより、二種類の内容物をそれぞれ封入している部分が隣接して配される場合と比べて、フィルムパック全体としての長さを小さくすることができ、可食性フィルムの容器ごと経口摂取する場合であっても口腔内で嵩張りにくいものとなる。
【0014】
そして、本発明のフィルムパックは、上記構成により種々の用途が考えられると共に、種々の機能を発揮する可能性を有する。例えば、第一フィルム及び第二フィルムを、体内での溶解速度が異なるフィルム形成剤で形成することにより、二種類の薬剤を同時に服用しながら、それぞれの薬剤の薬効が現れる時間をずらすことができる。また、例えば、第一フィルムを腸溶性とし、腸で作用させたい薬物を第一凹部と被覆フィルムとの間に封入すると共に、第二フィルムを水溶性とし、甘味剤や口当たりの良い食品を第二凹部と被覆フィルムとの間に封入したフィルムパックとすることができる。これにより、口腔内で第二フィルムが溶解または崩壊してゼリー状となり、腸溶性の第二フィルムが嚥下し易いものとなることに加え、甘味剤や口当たりの良い食品の助けによって、更に服用し易いものとなる。
【0015】
本発明にかかるフィルムパックは、上記構成において、「前記被覆フィルムは、前記第一凹部の開口を被覆し、前記第一周縁部と溶着されている第一被覆フィルム、及び、前記第二凹部の開口を被覆し、前記第二周縁部と溶着されている第二被覆フィルムの積層構造であり、前記第一被覆フィルム及び前記第二被覆フィルムは、前記第一周縁部及び第二周縁部に挟み込まれている部分で溶着されており、前記第一凹部の開口を被覆している部分及び前記第二凹部の開口を被覆している部分は溶着されていない」ものとすることができる。
【0016】
上記構成により、第一凹部と第一被覆フィルムとの間の内部空間に内容物が封入され、第二凹部と第二被覆フィルムとの間の内部空間に内容物が封入される。
【0017】
フィルムパックが上記構成であることにより、次のような方法で製造することが可能となる。まず、第一凹部に内容物を充填した上で、第一被覆フィルムで被覆し第一周縁部と溶着して単層のフィルムパックを作製する。一方で、第二凹部に内容物を充填した上で、第二被覆フィルムで被覆し第二周縁部と溶着して単層のフィルムパックを作製する。その後、二つの単層のフィルムパックを、第一被覆フィルムと第二被覆フィルムとが当接するように重ね合わせ、この状態で第一周縁部及び第二周縁部を相対的に押圧しながらヒートシールする。すなわち、上記構成ゆえに、内容物が単層のフィルムパックに封入された状態としてから、二つの単層のフィルムパックを重ね合わせて一つのフィルムパックとする製造方法が可能となるため、積層構造のフィルムパックを容易に製造することができる。
【0018】
本発明にかかるフィルムパックは、上記構成において、「前記第一被覆フィルムの厚さは前記第一フィルムの厚さより小さいと共に、前記第二被覆フィルムの厚さは前記第二フィルムの厚さより小さい」ものとすることができる。
【0019】
本発明のフィルムパックにおいて、第一フィルム及び第二フィルムは外部の環境と接する構成であるため、内容物を保護できるだけの強度が要求される。これに対し、第一被覆フィルム及び第二被覆フィルムは外部に現れない構成であるため、さほど強度は要求されない。従って、第一被覆フィルムを第一フィルムより薄く、且つ、第二被覆フィルムを第二フィルムより薄くすることにより、フィルムパック全体の厚さを薄くすることができ、可食性フィルムの容器ごと経口摂取する場合であっても、口腔内での違和感を低減することができる。
【0020】
また、第一被覆フィルム及び第二被覆フィルムが薄いことにより、上記のように、第一被覆フィルムを第一周縁部と溶着し、第二被覆フィルムを第二周縁部と溶着する際に、溶着のための押圧力が小さくて済み、ヒートシールのための温度も低くて済む。従って、上記構成ゆえに、エネルギー消費を低減して効率良く、積層構造のフィルムパックを製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の効果として、可食性フィルムで形成された容器に内容物が封入されたフィルムパックであって、内容物を二つの収容空間に分けて収容することができると共に、嵩張ることなく十分な量の内容物を収容することが可能なフィルムパックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)本発明の第一実施形態のフィルムパックの斜視図、(b)第一実施形態のフィルムパックの縦断面図、及び(c)第二実施形態のフィルムパックの縦断面図である。
【図2】図1のフィルムパックの製造に使用される成形型の斜視図である。
【図3】第一成形工程S1を説明する図である。
【図4】一次シール工程S3を説明する図である。
【図5】単層フィルムパックを説明する図である。
【図6】二次シール工程S6を説明する図である。
【図7】図6に引き続き、二次シール工程S6を説明する図である。
【図8】二次シール工程S6を経て形成されたシートを、第一フィルム側から見た平面図である。
【図9】二次シール工程P7を説明する図である。
【図10】(a)製造方法Aの工程図であり、(b)製造方法Bの工程図である。
【図11】特許文献1の製剤包装体の(a)平面図、及び(b)縦断面図である。
【図12】特許文献2の経口投与製剤の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第一実施形態であるフィルムパック1の構成について、図1(a),(b)を用いて説明する。フィルムパック1は、凹状の第一凹部11、及び、第一凹部11の開口15の周縁から外側に向かって延設された第一周縁部12を備える可食性の第一フィルム10と、凹状の第二凹部21、及び、第二凹部21の開口25の周縁から外側に向かって延設された第二周縁部22を備える可食性の第二フィルム20と、第一凹部11の開口15及び第二凹部21の開口25を向かい合わせた状態の第一フィルム10と第二フィルム20との間に位置し、開口15を被覆し第一周縁部12と溶着されていると共に、開口25を被覆し第二周縁部22と溶着されている可食性の被覆フィルム30とを具備し、第一凹部11と被覆フィルム30との間の内部空間、及び、第二凹部21と被覆フィルム30との間の内部空間には、それぞれ内容物M1,M2が封入されている。
【0024】
より具体的には、第一凹部11は高さの小さい有底円筒状で、開口15の周縁からは帽子の庇のように円環状の第一周縁部12が延設されている。同じく、第二凹部21は高さの小さい有底円筒状で、開口25の周縁から円環状の第二周縁部22が延設されており、第二凹部21は第一凹部11と形状及び大きさがほぼ等しく、第一周縁部12は第二周縁部22と形状及び大きさがほぼ等しい設定とされている。そして、被覆フィルム30は膨出した部分のない平面状で、一方の面で第一凹部11の開口15を被覆し、他方の面で第二凹部21の開口25を被覆している。
【0025】
上記構成のフィルムパック1は、次のような製造方法Aで製造することができる。すなわち、製造方法Aは、図10(a)に示すように、第一フィルム10に第一凹部11を形成する第一成形工程S1と、第一凹部11に内容物M1を充填する第一充填工程S2と、内容物が充填された第一凹部11を被覆フィルム30で被覆し第一周縁部12と溶着し、単層のフィルムパック40(以下、「単層フィルムパック40」と称する)を作製する一次シール工程S3と、第二フィルム20に第二凹部21を形成する第二成形工程S4と、第二凹部21に内容物M2を充填する第二充填工程S5と、単層フィルムパック40を反転させて第二フィルム20に被せ、第一周縁部12、被覆フィルム30、及び第二周縁部22を溶着する二次シール工程S6と、第一周縁部12、被覆フィルム30、及び第二周縁部22の溶着により形成されたシール部51で第一凹部11及び第二凹部21を囲むように切断する切断工程S7とを具備している。
【0026】
より詳細に説明すると、第一成形工程S1及び第二成形工程S4では、第一凹部11及び第二凹部21の成形のために、図2及び図3に示すように、複数の凹部71が設けられている成形型70を使用することができる。ここで、凹部71の形状は成形すべき第一凹部11及び第二凹部21の形状に応じて設定され、本実施形態では真上から見た形状が円形の凹部71が設けられている。また、凹部71の大きさは、例えば、直径10mm〜50mm、深さ1mm〜10mmとすれば、経口摂取できる小型のフィルムパック1の製造に好適である。なお、図3は、構成を明確に示すため簡略化して示したものであり、成形型70における凹部71の数、凹部71おける孔部72の数、凹部71の大きさに対する孔部72の大きさ等は、図示したものに限定されない。
【0027】
それぞれの凹部71の底面には、小径の貫通する孔部72が分散して多数穿設されている。また、成形型70の内部には、成形型70の一端で開口する開口部76を有する中空部74が形成されており、中空部74の内部空間Sと複数の孔部72とは連通している。かかる構成により、開口部76を介して図示しないポンプ等により内部空間Sを脱気すれば、複数の孔部72を介して外部から内部空間Sへエアが吸引される。
【0028】
従って、第一成形工程S1では、ベースフィルム(図示しない)に積層された状態で巻かれている可食性の第一フィルム10のロールから、ベースフィルムを剥離しつつ第一フィルム10を連続的に引き出し、第一フィルム10を成形型70の上に送る(図3(a)参照)。そして、孔部72を介して内部空間Sを脱気すれば、第一フィルム10が成形型70に吸着され、凹部71に沿った形状に変形して凹状の第一凹部11が形成される(図3(b)参照)。このとき、凹部71を除く成形型70の上面に当接する凸型81bを底面に備えた押圧体81によって、第一フィルム10を成形型70に向けて押圧すれば、凹部71の周縁部及びその近傍において、成形型70の上面と凸型81bとの間に第一フィルム10が挟み込まれるため、凹部71に沿って第一フィルム10が変形する際に、凹部71の周縁部及びその近傍において、すなわち、第一フィルム10の第一周縁部12において、シワが発生することが有効に抑制される。また、第二成形工程S4は、第二フィルム20を用いて、第一成形工程S1と同様に行う。
【0029】
なお、第一成形工程S1及び第二成形工程S4において、第一フィルム10または第二フィルム20が溶融しない程度に軟化する温度に成形型70を加熱すれば、フィルム10,20が凹部71に沿って変形し易く、第一周縁部12及び第二周縁部22におけるシワの発生を更に抑制して成形することができ、後のシール工程における溶着がより確実なものとなるため、好適である。
【0030】
第一凹部11が形成された第一フィルム10は、成形型70ごと第一充填工程S2に送られ、第一凹部11の上方から内容物M1が供給される。そして、内容物M1が第一凹部11に充填された第一フィルム10は、一次シール工程S3に送られる。一方、第二凹部21が形成された第二フィルム20は、成形型70ごと第二充填工程S5に送られ、第二凹部21の上方から内容物M2が供給される。
【0031】
一次シール工程S3は、図4に示すように、ベースフィルム38に積層された被覆フィルム30を、被覆フィルム30側が第一フィルム10に当接するように供給しつつ、加熱された円柱状のローラー82をベースフィルム38を介して被覆フィルム30上で転動させることにより行うことができる。これにより、第一フィルム10と被覆フィルム30はローラー82によって線状に押圧され、直線状の押圧点の集合はローラー82の転動に伴いローラー82の進行方向に移動する。そして、ローラー82を移動させるのと同時に、被覆フィルム30を第一フィルム10に被せていくと、被覆フィルム30と第一フィルム10との間の空気は、一点鎖線の矢印で図示したように、ローラー82の進行方向に徐々に押し出されるように逃がされる。そのため、被覆フィルム30を第一フィルム10の上に一気に被せる場合とは異なり、空気の圧力によって内容物M1が舞い上がったり飛散したりするおそれを防止して、内容物M1が充填された第一凹部11を被覆フィルム30で被覆することができる。なお、図4においては、成形型70における孔部72、中空部74、開口部76等の構成を省略して図示しており、以下の図でも同様である。
【0032】
そして、ローラー82の押圧力と熱によって、第一フィルム10の第一周縁部12は被覆フィルム30と溶着される。ここで、後述のように二次シール工程S6において、十分にヒートシールを行うため、一次シール工程S3は可食性のフィルムが大きくは熱収縮しない程度の低い温度で行うことができる。また、一次シール工程S3においては、第一周縁部12と被覆フィルム30とを完全に溶着させることまでは要求されず、内容物M1が外部に漏れ出たり、後述のように単層フィルムパック40を反転させた際に内容物M1が落下したりしない程度のシール状態で足る。そのため、一次シール工程S3におけるシールは、第一周縁部12と被覆フィルム30が部分的に溶着された状態、あるいは、第一フィルム10及び被覆フィルム30が開口15の周縁に沿って接着しているものの、完全な溶着には至らない弱い接着力で接着している状態の“仮シール”とすることができる。
【0033】
その後、被覆フィルム30からベースフィルム38を剥離すると、図5に示すように、第一フィルム10の第一凹部11が被覆フィルム30で被覆され、被覆フィルム30と第一周縁部12が溶着され、内容物M1が封入された単層フィルムパック40が、成形型70における凹部71の数に応じて複数連設されたシート60が形成される。そこで、このシート60を成形型70から抜き、次に二次シール工程S6を行う。
【0034】
二次シール工程S6では、図6に示すように、シート60を反転させ、第二凹部21に内容物M2が充填された状態の第二フィルム20の上に重ね合わせる。このとき、第一凹部11の開口15と第二凹部21の開口25とが被覆フィルム30を挟んで向かい合うように、すなわち、第一フィルム10の第一周縁部12と第二フィルム20の第二周縁部22とが被覆フィルム30を介して重畳するように配置する。
【0035】
そして、第二凹部21には接触することなく、被覆フィルム30を挟んだ状態の第二周縁部22及び第一周縁部12を成形型70に対して押圧可能な断面コ字状の押圧型83を加熱しながら、成形型70に対して押圧する。これにより、第一周縁部11、被覆フィルム30、及び第二周縁部22が十分に溶着されてシール部51が形成され、上記構成のフィルムパック1が複数連設されたシート69が形成される。ここで、一般的に可食性フィルムは、プラスチックフィルムに比べてヒートシールされにくいため、二次シール工程S6を複数回行うこともできる。二次シール工程S6を複数回行うことにより、溶着のために加熱し押圧する総時間を増加させることができる。或いは、複数回行われる二次シール工程S6で、最初の工程は可食性フィルムに熱収縮の生じにくい低い温度でヒートシールを行い、後の工程ほど加熱温度を徐々に高めることにより、熱収縮に伴うシワの発生を抑制しつつ十分に溶着することができる。
【0036】
その後、切断工程S7で、シート69のシール部51において第一凹部11及び第二凹部21の外周を囲む切断線51bで切断すれば(図7,図8参照)、個々のフィルムパック1が得られる。なお、切断に先立ち、開口部76を介して成形型70に冷却用の気体を導入することにより、或いは、成形型70或いは押圧型83に冷却盤を押し当てることによりシール部51を冷却すれば、切断刃へのフィルム10,20の付着やフィルム10,20の変形を抑制することができ、好適である。
【0037】
次に、第二実施形態のフィルムパック2の構成について、図1(c)を用いて説明する。ここで、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。第一実施形態との相違は、被覆フィルムが第一被覆フィルム31と第二被覆フィルム32との積層構造である点である。そして、第一被覆フィルム31は第一凹部11の開口15を被覆し、第一周縁部12と溶着されおり、第二被覆フィルム32は第二凹部21の開口25を被覆し、第二周縁部22と溶着されている。そして、第一被覆フィルム31及び第二被覆フィルム32は、第一周縁部12及び第二周縁部22に挟み込まれている部分で溶着されており、開口15を被覆している部分及び25開口を被覆している部分では溶着されていない。
【0038】
加えて、第二実施形態では、第一被覆フィルム31の厚さは第一フィルム10の厚さより小さいと共に、第二被覆フィルム32の厚さは第二フィルム20の厚さより小さい設定とされている。
【0039】
上記構成のフィルムパック2は、次のような製造方法Bで製造することができる。すなわち、製造方法Bは、図10(b)に示すように、第一フィルム10に第一凹部11を形成する第一成形工程P1と、第一凹部11に内容物M1を充填する第一充填工程P2と、内容物M1が充填された第一凹部11を第一被覆フィルム31で被覆し第一周縁部12と溶着し、単層のフィルムパック41(以下、「第一単層フィルムパック41」と称する)を作製する第一の一次シール工程P3と、第二フィルム20に第二凹部21を形成する第二成形工程P4と、第二凹部21に内容物M2を充填する第二充填工程P5と、内容物M2が充填された第二凹部21を第二被覆フィルム32で被覆し第二周縁部22と溶着し、単層のフィルムパック42(以下、「第二単層フィルムパック42」と称する)を作製する第二の一次シール工程P6と、単層フィルムパック41及び単層フィルムパック42の一方を反転させて重ね合わせ、第一周縁部12、第一被覆フィルム31、第二被覆フィルム32、及び第二周縁部22を溶着する二次シール工程P7と、第一周縁部12、第一被覆フィルム31、第二被覆フィルム32、及び第二周縁部22の溶着により形成されたシール部52で第一凹部11及び第二凹部21を囲むように切断する切断工程P8とを具備している。
【0040】
より具体的には、第一成形工程P1及び第二成形工程P4は、それぞれ上記の第一成形工程S1及び第二成形工程S4と同様であり、第一充填工程P2及び第二充填工程P5は、それぞれ上記の第一充填工程S2及び第二充填工程S5と同様である。第一の一次シール工程P3では、第一凹部11を第一被覆フィルム31で被覆し第一周縁部12と溶着する。一方、第二の一次シール工程P6では、第二凹部21を第二被覆フィルム32で被覆し第二周縁部22と溶着する。
【0041】
ここで、第一の一次シール工程P3及び第二の一次シール工程P6は、上記の一次シール工程S3と同様に、加熱されたローラー82を用いて行うことができる。このようにすることにより、第一凹部11を第一被覆フィルム31で被覆する際も、第二凹部21を第二被覆フィルム32で被覆する際も、ローラー82の使用によって空気を逃がしながら被覆フィルム31,32を徐々に被せることができるため、内容物M1,M2が何れも粉体や細かな顆粒であっても、その舞い上がりや飛散を防止して封入することができる。
【0042】
また、製造方法Bにおいても、二次シール工程P7で十分にヒートシールを行うため、第一の一次シール工程P3及び第二の一次シール工程P6は、上記の一次シール工程S3と同様に、可食性フィルムが大きくは熱収縮しない程度の低い温度で行うことができ、第一の一次シール工程P3及び第二の一次シール工程P6におけるシールは、一次シール工程S3のシールと同様に、完全には溶着させない仮シールとすることができる。
【0043】
加えて、本実施形態のフィルムパック2では、第一被覆フィルム31は第一フィルム10より薄く、第二被覆フィルム32は第二フィルム20より薄いため、ローラー82による押圧力を小さくし、或いは、ローラー82を加熱する温度を低くすることにより、エネルギー消費を低減して、第一の一次シール工程P3及び第二の一次シール工程P6を行うことができる。
【0044】
その後、第一被覆フィルム31及び第二被覆フィルム32から、それぞれベースフィルムを剥離する。上記の工程を経て、第一フィルム10及び第一被覆フィルム31により形成された容器に内容物M1が封入された第一単層フィルムパック41が複数連設されたシート61と、第二フィルム20及び第二被覆フィルム32により形成された容器に内容物M2が封入された第二単層フィルムパック42が複数連設されたシート62が、それぞれ形成される。
【0045】
次に、シート61及びシート62の一方を成形型70から抜き、反転させて、図9に示すように、第一被覆フィルム31及び第二被覆フィルム32が当接するように両者を重ね合わせる。ここでは、シート61を成形型70から抜き出した場合を例示する。そして、上記の押圧型83を加熱し、第一周縁部12、第一被覆フィルム31、第二被覆フィルム32、及び、第二周縁部22を成形型70に対して押圧する二次シール工程P7を行う。これにより、第一周縁部12、第一被覆フィルム31、第二被覆フィルム32、及び、第二周縁部22が十分にヒートシールされてシール部が形成され、第一単層フィルムパック41と第二単層フィルムパック42が積層された構成であるフィルムパック2が複数連接されたシートが得られる。
【0046】
その後、切断工程P8で、図8と同様に、シール部において第一凹部11及び第二凹部21の外周を囲むように切断すれば、個々のフィルムパック2が得られる。
【0047】
以上のように、第一実施形態のフィルムパック1及び第二実施形態のフィルムパック2によれば、可食性フィルム製の容器となる第一フィルム10及び第二フィルム20に、それぞれ第一凹部11及び第二凹部21が設けられているため、平面的な袋状の容器に比べて、それぞれ十分な量の内容物M1,M2を充填することができる。
【0048】
また、フィルムパック1,2では、内容物M1が封入されている部分と内容物M2が封入されている部分とが上下に重畳しているため、フィルムパック1,2全体としての長さが短く、嵩張りにくい。
【0049】
更に、第二実施形態のフィルムパック2では、被覆フィルムが第一被覆フィルム31と第二被覆フィルム32との積層構造であるため、第一単層フィルムパック41及び第二単層フィルムパック42をそれぞれ形成してから、両者を重ね合わせてフィルムパック2を製造する製造方法Bを採用することが可能となる。これにより、内容物M1,M2の落下や飛散を防止して、容易にフィルムパック2を製造することができる。
【0050】
加えて、第二実施形態のフィルムパック2では、外部に現れず強度がさほど要求されない第一被覆フィルム31及び第二被覆フィルム32が、それぞれ第一フィルム10及び第二フィルム20より薄いため、フィルムパック2全体の厚さが薄く、より嵩張りにくいものとなっている。
【0051】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0052】
例えば、上記の実施形態では、平面視の形状(真上から見た形状)が円形のフィルムパック1,2を例示したが、フィルムパックの形状はこれに限定されず、例えば、平面視で楕円形、三角形、四角形、六角形、八角形など種々の形状とすることができる。
【符号の説明】
【0053】
1,2 フィルムパック
10 第一フィルム
11 第一凹部
12 第一周縁部
15 第一凹部の開口
20 第二フィルム
21 第二凹部
22 第二周縁部
25 第二凹部の開口
30 被覆フィルム
31 第一被覆フィルム
32 第二被覆フィルム
M1,M2 内容物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開2009−61108号公報
【特許文献2】国際公開第2009/125464号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状の第一凹部、及び、該第一凹部の開口の周縁から外側に向かって延設された第一周縁部を備える可食性の第一フィルムと、
凹状の第二凹部、及び、該第二凹部の開口の周縁から外側に向かって延設された第二周縁部を備える可食性の第二フィルムと、
前記第一凹部の開口及び前記第二凹部の開口を向かい合わせた状態の前記第一フィルムと前記第二フィルムとの間に位置し前記第一フィルムの前記第一凹部の開口を被覆し前記第一周縁部と溶着されていると共に、前記第二凹部の開口を被覆し前記第二周縁部と溶着されている可食性の被覆フィルムとを具備し、
前記第一凹部と前記被覆フィルムとの間の内部空間、及び、前記第二凹部と前記被覆フィルムとの間の内部空間には、それぞれ内容物が封入されている
ことを特徴とするフィルムパック。
【請求項2】
前記被覆フィルムは、前記第一凹部の開口を被覆し、前記第一周縁部と溶着されている第一被覆フィルム、及び、前記第二凹部の開口を被覆し、前記第二周縁部と溶着されている第二被覆フィルムの積層構造であり、
前記第一被覆フィルム及び前記第二被覆フィルムは、前記第一周縁部及び第二周縁部に挟み込まれている部分で溶着されており、前記第一凹部の開口を被覆している部分及び前記第二凹部の開口を被覆している部分は溶着されていない
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルムパック。
【請求項3】
前記第一被覆フィルムの厚さは前記第一フィルムの厚さより小さいと共に、前記第二被覆フィルムの厚さは前記第二フィルムの厚さより小さい
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルムパック。
【請求項1】
凹状の第一凹部、及び、該第一凹部の開口の周縁から外側に向かって延設された第一周縁部を備える可食性の第一フィルムと、
凹状の第二凹部、及び、該第二凹部の開口の周縁から外側に向かって延設された第二周縁部を備える可食性の第二フィルムと、
前記第一凹部の開口及び前記第二凹部の開口を向かい合わせた状態の前記第一フィルムと前記第二フィルムとの間に位置し前記第一フィルムの前記第一凹部の開口を被覆し前記第一周縁部と溶着されていると共に、前記第二凹部の開口を被覆し前記第二周縁部と溶着されている可食性の被覆フィルムとを具備し、
前記第一凹部と前記被覆フィルムとの間の内部空間、及び、前記第二凹部と前記被覆フィルムとの間の内部空間には、それぞれ内容物が封入されている
ことを特徴とするフィルムパック。
【請求項2】
前記被覆フィルムは、前記第一凹部の開口を被覆し、前記第一周縁部と溶着されている第一被覆フィルム、及び、前記第二凹部の開口を被覆し、前記第二周縁部と溶着されている第二被覆フィルムの積層構造であり、
前記第一被覆フィルム及び前記第二被覆フィルムは、前記第一周縁部及び第二周縁部に挟み込まれている部分で溶着されており、前記第一凹部の開口を被覆している部分及び前記第二凹部の開口を被覆している部分は溶着されていない
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルムパック。
【請求項3】
前記第一被覆フィルムの厚さは前記第一フィルムの厚さより小さいと共に、前記第二被覆フィルムの厚さは前記第二フィルムの厚さより小さい
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルムパック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−143153(P2011−143153A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7972(P2010−7972)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(591091043)株式会社ツキオカ (38)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(591091043)株式会社ツキオカ (38)
【Fターム(参考)】
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