説明

フィルム剥離装置

【課題】表示パネルを反転させることなく簡易な構成で表示パネルに貼り付けられたフィルムを剥離することが可能なフィルム剥離装置を提供すること。
【解決手段】表示パネルの上面を吸着して表示パネルを保持する吸着パッドが設けられたパネル吸着台と、そのパネル吸着台に吸着保持された表示パネルの下側を手押し操作により移動する手押し台車とを備え、手押し台車には、パネル吸着台の吸着パッドに上面が吸着保持された表示パネルの下面に貼り付けられたフィルムの一端を引き剥がしたフィルム剥がし部を保持するフィルム保持手段が設けられており、フィルム保持手段にフィルム剥がし部を保持させながら手押し台車を移動させることで表示パネルから徐々にフィルムを剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルなどの表示パネルに貼り付けられた保護フィルム等を剥離する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータやテレビなどの家電製品の表示部として、液晶表示パネルが広く用いられている。液晶表示パネルは、一般には薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板とカラーフィルタ(CF)基板とからなる一対の基板が所定の間隔を置いて平行に対向配置され、両基板間に液晶が充填された構成をなしている。TFTアレイ基板には複数の画素電極がマトリクス状に形成され、CF基板にはほぼ全面に共通電極が形成されており、これら電極間に印加する電圧を変化させることで、液晶を配向制御することができるようになっている。
【0003】
このような液晶表示パネルを備える液晶表示装置では、一般的に液晶表示パネルの背面側にバックライトユニットが配置されている。このバックライトユニットは、光源として冷陰極管などの蛍光ランプを備え、この蛍光ランプから発せられる光の特性を調整して液晶表示パネルの背面側に光を照射する装置である。照射された光は、液晶表示パネルを透過することにより、液晶表示パネルの前面側に画像が可視状態に表示されるようになっている。
【0004】
図17(a)は、従来一般的に用いられている液晶表示装置の構造を概略的に示した分解図である。図示されるように、液晶表示装置50は、ベゼル51、液晶表示パネル52、およびバックライトユニット53を備える。ベゼル51は液晶表示パネル52の額縁となる部材で、液晶表示パネル52の周縁を保持する。
【0005】
バックライトユニット53は、パネルシャーシ54、光学シート55〜57、拡散板58、蛍光ランプ59、反射シート60、バックライトシャーシ61から構成される。パネルシャーシ54は、額縁形状を有しており、光学シート55〜57および拡散板58を積層させて状態でバックライトシャーシ61に固定するための部材で、上面には液晶表示パネル52が載置されるようになっている。
【0006】
バックライトシャーシ61は浅底の箱形状を有したもので、内部に蛍光ランプ59が収容される。バックライトシャーシ61の内部に列設された複数本の蛍光ランプ59からの光は、反射シート60で反射された光と共に、拡散板58、光学シート55〜57、液晶表示パネル52を透過して観察者側に視認される。このとき拡散板58および光学シート55〜57は、蛍光ランプ59から液晶表示パネル52に入射する光の特性を調整する。
【0007】
通常、液晶表示パネル52の上面と下面には偏光シート(偏光板)52a,52aが接着剤により貼り付けられている。図17(b)に示されるようにバックライトユニット53に組み付けられる前の液晶表示パネル52上面と下面の偏光シート52a,52aの表面には偏光シート52a,52aに傷が付かないように保護フィルム52b,52bが貼り付けられており、図17(a)に示されるようなバックライトユニット53に組み付ける際には、この偏光シート52a,52aから保護フィルム52b,52bが剥離されるようになっている。
【0008】
このような偏光シート52a,52aからの保護フィルム52b,52bの剥離は、通常、作業者の手で行われている。例えば、作業台の上に液晶表示パネル52を置いて上面の保護フィルム52bを剥離し、次に下面の保護フィルム52bを剥離するために液晶表示パネル52を作業台から持ち上げ反転して再度作業台の上に置いて、下面の保護フィルム52bを剥離することが行われている。
【0009】
このように作業者の手によって保護フィルム52b,52bが剥離されるのであるが、近年、表示画面の大きさが100インチを超える大型のテレビなどに用いられる液晶表示パネルが登場してきており、上面および下面の保護フィルムを剥離するためにこのような大型の液晶表示パネルを作業者が手で反転することは非常に困難であることから、例えば下記特許文献1に記載されるような自動で液晶表示パネルの上面および下面の保護フィルムを剥離するフィルム剥離装置を使うことが検討されている。
【0010】
【特許文献1】特開2000−233867号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した大型の液晶表示パネルの製造数は一日に10枚余りと少なく、保護フィルムを剥離するためだけに特許文献1に記載されるような大掛かりな構成のフィルム剥離装置、つまり高価なフィルム剥離装置を採用するのはコスト的に問題があった。
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、表示パネルを反転させることなく簡易な構成で表示パネルに貼り付けられたフィルムを剥離することが可能なフィルム剥離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係るフィルム剥離装置は、表示パネルの上面を吸着して該表示パネルを保持する吸着パッドが設けられたパネル吸着台と、そのパネル吸着台に吸着保持された前記表示パネルの下側を手押し操作により移動する手押し台車とを備え、前記手押し台車には、前記パネル吸着台の吸着パッドに上面が吸着保持された前記表示パネルの下面に貼り付けられたフィルムの一端を引き剥がしたフィルム剥がし部を保持するフィルム保持手段が設けられ、該フィルム保持手段に前記フィルム剥がし部を保持させながら前記手押し台車を移動させることで前記表示パネルから徐々に前記フィルムを剥離することを要旨とするものである。
【0014】
上記構成を有するフィルム剥離装置によれば、パネル吸着台に対して手押し台車を作業者による手押しにより移動させるだけで表示パネルの下面に貼り付けられたフィルムを剥離することができるので、従来、作業者が手で行っていた表示パネルの下面に貼り付けられた保護フィルムを剥離するために表示パネルを反転させる作業を無くすことができる上に、パネル吸着台と手押し台車だけという簡易な構成なので、装置にかかるコストも安くすることが可能である。
【0015】
この場合、前記手押し台車には、前記表示パネルが載置されるパネル載置部と、該パネル載置部を上下に昇降動させるパネル昇降手段が設けられている構成にすれば、パネル吸着台に表示パネルを吸着保持させることが行いやすくなる。
【0016】
また、前記手押し台車のパネル載置部には、載置される前記表示パネルが所定の位置に位置決めされるパネル位置決め部が設けられると共に、前記パネル吸着台には、前記手押し台車を前記吸着パッドに対して所定の位置に位置決めする台車位置決め手段が設けられている構成にすれば、フィルムが剥離された後の表示パネルを再度パネル載置部に載置する際の位置を、フィルムが剥離される前の表示パネルがパネル載置部に載置されていた位置と同じにすることができる。これにより、例えば、フィルムが剥離される前の表示パネルを載置した手押し台車と、フィルムが剥離された後の表示パネルを載置する手押し台車とが異なる場合でも、後者の手押し台車のパネル載置部のパネル位置決め部に精度良く表示パネルを載置することが可能になる。
【0017】
また、例えば、表示パネルを収納したパネル収納トレイを手押し台車のパネル載置部に載置してこのパネル収納トレイごと表示パネルを上昇させてパネル吸着台の吸着パッドに表示パネルの上面を吸着保持させ下面のフィルムを剥離した後、空のパネル収納トレイの代わりに予め組み立てられたバックライトユニットをパネル載置部に載置して上昇させ、フィルムが剥離された表示パネルをバックライトユニットに移載することなども可能である。そして、その状態のまま表示パネルの上面のフィルムを剥離してからベゼルを装着することでバックライトユニットへの表示パネルの組み付けを行うことができる。
【0018】
更に、前記手押し台車は床に敷かれたレールに沿って移動可能である構成にすれば、手押し台車の前進や後退の際の移動が行いやすい。また、前記手押し台車の移動方向の前後両側に手押しハンドルが設けられている構成にすれば、パネル吸着台に対する手押し台車の手押しによる移動や引っ張りによる移動が行いやすくなる。そして、前記フィルム保持手段が前記フィルム剥がし部を巻き取るローラである構成にすれば、簡便にフィルムの一端を引き剥がしたフィルム剥がし部を保持することができる。
【発明の効果】
【0019】
上記構成を有するフィルム剥離装置によれば、従来、作業者が手で行っていた表示パネルの下面に貼り付けられた保護フィルム等を剥離するために表示パネルを反転させる作業を無くすことができる上に、パネル吸着台と手押し台車だけという簡易な構成なので、装置にかかるコストも安くすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の一実施形態に係るフィルム剥離装置の実施の形態ついて、図面を参照して詳細に説明する。図1はフィルム剥離装置の概略構成を示した上面図、図2はその側面図である。
【0021】
図示されるように、フィルム剥離装置1は、上下に昇降移動可能なパネル載置部19が設けられた手押し台車10と、液晶表示パネル52を水平状態で吸着保持することが可能なパネル吸着台30とを備えている。
【0022】
手押し台車10の矩形状の基台11の下面には、前輪12および後輪13が設けられている。この前輪12および後輪13は、直進用の固定式で、床に敷かれた走行レール5を転がることが可能になっている。
【0023】
また基台11の前後には、作業者が手押しまたは引っ張ることができる手押しハンドル14,15が立設されている。
【0024】
基台11の四隅角部の上面には支柱16が立設されており、これら支柱16の上端に矩形状のフレーム18が固定されている。また、基台11の左右両側の中央には、四角柱の形状を有した位置決め用支柱17が立設されており、後述するパネル吸着台30が備える台車位置決め手段39によって、パネル吸着台30に対する手押し台車10の前後左右方向の位置決めを行う際に用いられるようになっている。
【0025】
フレーム18の上側には、長方形のパネル載置部19がラックアンドピニオン機構(回転運動を直線運動に変換する機構)を有するパネル昇降手段21によって上下に移動可能に設けられている。
【0026】
パネル昇降手段21は、パネル載置部19に上端が固定されたラックギヤ21aと、このラックギヤ21aを上下に移動させるギヤボックス21bおよびシャフト21cを備えている。
【0027】
この場合、フレーム18の上側には複数のギヤボックス21bが固定されており、前後方向に延びるシャフト21cがこのギヤボックス21bに回転自在に軸支されている。また、上下方向に延びるラックギヤ21aがギヤボックス21b内で、シャフト21cと直交するように組み付けられている。ギヤボックス21b内には、シャフト21cに固定された図示しないピニオンギヤが内蔵されており、このピニオンギヤに噛み合うラックギヤ21aが、ピニオンギヤの回転によりギヤボックス21bから上下方向に直線的に移動することが可能になっている。
【0028】
シャフト21cの後端には手回しハンドル21dが固定されており、この手回しハンドル21dを作業者が手動によって回してラックギヤ21aを上下に移動させることで、パネル載置部19の昇降移動がなされるようになっている。
【0029】
パネル載置部19の上面の四隅角部近傍には、L字形状のパネル位置決め部20が突出して設けられており、このパネル位置決め部20によって液晶表示パネル52を収納したパネル収納トレイ70が位置決めされて載置されるようになっている。
【0030】
図4に示されるように、パネル収納トレイ70は、液晶表示パネル52を持ち運びする際に用いられる部材で、収納される液晶表示パネル20の外形よりも大きい枠状に形成された枠部70aと、この枠部70aによって囲まれた内側の領域に格子状に配設されたパネル支持部70bとを有している。
【0031】
また、手押し台車10のフレーム18の前端には、図9および図10にも示されるように液晶表示パネル52から保護フィルム52bの一端が引き剥がされたフィルム剥がし部52cを保持するフィルム保持手段22が設けられている。この場合、フィルム保持手段22は巻き取りローラ22aを備えており、この巻き取りローラ22aの回転軸は、左右の支持ブラケット22b,22bの上方で回転自在に軸支されている。また、支持ブラケット22bの下方には手回しハンドル22cが設けられており、この手回しハンドル22cの回転軸と巻き取りローラ22aの回転軸が図示しないベルトで連結されて、手回しハンドル22cを作業者が手動により回すことで、巻き取りローラ22aを回転させることが可能になっている。
【0032】
パネル吸着台30は、液晶表示パネル52の上面を吸着して水平状態に保持する。パネル吸着台30は、図1および図2に示されるように手押し台車10が下側を潜って前後に移動することができるような高さと幅を有している。
【0033】
パネル吸着台30の基部31の下面には、前輪32および後輪33が旋回自在に取り付けられている。また、前輪32および後輪33の近傍にはネジジャッキ34,34により昇降させることができる接地板35,35が設けられている。接地板35をネジジャッキ34により降下させて適当な圧力で床に接地させることで、パネル吸着台30を所定の位置に固定することができるようになっている。
【0034】
基部31の上面には支柱36が立設されており、これら支柱36の上端に矩形状のフレーム37が固定されている。このフレーム37の内側には前後左右方向に複数の吸着パッド38が垂下して設けられている。各吸着パッド38には、図示しない真空ポンプが真空バルブを介して接続されており、液晶表示パネル52の上面を吸着して保持することが可能になっている。
【0035】
また、基部31の上面には、図3に示されるように、パネル吸着台30に対して手押し台車10を所定の位置に位置決めする台車位置決め手段39,39が手押し台車10を左右両側から挟み込むように配設されている。
【0036】
この台車位置決め手段39は、手押し台車10の基台11に立設された位置決め用支柱17に外側から当接して、手押し台車10の左右方向の位置決めをする第1位置決め板39aを有している。第1位置決め板39aは第1シリンダ39bの伸縮するシリンダロッドの先端に取り付けられている。この場合、第1シリンダ39bは基部31から所定の高さになるように固定台40上に固定されている。
【0037】
また、第1シリンダ39bのシリンダロッド先端に固定された第1位置決め板39aの一端側には、第2シリンダ39eが固定されている。この第2シリンダ39eの伸縮するシリンダロッドの先端には手押し台車10の位置決め用支柱17に前方側から当接する第2位置決め板39dが取り付けられており、第1位置決め板39aの後端から内側に突設されたストッパ板39cとの間に、手押し台車10の位置決め用支柱17を前後で挟み込むことができるようになっている。
【0038】
これらの位置決め板39a,39dおよびストッパ板39cによって、手押し台車10はパネル吸着台30、つまり吸着パッド38に対する前後左右方向の位置決めがなされるようになっている。尚、各シリンダ39b,39eには、図示しない圧空ポンプがシリンダバルブを介して接続されており、各シリンダ39b,39eのシリンダロッドの伸縮動作が行われるようになっている。
【0039】
また、パネル吸着台30のフレーム37の前側には、操作パネル41が設けられており、操作パネル41の各種スイッチ41aを作業者が操作することで、上述した吸着パッド38の吸着動作やシリンダ39b,39eのシリンダロッドの伸縮動作を行わせることが可能になっている。
【0040】
次に、このような構成のフィルム剥離装置1を用いて、液晶表示パネル52に貼り付けられた保護フィルム52bを剥離する手順を図2、図3、図5〜16を用いて説明する。
【0041】
先ず、図2に示されるように、手押し台車10のパネル載置部19に液晶表示パネル52が収納されたパネル収納トレイ70を載置する。このとき、パネル載置部19の上面に設けられた位置決め部20でパネル収納トレイ70の前後方向および左右方向の位置決めがされる。
【0042】
次に、この状態の手押し台車10を、図5に示されるように手押し操作により前進させてパネル吸着台30のフレーム37の下側の中央位置まで移動させる。そして、図3に示されるように、上述したパネル吸着台30に設けられた台車位置決め手段39によって、手押し台車10の前後左右方向の位置決めを行う。
【0043】
次に、図6に示されるようにパネル昇降手段21に設けられた手回しハンドル21dを手動により回してシャフト21cを回転させてラックギヤ21aを上昇させることによりパネル載置部19を上昇させて、パネル吸着台30に設けられた吸着パッド38に液晶表示パネル52を接近させる。そして、液晶表示パネル52の上面を吸着パッド38の吸着面に当接させた状態で、パネル吸着台30の操作パネル41のスイッチ41aを操作して、吸着パッド38に液晶表示パネル52を吸着保持させる。その後、図7に示されるように手回しハンドル21を今度は反対に回してパネル載置部19を下降させて、位置決め手段39による手押し台車10の位置決めを解除する。
【0044】
そして、図8に示されるように手押しハンドル15を引っ張って手押し台車10を後退させて、パネル吸着台30から離れた位置に手押し台車10を移動させる。
【0045】
次に、図9に示されるように空のパネル収納トレイ70を手押し台車10のパネル載置部19から降ろして、かわりに予め組み立てられたバックライトユニット53をパネル載置部19に載置する。このとき、パネル載置部19のパネル位置決め部20でバックライトユニット53の前後左右方向の位置決めを行う。また、液晶表示パネル52の下側の偏光シート52a表面に貼り付けられた保護フィルム52bの後端を所定長さ引き剥がしたフィルム引き剥がし部52cを形成しておく。
【0046】
そして、手押し台車10を前進させて、フィルム保持手段22の巻き取りローラ22aが保護フィルム52bのフィルム引き剥がし部52cの下側に位置するように移動させる。そして、図10に示されるように、フィルム引き剥がし部52cを手回しハンドル22cの操作により巻き取りローラ22aに数回巻き取らせて、フィルム引き剥がし部52cを巻き取りローラ22aに保持させる。
【0047】
その後、図11に示されるように再度手押し台車10をパネル吸着台30の中央よりも前寄りになる位置にまで前進させることで、保護フィルム52bが液晶表示パネル52から剥離される。剥離された保護フィルム52bは巻き取りローラ22aから除去する。
【0048】
そして、図12に示されるように手押し台車10をパネル吸着台30の中央位置になるようにやや後退させて、パネル吸着台30の台車位置決め手段39により手押し台車39を再度位置決めする。
【0049】
次に、図13に示されるように手回しハンドル21dを手動により回してパネル載置部19を上昇させて、吸着保持された液晶表示パネル52にバックライトユニット53のパネルシャーシ54を接近させる。
【0050】
そして、バックライトユニット53のパネルシャーシ54が液晶表示パネル52に当接する位置まで接近したら、操作パネル41のスイッチ41aを操作して、吸着パッド38による液晶表示パネル52の吸着保持を解除して、バックライトユニット53のパネルシャーシ54に液晶表示パネル52を載置させる。
【0051】
その後、図14に示されるように手回しハンドル21dを反対に回してパネル載置部19を下降させ、パネル吸着台30の台車位置決め手段39による手押し台車10の位置決めを解除する。
【0052】
次に、図15に示されるように手押しハンドル15を引っ張って手押し台車10を後退させて、パネル吸着台30から離れた位置に手押し台車10を移動させる。その後、図16に示されるように液晶表示パネル52の上側の偏光シート52aに貼り付けられた保護フィルム52bを作業者が手で剥離してから、ベゼル51を装着することで、バックライトユニット53に液晶表示パネル52が組み付けられる。
【0053】
以上説明したフィルム剥離装置1によれば、パネル吸着台30に対して手押し台車10を作業者による手押しにより移動させるだけで液晶表示パネル52の下面に貼り付けられた保護フィルム52bを剥離することができるので、従来、作業者が手で行っていた液晶表示パネル52の下面に貼り付けられた保護フィルム52bを剥離するために液晶表示パネル52を反転させる作業を無くすことができる上に、パネル吸着台30と手押し台車10だけという簡易な構成なので、装置にかかるコストも安くすることが可能である。
【0054】
この場合、手押し台車10には、液晶表示パネル52が載置されるパネル載置部19と、そのパネル載置部19を上下に昇降動させるパネル昇降手段21が設けられている構成なので、パネル吸着台30に設けられた吸着パッド38に液晶表示パネル52を吸着保持させることが行いやすい。
【0055】
また、手押し台車10のパネル載置部19には、載置される液晶表示パネル52が所定の位置に位置決めされるパネル位置決め部20が設けられると共に、パネル吸着台30には、手押し台車10を吸着パッド38に対して所定の位置に位置決めする台車位置決め手段39が設けられている構成なので、保護フィルム52bが剥離された後の液晶表示パネル52を再度パネル載置部19に載置する際の位置を、保護フィルム52bが剥離される前の液晶表示パネル52がパネル載置部19に載置されていた位置と同じにすることができる。
【0056】
したがって、上述したように液晶表示パネル52を収納したパネル収納トレイ70を手押し台車10のパネル載置部19に載置してこのパネル収納トレイ70ごと液晶表示パネル52を上昇させてパネル吸着台30の吸着パッド38に液晶表示パネル52の上面を吸着保持させ下面の保護フィルム52bを剥離した後、空のパネル収納トレイ70の代わりに予め組み立てられたバックライトユニット53をパネル載置部19に載置して上昇させ、下面の保護フィルム52bが剥離された液晶表示パネル52をバックライトユニット53に移載することが可能である。そして、その状態のまま液晶表示パネル52の上面の保護フィルム52bを剥離してからベゼル51を装着することでバックライトユニット53への液晶表示パネル52の組み付けを行うことができる。
【0057】
更に、手押し台車10は床に敷かれた走行レール5に沿って移動可能である構成なので、手押し台車10の前進や後退の際の移動が行いやすい。また、手押し台車10の移動方向の前後両側に手押しハンドル14,15が設けられている構成なので、パネル吸着台30に対する手押し台車10の手押しによる移動や引っ張りによる移動が行いやすい。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、パネル吸着台30に設けられた台車位置決め手段39は、手押し台車10の支柱17に当接して手押し台車10を位置決めする構成であるが、手押し台車10の四隅角部に設けられた支柱16に当接して位置決めする構成にしても良く、種々なる態様で手押し台車10のパネル吸着台30、つまり吸着パッド38に対する位置決めを行うことが可能で、上述した台車位置決め手段39のような構成には限定されない。
【0059】
また、パネル載置部19の上面に設けられたパネル位置決め部20は、パネル収納トレイ70とバックライトユニット53の双方に共通の位置決め部として用いた構成について説明したが、パネル収納トレイ70とバックライトユニット53のそれぞれに専用のパネル位置決め部20を設けた構成にしても良く、上述した実施の形態には限定されない。
【0060】
更に、保護フィルム52aの一端を引き剥がしたフィルム引き剥がし部52cを数回巻き取る巻き取りローラ22aにより、フィルム引き剥がし部52cを保持するフィルム保持手段22の構成について説明したが、フィルム引き剥がし部52cを挟み持つことで保持する構成でも良く、上述した実施の形態には限定されない。
【0061】
また、保護フィルム52aの一端を引き剥がしたフィルム引き剥がし部52cを巻き取りローラ22aに数回巻き取ることで、フィルム引き剥がし部52cを保持する構成について説明したが、回転しないように固定された巻き取りローラ22aにフィルム引き剥がし部52cの端部をテープ等によって貼り付けて保持する構成でも良く、上述した実施の形態には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係るフィルム剥離装置の概略構成を示した上面図である。
【図2】図1に示したフィルム剥離装置を側方から見た側面図である。
【図3】図1に示したフィルム剥離装置が備えるパネル吸着台に設けられた台車位置決め手段が手押し台車を位置決めした状態を示した図である。
【図4】液晶表示パネルを収容するパネル収容トレイの概略構成を示した図である。
【図5】図2に示したフィルム剥離装置が液晶表示パネルに貼り付けられた保護フィルムを剥離する際の最初の手順を示した図である。
【図6】図5に示したフィルム剥離装置の次の手順を示した図である。
【図7】図6に示したフィルム剥離装置の次の手順を示した図である。
【図8】図7に示したフィルム剥離装置の次の手順を示した図である。
【図9】図8に示したフィルム剥離装置の次の手順を示した図である。
【図10】図9に示したフィルム剥離装置の次の手順を示した図である。
【図11】図10に示したフィルム剥離装置の次の手順を示した図である。
【図12】図11に示したフィルム剥離装置の次の手順を示した図である。
【図13】図12に示したフィルム剥離装置の次の手順を示した図である。
【図14】図13に示したフィルム剥離装置の次の手順を示した図である。
【図15】図14に示したフィルム剥離装置の次の手順を示した図である。
【図16】図15に示したフィルム剥離装置の次の手順を示した図である。
【図17】(a)従来用いられてきた液晶表示装置の概略構成を示した分解図、(b)は液晶表示パネルに貼り付けられた保護フィルムを剥離する手順を示した図である。
【符号の説明】
【0063】
1 フィルム剥離装置
5 走行レール
10 手押し台車
12 前輪
13 後輪
14,15 手押しハンドル
16 支柱
17 位置決め用支柱
19 パネル載置部
20 パネル位置決め部
21 パネル昇降手段
22 フィルム保持手段
22a 巻き取りローラ
30 パネル吸着台
38 吸着パッド
39 台車位置決め手段
52 液晶表示パネル
52a 偏光シート
52b 保護フィルム
52c フィルム剥がし部
53 バックライトユニット
70 パネル収納トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルの上面を吸着して該表示パネルを保持する吸着パッドが設けられたパネル吸着台と、そのパネル吸着台に吸着保持された前記表示パネルの下側を手押し操作により移動する手押し台車とを備え、前記手押し台車には、前記パネル吸着台の吸着パッドに上面が吸着保持された前記表示パネルの下面に貼り付けられたフィルムの一端を引き剥がしたフィルム剥がし部を保持するフィルム保持手段が設けられ、該フィルム保持手段に前記フィルム剥がし部を保持させながら前記手押し台車を移動させることで前記表示パネルから徐々に前記フィルムを剥離することを特徴とするフィルム剥離装置。
【請求項2】
前記手押し台車には、前記表示パネルが載置されるパネル載置部と、該パネル載置部を上下に昇降動させるパネル昇降手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフィルム剥離装置。
【請求項3】
前記手押し台車のパネル載置部には、載置される前記表示パネルが所定の位置に位置決めされるパネル位置決め部が設けられると共に、前記パネル吸着台には、前記手押し台車を前記吸着パッドに対して所定の位置に位置決めする台車位置決め手段が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のフィルム剥離装置。
【請求項4】
前記手押し台車は床に敷かれたレールに沿って移動可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルム剥離装置。
【請求項5】
前記手押し台車の移動方向の前後両側に手押しハンドルが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のフィルム剥離装置。
【請求項6】
前記フィルム保持手段が前記フィルム剥がし部を巻き取るローラであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルム剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−143711(P2010−143711A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322280(P2008−322280)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】