説明

フィルム吸着装置

【課題】フィルムの剥がれに強く、安定した吸着ができるフィルム吸着装置の提供。
【解決手段】フィルムAを真空吸着する吸着面10aを有する第1の吸着部10と、負圧室25内部を通風する空気流れを形成する空気導入口26及び空気導出口27を有すると共に、フィルムAが剥がれた時にできる隙間を流れる空気のエジェクタ効果による負圧によって、第1の吸着部10による第1の吸着領域とは異なる第2の吸着領域におけるフィルムAを吸引する開口部22を有する第2の吸着部20と、を有するフィルム吸着装置1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム吸着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルム吸着装置として、特許文献1には、薄いシート状フィルムを吸着するための吸着パッドが開示されている。この吸着パッドは、カップ体の2重の入れ子構造を有し、内側のカップ体には複数の小孔が形成され、内側のカップ体と外側のカップ体との間にはスリットが形成されている。小孔及びスリットは、それぞれ吸引流路の異なる分割した真空溜まりと連通しており、一方でリークが発生しても、他方でフィルムの脱落を防止できる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2763261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、従来技術では、フィルムが何らかの原因(例えばフィルムの自重垂れ、搬送時の衝撃や振動等)で剥がれるとリークが発生し、小孔あるいはスリットから外気が内部に引き込まれて真空破壊され、負圧の急激な低下によりフィルムを吸着できなくなることから、吸着部を2つ設け、一方の吸着を他方の吸着で保証する構成となっている。
しかしながら、当該他方の吸着部も真空溜まりにより真空吸着する構成であるため、同様に、リークによって真空破壊されると、負圧の急激な低下によりフィルムを吸着できなくなる虞がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、フィルムの剥がれに強く、安定した吸着ができるフィルム吸着装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、フィルムを真空吸着する吸着面を有する第1の吸着部と、負圧室内部を通風する空気流れを形成する空気導入口及び空気導出口を有すると共に、上記フィルムが剥がれた時にできる隙間を流れる空気のエジェクタ効果による負圧によって、上記第1の吸着部による第1の吸着領域とは異なる第2の吸着領域における上記フィルムを吸引する開口部を有する第2の吸着部と、を有するフィルム吸着装置を採用する。
この構成を採用することによって、本発明は、第2の吸着部において空気流れのエジェクタ効果による負圧によってフィルムを吸引することによって、第1の吸着部におけるフィルムの剥がれを抑制する。すなわち、第2の吸着部の負圧室内部は、通常は空気導入口の圧力損失分だけの負圧により吸着を維持し、一端フィルムが剥がれて第2の吸着部に隙間ができると、その隙間を流れる空気のエジェクタ効果によってフィルムを再度引き寄せる。この引き寄せる力は、空気流れの風量(流量)に応じて大きくなる。したがって、フィルムが剥がれ、開口部との間に微小隙間(第2の空気導入口)が形成されても、空気導入口の大きさに比べて十分に小さければ、空気導入口から空気導出口への空気流れの風量の変化も小さく、引き寄せ直すことができ、フィルムが多少剥がれても保持もしくはもとの状態に復帰させることができる。
【0007】
また、本発明においては、上記開口部は、上記第1の吸着部の周りに形成されているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、第1の吸着部の周りに開口部を形成することで、フィルムの剥がれを第2の吸着部で阻止し、第1の吸着部に到らないようにすることができる。
【0008】
また、本発明においては、上記吸着面は、多孔質体から形成されているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、無数の微細な孔部によって吸着面が形成されるので、吸着したフィルムの引き込み変形等による窪みやシワよれを抑制できる。
【0009】
また、本発明においては、上記負圧室内部の負圧の大きさに応じて上記空気導入口の開口度を調節する調節装置を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、負圧室内部の負圧の上限は空気導入口の開口面積によって規定されるため、当該負圧の上限に到るまで空気導入口を絞り、開口度を調節することで、当該負圧に到るまでの立ち上り時間を短縮することができる。
【0010】
また、本発明においては、上記空気流れを形成するファンモーターを有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、ファンモーターの駆動により負圧が発生して、フィルムを吸引するので、真空度を小さくでき、開口部にフィルムが引き込まれてしまうことを抑制することができる。
【0011】
また、本発明においては、上記負圧室内部の圧力を計測する圧力計と、上記圧力計の計測結果に基づいて上記ファンモーターの回転数を制御する制御装置と、を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、負圧室内部の圧力を計測し、その計測結果に基づいてファンモーターの回転数を制御することで、フィルムの剥がれの有無に基づいた動的な吸引力の制御が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィルムを真空吸着する吸着面を有する第1の吸着部と、負圧室内部を通風する空気流れを形成する空気導入口及び空気導出口を有すると共に、上記フィルムが剥がれた時にできる隙間を流れる空気のエジェクタ効果による負圧によって、上記第1の吸着部による第1の吸着領域とは異なる第2の吸着領域における上記フィルムを吸引する開口部を有する第2の吸着部と、を有するフィルム吸着装置を採用することによって、第2の吸着部においてフィルムが剥がれた時にできる隙間を流れる空気流れのエジェクタ効果による引き寄せ力によってフィルムを吸引することで、フィルムが多少剥がれても保持もしくはもとの状態に復帰させることができ、第1の吸着部におけるフィルムの剥がれ及び脱落を抑制することができる。
したがって、本発明では、フィルムの剥がれに強く、安定した吸着ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態におけるフィルム吸着装置の断面構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるフィルム吸着装置の底面図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるフィルム吸着装置の平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるフィルム吸着装置の断面構成図である。
【図5】本発明の第2実施形態における第1の吸着部と第2の吸着部との配置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態におけるフィルム吸着装置1の断面構成図である。図2は、本発明の第1実施形態におけるフィルム吸着装置1の底面図である。図3は、本発明の第1実施形態におけるフィルム吸着装置1の平面図である。
フィルム吸着装置1は、フィルムAを真空吸着する第1の吸着部10と、フィルムAを負圧吸引する第2の吸着部20と、を有する。フィルムAとしては、正極、負極、セパレータ、用紙等を用いることができる。
【0016】
第1の吸着部10は、フィルムAを真空吸着する吸着面10aを有する多孔質体11と、多孔質体11を保持する内側カップ体12と、吸着面10aに吸着力を作用させるポンプ13とを有する。
多孔質体11は、内部に無数の微細な孔部を備え、端面に平坦な吸着面10aを有する円柱形状を呈する。多孔質体11の種類は、多孔質セラミックス、多孔質プラスチック、多孔質金属等の材料から適宜選択されて構成されている。
【0017】
内側カップ体12は、多孔質体11の側部を囲う略円筒形状の保持部14を有する。保持部14は、多孔質体11を保持すると共に吸着面10a以外の側部を気密に閉塞し、また、吸着面10aと逆側の面側に負圧室15を形成する構成となっている。
保持部14の頂部中央には、ポンプ13と負圧室15との間を連通させる吸引流路16が接続されている。ポンプ13は、負圧室15内に真空溜まりを形成することで、吸着面10aに吸着力を作用させる構成となっている。
【0018】
第2の吸着部20は、内側カップ体12の外側を囲う外側カップ体21と、内側カップ体12と外側カップ体21との間に形成された開口部22に吸引力を作用させるファン(ファンモーター)23とを有する。
外側カップ体21は、内側カップ体12の径よりも大きな径を有する(図2参照)。また、外側カップ体21及び内側カップ体12の軸中心は一致するように配置されている。したがって、本実施形態の開口部22は、第1の吸着部10の周りを環状に囲うリング状に形成されている。
【0019】
外側カップ体21の開口端21aは、吸着面10aと面一の内側カップ体12の開口端12aよりも吸引方向奥側(図1において紙面上方側)に配置されている。また、外側カップ体21の開口端21aの周りには、環状に弾性リップ24が設けられている。弾性リップ24は、柔軟な弾性変形が可能な樹脂材(例えばゴム材)からなり、シールとして機能する構成となっている。弾性リップ24の先端は、吸引方向において内側カップ体12の開口端12aと略同一の位置に配置されている。
【0020】
第2の吸着部20は、外側カップ体21の内面と内側カップ体12の外面とで形成された負圧室25を有する。外側カップ体21には、負圧室25内部を通風する空気流れ(図1中矢印で示す)を形成する空気導入口26及び空気導出口27が形成されている。空気導入口26は、外側カップ体21の側部に設けられている。また、空気導出口27は、開口部22と逆側の外側カップ体21の頂部に設けられている。
【0021】
空気導入口26は、外側カップ体21の側部に着脱自在に螺合するオリフィス28に形成されている。負圧室25内部の負圧の上限は、空気導入口26の開口面積によって規定されるため、フィルムAの種類、厚み、剛性等に応じてオリフィス28を取り替えれば、吸引による開口部22へのフィルムAの引き込みが生じない適切な負圧を作用させることができる。この空気導入口26を備えるオリフィス28は、外側カップ体21の側部の周方向に等間隔で複数設けられている(図3参照)。
【0022】
空気導出口27には、ファン23が設けられている。ファン23は、空気導入口26から空気導出口27へ向かう空気流れを形成する。ファン23は、所定の風量(流量)で空気流れを形成することで、フィルムが剥がれた時にできる弾性リップ24との間の隙間を流れる空気のエジェクタ効果による負圧によって、開口部22に吸引力を作用させる構成となっている。この空気導出口27は、外側カップ体21の頂部の吸引流路16が設けられる位置を中心として、その周りに等間隔で複数設けられている(図3参照)。これにより、負圧室25内部の空気流れの偏りを低減し、負圧を安定化、平均化する構成となっている。
【0023】
続いて、上記構成を有するフィルム吸着装置1の一連の吸着動作について説明する。なお、本実施形態のフィルム吸着装置1は、不図示の制御部を備えている。そして、特に断りが無い限り、当該制御部が、主体者として以下の動作を制御する。
先ず、不図示の移動機構(例えばロボットハンド等)により、フィルム吸着装置1全体を吸着するべきフィルムAに近づける。そして、フィルムAに対し、第1の吸着部10の吸着面10a及び弾性リップの先端を面一で接触させた状態する。
【0024】
次に、ポンプ13を駆動させ、負圧室15に真空溜まりを形成し、第1の吸着部10における真空吸着を行う。具体的に、ポンプ13の駆動により、吸引流路16、負圧室15及び多孔質体11内部の微細孔を介して空気が引かれ、吸着面10aに吸着力が作用する。これによって、吸着面10aに接触しているフィルムAは、吸着面10aに真空吸着される。
【0025】
また、同時に、ファン23を駆動させ、負圧室25に負圧を形成し、弾性リップ24の先端がフィルムAに接触し続けることができる程度の弱い力で、開口部22を介して吸引する。この時、吸着面10aと外側カップ体21の開口端21aには高さの差が設けられているので、外側カップ体21の開口端21aにフィルムAに接触することがなく、当該接触による折り曲げ痕の発生を抑制できる。
【0026】
また、外側カップ体21には、空気導入口26が形成されているので、負圧室25内部の負圧が所定値よりも大きくならないように規制できる。このため、空気導入口26が形成されていない場合のように、負圧室25内部の負圧が大きくなりすぎて、フィルムAが開口部22に引き込まれ、大きく変形してシワよれが発生するといったことを回避することができる。
【0027】
このように、第1の吸着部10では、強い力でフィルムAの全体の荷重を支え、一方の第2の吸着部20では、弱い力でフィルムAの吸着面10aからの剥がれを抑制する構成となっている。すなわち、第1の吸着部10では、無数の微細な孔部によって吸着面10aが形成されるので、吸着したフィルムAの引き込み変形による窪みやシワよれ等を抑制できるが、反面、無数の微細孔を有するために、フィルムAの引き剥がしにより容易に真空破壊され易い。このため、第2の吸着部20によって、第1の吸着部10による吸着領域(第1の吸着領域)と異なる吸着領域(第2の吸着領域)におけるフィルムAを、開口部22を介して吸引してフィルムAの剥がれを抑制する構成となっている。
【0028】
第2の吸着部20においては、フィルムが剥がれた時にできる弾性リップ24との間の隙間を流れる空気のエジェクタ効果による負圧によってフィルムAを吸引することができる。すなわち、第2の吸着部20の負圧室25内部は、通常は空気導入口の圧力損失分だけの負圧により吸着を維持し、一端フィルムが剥がれて吸着部に隙間ができると、その隙間を流れる空気のエジェクタ効果によってフィルムを再度引き寄せる。この引き寄せ力は、空気流れの風量(流量)に応じて大きくなる。したがって、フィルムAが剥がれて(図1において2点差線で示す)、開口部22との間に微小隙間(第2の空気導入口)が形成されても、風量の大きさを規定する空気導入口26の大きさに比べて十分に小さければ、空気導入口26から空気導出口27への空気流れの風量の変化も小さく、負圧を維持できる。このため、フィルムAが剥がれ、その端部が多少バタついても、保持状態を維持でき、もしくは、剥がれ前のもとの状態に復帰させることができる。
【0029】
また、当該負圧を作用させる開口部22は、第1の吸着部の周りに形成されているので、フィルムAの剥がれを、剥がれに強い第2の吸着部20で阻止し、第1の吸着部10に到らないようにすることができる。
これにより、多孔質体11の弱点である引き剥がしが自重垂れ等によって発生し難くなり、安定してフィルムAを吸着することができる。
【0030】
したがって、上述の本実施形態によれば、フィルムAを真空吸着する吸着面10aを有する第1の吸着部10と、負圧室25内部を通風する空気流れを形成する空気導入口26及び空気導出口27を有すると共に、フィルムAが剥がれた時にできる隙間を流れる空気のエジェクタ効果による負圧によって、第1の吸着部10による第1の吸着領域とは異なる第2の吸着領域におけるフィルムAを吸引する開口部22を有する第2の吸着部20と、を有するフィルム吸着装置1を採用することによって、第2の吸着部20においてフィルムAが剥がれた時にできる隙間を流れる空気のエジェクタ効果による引き寄せ力によってフィルムAを吸引することで、フィルムAが多少剥がれても保持もしくはもとの状態に復帰させることができ、第1の吸着部10におけるフィルムAの剥がれ及び脱落を抑制することができる。
したがって、本実施形態では、フィルムAの剥がれに強く、安定した吸着ができるフィルム吸着装置1が得られる。
【0031】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図4は、本発明の第2実施形態におけるフィルム吸着装置1の断面構成図である。図5は、本発明の第2実施形態における第1の吸着部10と第2の吸着部20との配置を概略的に示す図である。
【0032】
第2実施形態のフィルム吸着装置1は、上述した第1実施形態よりも大きなフィルムAを吸着する構成となっており、複数の第1の吸着部10と、それらを囲う外側カップ体21を備える第2の吸着部20とを有する。第2の吸着部20の外側カップ体21は、略長方形状に開口し(図5参照)、第1の吸着部10は、当該略長方形状の中心と四隅、及び、四隅の中間にそれぞれ間隔をあけて配置されている。
【0033】
第2実施形態では、オリフィス28の代わりに、負圧室25内部の負圧の大きさに応じて空気導入口26の開口度を調節する逃がし弁(調節装置)29が設けられている。逃がし弁29は、外側カップ体21の内面にその一端部が固定され、当該一端部を基点として負圧室25内部の負圧の大きさに応じて弾性変形し、他端部が揺動自在な構成となっている。
【0034】
逃がし弁29は、負圧室25内部が大気圧のときに空気導入口26を閉塞しており(図1において2点差線で示す)、負圧室25内部が所定の負圧に達したときに空気導入口26を開放する構成となっている。この構成によれば、負圧室25内部の負圧が、所定の負圧に達するまで、空気導入口26が絞られるので、当該負圧に到るまでの立ち上り時間を短縮することができる。また、当該負圧に到った後は、逃がし弁29が機能し、空気導入口26を開放するので、当該負圧より大きな負圧が発生することを抑制することができる。
【0035】
また、第2実施形態では、各第1の吸着部10の吸引流路16が吸引流路17に接続されている。当該吸引流路17には、ポンプ13が接続されており、各第1の吸着部10における吸着力を一のポンプ13で管理する構成となっている。
また、第2実施形態では、空気導出口27が外側カップ体21の頂部中央に1つ形成されている。当該空気導出口27には、ファン23が設けられており、第2の吸着部20における吸引力を一のファン23で管理する構成となっている。
【0036】
第2実施形態のフィルム吸着装置1は、ポンプ13及びファン23の駆動を制御する制御装置30と、圧力計31,32とを有する。圧力計31は、吸引流路17内の圧力を計測すると共にその計測結果を制御装置30に出力する構成となっている。また、圧力計32は、負圧室25内の圧力を計測すると共にその計測結果を制御装置30に出力する構成となっている。制御装置30は、圧力計31,32の計測結果に基づいて、ポンプ13の回転数、ファン23の回転数を制御する構成となっている。
【0037】
具体的に、制御装置30は、圧力計31の計測結果から、フィルムAが各第1の吸着部10に確実に吸着されたか否かを検出しつつポンプ13の駆動を制御する構成となっている。各第1の吸着部10は、吸引流路17に接続されているので、圧力計31の計測結果に基づいてポンプ13を駆動させることで、各第1の吸着部10における吸着力のバランスを容易にとることが可能となる。このため、フィルムAの安定した真空吸着が可能となる。
【0038】
また、フィルムAを吸着した後に、外側カップ体21に設けられた圧力計32の値が所定の閾値より下がった(大気圧に近くなった)時は、制御装置30は、弾性リップ24のシールが破壊され、フィルムAの剥がれが生じたと判断し、ファン23の回転数を上げて風量を大きくし、第2の吸着部20における吸引力を強くする制御を行う。この制御により、風量を増加させて、フィルムAを引き寄せ、各第1の吸着部10においてフィルムAの吸着が可能な状態を維持することができる。
【0039】
このように、負圧室25内部の圧力を計測し、その計測結果に基づいてファン23の回転数を制御することで、フィルムAの剥がれの有無に基づいた動的な吸引力の制御が可能となるため、上述した第2実施形態によれば、フィルムAの剥がれにより強く、より安定した吸着が可能となる。
【0040】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0041】
例えば、第2の吸着部20においては、負圧が小さい(真空度が低い)ので、外側カップ体21を板金程度の薄型構造としても良い。これにより、装置全体の軽量化を図ることができる。また、この場合は、弾性リップ24の取り付けは接着剤程度でよい。
また、例えば、外側カップ体21と弾性リップ24とを一体の柔軟構造としてもよい。
【0042】
また、第2実施形態において、逃がし弁29は、空気導入口26を塞ぐシール部のみ弾性体とし、圧力調節は、バネ機構を用いて調節する構成としてもよい。
【0043】
また、第2実施形態において、制御装置30は、ファン23の回転数を強弱の2値で変化させるだけでなく、圧力計32の値によって連続的に変化させる構成としてもよい。
【0044】
また、第2実施形態において、第1の吸着部10は2個以上あればよいが、フィルムAのサイズと剛性等によって、更に多く使用してもよいし、その配置を変更してもよい。但し、第1の吸着部10による吸着領域(第1の吸着領域)とフィルムAの端縁との間に、第2の吸着部20の吸着領域(第2の吸着領域)を存在させることが、フィルムAの剥がれ防止の観点から好ましい。
【符号の説明】
【0045】
1…フィルム吸着装置、A…フィルム、10…第1の吸着部、10a…吸着面、11…多孔質体、20…第2の吸着部、22…開口部、23…ファン(ファンモーター)、25…負圧室、26…空気導入口、27…空気導出口、29…逃がし弁(調節装置)、30…制御装置、32…圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを真空吸着する吸着面を有する第1の吸着部と、
負圧室内部を通風する空気流れを形成する空気導入口及び空気導出口を有すると共に、前記フィルムが剥がれた時にできる隙間を流れる空気のエジェクタ効果による負圧によって、前記第1の吸着部による第1の吸着領域とは異なる第2の吸着領域における前記フィルムを吸引する開口部を有する第2の吸着部と、を有することを特徴とするフィルム吸着装置。
【請求項2】
前記開口部は、前記第1の吸着部の周りに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルム吸着装置。
【請求項3】
前記吸着面は、多孔質体から形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム吸着装置。
【請求項4】
前記負圧室内部の負圧の大きさに応じて前記空気導入口の開口度を調節する調節装置を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム吸着装置。
【請求項5】
前記空気流れを形成するファンモーターを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム吸着装置。
【請求項6】
前記負圧室内部の圧力を計測する圧力計と、
前記圧力計の計測結果に基づいて前記ファンモーターの回転数を制御する制御装置と、を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルム吸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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