説明

フィルム成形装置におけるフィルムの肉厚検出装置

【課題】チューブ状のフィルムを成形するフィルム成形装置において、肉厚検出手段と揺止め手段とを一体化させて、フィルムを傷付けることなく、フィルムの肉厚を正確に測定できるように構成する。
【解決手段】フィルム5の外周面から適正範囲内の距離Sを介した位置に、フィルム5の外周面に沿って旋回自在な非接触式厚みセンサ14を設ける一方、非接触式厚みセンサ14を挟んでフィルム5の上流側および下流側の少なくともいずれか一方に揺止め機構15を配設して、揺止め機構15が非接触式厚みセンサ14と一体に旋回移動するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出し機から押出される溶融樹脂を、チューブ状のフィルムに成形するフィルム成形装置におけるフィルムの肉厚検出装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、押出し機から押出される溶融樹脂を、チューブ状のフィルムに成形する方法が知られているが、このようなものにおいて、成形されるフィルムは、肉厚が一定になることが求められる。そこで、従来、所謂インフレーション法によりフィルムを成形する場合において、成形されたチューブ状のフィルムの外周面に、接触式厚みセンサの検出部を接触させて、該フィルムの外周面上を滑らせながら、該フィルムの肉厚を測定する構成としたものが知られている。このものでは、接触式厚みセンサの検出部をフィルムの外周面に接触させて滑らせながら肉厚を測定するため、該フィルムが流れる際に生じる揺れが安定し、フィルムの肉厚を正確に測定できるが、接触式厚みセンサの検出部をフィルムの外周面に接触させていることにより、該フィルムの外周面に傷が付くおそれがあるという問題があった。
これに対し、フィルムの肉厚を測定する手段として、チューブ状に押し出されたフィルム内の中心位置に設けた投光器と、フィルムの外周面に所定距離を介して回転自在に設置された受光器とで非接触式の厚みセンサを構成し、該厚みセンサの受光器が設置されている位置の上流側と下流側とのそれぞれの所定の位置に、円筒状のローラ等にて構成された揺止め装置が固定され、該揺止め装置にてフィルムの揺れを抑えながら、投光器から発せられた光を受光器にて受けて、フィルムの肉厚を測定するように構成したものが提唱されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−48105号公報(第2頁、第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、固定された揺止め装置にてフィルムの揺れを抑えながら、投光器から発せられた光を受光器にて受けてフィルムの肉厚を測定するものでは、フィルムの外周面に傷がつくという問題はないが、揺れ止め装置が固定されているため、受光器の回転位置によっては、受光器の上下の揺止め装置がフィルムの外周面に接触しておらず、フィルムの揺れを抑えることができないから、フィルムの肉厚を正確に測定できないという問題があり、これに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑み、この課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、押出し機から押出される溶融樹脂を、チューブ状のフィルムに成形するフィルム成形装置において、前記フィルムの周面から所定の間隙を介した位置に、前記フィルムの周面に沿って旋回自在に肉厚検出手段を設け、該肉厚検出手段を挟んで前記フィルムが流れる方向の上流側および下流側の少なくともいずれか一方に揺止め手段を配設し、前記揺止め手段が前記肉厚検出手段と一体に旋回移動するように構成したフィルム成形装置におけるフィルムの肉厚検出装置である。
請求項2の発明は、揺止め手段は、肉厚検出手段を挟んでフィルムが流れる方向の上流側および下流側のそれぞれに、該フィルムの径方向に軸方向を沿わせて設置された円柱状の回転可能な一対の第1のガイドロールと、前記肉厚検出手段を挟んだ前記一対の第1のガイドロールの内側のそれぞれに、前記フィルムの径方向に軸方向を沿わせて設置され、前記第1のガイドロールより小径な円柱状の回転可能な一対の第2のガイドロールとを備えて構成されていることを特徴とする請求項1記載のフィルム成形装置におけるフィルムの肉厚検出装置である。
請求項3の発明は、肉厚検出手段および揺止め手段は、フィルムの周面に沿って移動自在な移動フレームにそれぞれ固定されて構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のフィルム成形装置におけるフィルムの肉厚検出装置である。
請求項4の発明は、移動フレームは、チューブ状のフィルムの径方向に沿った位置に配設され前記フィルムの周面の接線方向に沿って移動可能な駆動手段に取り付けられて構成されていることを特徴とする請求項3記載のフィルム成形装置におけるフィルムの肉厚検出装置である。
請求項5の発明は、移動フレームは、長手方向が曲がった略平板状に形成され、該移動フレームの長手方向の一端に肉厚検出手段および揺れ止め手段が固定され、前記移動フレームの他端が駆動手段に接続されて構成されているものとすることを特徴とする請求項4記載のフィルム成形装置におけるフィルムの肉厚検出装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、肉厚検出手段と一体に揺止め手段が移動するため、揺止め手段にてフィルムを揺止めしながら、該フィルムの周面から所定の間隙を介した位置の肉厚検出手段にてフィルムの肉厚を検出できるから、該フィルムの周面を傷付けることなく、フィルムの肉厚を正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】フィルム成形装置を説明する正面図である。
【図2】肉厚検出装置の一部を切り欠いた平面図である。
【図3】肉厚検出装置の正面図である。
【図4】肉厚検出手段および揺止め手段の側面図である。
【図5】肉厚検出手段および揺止め手段の正面図である。
【図6】肉厚検出手段および揺止め手段の背面図である。
【図7】第1のガイドロールを取り外した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態を、図1〜図7の図面に基づいて説明する。
図面において、1はチューブ状のフィルムを押し出し成形するためのインフレーションフィルム成形機としてのフィルム成形装置であって、該フィルム成形装置1は、例えばポリエチレン等の合成樹脂である樹脂材を貯蔵、供給するホッパ2、該ホッパ2から供給された樹脂材を溶融する加熱シリンダ3、該加熱シリンダ3に内装されるスクリュー(図示せず)を駆動させる押出し機としての駆動装置4、該駆動装置4の駆動に基づいて回転するスクリューにより加熱シリンダ3から搬送された溶融樹脂を、所定の肉厚を有したチューブ状のフィルム5として吐出して押出すダイ6、該ダイ6から吐出されたチューブ状のフィルム5を外部から冷却するためのエアリング7、該エアリング7の上方に設けられ、該エアリング7にて冷却されたチューブ状のフィルム5の揺れを防止するための揺れ止め装置9、該揺れ止め装置9の上方に設けられ、ダイ6から吐出して延出されたチューブ状のフィルム5を平坦状にして引き取る引取装置8、該引取装置8にて引き取った平坦状のフィルム5を巻取軸(図示せず)に巻き取って回収するための巻取機(図示せず)を備えて構成されている。そして、チューブ状のフィルム5の内部には、該フィルム5を所望する外径寸法に成形するために必要な量の空気が所定圧で封入されている。
ここで、引取装置8は、フィルム5を平坦状にする案内板8aと、平坦状になったフィルム5を引き取るピンチローラ8bと、該ピンチローラ8bにて引き取ったフィルム5を巻取軸側に延出するべく案内するためのガイドローラ8cと、前記巻取軸を回転せしめる駆動装置(図示せず)等の部材を用いて構成されている。
【0009】
さて、11は、延出されたチューブ状のフィルム5の肉厚(厚み)を検出する厚み測定装置としての肉厚検出装置であって、該肉厚検出装置11は、揺れ止め装置9と引取装置8との間に設置されており、フィルム5の外周に所定間隔を存して配設されるリング状の固定ブラケット12、該固定ブラケット12に旋回ベアリング12aを介して旋回ブラケット12bが旋回移動自在に設けられ、そして旋回ブラケット12bは移動フレーム13、該移動フレーム13の先端部に取り付けられた肉厚検出手段としての非接触式厚みセンサ14、該非接触式厚みセンサ14を挟んで移動フレーム13の先端部の上下に固定されたフィルム5の揺止め(振れ止め)機構15、移動フレーム13の他端である基端側が固定され該移動フレーム13をフィルム5の直径と平行方向に沿って移動可能にさせる駆動手段としてのセンサ位置調整機構16等の各種の部材装置が設けられている。ここで、肉厚検出装置11は、フィルム5の周方向に沿って移動フレーム13を移動させて、該フィルム5の周回り方向における所定位置の肉厚をそれぞれ測定するように設定されている。
【0010】
さらに、肉厚検出装置11の固定ブラケット12は、図2に示すように、フィルム成形装置1にて成形されるチューブ状のフィルム5の外周を覆うように、該フィルム5と同心状に位置するよう内周が円形に配設されている。固定ブラケット12には駆動装置17が取り付けられており、該駆動装置17に設けた駆動ギア17aが旋回ブラケット12bに設けた従動ギア12cに噛合しており、そして駆動装置17を正逆駆動することに基づいて旋回ブラケット12bを周回り方向に360度の正旋回及び逆旋回を交互に実行するよう設定されている。固定ブラケット12および旋回ブラケット12bには、それぞれ円周方向に沿って略円形状に配設されたチェーンベルト17bが配設されているが、該チェーンベルト17bは、非接触型厚みセンサ14やセンサ位置調節機構16に対する配線(ハーネス)を、前記旋回ブラケット12bが正逆旋回したときに複数の配線が互いに干渉せず該複数の配線のそれぞれが送り出し巻き取るように設定されたものであり、市販のものが採用されている。
【0011】
また移動フレーム13は、旋回ブラケット12bに対して基端部が支持されるが、約45度ほど屈曲していて平面視で略く字形に形成されており、移動フレーム13の先端側がチューブ状のフィルム5の直径の延長線に位置するようになっている。
【0012】
ここで、移動フレーム13の基端部と旋回ブラケット12bとの間には、該移動フレーム13をフィルム5の径方向に沿って移動可能にさせるセンサ位置調整機構16が設けられており、該センサ位置調整機構16は、旋回ブラケット12bの径方向に沿った位置に配設され該旋回ブラケット12bの接線方向に沿って移動フレーム13を移動可能にさせている。そして、センサ位置調整機構16は、旋回ブラケット12bの接線方向に沿った長手方向を有した調整レール16a、および該調整レール16aに沿って移動フレーム13を移動させる駆動装置としてのモータ16b等の部材装置を用いて構成されている。すなわち、センサ位置調整機構16は、モータ16bを正逆駆動させて調整レール16aに沿って移動フレーム13を移動させることによって、該移動フレーム13の先端側に取り付けられている非接触式厚みセンサ14のチューブ状のフィルム5までの距離を調整して、フィルム成形装置1にて成形されるフィルム5の外径寸法に対応させて非接触式厚みセンサ14の設置位置を調整可能にさせるものである。
【0013】
また、センサ位置調整機構16の調整レール16aは、旋回ブラケット12bの内側であって、該旋回ブラケット12bの外径寸法より外側に突出しないように設置されている。具体的に、調整レール16aは、固定ブラケット12内に収容される程度の長手寸法に形成されており、移動フレーム13を最も外側に移動させた状態であっても、該移動フレーム13を固定ブラケット12の外周面より外側に突出させないように構成されている。また、調整レール16aは、例えば400mm以上900mm以下の外径寸法を有するチューブ状のフィルム5の肉厚が肉厚検出装置11にて検出できるように構成されている。
【0014】
さらに、非接触式厚みセンサ14は、該非接触式厚みセンサ14の発光部14aからの赤外線等の光をフィルム5の外表面に向けて発し、該光のフィルム5に対する反射量あるいは透過量を測定して、該フィルム5の厚み、すなわち肉厚を検出して測定する厚み測定器であるが、赤外線等の光を用いない他の非接触式のセンサであっても用いることができる。そして、非接触式厚みセンサ14は、該非接触式厚みセンサ14の発光部14aを、フィルム成形装置1にて成形されるチューブ状のフィルム5の中心位置に向け、該フィルム5の外周面から所定の間隔を介した位置の状態で、移動フレーム13の先端側の上面上に設置されて固定されている。
【0015】
さらに、非接触式厚みセンサ14は、略矩形状のセンサベース14bに取り付けられており、該センサベース14bが移動フレーム13の先端側に取り付けられて、該移動フレーム13に固定されている。さらに、センサベース14bの両側部には、該センサベース14bの幅方向に沿った長手方向を有する長穴14cがそれぞれ設けられており、これら長穴14cに挿入されたボルト14dが移動フレーム13に固定されて、非接触式厚みセンサ14が前後方向に調整可能に構成されている。
【0016】
また、移動フレーム13の先端側には、揺止め機構15が一体的に取り付けられて固定されており、該揺止め機構15は、移動フレーム13の先端側のフィルム5の外周面に対向する側の両側部に並行に取り付けられ、該フィルム5の軸方向に沿った長手方向を有する一対の支持フレーム15aを備えている。
【0017】
そして、これら一対の支持フレーム15a間の、非接触式厚みセンサ14の発光部14aを挟んでフィルム5が流れる方向の上流側および下流側のそれぞれの位置には、該フィルム5の径方向に軸方向を沿わせた状態で、揺止め手段としての円柱状の一対の第1のガイドロール15bが回転可能に設置されている。該第1のガイドロール15bは、例えば25mmの直径寸法に形成されており、非接触式厚みセンサ14の発光部14aを中心としフィルム5の軸方向に沿って等間隔に離間させた位置にそれぞれ取り付けられている。さらに、各第1のガイドロール15bの軸方向の両端部の中心に位置する細長円筒状の軸体15cは、前記第1のガイドロール15bに回転自在に挿通されており、各軸体15cの端部が支持フレーム15aに固定されて、各第1のガイドロール15bが周方向に向けて回転可能となっている。
【0018】
また、これら一対の支持フレーム15a間の、非接触式厚みセンサ14の発光部14aを挟んだ一対の第1のガイドロール15bの内側のそれぞれの位置には、第1のガイドロール15bより小径な揺止め手段としての円柱状の一対の第2のガイドロール15dが、フィルム5の径方向に軸方向を沿わせた状態で回転可能に設置されている。該第2のガイドロール15dは、例えば5mmの直径寸法に形成されており、非接触式厚みセンサ14の発光部14aを中心としフィルム5の軸方向に沿って等間隔に離間させた位置であって、該非接触式厚みセンサ14と第1のガイドロール15bとの間の位置にそれぞれ取り付けられている。さらに、これら第2のガイドロール15dの軸方向である長手方向の両端部のそれぞれは、ボールベアリング15eの中心に挿入されており、該ボールベアリング15eが支持フレーム15aの内側面にそれぞれ固定されて、各第2のガイドロール15dが周方向に向けて回転可能となっている。
【0019】
そして、第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dは、非接触式厚みセンサ14とともに移動フレーム13に固定されていることから、該移動フレーム13の移動および旋回ブラケット12bの旋回によって、非接触式厚みセンサ14と一体に移動および旋回するように構成されている。
【0020】
また、第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dのそれぞれは、図4に示すように、各第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dの外周面のフィルム5の外周面に対向する側が、上下方向に揃った状態となるように取り付けられている。すなわち、第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dは、該第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dのそれぞれの各外周面がフィルム5の外周面にそれぞれ接触する位置となるように設置させることによって、該フィルム5の外周面と非接触式厚みセンサ14との間に、該非接触式厚みセンサ14にてフィルム5の肉厚が正確に測定可能な適正範囲内の間隔である距離Sを形成させる。なお、非接触式厚みセンサ14にてフィルム5の肉厚が正確に測定可能な適正範囲である距離Sとしては、例えば6mm±0.3mmである。
【0021】
ここで、第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dの外径は、5mm以上100mm以下が好ましい。すなわち、第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dの外径が5mmより小さい場合は強度的に弱くなり、各外径が100mmより大きい場合には中心間の距離が好ましい200mmより大きくなるため、走行するチューブ状のフィルム5の揺れを安定化させにくくなる。
【0022】
さらに、移動フレーム13の下面には、取付プレート18を介して距離センサ19が取り付けられている。該距離センサ19は、非接触式厚みセンサ14の発光部14aとフィルム5の外周面との距離Sを自動的に調整するためのものであって、非接触式厚みセンサ14に隣接した鉛直下方に、フィルム5の径方向に沿って取り付けられている。また、距離センサ19は、非接触式厚みセンサ14からフィルム5の外周面までの距離を検出するものであって、取付プレート18および移動フレーム13を介して、非接触式厚みセンサ14、第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dとともに一体化した構成とされている。
【0023】
さらに、20はコントローラとしての制御部であって、該制御部20は、溶融樹脂を搬送するための駆動装置4と、フィルム5の内側に冷却風を送風するための送風装置(図示せず)、引取装置8を構成するピンチローラ8b等の種々の装置や、肉厚検出装置11の駆動装置17およびモータ16bに接続されている一方、肉厚検出装置11の非接触式厚みセンサ14に連繋(接続)されている。
【0024】
前記制御の他、制御部20は、フィルム成形装置1にて成形されるチューブ状のフィルム5の外径寸法に対応させてセンサ位置調整機構16のモータ16bを適宜駆動させ、移動フレーム13をフィルム5の径方向に沿って移動させて非接触式厚みセンサ14の発光部14aとフィルム5の外周面との間の距離を、適正範囲内の距離Sとし、第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dそれぞれの外周面がフィルム5の外周面に接する位置へ移動させるように設定されている。このとき、距離センサ19にて検出した非接触式厚みセンサ14からフィルム5の外周面までの距離情報に基づいて、センサ位置調整機構16のモータ16aを適宜駆動させて移動フレーム13をフィルム5の径方向に沿って移動させて、非接触式厚みセンサ14からフィルム5の外周面までの距離を、予め設定した適正範囲内の距離Sと自動調整する。
【0025】
次いで、制御部20は、フィルム5の直径に対応して移動フレーム13を移動させて非接触式厚みセンサ14の前記適正範囲の距離Sを確保した状態で、駆動装置17を駆動させて旋回ブラケット12bを適宜旋回させることで、非接触式厚みセンサ14がフィルム5の周囲を旋回することになるが、非接触式厚みセンサ14は、発光部14aからフィルム5の外表面に向けて光を発しさせ、該光のフィルム5に対する反射量あるいは透過量を測定して、該フィルム5の肉厚を順次検出し、検出した厚みデータを処理しフィルム5の厚みを表示するとともに、非接触式厚みセンサ14からの検出値に基づいて、フィルム5の肉厚が予め設定される肉厚となるよう、各種装置の駆動制御を行うように設定されるが、これらの駆動制御については、従来実施されている制御が用いられる。
【0026】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、フィルム成形装置1を構成するフィルム5の肉厚測定装置11は、非接触式厚みセンサ14、第1のガイドロール15b、第2のガイドロール15dおよび距離センサ19が一体化されることになるが、このものでは、非接触式厚みセンサ14の移動とともに第1のガイドロール15b、第2のガイドロール15dおよび距離センサ19が移動し、非接触式厚みセンサ14を移動させて、該非接触式厚みセンサ14の発光部14aからフィルム5の外周面までの距離を適正範囲内の距離Sとすることによって、第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dのそれぞれの外周面がフィルム5の外周面に接しフィルム5の揺れを抑えることができる状態になるように構成されている。この結果、これら第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dによって、走行して絶えず振動しているフィルム5の揺れを確実に抑えて揺れないように安定させながら、非接触式厚みセンサ14にてフィルム5の肉厚を測定できるため、該フィルム5の肉厚を正確に測定することができる。
【0027】
しかも、フィルム5の肉厚を測定するセンサとして非接触式厚みセンサ14が用いられており、また第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dが非接触式厚みセンサ14を挟んで等間隔離間された位置にフィルム5の移動方向に向けて回転自在に取り付けられた構成とされている。したがって、非接触式厚みセンサ14の発光部14aから等間隔離間したフィルム5の上流側および下流側のそれぞれにおいて、走行するフィルム5の揺れを第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dにて抑えつつ、走行するフィルム5の外周面に接した際に第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dが回転するため、走行するフィルム5の外周面に傷を付けることなく、該フィルム5の流れを安定化できる。
【0028】
また、第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dによるフィルム5の流れの安定化によって、非接触式厚みセンサ14の発光部14aからフィルム5の外周面までの距離Sを、正確に測定することが可能な厚み測定範囲である、適正範囲内に容易に安定させて保持することができる。さらに、フィルム5の肉厚を測定するセンサとして非接触式厚みセンサ14が用いているため、フィルム5の厚みを検出するセンサをフィルム5の外周面に接触させる必要もなくなる。よって、走行するチューブ状のフィルム5の外周面に傷を付けることなく、該フィルム5の厚みを非接触式厚みセンサ14にて安定して正確に測定することができる。
【0029】
さらに、第1のガイドロール15bおよび第2のガイドロール15dにてフィルム5の流れを安定化でき、非接触式厚みセンサ14の発光部14aからフィルム5の外周面までの距離Sを容易に安定させて適正範囲内に保持できるため、比較的高価な適正範囲が広い高性能タイプの非接触式厚みセンサ14ではなく、比較的安価な適正範囲が狭い汎用型の非接触式厚みセンサ14でも対応できる。よって、該非接触式厚みセンサ14の価格を抑えることができるため、肉厚検出装置11の製造性を向上できる。
【0030】
一方、移動フレーム13が略く字状の屈曲した形状とされ、該移動フレーム13をフィルム5の径方向に沿って移動させるセンサ位置調整機構16の調整レール16aが、フィルム5の接線方向に沿って移動フレーム13を移動させるよう取り付けられているため、センサ位置調整機構16はフィルム5の直径を通る径線方向、すなわちフィルム5の中心に対して離接する方向(図2の上下方向)に移動するように構成されている。このため、走行するチューブ状のフィルム5の肉厚を測定するための非接触式厚みセンサ14をフィルム5の径方向に沿って移動させて、該非接触式厚みセンサ14の発光部14aからフィルム5の外周面までの距離Sがフィルム5の直径に対応させて適正範囲内となるように調整することになるが、センサ位置調整機構16が、固定ブラケット12の外周面より外側に突出しない構成となっている。したがって、該センサ位置調整機構16を取り付けた肉厚検出装置11であっても、該肉厚検出装置11による専有面積が大きくならず、肉厚検出装置11から調整レール16aあるいは移動フレーム13が飛び出すことによって生じる作業者の注意負担を少なくできるため、フィルム成形装置1の使い勝手を向上できる。
【0031】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないことは勿論であって、揺止め機構15のガイドロールを、一対の第1のガイドロール15b、あるいは一対の第2のガイドロール15dの2本のみの構成とすることもできる。また、走行するチューブ状のフィルム5の走行状態が安定している場合には、揺止め機構15のガイドロールを、第1のガイドロール15b、あるいは第2のガイドロール15dのいずれか1本のみの構成とすることも可能である。
さらに、非接触式厚みセンサ14としては、赤外線等の光を発するもの以外であっても、フィルム5の外表面にセンサを接することなく、該フィルム5の肉厚を測定することができる非接触式厚みセンサであれば用いることができる。
【実施例1】
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
非接触式厚みセンサ14として(株)キーエンス製のレーザ非接触式厚みセンサを用い、距離センサ19として(株)キーエンス製の超音波式距離センサを用い、揺れ止め機構15を一対の第1のガイドロール15bのみとし、該一対の第1のガイドロール15bの外径寸法を直径20mmとし、該一対の第1のガイドロール15b間の距離Lを65mmとし、非接触式厚みセンサ14の発光部14aからフィルム5の外周面までの距離Sを6mmとした肉厚検出装置11と、現在一般的に使用されているオクタゴーン社(ドイツ国)製の接触式静電容量型厚み計とにより、走行状態の平均厚み40μmのチューブ状のフィルム5の周囲を旋回させながら、同一点の厚みのみを測定して比較した。
【0033】
この結果、上記肉厚検出装置11と接触式静電容量型厚み計との差は、最大で0.12μmとなり、実用的に充分満足できる結果を得ることができた。さらに、該肉厚検出装置11においては、フィルム5の外周面に傷が付くことはなかった。
【符号の説明】
【0034】
1 フィルム成形装置
2 ホッパ
3 加熱シリンダ
4 駆動装置
5 フィルム
6 ダイ
7 エアリング
8 引取装置
9 揺れ止め装置
11 肉厚検出装置
12 固定ブラケット
12b 旋回ブラケット
13 移動フレーム
14 非接触式厚みセンサ
14a 発光部
15 振止め機構
15b 第1のガイドロール
15d 第2のガイドロール
16 センサ位置調整機構
17 駆動装置
18 取付プレート
19 距離センサ
20 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出し機から押出される溶融樹脂を、チューブ状のフィルムに成形するフィルム成形装置において、前記フィルムの周面から所定の間隙を介した位置に、前記フィルムの周面に沿って旋回自在に肉厚検出手段を設け、該肉厚検出手段を挟んで前記フィルムが流れる方向の上流側および下流側の少なくともいずれか一方に揺止め手段を配設し、前記揺止め手段が前記肉厚検出手段と一体に旋回移動するように構成したフィルム成形装置におけるフィルムの肉厚検出装置。
【請求項2】
揺止め手段は、肉厚検出手段を挟んでフィルムが流れる方向の上流側および下流側のそれぞれに、該フィルムの径方向に軸方向を沿わせて設置された円柱状の回転可能な一対の第1のガイドロールと、前記肉厚検出手段を挟んだ前記一対の第1のガイドロールの内側のそれぞれに、前記フィルムの径方向に軸方向を沿わせて設置され、前記第1のガイドロールより小径な円柱状の回転可能な一対の第2のガイドロールとを備えて構成されていることを特徴とする請求項1記載のフィルム成形装置におけるフィルムの肉厚検出装置。
【請求項3】
肉厚検出手段および揺止め手段は、フィルムの周面に沿って移動自在な移動フレームにそれぞれ固定されて構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のフィルム成形装置におけるフィルムの肉厚検出装置。
【請求項4】
移動フレームは、チューブ状のフィルムの径方向に沿った位置に配設され前記フィルムの周面の接線方向に沿って移動可能な駆動手段に取り付けられて構成されていることを特徴とする請求項3記載のフィルム成形装置におけるフィルムの肉厚検出装置。
【請求項5】
移動フレームは、長手方向が曲がった略平板状に形成され、該移動フレームの長手方向の一端に肉厚検出手段および揺れ止め手段が固定され、前記移動フレームの他端が駆動手段に接続されて構成されていることを特徴とする請求項4記載のフィルム成形装置におけるフィルムの肉厚検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−188603(P2010−188603A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35036(P2009−35036)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(394012588)北進産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】