説明

フィルム状太陽電池

【課題】可撓性を有し変換効率が高いCIS系太陽電池を提供する。
【解決手段】芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重縮合してなるポリイミドフィルム、特にベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重縮合してなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの、膜厚が3〜200μm、線膨張係数が1〜10ppm/℃、長手方向の引張破断強度が300MPa以上である基板フィルム上に、少なくとも電極層とカルコパイライト構造半導体薄膜を有する積層が形成されてなるフィルム状太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性で高強度な基板フィルムを用いた、該フィルム上に少なくとも電極層とカルコパイライト構造半導体薄膜を有する積層を形成したフィルム状CIS系膜使用太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池として、単結晶シリコンインゴットを加工して作製されるもの、多結晶シリコンインゴットを加工して作製されるもの、アモルファスシリコン太陽電池に代表される薄膜太陽電池、厚膜半導体を基材上に印刷積層して作製されるもの、またこれらの組み合わせによる、2層以上の積層型太陽電池などが提案されている。太陽電池の構成としては、基材上に電極層、光電変換層、(透明)電極層を順次形成してなる構成が挙げられる。光電変換層は、太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換するよう構成された層(積層構造である場合を含む)であり、シリコン系半導体などといった半導体からなるものが広く知られている。薄膜太陽電池や厚膜半導体用の基材としてはステンレス板や可撓性基材が挙げられる。軽量化、フレキシブル化、大量生産の容易化を目的として有機基材を用いて薄膜太陽電池、厚膜太陽電池を形成する試みは古くから行われている。試みられた太陽電池としては、例えば、繊維布帛基材表面に金属箔が貼り合わされ、その金属箔上にひしょうしつシリコン薄膜が形成されてなる太陽電池がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平05−308143号公報
【0003】
薄膜半導体を形成する時にフィルム基材に加わる熱応力を緩和するために、太陽電池の製造時にフィルム基材の他にさらに支持基材を用いる製法が提案される。この製法は、支持基材上に、後にフィルム基材となる耐熱ベース基材を設けること、その後に、耐熱ベース基材の上に、両面に電極層が積層されてなるアモルファスシリコン層を形成すること、その後に、耐熱ベース基材を支持基材から剥離することを含む薄膜太陽電池の製法である(特許文献2参照)。
上記の他、フィルム基材そのものの耐熱性を改善することを目的として、特定の組成、特定の物性を示す耐熱性フィルムを基材に用いて薄膜太陽電池を作製することが提案されている(特許文献3〜6参照)。また、ポリイミドフィルムを基板として、作製することも提案されている(特許文献7参照)。
【特許文献2】特開平05−315630号公報
【特許文献3】特開平11−029645号公報
【特許文献4】特開平11−245291号公報
【特許文献5】特開2001−127327号公報
【特許文献6】特開2002−265643号公報
【特許文献7】特開2003−179238号公報
【0004】
一方、I族元素とIII族元素とVI族元素とからなる化合物半導体薄膜(カルコパイライト構造半導体薄膜)であるCuInSe(CIS)膜、又はこれにGaを固溶したCu(In,Ga)Se(CIGS)膜を用いた太陽電池(以下、両者をまとめてCIS系膜を使用した太陽電池という場合がある、)、これら両者を含めてCu(In1−XGa)Seと記述されるが、この系では、17%以上の高いエネルギー変換効率を有していることが知られている。CIS系太陽電池は主にガラスを基板としているが、可撓性基板を用いた太陽電池の報告例もある。
CIS系半導体薄膜をポリイミド上に形成した太陽電池が、1996年米国ワシントンで開催された第25回アイトリプル・イー太陽光発電専門家会議において、ブルネット エム バソール(Bulnet M. Basol et al.)等によって「フレキシブル アンド ライト ウエイト カッパー インジウム ダイセレナイド ソーラー セルズという題で報告されている。
また、ステンレス上にCIS系半導体薄膜を形成した太陽電池は、1999年発刊の刊行誌「プログレスイン フォトボルタイックス:リサーチ アンド アプリケーションズ」第7号311−316頁、“Progress in Photovoltaics:Research and Applications, 7, 311−316(1999)”に、「プログレス タワード 20% エフィシェンシー イン Cu(In,Ga)Se ポリクリスタリン シン−フィルム ソーラー セルズ」という題で報告されている。
【非特許文献1】25th Photovoltaic Specialist Conference Proceedings, IEEE, Washington, D.C., 157-162(1996)
【非特許文献2】Progress in Photovoltaics:Research and Applications,7, 311-316(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可撓性基板上に形成されたCIS系太陽電池については従来から報告されているが、その変換効率はガラス基板を用いたものに比べて低い値となっている。特に、ポリイミド基板を用いたCIS系太陽電池の変換効率は約10%であり、ガラス基板を用いたCIS系太陽電池で得られる17%以上の変換効率に比べて大幅に劣っている。この理由は製膜過程での加熱温度が制限されることが大きな原因のひとつとなっている。ステンレスからなる基板を用いる場合は、ガラス基板以上に高温での加熱が可能である。しかし、ステンレスの熱膨張係数とCIS系半導体薄膜の熱膨張係数とが大きく異なるため、CIS系半導体薄膜が基板から剥離しやすいという問題が生じる。SUS304(Fe−18Cr8¥−8Ni)のCTEは17.3ppm/Kであり、CIGS系薄膜の2倍程度大きい。このような剥離を抑制するには、基板の昇温速度、加熱温度及び加熱時間といった製膜条件の最適化が重要となる。従って、可撓性基板を用いて高い変換効率を示すCIS系太陽電池を製造するには、製膜工程や熱処理工程の改善が必要となる場合が多い。
このような状況に鑑み、本発明は、可撓性を有し変換効率が高いCIS系太陽電池を生産効率よく製造し得るポリイミド基板を提供することで可撓性を有し変換効率が高いCIS系太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の物性を有するポリイミドフィルムが、カルコパイライト構造半導体薄膜光電変換層を含む積層体と充分な密着強度を有し、カルコパイライト構造半導体薄膜の乾式製膜方法などにおける熱挙動においてカルコパイライト構造半導体薄膜含有積層体フィルム作製に満足すべきポリイミドフィルムであり、カルコパイライト構造半導体薄膜など積層体との密着が充分でありかつ皺や剥離の極めて少ないフィルム状太陽電池と、それによって得られるフィルム状太陽電池パネルが、例えば冷却加熱による熱履歴にも耐え得る、信頼性の高いフィルム状太陽電池として満足できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1.基板フィルム上に、少なくとも電極層とカルコパイライト構造半導体薄膜を有する積層が形成されてなるフィルム状太陽電池において、基板フィルムが芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重縮合してなるポリイミドフィルムであって、膜厚が3〜200μm、線膨張係数が1〜10ppm/℃、長手方向の引張破断強度が300MPa以上であることを特徴とするフィルム状太陽電池。
2.ポリイミドフィルムがベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重縮合してなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムである前記1のフィルム状太陽電池。
3.長尺基板フィルム上に少なくとも電極層とカルコパイライト構造半導体薄膜を有する積層が形成されてなるロール状に巻き取られた前記1又は2のフィルム状太陽電池作製のためのロール。
【発明の効果】
【0007】
本発明の基板フィルム上にカルコパイライト構造半導体薄膜を有する積層が形成されてなるフィルム状太陽電池において、基板フィルムが芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重縮合してなるポリイミドフィルムであって、膜厚が3〜200μm、線膨張係数が1ppm/℃〜10ppm/℃、長手方向の引張破断強度が300MPa以上であるフィルム状太陽電池は、使用される基板フィルムである特定ポリイミドフィルムが、カルコパイライト構造半導体薄膜光電変換層を含む積層体と充分な密着強度を有し、カルコパイライト構造半導体薄膜の乾式製膜方法などにおける熱挙動においてカルコパイライト構造半導体薄膜含有積層体フィルム作製に満足すべき基板フィルムであり、カルコパイライト構造半導体薄膜など積層体との密着が充分でありかつ皺や剥離の極めて少ないフィルム状太陽電池を提供することができ、それによって得られるフィルム状太陽電池パネルが、例えば太陽光などの照射による加熱と冬季の低温冷却などによる熱履歴にも耐え得る、信頼性の高いフィルム状太陽電池となり、工業的な意義は極めて大きい。
また、ガラス基板の場合枚様式での生産しか出来ずガラス基板が大きくなると、必然的に基板の移動時間、のロス、昇温時間などのロスも大きくなり、そうちも大型化が余儀なくされるが、フィルムの場合はロールtoロールでの生産ができることから、生産性が上がり、大面積に比してコンパクトな装置とすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における金属化ポリイミドフィルムにおけるポリイミドフィルムは、芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドフィルムであって、
膜厚が3〜200μm、線膨張係数が1ppm/℃〜10ppm/℃、長手方向の引張破断強度が300MPa以上となるポリイミドフィルムであれば、とくに限定されるものではないが、好ましくは下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類との組み合わせ。
B.ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
D.上記のABCの一種以上の組み合わせ。
中でも特にA.のベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン残基を有するポリイ
ミドフィルムを製造するための組み合わせ、芳香族ジアミン類が、少なくともパラフェニ
レンジアミン及び又はジアミノジフェニルエーテル類を含むものである組み合わせが
好ましい。本発明で特に好ましく使用できるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジア
ミン類と、ピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸無水物類とを反応させて
得られるポリイミドベンゾオキサゾールを主成分とするポリイミドベンゾオキサゾールに
使用される、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類として、下記の化合物が
例示できる。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

【0013】
【化5】

【0014】
【化6】

【0015】
【化7】

【0016】
【化8】

【0017】
【化9】

【0018】
【化10】

【0019】
【化11】

【0020】
【化12】

【0021】
【化13】

【0022】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
【0023】
本発明は、前記事項に限定されず下記の芳香族ジアミンを使用してもよいが、好ましくは全芳香族ジアミンの30モル%未満であれば下記に例示されるベンゾオキサゾール構造を有しないジアミン類を一種又は二種以上、併用してのポリイミドフィルムである。
そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0024】
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン。
【0025】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0026】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0027】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0028】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル及び上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0029】
本発明で用いられる芳香族テトラカルボン酸類は例えば芳香族テトラカルボン酸無水物類である。芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。なかでも化14のピロメリット酸が好ましく使用でき、全芳香族テトラカルボン酸類の70モル%以上使用することが好ましい。
【0030】
【化14】

【0031】
【化15】

【0032】
【化16】

【0033】
【化17】

【0034】
【化18】

【0035】
【化19】

【0036】
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%未満であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種又は二種以上、併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物。
【0037】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0038】
前記芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを反応(重縮合)させてポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマー及び生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。 これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるような量が挙げられる。
【0039】
ポリアミド酸を得るための重合反応の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌及び/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割することや、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが3.0dl/g以上が好ましく、4.0dl/g以上がさらに好ましい。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
【0040】
得られたポリアミド酸溶液をエンドレス支持体の上に流延し乾燥や脱溶媒などで完全イミド化が進行していない自己支持性のポリイミド前駆体フィルム(以下グリーンフィルムともいう)を得て、一端これを巻き取るか又は引き続いて高温などの処理を施してイミド化を進行させてポリイミドフィルムとなす。高温処理によるイミド化方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒及び脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒及び脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
【0041】
化学閉環法では、ポリアミド酸溶液を、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有する前駆体複合体を形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。
この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは200〜400℃による3〜20分間の熱処理である。
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0042】
イミド化の具体的な方法としては、前記のイミド化反応、イミド化処理を適宜用いることが可能であるが、好ましくは最高処理温度が460℃以上500℃未満であり、3分間以上30分間以下の時間で、高温イミド化処理することが好ましい。
ポリイミドフィルム、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの厚さは特に限定されないが、フィルム状太陽電池の基板フィルムに用いることを考慮すると、通常3〜200μm、好ましくは10〜150μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
本発明のポリイミドフィルムは、通常は無延伸フィルムであるが、1軸又は2軸に延伸しても構わない。ここで、無延伸フィルムとは、テンター延伸、ロール延伸、インフレーション延伸などによってフィルムの面拡張方向に機械的な外力を意図的に加えずに得られるフィルムをいう。
【0043】
本発明のポリイミドフィルムは、その線膨張係数が1ppm/℃〜10ppm/℃、長手方向の引張破断強度が300MPa以上であることが必須であり、この範囲を外れるフィルムの場合は、カルコパイライト構造半導体薄膜光電変換層を含む積層体と充分な密着強度を有し、カルコパイライト構造半導体薄膜の乾式製膜方法などにおける熱挙動においてカルコパイライト構造半導体薄膜含有積層体フィルム作製に満足すべき基板フィルムとなり得ず、カルコパイライト構造半導体薄膜など積層体との密着が充分でありかつ皺や剥離の極めて少ないフィルム状太陽電池を提供することができなくなる、それによって得られるフィルム状太陽電池パネルが、例えば太陽光などの照射による加熱と冬季の低温冷却などによる熱履歴にも耐え得なく、信頼性の高いフィルム状太陽電池となり得ない。
【0044】
本発明のフィルム状太陽電池においては、電極及び、半導体薄膜の形成に関しては、特許文献7などに記載されている作製方法に準じて行う方法を採用した。少なくとも、前記特定物性の耐熱性ポリイミドフィルムである可撓性基板フィルム上に、電極膜を形成する第1の工程と、前記電極膜の上方に(すなわち、直接的又は間接的に電極膜上に)I族元素とIII族元素とVI族元素とからなる化合物半導体薄膜(カルコパイライト構造半導体薄膜)であるCuInSe2(CIS)膜、又はこれにGaを固溶したCu(In,Ga)Se(CIGS)膜(以下、両者をまとめてCIS系膜ともいう)を形成する第2の工程と、前記薄膜を熱処理することによって前記半導体薄膜を形成する第3の工程とを含む方法によって製造される。
【0045】
前記熱処理が昇温過程と保温過程とをこの順序で含み、昇温過程において10℃/秒以上の速度で前記薄膜を昇温することを採用してもよい。この構成によれば、Ib族元素とVIb族元素の二元化合物、又はIIIb族元素とVIb族元素の二元化合物の生成を抑制できる。この構成の場合には、前記保温過程において、10秒〜300秒の範囲内のあいだ前記薄膜を450℃以上の温度に保持することも好ましい一態様である。この構成によれば、太陽電池の光吸収層に好適な半導体膜を形成できるとともに、耐熱性が低い可撓性基板を用いることが可能となる。なお、保温過程とは、一定温度以上の温度、又は一定の範囲内の温度に対象物の温度を保持する過程をいう。前記熱処理が、第1の昇温過程と第1の保温過程と第2の昇温過程と第2の保温過程とをこの順序で含み、前記第1の保温過程において、前記薄膜を100℃〜400℃の範囲内の温度に保持し、前記第2の保温過程において前記第1の保温過程よりも高い温度に前記薄膜を保持してもよい。この構成によれば、急速な加熱による熱ストレスを緩和でき、半導体薄膜が基板から剥離することを抑制できる。この構成では、前記第2の昇温過程において10℃/秒以上の速度で前記薄膜を昇温することが好ましい。また、前記第2の保温過程において、10秒〜300秒の範囲内のあいだ前記薄膜を450℃以上の温度に保持することが好ましい。
【0046】
半導体膜を形成したのちは、太陽電池に必要な層をさらに積層して太陽電池を製造する(以下の実施形態においても同様である)。各層の構成や形成方法については特に限定はないが、たとえば、図1に示すように、窓層6及び上部電極膜4を順に積層し、取り出し電極5及び7を形成すればよい。窓層6には、たとえばCdSや、ZnO、Zn(O,S)、ZnO:Alからなる層を用いることができ、上部電極膜4には、たとえばITO膜を用いることができる。また、窓層と上部電極膜との間にバッファ層などを形成してもよい。
また、取り出し電極7の部分に半導体膜3、上部電極膜4、窓層6、上部電極膜4を形成しないために、邪魔板による薄膜形成をさせない、メカニカルスクライビングによるパターン形成、レーザースクライビングによるパターン形成など適宜、公知の技術を使ってよい。
【0047】
上記太陽電池製造方法では、前記第1及び第2の工程において、前記基板を移動させつつ前記電極膜及び前記薄膜を形成してもよい。この場合には、筒状に巻かれた前記基板を送り出す第1のロールと、前記第1のロールから送り出された前記基板を巻き取る第2のロールとを用いて前記基板を移動させることが好ましい。この構成によれば、長尺の 基板上に連続的に半導体薄膜を形成することができ、生産性よく太陽電池を製造できる。
実際に太陽電池とする場合、本発明のフィルム状太陽電池の裏に保護フィルムを貼る、板、瓦、ガラスなどに貼り付けて固定する、表面保護の為、透明樹脂で覆う、表面保護フィルムを貼る、など既存の太陽電池パネルでお壊れている手法を適宜組み合わせて使用してよい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
2.ポリイミドフィルムのフィルム厚さ
フィルムの厚さは、マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1254D)を用いて測定した。
【0049】
3.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度
乾燥後のフィルムを長手方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)にそれぞれ長さ100mm、幅10mmの短冊状に切り出して試験片とし、引張試験機(島津製作所製オートグラフ(商品名)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
表中それぞれのデータ値は、MD方向の値で示した。
【0050】
4.ポリイミドフィルムの線膨張係数(CTE)
測定対象のポリイミドフィルムについて、下記条件でMD方向及びTD方向の寸法変化率をそれぞれ測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、・・・と15℃の間隔での寸法変化率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。表中のデータ値は、MD方向とTD方向の平均値で示した。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0051】
5.変換効率
変換効率は強度が100mW/cm2としエアマスが1.5である擬似太陽光下で行った。
【0052】
6.半導体薄膜などからなる積層の基板フィルムからの剥がれと皺
半導体薄膜からなる積層付きポリイミドフィルム(フィルム状太陽電池)の少なくとも長さ0.3mを採取し、水平面に静置して、半導体薄膜からなる積層の剥がれを目視観察し、剥がれが観察されないものを◎、剥がれが僅かに観察できるものを○、剥がれと皺が多く観察できるものを×として判定した。
【0053】
7.加熱時の反り
半導体薄膜からなる積層付きポリイミドフィルム(フィルム状太陽電池)を幅5mm 長さ70mmに切り取り、片持ち梁とした。支持部分はガラスで挟みこんだ。これの反りが読めるように、片持ち梁の自由端側に目盛りをつけたSUS板を固定しておき、電気炉に入れ、100℃から、50℃おきに温度を変化させて、反り量を目視にて読み取った。室温での読みとの差における絶対値の最大値を反り値とした。
【0054】
〔合成例1〕
(ポリアミド酸の重合−1)PMDA−DAMBO
<ベンゾオキサゾール構造を有するジアミンからなるポリアミド酸の重合>
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(DAMBO)500質量部を仕込んだ。次いで、N、N−ジメチルアセトアミド8000質量部を加えて完全に溶解させた後,ピロメリット酸二無水物(PMDA)485質量部を加え、25℃の反応温度で48時間攪拌すると,淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液が得られた。得られた溶液のηsp/Cは4.0dl/gであった。
【0055】
〔合成例2〕
<ポリアミド酸の重合−2>PMDA−ODA
ピロメリット酸二無水物545質量部、4,4’ジアミノジフェニルエーテル(ODA)500質量部を8000質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、温度を20℃以下に保ちながら同様に反応させてポリアミド酸溶液を得た。得られた溶液のηsp/Cは2.2でdl/gあった。
【0056】
〔合成例3〕
<ポリアミド酸の重合−3>BPDA−PDA
テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)398質量部、パラフェニレンジアミン(PDA)147質量部を4600質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、温度を20℃以下に保ちながら同様に反応させてポリアミド酸溶液を得た。得られた溶液のηsp/Cは3.0dl/gであった。
【0057】
〔合成例4〕
<ポリアミド酸の重合−4>
N,N−ジメチルホルムアミド中に4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを全ジアミン基準で60モル%供給して溶解させ、続いてパラフェニレンジアミン40モル%及びピロメリット酸二無水物を順次供給し、室温で、約1時間撹拌した。最終的にテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分が約100モル%化学量論からなるポリアミド酸濃度20重量%の溶液を調製しポリアミド酸溶液を得た。得られた溶液のηsp/Cは2.7でdl/gあった。
このポリアミド酸溶液を氷冷し、無水酢酸、β−ピコリンを加え撹拌した。
【0058】
〔実施例1〜9、比較例1〜4〕
各合成例で得られたポリアミド酸溶液を、表1〜3に示すように、主ポリアミド酸80%、副ポリアミド酸を20%の割合で混合した。表1〜3で副ポリアミド酸の欄が「−」の場合は主ポリアミド酸のみを使った場合を示す。この混合した、或は混合していないポリアミド酸を、コンマコーターを用いて幅600mm、支持体であるステンレス製エンドレスベルトの片面にポリイミドフィルム厚さが表1〜3に示す厚さとなるようにコーティングして、110℃で30分間乾燥し、支持体から剥離して各ポリイミド前駆体フィルムであるグリーンフィルムを得て、このグリーンフィルムの上下に表1〜3の表面コーティング層として示した各合成例のポリアミド酸をディップスクイズコーティングでコーティングした後、或は表1〜3で表面コーティング層“なし”の場合は、コーティングせずに、幅600mmグリーンフィルムを窒素置換された連続式の熱処理炉に通し、第1段、第2段、第3段の3段階の高温加熱を施して、イミド化反応を進行させた。1段目の炉は150℃、2段目の炉は200℃としている。3段階目の炉の温度を表1〜3中に熱処理条件として示した。但し実施例1〜6では延伸をしていないが、実施例7〜9では1.1倍の延伸をフィルムに長手方向(MD方向)でかけた。比較例2のフィルムは50μm厚のフィルムを作製して、その後に圧着させることで形成した。
その後、5分間で室温にまで冷却することで、褐色を呈する各例のポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの物性など測定結果を表1〜3(引張破断伸度の欄以上)に記載する。
【0059】
各例で得られたフィルムを基板フィルムとして使用して、下記のようにして少なくとも電極層とカルコパイライト構造半導体薄膜を有する積層が形成されてなるフィルム状太陽電池(実際のフィルム状太陽電池パネル作製のためのロール)を作製した。
(第1の工程)基板フィルム上に電極層を形成する。なお、基板フィルム上にSiO膜などの絶縁膜が形成されていてもよいが本実施例又は比較例においては直接電極層を形成した。電極層は、金属膜や透明導電膜であり、たとえばMo膜を用いることができるが、本実施例又は比較例においては、まずスパッタリング法にてAr雰囲気中でMo膜(膜厚:約0.8μm)を形成して電極層を形成した。
電極の作製をするスパッタ装置は、送り出しロール(第1のロール)と、巻き取りロール(第2のロール)と、カソードに配置されたMoのターゲットとを備える。送り出しロールにはポリイミド基板が巻かれており、ここから基板が送り出される。巻き取りロールは、送り出しロールから送り出され、Mo膜が形成されたポリイミド基板を巻き取って収納する。このスパッタ装置では、ポリイミド基板を移動させながら、その上に、Ar雰囲気中でのスパッタリングによってMo膜を形成した。Mo膜が形成されたポリイミド基板を収納した巻き取りロールは、図2の膜形成装置に装着されて送り出しロールとして機能する。
(第2の工程)蒸着法でNaS膜(厚さ:約20nm)を形成した後に、Ib族元素であるCuと、IIIb族元素であるIn及びGaと、VIb族元素であるSeとからなる前駆体半導体薄膜(厚さ:約1.2μm)をNaS膜上に蒸着法にて形成した。
【0060】
図2の膜形成装置は、送り出しロール1と、巻き取りロール10と、Na2Sの蒸着源4と、Cuの蒸着源6と、Gaの蒸着源7と、Inの蒸着源8と、Seの蒸着源9とを備える。送り出しロール1はMo膜が形成されたポリイミド基板2を送り出し、巻き取りロール52は、Na2S膜33及び前駆体薄膜34が形成されたポリイミド基板2を巻き取って収納する。
膜形成装置では、NaSの蒸着源4、Cuの蒸着源6、Gaの蒸着源7、Inの蒸着源8及びSeの蒸着源9を、それぞれ、700〜900℃、1100〜1300℃、850〜950℃、800〜900℃、200〜250℃の範囲内で加熱し、各元素及び化合物を蒸発させることによって、前駆体薄膜を形成した。前駆体薄膜が形成されたポリイミド基板を収納した巻き取りロールは、熱処理装置に装着されて送り出しロールとして機能する。
(第3の工程)次に、前駆体半導体薄膜を熱処理する。第3の工程における熱処理は、窒素ガス、酸素ガス及びアルゴンガスからなる群より選ばれる少なくとも1つのガスからなる雰囲気中で熱処理すればよいが、本実施例又は比較例においては、窒素ガス雰囲気中で熱処理した。熱処理装置では、前駆体半導体薄膜が形成されたポリイミドフィルムを移動させながら、500℃に加熱した加熱ヒータを用いて熱処理を行った。この時、熱処理室の雰囲気はNガス(常圧)雰囲気とし、ポリイミドフィルムの走行速度は10cm/分とした。ポリイミド基板の任意の点が、移動しながら室温から500℃に加熱されるまでに要する時間は約30秒であり、平均昇温速度は15℃/秒以上であった。また、500℃のままで保持される時間は約1分30秒であった。なお、基板の温度は、その上に形成された前駆体薄膜の温度と実質的に等しい。
熱処理後のポリイミド基板には、変形や融解は見られなかった。この熱処理によって、前駆体半導体薄膜は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなり微量のNaを含むCu(In,Ga)Se膜(半導体膜)となった。得られた膜のX線回折パターン(XRD)から、112に強く配向したカルコパイライト構造の薄膜が形成されていることがわかった。また、カルコパイライト構造以外の異相によるピークは観測されていないことから、結晶性に優れた単相のCu(In,Ga)Se膜が形成されていることが分かった。
【0061】
半導体膜を形成したのちは、太陽電池に必要な層をさらに積層して太陽電池を製造する。図1に示すように、窓層6及び上部電極膜4を順に積層し、取り出し電極5及び7を形成した。窓層6には、スパッタリング法によってZnOからなる0.1μm厚の層を形成した。上部電極膜4には、スパッタリング法によって0.1μm厚のITO膜をZnO層の上に形成した。その後に取り出し電極を形成した。なお、図1の電極膜2は基板フィルム1の前面に形成したが、第2の工程では、フィルムの進行方向右側の端が蒸着する場において、邪魔板によって隠しておき、電極の露出部を作ってある。
また、取り出し電極の作製は、ロールを切り出した後にステンレス製のマスクを密着させて、必要部分にのみ行った。
このようにして作製した各例フィルムを基板フィルムとして、それぞれのフィルム状太陽電池パネル用ロールを得、これを評価した結果を表1〜3に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

以上、本発明の実施の形態について例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず本発明の技術的思想に基づき他の実施形態に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、耐熱性がスチール板などに較べて低い可撓性基板であるポリイミドフィルムを用いたフィルム状太陽電池及び可撓性太陽電池パネル作製に利用されるフィルム状太陽電池作製のためのロールであり、可撓性基板をロール状に巻いて製造することが可能であることから、大面積の半導体薄膜を高速に製造できる。このように、本発明の特定物性ポリイミドフィルムを用いることによって、太陽電池の光吸収層に適した半導体薄膜を可撓性ポリイミドフィルム上に高速に形成することができ、柔軟性を有し、軽量かつ大面積で高い変換効率を有する欠陥の少ないCIS系太陽電池を効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明における太陽電池の模式図
【図2】半導体膜作製装置例の模式図
【符号の説明】
【0067】
1 基板フィルム
2 電極膜
3 半導体膜
4 上部電極膜
5、5’ 取り出し電極
6 窓層
7 巻きだしロール
8 基板フィルム
9、11 ロール
10 NaS蒸発源
12 Cu蒸発源
13 Ga蒸発源
14 In蒸発源
15 Se蒸発源
16 巻き取りロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板フィルム上に、少なくとも電極層とカルコパイライト構造半導体薄膜を有する積層が形成されてなるフィルム状太陽電池において、基板フィルムが芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重縮合してなるポリイミドフィルムであって、膜厚が3〜200μm、線膨張係数が1〜10ppm/℃、長手方向の引張破断強度が300MPa以上であることを特徴とするフィルム状太陽電池。
【請求項2】
ポリイミドフィルムがベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重縮合してなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムである請求項1記載のフィルム状太陽電池。
【請求項3】
長尺基板フィルム上に少なくとも電極層とカルコパイライト構造半導体薄膜を有する積層が形成されてなるロール状に巻き取られた請求項1又は2記載のフィルム状太陽電池作製のためのロール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−317834(P2007−317834A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145125(P2006−145125)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】