説明

フィルム状媒体搬送装置

【課題】フィルム状媒体の表面を狭持して搬送する転写フィルム搬送装置において、狭持している部分で転写フィルムに対する圧接力が弱まることがなく、正確なフィルム搬送移動を行う。
【解決手段】フィルム搬送ローラ49の周面に配置されるピンチローラ32aとピンチローラ32bとを配置し、転写フィルム46の搬送時、ピンチローラ32a,32bはカム53に付勢されて移動し、転写フィルム46を挟んでフィルム搬送ローラ49と圧接して、転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付ける。張力受け部材52は、ピンチローラ32a,32bの移動に連動して転写フィルム46と接して、ピンチローラ32a,32bによるフィルム搬送ローラ49への押圧に反発する転写フィルム46の張力を受けることで、転写フィルム46がフィルム搬送ローラ49に確実に密着して巻き付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状媒体の表面に形成した画像をカードなどの記録媒体に転写する印刷装置におけるフィルム状媒体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のカード印刷装置は、プラスチックカードなどの媒体上に顔写真、文字情報などの画像を形成する装置として広く知られている。そして、記録媒体に画像を印刷するには、一旦、インクリボンに塗布されたインクにてフィルム状媒体である転写フィルムへ画像を熱転写し、次に転写フィルムの画像を記録媒体に熱転写することで行っている。
【0003】
インクリボンは、3色または4色のインクを1フレームとして周期的に各色のインクが塗布されており、転写フィルムに画像形成するには転写フィルムを往復移動させる必要がある。そのため、転写フィルムは、適正な姿勢で且つ正確な位置まで搬送されないと、インクの転写位置にずれを生じて印刷品質が低下する問題がある。
【0004】
そのため、転写フィルムを搬送する駆動ローラの上流側及び下流側にそれぞれ当接ローラを設けて、当接ローラは転写フィルムを挟み込んで駆動ローラに圧接することで、転写フィルムは上流側当接ローラの当接位置から下流側当接ローラの当接位置まで駆動ローラに確実に巻き付けられて、適正な姿勢にて搬送されるような構成が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の構成においては、当接ローラにて転写フィルムを駆動ローラに押し圧する際、駆動ローラに対する圧接力が均一でないと転写フィルムがスキューしてしまう問題があった。そのため、この問題を解決するために、従来から、当接ローラにて転写フィルムを駆動ローラに押し付けて巻き付けるのに、当接ローラがバネ部材を介して弾力的に押し付けるようにすることで、均一に転写フィルムを押し圧し搬送を安定させるようにした構成が知られていた(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4334400号公報
【特許文献2】特開平02−75558公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の当接ローラを特許文献2のように弾性部材を介して駆動ローラに押圧して転写フィルムを巻き付けたとき、転写フィルムの張力が強いと駆動ローラから当接ローラを離間させる方向に転写フィルムの張力が働いてしまい、当接ローラの圧接力が低減してしまう。これにより、転写フィルムの駆動ローラへの巻き付きが解除されて正確なフィルム搬送が行えなくなる虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、フィルム状媒体の表面を狭持して搬送する転写フィルム搬送装置において、常に転写フィルムへの狭持の圧接力を均一にして搬送することで印刷装置の印刷品質を高めることが可能な転写フィルム搬送装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため本発明は、フィルム状媒体の表面を狭持して搬送するフィルム状媒体搬送装置において、前記フィルム状媒体の一側に設けられる圧接部材と、前記フィルム状媒体の他側に設けられる被圧接部材と、前記圧接部材を前記被圧接部材に押し付けるよう設けられる弾性部材と、前記弾性部材に抗して前記圧接部材を前記被圧接部材に圧接する方向に移動させる移動手段と、前記圧接部材に連動して前記フィルム状媒体と接するよう移動する張力受け部材とを備え、前記張力受け部材は、前記圧接部材が前記フィルム状媒体を通して前記被圧接部材を圧接した際に、前記圧接部材による前記転写フィルム状媒体への押圧に反発する前記転写フィルム状媒体の張力を受けることを特徴としている。
【0010】
そして、前記圧接部材を前記被圧接部材に押し付ける際に前記フィルム状媒体の幅方向への圧接力は、前記弾性部材によって均一となることを特徴としている。
【0011】
そして、前記圧接部材と前記張力受け部材とはブラケットに支持されており、前記移動手段は、前記ブラケットを前記被圧接部材に向けて移動させることを特徴としている。
【0012】
前記被圧接部材は、前記フィルム状媒体を搬送するフィルム搬送ローラであり、前記圧接部材は、前記フィルム搬送ローラの表面に前記フィルム状媒体を巻き付ける少なくとも2本のピンチローラで構成されたことを特徴としている。
【0013】
そして、前記ブラケットは、前記ピンチローラを支持するピンチローラ支持部材を、前記弾性部材を介して支持し、前記ピンチローラ支持部材が前記ブラケットに対して回動するように構成されたことを特徴としている。
【0014】
また、前記フィルム状媒体はインクリボンを介してサーマルヘッドから画像を印刷されるものであって、前記被圧接部材は、前記フィルム状媒体に画像を印刷する前記サーマルヘッドであり、前記圧接部材は、前記フィルム状媒体と前記インクリボンとを前記サーマルヘッドに押し付けるプラテンローラで構成されたことを特徴としている。
【0015】
そして、前記ブラケットは、前記プラテンローラの両端を支持する一対のプラテン支持部材を、前記弾性部材を介して支持し、前記ブラケットは前記弾性部材を介して前記プラテン支持部材を押圧することを特徴としている。
【0016】
また、前記被圧接部材は、印刷後の前記フィルム状媒体と前記インクリボンとを剥離させる剥離部材であり、前記圧接部材は、前記フィルム状媒体と前記インクリボンとを前記剥離部材に押し付ける剥離コロで構成されたことを特徴としている。
【0017】
そして、前記ブラケットは、前記剥離コロの両端を支持する一対の剥離コロ支持部材を、前記弾性部材を介して支持し、前記ブラケットは前記弾性部材を介して前記剥離コロ支持部材を押圧することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
上記のように、本発明は、フィルム状媒体の表面を狭持して搬送するフィルム状媒体搬送装置において、前記フィルム状媒体の一側に設けられる圧接部材と、前記フィルム状媒体の他側に設けられる被圧接部材と、前記圧接部材を前記被圧接部材に押し付けるよう設けられる弾性部材と、前記弾性部材に抗して前記圧接部材を前記被圧接部材に圧接する方向に移動させる移動手段と、前記圧接部材に連動して前記フィルム状媒体と接するよう移動する張力受け部材とを備え、前記張力受け部材は、前記圧接部材が前記フィルム状媒体を通して前記被圧接部材を圧接した際に、前記圧接部材による前記転写フィルム状媒体への押圧に反発する前記転写フィルム状媒体の張力を受けることを特徴としている。
【0019】
そして、前記圧接部材を前記被圧接部材に押し付ける際に前記フィルム状媒体の幅方向への圧接力は、前記弾性部材によって均一となることを特徴としている。
【0020】
そして、前記圧接部材と前記張力受け部材とはブラケットに支持されており、前記移動手段は、前記ブラケットを前記被圧接部材に向けて移動させるように構成したので、搬送のために圧接部材と被圧接部材とがフィルム状媒体を狭持したとき、フィルム状媒体の張力を張力受け部材にて受け止めるために圧接部材と被圧接部材との狭持にこの張力が影響を及ぼすことがなくなり、狭持している部分で転写フィルムに対する圧接力が弱まることがなく、正確なフィルム搬送移動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係わる印刷装置の一実施形態を示す全体構成図を示す。
【図2】ピンチローラとフィルム搬送ローラとが離反、プラテンローラとサーマルヘッドとが離反している待機ポジジョンにおけるカムによる制御状態を説明する図を示す。
【図3】ピンチローラとフィルム搬送ローラとが当接、プラテンローラとサーマルヘッドとが当接している印刷ポジジョンにおけるカムによる制御状態の説明図を示す。
【図4】ピンチローラとフィルム搬送ローラとが当接、プラテンローラとサーマルヘッドとが当接している搬送ポジジョンにおけるカムによる制御状態の説明図を示す。
【図5】印刷装置の待機ポジションの状態を説明する動作説明図を示す。
【図6】印刷装置の搬送ポジションの状態を説明する動作説明図を示す。
【図7】印刷装置の印刷ポジションの状態を説明する動作説明図を示す。
【図8】フィルム搬送ローラ及びプラテンローラの配置周辺の構成を説明する外観図を示す。
【図9】ピンチローラの配置周辺の構成を説明する外観図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明に係わるフィルム状媒体搬送装置を備えた印刷装置1の全体構成を示す図である。印刷装置1は、各種証明用のIDカードや、商取引用のクレジットカードなどのカードに情報を記録するもので、ハウジング2には、情報記録部Aと画像形成部Bと媒体収容部Cと収容部Dとが備えられる。
【0023】
情報記録部Aは、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23と、接触式IC記録部27とで構成される。
【0024】
媒体収容部Cは、複数枚のカードを立位姿勢で整列して収納しており、その先端には分離開口7が設けられて、ピックアップローラ19にて最前列のカードから繰り出し供給するようになっている。
【0025】
繰り出されたカードは、先ず搬入ローラ22にて反転ユニットFに送られる。反転ユニットFは装置フレーム2に旋回動可能に軸受け支持された回転フレーム80と、このフレームに支持された2つのローラ対20、21にて構成される。そして、ローラ対20、21は回転フレーム80に回転自在に軸支持されている。
【0026】
反転ユニットFが旋回する外周には、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23及び接触式IC記録部27が配置されている。そして、ローラ対20、21は、これらの情報記録部23、24、27の何れかに向けて搬入する媒体搬入経路65を形成し、これらの記録部にてカードには磁気的若しくは電気的にデータが書き込まれる。
【0027】
画像形成部Bは、記録カードの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成するもので、媒体搬入経路65の延長上にカードを移送する媒体搬送経路P1が設けられている。また、媒体搬送経路P1にはカードを搬送する搬送ローラ29,30が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0028】
画像形成部Bはフィルム状媒体搬送装置を備えて、この搬送装置にて搬送される転写フィルム46に対して、先ずサーマルヘッド40にて画像を印刷する一次転写部と、続いてヒートローラ33にて媒体搬送経路P1にあるカードの表面に転写フィルム46に印刷された画像を印刷する二次転写部とを備えている。従って、本実施例におけるフィルム状媒体搬送装置は、印刷装置1で使用される転写フィルム46を搬送するものである。
【0029】
画像形成部Bの下流側には収容スタッカ60に印刷後のカードを移送する媒体搬送経路P2が設けられている。媒体搬送経路P2にはカードを搬送する搬送ローラ37,38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0030】
搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはデカール機構36が配置され、搬送ローラ37,38間に保持されたカード中央部を押圧することにより、ヒートローラ33による熱転写により生じたカールを矯正する。このためデカール機構36は図示しないカムなどによる昇降機構にて図1に示す上下方向に位置移動可能に構成されている。
【0031】
収容部Dは、画像形成部Bから送られたカードを収容スタッカ60に収容するように構成されている。収容スタッカ60は、昇降機構61にて図1で下方に移動するように構成されている。
【0032】
上記した印刷装置1の全体構成の中で、本発明に係るフィルム状媒体搬送装置を含む画像形成部Bについて、更に詳しく説明する。
【0033】
転写フィルム46は、モータMr2の駆動にて回転する転写フィルムカセットの巻取ロール47と操出ロール48にそれぞれ巻回されている。フィルム搬送ローラ49は、転写フィルム46を移送する主要な駆動ローラであり、このローラ49の駆動を制御することで転写フィルム46の搬送量及び搬送停止位置が決まる。フィルム搬送ローラ49の駆動時にモータMr2も駆動するが、巻取ロール47が繰り出された転写フィルム46を巻き取るためのものであって、転写フィルム46を搬送の主体となって駆動するものではない。
【0034】
フィルム搬送ローラ49の周面には、ピンチローラ32aとピンチローラ32bとが配置されている。ピンチローラ32a,32bは、図1では示されていないが、フィルム搬送ローラ49に対して進出及び退避するよう移動可能に構成されており、図の状態はフィルム搬送ローラ49に進出して圧接することで転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付けている。これにより、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49の回転数に応じた距離の正確な搬送が行われる。
【0035】
インクリボン41はカセット42に収納され、このカセット42に操出ロール43と巻取ロール44が収容され、巻取ロール44はモータMr1にて駆動する。
【0036】
プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは一次転写部を構成しており、プラテンローラ45に対向する位置にサーマルヘッド40が配置されている。サーマルヘッド40は、ヘッドコントロール用IC(図示せず)により画像データに従って加熱制御されて、昇華型のインクリボン41を用いて転写フィルム46に画像を印刷する。尚、冷却ファン39はサーマルヘッド40を冷やす為のものである。
【0037】
転写フィルム46への印刷が終了したインクリボン41は、剥離コロ25と剥離部材28とで転写フィルム46から引き剥がされる。剥離部材28はカセット42に固設されており、剥離コロ25は印刷時に剥離部材28に移動して両者で転写フィルム46とインクリボン41とを挟持することで剥離が行われる。そして、剥離されたインクリボン41はモータMr1の駆動による巻取ロール44に巻き取られ、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49により、プラテンローラ31とヒートローラ33とを含む二次転写部まで搬送される。
【0038】
二次転写部では、転写フィルム46はカードと共にヒートローラ33及びプラテンローラ31とで挟持されて、転写フィルム46上の画像が記録カード表面に転写される。尚、ヒートローラ33は、転写フィルム46を介してプラテンローラ31に圧接・離間するように昇降機構(不図示)に取り付けられている。
【0039】
一次転写部の構成をその作用と共に更に詳しく説明する。図2乃至図4にて示すように、ピンチローラ32a,32bはピンチローラ支持部材57の上端部と下端部にそれぞれ支持されて、ピンチローラ支持部材57はその中央部を挿通する支持シャフト58に回動自在に支持されている。支持シャフト58は、図9にて示すごとく、両端部がピンチローラ支持部材57に設けられる長穴76,77に架け渡されると共に、中間部でブラケット50の固定部78にて固定されている。また、長穴76,77は支持シャフト58に対して水平方向及び垂直方向に空間を持たせている。よって、後述するフィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32a,32bの調整を可能にしている。
【0040】
そして、支持シャフト58にはバネ部材51(51a,51b)が装着されて、ピンチローラ支持部材57のピンチローラ32a,32bが装着される側の端部は、それぞれバネ部材51と接してそのバネ力によりフィルム搬送ローラ49の方向へ付勢されている。
【0041】
ブラケット50は、カム受81にてカム53のカム作動面と当接しており、駆動モータ54(図9に示す)により駆動するカム軸82を支点とするカム53の矢印方向への回動に応じてフィルム搬送ローラ49に対して図で左右方向に移動するように構成している。従って、ブラケット50がフィルム搬送ローラ49に向けて進出したとき(図3及び図4)、ピンチローラ32a,32bはバネ部材51に抗して転写フィルム46を挟んでフィルム搬送ローラ49に圧接し、転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付ける。
【0042】
このときブラケット50の回動支点となる軸95から遠い位置にあるピンチローラ32bが先ずフィルム搬送ローラ49を圧接し、続いてピンチローラ32aが圧接する。このように、回動支点である軸95をフィルム搬送ローラ49より上方に配置することで、ピンチローラ支持部材57は平行移動ではなく回動しながらフィルム搬送ローラ49と当接することになり、平行移動させるよりも幅方向のスペースが少なくてすむ利点がある。
【0043】
また、ピンチローラ32a,32bがフィルム搬送ローラ49へ圧接したときの圧接力は、バネ部材51により転写フィルム46の幅方向の対して均一となる。その際、ピンチローラ支持部材57の両側に長穴76,77が設けられて支持シャフト58は固定部78で固定されているために、ピンチローラ支持部材を3方向に調整することができ、フィルム搬送ローラ49の回転により転写フィルム46はスキューを起こすことなく正しい姿勢にて搬送される。なお、ここで言う3方向の調整とは、(i)フィルム搬送ローラ49に対してピンチローラ32a,32bの軸方向の圧接力を均一にするために、フィルム搬送ローラ49の軸に対するピンチローラ32a,32bの軸の水平方向の平行度を調整すること、(ii)フィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32aの圧接力とフィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32bの圧接力とを均一にするために、フィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32aとピンチローラ32bとの移動距離を調整すること、及び(iii)フィルム進行方向に対してピンチローラ32a,32bの軸が垂直になるように、フィルム搬送ローラ49の軸に対するピンチローラ32a,32bの軸の垂直方向の平行度を調整することである。
【0044】
そして、ブラケット50には、ブラケット50がフィルム搬送ローラ49に向けて進出したとき、転写フィルム46のフィルム搬送ローラ49に巻き付けられていない部分と当接する張力受け部材52を設けている。
【0045】
張力受け部材52は、ピンチローラ32a,32bが転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に圧接した際に生じる転写フィルム46の張力にて、ピンチローラ32a,32bがそれぞれバネ部材51の付勢力に抗してフィルム搬送ローラ49から退避するのを防止するために設けられる。よって、張力受け部材52は、ピンチローラ32a,32bより図で左の位置で転写フィルム46と当接するようブラケット50の回動側端部の先端に取り付けられている。図1は張力受け部材52が転写フィルム46と当接している状態を示している。
【0046】
これにより、転写フィルム46の弾性から生じる張力は張力受け部材52を通してカム53にて直接受け止めることができる。したがって、この張力にてピンチローラ32a,32bがフィルム搬送ローラ49から退避してピンチローラ32a,23bの圧接力が弱まることが防止されるため、転写フィルム46のフィルム搬送ローラ49への密着した巻き付け状態が維持されて正確な搬送を行うことができる。
【0047】
転写フィルム46の横幅方向に沿って配置されるプラテンローラ45は、図8に示すごとく、軸71を支点として回動自在な一対のプラテン支持部材72に支持されている。一対のプラテン支持部材72はプラテンローラ45の両端を支持している。プラテン支持部材72はそれぞれ、軸71を共通の回動軸とするブラケット50Aの端部にバネ部材99を介して接続されている。
【0048】
ブラケット50Aは、基板87と、この基板87からのプラテン支持部材72の方向に折り曲げて形成されるカム受支持部85とから成り、カム受支持部85でカム受84を保持している。そして、基板87とカム受支持部85の間に駆動モータ54(図9に示す)の駆動によりカム軸83を支点に回動するカム53Aを配設して、カム作動面とカム受84とが当接するよう構成している。従って、カム53Aの回動によりブラケット50Aがサーマルヘッド40の方向へ進出すると、プラテン支持部材72も移動してプラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接する。
【0049】
このようにブラケット50Aとプラテン支持部材72との間にバネ部材99とカム53Aとを上下に配置することにより、このプラテン移動ユニットはブラケット50Aとプラテン支持部材72との間隔内に収めることができる。また、幅方向はプラテンローラ45の幅内に収めることができ省スペース化が図れる。
【0050】
また、カム受支持部85は、プラテン支持部材72に形成した穿孔部72a,72b(図8に示す)に嵌合させているために、カム受支持部85をプラテン支持部材72の方向に突出して形成しても、ブラケット50Aとプラテン支持部材72との間隔が広がることがなく、その面でも省スペース化が図れる。
【0051】
プラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接したとき、それぞれのプラテン支持部材72に接続されたバネ部材99は、それぞれ転写フィルム46の幅方向への圧接力が均一となるように作用する。よって、転写フィルム46がフィルム搬送ローラ49にて搬送されるときスキューが防止され、転写フィルム46の印刷領域が幅方向にずれることがなくサーマルヘッド40による熱転写を正確に行うことができる。
【0052】
ブラケット50Aの基板87には、剥離コロ25の両端を支持する一対の剥離コロ支持部材88がバネ部材97を介して設けられており、剥離コロ25は、ブラケット50Aがカム53Aの回動にてサーマルヘッド40に対し進出したとき、剥離部材28と当接して両者で挟持している転写フィルム46とインクリボン41とを剥離する。剥離コロ支持部材88もプラテン支持部材72と同様に剥離コロ25の両端にそれぞれ設けられており、剥離部材28に対する幅方向の圧接力が均一となるように構成されている。
【0053】
ブラケット50Aの軸支59側の端部と反対側の端部には、張力受け部材52Aが設けられている。張力受け部材52Aは、プラテンローラ45と剥離コロ25とをサーマルヘッド40と剥離部材28とにそれぞれ圧接する際に生じる転写フィルム46の張力を吸収するように設けられている。バネ部材99とバネ部材97は、転写フィルム46の幅方向への圧接力を均一にするために設けられるが、逆にバネ部材99、97が転写フィルム46の張力に負けて転写フィルム46への圧接力が弱まってしまわないよう、張力受け部材52Aにて転写フィルム46からの張力を受けている。なお、張力受け部材52Aも上述の張力受け部材52と同様にブラケット50Aに固定されているため、転写フィルム46の張力はブラケット50Aを介してカム53Aで受けることになるので、転写フィルム46の張力に負けることはない。これにより、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力及び、剥離部材28と剥離コロ25との圧接力が保たれるので、良好な印刷及び剥離を行うことができる。また、フィルム搬送ローラ49の駆動時に転写フィルム46の搬送量に誤差を生じることがなく、前記印刷領域の長さ分が正確にサーマルヘッド40に搬送されて精度良く印刷できる。
【0054】
カム53とカム53Aは、ベルト98(図2に示す)が張架されて同一の駆動モータ54(図9に示す)にて駆動させている。
【0055】
このような、転写フィルム46の搬送機構において、画像形成部Bが図5に示す待機ポジションにあるときカム53及びカム53Aは図2に示す状態にあり、ピンチローラ32a,32bはフィルム搬送ローラ49に圧接しておらず、またプラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接していない。
【0056】
そして、カム53及びカム53Aが連動して回転して図3に示す状態となると、画像形成部Bは図6に示す印刷ポジションに移行する。その際、まずピンチローラ32a,32bがフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けると共に、張力受け部材52は転写フィルム46と当接する。その後プラテンローラ45がサーマルヘッド40に圧接する。この印刷ポジションでは、プラテンローラ45がサーマルヘッド40に向けて移動して転写フィルム46とインクリボン41を挟み圧接して、剥離ローラ25が剥離部材28と接している。
【0057】
この状態で、フィルム搬送ローラ49の回転により転写フィルム46の搬送が開始されると、同時にインクリボン41もモータMr1の動作により巻取ロール44にて巻き取られて同じ方向に搬送される。この搬送の間、転写フィルム46に設けた位置出し用マークがセンサSeを通過して所定量移動し、転写フィルム46が印刷開始位置に到達した時点で、転写フィルム46の所定領域にサーマルヘッド40による印刷が行われる。特に印刷中は転写フィルム46の張力が大きくなるため、転写フィルム46の張力はフィルム搬送ローラ46からピンチローラ32a,23bを離間させる方向及び、剥離部材28とサーマルヘッド40から剥離コロ25とプラテンローラ45とを離間させる方向に働く。しかし、上記したように、転写フィルム46の張力は張力受け部材52,52Aが受けているため、ピンチローラ32a,32bの圧接力が弱くなることがなく、正確なフィルム搬送を行うことができ、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力及び、剥離部材28と剥離コロ25との圧接力も弱くなることがないため、正確な印刷及び剥離を行うことができる。印刷終了後のインクリボン41は転写フィルム46から引き剥がされて巻取ロール44に巻き取られる。
【0058】
転写フィルム46の搬送による移動量、すなわち印刷が施される前記印刷領域の搬送方向の長さは、フィルム搬送ローラ49に設けたセンサ(不図示)にて検知され、それに応じてフィルム搬送ローラ49の回転が停止し、同時にモータMr2の動作による巻取ロール44による巻き取りも停止する。これにより、サーマルヘッド40による転写フィルム46の前記印刷領域への1色目の印刷が終了する。
【0059】
そして、カム53及びカム53Aが連動して更に回転し図4に示す状態となると、画像形成部Bは図7に示す搬送ポジションに移行して、プラテンローラ45はサーマルヘッド40から退避する方向に復帰する。この状態では依然として、ピンチローラ32a,32bはフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けて、張力受け部材52は転写フィルム46と接しており、フィルム搬送ローラ49の逆方向の回転により転写フィルム46は初期位置にまで逆搬送される。このときも転写フィルム46の移動量はフィルム搬送ローラ49の回転によって制御されるが、印刷が施された前記印刷領域の搬送方向の長さ分が逆搬送される。尚、インクリボン41は停止しており、次に印刷する色のパネルを初期位置に待機させた状態にある。
【0060】
そして、カム53,53Aによる制御状態は再び図3に示す状態となって図6に示す印刷ポジションとなり、プラテンローラ45をサーマルヘッド40に圧接させ、フィルム搬送ローラ49が再び正方向への回転を行って転写フィルム46を前記印刷領域の長さ分移動させると、サーマルヘッド40にて次色による印刷が行われる。
【0061】
こうして、印刷ポジションと搬送ポジションでの動作は全ての色の印刷が終了するまで繰り返される。そして、サーマルヘッド40による印刷(一次転写)が終了すると、転写フィルム46の一次転写された領域をヒートローラ33まで搬送するが、このときカム53及び53Aは図2に示す状態に移動して、転写フィルム46への圧接を解除する。その後の二次転写は巻取ロール47の駆動で転写フィルムを搬送しながらカードへの転写が行われる。
【0062】
上記のごとく、本発明に係るフィルム状媒体搬送装置は、張力受け部材52にてフィルム搬送ローラ49とピンチローラ32a,32bとの間で生じる弛み(圧接の解除)が防止され、張力受け部材52Aにてプラテンローラ45とサーマルヘッド40との間で生じる弛み(圧接の解除)と、剥離部材28と剥離コロ25との間で生じる弛み(圧接の解除)とが防止されるために、転写フィルム46の張力の影響を受けず正確に搬送することで精度良く印刷することができる。
【0063】
以上、本発明に係るフィルム状媒体搬送装置を印刷装置における転写フィルムを搬送する装置で説明したが、圧接部材と被圧接部材とによりフィルム状媒体の表面を狭持して搬送する装置であれば他にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、プラスチックカード、厚紙カードなどの記録媒体に転写フィルム上に形成した画像情報を転写する印刷装置における転写フィルム等のフィルム状媒体搬送装置に関するもので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0065】
32a、32b ピンチローラ(圧接部材)
40 サーマルヘッド(被圧接部材)
45 プラテンローラ(圧接部材)
46 転写フィルム(フィルム状媒体)
49 フィルム搬送ローラ(被圧接部材)
50、50A ブラケット
51 バネ部材
52、52A 張力受け部材
53、63A カム(移動手段)
99 バネ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状媒体の表面を狭持して搬送するフィルム状媒体搬送装置において、
前記フィルム状媒体の一側に設けられる圧接部材と、
前記フィルム状媒体の他側に設けられる被圧接部材と、
前記圧接部材を前記被圧接部材に押し付けるよう設けられる弾性部材と、
前記弾性部材に抗して前記圧接部材を前記被圧接部材に圧接する方向に移動させる移動手段と、
前記圧接部材に連動して前記フィルム状媒体と接するよう移動する張力受け部材と、を備え、
前記張力受け部材は、前記圧接部材が前記フィルム状媒体を通して前記被圧接部材を圧接した際に、前記圧接部材による前記転写フィルム状媒体への押圧に反発する前記転写フィルム状媒体の張力を受けることを特徴とするフィルム状媒体搬送装置。
【請求項2】
前記圧接部材を前記被圧接部材に押し付ける際に前記フィルム状媒体の幅方向への圧接力は、前記弾性部材によって均一となることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状媒体搬送装置。
【請求項3】
前記圧接部材と前記張力受け部材とはブラケットに支持されており、前記移動手段は、前記ブラケットを前記被圧接部材に向けて移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム状媒体搬送装置。
【請求項4】
前記被圧接部材は、前記フィルム状媒体を搬送するフィルム搬送ローラであり、前記圧接部材は、前記フィルム搬送ローラの表面に前記フィルム状媒体を巻き付ける少なくとも2本のピンチローラで構成されたことを特徴とする請求項3に記載のフィルム状媒体搬送装置。
【請求項5】
前記ブラケットは、前記ピンチローラを支持するピンチローラ支持部材を、前記弾性部材を介して支持し、前記ピンチローラ支持部材が前記ブラケットに対して回動するように構成されたことを特徴とする請求項4に記載のフィルム状媒体搬送装置。
【請求項6】
前記フィルム状媒体はインクリボンを介してサーマルヘッドから画像を印刷されるものであって、
前記被圧接部材は、前記フィルム状媒体に画像を印刷する前記サーマルヘッドであり、
前記圧接部材は、前記フィルム状媒体と前記インクリボンとを前記サーマルヘッドに押し付けるプラテンローラで構成されたことを特徴とする請求項3に記載のフィルム状媒体搬送装置。
【請求項7】
前記ブラケットは、前記プラテンローラの両端を支持する一対のプラテン支持部材を、前記弾性部材を介して支持し、前記ブラケットは前記弾性部材を介して前記プラテン支持部材を押圧することを特徴とする請求項6に記載のフィルム状媒体搬送装置。
【請求項8】
前記フィルム状媒体はインクリボンを介してサーマルヘッドから画像を印刷されるものであって、
前記被圧接部材は、印刷後の前記フィルム状媒体と前記インクリボンとを剥離させる剥離部材であり、
前記圧接部材は、前記フィルム状媒体と前記インクリボンとを前記剥離部材に押し付ける剥離コロで構成されたことを特徴とする請求項3に記載のフィルム状媒体搬送装置。
【請求項9】
前記ブラケットは、前記剥離コロの両端を支持する一対の剥離コロ支持部材を、前記弾性部材を介して支持し、前記ブラケットは前記弾性部材を介して前記剥離コロ支持部材を押圧することを特徴とする請求項8に記載のフィルム状媒体搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−254877(P2012−254877A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129791(P2011−129791)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】