説明

フィルム用欠陥マーキング装置及び欠陥マーキング方法

【課題】マーキングエリアでの欠陥部分の位置の認識精度を向上させることで歩留りを下げることなく、かつ、目視検査の工数を削減できるフィルム用欠陥マーキング装置及び欠陥マーキング方法を提供する。
【解決手段】欠陥検査エリアで欠陥部分が検出されてからマーキングエリアでマーキングが施されるまでの欠陥部分の幅方向のズレである蛇行量を検出する第1の検出手段と、欠陥検査エリアで欠陥部分が検出されてからマーキングエリアでマーキングが施されるまでの前記欠陥部分の搬送距離、及びマーキングエリアでフィルムが完全に停止するまでの惰性走行による行き過ぎ量を検出する第2の検出手段と、マーキングエリアにおいてフィルムに仮想の裁断ラインを規定する手段と、第1及び第2の検出手段で検出した蛇行量、搬送距離及び行き過ぎ量に基づいてマーキングエリアにおける欠陥部分の座標を補正する手段と、仮想の裁断ラインに基づき欠陥部分を含む不良ピースにマーキングする手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム(シート)の欠陥部分を検出して仮想の裁断ラインに基づいてその欠陥部分を含む不良ピース(不良製品)にマーキングを施すための欠陥マーキング装置、及び、そのような欠陥マーキングの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のフォトリソグラフィー技術の発達により、光の波長レベルのピッチを有する微細構造パターンを形成することができるようになってきた。この様に非常に狭いピッチのパターンを有する部材や製品は、半導体分野だけでなく、光学分野において利用範囲が広く有用である。
【0003】
例えば、基材と、互いに平行で特定の間隔(周期)で形成された直線状の金属ワイヤは、その周期が入射光、例えば可視光の波長400nm〜700nmに比べて大きければ、回折格子となる。逆に、その周期が、可視光の波長よりもかなり小さい、例えば約1/2以下であれば、金属ワイヤは、金属線に対して平行に振動する電場ベクトル成分をほとんど反射し、垂直な電場ベクトル成分はほとんど透過するため、単一偏光を作り出す偏光素子として使用出来る。実際、そのような金属ワイヤは、ワイヤグリッド偏光板(ワイヤグリッド偏光子とも呼ばれる)として、各種の液晶表示装置、偏光ビームスプリッター、偏光反射鏡、光アイソレータなどの目的に利用されている。ワイヤグリッド偏光板は、透過しない光を、反射板等を用いることで再利用することができるため、光の有効利用の観点からも望ましいものである。
【0004】
具体的に、そのようなワイヤグリッド偏光板(偏光フィルム)は、表面に格子状凸部を有する樹脂基材と、前記樹脂基材の前記格子状凸部を含む領域上に形成される誘電体層と、前記誘電体層で被覆された前記格子状凸部上に形成される金属ワイヤ層とから成り、ロール状にまとめられるシート状製品として形成され、所定の長さに切断されて使用される。
【0005】
ところで、ワイヤグリッド偏光フィルムのようなシート状製品においては、その製品の欠陥部分を検出する検出精度を上げ、歩留りを上げることが要求される。実際に、従来から、合成樹脂フィルム、シートなどの長尺のシート状製品の製造工程では、シート状製品が搬送される工程において、検査装置により欠陥部分が自動的に検出され、搬送方向の下流側において、検出された欠陥部分にマーキングが施され、後工程においてマーキングを目標として欠陥部分の除去又は補修が行われており、また、そのようなプロセスで使用される欠陥マーキング装置も従来から数多く提案されている(例えば、特許文献1ないし特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−038778号公報
【特許文献2】特開2006−108473号公報
【特許文献3】特開2006−194721号公報
【特許文献4】特開2006−266981号公報
【特許文献5】特開2007−114138号公報
【特許文献6】特開2007−114139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の欠陥マーキング装置は、フィルムやシートの欠陥マーキングを精度良く行なうことができず、マーキングにより歩留りが低下するという問題があった。例えば、ワイヤグリッド偏光フィルムの欠陥部分の検出においては、従来のマーキング精度では、欠陥部分とマーキング部分にずれが生じることで、欠陥部分の近傍の正常な部位にマーキングされてしまい、本来使用できる部分が不良部になることで、歩留りが落ちるという事態が生じた。
【0008】
また、光学関連、電子材料関連など、μmオーダーの欠点が問題となるフィルムの欠陥部分の検出を目視で確認する場合は欠陥部分の確認に時間を要するという問題もあった。例えば、ワイヤグリッド偏光フィルムの微小欠陥部分の検出においては、微小欠陥部分の確認に多くの工数を要した。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、マーキングエリアでの欠陥部分の位置の認識精度を向上させることで歩留りを下げることなく、かつ、目視検査の工数を削減できるフィルム用欠陥マーキング装置及び欠陥マーキング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のフィルム用欠陥マーキング装置は、連続的に長さ方向に搬送される長尺のフィルムの欠陥部分を欠陥検査エリアで検出し、該欠陥検査エリアよりも搬送方向下流側のマーキングエリアにおいて、仮想の裁断ラインに基づいて検出された欠陥部分を含む不良ピースにマーキングを施すフィルム用欠陥マーキング装置であって、欠陥検査エリアで欠陥部分が検出されてからマーキングエリアでマーキングが施されるまでの前記欠陥部分の幅方向のズレである蛇行量を検出する第1の検出手段と、欠陥検査エリアで欠陥部分が検出されてからマーキングエリアでマーキングが施されるまでの前記欠陥部分の搬送距離、及びマーキングエリアでフィルムが完全に停止するまでの惰性走行による行き過ぎ量を検出する第2の検出手段と、マーキングエリアにおいてフィルムに仮想の裁断ラインを規定する手段と、前記第1及び第2の検出手段で検出した蛇行量、搬送距離及び行き過ぎ量に基づいてマーキングエリアにおける欠陥部分の座標を補正する手段と、仮想の裁断ラインに基づき欠陥部分を含む不良ピースにマーキングする手段を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の欠陥マーキング方法は、連続的に長さ方向に搬送される長尺のフィルムの欠陥部分を欠陥検査エリアで検出し、該欠陥検査エリアよりも搬送方向下流側のマーキングエリアにおいて、仮想の裁断ラインに基づいて検出された欠陥部分を含む不良ピースにマーキングを施すフィルムの欠陥マーキング方法であって、欠陥検査エリアで欠陥部分が検出されてからマーキングエリアでマーキングが施されるまでの前記欠陥部分の幅方向のズレである蛇行量を第1の検出手段によって検出するステップと、欠陥検査エリアで欠陥部分が検出されてからマーキングエリアでマーキングが施されるまでの欠陥部分の搬送距離、及びマーキングエリアでフィルムが完全に停止するまでの惰性走行による行き過ぎ量を検出する第2の検出手段によって検出するステップと、マーキングエリアにおいてフィルムに仮想の裁断ラインを描くステップと、前記第1及び第2の検出手段で検出した蛇行量、搬送距離及び行き過ぎ量に基づいてマーキングエリアにおける欠陥部分の座標を補正するステップと、仮想の裁断ラインに基づき欠陥部分を含む不良ピースにマーキングするステップを含むことを特徴とする。
【0012】
このように、本発明によれば、蛇行量、搬送距離及び行き過ぎ量を検出し、マーキングエリアで欠陥座標を補正し、さらに仮想の裁断ラインに基づき、製品部における欠陥部分を含む不良ピースにマーキングし、製品部以外の欠陥部分への直接的なマーキングを避け、製品部以外へのマーキングによりマーキング部分が良品部に及ばないようすることで、製品の収率が飛躍的に向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来技術に比べてマーキングエリアでの欠陥座標の認識精度を向上させ、裁断ラインに基づき欠陥部分を含む不良ピースにのみマーキングすることで歩留りを下げることなく、かつ、目視検査の工数を削減できるフィルム用欠陥マーキング装置及び欠陥マーキング方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係るワイヤグリッド偏光フィルム用欠陥マーキング装置の概略構成図である。
【図2】(a)は欠陥検査エリアを搬送方向へ見た概略図、(b)は欠陥検査エリアを上方から見た平面図である。
【図3】(a)はマーキングエリアを搬送方向へ見た概略図、(b)はマーキングエリアを上方から見た平面図である。
【図4】マーキングエリアにおける仮想の裁断ラインの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
本発明に係るフィルム用欠陥マーキング装置は、連続的に長さ方向に搬送される長尺のフィルムの欠陥部分を欠陥検査エリアで検出し、該欠陥検査エリアよりも搬送方向下流側のマーキングエリアにおいて、仮想の裁断ラインに基づき検出された欠陥部分を含む不良ピース(不良製品部)のみマーキングを施すフィルム用欠陥マーキング装置である。本発明に係るフィルム用欠陥マーキング装置は、どんなフィルムの欠陥検出にも用いることができるが、特に、光学用フィルムの中でも、ワイヤグリッド偏光板などの微細構造パターンが形成されたフィルムの欠陥検出に用いた場合に、一層の効果を発揮するものと考えられる。
【0016】
一般に、構造パターンが微細であるほど欠陥数は多いと考えられることから、本発明に係るフィルム用欠陥マーキング装置を、微細構造パターンが形成されたフィルムの欠陥検出に用いた場合に、歩留りも、より向上すると考えられる。微細構造パターンとは、可視光波長レベル以下のピッチを有する微細構造パターンを指し、具体的には、ピッチ間距離700nm以下の凹凸格子形状を指す。特に、1nm〜200nmである場合に、歩留り向上の効果が大きいと考えられる。
【0017】
また、光学用フィルムの厚みは300um以下がハンドリング上好ましいが、フィルム厚みが薄いほど、フィルム搬送時の蛇行はしやすいことから、歩留り向上を目的とした場合、フィルム厚みは200um以下、特に、100um以下や80um以下の厚みのフィルムにおいては、一層の効果を発揮するものと考えられる。これらの、光学用フィルムの基材としては、光学的に透明な樹脂基材が好ましく、例えば、PET、COP、TACが挙げられる。
【0018】
ここで、フィルム欠陥マーキング装置は、次の1〜5を備えている。
1 欠陥検査エリアで欠陥部分が検出されてからマーキングエリアでマーキングが施されるまでの欠陥部分の幅方向のズレである蛇行量を検出する第1の検出手段と、
2 欠陥検査エリアで欠陥部分が検出されてからマーキングエリアでマーキングが施されるまでの欠陥部分の搬送距離、及びマーキングエリアでフィルムが完全に停止するまでの惰性走行による行き過ぎ量を検出する第2の検出手段と、
3 マーキングエリアにおいてフィルムに仮想の裁断ラインを規定する手段と、
4 第1及び第2の検出手段で検出した蛇行量、搬送距離及び行き過ぎ量に基づいてマーキングエリアにおける欠陥部分の座標を補正する手段と、
5 仮想の裁断ラインに基づき欠陥部分を含む不良ピースにマーキングする手段。
【0019】
ここで、第1の検出手段、第2の検出手段、欠陥部分の座標を補正してマーキングエリアでの欠陥位置を決定する手段(以下、「制御手段」ともいう。)を用いることで、マーキングエリアでの欠陥座標の認識精度を飛躍的に向上させることができ、仮想の裁断ラインに基づき欠陥部分を含む不良ピースにマーキングすることで、歩留りの低下を抑制できる。さらに、目視検査の工数も削減できる。
【0020】
第1の検出手段と第2の検出手段に関わる機器は、欠陥検査エリア及びマーキングエリアに点在している。
【0021】
第1の検出手段に関わる機器としては、欠陥検査エリアに欠陥検査エリア変位計があり、マーキングエリアにマーキングエリア変位計がある。
【0022】
第2の検出手段に関わる機器としては、欠陥検査エリアに欠陥検査エリアレーザーセンサーがあり、マーキングエリアにマーキングエリアレーザーセンサーがある。
【0023】
制御手段としては、駆動制御プログラマブルロジックコントローラ(以下、「駆動制御PLC」という。)、欠陥検査プログラマブルロジックコントローラ(以下、「欠陥検査PLC」という。)、及びシステム制御プログラマブルロジックコントローラ(以下、「システム制御PLC」という。)があり、これらの制御手段によりマーキングエリアでの欠陥位置を決定し、仮想の裁断ラインに基づいた欠陥部分を含む不良ピースの位置データをレーザーマーキング制御用パーソナルコンピューター(以下、「レーザーマーキング制御用PC」という。)に送る。
【0024】
次に、実際にマーキングする工程について、図面を用いて説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態に係るワイヤグリッド偏光フィルム用欠陥マーキング装置の概略図である。本実施の形態に係る欠陥マーキング装置は、ワイヤグリッド偏光フィルム11が巻き取られた原反ロール41の検査を行う。
【0026】
フィルムの搬送速度は、駆動制御PLC21によって、S字ロールの回転数をもって制御している。また駆動制御PLC21は張力、アキュームなどの制御もおこなっている。図2及び図3に示されるように、このワイヤグリッド偏光フィルム11の長手方向には一定の幅方向、一定の流れ方向の大きさの搬送方向座標目印12が等間隔で設けられている。
【0027】
この1間隔を1単位(シート13)とし、後工程で枚葉に裁断される。また、ワイヤグリッド偏光フィルム11を繰り出す直前または/および巻取る直前のグリッド面に保護フィルムをつけることで、ワイヤグリッド偏光フィルム11のキズの発生やゴミ付着の防止することができるため好ましい。さらに、ワイヤグリッド偏光フィルム11を繰り出す前につけた保護フィルムは原反ロール41の繰り出しと同時に剥がし、ワイヤグリッド偏光フィルム11を巻取る前につけた保護フィルムは検査済みロール42の巻き取りと同時につけることで用いられる。
【0028】
次に、欠陥検査エリアについて説明する。
【0029】
原反ロール41からのワイヤグリッド偏光フィルム11はS字ロール1(39)により引き出され、まず、欠陥検査エリア37に入る。ここで、引き出すときの張力は88gf/mm以上、354gf/mm以下であることが好ましい。張力が88gf/mm以上であればフィルムのたるみが生じず、座標ズレが起きない。354gf/mm以下であればロールと製品との接触による欠陥部分の発生が生じない。また、S字ロールを用いることが、搬送時のフィルムの滑りやズレを抑止でき、マーキングの精度を向上できるため好ましい。
【0030】
図1及び図2に示されるように、欠陥検査エリア37のワイヤグリッド偏光フィルム11の上方にはラインセンサカメラ14が設けられ、また、ラインセンサカメラ14の直下には光源15が設置されている。ラインセンサカメラ14及び光源15よりも上流には、ワイヤグリッド偏光フィルム11のフィルム端部検出用の欠陥検査エリア変位計16(第1の検出手段)(例えば、キーエンス社製 LS7000など)と、搬送方向座標目印検出用の欠陥検査エリアレーザーセンサー17(第2の検出手段)(例えば、キーエンス社製 LV−H300など)とが設けられている。
【0031】
欠陥検査エリア変位計16(第1の検出手段)は、幅が数10mm(例えば、幅30mm)の平行光18を投光する変位計光源部19と、変位計受光部20とからなる。欠陥検査エリア変位計16(第1の検出手段)のエッジ測定精度は、例えば±2μmとする。
【0032】
欠陥検査エリア37は欠陥検査PLC23で欠陥部分の検出位置の割り出しを行っており、駆動制御PLC21と欠陥検査PLC23とを統合するシステム制御PLC25にて、後述のレーザーマーキング制御用PC33にマーキングエリアでの欠陥部分の検出位置の情報を送っている。欠陥検査エリアレーザーセンサー17(第2の検出手段)は、例えば、30mm×0.4mm(フィルム幅方向×フィルム搬送方向)の照射エリアで投光するレーザーセンサー投光部17aと、レーザーセンサー受光部17bとから構成することができる。搬送方向座標目印12がこの照射エリアを通り過ぎたとほぼ同時に欠陥検査PLC23からシステム制御PLC25にON信号が送られる。
【0033】
ラインセンサカメラ14及び光源15よりも下流に、アキュムレータ26が設けられ、アキュムレータ26より上流の欠陥検査エリア37は連続運転を行っており、アキュムレータ26より下流のマーキングエリア38ではレーザーマーキング時にはワイヤグリッド偏光フィルム11を停止させ、マーキングが済み次第、搬送を始める間欠運転で搬送される。マーキングエリア38でのフィルムの駆動速度、搬送距離はS字ロール2(40)により制御される。ここで、S字ロールでフィルムを搬送するとともに、アキュムレータ26を設けることで、フィルムの長手方向の搬送流れを中断させることなく、マーキングエリア38のマーキング位置で欠陥部分を停止させることができ、また、フィルム搬送時のズレを抑止でき、マーキングの精度を向上できるため好ましい。
【0034】
次に、マーキングエリアについて説明する。
【0035】
アキュムレータ26よりも下流に、欠陥マーキング用のレーザーマーカー27(例えばキーエンス社製 MD−V7100など)を設ける。図1及び図3に示されるように、レーザーマーカー27の上流には、ワイヤグリッド偏光フィルム11のフィルム端部検出用のマーキングエリア変位計28(例えば、キーエンス社製 LS7000など)(第1の検出手段)と、搬送方向座標目印検出用のマーキングエリアレーザーセンサー29(第2の検出手段)(例えば、キーエンス社製LV−H300など)とを設ける。マーキングエリア変位計28(第1の検出手段)は、幅が数10mm(例えば、幅30mm)の平行光30を投光する変位計光源部31と、変位計受光部32とからなる。マーキングエリア変位計28(第1の検出手段)のエッジ測定精度は、例えば±2μmとする。
【0036】
マーキングエリアレーザーセンサー29(第2の検出手段)は、例えば、30mm×0.4mm(フィルム幅方向×フィルム搬送方向)の照射エリアで投光するレーザーセンサー投光部29aと、レーザーセンサー受光部29bとから構成することができる。搬送方向座標目印12がこの照射エリアを通り過ぎたとほぼ同時に、マーキングエリアレーザーセンサー29(第2の検出手段)からシステム制御PLC25にON信号が送られる。
【0037】
シート13の中心36がレーザーマーカー27のマーキングエリアにおける中心点35に到達するまでの距離L2は、システム制御PLC25がON信号を受け取った直後から距離の測長が開始され、その距離がL2となった瞬間(シート中心36がレーザーマーカーのマーキングエリアの中心点35に到達した瞬間)に、アキュムレータ26によるフィルム蓄積が開始され、間欠運転ゾーンではフィルムが停止するように制御する。また、フィルムが完全に停止するまでの惰性走行による行き過ぎ量(ΔY)をパルスジェネレーターにより測長(第2の検出手段)し、搬送方向のマーキングの位置ズレ補正のためにシステム制御PLC25に格納される。
【0038】
続いて、欠陥検査エリア37の座標Xnについて説明する。ラインセンサカメラ14により検出された欠陥部分24のワイヤグリッド偏光フィルム11の幅方向の座標Xnは欠陥検査エリア変位計16(第1の検出手段)で認識された各シートのフィルムエッジ位置22からの距離で規定される。
【0039】
次に、搬送方向の座標Ynについて説明する。システム制御PLC25が欠陥検査エリアレーザーセンサー17(第2の検出手段)からのON信号を受信してから、パルスジェネレーターにて測長された搬送距離がL1となった瞬間の座標を0とし、そこから欠陥部分が検出されるまでの搬送距離をYnと規定する。なお、搬送方向の座標Ynはシステム制御PLC25がON信号を受信してから、パルスジェネレーターにて測長された搬送距離がL1となった瞬間にリセットされ、次のシートの座標0(原点)に戻る。
【0040】
以上のようにして得られた欠陥部分の座標がシート毎に格納される。なお、ここで、非透明部とは、何らかの理由で樹脂凹凸が無い部分のことである。樹脂凹凸が無ければ、アルミ(金属ワイヤ層)が蒸着された部分は単なるベタ膜(平面状の膜)となり、光を透過しない。
【0041】
仮想の裁断ラインに基づいて、規定された欠陥座標(Xn,Yn)の欠陥部分を含む不良ピース(不良製品部)にレーザーマーキングするための、幅方向、流れ方向のマーキングエリア38における欠陥座標(Xn’,Yn’)について説明する。
【0042】
X座標に関しては、欠陥検査エリア37からマーキングエリア38までの搬送中に生じる蛇行分のズレ(幅方向のズレ;蛇行量)(ΔX)を欠陥検査エリア変位計16(第1の検出手段)により検出されたエッジ位置22の座標とマーキングエリア変位計28(第1の検出手段)により検出されたエッジ位置34の座標とからシステム制御PLC25内で算出し、欠陥検査エリア37での座標が補正され、システム制御PLC25へ格納される。搬送方向のマーキングに関しては前述した方法により測長された間欠運転停止時の惰性走行による行き過ぎ量(ΔY)も第2の検出手段により検出してシステム制御PLC25へ格納される。すなわち、マーキングエリア38での欠陥座標(Xn’,Yn’)は、システム制御PLC25内にて(Xn+ΔX、Yn+ΔY)と計算しなおされる。
【0043】
以上述べたとおり、第1の検出手段及び、第2の検出手段により、精度良くマーキングエリアでの欠陥座標を精度よく決定することができる。次に、第1及び第2の検出手段に基づいてマーキングエリアにおけるフィルムの仮想の裁断ライン46について説明する。
【0044】
図4に示すように、第1及び第2の検出手段に基づいてマーキングエリアにおけるフィルムの仮想の裁断ライン46を挿入する。後述のハーフカットでの目印と仮想ピース43の位置を規定するために、マーキングエリア変位計28でマーキングエリアにおけるフィルムの蛇行量を検出してフィルム端から特定の位置にフィルム幅方向の基準線44を仮想の裁断ライン46と同じ位置になるようにレーザーマーカー27でマーキングすることが好ましい。同様に、第2の検出手段で行き過ぎ量を補正してシートの座標0(原点)から特定の位置にフィルム搬送方向に目印となる基準線45を仮想の裁断ライン46と同じ位置にレーザーマーカー27でマーキングすることが好ましい。
【0045】
フィルム幅方向の基準線44及びフィルム搬送方向の基準線45を基準にして、図4に示すように仮想の裁断ライン46を想定して仮想ピース(仮想製品部)43のサイズや数を規定する。このとき、仮想ピース43のサイズや数、および形状については、任意に変更することができる。また、不良ピースへのマーキングの位置や大きさ、および形状については任意に設定することができる。
【0046】
レーザーマーキングにより、ワイヤグリッド偏光フィルム上のアルミニウムは焼き飛ばされるが、フィルムには損傷が生じない。ここで、前述の仮想の裁断ライン46に基づき欠陥部分を含む不良ピースにマーキングする手段(システム制御PLC25から、仮想の裁断ライン46に基づき欠陥部分を含む不良ピースにマーキングするよう、レーザーマーキング用PC33に、指示を出す手段)を有するため、欠陥部分を含まない良品ピースへのマーキングがなくなり、製品の歩留まりが飛躍的に向上する。
【0047】
レーザーの波長は被マーキング材により適宜選択されるが、レーザー波長1064nmのYAGレーザーを使用することが好ましい。1064nmの波長の光に対し、アルミニウムは約10%の吸収を持つのに対し、ワイヤグリッド偏光フィルムの基材として用いられるTAC(トリアセチルセルロース)や、微細凹凸を形成しているUV硬化樹脂は吸収がないため、アルミニウムのみが光を吸収し、焼き飛ばされる。
【0048】
一方、波長10.6μmのCOレーザーを使用すると、TACやUV硬化樹脂にも吸収があるため、レーザー照射によりフィルムに穴があいて(貫通して)しまい、発塵量の増大やフィルムの変形の原因となる。
【0049】
1シートのレーザーマーキングが終了した後、マーキングエリア38のS字ロール2(40)によりワイヤグリッド偏光フィルム11の搬送が再開され、次のシート中心36がマーキングエリアの中心点35に来た際に、停止させる。
【0050】
以上のようにして欠陥検査及びレーザーマーキングが施され、巻き取られた検査済みロール42をシート毎に裁断したのち、表面に粘着層を有する透明のPETフィルムと貼り合わせ、さらにPETフィルム上のワイヤグリッド偏光フィルム11のみがフィルム幅方向の基準線44およびフィルム搬送方向の基準線45に基づいて仮想ピース43の位置に合うようにハーフカットする。
【0051】
続いて、その他とりつけてもよい装置について、以下に説明する。
【0052】
マーキングエリア38には、レーザーマーキングにより発生する塵を捕集する集塵機を設けることが好ましく、また、被マーキング材が飛散する近傍を小さな箱で仕切り、その箱内を吸引する形式で集塵機を設けることが、さらに好ましい。また、ワイヤグリッド面に接触するS字ロールなどのロールの材質は、ゴムであることが好ましい。また、検査済みロール42とマーキングエリア38の間に、ワイヤグリッド偏光フィルム11の光学特性をシート毎にチェックする透過率モニタを設けてもよい。透過率モニタの機能として、ワイヤグリッド偏光板の全方向の透過率だけでなく、透過軸方向および非透過軸方向に分けて透過率を測定できることが、さらに好ましい。また、原反ロール41と検査済みロール42の間の任意の場所に製品番号等を印字するインクジェットプリンタを設けてもよい。
【0053】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
本実施の形態に係る欠陥マーキング装置は、幅230mm、厚さ80μm、長さ250mのワイヤグリッド偏光フィルム11が巻き取られた原反ロール41の検査を行った。
【0054】
図2及び図3に示すように、このワイヤグリッド偏光フィルム11の長手方向には幅方向50mm、流れ方向1.5mmの大きさの搬送方向座標目印12を約260mm間隔で設けた。
【0055】
ここで、この260mmを1単位(シート13)とし、後工程で枚葉に裁断した。また、ワイヤグリッド偏光フィルム11を繰り出す前につけた保護フィルムは原反ロール41の繰り出しと同時に剥がし、ワイヤグリッド偏光フィルム11を巻取る前につけた保護フィルムは検査済みロール42の巻き取りと同時につけることで用いた。
【0056】
・欠陥検査エリア
原反ロール41からのワイヤグリッド偏光フィルム11はS字ロール1(39)により引き出し、まず、欠陥検査エリア37に入れた。ここで、引き出すときの張力は、222gf/mmとした。図1及び図2に示されるように、欠陥検査エリア37のワイヤグリッド偏光フィルム11の上方にラインセンサカメラ14を設け、また、ラインセンサカメラ14の直下に光源15を設置した。ラインセンサカメラ14及び光源15よりも200mm上流に、ワイヤグリッド偏光フィルム11のフィルム端部検出用の欠陥検査エリア変位計16(第1の検出手段)(キーエンス社製 LS7000)と、搬送方向座標目印検出用の欠陥検査エリアレーザーセンサー17(第2の検出手段)(キーエンス社製 LV−H300)を設けた。
【0057】
欠陥検査エリアレーザーセンサー17(第2の検出手段)のレーザーの照射エリアは30mm×0.4mm(フィルム幅方向×フィルム搬送方向)であり、搬送方向座標目印12がこの照射エリアを通り過ぎたとほぼ同時に欠陥検査PLC23からシステム制御PLC25にON信号を送った。この欠陥検査エリアレーザーセンサー17(第2の検出手段)の照射エリアからラインセンサカメラ14の撮像点までの距離L1は182.517mmとした。
【0058】
ラインセンサカメラ14及び光源15よりも約500mm下流にアキュムレータ26が設け、アキュムレータ26より上流の欠陥検査エリア37は0.5m/minの連続運転を行った。アキュムレータ26より下流のマーキングエリア38ではレーザーマーキング時にはワイヤグリッド偏光フィルム11を停止させ、マーキングが済み次第、搬送を始める間欠運転で搬送した。マーキングエリア38でのフィルムの駆動速度、搬送距離はS字ロール2(40)により制御した。
【0059】
・マーキングエリア
アキュムレータ26よりも約500mm下流には欠陥マーキング用のレーザーマーカー27(キーエンス社製 MD−V7100)を設けた。図1及び図3に示されるように、レーザーマーカー27から約300mm上流には、ワイヤグリッド偏光フィルムのフィルム端部検出用のマーキングエリア変位計28(キーエンス社製 LS7000)(第1の検出手段)と、搬送方向座標目印検出用のマーキングエリアレーザーセンサー29(第2の検出手段)(キーエンス社製LV−H300)とを設けた。
【0060】
マーキングエリアレーザーセンサー29(第2の検出手段)のレーザーの照射エリアは30mm×0.4mm(フィルム幅方向×フィルム搬送方向)であり、搬送方向座標目印12がこの照射エリアを通り過ぎたとほぼ同時に、マーキングエリアレーザーセンサー29(第2の検出手段)からシステム制御PLC25にON信号を送った。シート13の中心36がレーザーマーカー27のマーキングエリアの中心点35に到達するまでの距離L2を294.500mmとし、システム制御PLC25がON信号を受け取った直後から距離の測長が開始され、その距離がL2となった瞬間(シート中心36がレーザーマーカーのマーキングエリアの中心点35に到達した瞬間)に、アキュムレータ26によるフィルム蓄積が開始され、間欠運転ゾーンではフィルムが停止するように制御した。また、フィルムが完全に停止するまでの惰性走行による行き過ぎ量(ΔY)をパルスジェネレーターにより測長(第2の検出手段)し、搬送方向のマーキングの位置ズレ補正のためにシステム制御PLC25に格納した。
【0061】
・欠陥検査エリアでの座標
続いて、欠陥検査エリア37の座標Xnについて説明する。
ラインセンサカメラ14により検出された欠陥部分24のワイヤグリッド偏光フィルム11の幅方向の座標Xnは欠陥検査エリア変位計16(第1の検出手段)で認識された各シートのフィルムエッジ位置22からの距離で規定した。
【0062】
次に、搬送方向の座標Ynについて説明する。
システム制御PLC25が欠陥検査エリアレーザーセンサー17(第2の検出手段)からのON信号を受信してから、パルスジェネレーターにて測長された搬送距離がL1となった瞬間の座標を0とし、そこから欠陥部分が検出されるまでの搬送距離をYnと規定した。
【0063】
以上のようにして得られた欠陥部分の座標をシート毎に格納した。本実施の形態においては、φ80μm以上の非透明部を欠陥部分とした。
【0064】
・マーキングエリアでの欠陥座標
以上のようにして規定された欠陥検査エリアでの欠陥座標(Xn,Yn)の欠陥部分を含む不良ピースにレーザーマーキングするための、幅方向、流れ方向のマーキングエリア38におけるマーキングエリアでの欠陥座標(Xn’,Yn’)について説明する。
【0065】
X座標に関しては、欠陥検査エリア37からマーキングエリア38までの搬送中に生じる蛇行分のズレ(幅方向のズレ;蛇行量)(ΔX)を欠陥検査エリア変位計16(第1の検出手段)により検出されたエッジ位置22の座標とマーキングエリア変位計28(第1の検出手段)により検出されたエッジ位置34の座標とからシステム制御PLC25内で算出し、欠陥検査エリア37での座標を補正し、システム制御PLC25へ格納した。搬送方向のマーキングに関しては前述した方法により測長された間欠運転停止時の惰性走行による行き過ぎ量(ΔY)も第2の検出手段により検出してシステム制御PLC25へ格納した。すなわち、マーキングエリア38での欠陥座標(Xn’,Yn’)は、システム制御PLC25内にて(Xn+ΔX、Yn+ΔY)と計算しなおし、レーザーマーキング制御用PC33へ送った。
【0066】
・ 仮想の裁断ライン
図4に示すように、ハーフカットでの目印と仮想ピース43の場所を規定するために、マーキングエリア変位計28でマーキングエリアにおけるフィルムの蛇行量を検出してフィルム端から25mmの位置にフィルム幅方向の基準線44を仮想の裁断ライン46に合うようにマーキングした。同様に、第2の検出手段で行き過ぎ量を補正してシート座標0(原点)から5mmの位置にフィルム搬送方向の基準線45を仮想の裁断ライン46に合うようにマーキングした。ただしここで、システム制御PLC25から、仮想の裁断ラインに基づき欠陥部分を含む不良ピースにマーキングするよう、レーザーマーキング用PC33に指示を出すように設定した。
【0067】
仮想ピース43のサイズは10mm×10mmに設定し、仮想の裁断ライン46に基づき欠陥部分を含む不良ピースの中心に5mm×5mm(フィルム幅方向×フィルム搬送方向)の「×」印をマーキングした。レーザー波長には、1064nmのYAGレーザーを使用した。ワイヤグリッド偏光フィルムの基材にはTACを用いた。
【0068】
1シートのレーザーマーキングが終了した後、マーキングエリア38のS字ロール2(40)によりワイヤグリッド偏光フィルム11の搬送が再開され、次のシート中心36がマーキングエリアの中心点35に来た際に、停止させた。
【0069】
以上のようにして欠陥検査及びレーザーマーキングが施され、巻き取られた検査済みロール42をシート毎に裁断したのち、表面に粘着層を有する透明のPETフィルムと貼り合わせた。
【0070】
さらにPETフィルム上のワイヤグリッド偏光フィルム11のみがカットされるように、フィルム幅方向の基準線44およびフィルム搬送方向の基準線45に合わせて、10mm×10mmのサイズのピースにハーフカットした。
【0071】
レーザーマーキング後のシートを目視にて確認したところ、シート上にはφ80μm以上の非透明部(欠陥部分)を含む「×」印のないピースは見当たらず、欠陥部分を含むピース全てにレーザーマーカーにより「×」印が挿入されていることがわかった。
【0072】
ハーフカット後、(レーザーマーキングされていないピース数)/(全ピース数)×100(%)で計算されるピースの収率は92%であった。
【0073】
(実施例2)
実施例1で用いたS字ロール1(39)及びS字ロール2(40)の双方をニップロールに置き換え、仮想の裁断ライン46を引かずに欠陥部分自体に欠陥部分を中心として半径0.5mmの円形でマーキングを施した以外は実施例1と同様の方法で実施した。その結果、レーザーマーキング後のシートを目視にて確認したところ、シート上にφ80μm以上の非透明部(欠陥部分)が、10mm×10mmの10ピースあたりに2個程度存在し、その横には半径0.5mmのレーザーマーキングの跡が確認された。すなわち、この実施例2においては、欠陥位置とマーキング位置が最大で200μmの誤差が生じることがわかった。ピースの収率は72%であった。
【0074】
また、ハーフカット後、目視検査を実施し、レーザーマーキングされたピースにマジックペンにて「×」の印を記入する作業をおこなったところ、その作業に要する時間は1シートあたり約5分であった。
【0075】
(実施例3)
実施例1とフィルムのパスラインを変え、アキュームを介さずにマーキングエリアでも連続運転となるように設定した以外は、実施例2と同様の方法で実施した。その結果、レーザーマーキング後のシートを目視にて確認したところ、シート上にφ80μm以上の非透明部(欠陥部分)が、10mm×10mmの10ピースあたりに3個程度存在し、その横には半径0.5mmのレーザーマーキングの跡が確認された。すなわち、この実施例2においては、欠陥位置とマーキング位置が最大で200μmの誤差が生じることがわかった。ピースの収率は67%であった。
【0076】
また、ハーフカット後、目視検査を実施し、レーザーマーキングされたピースにマジックペンにて「×」の印を記入する作業をおこなったところ、その作業に要する時間は1シートあたり約5分であった。
【0077】
(比較例1)
フィルム端部検出用の変位計(第1の検出手段)及び、搬送方向座標目印検出用のレーザーセンサー(第2の検出手段)を用いずに、実施例2と同様のマーキングをおこなったところ、シート上にはφ80μm以上の非透明部(欠陥部分)が随所に存在し、その横には半径0.5mmのレーザーマーキングの跡が確認された。すなわち、この比較例1においては、欠陥位置とマーキング位置が最大で500μmの誤差が生じることがわかった。ピースの収率は39%であった。
【0078】
また、ハーフカット後、目視検査を実施し、レーザーマーキングされたピースにマジックペンにて「×」の印を記入する作業をおこなったところ、その作業に要する時間は1シートあたり約20分の時間を要した。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光フィルム用欠陥マーキング装置及び欠陥マーキング方法によれば、蛇行量及び搬送距離を検出し、マーキング座標を補正するようにしているため、マーキングエリアでの欠陥位置の認識精度が従来に比べて格段に向上する。また、フィルムに仮想の裁断ライン46を引き、欠陥部分を含む不良ピースにマーキングして、欠陥部分を含まない良品ピースへのマーキングを防ぐようにしているため、製品の歩留まりが飛躍的に向上するとともに目視検査の工程の負荷を大幅に減少させることができる。
【0080】
また、本実施の形態では、アキュムレータ26による間欠運転をすることで、マーキングのズレを低減し、マーキングエリアでの欠陥座標の認識精度を向上させることができる。また、本実施の形態では、S字ロール1(39),S字ロール2(40)を用いることで、滑りによるズレを低減し、マーキング精度を向上することができる。更に、本実施の形態では、アキュムレータ26及びS字ロール39,40による支持及びフィルムの駆動と、欠陥部分の座標補正とにより、また、搬送方向座標目印12を設けることにより、長尺の巻物を細分化して、シート単位での取り扱いを行なうことができ、また、それにより、流れ方向の座標補正の精度を向上させることができる。
【0081】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、ワイヤグリッド偏光フィルムに限らず、光学関連、電子材料関連などワイヤグリッド偏光フィルムと同様に、μmオーダーの欠点が問題となるフィルム全般が対象となり、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
11 ワイヤグリッド偏光フィルム
12 搬送方向座標目印
13 シート
14 ラインセンサカメラ
15 光源
16 欠陥検査エリア変位計(第1の検出手段)
17 欠陥検査エリアレーザーセンサー(第2の検出手段)
18 平行光
19 変位計光源部
20 変位計受光部
21 駆動制御PLC
22 エッジ位置(欠陥検査エリアX座標原点)
23 欠陥検査PLC
24 欠陥部分
25 システム制御PLC
26 アキュムレータ
27 レーザーマーカー
28 マーキングエリア変位計(第1の検出手段)
29 マーキングエリアレーザーセンサー(第2の検出手段)
30 平行光
31 変位計光源部
32 変位計受光部
33 レーザーマーキング制御用PC
34 エッジ位置
35 マーキングエリアの中心点
36 シート中心
37 欠陥検査エリア
38 マーキングエリア
39 S字ロール1
40 S字ロール2
41 原反ロール
42 検査済みロール
43 仮想ピース
44 フィルム幅方向の基準線
45 フィルム搬送方向の基準線
46 仮想の裁断ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に長さ方向に搬送される長尺のフィルムの欠陥部分を欠陥検査エリアで検出し、該欠陥検査エリアよりも搬送方向下流側のマーキングエリアにおいて、仮想の裁断ラインに基づき前記検出された欠陥部分を含む不良ピースにマーキングを施すフィルム用欠陥マーキング装置であって、前記欠陥検査エリアで欠陥部分が検出されてから前記マーキングエリアでマーキングが施されるまでの前記欠陥部分の幅方向のズレである蛇行量を検出する第1の検出手段と、前記欠陥検査エリアで欠陥部分が検出されてからマーキングエリアでマーキングが施されるまでの前記欠陥部分の搬送距離、及びマーキングエリアでフィルムが完全に停止するまでの惰性走行による行き過ぎ量を検出する第2の検出手段と、前記マーキングエリアにおいて前記フィルムに前記仮想の裁断ラインを規定する手段と、前記第1及び第2の検出手段で検出した前記蛇行量、前記搬送距離及び前記行き過ぎ量に基づいて前記マーキングエリアにおける前記欠陥部分の座標を補正する手段と、前記仮想の裁断ラインに基づき前記欠陥部分を含む不良ピースにマーキングする手段と、を備えることを特徴とするフィルム用欠陥マーキング装置。
【請求項2】
搬送されるフィルムを支持するとともに、マーキングエリアで該フィルムが間欠搬送されるようにフィルムを蓄積することにより、フィルムの長手方向の搬送流れを中断させることなく、マーキングエリアのマーキング位置でフィルムの搬送を停止させるアキュムレータを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のフィルム用欠陥マーキング装置。
【請求項3】
S字ロールにより、前記フィルムの駆動をおこなうことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルム用欠陥マーキング装置。
【請求項4】
フィルムには、その長さ方向にわたって所定の間隔で、前記検出手段の検出対象となる目印が設けられ、検査後にこれらの目印を単位としてフィルムが枚葉に裁断されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のフィルム用欠陥マーキング装置。
【請求項5】
フィルム用欠陥マーキング装置が、ワイヤグリッド偏光フィルム用であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のフィルム用欠陥マーキング装置。
【請求項6】
連続的に長さ方向に搬送される長尺のフィルムの欠陥部分を欠陥検査エリアで検出し、該欠陥検査エリアよりも搬送方向下流側のマーキングエリアにおいて、仮想の裁断ラインに基づき検出された欠陥部分を含む不良ピースにマーキングを施すフィルムの欠陥マーキング方法であって、前記欠陥検査エリアで欠陥部分が検出されてからマーキングエリアでマーキングが施されるまでの前記欠陥部分の幅方向のズレである蛇行量を第1の検出手段によって検出するステップと、前記欠陥検査エリアで欠陥部分が検出されてからマーキングエリアでマーキングが施されるまでの前記欠陥部分の搬送距離、及びマーキングエリアでフィルムが完全に停止するまでの惰性走行による行き過ぎ量を第2の検出手段によって検出するステップと、前記マーキングエリアにおいて前記フィルムに前記仮想の裁断ラインを規定するステップと、前記第1及び第2の検出手段で検出した前記蛇行量、前記搬送距離及び前記行き過ぎ量に基づいて前記マーキングエリアにおける前記欠陥部分の座標を補正するステップと、前記仮想の裁断ラインに基づき欠陥部分を含む不良ピースにマーキングするステップを含むことを特徴とする、欠陥マーキング方法。
【請求項7】
搬送されるフィルムを支持するアキュムレータを用いて、マーキングエリアで該フィルムが間欠搬送されるようにフィルムを蓄積することにより、フィルムの長手方向の搬送流れを中断させることなく、マーキングエリアのマーキング位置でフィルムの搬送を停止させるステップを更に含むことを特徴とする請求項6に記載の欠陥マーキング方法。
【請求項8】
S字ロールにより、前記フィルムの駆動をおこなうことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の欠陥マーキング方法。
【請求項9】
搬送されるフィルムがワイヤグリッド偏光フィルムであることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の欠陥マーキング方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のフィルム用欠陥マーキング装置によって欠陥部分が検出されてマーキングされるフィルムシートであって、その長さ方向にわたって所定の間隔で、前記検出手段の検出対象となる目印が設けられ、検査後にこれらの目印を単位として枚葉に裁断されることを特徴とするフィルムシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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