説明

フィルム破れ検出方法、フィルム破れ検出システム、およびテンタ

【課題】 形態や位置の異なるフィルム破れであっても確実に検出できるフィルム破れ検出方法、フィルム破れ検出装置、前記フィルム破れ検出方法を備えるテンタの提供。
【解決手段】フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出方法であって、前記一群の延伸クリップを駆動する延伸クリップ駆動モータの負荷トルクに基いてフィルムの破れを検出することを特徴とするフィルム破れ検出方法、フィルム破れ検出装置、テンタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム破れ検出方法、フィルム破れ検出システム、およびテンタに関し、特に、テンタ内部におけるフィルムの破れを迅速に検出できるフィルム破れ検出方法、前記フィルム破れ検出方法に使用されるフィルム破れ検出システム、および前記フィルム破れ検出システムを備えるテンタに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムを一定方向に搬送しつつ巾方向に延伸するテンタにおいて、フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出システムとしては、これまで種々のものが提案されてきた。
【0003】
このようなフィルム破れ検出システムとしては、たとえば第1の工程から送り出される連続ウェブのパスラインを、製品ウェブが供給される第2の工程と、破れたウェブが供給される第3の工程との間で変更するウェブのパスライン変更装置において、前記第1の工程から送り出される連続ウェブの破れを光学的に検出する破れ検出手段を設け、前記破れ検出手段によってウェブの破れが検出されると、前記第1の工程から送り出されるウェブをカッタで切断して第3の工程に案内するものがある(特許文献1)。
【0004】
また、フィルムに破れが生じた場合にパスラインの変更を行う装置において、光センサーで光の反射率の違いを検出し、光センサーの出力結果をCPUへ入力し、CPUからパスライン変更装置へ駆動信号を出力することが提案されている(特許文献2)。
【0005】
更に、テンタに透過窓を設け、前記透過窓の外側に赤外線測定器を設けて前記透過窓を透過した赤外線を検出してフィルムの温度を検出する。その際、フィルムからオリゴマー等の昇華物が透過窓に析出するのを防ぐため、析出温度以上に透過窓を加熱する技術も提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平6−270246号公報
【特許文献2】特開平6−329311号公報
【特許文献3】特開2002−148118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、テンタにおけるフィルムの破れ形態や破れの発生位置は様々であるにもかかわらず、前記フィルム破れ検出システムにおいては単一の方式でフィルムの破れを検出していたので、破れの形態や位置によっては検出できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、形態や位置の異なるフィルム破れであっても確実に検出できるフィルム破れ検出方法、前記フィルム破れ方法に好適に使用できるフィルム破れ検出装置、および前記フィルム破れ検出装置を備えるテンタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出方法であって、前記一群の延伸クリップを駆動する延伸クリップ駆動モータの負荷トルクに基いてフィルムの破れを検出することを特徴とするフィルム破れ検出方法に関する。
【0009】
テンタにおいてフィルムの延伸を行っているときは、延伸クリップ駆動モータは、夫々の延伸クリップの間の機械的損失や、フィルムの搬送速度、搬送方向の張力、および巾方向の延伸に必要なトルクなどを総合した必要トルクを発生する。そして、フィルムが破れると、大抵の場合はフィルムの巾方向延伸に必要なトルクが減少するので、延伸クリップ駆動モータの負荷トルクも減少する。したがって、延伸クリップ駆動モータの負荷トルクの減少を検出することにより、フィルムも破れが検出できる。
【0010】
前記フィルム破れ検出方法においては、延伸クリップ駆動モータの負荷トルクの減少を検出することにより、テンタから離れた場所で間接的にフィルム破れを検出できる。また、テンタ内部にセンサを配設する必要がないから、テンタ内部でフィルムが破れたときに、破れたフィルムなどがセンサと物理的に干渉してセンサが破損したり、センサにフィルムの破片が付着して誤作動したりするという問題がなく、フィルムの破れを安定して測定できる。
【0011】
前記フィルム破れ検出方法においては、負荷トルクが減少して予め定められた閾値よりも低くなったときにフィルム破れが生じたものと判定してもよく、また、負荷トルクの減少が一定時間以上続いたときにフィルム破れが生じたものと判定してもよい。
【0012】
また、延伸クリップ駆動モータの負荷トルクを検出する方法としては、前記延伸クリップ駆動モータに流れる負荷電流に基いて負荷トルクを求める方法の他に、トルクメータなどのトルク測定手段によって直接に負荷トルクを測定する方法などがある。
【0013】
請求項2に記載の発明は、フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出方法であって、前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の内部において前記フィルムの巾方向に沿って配設された複数の赤外線センサによってフィルムの破れを検出することを特徴とするフィルム破れ検出方法に関する。
【0014】
延伸クリップ駆動モータの負荷トルクの減少を検出する方法のみによってフィルム破れ検出を行なうときは、延伸クリップ駆動モータの負荷トルクの減少を伴わないフィルム破れを検出できない可能性があるが、前記フィルム破れ検出方法においては、フィルムの破れを検出するのに赤外線センサを併用しているから、負荷トルクの減少を伴わないフィルム破れも検出できる。また、前記赤外線センサは、フィルムの巾方向に沿って複数配設されているから、フィルムの中央部に生じた破れだけでなく、フィルムの側縁部における延伸クリップの噛み込み部に生じた破れも確実に検出できる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出方法であって、前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の出口に配設された超音波センサによってフィルムの破れを検出することを特徴とするフィルム破れ検出方法に関する。
【0016】
前記フィルム破れ検出方法においては、フィルムが存在する場合と存在しない場合との超音波センサにおける超音波の受波状態の違いに基いてフィルム破れを検出しているから、フィルム破れを高速で検出できる。更に、フィルムからの昇華物による障害が無く、しかも超音波センサは安価である。
【0017】
但し、超音波センサは耐熱性が無いものが多いが、前記フィルム破れ検出方法においては、超音波センサはテンタにおいてフィルムが搬送される筐体の出口に配設されているから、テンタ内部の熱の影響を受けることがない。
【0018】
請求項4に記載の発明は、 フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出方法であって、前記一群の延伸クリップを駆動する延伸クリップ駆動モータの負荷トルクに基くフィルム破れ検出と、前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の内部において前記フィルムの巾方向に沿って配設された複数の赤外線センサによるフィルム破れ検出とを行ない、前記2つのフィルム破れ検出のうち、少なくとも一方によってフィルム破れが検出されたら、フィルム破れが存在していると判定することを特徴とするフィルム破れ検出方法に関する。
【0019】
延伸クリップ駆動モータの負荷トルクの検出結果のみに基いてフィルム破れを検出する場合には、負荷トルクの変化が殆どない部分的な破れや、負荷トルクが予め設定された閾値まで低下する間にテンタ出口に達してしまうような破れの場合には検出できない可能性がある。
【0020】
また、赤外線センサをテンタにおける延伸ゾーンの直後に設けた場合には、延伸ゾーンでのフィルムの中心部における破れやクリップ噛み込み部における破れは検出できるが、延伸ゾーンよりも下流の熱固定・緩和ゾーンで生じたフィルム破れを検出することはできない。
【0021】
しかしながら、前記フィルム破れ検出方法においては、延伸クリップ駆動モータの負荷トルクの検出と赤外線センサにおける反射赤外線または透過赤外線の検出とを組み合わせているから、負荷トルクの測定では検出できないフィルム破れも前記赤外線センサで確実に検出できる。また、赤外線センサでは検出できない熱固定・緩和ゾーンで生じたフィルム破れは、延伸クリップ駆動モータの負荷トルクの変動から容易に検出できる。
【0022】
このように、前記フィルム破れ検出方法によれば、殆ど全てのフィルム破れを検出できる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、 フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出方法であって、前記一群の延伸クリップを駆動する延伸クリップ駆動モータの負荷トルクに基くフィルム破れ検出と、前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の内部において前記フィルムの巾方向に沿って配設された複数の赤外線センサによるフィルム破れ検出と、前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の出口に配設された超音波センサによるフィルム破れ検出とを行ない、これら3つのフィルム検出のうち、少なくとも1つによってフィルム破れが検出されたら、フィルム破れが存在していると判定することを特徴とするフィルム破れ検出方法に関する。
【0024】
延伸クリップ駆動モータの負荷トルクに基くフィルム破れ検出と赤外線センサによるフィルム破れ検出とによって殆どのフィルム破れを検出できるが、前記フィルム破れ検出方法においては、更に超音波センサによるフィルム破れ検出を併用することにより、破れが生じたフィルムが下流側の工程に進行することをほぼ100%防止できる。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のフィルム破れ検出方法において、前記延伸クリップ駆動モータの負荷トルクが所定の閾値を下回ったことを以って前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出方法に関する。
【0026】
前記フィルム破れ検出方法は、負荷トルクが所定の閾値を下回ったときにフィルム破れが破れたものと判定しているから、フィルム破れを正確に検出できる。
【0027】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のフィルム破れ検出方法において、前記フィルムの厚みが大きいときは、厚みが小さいときよりも閾値を高く設定するフィルム破れ検出方法に関する。
【0028】
延伸クリップ駆動モータの負荷トルクは、フィルムが厚いときは大きく、フィルムが薄いときは小さい。したがって、フィルムが薄いときの負荷トルクに合わせて閾値を決定すると、フィルムが厚いときはフィルム破れが検出されないことがある。一方、フィルムが厚いときの負荷トルクに合わせて閾値を設定すると、フィルムが薄いときは、実際にはフィルム破れが生じていないのにフィルム破れが検出される過剰検出が起きることがある。
【0029】
しかしながら、前記フィルム破れ検出方法においては、フィルムの厚みに応じて閾値を設定しているから、フィルムが薄い場合も厚い場合もフィルム破れが確実に検出され、しかも過剰検出が生じることもない。
【0030】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のフィルム破れ検出方法において、テンタにおいてフィルムに加わる張力が強いときは、前記張力が弱いときよりも閾値を高く設定するフィルム破れ検出方法に関する。
【0031】
テンタにおいては、製造開始直後は、フィルムに加わる張力が安定せず、また、巻取り装置の巻芯を交換する場合などのように後工程装置が作動するとフィルムに加わる張力が変動する。
【0032】
前記フィルム破れ検出方法においては、張力が強いときは、張力が弱いときよりも閾値を高く設定するから、フィルムに加わる張力が変動することによって過剰検出が生じたり、フィルム破れが検出されなかったりすることが確実に防止される。
【0033】
請求項9に記載の発明は、請求項1、4、5、および6の何れか1項に記載のフィルム破れ検出方法において、前記延伸クリップ駆動モータに流れる負荷電流に基いて前記負荷トルクを検出するフィルム破れ検出方法に関する。
【0034】
前記フィルム破れ検出方法においては、延伸クリップ駆動モータの負荷トルクが増加すると負荷電流も増加し、負荷トルクが減少すると負荷電流も減少することを利用し、負荷電流を測定することにより、負荷トルクを検出している。
【0035】
したがって、トルクメータなどの負荷トルクを測定する測定部が不要であり、また負荷トルクの変動を迅速に検出できる。
【0036】
請求項10に記載の発明は、請求項2、4、または5に記載のフィルム破れ検出方法において、フィルム破れを検出する赤外線センサが、前記テンタにおいてフィルムを巾方向に延伸する延伸ゾーンの直後に設けられてなるフィルム破れ検出方法に関する。
【0037】
フィルム破れの多くは、延伸ゾーンでフィルムを延伸する際に発生する。
【0038】
前記フィルム破れ検出方法においては、赤外線センサを延伸ゾーンの直後に設けているから、延伸ゾーンで発生したフィルム破れを確実に検出できる。
【0039】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載のフィルム破れ検出方法において、前記赤外線センサが、前記フィルムに当って反射する赤外光を検出する反射型赤外線センサであるフィルム破れ検出方法に関する。
【0040】
赤外線センサとして透過型センサを用いた場合には、透過による減光光量がフィルムの厚みや色彩によって変化するから、多品種の延伸フィルムを製造するラインにおいては、フィルムの厚みや色彩に応じて異なる赤外線センサを用意する必要が生じることがある。
【0041】
しかしながら、前記フィルム破れ検出方法においては、前記フィルムに当って反射する赤外光を検出する反射光型赤外線センサを用いているから、減光光量は、フィルムの厚みや色彩によらず一定である。したがって、製造するフィルムの品種が異なっても同一の赤外線センサが使用できる。
【0042】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のフィルム破れ検出方法において、前記赤外線センサを、前記フィルムから発生するオリゴマーの昇華温度よりも高く、前記赤外線センサの耐熱温度よりも低い温度に加熱してフィルム破れを検出するフィルム破れ検出方法に関する。
【0043】
テンタにおいては、フィルムを予熱して延伸し、次いで更に高い温度に加熱して熱固定および熱緩和を行なっているから、フィルムがポリエチレンテレフタレート樹脂の場合には表面からオリゴマーが昇華してテンタ内部に付着する。
【0044】
しかしながら、前記フィルム破れ検出方法においては、赤外線センサをオリゴマーの昇華温度よりも高い温度に加熱しているから、表面から昇華したオリゴマーが赤外線センサに付着して経時的に受光量が減少してフィルム破れを検出できなくなることが防止される。
【0045】
請求項13に記載の発明は、フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出システムであって、前記一群の延伸クリップを駆動する延伸クリップ駆動モータの負荷トルクを検出する負荷トルク検出部と、前記負荷トルク検出部における負荷トルクの検出結果に基いてフィルム破れが生じたか否かを判定するフィルム破れ判定部とを備えてなることを特徴とするフィルム破れ検出システムに関する。
【0046】
前記フィルム破れ検出システムは、請求項1に記載のフィルム破れ検出方法を実施するのに好適に使用できる。
【0047】
また、前記フィルム破れ検出システムにおいては、延伸クリップ駆動モータの負荷トルクの減少を検出することにより、フィルムも破れを検出しているから、テンタ内部にフィルム破れ検出用のセンサを配設する必要がない。したがって、前記フィルム破れ検出システムは構成が簡素になる。しかも、テンタ内部でフィルムが破損したときに、破れたフィルムなどがセンサと物理的に干渉してセンサが破損したり、センサにフィルムの破片が付着して誤作動したりするという問題がなく、フィルムの破れを安定して測定できる。
【0048】
前記フィルム破れ判定部においては、負荷トルクが減少して予め定められた閾値よりも低くなったときにフィルム破れが生じたものと判定してもよく、また、負荷トルクの減少が一定時間以上続いたときにフィルム破れが生じたものと判定してもよい。
【0049】
前記負荷トルク検出部においては、前記延伸クリップ駆動モータに流れる負荷電流に基いて負荷トルクを求めてもよく、また、トルクメータなどのトルク測定手段によって直接に負荷トルクを測定してもよい。
【0050】
請求項14に記載の発明は、フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出システムであって、前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の内部において前記フィルムの巾方向に沿って配設された複数の赤外線センサと、前記赤外線センサにおける受光結果に基づいてフィルム破れが生じたか否かを判定するフィルム破れ判定部とを備えてなることを特徴とするフィルム破れ検出システムに関する。
【0051】
前記フィルム破れ検出システムは、請求項2に記載のフィルム破れ検出方法を実施するのに好適に使用できる。
【0052】
前記フィルム破れ検出システムにおいては、赤外線センサによってフィルム破れを検出しているから、負荷トルクの減少を伴わないフィルム破れも検出できる。
【0053】
また、赤外線センサは、フィルムの幅方向に沿って複数配設されているから、フィルムの中心部近傍に生じた破れだけでなく、延伸クリップの噛み込み部に生じた破れも確実に検出できる。
【0054】
請求項15に記載の発明は、フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出システムであって、前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の出口に配設された超音波センサと、前記超音波センサにおける受波結果に基いてフィルム破れが生じたか否かを判定するフィルム破れ判定部とを備えてなることを特徴とするフィルム破れ検出システムに関する。
【0055】
前記フィルム破れ検出システムは、請求項3に記載のフィルム破れ検出方法の実施に好適に使用できる。
【0056】
前記フィルム破れ検出システムは、フィルムから昇華した昇華物による障害がない。また、超音波センサそのものが安価であるから、前記フィルム破れ検出システムも安価に構成できる。
【0057】
請求項16に記載の発明は、フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出システムであって、前記一群の延伸クリップを駆動する延伸クリップ駆動モータの負荷トルクを検出する負荷トルク検出部と、前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の内部において前記フィルムの巾方向に沿って配設された複数の赤外線センサと、前記負荷トルク検出部と前記赤外線センサとにおける赤外線の検出結果に基づいてフィルム破れが生じたか否かを判定するフィルム破れ判定部とを備え、前記フィルム破れ判定部は、前記負荷トルク検出部および前記赤外線センサの少なくとも一方においてフィルム破れが検出されたときはフィルム破れが存在するものと判断することを特徴とするフィルム破れ検出システムに関する。
【0058】
前記フィルム破れ検出システムは、請求項4に記載のフィルム破れ検出方法を実施するのに好適に使用できる。
【0059】
前記フィルム破れ検出システムにおいては、負荷トルク検出部と赤外線センサとを組み合わせて用いているから、負荷トルクの変化が殆どない部分的な破れや、負荷トルクが予め設定された閾値まで低下する間にテンタ出口に達してしまうような破れのように、負荷負荷トルクの大きな変動を伴わず、負荷トルク検出部では検出できないフィルム破れも赤外線センサで確実に検出できる。
【0060】
したがって、前記フィルム破れ検出システムによれば、大部分のフィルム破れが検出できる。すなわち、負荷トルクの測定では検出できないフィルム破れも前記赤外線センサで確実に検出でき、また、赤外線センサでは検出できない熱固定・緩和ゾーンで生じたフィルム破れも負荷トルクの測定で確実に検出できる。
【0061】
請求項17に記載の発明は、フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出システムであって、前記一群の延伸クリップを駆動する延伸クリップ駆動モータの負荷トルクを検出する負荷トルク検出部と、前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の内部において前記フィルムの巾方向に沿って配設された複数の赤外線センサと、前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の出口に配設された超音波センサと、前記負荷トルク検出部と前記赤外線センサと前記超音波センサとにおける赤外線の検出結果に基づいてフィルム破れが生じたか否かを判定するフィルム破れ判定部とを備え、前記フィルム破れ判定部は、前記負荷トルク検出部、前記赤外線センサ、および超音波センサの少なくとも一方においてフィルム破れが検出されたときはフィルム破れが存在するものと判断することを特徴とするフィルム破れ検出システムに関する。
【0062】
前記フィルム破れ検出システムは、請求項5に記載のフィルム破れ検出方法を実施するのに好適に使用できる。
【0063】
前記フィルム破れ検出システムによれば、赤外線センサーおよび負荷トルク検出部で検出漏れのあったフィルム破れも超音波センサで検出できるから、フィルム破れは、下流側に送られるまでにほぼ100%検出できる。
【0064】
請求項18に記載の発明は、請求項13、16、または17に記載のフィルム破れ検出システムにおいて、前記フィルム破れ判定部が、前記延伸クリップ駆動モータの負荷トルクが所定の閾値を下回ったことを以ってフィルム破れを検出するフィルム破れ検出システムに関する。
【0065】
前記フィルム破れシステムにおいては、負荷トルクが所定の閾値を下回ったときにフィルム破れが破れたものと判定しているから、フィルム破れを正確に検出できる。
【0066】
請求項19に記載の発明は、請求項18に記載のフィルム破れ検出システムであって、前記フィルム破れ判定部において、前記フィルムの厚みが大きいときは、厚みが小さいときよりも閾値が高く設定されるフィルム破れ検出システムに関する。
【0067】
前記フィルム破れ検出システムにおいては、請求項7のところで述べたのと同様の理由により、フィルムの厚さが厚いときも薄いときも確実にフィルム破れを検出できる。
【0068】
請求項20に記載の発明は、請求項18または19に記載のフィルム破れ検出システムであって、前記フィルム破れ判定部において、テンタにおいてフィルムに加わる張力が強いときは、前記張力が弱いときよりも閾値が高く設定されるフィルム破れ検出システムに関する。
【0069】
前記フィルム破れ検出システムによれば、フィルムに加わる張力が変動することによって過剰検出が生じたり、フィルム破れが検出されなかったりすることが確実に防止される。
【0070】
請求項21に記載の発明は、請求項18〜20の何れか1項に記載のフィルム破れ検出システムにおいて、前記フィルム破れ判定部が、テンタが定常状態で運転されているときは、前記延伸クリップ駆動モータの負荷トルクの現在値に基いて定められた閾値SV2に基き、前記テンタにおいてフィルムの張力に所定の大きさ以上の変動があったときは、閾値SV2よりも小さな所定の閾値SV1に基いてフィルムの破れを検出するフィルム破れ検出システムに関する。
【0071】
前記フィルム破れ検出システムによれば、テンタが定常状態で運転されているときに巻取り装置などの後工程装置が作動してフィルムの張力が低下したときに、これをフィルム破れとして誤検出するという問題が効果的に防止される。
【0072】
請求項22に記載の発明は、請求項18〜21の何れか1項に記載のフィルム破れ検出システムにおいて、前記フィルム破れ判定部が、前記延伸クリップ駆動モータに流れる負荷電流に基いて前記負荷トルクを検出するフィルム破れ検出システムに関する。
【0073】
前記フィルム破れ検出システムにおいては、負荷トルクを検出するためにトルクメータなどのトルク測定手段を付加する必要がないから、構成が簡略になる。
【0074】
請求項23に記載の発明は、請求項14、16、または17に記載のフィルム破れ検出システムにおいて、前記赤外線センサが、前記テンタにおいてフィルムを巾方向に延伸する延伸ゾーンの直後に設けられてなるフィルム破れ検出システムに関する。
【0075】
前記フィルム破れ検出システムにおいては、赤外線センサを延伸ゾーンの直後に設けているから、延伸ゾーンで発生したフィルム破れを確実に検出できる。
【0076】
請求項24に記載の発明は、請求項23に記載のフィルム破れ検出システムにおいて、前記赤外線センサが、前記フィルムに当って反射する赤外光を検出する反射型赤外線センサであるフィルム破れ検出システムに関する。
【0077】
赤外線センサとして透過型センサを用いた場合には、透過による減光光量がフィルムの厚みや色彩によって変化するから、多品種の延伸フィルムを製造するラインにおいては、フィルムの厚みや色彩に応じた検出波長領域や感度を有する赤外線センサを複数用意する必要が生じることがある。
【0078】
しかしながら、前記フィルム破れ検出システムにおいては、前記フィルムに当って反射する赤外光を検出する反射光型赤外線センサを用いているから、フィルムの厚みや色彩が異なっても同一の赤外線センサでフィルム破れを検出でき、システムの構成が簡略化される。
【0079】
請求項25に記載の発明は、請求項24に記載のフィルム破れ検出方法において、前記赤外線センサが、フィルム破れ検出時には、フィルムから発生するオリゴマーの昇華温度よりも高く、前記赤外線センサの耐熱温度よりも低い温度に加熱されるフィルム破れ検出システムに関する。
【0080】
前記フィルム破れ検出システムにおいては、赤外線センサをオリゴマーの昇華温度よりも高い温度に加熱しているから、フィルムを熱固定、緩和処理中にオリゴマーのような昇華物が発生する場合においても、発生した昇華物が赤外線センサに付着して経時的に受光量が減少してフィルム破れを検出できなくなることが防止される。
【0081】
請求項26に記載の発明は、請求項15、16、または17に記載のフィルム破れ検出システムにおいて、前記超音波センサが、前記フィルムの幅方向に沿って複数設けられてなるフィルム破れ検出システムに関する。
【0082】
前記フィルム破れ検出システムにおいては、フィルムの中央部に生じた破れだけでなく、延伸クリップ噛み込み部近傍に生じた破れも検出できる。
【0083】
請求項27に記載の発明は、フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタであって、前記フィルムの破れを検出する請求項13〜26の何れか1項に記載のフィルム破れ検出システムを備えることを特徴とするテンタに関する。
【0084】
前記テンタにおいては、延伸ゾーン、熱固定・緩和ゾーン、および冷却ゾーンの何れのゾーンで生じたフィルム破れであってもテンタにおいてフィルムが搬送される筐体の内部または出口近傍で検出できるから、テンタ内で破れたフィルムが後工程に送られて後工程装置が破損したり、製造ロスが生じたり、非定常な復旧作業が生じたりすることが効果的に防止される。
【発明の効果】
【0085】
以上説明したように、本発明によれば、形態や位置の異なるフィルム破れであっても確実に検出できるフィルム破れ検出方法、フィルム破れ検出システム、および前記フィルム破れ検出システムを備えるテンタが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
1.実施形態1
本発明に係るテンタを有する二軸延伸フィルム製造ラインの一例について以下に説明する。
【0087】
実施形態1に係る二軸延伸フィルム製造ライン100は、図1および図2に示すように、フィルムの搬送方向に沿って上流側から下流側に向かって、原反フィルムを製造する原反フィルム製造部6と、原反フィルム製造部6で製造された原反フィルムFを長手方向に延伸する縦延伸部4と、縦延伸部4で長手方向に延伸された原反フィルムFを幅方向に延伸するテンタ2と、テンタ2で幅方向に延伸して得られた二軸延伸フィルムfを巻き取る巻取り部8とが配置されている。
【0088】
原反フィルム製造部6は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などの原料樹脂がフィルム状に押し出されるスリット状のダイ62と、ダイ62で押し出された原料樹脂のフィルムを冷却する冷却ドラム64とを有する。
【0089】
縦延伸部4は、原反フィルムFが所定のラップ角で巻回される一群のローラ42が配設されている。
【0090】
ローラ42は、入口から出口に向かってフィルムFを予熱する予熱ローラ42aと、予熱ローラ42aで予熱された原反フィルムFを長手方向に延伸する延伸ローラ42bと、延伸ローラ42bで延伸された原反フィルムFを冷却する冷却ローラ42cとに分けられる。延伸ローラ42bにおいては、出口側の延伸ローラ42bの回転速度を入口側の延伸ローラ42bの回転速度よりも大きくすることにより、導入されたフィルムFが長手方向に延伸される。
【0091】
テンタ2は、図3に示すように、筐体20と、筐体20の内部に、両側壁に沿ってほぼ筐体20の全長に亘って設けられた1対のクリップ延伸装置22とを備える。
【0092】
クリップ延伸装置22は、一群の延伸クリップ22Aと、延伸クリップ22Aが装着されたループ状の駆動チェーン22Bと、駆動チェーン22Bを回転させて延伸クリップをフィルムFの搬送方向aに沿って移動させる延伸クリップ駆動モータ22Cとを備える。クリップ延伸装置22には、更に、入口側に延伸クリップ22Aを閉じるクリップ閉じ部材(図示せず。)が設けられ、出口側に延伸クリップ22Aを開くクリップ開き部材(図示せず。)が設けられている。
【0093】
テンタ2は、入口から出口に向かって、予熱ゾーン2A、延伸ゾーン2B、熱固定ゾーン2C、熱緩和ゾーン2D、ニュートラルゾーン2E,および冷却ゾーン2Fに分けられている。クリップ延伸装置22は、延伸ゾーン2Bにおいて外側に向かって屈曲しているが、それ以外のゾーンでは互いに平行に設けられている。
【0094】
予熱ゾーン2Aおよび延伸ゾーン2Bは延伸温度に加熱され、熱固定ゾーン2Cおよび熱緩和ゾーン2Dは、前記延伸温度よりもさらに高い温度に加熱されている。したがって、熱緩和ゾーン2Dと冷却ゾーン2Fとの温度差が大きいので、間にニュートラルゾーン2Eを設けて両者の温度差を緩和している。
【0095】
予熱ゾーン2Aにおいては、導入されたフィルムFは予熱されると同時に、フィルムFの両側縁が延伸クリップ22Aで把持される。予熱ゾーン2Aで予熱されたフィルムFは、延伸ゾーン2Bに導入され、延伸クリップ22Aで幅方向に沿って外側に引張られて延伸される。フィルムFは、延伸ゾーン2Bで幅方向に沿って延伸された後、熱固定ゾーン2Cに導入され、延伸構造が熱固定される。そして、熱緩和ゾーン2Dで焼き鈍し処理が行なわれてフィルムF内部に残存する応力が緩和される。熱緩和ゾーン2Dを通過したフィルムFは、ニュートラルゾーン2Eを通過して冷却ゾーン2Fで所定温度まで冷却されてテンタ2から導出される。
【0096】
筐体20内部における延伸ゾーン2Bの直後には、赤外線センサ24がフィルムFの幅方向に沿って3個設けられている。またテンタ2の出口には、フィルムFの搬送経路を上下から挟むように超音波センサ26が設けられている。超音波センサ26もまた、フィルムFの幅方向に沿って3組設けられている。
【0097】
赤外線センサ24は、何れも反射型赤外線センサであり、延伸ゾーン2BにおいてフィルムFが加熱されて生じるオリゴマーなどの昇華物が付着しないように、前記昇華物の昇華温度よりも高く、赤外線センサ24そのものの耐熱温度よりは低い温度に加熱されている。したがって、フィルムFの厚みや色彩などに関係無く、フィルム破れを安定に検出できる。例えば、受光素子、発光素子を持ち、発光素子から赤外光を出力し、フィルムFからの反射光を受光素子で受光する反射型赤外線センサの場合、フィルムFが存在するときの赤外光の反射光量とフィルムFがないときの赤外光の反射光量の検出量の差からフィルム破れを検出できる。
【0098】
テンタ2には、更に、延伸クリップ駆動モータ22Cの負荷電流を測定する負荷電流測定部25が設けられている。フィルムFに破れが生じて延伸クリップ駆動モータ22Cの負荷トルクが低下すると負荷電流も低下するから、負荷電流測定部25において負荷電流の降下を検出することにより、フィルム破れを検出できる。なお、図3において28は、延伸クリップ駆動モータ22Cを駆動するインバータである。
【0099】
縦延伸部4とテンタ2との間には、レーザ光でフィルムFを裁断するレーザカッタ10が設けられ、テンタ2と巻取り部8との間には、裁断刃でフィルムFを裁断するカッタ12が設けられている。レーザカッタ10の下方には、レーザカッタ10で裁断された部分よりも上流側のフィルムを粉砕処理する粉砕処理装置14と、レーザカッタ10を通過したフィルムFの搬送経路をテンタ2に向かう第1の経路と粉砕処理装置14に向かう第2の経路との何れかに切り替えるフィルム経路切替部15とが設けられている。一方、カッタ12の下方には、カッタ12で切断された部分よりも上流側のフィルムFを粉砕処理する粉砕処理装置16と、カッタ12を通過したフィルムFの搬送経路を巻取り部8に向かう第1の経路と粉砕処理装置16に向かう第2の経路との何れかに切り替えるフィルム経路切替部17とが設けられている。
【0100】
テンタ2においては、図4においてAおよびCで示すようにフィルムFの中央部に破れが生じたり、Bで示すようにフィルムFにおいて延伸クリップ22Aが噛み込む延伸クリップ噛み込み部に破れが生じたりすることがある。したがって、テンタ2内部でのフィルム破れの形態と発生場所とを大雑把に纏めると、
タイプa.延伸ゾーン2Bで生じたフィルム中央部の破れ、
タイプb.延伸ゾーン2Bで生じたクリップ噛み込み部の破れ、
タイプc.熱固定ゾーン2Cまたは熱緩和ゾーン2Dで生じたフィルム中央部の破れ、
タイプd.熱固定ゾーン2Cまたは熱緩和ゾーン2Dで生じたクリップ噛み込み部の破れ、
タイプe.冷却ゾーン2Fで生じたフィルム中央部の破れ、
タイプf.冷却ゾーン2Fで生じたクリップ噛み込み部の破れ、
の6種類に纏められる。
【0101】
前記6種類のフィルム破れのうち、負荷トルクの低下を伴う破れは、発生箇所に関係無く負荷電流測定部25で検出される。
【0102】
一方、負荷トルクの低下を伴わない破れ、具体的にはフィルム中央部またはクリップ噛み込み部が部分的に破れたに過ぎないものは負荷電流測定部25では検出されない。しかしながら、このような破れであっても、フィルム破れAやフィルム破れBのように延伸ゾーン2Bで生じたものは、赤外線センサ24で検知される。また、フィルム破れC〜フィルム破れFのように熱固定ゾーン2Cまたはそれよりも下流で生じたフィルム破れは、超音波センサ26で検知される。
【0103】
また、赤外線センサ24および超音波センサ26においては、タイプa,c,eのようにフィルムの中央部に生じた破れは中央に位置するセンサで検知され、タイプb,d,fのようにフィルムのクリップ噛み込み部に生じた破れは、両端に位置するセンサの何れかで検知される。したがって、どの位置のセンサで破れが検出されたかにより、フィルム破れの位置を特定することもできる。
【0104】
負荷電流測定部25および赤外線センサ24の少なくとも一方でフィルム破れが検出されたときは、カッタ12が作動し、フィルムFをテンタ2よりも下流側で裁断する。そして、フィルムFにおいてフィルム破れが生じた部分は、フィルム経路切替部17によって粉砕処理装置16に案内されて粉砕処理され、再利用される。
【0105】
一方、負荷電流測定部25および赤外線センサ24の何れでもフィルム破れが検出されず、超音波センサ26で始めてフィルム破れが検出されたときは、カッタ12を作動させる時間的な余裕がないから、レーザカッタ10を作動させ、テンタ2の上流側でフィルムFを切断する。フィルムFの切断部よりも下流側の部分は、テンタ2を通過して巻取り部8に送られる。一方、フィルムFの切断部よりも上流側の部分は、フィルム経路切替部15によって粉砕処理装置14に案内されて粉砕処理され、再利用される。
【0106】
以下、負荷電流測定部25でフィルム破れを検出する原理および手順について詳説する。
【0107】
図5においてA〜Cに示すように、フィルムFの厚みが大きなときは、負荷電流測定部25で検出される負荷電流も大きく、フィルムFの厚みが小さなときは、負荷電流測定部25で検出される負荷電流も小さい。そして、領域aに示すように、製造開始直後は、負荷電流も経時的に低下する。更に、領域bに示すように、巻取り部8において巻芯を交換する場合のように後工程装置が動作することによっても負荷電流の値は変動する。ここで、前述のように、負荷電流と負荷トルクとは正比例するから、負荷電流の変動はとりもなおさず負荷トルクの変動でもある。
【0108】
そして、図6に示すように、フィルムFの厚みが大きな場合も小さな場合も、フィルム破れが発生すると負荷電流は夫々の電流下限値に向かって低下し、電流下限値で安定する。一方、後工程装置を動作させたときは、負荷電流は、図5において領域bに示すように瞬間的に低下または上昇するが直ちにもとの値に戻る。また、負荷電流そのものも、図7に示すように、通常は、フィルムの厚さの如何に寄らず、フィルム破れが発生したときのほうが、巻取り部8を起動または停止させたときよりも遥かに小さい。
【0109】
そこで、図7に示すように、フィルムFの厚さが大きい場合、中程度の場合、および小さい場合の夫々につき、負荷電流の閾値を、定常運転時における負荷電流の変動幅よりも小さく、フィルム破れが生じたときの負荷電流値よりも大きな値に定め、負荷電流測定部25で前記閾値よりも小さな負荷電流を検出したときはテンタ2内部でフィルム破れが生じたものと判定することにより、フィルム破れを検出できる。
【0110】
また、図8において(A)に示すように、巻取り部8などの後工程設備を作動させたときには、負荷電流は一旦急激に低下するが、直ちに元の定常状態の電流値に戻る。これに対して、テンタ2においてフィルム破れが生じたときは、同図において(B)に示すように、負荷電流は電流下限値に向かって単調に低下する。
【0111】
したがって、負荷電流値が低下した場合においても、図8において(A)に示すようなパターンを描く場合にはフィルムFには破れが生じていないと判定し、図8において(B)に示すようなパターンを描く場合にのみフィルムFに破れが生じたものと判定することにより、後工程設備を動作させたときの負荷電流の変化を、フィルム破れによる負荷電流変化と誤検出することが効果的に防止できる。
【0112】
また、図9に示すように、定常運転時の閾値SV2と後工程装置動作時の閾値SV1との2つの閾値を設定してもよい。ここで、後工程装置動作時には定常運転時よりも負荷電流の変動が大きくなるから、閾値SV1は、閾値SV2よりも低い値に設定される。そして、後工程装置に動作を開始するトリガー信号が入力されると同時に閾値をSV2からSV1に自動設定変更し、後工程装置に動作を停止するトリガー信号が入力されると、負荷電流の複数サンプルの平均値(例えば10点の平均値)が定常運転時の値に戻った時点t(秒)で閾値をSV1からSV2に自動設定再変更する。なお図9において、PVは負荷電流の測定値であり、PVAvは、特定測定時間、たとえば1〜2秒の間に特定の点数、たとえば10点PVを測定し、これを平均した値である。
【0113】
このような方法によっても、後工程設備を動作させたときの負荷電流の変化を、フィルム破れによる負荷電流変化と誤検出することが効果的に防止できる。
【0114】
実施形態1に係る二軸延伸フィルム製造ライン100においては、テンタ2でのフィルム破れは、通常は延伸クリップ駆動モータ22Cにおける負荷電流の低下として検知される。また、延伸クリップ駆動モータ22Cにおける負荷電流の低下を伴わないフィルム破れであっても通常は赤外線センサ24で検出される。
【0115】
したがって、フィルムFに生じた破れが巻取り部8に到達する前にカッタ12を動作させてフィルム破れの生じた箇所が巻取り部に送られることを防止できる。
【0116】
フィルム破れ検出手段としては、更に、超音波センサ26を備えているから、赤外線センサ24および負荷電流測定部25で検出されなかったフィルム破れであっても巻取り部8に送られることが防止される。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明のフィルム破れ検出方法は、二軸延伸ポリエチレン樹脂フィルムや二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム、二軸延伸エチレン・プロピレン共重合体樹脂フィルム、二軸延伸ポリ塩化ビニル樹脂フィルム、二軸延伸ポリスチレン樹脂フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムなど種々の二軸延伸フィルムを製造するのに使用されるテンタに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、実施形態1に係る二軸延伸フィルム製造ラインにおけるテンタまでの構成を示す概略図である。
【図2】図1は、実施形態1に係る二軸延伸フィルム製造ラインにおけるテンタから下流側のの構成を示す概略図である。
【図3】図3は、図1に示す二軸延伸フィルム製造ラインの備えるテンタの構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3に示すテンタにおいて生じる可能性のあるフィルム破れの形態を示す斜視図である。
【図5】図5は、定常運転時のフィルム厚みと図3に示すテンタの備える延伸クリップ駆動モータに流れる負荷電流の時間変化との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、フィルムの厚さが厚い場合と薄い場合とにおけるフィルム破れが生じたときの延伸クリップ駆動モータに流れる負荷電流の時間変化を示すグラフである。
【図7】図7は、フィルムの厚さが厚い場合、中程度の場合、および薄い場合における負荷電流の変動幅、閾値、およびフィルム破れが生じたときの延伸クリップ駆動モータに流れる負荷電流の関係を示すグラフである。
【図8】図8は、後工程装置を動作させたときとフィルム破れが生じたときとの延伸クリップ駆動モータに流れる負荷電流の時間変化を示すグラフである。
【図9】図9は、後工程装置の動作を開始したときと停止させたときとで、フィルム藪を判定する閾値を変更する例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0119】
2 テンタ
2A 予熱ゾーン
2B 延伸ゾーン
2C 熱固定ゾーン
2D 熱緩和ゾーン
2E ニュートラルゾーン
2F 冷却ゾーン
4 縦延伸部
6 原反フィルム製造部
8 巻取り部
20 筐体
22 クリップ延伸装置
22A 延伸クリップ
22B 駆動チェーン
22C 延伸クリップ駆動モータ
24 赤外線センサ
25 負荷電流測定部
26 超音波センサ
100 二軸延伸フィルム製造ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出方法であって、
前記一群の延伸クリップを駆動する延伸クリップ駆動モータの負荷トルクの変化に基いてフィルムの破れを検出することを特徴とするフィルム破れ検出方法。
【請求項2】
フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出方法であって、
前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の内部において前記フィルムの巾方向に沿って配設された複数の赤外線センサによってフィルムの破れを検出することを特徴とするフィルム破れ検出方法。
【請求項3】
フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出方法であって、
前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の出口に配設された超音波センサによってフィルムの破れを検出することを特徴とするフィルム破れ検出方法。
【請求項4】
フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出方法であって、
前記一群の延伸クリップを駆動する延伸クリップ駆動モータの負荷トルクに基くフィルム破れ検出と、前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の内部において前記フィルムの巾方向に沿って配設された複数の赤外線センサによるフィルム破れ検出とを行ない、
前記2つのフィルム破れ検出のうち、少なくとも一方によってフィルム破れが検出されたら、フィルム破れが存在していると判定することを特徴とするフィルム破れ検出方法。
【請求項5】
フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出方法であって、
前記一群の延伸クリップを駆動する延伸クリップ駆動モータの負荷トルクに基くフィルム破れ検出と、前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の内部において前記フィルムの巾方向に沿って配設された複数の赤外線センサによるフィルム破れ検出と、前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の出口に配設された超音波センサによるフィルム破れ検出とを行ない、
前記3つのフィルム破れ検出のうち、少なくとも1つによってフィルム破れが検出されたら、フィルム破れが存在していると判定することを特徴とするフィルム破れ検出方法。
【請求項6】
前記延伸クリップ駆動モータの負荷トルクが所定の閾値を下回ったことを以って前記フィルムの破れを検出する請求項1、4、または5に記載のフィルム破れ検出方法。
【請求項7】
前記フィルムの厚みが大きいときは、厚みが小さいときよりも閾値を高く設定する請求項6に記載のフィルム破れ検出方法。
【請求項8】
テンタにおいてフィルムに加わる搬送方向の張力が強いときは、前記張力が弱いときよりも閾値を高く設定する請求項7に記載のフィルム破れ検出方法。
【請求項9】
前記延伸クリップ駆動モータに流れる負荷電流に基いて前記負荷トルクを検出する請求項1、4、5、6、7、および8の何れか1項に記載のフィルム破れ検出方法。
【請求項10】
フィルム破れを検出する赤外線センサは、前記テンタにおいてフィルムを巾方向に延伸する延伸ゾーンの直後に設けられてなる請求項2、4、または5に記載のフィルム破れ検出方法。
【請求項11】
前記赤外線センサは、前記フィルムに当って反射する赤外光を検出する反射型赤外線センサである請求項10に記載のフィルム破れ検出方法。
【請求項12】
前記赤外線センサを、前記フィルムから発生するオリゴマーの昇華温度よりも高く、前記赤外線センサの耐熱温度よりも低い温度に加熱してフィルム破れを検出する請求項11に記載のフィルム破れ検出方法。
【請求項13】
フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出システムであって、
前記一群の延伸クリップを駆動する延伸クリップ駆動モータの負荷トルクを検出する負荷トルク検出部と、
前記負荷トルク検出部における負荷トルクの検出結果に基いてフィルム破れが生じたか否かを判定するフィルム破れ判定部とを
備えてなることを特徴とするフィルム破れ検出システム。
【請求項14】
フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出システムであって、
前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の内部において前記フィルムの巾方向に沿って配設された複数の赤外線センサと、
前記赤外線センサにおける受光結果に基づいてフィルム破れが生じたか否かを判定するフィルム破れ判定部とを
備えてなることを特徴とするフィルム破れ検出システム。
【請求項15】
フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出システムであって、
前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の出口に配設された超音波センサと、
前記超音波センサにおける受波結果に基いてフィルム破れが生じたか否かを判定するフィルム破れ判定部とを
備えてなることを特徴とするフィルム破れ検出システム。
【請求項16】
フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出システムであって、
前記一群の延伸クリップを駆動する延伸クリップ駆動モータの負荷トルクを検出する負荷トルク検出部と、
前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の内部において前記フィルムの巾方向に沿って配設された複数の赤外線センサと、
前記負荷トルク検出部と前記赤外線センサとにおける検出結果に基づいてフィルム破れが生じたか否かを判定するフィルム破れ判定部とを
備え、
前記フィルム破れ判定部は、前記負荷トルク検出部および前記赤外線センサの少なくとも一方においてフィルム破れが検出されたときはフィルム破れが存在するものと判断することを特徴とするフィルム破れ検出システム。
【請求項17】
フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタにおいて前記フィルムの破れを検出するフィルム破れ検出システムであって、
前記一群の延伸クリップを駆動する延伸クリップ駆動モータの負荷トルクを検出する負荷トルク検出部と、
前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の内部において前記フィルムの巾方向に沿って配設された複数の赤外線センサと、
前記テンタにおいてフィルムが搬送される筐体の出口に配設された超音波センサと、
前記負荷トルク検出部と前記赤外線センサと前記超音波センサとにおける検出結果に基づいてフィルム破れが生じたか否かを判定するフィルム破れ判定部とを
備え、
前記フィルム破れ判定部は、前記負荷トルク検出部、前記赤外線センサ、および超音波センサの少なくとも一方においてフィルム破れが検出されたときはフィルム破れが存在するものと判断することを特徴とするフィルム破れ検出システム。
【請求項18】
前記フィルム破れ判定部は、前記負荷トルク検出部で検出される延伸クリップ駆動モータの負荷トルクが所定の閾値を下回ったことを以ってフィルム破れを検出する請求項13、16、または17に記載のフィルム破れ検出システム。
【請求項19】
前記フィルム破れ判定部においては、前記フィルムの厚みが大きいときは、厚みが小さいときよりも閾値が高く設定される請求項18に記載のフィルム破れ検出システム。
【請求項20】
前記フィルム破れ判定部においては、テンタにおいてフィルムに加わる搬送方向の張力が強いときは、前記張力が弱いときよりも閾値が高く設定される請求項18または19に記載のフィルム破れ検出システム。
【請求項21】
前記フィルム破れ判定部においては、テンタが定常状態で運転されているときは、前記延伸クリップ駆動モータの負荷トルクの現在値に基いて定められた閾値SV2に基き、前記テンタにおいてフィルムの張力に所定の大きさ以上の変動があったときは、閾値SV2よりも小さな所定の閾値SV1に基いてフィルムの破れを検出する請求項18〜20の何れか1項に記載のフィルム破れ検出システム。
【請求項22】
前記負荷トルク検出部においては、前記延伸クリップ駆動モータに流れる負荷電流に基いて前記負荷トルクを検出する請求項18〜21の何れか1項に記載のフィルム破れ検出システム。
【請求項23】
前記赤外線センサは、前記テンタにおいてフィルムを巾方向に延伸する延伸ゾーンの直後に設けられてなる請求項14、16、または17に記載のフィルム破れ検出システム。
【請求項24】
前記赤外線センサは、前記フィルムに当って反射する赤外光を検出する反射型赤外線センサである請求項23に記載のフィルム破れ検出システム。
【請求項25】
前記赤外線センサは、フィルム破れ検出時には、フィルムから発生するオリゴマーの昇華温度よりも高く、前記赤外線センサの耐熱温度よりも低い温度に加熱される請求項24に記載のフィルム破れ検出方法。
【請求項26】
前記超音波センサは、前記フィルムの幅方向に沿って複数設けられてなる請求項15、16、または17に記載のフィルム破れ検出システム。
【請求項27】
フィルムの両側縁部を一群の延伸クリップで把持して一定方向に搬送することにより、前記フィルムを巾方向に延伸するテンタであって、
前記フィルムの破れを検出する請求項13〜26の何れか1項に記載のフィルム破れ検出システムを備えることを特徴とするテンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−15563(P2006−15563A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194444(P2004−194444)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】