説明

フィルム被覆板ガラス

本発明は、マグネトロンによって真空蒸着されかつ太陽光抵抗特性及び/又は低放射特性の薄層の集成体を含む、本質的に透明な板ガラスであって、保護表面層として、酸化チタンに基づきかつZrO,SiO,Crからなる群からの高硬度の少なくとも一種の他の金属酸化物に基づく層を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光抵抗(antisun)特性又は低放射(low−emission)特性を付与する一組のフィルムを含む板ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
問題の板ガラスの最も一般的な被覆は、「マグネトロンスパッタリング」として知られるマグネトロン支援真空蒸着技術によって作られる。
【0003】
これらの手段によって蒸着された層系は、熱的特性と光学的な点の両方に関して顕著な性能を達成することができる。それらは特に、極めて高い選択性を有することができる。換言すれば、それらは赤外線に対して強力なフィルターを構成することができると同時に、可視波長を通過させることができる。最良の条件下では、それらは完全な反射中立性を与えることができ、特に望ましくない着色を回避することができる。
【0004】
所望の品質に加えて、問題の板ガラスはまた、それらがさらされうる様々な攻撃要因に対して十分な抵抗性を示さなければならない。これらは特に化学的な攻撃要因(空気、水、塩霧など)であるが、それらの使用時の変形又は移動の過程で受ける機械的な攻撃要因もある。
【0005】
これらの太陽光抵抗特性及び/又は低放射特性を有する板ガラスは常に、赤外線を反射する「機能」層、及び第一層を保護しかつ可視波長の反射を最小にする誘電層の組を含む。
【0006】
保護層のうち、最外のものは特に、前述のようにこれらの系に化学的耐性及び機械的強度特性を与えるが、他の特性を明らかに与えない。例えば、機械的強度のために有名である層、特に従来提案されている特定の酸化物は、例えばSiOを生成することが困難でありうる。その点について、SnOは優れた耐性を示さない。これらの表面層のための別の可能性のある窒化物は、窒素雰囲気下の蒸着を必要とし、それは使用の可能性を制限する。他の層は満足のいく光透過率を与えない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、これらの太陽光抵抗及び/又は低放射性の系のための表面層を提案し、それは従来技術の系のそれと比較して改良された特性を与えるものである。
【0008】
本発明は、表面層として酸化チタンに基づきかつZrO,SiO,Crからなる群からの高硬度の少なくとも一種の他の金属酸化物に基づく層を与えることを提案する。
【0009】
酸化チタン及び他の金属のそれぞれの割合は広い範囲をカバーすることができる。効果が顕著であるためには、追加の酸化物が全体の少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%でなければならない。
【0010】
混合された酸化物では、酸化チタンは少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%の割合で存在する。
【0011】
特に好ましい態様では、酸化チタンは少なくとも55重量%である。
【0012】
本発明に従って使用される混合酸化物では、酸化チタンに加えて、酸化ジルコニウムがその極めて高い硬度のために特に好ましい。それは表面層の15重量%〜50重量%の割合で存在することが有利である。
【0013】
チタンの酸化物及び上で挙げた金属に加えて、本発明による表面層はまた、前述の酸化物から実際に分離できない追加の酸化物を含むことができる。これはランタノイド、例えば酸化イットリウム又は酸化ハフニウムに対して特に当てはまる。これらの追加の酸化物が存在するとき、それらの含有量は比較的制限され、全体の8重量%を越えず、通常5重量%以下である。
【0014】
その役割を満足に果たすために、保護表面層は特定の厚さを持たなければならない。しかしながら、もしこの層が機械的特性のためにのみ与えられるなら、それは層系に比較的小さい厚さを与えることで十分でありうる。好ましくは、この層の厚さは3nm以上である。
【0015】
この表面層の組成に含まれる酸化物が透明であるなら、耐性を改良するために必要なものよりずっと厚い層を使用することができる。特に、干渉フィルターの構成要素として、換言すれば高い可視透過率を維持しかつ良好な反射中立性を確立するのに有意に寄与する層としてこの保護層を使用することができる。
【0016】
干渉フィルターの構成要素として使用される表面層は他の誘電層と組み合わせることが有利である。次いで集成体の選択は、様々な層の光学的又は構造的な特性(屈折率(index)、透明性、結晶構造、界面品質)だけでなく、これらの層の形成の相対的な容易性も考慮する。
【0017】
どのような構造が考えられたとしても、実際には本発明による表面層は35nm以下の厚さである。
【0018】
特に極めて良好な機械的特性を与える本発明による表面層は、高い耐化学薬品性を与える層と組み合わされることが有利である。このタイプの層は特に、酸化スズの層又は窒化ケイ素もしくは酸窒化ケイ素の層である。ケイ素陰極は約4%の少量でドーパントとしてアルミニウムを含むことができ、それはまた、層中に見出される。これらの層は酸化チタンに基づく表面層のすぐ下にあり、数ナノメートルのオーダの相対的に小さい厚さを持つ。これらの層、特に酸化スズの層はまた、それらの厚さが実質的に大きいとき、構成された干渉系において有意な光学的役割を果たす。
【0019】
本発明による被覆された板ガラスは、標準規格ASTM2486Dの方法に従った耐引っ掻き性が0〜100%の範囲の尺度(100%は全部引っ掻かれた板ガラスに相当する)で30%以下、好ましくは20%以下である。
【0020】
本発明による被覆された板ガラスはまた、湿度試験において極めて良好な耐性を与える。標準規格ISO6270による「Cleveland」試験を3日間受けるとき、達成されるレベルは、1から5の範囲の尺度(5は完全に欠陥がない板ガラスに相当する)で少なくとも3であることが有利である。標準規格EN1096による塩水噴霧試験を受けた試料に対して、結果は2日の露出後で3より大きいことが有利である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は、添付図面の対象である以下の実施例に詳細に説明される。
【図1】図1は、本発明による層系で被覆された板ガラスの断面の概略図である。
【図2】図2は、二つの銀層を含む別の層系を示す。
【図3】図3は、本発明に従って使用される酸化物単層についての波長の関数としての光吸収率を表わすグラフである。
【図4】図4は、より詳細な尺度で表わした図3と類似のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1の板ガラスは、明瞭のため、様々な構成要素の割合を考慮せずに断面で示されている。そのガラス1は、赤外線反射銀ベース層4を含む一組の層で被覆される。この銀層は、それを保護しかつそれに良好な反射中立性を有する良好な光透過性を与える二組の誘電層の間に配置される。
【0023】
銀層4は、酸化亜鉛に基づく層3上に蒸着されることが有利である。酸化亜鉛層及びドープされた酸化亜鉛に基づく層は、特にいかなる粗さもなく銀層との良好な界面の形成を促進することが知られている。それらは全体として銀層の特性を改良する。単位面積あたりの同量の銀に対して、層の導電性、従って放射性は、それらがこのように蒸着されるときに改良される。それは酸化亜鉛単独の薄い厚さの場合であることができ、その厚さは15nm以下である。
【0024】
酸化亜鉛の厚さが大きいとき、柱状の生長を発現する危険があり、それは、増大した粗さで均一性に劣る界面に導く。このタイプの生長を避けるために、酸化亜鉛を他の酸化物、特に酸化スズでドープすることが公知の慣習である。
【0025】
亜鉛スズ混合酸化物から形成された層は従来から二つのタイプを持つ。銀層が蒸着される層は低い含有量、特に約10重量%の酸化スズを持つことが有利である。前に示したように、これらの層は相対的に薄く、15nmを越えない。第二のタイプの亜鉛及びスズの混合酸化物層は、反射防止効果のための光路の主要部分を誘電集成体において構成するために使用される。この機能において、問題の層は通常、数十ナノメートルの厚さを有する。典型的には、このタイプの層は、亜鉛及びスズ酸化物の各々の約50重量%を含有する混合酸化物から形成される。
【0026】
図1に示された実施例では、保護層5は銀層4上に蒸着される。これは従来の層であり、その目的は、続く蒸着時、特にこれらの蒸着が反応性モードで、例えば酸化性雰囲気下で実施されるときに影響しうる損傷に対して銀層を保護することである。層5は、雰囲気と反応することによって介在するときに「バリヤー」又は「犠牲」層として言及され、それはこの層が存在しないときには銀層と反応しやすいだろう。
【0027】
これらの犠牲層は極めて薄い厚さを持つ。それらは6nm以下であり、それらの厚さは好ましくは2又は3nmである。それらは、従来通り、酸化物、特にチタンの酸化物又はNiCrを含有する材料、又はZrの酸化物、及び対応する亜酸化物に基づく。それらは銀を保護しながら反応することができるように蒸着されるので、それらは対応する金属のターゲットから形成され、積み重ねの以下の構成で酸化されることが多い。この理由のため、これらの層は半化学量論的であることが多い。また、それ自体半化学量論的であるセラミックターゲットを使用してそれらを蒸着することもできる。この方法は、化学量論の領域における良好な酸化を最終層において好都合に達成することができる。この態様では、層の吸光係数が最適に低下される。
【0028】
図1では、層2及び6はフィルターの構成に含まれる層である。それらは可視領域における大多数の光線の反射を防止することができる。これらの層のおかげで、透過光、特に反射光の色も制御される。大多数の用途において、この光ができるだけ弱く中性であることを確実にすることにあらゆる努力がなされていることが知られている。
【0029】
従来の誘電層は主に、Zn,Sn,Ti,Al,Zr,Nbの酸化物から形成される。それらの厚さはそれらの屈折率及び必要な光路に依存し、それら自体は赤外線反射層の厚さに依存する。これらの大きさ間の関係は完全に確立され、通常、専用プログラムによって決定される。かくして決定された値から出発すると、続く調整は、効果的な構造、組成又は構造特徴と理想的な層の対応する特徴の間で存在しうる差を考慮して行われる。
【0030】
表面層7は、高い硬度の酸化物(ZrO,SiO,Cr)を含む酸化チタンに基づく本発明による層である。
【0031】
本発明によるこのタイプの積み重ねの例として、以下の実施例が作られる。厚さはオングストロームで表現される。

【0032】
この表では、略語は以下の通りである:
− ZSOは、10重量%の酸化スズをドープされた酸化亜鉛の層を意味する;
− TiOxは、亜酸化チタンである(任意選択的に、TiOxはZrOx(それは亜酸化ジルコニウムである)で置換されてもよい);
− TiZrOxは、50重量%のTiO、46重量%のZrO、残りが、ジルコニウムに通常伴う元素、特に酸化物Yから形成される(それはセラミックターゲットから得られ、わずかに酸化性の雰囲気下で蒸着される。得られた層は実質的に化学量論的である。)。
【0033】
前述の実施例と類似するが、本発明による表面層を含まない比較例は以下の通りである:

【0034】
TiOは、TiOxバリヤー層とは対照的に実質的に化学量論的化合物の形成を促進する条件下で蒸着された層である。TiOxバリヤー層は、それらの機能のため、続く層の蒸着中に減少又は消散する特定の半化学量論を維持して蒸着される。
【0035】
全てのこれらの例は、「強化できない」板ガラスの低放射性の系に対応する。曲げ/強化タイプの強い熱処理を受けるとき、それらの光学的品質は有意に変性されやすい。
【0036】
試料は、それらが機械的応力に耐える能力に対して試験される。試験の条件下では、下にある層の構成において差が表われることは重要でない。結果は表面層の品質に本質的に依存する。
【0037】
試料は、標準規格ASTM2486Dによる乾式ブラシ試験を受ける。引っ掻きの程度が測定される。この程度が小さいほど、機械的強度が良好である。SnO表面層を含む試料は40%の引っ掻き度を有する。本発明による試料1及び2はそれぞれ5%及び15%の引っ掻き度を有する。従って、それらの耐引っ掻き性は極めて有意に改良される。
【0038】
同様の試験が以下のようにして作られた系に対して実施される(厚さはオングストロームである):

【0039】
これらの試料に対して、CIELAB系の光学的特性及び抵抗は以下のように確立される:
光透過率

光反射率

【0040】
これらの三つの試料の平方あたりの各抵抗は、3.65,3.44,3.51Ω/□である。
【0041】
光学的品質及び抵抗品質は本発明による保護層の存在によって実質的に変更されていない。標準規格ASTM4086Dに従って測定された耐摩耗性は、保護層が厚くなると比例して大きくなる。これは、「湿式摩擦試験」における剥離強度の測定に対しても同様に当てはまる。
【0042】
「湿式摩擦試験」は、摩擦による剥離に対する層系の耐性を評価することを意図される。試料は、荷重下で(脱イオン水で)湿潤された一枚の綿織布による摩擦を受ける。行ったり来たりして摩擦することを1分あたり60回の振幅の頻度で実施する。動きは通常、500サイクルに維持される。
【0043】
この摩擦による上部層の変化及びこの層の存在しうる除去が観察される。
【0044】
「化学的」試験における耐性はまた、保護層の厚さの関数としての改良を示す。三つのタイプの試験が実施される:Cleveland試験、気候室及び塩水噴霧。これらの試験の性質は、二つの銀層を含む試料に対して実施される試験に関して後で詳述される。最も厚い保護層を有する試料は再び、これらの三つの試験に対して最も良好な耐性を示す。それぞれの値はCleveland試験に対して4.5であり、気候室に対して4.5であり、塩水噴霧に対して3.5である。
【0045】
他の試験が、二つの銀層を含む層系で実施される。再び、比較試験が実施される。比較試料は酸化スズの表面層を含む。本発明による試料は前のようにチタンジルコニウム混合酸化物の層で被覆される。
【0046】
第一の比較では、構造は以下の通りである(前述のように、厚さはオングストロームで表示される):

【0047】
この表では、略語は前と同じ意味を有する。さらに、ZnO−Alは、5重量%のアルミニウムを含む、アルミニウムをドープされた酸化亜鉛を意味する。
【0048】
構造は、それが比較例の試料であるか又は本発明の試料であるかにかかわらず、図2に概略的に表わされるものである。
【0049】
前述の試料は一連の耐性試験を受けた。
【0050】
第一試験は、標準規格ISO6270に基づくCleveland法に従った結露に対する耐性に関する。この試験によれば、試料は、数日間、一定温度で湿分で飽和された雰囲気下で維持される。欠陥の存在しうる外観、及びそれらの密度が注目される。試験は、1日後に達するレベルが1〜5の範囲の尺度(5は欠陥なしの試料に相当する)において4であるときに好結果と見なされる。
【0051】
試験はまた、気候室で実施される。これもまた、耐結露性の試験である。この試験では、温度は、1時間ごとに交互に45℃から55℃に変える。雰囲気はまた、湿分で飽和される。前述のように、3日後のレベルが1〜5の尺度において少なくとも3であるときに結果は良好である。
【0052】
塩水噴霧試験は、標準規格EN1096に従って実施される。この場合の試料は、2日後のレベルが1〜5の尺度において少なくとも2.5であるときに満足すべきものである。
【0053】
UV安定性は加速露光によって測定される。レベルは、もしそれが少なくとも3であるなら満足すべきものである。
【0054】
得られた結果は以下の表において報告される:

【0055】
参照試料に対して、本発明による構造は少なくとも同様に挙動し、耐湿分試験において特に耐性を有する。
【0056】
他の試験は、チタン及びケイ素の混合酸化物(TiSiO)に基づいた表面層で実施される。酸化ケイ素の含有量は8重量%である。これらの層の蒸着は中性ガス(Ar)又は中性ガスと酸素の混合物(7重量%の酸素を含む)のいずれかで実施される。これらの構造は表面層に対して異なる厚さ(30,80及び130Å)で再び試験される。
【0057】
層系の構造は前述の実施例1及び2のそれと類似する。

【0058】
以下の組み合わせが作られ、乾燥ブラシ耐引っ掻き性及び「Cleveland」化学薬品試験に対する特性が示された。
【0059】
全ての「Cleveland」試験は、本発明による試料の極めて良好な耐性を示す。グレードは1〜5の尺度で全て4以上である。ブラシ耐性は引っ掻きの百分率として以下の結果を与える。

【0060】
耐摩耗性の値は、酸素を含有する雰囲気下で蒸着された層に対して明白な進歩を示す。この耐引っ掻き性はまた、層の厚さに少し依存する。
【0061】
保護表面層として本発明に従って使用される層はまた、機械的強度を与える他のタイプの層、例えば窒化チタンと比較して可視波長において極めて透明であるという利点を持つ。この透明性は、層の酸化を完全にすると、比例して良好になる。図3及び4はこの特徴を示す。
【0062】
これらの図では、一連の吸収率の測定は波長の関数として報告される。測定は、前述の例の対象物を形成するものと同じタイプのチタンジルコニウム混合酸化物の単層で行われる。層は4mm厚のクリアなガラス板に蒸着される。
【0063】
TiZrOxの層は均一で16nmである。それは、0.8Paの一定全圧力で酸素含有量が変動可能なアルゴン雰囲気下で蒸着される。
【0064】
蒸着は、チタンジルコニウム酸化物混合物を含むセラミックターゲットを使用して実施される。酸素流量は連続的に、陰極で適用される電力のkWあたりゼロ(菱形)、1(円形)、2.5(三角形)、5cm(正方形)である。第五の測定(星形)は、3分間、600℃の温度で熱処理を受けた最終試料(5cm)に対応する。
【0065】
アルゴン単独の雰囲気下では、層の吸収率(図3)は極めて大きい。この吸収率は、このタイプの雰囲気での形成に固有の半化学量論の存在に対応する。少量の酸素が導入されるとすぐに、迅速に反応するチタンの能力は本質的に異なる挙動に導く。吸収率は実質的に低下される。酸化物混合物は化学量論の方に向かう。
【0066】
図3では、様々な曲線がともに極めて接近している。酸素含有量の影響を区別するために、結果は図4において別の尺度で報告される。この図では、酸素含有量が増加されるときに吸収率が全体として低いことが見出される。しかしながら、限界は迅速に到達される。熱処理を受けた試料に対して示された曲線は、この処理前の試料に対してのものと実質的に同一である。従って、層はこれらの濃度に対して実質的に化学量論的である。
【0067】
本発明による保護表面層は、一つ、二つ又は三つの銀層を含み、各銀層が7〜20nmの厚さを有する低放射系を保護するために有利に使用される。系はまた、誘電層、特に酸化亜鉛、酸化スズ及びそれらの合金に基づくものを含む。これらの系はまた、銀層の上に設けられかつチタン又はNiCr,Zr及びそれらの酸化物又は亜酸化物から形成されるバリヤー層を含む。
【0068】
低放射性板ガラスとして有用な本発明による板ガラスは特に、ガラス板から出発して以下の構造を含む:
ZnSnO(50/50)/ZnSnO(90/10)/Ag/TiOx/ZnSnO(90/10)/ZnSnO(50/50)/TiZrOx(55/45)
【0069】
この構造では、銀ベース層は10〜14nmの厚さを有し、銀層の下に位置される誘電層はそれぞれ20〜35nm,6〜10nmの厚さを有し、銀の上に位置される酸化亜鉛に基づく誘電層については、それぞれの厚さは15〜25nm、15〜25nmであり、TiZrOx表面層の厚さは5〜8nmである。
【0070】
類似の層系が本発明に従って提案され、それは今回、二つの銀ベース反射層を含む。この系の構造はガラス板から出発して、
ZnSnO(50/50)/ZnSnO(90/10)/Ag/TiOx/ZnSnO(50/50)/ZnSnO(90/10)/Ag/TiOx/ZnSnO(90/10)/ZnSnO(50/50)/TiZrOx(55/45)
であり、誘電層の各組に対して、第一銀層の下の厚さは20〜35nm、6〜10nmであり、銀層の間の酸化亜鉛に基づく層については厚さはそれぞれ8〜20nm、40〜70nm、8〜20nmであり、第二銀層の上の酸化亜鉛に基づく層については6〜10nm、20〜35nmであり、銀層はそれぞれ10〜14nmの厚さを有し、TiZrOx表面層の厚さは5〜8nmである。
【0071】
この構造に基づいて、本発明による保護上部層を含む集成体は、この層のない類似の構造と比較される。様々な層のそれぞれの厚さは以下の通りである:
比較例
268/110/118/21/685/160/166/23/140/107/105
本発明による
218/160/118/21/685/160/166/23/120/77/105/31
【0072】
試料は以下の試験を受ける:

【0073】
本発明による構造は、耐摩耗性及び湿った条件下の試験において極めて良好な結果を示す。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネトロンによって真空蒸着されかつ太陽光抵抗特性及び/又は低放射特性を有するフィルム系を含む、本質的に透明な板ガラスであって、保護表面層として、酸化チタンに基づきかつZrO,SiO,Crからなる群からの高硬度の少なくとも一種の他の金属酸化物に基づく層を含む、板ガラス。
【請求項2】
表面層の酸化チタン以外の金属酸化物が層全体の少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%である、請求項1に記載の板ガラス。
【請求項3】
酸化チタンが表面層の少なくとも40重量%である、請求項1又は2に記載の板ガラス。
【請求項4】
表面層がさらに、考慮下の追加の酸化物と共に通常存在する金属酸化物を含み、これらの酸化物が、表面層の全ての酸化物の8重量%を越えない割合である、請求項1〜3のいずれかに記載の板ガラス。
【請求項5】
酸化チタンに加えて、表面層が15重量%〜50重量%の割合で酸化ジルコニウムを含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の板ガラス。
【請求項6】
酸化チタンに基づいた表面層が3nm以上の厚さを有する、請求項1〜5のいずれかに記載の板ガラス。
【請求項7】
酸化チタンに基づいた表面層が35nm以下の厚さを有する、請求項1〜6のいずれかに記載の板ガラス。
【請求項8】
酸化チタンに基づいた表面層が、酸化スズ又は任意選択的にアルミニウムを含有する窒化ケイ素もしくは酸窒化ケイ素の第一保護層上に適用される、請求項1〜7のいずれかに記載の板ガラス。
【請求項9】
標準規格ASTM2486Dに従って実施される耐引っ掻き性試験において30%以下、好ましくは20%以下の引っ掻き割合に導く、請求項1〜8のいずれかに記載の板ガラス。
【請求項10】
表面層に加えて、少なくとも一つの銀ベースの機能層、及びガラス支持体と第一銀層の間、適切には各銀層の間で、かつ支持体から最も遠い銀層上に配置された一組の誘電層を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の板ガラス。
【請求項11】
一つ、二つ又は三つの銀層を含み、各々が7〜20nmの厚さを有する、請求項10に記載の板ガラス。
【請求項12】
各銀ベース層が、Ti,NiCrの酸化物又は亜酸化物から形成された犠牲層で被覆されている、請求項1〜11のいずれかに記載の板ガラス。
【請求項13】
銀層が、スズで任意選択的にドープされた酸化亜鉛に基づいた層上に蒸着される、請求項11又は12に記載の板ガラス。
【請求項14】
機械的強度を改良する一種以上の追加の酸化物を含む酸化チタンに基づいた表面層が、酸化物の対応する混合物を含む陰極からマグネトロン支援真空蒸着によって蒸着される、請求項1〜13のいずれかに記載の板ガラスの製造方法。
【請求項15】
表面層の蒸着がわずかに酸化性の雰囲気下で実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
層系が、ガラス支持体から出発してZnSnO(50/50)/ZnSnO(90/10)/Ag/TiOx/ZnSnO(90/10)/ZnSnO(50/50)/TiZrOx(55/45)の態様で形成され、銀ベース層が10〜14nmの厚さを有し、TiZrOx表面層の厚さが5〜8nmである、請求項1〜13のいずれかに記載の板ガラス。
【請求項17】
二つの銀ベース層を含む層系で被覆された請求項1〜13のいずれかに記載の板ガラスであって、層系が、ガラス支持体から出発してZnSnO(50/50)/ZnSnO(90/10)/Ag/TiOx/ZnSnO(90/10)/ZnSn(50/50)/ZnSnO(90/10)/Ag/TiOx/ZnSnO(90/10)/ZnSnO(50/50)/TiZrOx(55/45)の構造を有し、銀層が各々10〜14nmの厚さを有し、TiZrOx表面層の厚さが5〜8nmである、板ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−515312(P2011−515312A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500233(P2011−500233)
【出願日】平成21年3月20日(2009.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053288
【国際公開番号】WO2009/115595
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(510191919)エージーシー グラス ユーロップ (27)
【Fターム(参考)】