説明

フィールド機器

【課題】複数のフィールド機器が具備する演算機能のみのチェックが可能なデバイスを備えたフィールド機器を実現する。
【解決手段】信号伝送ラインに接続され、プロセスの測定値に基づいて物理量を演算処理した信号を前記信号伝送ラインを介して上位機器に出力するフィールド機器において、
このフィールド機器の筐体内に実装された演算チェックデバイスを備え、
この演算チェックデバイスは、
前記演算処理の入力情報及び前記演算処理の結果情報を取得し、前記入力情報を再演算した結果情報と前記演算処理の結果情報とを比較し、または、前記演算処理の結果情報を逆演算した結果情報と前記入力情報とを比較し、許容できる閾値に基づいて前記演算処理の正常実行を検証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送ラインに接続され、プロセスの測定値に基づいて物理量を演算処理した信号を前記信号伝送ラインを介して上位機器に出力するフィールド機器の機能拡張に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、フィールド機器であるマルチバリアブル伝送器を含むプロセスの計装例である。プロセス流体Fの配管1には、複数の伝送器2、3、4が取り付けられている。伝送器2(PT100)は、マルチバリアブル伝送器であり、オリフィスプレート等の絞り機構の上下流の圧力差からプロセス流量を測定し、差圧、静圧、温度並びに設定されるパラメータから演算される質量流量Qmを算出して、信号伝送ライン5介して4〜20mAアナログ信号やデジタル信号をコントロールルームのホスト6に送信する。ホスト6は、プロセスの制御・監視を実行する。
【0003】
伝送器3(TT200)は、例えば、複数の入力をもつ温度伝送器であり、その測定出力信号を伝送ライン5介してホスト6に送信する。伝送器4(FT100)は、例えば、差圧伝送器のような流量測定器であり、その測定出力を信号伝送ライン5介してホスト6に送信する。
【0004】
マルチバリアブル伝送器2は、小型の2線式伝送器である。このためメモリサイズや通信速度等の制限があり、データ総数を抑えるために、演算に必要な各種のパラメータを信号伝送ライン5に接続された設定サポートツール7で生成してマルチバリアブル伝送器2にダウンロードする。伝送器側ではこれらの値と流量演算に必要な差圧値、圧力値、温度値を用いて質量流量演算を実行する。
【0005】
設定サポートツール7で設定してダウンロードするマルチバリアブル伝送器2のパラメータの代表的なものとしては、Tag、レンジ情報、メモ情報、ダンピング値、ゼロ調、スパン調データである。
【0006】
設定サポートツール7は、上記のパラメータに加えて、気体の膨張補正係数等の係数群データ、若しくは係数情報ファイルを生成して、信号伝送ライン5介してマルチバリアブル伝送器2にダウンロードする。マルチバリアブル伝送器及びその設定サポートツールについては、特許文献1に詳細技術が開示されている
【0007】
図8は、マルチバリアブル伝送器2と設定サポートツール7の連携を説明する機能ブロック図である。マルチバリアブル伝送器2は、配管1に形成されたオリフィス8の上流側圧力PHと下流側圧力PLを導圧して差圧ΔP及び静圧Pを測定すると共に、測温抵抗体、熱電対等の温度センサー9の測定値VTを入力し流体Fの温度Tを測定する。
【0008】
設定サポートツール7は、FDT(Field Device Tool)、DTM(Device Type Manager)等、メーカを問わずに設定管理可能な設定サポートツールを搭載したPCである。この設定サポートツール7より、質量流量演算に必要な、膨張補正係数や温度係数等のパラメータ値をユーザが入力し、伝送路ライン5を介して、例えばHART通信、Fieldbus通信、Profibus通信等のデジタル通信によって、マルチバリアブル伝送器2へダウンロードしてパラメータ設定を行うものである。
【0009】
マルチバリアブル伝送器2における質量流量Qmは、(1)式で演算される。
Qm=C/√(1−β4)・πd2/4・ε・√(2ΔP/ρ) (1)
【0010】
ここで、Cは流出係数、βはベータ比(d(オリフィス内径)/D(配管内径))、εはガス膨張係数、ΔPは差圧、ρは流体密度である。設定サポートツール7からは、流出係数C、ベータ比β、ガス膨張係数ε等がパラメータとしてダウンロードされる。
【0011】
密度ρは、静圧Pと温度Tの関数であり、(2)式で演算される。
ρ=Kρ0+Kρ1・f(T,P)+Kρ2・f(T2,P2) (2)
【0012】
設定サポートツール7は、実測で得られた複数組の温度、圧力、密度表から最小二乗法による近似計算で、係数Kρ0、Kρ1、Kρ2を計算してマルチバリアブル伝送器2にダウンロードする。マルチバリアブル伝送器2は、この係数を用いて(2)式より密度ρを算出し、(1)式より質量流量Qmを算出する。
【0013】
マルチバリアブル伝送器2における質量流量の演算結果及び差圧,静圧,温度の測定値は、信号伝送ライン5を介してホスト6に送信されると共に、設定差サポートツール7にアップロードされる。
【0014】
図9は、マルチバリアブル伝送器2の内部構成を示す機能ブロック図である。CPUを備える計算手段21は、通信手段22をインターフェースとして信号伝送ライン5を介してホスト6及び設定サポートツール7と通信する。
【0015】
計算手段21は、RAMやEEPROM等のメモリ資源よりなるデータやプログラムの保存手段23と通信し、設定や計算結果をLCD等の表示手段24で外部表示すると共に、出力手段25より通信手段22を介して信号伝送レイン5に接続された上位機器に出力する。
【0016】
差圧・静圧検出手段26は、オリフィスの上流側圧力PH及び下流側圧力PLを入力して測定し、デジタル信号変換して計算手段21に渡す。同様に、温度検出手段27は温度センサー9の検出値VTを入力し、デジタル信号変換して計算手段21に渡す。
【0017】
計算手段21は、検出手段26,27によって検出されたプロセス量を変換、補正、ユーザ指定の例えば%値等のスケーリング値に換算する。また、周辺デバイスの制御や診断を行う。
【0018】
このように、マルチバリアブル伝送器2では質量流量の算出に複雑な演算処理を実行する必要があるので、その信頼性を確保するために、演算の各ステップでの演算が正常に実行されていることを検証するチェック機能を搭載している。
【0019】
演算チェックの手法として、演算結果を逆演算して演算前の値と比較し、そのズレが所定の閾値内にあることで正常演算を検証する技術が、特許文献2に開示されている。図10は、特許文献2に記載の従来の演算チェック手法の例を説明する模式図である。
【0020】
通常の演算実施のタイミングと同時に各ポイントa(Scaling値:PWM出力前値。PWMは温度依存性のある動的な補正係数を用いて多項式によりパルス幅変調されるデジタル信号)、b(DP値:スケーリング後の値)、c(X値:補正前の差圧値)、d(sensor値:センサー周波数値)、a′(PWM値を決める値)、b′(Scaling前値)、c′(DP値:補正後の差圧値)、d′(X値:センサ周波数2乗)の値を一度にラッチし、別途のタイミングでa′から a″、b′からb″、c′からc″、d′からd″の逆演算を実行する。
【0021】
演算前の値であるa、b、c、dと、逆演算で算出されたa″、 b″、c″、d″との夫々の差を比較しそのズレが所定の閾値内にあるか否かの判定を行って、判定に異常が発生した場合には、アラーム情報を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2009−031200号公報
【特許文献2】特開2005−309913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従来技術では次のような問題がある。
(1)近年のメモリサイズの向上や高機能化により、たとえばマルチバリアブル伝送器に代表されるような、複数の入力からの再帰演算を含む流量計算が搭載されたり、差圧伝送器に搭載されている診断機能のような、診断機能が搭載されるようになっており、他のフィールド機器の演算についても同様に複雑化している。
【0024】
一方で演算結果が正しいものかどうかを機能安全の面から検証することが容易ではなかった。例えば、図10の例のように、マルチバリアブル伝送器に搭載されているような機能安全のための逆演算機能は、予め診断アプリケーションとして製品毎に組み込まれている必要があり、容易に他の複数のフィールド機器の演算機能のみをチェックをするのは困難であった。
【0025】
(2)また、詰まり診断機能に代表される診断に関するフィールド機器の機能は、類似の機能が複数のフィールド機器に搭載されているにもかかわらず、ユーザやサービスマンが各機器の演算設定や演算機能の確認を一台ずつ行なう必要があり、高機能化したフィールド機器の調整管理は容易ではなかった。
【0026】
本発明の目的は、複数のフィールド機器が具備する演算機能のみのチェックが可能なデバイスを備えたフィールド機器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)信号伝送ラインに接続され、プロセスの測定値に基づいて物理量を演算処理した信号を前記信号伝送ラインを介して上位機器に出力するフィールド機器において、
このフィールド機器の筐体内に実装された演算チェックデバイスを備え、
この演算チェックデバイスは、
前記演算処理の入力情報及び前記演算処理の結果情報を取得し、前記入力情報を再演算した結果情報と前記演算処理の結果情報とを比較し、または、前記演算処理の結果情報を逆演算した結果情報と前記入力情報とを比較し、許容できる閾値に基づいて前記演算処理の正常実行を検証することを特徴とするフィールド機器。
【0028】
(2)前記演算チェックデバイスは、前記信号伝送ラインに接続される他のフィールド機器における演算情報を取得してその演算処理の正常実行を検証することを特徴とする(1)に記載のフィールド機器。
【0029】
(3)前記演算チェックデバイスは、演算の対象となる前記フィールド機器の演算内容が非公開であり、かつシミュレーション機能を備える場合には、このシミュレーション機能により前記演算処理の正常実行を検証することを特徴とする(1)または(2)に記載のフィールド機器。
【0030】
(4)前記演算チェックデバイスは、演算の対象となる前記フィールド機器の演算内容が非公開であり、かつ演算確認手段が提供されている場合には、この演算確認手段により前記演算処理の正常実行を検証することを特徴とすることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のフィールド機器。
【0031】
(5)前記演算チェックデバイスは、マルチバリアブル伝送器の筐体内に実装されることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載のフィールド機器。
【0032】
(6)前記演算チェックデバイスは、フィールド機器が備えるファンクションブロックにより実現されることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のフィールド機器。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、次のような効果を期待することができる。
(1)特定のフィールド機器内に汎用的な演算チェックデバイスを実装することにより、信号伝送ラインに接続された他の機器の演算を検証することが可能となり、システムの機能安全レベルを向上させ、その使用と管理を容易化することができる。
【0034】
(2)抜き打ちチェックを拡大することで、所定の周期内でチェックできる機器の個数を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用したフィールド機器の一実施例を示す機能ブロック図である。
【図2】演算チェックデバイスの一実施例を示す機能ブロック図である。
【図3】演算チェックデバイスの実装例を示す、マルチバリアブル伝送器の分解斜視図である。
【図4】演算チェックデバイスの動作を説明するフロー図である。
【図5】複数の伝送器の演算チェックを実行する場合のシーケンス図である。
【図6】複数の伝送器の演算チェックを実行する場合のチェックサイクル図である。
【図7】フィールド機器であるマルチバリアブル伝送器を含むプロセスの計装例である。
【図8】マルチバリアブル伝送器と設定サポートツールの関連を示す機能ブロック図である。
【図9】従来のフィールド機器の構成例を示す機能ブロック図である。
【図10】特許文献2に記載の従来の演算チェック手法の例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明を適用したフィールド機器の一実施例を示す機能ブロック図である。図9で説明した従来構成と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
図9に示した従来構成に追加した本発明の特徴部は、マルチバリアブル伝送器2内に実装した演算チェックデバイス100の構成にある。この演算チェックデバイス100は、計算手段21と通信して自己の演算ステップの検証を実行すると共に、通信手段22を介して信号伝送ライン5に接続された他の伝送器2、3等の演算情報を取得し、その演算ステップの検証を実行する。
【0038】
図2は、演算チェックデバイス100の一実施例を示す機能ブロック図である。演算チェックデバイス100は、情報取得部101、確認演算手段102、結果判定手段103、保存手段104を備える。更に、オプションとして、確認演算手段105、これに付随する演算書き換え手段106、保存手段107を備える。
【0039】
情報取得部101は、対象機器の演算情報の取得部分であり、第1演算情報取得手段101A及び第2演算情報取得手段101Bよりなる。第1演算情報取得手段101Aは、対象機器の演算前の情報(逆演算の場合には演算結果情報)Aを取得して確認演算手段102に渡す。
【0040】
第2演算情報取得手段10Bは、対象機器の演算結果情報(逆演算の場合には演算前の情報)Bを取得して結果判定手段103に渡す。確認演算手段102の演算結果は、結果判定手段103に渡される。確認演算手段102及び結果判定手段103における計算は、CPUを備える計算手段21の機能により実行される。
【0041】
確認演算手段102は、演算対象となる値Aを取得し、診断方法別に、予めインストールされている演算のアルゴリズム、又は対象機器からアップロードした演算のアルゴリズムに基づいて再演算又は逆演算を実行し、演算結果情報Cを出力する。
【0042】
結果判定手段103は、確認演算手段102からの再演算又は逆演算の演算結果情報Cと第2演算情報取得手段10Bの入力Bを比較する。両者のズレが所定の閾値内であれば正常、閾値を超えていれば異常の出力を診断対象の機器にフィードバック出力する。
【0043】
保存手段104は、確認演算手段102の演算結果や結果判定手段103の判定結果、履歴等の情報を保存する。
【0044】
確認演算手段105は、オプションとして確認演算のためのプログラムが提供されている場合に実装され、特定の演算ステップがこの確認演算手段105のアルゴリズムで実行される。
【0045】
演算書き換え手段106は、演算の確認対象となる機器が演算を非公開としており、かつシミュレーション機能等での確認もできない場合のオプションである。この場合は、予め製造メーカのサービスが、演算書き換え手段106により確認演算手段105の演算内容を書き換える。保存手段107は、確認演算手段105の演算結果情報を保存する。
【0046】
結果判定手段103の判定に使用する閾値は、周知の技術により以下に列挙する種々の形態を利用することができる。
(a)例えば取得済みの対象機器の演算結果値と演算チェックデバイスによる確認演算結果が、許容し得るズレを算出するために、一次式による領域決定や、補正演算のための多項式、平均演算、各種関数とそれらの組み合わせによる数値解析法を利用する方法。
【0047】
(b)統計的手法による、例えば近似のための連立方程式と行列式等を用いる手法や、折れ線近似等の手法で、多くの点のサンプリング収集と分布解析から、ある境界を持つ領域を決定し、その領域を許容しうる閾値として閾値内であるかどうかを判定する手法。
【0048】
(c)その他の数値解析や近似的手法を利用した比較判定のための閾値決定の手法。例えば、フーリエ変換やウェーブレット変換のような、周波数成分の抽出を行い、それらを組み合わせて得られる近似的領域の算出から、確認演算結果と対象機器の演算結果値との差異で許容しうる閾値を設定し、閾値内であるかどうかを判定する手法。
【0049】
(d)機器内部で行なわれている一部の演算及びその逆演算を含め、確認演算結果と対象機器の演算結果値との差異で許容しうる閾値を設定し、閾値内であるかどうかの判定に役立てる手法。
【0050】
(e)ユーザ設定による演算に基づいた確認演算結果と、対象機器の演算結果値との差異を判定に役立てる手法。ユーザ設定時の支援ツールとして、例えばPCToolのようなものを含む。
【0051】
図3は、演算チェックデバイス100の実装例を示す、マルチバリアブル伝送器の分解斜視図である。演算チェックデバイス100は、機器筐体2A内のスペースにモジュールの形態で実装できる。
【0052】
2Bはカバー、2CはCPUアセンブリである。防爆機器のように内部スペースに制約がある場合では、表示部のアセンブリを演算チェックデバイス100に置き換えて実装することで、筐体を特別設計することなく防爆領域での実装も可能である。
【0053】
図4は、演算チェックデバイス100の動作を説明するフロー図である。ステップS1は、診断方法の判別ステップであり、診断方法を選択する分岐である。閾値のみのチェックではS1に、演算が単純である場合にはS3又はS4に、演算等が非公開である場合にはステップS5に選択分岐する。
【0054】
この診断方法判別ステップでの選択機能は、機器によってその診断アルゴリズムが異なるためである。一方で、演算が完全に非公開である場合で、かつシミュレーション機能の活用によるモニタリングもできない場合は、このステップで予め製造メーカのサービスによりダウンロードされた確認演算手段を用いて演算の確認をすることを選択する。
【0055】
このように、診断方法判別ステップは、機器とその判定方法を確定するものであり、機種の判別機能、ユーザによる判定方法や判定箇所の指定を可能とし、診断すべきものの種類によって、実行方法を選択することができる。
【0056】
ステップS2では、時系列で診断したり、統計的な手法により閾値のみチェックと異常時にアラーム発信を行う。予めユーザにより設定された値、もしくは異常値を監視チェックする。
【0057】
ステップS3では、演算式が単純である場合、例えば、瞬時流量値Ftを演算チェックデバイス100が取得できる場合には、積算時間t、積算流量値FTtを算出し、対象機器の積算流量値の確認をする。
【0058】
ステップS4では、演算式が単純である場合、逆演算等、演算の一部が公開されていて、パラメータ間での関係式がマニュアル等で与えられている場合である。
【0059】
対象機器の演算等が非公開でステップS5に選択分岐した場合には、ステップS6でシミュレーション機能の有無の確認を行い、ステップS7又はステップS8に分岐選択する。
【0060】
ステップS7では、確認演算手段102では演算は行わず、対象機器のシミュレーション機能を利用してシミュレーション値用の値を送信して、演算が正しく返ることを確認する。
【0061】
このシミュレーション機能は、現在はユーザが設置するタイミングでのみ機器に対して模擬値の入力と機器の演算結果の確認が行われているが、演算チェックデバイス側からあるタイミングで模擬入力を行い、演算動作が損なわれていないことを確認する。
【0062】
ステップS8では、演算の確認対象となる機器が演算内容を非公開としており、かつシミュレーション機能等での確認もできない場合、演算チェックデバイス100は、対象機器の演算前の値と演算後の値とを取得し、例えばあらかじめ製造メーカのサービスによりダウンロードされたアルゴリズムによる結果と照合する。尚、対象機器の演算前の値が取得できない場合は、何も実行しない。
【0063】
図5は、複数の伝送器の演算チェックを実行する場合のシーケンス図である。図5(A)は、マルチバリアブル伝送器2(PT100)の一通りのチェック演算に要する周期T1を示し、チェック演算PT1、PT2、PT3が設定可能である。
【0064】
図5(B)は、温度伝送器3(TT200)の一通りのチェック演算に要する周期T2を示し、チェック演算TT1、TT2、TT3、TT4が設定可能である。図5(C)は、流量伝送器4(FT100)一通りのチェック演算に要する周期T3を示し、チェック演算FT1、FT2が設定可能である。
【0065】
フィールドバスシステムのような、スケジューリング機能が無い場合等は、特に必ずしもチェック演算は全てを実行する必要がなく、可能なタイミングで抜き打ち的に行うことが可能である。
【0066】
例えば、図5で点線の矢印のように、PT100のチェックタイミングでPT1のチェック演算と判定をした後、TT200のチェックタイミングでTT4のチェック演算と判定をする。チェック演算に割り当てられたカウンタを利用してチェックが満遍なく行なわれるようにする。
【0067】
図6は、複数の伝送器の演算チェックを実行する場合のチェックサイクル図である。図6(A)は時間軸をX方向に取る通信のタイミングチャートである。所定の周期で実行されるPT100、TT200、FT100間の通信による情報更新処理の空き時間に、PT100、TT200、FT100の演算チェックを所定時間順次シーケンス的に実行する。また、フィールドバス通信上のスケジューリングのタイミング等を利用して演算チェック機能を動作させることもできる。
【0068】
このチェック時間内で、演算チェックデバイスの再演算や逆演算等による、確認演算実施および結果判定を実行する。図6(B)は、図6(A)と同一処理をフローチャートで示したものである。演算チェックの結果異常のある場合には、アラームを発生させる。
【0069】
マルチバリアブル伝送器2内に実装される演算チェックデバイス100に対するユーザに対するインターフェースは、信号伝送ライン5に設定サポートツール7が接続される場合にはその操作画面の利用が実用的である。このインターフェースは、ホスト6または信号伝送ライン5に接続したPC上から操作、監視をすることもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 配管
2 マルチバリアブル伝送器
3 温度伝送器
4 流量伝送器
5 信号伝送ライン
6 ホスト
7 設定サポートツール
8 オリフィス
9 温度センサー
21 計算手段
22 通信手段
23 保存手段
24 表示手段
25 出力手段
26 差圧・静圧検出手段
27 温度検出手段
100 演算チェックデバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号伝送ラインに接続され、プロセスの測定値に基づいて物理量を演算処理した信号を前記信号伝送ラインを介して上位機器に出力するフィールド機器において、
このフィールド機器の筐体内に実装された演算チェックデバイスを備え、
この演算チェックデバイスは、
前記演算処理の入力情報及び前記演算処理の結果情報を取得し、前記入力情報を再演算した結果情報と前記演算処理の結果情報とを比較し、または、前記演算処理の結果情報を逆演算した結果情報と前記入力情報とを比較し、許容できる閾値に基づいて前記演算処理の正常実行を検証することを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
前記演算チェックデバイスは、前記信号伝送ラインに接続される他のフィールド機器における演算情報を取得してその演算処理の正常実行を検証することを特徴とする請求項1に記載のフィールド機器。
【請求項3】
前記演算チェックデバイスは、演算の対象となる前記フィールド機器の演算内容が非公開であり、かつシミュレーション機能を備える場合には、このシミュレーション機能により前記演算処理の正常実行を検証することを特徴とする請求項1または2に記載のフィールド機器。
【請求項4】
前記演算チェックデバイスは、演算の対象となる前記フィールド機器の演算内容が非公開であり、かつ演算確認手段が提供されている場合には、この演算確認手段により前記演算処理の正常実行を検証することを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフィールド機器。
【請求項5】
前記演算チェックデバイスは、マルチバリアブル伝送器の筐体内に実装されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフィールド機器。
【請求項6】
前記演算チェックデバイスは、フィールド機器が備えるファンクションブロックにより実現されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフィールド機器。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−187028(P2011−187028A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54757(P2010−54757)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】