説明

フェイスガラスの支持構造

【課題】 接続用ガラスの有効表面積が減少されるのを回避して接続用ガラスによってフェイスガラスを安定的に支持させながら、接続用ガラスを方立に保持する際の施工性を高め、しかも、フェイスガラスと方立との層間変位を許容して耐震強度を高める。
【解決手段】 方立1の収納溝2の溝底への固定片6、接続用ガラス3の上端面又は下端面又は上下両端面を支持する支持片7,7、接続用ガラス3の上端部又は下端部又は上下両端部のガラス表面を押さえる押さえ片8,8を備えて押さえ具9が形成される。収納溝2の溝底に固定した押さえ具9の支持片7,7によって収納溝2に前方から挿入された接続用ガラス3の上端部又は下端部又は上下両端部を支持する。押さえ具9の押さえ片8,8にて接続用ガラス3の上端部又は下端部又は上下両端部近くのガラス表面を押さえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外面を覆うフェイスガラスの支持構造に関し、詳しくは、接続用ガラスの有効表面積が減少されるのを回避して接続用ガラスによってフェイスガラスを安定的に支持させながら、接続用ガラスを方立に保持する際の施工性を高め、しかも、フェイスガラスと方立との層間変位を十分に許容して耐震強度を高めようとする技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物の外面を覆うフェイスガラスの支持構造においては、金属製の方立に縦長の収納溝を形成し、短冊状の接続用ガラスを収納溝に収納して保持し、接続用ガラスにフェイスガラスをシーリング材にて接着し、接続用ガラスを仲介としてフェイスガラスを方立に支持するものである。
【0003】
接続用ガラスを仲介とするのは、フェイスガラスを金属製の方立にシーリング材にて直接接着する場合の支持強度に比べて、接続用ガラスにフェイスガラスをシーリング材にて、ガラス同志を、接着する方が支持強度を高めることができるためである。このため、接続用ガラスの幅は狭過ぎることなく、有効表面積が大きい方がよい。しかし、接続用ガラスを保持する方立の強度(断面積)は、コストの面で建物強度を維持する以上に強くしなくてもよい。必要強度を維持する方立の断面形状で、接続用ガラスの有効接着面積に関係する横幅を広く確保するのが望ましい。
【0004】
ところで、従来では、図6に示すように、金属製の方立1aに断面リップ付きの縦長フレーム1bを溶接して収納溝2aを形成し、収納溝2aに縦長の短冊状の接続用ガラス3を上方から挿入して保持し、接続用ガラス3にフェイスガラス5,5をシーリング材4によって接着している。又、縦長フレーム1bに上下に間隔を隔てて支持片7aを溶接して接続用ガラス3を支持している(例えば特許文献1参照)。
【0005】
このような特許文献1においては、リップ付きの縦長フレーム1bに接続用ガラス3を挿入して保持するから、接続用ガラス3の両側表面が縦長フレーム1bのリップ部分にて覆われてフェイスガラス5を接着するための有効表面積(幅)が減少するという問題がある。有効表面積(幅)を確保するためには接続用ガラス3の幅を必要以上に広くしなければならず、このことは、リップ付きの縦長フレーム1bの横幅を必要以上に広くしなければならない。又、縦長フレーム1bに支持片7aを溶接しているから、溶接の際の熱による接続用ガラス3の破損を防止するため、養生(保護)シートが必要となり、その敷設作業も要することになる。
【0006】
そこで、接続用ガラス3の有効表面積(幅)を減少させないものとして、図7に示すように、接続用ガラス3aの断面形状を台形に形成し、収納溝2aをあり溝形状にし、あり溝形状の収納溝2aに台形の断面の接続用ガラス3aを挿入して保持するものである(例えば特許文献2参照)。
【0007】
このような特許文献2においては、接続用ガラス3aの表面積(幅)を減少することはないが、接続用ガラス3a及び収納溝2aの形状は断面が長方形ではない異形となり、加工コストが高くなるなどという問題がある。
【0008】
特に、特許文献1及び2の構成においては、接続用ガラス3,3aを上方から収納溝2、2aに挿入する工法になることから、短冊状の接続用ガラス3,3aを破損する虞があり、施工性が低下し、それでいて、方立1の上方に挿入のための作業スペースが必要となるものである。
【特許文献1】特開2004−124648号公報
【特許文献2】特開2004−156357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような問題を悉く解決すべく発明されたものであって、必要となる接続用ガラスを方立に保持する際に、接続用ガラスの有効表面積が減少されるのを回避して接続用ガラスによってフェイスガラスを安定的に支持させ、それでいて、接続用ガラスを方立に保持する際の施工性を高め、しかも、地震等において、フェイスガラスと方立との層間変位を十分に許容して耐震強度を高めことができるフェイスガラスの支持構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明においては、建物の開口部に立設された金属製の方立1に短冊状の接続用ガラス3が保持され、接続用ガラス3にシーリング材4によって建物の外面を覆うフェイスガラス5が取着されているフェイスガラス5の支持構造であって、方立1の前面に縦長の収納溝2が形成され、方立1の収納溝2の溝底への固定片6、接続用ガラス3の上端面又は下端面又は上下両端面を支持する支持片7,7、接続用ガラス3の上端部又は下端部又は上下両端部のガラス表面を押さえる押さえ片8,8を備えて押さえ具9が形成され、方立1の収納溝2に前方から接続用ガラス3が挿入され、収納溝2に挿入された上下の接続用ガラス3,3の上端部又は下端部又は中間部において、押さえ具9が固定片8において収納溝2の溝底に固定され、押さえ具9の支持片7,7にて接続用ガラス3の上端面又は下端面又は上下両端面を支持し、押さえ具9の押さえ片8,8にて接続用ガラス3の上端部又は下端部又は上下両端部近くのガラス表面を押さえていることを特徴とするものである。
【0011】
このような構成によれば、方立1の収納溝2に短冊状の接続用ガラス3が収納され、上下の接続用ガラス3,3の上端部又は下端部又は中間部に押さえ具9が収納溝2内に固定され、接続用ガラス3の上端面又は下端面又は上下両端面を押さえ具9の支持片7,7にて支持し、接続用ガラス3の上端部又は下端部又は上下両端部のガラス表面を押さえ片8,8にて押さえることで、収納溝2に収納した接続用ガラス3を固定することができるのであり、この場合、押さえ片8,8にて押さえられている以外の接続用ガラス3の(幅)表面を露出させていて、フェイスガラス5の接着のための有効表面積を減少させることがない。
このように、接続用ガラス3の(幅)表面をフェイスガラス5を接着するための有効表面として利用することができ、フェイスガラス5をシーリング材4にて接続用ガラス3に安定的に接着して支持することができる。
【0012】
しかも、接続用ガラス3を押さえ具9にて押さえることから、短冊状の接続用ガラス3を収納溝2に前面から挿入することができ、フェイスガラス5を上方より挿入する工法に比べてフェイスガラス5を不測に破損することがなく、かつ、収納溝2に上方から滑り込ませるために必要な方立1の上方の施工スペースを省くことができる。
【0013】
ところで、押さえ具9は断面ハット形に形成しても、固定片6、支持片7及び押さえ片9を備えて断面クランク形に形成してもよいものである。
【0014】
請求項2に係る発明においては、押さえ具9の固定片6に通孔13を形成し、方立1にねじ孔14を形成し、一本のボルト12を固定具10として通孔13を通してねじ孔14にねじ込んで押さえ具9を収納溝2の溝底に固定していることを特徴とするものである。
【0015】
このような構成によれば、一本のボルト12を押さえ具9の固定片6の通孔13をへて方立1のねじ孔14にねじ込んで押さえ具9を固定することから、例えば、押さえ具9を溶接にて方立1に固定する工法に比べて、溶接の際の熱による接続用ガラス3の破損を防止でき、上記熱による接続用ガラス3の破損を防止するための養生シートの敷設作業も省くことができる。
【0016】
加えて、一本のボルト12で押さえ具9を収納溝2に固定することから、押さえ具9は収納溝2の溝幅の範囲内でボルト12を中心に、接続用ガラス3を押さえている状態で、回動することができ、例えば、地震時にフェイスガラス5と建物躯体側の方立1との間で層間変位が生じたとき、接続用ガラス3を押さえている例えば断面ハット形の押さえ具9がボルト12の周りに回動でき、接続用ガラス3を破壊することがなく、結果として、耐震性を向上させることができる。
【0017】
この場合、通孔13を長孔に、又、大径丸孔にすることで、押さえ具9の回動の自由度を高めることができ、一層、耐震性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
要するに本発明にあっては、接続用ガラスの有効表面積が減少されるのを回避できて接続用ガラスによってフェイスガラスを安定的に支持することができ、接続用ガラスを方立に保持する際の施工性を高めることができ、しかも、フェイスガラスと方立との層間変位を十分に許容して耐震強度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を添付図面に示す実施の形態に基いて説明する。図1は要部を示す分解斜視図であり、図2(a)は一部省略した概略縦断面図、同図(b)は部分拡大断面図であり、図3(a)は概略正面図、同図(b)は概略断面図、同図(c)は部分拡大概略断面図であり、図4は部分拡大断面図である。
【0020】
図3,4,5に示すように、建物の開口部のフロアの天井部に梁15が付設され、梁15には支持ブラケット16が突出され、支持ブラケット16に中間ブラケット17が前後(屋内外)方向に移動可能にボルト止めされ、中間ブラケット17に方立保持ブラケット19が連結され、方向保持ブラケット19に押出し形鋼の方立1がボルト止めされ、方立1の下端部は土台20に支持された土台ブラケット21にボルト止めされている。方立1は高さが数mで約1m強程度の間隔を隔てて開口部に複数本立設されている。隣接する方立1,1の間にフェイスガラス5を支持して建物の開口部を覆っている。
【0021】
フェイスガラス5を金属製の方立1に支持するのに際して、方立1に予め接続用ガラス3を保持し、接続用ガラス3を仲介にしてフェイスガラス5を方立1に支持するのであり、本発明においては、必要となる接続用ガラス3を方立1に保持する際に、接続用ガラス3の有効表面積が減少されるのを回避して接続用ガラス3によってフェイスガラス5を安定的に支持させながら、接続用ガラス3を方立1に保持する際の施工性を高め、かつ、地震等において、フェイスガラス5と方立1との層間変位を許容して耐震強度を高めるようにしている。以下、詳述する。
【0022】
図1に示すように、押出し形鋼の方立1には全長に収納溝2を形成している。収納溝2の開口幅、溝中間部の幅、底幅は同幅にしている。収納溝2には方立1の長さを略等分された長さで短冊状となった接続用ガラス3が前方から収納される。接続用ガラス3を押さえる押さえ具9は、金属板を断面ハット形(断面クランク形でもよい)に曲げ加工したものであり、方立1の収納溝2の溝底への固定片6、接続用ガラス3の上下端面を支持する支持片7,7、接続用ガラス3の上下端部のガラス表面を押さえる押さえ片8,8を備えている。押さえ片8の裏面と支持片7の表面にはゴムクッション22を接着している。接続用ガラス3の両側面と裏面を覆う断面コ字状のゴムクッション材23が接続用ガラス3の裏面に配設される。ゴムクッション材23は接続用ガラス3と収納溝2との間の隙間に圧縮されて充填され、ゴムクッション材23によって接続用ガラス3を収納溝2に安定的に保持され、かつ、ゴムクッション材23の弾性を利用して接続用ガラス3の左右方向の移動を許容するようにしている。ゴムクッション材23の裏面に必要ならば金属板が座金24として配設される。押さえ具9の固定片6には通孔13を形成している。方立1の収納溝2の底にはねじ孔14を形成している。
【0023】
このようにして、方立1の収納溝2の溝底に座金24を敷き、接続用ガラス3の裏からゴムクッション材23を被せ、押さえ具9の固定片6の通孔13にボルト12を挿通して方立1のねじ孔14にねじ込み、押さえ具9を方立1の収納溝2内に固定する。押さえ具9は方立1の上下端と中間の例えば3箇所に固定される。中間部の押さえ具9にて、上下の接続用ガラス3,3の上下端面を支持片7,7にて支持し、上下の接続用ガラス3,3の上下端部のガラス表面を押さえ片8,8にて押さえる。上の押さえ具9の支持片7、押さえ片8にて上の接続用ガラス3の上端面、ガラス表面を押さえる。下の押さえ具9の支持片7、押さえ片8にて下の接続用ガラス3の下端面、ガラス表面を押さえる。
このようにして、収納溝2に収納した接続用ガラス3,3,3を固定することができるのであり、この場合、押さえ片8にて押さえられている以外の接続用ガラス3の表面を露出させていて、フェイスガラス5の接着のための有効表面積を減少させることがない。
図2(a)、図3(c)、図5に示すように、接続用ガラス3の幅方向の両側部には高モジュラスシリコンをシーリング材4,4として付着し、これらシーリング材4,4によってフェイスガラス5,5を接着している。このように、接続用ガラス3の表面(幅)をフェイスガラス5を接着するために有効に利用している。シーリング材4,4間にはバックアップ材25が充填される。フェイスガラス5の下端は土台20に支持された梁材26に支持ブロック27を介して載せられて支持されている。フェイスガラス5,5間には低モジュラスシリコンをシーリング28として充填されている。
以上のように、フェイスガラス5を方立1に支持する際に仲介となる接続用ガラス3の表面を減少することがなく、接続用ガラス3の表面をフェイスガラス5を接着するための有効表面積として利用することができ、フェイスガラス5をシーリング材4にて接続用ガラス3に安定的に接着して支持することができる。
【0024】
しかも、接続用ガラス3を断面ハット形の押さえ具9にて押さえるから、短冊状の接続用ガラス3を収納溝2に前面から挿入するができ、フェイスガラス5を上方より挿入する工法に比べてフェイスガラス5を不測に破損することがない。更に、収納溝2に上方から滑り込ませるために必要な方立1の上方の施工スペースを省くことができる。
【0025】
又、一本のボルト12を押さえ具9の固定片6の通孔13をへて方立1のねじ孔14にねじ込んで押さえ具9を固定するから、例えば、押さえ具9を溶接にて方立1に固定する工法に比べて、溶接の際の熱による接続用ガラス3の破損を防止でき、上記熱による接続用ガラス3の破損を防止するための養生シートの敷設作業も省くことができる。
【0026】
加えて、一本のボルト12で押さえ具9を収納溝2に固定するから、押さえ具9は収納溝2の溝幅の範囲内でボルト12を中心に、接続用ガラス3を押さえている状態で、回動することができ、例えば、地震時にフェイスガラス5と建物躯体側の方立1との間で層間変位が生じたとき、接続用ガラス3を押さえている断面ハット形の押さえ具9がボルト12の周りに回動でき、接続用ガラス3を破壊することがなく、結果として、耐震性を向上することができる。この場合、断面コ字状のゴムクッション材23が接続用ガラス3を抱持して方立1の収納溝2の側壁と接続用ガラス3との間にゴムクッション材23が存在しているから、ゴムクッション材23の弾性を利用して接続用ガラス3の左右方向の移動を許容することができ、フェイスガラス5と建物躯体側の方立1との間で層間変位を許容し、一層、耐震性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の一形態を示し、要部の分解斜視図である。
【図2】(a)は一部省略した概略縦断面図、(b)は部分拡大断面図である。
【図3】(a)は概略正面図、(b)は概略断面図、(c)は部分拡大概略断面図である。
【図4】同上の部分拡大断面図である。
【図5】同上の施工後の要部の斜視図である。
【図6】従来例を示し、(a)は断面図、(b)は斜視図である。
【図7】他の従来例の断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 方立
2 収納溝
3 接続用ガラス
4 シーリング材
5 フェイスガラス
6 固定片
7 支持片
8 押さえ片
9 押さえ具
10 固定具
12 ボルト
13 通孔
14 ねじ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に立設された金属製の方立に短冊状の接続用ガラスが保持され、接続用ガラスにシーリング材によって建物の外面を覆うフェイスガラスが取着されているフェイスガラスの支持構造であって、
方立の前面に縦長の収納溝が形成され、方立の収納溝の溝底への固定片、接続用ガラスの上端面又は下端面又は上下両端面を支持する支持片、接続用ガラスの上端部又は下端部又は上下両端部のガラス表面を押さえる押さえ片を備えて押さえ具が形成され、
方立の収納溝に前方から接続用ガラスが挿入され、収納溝に挿入された上下の接続用ガラスの上端部又は下端部又は中間部において、押さえ具が固定片において収納溝の溝底に固定され、押さえ具の支持片にて接続用ガラスの上端面又は下端面又は上下両端面を支持し、押さえ具の押さえ片にて接続用ガラスの上端部又は下端部又は上下両端部近くのガラス表面を押さえて成ることを特徴とするフェイスガラスの支持構造。
【請求項2】
押さえ具の固定片に通孔を形成し、方立にねじ孔を形成し、一本のボルトを固定具として通孔を通してねじ孔にねじ込んで押さえ具を収納溝の溝底に固定していることを特徴とする請求項1に記載のフェイスガラスの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−297844(P2008−297844A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147214(P2007−147214)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000114743)ヤマキ工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】