説明

フェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物の[11C]−放射標識方法

本発明は、「フェノチアジン」及び「フェノチアジン類似」化合物を[11C]-放射標識する方法に関し、[11C]メチルトリフレートとしても知られる[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO2O11CH3)との反応により、ペンダント基(第1級アミノ基、陽イオン性第1級イミノ基、第2級アミノ基、陽イオン性第2級イミノ基、第1級イミノ基、または第2級イミノ基)を有する。この反応は、前記ペンダント基を[11C]メチル-標識ペンダント基に変換する。生じた[11C]-放射標識生成物は、例えばin vivoでのポジトロン放射断層撮影(PET)のトレーサーとして、例えばメラノーマ、最も深刻な皮膚癌、及びタウロパシー(例えばアルツハイマー病)に罹患している患者に有用である。また本発明は、生成した[11C]-放射標識産物、それらを含む組成物、(例えばPET)画像診断方法における使用、医学的治療及び診断の方法における使用などに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年9月29日に出願された英国特許出願GB0322756.8に関連し、その内容は、参照によってすべて本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、一般的に放射化学合成の分野に関し、より具体的には、[11C]-メチルトリフレートとしても知られている、[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO2O11CH3)と反応させることにより、ペンダント基(第1級アミノ基;陽イオン性第1級イミノ基;第2級アミノ基;陽イオン性第2級イミノ基;第1級イミノ基;又は第2級イミノ基)を有する、「フェノチアジン」及び「フェノチアジン類似」化合物を[11C]-放射標識する方法に関する。この反応は、ペンダント基を[11C]メチル-標識ペンダント基に変換する。生成した[11C]-放射標識物は、例えばin vivoのポジトロン放射断層撮影(PET)のトレーサーとして、例えばメラノーマ、最も深刻な形の皮膚癌、及びタウオパシー(例えばアルツハイマー病)に罹患している患者に有用である。また、本発明は、生成した[11C]-放射標識物、それらを含有する組成物、(たとえばPET)画像診断方法におけるそれらの使用、治療及び診断の方法におけるそれらの使用などに関する。
【背景技術】
【0003】
前記の特許請求の範囲の記載を含む本明細書を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、用語「含む(comprise)」及び「含む、含んでいる(comprises、comprising)」などの変化形は、規定された整数又は工程、或いは整数又は工程のグループを含み、他の整数又は工程、或いは他の整数又は工程のグループを排除しないことを意味することは理解されるであろう。
【0004】
本明細書及び添付された特許請求の範囲で使用される、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他の意味に明確に指示される場合を除き、複数の対象物を含むことに注意すべきである。従って、例えば「医薬担体」に言及する場合、2種類以上の担体などの混合物等を含む。
【0005】
本明細書では、しばしば範囲を、「約」特定の値〜、及び/又は、〜「約」別の特定の値、のように表記する。このように範囲が表記される場合、別の実施形態は、その特定の値から、及び/又は、他の特定の値までを含む。同様に、値が近似値で表記される場合、先行詞「約」を使用することにより、その特定の値は別の実施形態を形成することが理解されよう。
【0006】
メラノーマ
メラノーマは皮膚癌の最も深刻な癌であり、イギリスで毎年約2000人の命を奪っている(例えばCancer Research UKのウエブサイトを参照)。
【0007】
Cancer Research UK(例えばCancer Research UKウエブサイト参照)によれば、悪性メラノーマは女性で11番目に多く発生する癌であり、男性では12番目に多く発生する癌であり、イギリスで毎年、新しく5700例を超えるメラノーマが発生している。
【0008】
メラノーマは、太陽の有害な影響から皮膚の深層を保護する色素であるメラニンを生成する細胞から発生する。
【0009】
メチレンブルー
メチレンブルー(3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムクロライド)は低分子量の水溶性の三環系有機化合物であり、細胞膜を通過して拡散し、メラノーマ細胞に選択的に蓄積する(例えばLinkら、1998を参照)。
【0010】
メチレンブルーは、色素と電荷移動錯体を形成することによりメラニンに非常に高い親和性を有する(例えばPotts、1964を参照)。
【0011】
ここ数年間、Linkらは、211アスタチン(211At、半減期(t1/2)=7.2時間)、123ヨウ素 (123I、 t1/2=13.2時間)及び 131ヨウ素 (131I、t1/2=8日)などの比較的長い寿命のある放射性同位元素で標識したメチレンブルーに重点を置いた臨床研究を行っている(例えばLinkら、1998を参照)。
【0012】
彼らは、治療剤としてα-粒子放射体化合物(α-particle emitter compound)[211At]メチレンブルーを研究しており、この放射性化合物は転移拡散を防ぎ、ヒト-メラノーマ担癌動物に与えた場合にメラノーマの成長を制御することができる(例えばLinkら、1998を参照)。また、彼らは播種性メラノーマの診断目的のためのγ-放射体123I-及びβ-放射体[131I]メチレンブルー化合物を研究した。γカメラを使用する場合、特に131I標識化合物がメラノーマの転移の検出に適していると考えられた(例えばLinkら、1998を参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
メチレンブルーのような、別のもっと強力な、放射標識されたフェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物が強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、寿命の短いポジトロン放射11C同位元素(t1/2=20.4分)で標識した新規なフェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物の迅速で効率的な合成のための新規な方法を発見した。
【0015】
本合成方法が、速さ(例えば短い半減期を補うのに十分な速さ)及び効率(例えば役に立つのに十分な放射能収率を提供するのに十分な効率)の両方を有することは、驚きであり、予測できないことである。
【0016】
11C-標識メチレンブルーは構造的に非標識メチレンブルーと同一であり、従って同じ体内分布を示し、これはPET研究において重要である。したがって[N-メチル-11C]メチレンブルーは、特にメラノーマ、もっとも深刻な形の皮膚癌、タウオパシー(例えばアルツハイマー病)、及び他の疾患に罹患している患者のin vivoのPETトレーサーとして非常に有用である。
【0017】
発明の概要
本発明の第一の態様は、フェノチアジン化合物またはフェノチアジン類似化合物の[11C]-放射標識方法に関し、
前記化合物が、A環、B環及びC環で示され直線的に融合した3つの6員環の多環式母核(polycyclic core)を有し、前記B環が中央の環であり、
前記多環式母核が、一部芳香族または全部芳香族であり、
前記多環式母核が、それぞれ独立してN、O及びSから選択される、厳密に1または2個の環へテロ原子を含む14個の環原子を有し、
残りの環原子がCであり、
前記厳密に1または2個の環ヘテロ原子が、B環の一部を形成するが、A環またはC環の一部を形成せず、以下に示される前記多環式母核
【化1】

【0018】
の中央の位置のハッシュマーク(♯)で示された一方または両方に位置し、
前記化合物が前記多環式母核の環原子と共有結合的に結合したペンダント基を有し、
該ペンダント基が、独立して、
第1級アミノ基、
陽イオン性第1級イミノ基、
第2級アミノ基、
陽イオン性第2級イミノ基、
第1級イミノ基、または
第2級イミノ基、
であり、以下の工程、
前記フェノチアジン化合物またはフェノチアジン類似化合物を[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO2O11CH3)と反応させる工程、
それにより、前記ペンダント基を、それぞれ、以下の対応する[11C]メチル標識ペンダント基、
[11C]メチル-標識第2級アミノ基、
[11C]メチル-標識陽イオン性第2級イミノ基、
[11C]メチル-標識第3級アミノ基、
[11C]メチル-標識陽イオン性第3級イミノ基、
[11C]メチル-標識第2級イミノ基、または
[11C]メチル-標識陽イオン性第3級イミノ基、
に変換し、[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を生じさせる工程、
を含む。
【0019】
本発明の別の態様は、本明細書で開示される、[11C]-放射標識フェノチアジン又はフェノチアジン類似化合物に関する。
【0020】
本発明の別の態様は、本明細書に開示される方法により得られる、または得ることができる、[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物に関する。
【0021】
本発明の別の態様は、本明細書で開示される[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を含む組成物(例えば医薬組成物)に関する。
【0022】
本発明の別の態様は、本明細書で開示される[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を用いるPET画像診断(PET imaging)方法に関する。
【0023】
本発明の別の態様は、治療による人体及び動物体の処理方法に使用するための、本明細書で開示した[11C]放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物に関する。
【0024】
本発明の別の態様は、例えば皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の治療に使用するための薬剤の製造における、本明細書で開示した[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の使用に関する。
【0025】
本発明の別の態様は、例えば皮膚癌(例えばメラノーマ)、タウオパシー(例えばアルツハイマー病)の治療で使用するための薬剤を製造する方法の一部として、本明細書で開示されるフェノチアジン化合物又はフェノチアジン類似化合物を[11C]-放射標識する方法の使用に関する。
【0026】
本発明の別の態様は、例えば皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の治療に使用するための薬剤の製造における、
(i)非標識フェノチアジン化合物または非標識フェノチアジン類似化合物であって、
ここで、前記化合物が、A環、B環及びC環で示され直線的に融合した3つの6員環の多環式母核を有し、前記B環が「中央」の環であり、
前記多環式母核が、一部芳香族または全部芳香族であり、
前記多環式母核が、それぞれ独立してN、O及びSから選択される、厳密に1または2個の環へテロ原子を含む14個の環原子を有し、
残りの環原子がCであり、
前記厳密に1または2個の環ヘテロ原子が、B環の一部を形成するが、A環またはC環の一部を形成せず、以下に示される前記多環式母核
【化2】

【0027】
の「中央」の位置のハッシュマーク(♯)で示された一方または両方に位置し、
前記化合物が前記多環式母核の環原子と共有結合的に結合したペンダント基を有し、
該ペンダント基が、独立して、
第1級アミノ基、
陽イオン性第1級イミノ基、
第2級アミノ基、
陽イオン性第2級イミノ基、
第1級イミノ基、または
第2級イミノ基、
である化合物、及び
(ii)[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO2O11CH3
の使用に関する。
【0028】
本発明の別の態様は、本明細書に開示される[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の治療上の有効量を患者に投与することを含む、患者の例えば皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の治療方法に関する。
【0029】
本発明の別の態様は、人体または動物体で行われる診断または予後診断方法に使用するための、本明細書で開示される[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物に関する。
【0030】
本発明の別の態様は、本明細書で開示される[11C]-放射標識フェノチアジン又はフェノチアジン類似化合物を使用する、(例えば皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病の)診断または予後診断の方法に関する。
【0031】
本発明の別の態様は、例えば皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病の)診断または予後診断に使用するための薬剤(例えば診断試薬または予後診断試薬)の製造における、本明細書に開示される[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の使用に関する。
【0032】
本発明の別の態様は、例えば皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の診断または予後診断に使用するための薬剤(例えば診断試薬または予後診断試薬)の製造方法の一部として、本明細書に開示される[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の使用に関する。
【0033】
本発明の別の態様は、例えば皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の診断又は予後診断の使用のための薬剤(例えば診断用試薬または予後診断用試薬)の製造における、
(i)フェノチアジン化合物またはフェノチアジン類似化合物であって、
ここで、前記化合物が、A環、B環及びC環で示され直線的に融合した3つの6員環の多環式母核を有し、前記B環が「中央」の環であり、
前記多環式母核が、一部芳香族または全部芳香族であり、
前記多環式母核が、それぞれ独立してN、O及びSから選択される、厳密に1または2個の環へテロ原子を含む14個の環原子を有し、
残りの環原子がCであり、
前記厳密に1または2個の環ヘテロ原子が、B環の一部を形成するが、A環またはC環の一部を形成せず、以下に示される前記多環式母核
【化3】

【0034】
の中央の位置のハッシュマーク(♯)で示された一方または両方に位置し、
前記化合物が前記多環式母核の環原子と共有結合的に結合したペンダント基を有し、
該ペンダント基が、独立して、
第1級アミノ基、
陽イオン性第1級イミノ基、
第2級アミノ基、
陽イオン性第2級イミノ基、
第1級イミノ基、または
第2級イミノ基、
である化合物、及び
(ii)[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO2O11CH3
の使用に関する。
【0035】
当業者に認識されているように、本発明の1つの態様の構成要件及び好ましい実施形態は、本発明の別の態様にも関連する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、特定の化合物を[11C]-放射標識する方法、及び生成した[11C]-放射標識化合物の両方に関する。
【0037】
本発明の1つの態様は、「フェノチアジン(phenothiazine)」及び「フェノチアジン類似(penothiazine-like)」化合物を[11C]-放射標識する方法に関し、これらの化合物は、独立して、
第1級アミノ基、
陽イオン性第1級イミノ基、
第2級アミノ基、
陽イオン性第2級イミノ基、
第1級イミノ基、または
第2級イミノ基、
であるペンダント基を有し、標識化はこれらの化合物を[11C]メチルトリフレートとしても知られる[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO2O11CH3)と反応させることによる。この反応(すなわち、11C-メチル化)は、ペンダント基を、それぞれ、以下の対応する[11C]メチル標識ペンダント基:
[11C]メチル-標識第2級アミノ基、
[11C]メチル-標識陽イオン性第2級イミノ基、
[11C]メチル-標識第3級アミノ基、
[11C]メチル-標識陽イオン性第3級イミノ基、
[11C]メチル-標識第2級イミノ基、または
[11C]メチル-標識陽イオン性第3級イミノ基、
に変換する。
【0038】
本発明の新規な方法の特に好ましい実施形態は、アズール(Azure)B(ペンダント第2級アミノ基を有する「フェノチアジン」化合物;(非標識)フェノチアジン化合物または(非標識)フェノチアジン類似化合物の具体例)を[11C]-放射標識する方法であり、アズールBを[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸と反応させて、[N-メチル-11C]メチレンブルーを製造する。更に好ましい実施形態において、前記反応を、例えば以下に示すようなスキームで、H2O中のK2CO3の存在下で行う。
【0039】
スキーム1
【化4】

【0040】
試薬、反応条件及び精製
1つの実施形態において、反応を、適切なブロンステッド塩基の存在下で行う。適切なブロンステッド塩基の例として、炭酸塩及び炭酸水素塩、例えばアルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属炭酸水素塩、例えば炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウム、例えば炭酸カリウム(K2CO3)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
1つの実施形態において、前記反応を水性媒体中で行う。例えば、1つの実施形態において、[11C]メチルトリフレートをフェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物及び(任意に)適切なブロンステッド塩基、例えば炭酸カリウム(K2CO3)の水溶液(または懸濁液)に導入し、反応混合物を製造する。
【0042】
1つの実施形態において、([11C]メチルトリフレート、フェノチアジン又はフェノチアジン類似化合物、及び任意にブロンステッド塩基の)反応混合物を、例えば約1〜30分(例えば約1〜10分、例えば約5分)の混合(例えば撹拌)時間で混合(例えば撹拌)する。
【0043】
1つの実施形態において、上記反応は、周囲温度または室温(例えば20℃〜25℃)で行う。
【0044】
1つの実施形態において、反応を不活性雰囲気(例えばアルゴン)下で行う。
【0045】
例えば、マグネチックスターラーバーを備えたアルゴン充満バイアルに、フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物及びK2CO3の滅菌水溶液を入れ、次に、射突終了(EOB;end of bombardment)前に5分間マグネチックスターラー上に載せる。すると、[11C]メチルトリフレートは紫色の水溶液に捕捉される。捕捉される量は、通常、(EOBから)15分後に最大になる(平均2.6GBq)。次に撹拌機のスイッチを入れ、室温(例えば20℃〜25℃)で5分間、水溶液を撹拌すると、[11C]メチルトリフレートでフェノチアジン又はフェノチアジン類似化合物の[11C]メチル化が生じる。
【0046】
1つの実施形態において、生成した[11C]-放射標識物を、例えばイオン交換媒体などのイオン交換法を使って、例えば陽イオン交換媒体、陽イオン交換カートリッジ、例えば小さい使い捨ての陽イオン交換カートリッジなどの陽イオン交換法を使って、精製する。
【0047】
例えば、前記反応混合物を、([11C]-放射標識物を固定化する)陽イオン交換カートリッジに移し、次に例えばエタノールと滅菌水で洗浄する。洗浄により、未反応の出発物質を除去するだけでなく、最高98%までの放射性[11C]副生成物も除去される。次にカートリッジを、例えば塩化ナトリウム溶液、例えば0.9%w/vの滅菌した塩化ナトリウム溶液で溶出して、[11C]-放射標識物を遊離する。
【0048】
合成(及び任意の精製)は、非常に迅速に、射突終了(EOB)から例えば60分以下で、例えば45分以下で、例えば40分以下で、例えば35分以下で、例えば10〜60分で、例えば10〜45分で、例えば10〜40分で、例えば10〜35分で、例えば15〜60分で、例えば15分〜45分で、例えば15分〜40分で、例えば15〜35分で、例えば20〜60分で、例えば20〜45分で、例えば20〜40分で、例えば20〜35分で、容易に行うことができる。
【0049】
合成の収率及び生成物の純度は、最適化により、例えば射突時間及び強度、反応溶媒、反応条件(例えば温度)などの最適化により、更に改善できることが予想される。
【0050】
[11C]-放射標識物(溶液)の放射化学的純度及び比放射能は、例えばHPLCを使って測定できる。
【0051】
[11C]-放射標識物の同定は、例えば、対応する非標識物と同時注入することにより確認することができ、保持時間は両方とも同じであることが示される。
【0052】
1つの実施形態において、本発明の方法により、90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは96%以上、好ましくは97%以上の放射化学的純度が得られる。
【0053】
1つの実施形態において、本発明の方法により、少なくとも2%、好ましくは少なくとも3%、好ましくは少なくとも4%、例えば4〜10%、例えば4〜6%の放射化学的収率が得られる。
【0054】
1つの実施形態において、本発明の方法により、少なくとも0.5GBq/μmol、好ましくは少なくとも1.0GBq/μmol、好ましくは少なくとも1.5GBq/μmolの平均比放射能を有する生成物が得られる。
【0055】
フェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物
本発明は、「フェノチアジン」及び「フェノチアジン類似」化合物を[11C]放射標識する方法に関する。
【0056】
このような化合物は、直線的に融合した3つの6員環の多環式母核を特徴とし、前記多環式母核は、厳密に1又は2個の環へテロ原子を含む14個の環原子を有し、環へテロ原子は、それぞれ独立して窒素、酸素及び硫黄から選択され、残りの環原子はCである。より具体的には、環原子の1つは、独立してN、OまたはSであり、別の環原子は独立してC、N、OまたはSであり、残りの環原子はCである。前記多環式母核に融合している他の環はない。
【0057】
1つの実施形態において、前記多環式母核は窒素、酸素及び硫黄から選択された厳密に1つの環へテロ原子を含む14個の環原子を有し、残りの環原子はCである。より具体的には、環原子の1つは、独立してN、OまたはSであり、残りの環原子はCである。
【0058】
1つの実施形態において、前記多環式母核は、窒素、酸素及び硫黄から選択される厳密に2つの環へテロ原子を含む14個の環原子を有し、残りの環原子はCである。より具体的には、環原子の1つは、独立してN、OまたはSであり、別の環原子は、独立してN、OまたはSであり、残りの環原子はCである。
【0059】
3つの6員環は直線的に融合され、A環、B環及びC環で示され、B環は「中央の」環であり、この多環式母核は以下のように表される。
【化5】

【0060】
厳密に1または2つの環へテロ原子は、B環の一部を形成するが、A環またはC環の一部を形成せず、以下に示される前記多環式母核
【化6】

【0061】
で「中央」の位置のハッシュマーク(#)で示された一方又は両方に位置する。
【0062】
1つの実施形態において、母核は厳密に1つの環へテロ原子を有する。
【0063】
1つの実施形態において、母核は、独立してO、N及びSから選択される厳密に1つの環へテロ原子を有する。
【0064】
1つの実施形態において、母核は、独立してO及びNから選択される厳密に1つの環へテロ原子を有する。
【0065】
1つの実施形態において、母核は厳密に1つの環へテロ原子:Oを有する。
【0066】
1つの実施形態において、母核は厳密に1つの環へテロ原子:Nを有する。
【0067】
1つの実施形態において、母核は厳密に1つの環へテロ原子:Sを有する。
【0068】
1つの実施形態において、母核は厳密に2つの環へテロ原子を有する。
【0069】
1つの実施形態において、母核はそれぞれ独立してO、N及びSから選択される厳密に2つの環へテロ原子を有する。
【0070】
1つの実施形態において、母核はそれぞれ独立してN及びSから選択される厳密に2つの環へテロ原子を有する。
【0071】
1つの実施形態において、母核は厳密に2つの環へテロ原子:N及びSを有する。
【0072】
1つの実施形態において、母核は厳密の2つの環へテロ原子:N及びOを有する。
【0073】
1つの実施形態において、母核は厳密に2つの環へテロ原子:N及びNを有する。
【0074】
1つの実施形態において、母核は厳密に2つの環へテロ原子:O及びOを有する。
【0075】
1つの実施形態において、母核は厳密に2つの環へテロ原子:O及びSを有する。
【0076】
1つの実施形態において、母核は厳密に2つの環へテロ原子:S及びSを有する。
【0077】
前記多環式母核は、一部芳香族(すなわち、すべての環原子が多環式母核の芳香族の性質をもたらすわけではない)または全部芳香族(すなわち、すべての環原子が多環式母格の芳香族の性質をもたらす)である。1つの実施形態において、前記多環式母核は全部芳香族である。
【0078】
1つの特に好ましい実施形態において、前記厳密に1または2つのヘテロ原子はN及びSである(本明細書において「フェノチアジン」化合物という)。
【化7】

【0079】
このような多環式母核の例としてフェノチアジンがある。
【化8】

【0080】
別の実施形態において、前記厳密に1または2つのへテロ原子は本明細書に定義されたとおりであるが、N及びS以外である(本明細書において「フェノチアジン類似」化合物という)。
【0081】
このような多環式母核の例として以下の化合物がある。
【化9】

【0082】
ペンダント基
前記フェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物は、独立して、以下のペンダント基、
第1級アミノ基、
陽イオン性第1級イミノ基、
第2級アミノ基、
陽イオン性第2級イミノ基、
第1級イミノ基、
第2級イミノ基
を有する。
【0083】
本明細書で使用される用語「ペンダント基」は、フェノチアジン化合物またはフェノチアジン類似化合物の多環式母核の環原子と共有結合的に結合する基に関する。たとえば、ペンダント基は、フェノチアジン化合物またはフェノチアジン類似化合物の多環式母核の環の一部を形成しない(即ち環と融合していない)。
【0084】
ペンダント第1級アミノ基は、式-NH2で表される基である。
【0085】
ペンダント陽イオン性第1級イミノ基は、=N(+)H2である。
【0086】
ペンダント第2級アミノ基は、式-NHRで表される基である。
【0087】
ペンダント陽イオン性第2級イミノ基は、=N(+)HRである。
【0088】
ペンダント第1級イミノ基は、式=NHで表される基である。
【0089】
ペンダント第2級イミノ基は、式=NRで表される基である。
【0090】
従って、1つの実施形態において、ペンダント基は、独立して、-NH2、-NHR、=N(+)H2、=N(+)HR、=NH 及び =NR から選択される。
【0091】
1つの実施形態において、ペンダント基は、独立して、第2級アミノ基または陽イオン性第2級イミノ基である。
【0092】
1つの実施形態において、ペンダント基は、独立して、-NHR 及び =N(+)HRから選択される。
【0093】
[11C]メチル放射標識ペンダント基
放射標識されたメチル化剤、即ち[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO2O11CH3; [11C]メチルトリフレート)との反応において、ペンダント基は対応する[11C]メチル-標識ペンダント基に変換される。
【0094】
従って、[11C]メチル-放射標識フェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物はペンダント基を有し、ペンダント基は独立して、
[11C]メチル-標識第2級アミノ基、
[11C]メチル-標識陽イオン性第2級イミノ基、
[11C]メチル-標識第3級アミノ基、
[11C]メチル-標識陽イオン性第3級イミノ基、
[11C]メチル-標識第2級イミノ基、または
[11C]メチル-標識陽イオン性第3級イミノ基
である。
【0095】
ペンダント第1級アミノ基(-NH2)は、対応する[11C]メチル-標識第2級アミノ基:-NH-(11CH3)になる。
【0096】
陽イオン性第1級イミノ基(=N(+)H2)は、対応する[11C]メチル-標識陽イオン性第2級イミノ基:=N(+)H-(11CH3)になる。
【0097】
ペンダント第2級アミノ基(-NHR)は、対応する[11C]メチル-標識第3級アミノ基:-NR-(11CH3)になる。
【0098】
陽イオン性第2級イミノ基(=N(+)HR)は、対応する[11C]メチル-標識陽イオン性第3級イミノ基:=N(+)R-(11CH3)になる。
【0099】
ペンダント第1級イミノ基(=NH)は、対応する[11C]メチル-標識第2級イミノ基:=N-(11CH3)になる。
【0100】
ペンダント第2級イミノ基(=NR)は、対応する[11C]メチル-標識陽イオン性第3級イミノ基:=N(+)R-(11CH3)になる。
【0101】
ペンダント基の対応する[11C]メチル標識ペンダント基への変換について、以下の表に要約する。
【表1】

【0102】
従って、1つの実施形態において、[11C]メチル-標識ペンダント基は、独立して、-NH-(11CH3)、-NR-(11CH3)、=N(+)H-(11CH3)、=N(+)R-(11CH3)、及び =N-(11CH3)から選択される。
【0103】
1つの実施形態において、[11C]メチル-標識ペンダント基は、独立して、第2級アミノ基または対応する陽イオン性イミノ基である。
【0104】
1つの実施形態において、[11C]メチル-標識ペンダント基は、独立して、-NR-(11CH3) 及び =N(+)R-(11CH3)から選択される。
【0105】
ペンダント基:位置
1つの実施形態において、ペンダント基は、独立して、フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の多環式母核の環炭素原子と結合する。
【0106】
1つの実施形態において、ペンダント基は、独立して、フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の多環式母核のA環またはC環の環炭素原子と結合する。
【0107】
1つの実施形態において、ペンダント基は、独立してフェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の多環式母核のA環またはC環の環炭素原子と結合するが、B環の環炭素原子と結合しない。
【0108】
1つの実施形態において、ペンダント基は、フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の多環式母核のA環またはC環の「末端(distal)」の位置の1つに結合し、その位置は、以下に示される前記多環式母核
【化10】

【0109】
にアスタリスク(*)で示される。
【0110】
ペンダント基:置換基R
1つの実施形態において、Rは、独立して、C1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、C1-6シクロアルキル及び C1-6シクロアルケニルから選択され、任意に、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)、ヒドロキシ及びC1-4アルコキシから選択される1つ以上(例えば1、2、3、4等)の基で置換される。
【0111】
1つの実施形態において、Rは独立してC1-6アルキルである。
【0112】
1つの実施形態において、Rは独立してC1-4アルキルである。
【0113】
1つの実施形態において、Rは独立して-Me、-Et、-nPr、-iPr、-nBu、-iBu、-sBuまたは-tBuである。
【0114】
1つの実施形態において、Rは独立して-Meまたは-Etである。
【0115】
1つの実施形態において、Rは独立して-Etである。
【0116】
1つの実施形態において、Rは独立して-Meである。
【0117】
追加の置換基
前述のペンダント基の他に、フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物は、任意に、1つ以上(例えば1、2、3、4等)の追加の置換基を有し、例えば、アミノ(-NH2)、メチルアミノ(-NHMe)、ジメチルアミノ(-NMe2)、エチルアミノ(-NHEt)、ジエチルアミノ(-NEt2)、イミノ(=NH)、メチルイミノ(=NMe)、エチルイミノ(=NEt)、メチル(-Me)、エチル(-Et)、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)、ヨード(-I)、オキソ(=O)、ヒドロキシ(-OH)、カルボキシ(-COOH)及びそれらのプロトン化された形態または脱プロトン化された形態から選択される。
【0118】
イオン、塩及び溶媒和物の形態
更に、フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物は、イオン(たとえば適切な対イオンを有する)、塩(例えば酸付加塩、例えば塩酸塩)、または溶媒和物(例えば水和物)の形態でもよい。
【0119】
例えば、アミノ基(-NH2)は、HCl付加塩:-NH2・HCl (または -N(+)H3Cl-)の形態でもよい。
【0120】
幾つかの好ましいフェノチアジン化合物
1つの実施形態において、フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物は、以下の式
【化11】

【0121】
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、-H、またはRについての前記定義と同じであり、M-は、(例えば電気的中性にする)陰イオンである。)
で表される化合物である。
【0122】
1つの実施形態において、R1は独立して、Rについての前記定義と同じである。
【0123】
1つの実施形態において、-NHR1は独立して-NHMeである。
【0124】
1つの実施形態において、-NR2R3は独立して-NH2である。
【0125】
1つの実施形態において、-NR2R3は独立して-NHMeである。
【0126】
1つの実施形態において、-NR2R3は独立して-NMe2である。
【0127】
1つの実施形態において、M-は独立してハロゲン化物イオンである。
【0128】
1つの実施形態において、M-は独立してF-、Cl-、Br-またはI-である。
【0129】
1つの実施形態において、M-は独立してCl-、Br-またはI-である。
【0130】
1つの実施形態において、M-は独立してCl-である。
【0131】
1つの実施形態において、M-は独立してBr-である。
【0132】
1つの実施形態において、M-は独立してI-である。
【0133】
1つの特に好ましい実施形態において、フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物はアズールBである。
【化12】

【0134】
(式中、-NHR1は-NHMeであり、-NR2R3は-NMe2であり、M-はCl-である。)
また、生成した[11C]放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物は[N-メチル-11C]メチレンブルーである。
【化13】

【0135】
共鳴構造
化学部分及び化合物は共鳴特性を有しうることが指摘されている。このような種は、2つ以上の共鳴構造間で交互変換又は共鳴すると考えられる。これらの異なる共鳴構造はいずれも、種を正確に示すのに使用できる。通常、例外が無いわけではないが、最もエネルギー的に安定な共鳴は、種を表すのに用いられる。当業者には認識されているように、本明細書で示す構造は、しばしば、同じ化合物を表すように描かれ得る、たくさんのあり得る共鳴構造の1つである。本明細書で使用されるように、特別の定めがない限り、1つの構造についての言及は、全てのあり得る対応する共鳴構造についての言及であると認識するべきである。
【0136】
例えば、アズールBについて、多くの共鳴構造が存在し、以下に示す共鳴構造が含まれる。これらはそれぞれ、同じ化合物を同等に示す。
【化14】

【0137】
幾つかの具体例
フェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物の例を以下に幾つか挙げるが、これらに限定されない。
【表2】

【0138】
放射標識メチル化試薬:[11C]メチルトリフレートの調製
本発明の方法は、[11C]メチルトリフレートとしても知られる、[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸(CF3S(=O)2O-11CH3)メチル化試薬を使用する。
【0139】
[11C]ヨウ化メチルは、N-、O-及びS-メチル化法などの求核置換(SN2)反応で最も速く反応するハロゲン化メチルであるだけでなく、最も一般的に使われている11C-放射性トレーサー調製用の標識試薬とされる(例えばNagrenら、1995、参照)。しかしながら、メチル化試薬として[11C]ヨウ化メチルをアズールBに用いる効果は十分ではないことが分かっており、放射能収率と放射化学的純度は非常に低く、最も高い放射化学的収率は0.5%以下である。
【0140】
[11C]メチルトリフレートは、放射能標識反応に使用されている(例えばBolton, 2001; Jewett, 1992; Iwataら, 2001; Nagrenら, 1995; Lundkvistら, 1998; Nagrenら, 1998を参照)。本明細書で開示される方法における[11C]メチルトリフレートの使用はこれらの刊行物には教示も示唆もされていない。
【0141】
本明細書で実証するように、メチル化試薬としての[11C]メチルトリフレートにより、放射能収率だけでなく、放射化学的純度も大きく増加した。
【0142】
[11C]メチルトリフレートは、例えば以下に示す方法を使って調製できる。
【0143】
第1工程(「照射」)において、窒素及び酸素の混合物を高圧(例えば約1〜5MPa、例えば約2MPa)で、高エネルギー(例えば約5〜20MeV、例えば10MeV)プロトンを射突し、14N(p,α)11C核反応を介して11CO2を生成させる。約10〜100μA(例えば約30μA)のビーム流及び約1〜120分の照射時間(約10分間)が適切である。
【0144】
スキーム2
【化15】

【0145】
第2工程(「メトキシド形成」)において、生成した11CO2を、適切な還元剤、例えば水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4, LAH)を用いて還元して、11CH3O-を生成させる。例えばCrouzelら, 1987を参照されたい。「射突終了(EOB)」のときに、11CO2を、例えばヘリウムガス気流の中で、LAH溶液、例えば冷却した0.1M LAHのテトラヒドロフラン(THF)溶液に移す。11CO2はLAHと反応し、11CH3O-が生成される。溶媒(例えばTHF)は加熱、例えば130℃に加熱することにより除去できる。
【0146】
スキーム3
【化16】

【0147】
第3工程(「中和」)において、生成した11CH3O-を、例えばブロンステッド酸、例えばリン酸を用いて中和して、対応するアルコールである11CH3OHを生成させる。例えば、溶媒除去後、11CH3O-を例えば0℃に冷却し、リン酸(例えば10%リン酸1ml)を添加する。
【0148】
スキーム4
【化17】

【0149】
第4工程(「ヨウ素化」)において、次に、生成した11CH3OHをヨウ化水素酸(HI)と反応させる。例えば、11CH3OHを、例えば蒸留して、HIを含む別の反応物に移し、例えば100〜150℃(例えば135℃)に加熱し、11CH3Iを生成させる。
【0150】
スキーム5
【化18】

【0151】
第5工程(「トリフレート形成」)において、次に、生成した11CH3Iを適切なトリフレート塩、例えば銀トリフレート(AgCF3SO3)と反応させる。この反応はカラム法、例えば銀トリフレートを詰めたカラムを使って簡便に行うことができる。例えばJewett, 1992を参照されたい。例えば適切なカラム(例えばステンレス鋼HPLC C-18 Lunaカラム(250×3mm))は、粗い銀トリフレートでゆるく充填されており、例えばグラスウールで適切に抑えられている。使用前にカラムを、例えば300℃で30分間アルゴンガス気流下において適切にならす(又は、調整する)。次に、キャリアガス、例えばヘリウムガスの気流中で11CH3Iを適切な温度、例えば約100〜300℃(例えば約200℃)に加熱したカラムに通し、所望のCF3S(=O)2O-11CH3を得る。
【0152】
スキーム6
【化19】

【0153】
1つの実施形態において、フェノチアジン化合物またはフェノチアジン類似化合物を[11C]-放射標識する方法は、(5)トリフレート形成の先工程を更に含む。
【0154】
1つの実施形態において、前記方法は、(4)ヨウ素化及び(5)トリフレート形成の先工程を更に含む。
【0155】
1つの実施形態において、前記方法は、(3)中和、(4)ヨウ素化及び(5)トリフレート形成の先工程を更に含む。
【0156】
1つの実施形態において、前記方法は、(2)メトキシド形成、(3)中和、(4)ヨウ素化及び(5)トリフレート形成の先工程を更に含む。
【0157】
1つの実施形態において、前記方法は、(1)照射、(2)メトキシド形成、(3)中和、(4)ヨウ素化及び(5)トリフレート形成の先工程を更に含む。
【0158】
自動化
1つの実施形態において、フェノチアジン化合物またはフェノチアジン類似化合物を[11C]-放射標識する方法は、部分的にまたは完全に自動化される。
【0159】
1つの実施形態において、前記方法は完全に自動化される。
【0160】
前記方法は、周知の装置及び技術を使って自動化することができる。
【0161】
[11C]-放射標識フェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される方法により得られ、または得ることができる、[11C]-放射標識フェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物に関する。
【0162】
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される、[11C]-放射標識フェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物に関する。
【0163】
1つの実施形態において、前記化合物は以下の一般式
【化20】

【0164】
(式中、R1、R2、R3及びM-は本明細書で定義されるとおりである。)
を有する[11C]-放射標識フェノチアジン化合物である。
【0165】
1つの実施形態において、-NHR1 は独立して-NHMeである。
【0166】
1つの実施形態において、-NR2R3 は独立して-NH2である。
【0167】
1つの実施形態において、-NR2R3 は独立して-NHMeである。
【0168】
1つの実施形態において、-NR2R3 は独立して-NMe2である。
【0169】
1つの実施形態において、M- は独立してハロゲン化物イオンである。
【0170】
1つの実施形態において、M- は独立してCl-である。
【0171】
特に好ましい実施形態において、前記化合物は[N-メチル-11C]メチレンブルーである。
【化21】

【0172】
組成物
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される、[11C]-放射標識フェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物を含む組成物に関する。
【0173】
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される方法により得られる、または得ることができる[11C]-放射標識フェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物を含む組成物に関する。
【0174】
1つの実施形態は、前記組成物は、製薬上許容できる担体を更に含む。
【0175】
画像診断方法
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される、[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を用いる(例えばPET)画像診断方法に関する。
【0176】
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される方法により得られる、または得ることができる[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を用いる(例えばPET)画像診断方法に関する。
【0177】
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される、フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を[11C]-放射標識する方法の工程を追加の前工程として含む、(例えばPET)画像診断方法に関する。
【0178】
1つの実施形態において、画像診断方法は、以下のステップ、
(i)[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を被験者に導入するステップ、
(ii)被験者(の一部または全部)を画像診断するステップ、
を含む。
【0179】
1つの実施形態において、(ii)被験者を画像診断するステップは、(ii)被験者(の一部または全部)における、[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の存在及び/又は位置及び/又は量を測定するステップである。
【0180】
PET画像診断方法は周知である。例えばCzerninら, 2002; Gohら, 2003; Van Heertumら, 2003; Fowlerら, 1999; Kennedyら, 1997を参照されたい。
【0181】
例えば、1つの実施形態において、前記方法は、以下のステップ、
(i)特許請求の範囲の請求項1〜45のいずれかに記載の方法を用いて[11C]放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を作製するステップ、
(ii)前記化合物を被験者に導入するステップ、及び
(iii)被験者(の一部または全部)をPET画像診断するステップ、
を含むPET画像診断方法である。
【0182】
治療方法
本発明の1つの態様は、治療による人体または動物体の(例えば病気)の処置方法に使用するための、本明細書で開示される、[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物に関する。
【0183】
本発明の1つの態様は、治療による人体または動物体の(例えば病気)の処置方法に使用するための、本明細書で開示される方法により得られる、または得ることができる[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物に関する。
【0184】
本発明の1つの態様は、病気の治療に使用するための薬剤の製造における、本発明で開示される[11C]-放射標識フェノチアジンおよびフェノチアジン類似化合物の使用に関する。
【0185】
本発明の1つの態様は、病気の治療に使用するための薬剤の製造における、本明細書で開示される方法により得られる、または得ることができる[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の使用に関する。
【0186】
本発明の1つの態様は、病気の治療に使用するための薬剤を製造する方法の一部としての、本明細書に開示されるフェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を[11C]-放射標識する方法の使用に関する。
【0187】
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される、フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を[11C]-放射標識するステップを含む、病気の治療に使用するための薬剤を製造する方法に関する。
【0188】
本発明の1つの態様は、病気の治療に使用するための薬剤の製造における、
(i)本明細書で開示される(非標識)フェノチアジン化合物または(非標識)フェノチアジン類似化合物、及び
(ii)[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO2O11CH3)
の使用に関する。
【0189】
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される、[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の治療上の有効量を前記患者に投与することを含む、患者の病気を治療する方法に関する。
【0190】
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される方法により得られる、または得ることができる[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の治療上の有効量を患者に投与することを含む、前記患者の病気の治療方法に関する。
【0191】
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される、フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を[11C]-放射標識する方法の工程を、追加の前工程として含む、[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の治療上の有効量を患者に投与することを含む、患者の病気を治療する方法に関する。
【0192】
1つの実施形態において、前記病気は皮膚癌である。
【0193】
1つの実施形態において、前記病気はメラノーマである。
【0194】
1つの実施形態において、前記病気はタウオパシーである。
【0195】
1つの実施形態において、前記病気はアルツハイマー病(AD)である。
【0196】
タウオパシー
Wischikら, 2002で論じられたように、本明細書で開示されるタイプの標識フェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物は、ペアになったらせん状フィラメント(PHF)と結合し、タウ凝集のリガンドとして働くことができる。
【0197】
従って、このような化合物を、例えばアルツハイマー病(AD)などのタウオパシーの診断または予後診断の目的のため、凝集したPHFタウを標識する方法に使用できる。
【0198】
特に、タウタンパク質(及びその異常機能または切断)が役割を果たせるのはアルツハイマー病だけではない。ピック病及び進行性核上性麻痺(PSP)などの神経変性疾患の原因は、それぞれ、新皮質の歯状回及び星状錐体細胞(stellate pyramidal cells)における病因となる末端切断型タウ凝集体(trunctated tau aggregate)の蓄積と相関性があると考えられる。他の痴呆として、前頭側頭型痴呆(fronto-temporal dementia (FTD));17番染色体に関連したパーキンソン症候群(parkinsonism linked to chromosome 17 (FTDP-17));脱制止-痴呆-パーキンソン症候群-筋萎縮合併症(disinhibition-dementia-parkinsonism-amyotrophy complex (DDPAC));淡蒼球-橋脳-黒質退行変性(pallido-ponto-nigral degeneration (PPND));グアム-ALS症候群;淡蒼球-黒色-ルイ体変性(pallido-nigro-luysian degeneration (PNLD));大脳皮質基底変性(cortico-basal degeneration (CBD))及びその他が挙げられる(例えばWischikら, 2000, 特に表5.1を参照のこと)。主としてまたはある程度、異常タウ凝集を特徴とするこれらの各疾患を、本明細書において「タウオパシー」という。
【0199】
特に、前記化合物は、例えば前記疾患のいずれかに罹患していると信じられる被験者のタウオパシーに関連した神経性原線維変性を評価するのに使用できる。
【0200】
診断または予後診断方法
本発明の1つの態様は、人体または動物体で行われる(例えば病気の)診断または予後診断に使用するための、本明細書に開示される[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物に関する。
【0201】
本発明の1つの態様は、人体または動物体で行われる診断又は予後診断(例えば病気の診断または予後診断)に使用するための、本明細書で開示される方法により得られる、または得ることができる[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物に関する。
【0202】
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を用いる(例えば病気の)診断または予後診断の方法に関する。
【0203】
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される方法により得られる、または得ることができる[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を用いる(例えば病気の)診断または予後診断方法に関する。
【0204】
本発明の1つの態様は、本明細書で開示されるフェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の[11C]-放射標識方法の工程を、追加の前工程として含む、[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を用いる(例えば病気の)診断または予後診断方法に関する。
【0205】
本発明の1つの態様は、病気の診断または予後診断に使用するための薬剤(例えば診断試薬または予後診断試薬)の製造における、本明細書で開示される[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の使用に関する。
【0206】
本発明の1つの態様は、病気の診断または予後診断に使用するための薬剤(例えば診断試薬または予後診断試薬)の製造における、本明細書で開示される方法により得られる、または得ることができる[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の使用に関する。
【0207】
本発明の1つの態様は、(例えば病気の)診断または予後診断方法に使用するのに適切な診断試薬または予後診断試薬を製造する方法の一部としての、本明細書に開示されるフェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の[11C]-放射標識方法の使用に関する。
【0208】
本発明の1つの態様は、本明細書で開示されるフェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を[11C]-放射標識する工程を含む、(たとえば病気の)診断または予後診断で使用するための薬剤を製造する方法に関する。
【0209】
本発明の1つの態様は、病気の診断または予後診断に使用するための薬剤(例えば診断試薬または予後診断試薬)の製造における(例えば作製方法における)、
(i)本明細書で開示される(非標識)フェノチアジン化合物または(非標識)フェノチアジン類似化合物、及び
(ii)[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO2O11CH3)
の使用に関する。
【0210】
1つの実施形態において、前記病気はタウオパシーである。
【0211】
1つの実施形態において、前記病気はアルツハイマー病(AD)である。
【0212】
1つの実施形態において、前記診断または予後診断方法は、被験者のAD状態を判定することである。
【0213】
1つの実施形態において、前記診断または予後診断方法は、本明細書で開示されるフェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の[11C]-放射標識方法の工程を、追加の前ステップとして含む。
【0214】
1つの実施形態において、前記診断または予後診断方法は、以下のステップ、
(i)[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を被験者に導入すること、
(ii)前記被験者における、[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の存在及び/又は位置及び/又は量を測定すること、
(iii) (ii)で得られた測定結果を前記被験者の病気と相関させること
を含む。
【0215】
1つの実施形態において、本明細書で開示されるフェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を[11C]-放射標識する方法は、以下の追加のステップ、
(i)[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を被験者に導入すること、
(ii)前記被験者における、[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の存在及び/又は位置及び/又は量を測定すること、
(iii) (ii)で得られた測定結果を前記被験者の病気と相関させること
が続く。
【0216】
例えば1つの実施形態において、タウオパシーの診断または予後診断方法は、以下のステップ、
(i)[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を被験者に導入すること、
(ii)前記被験者の脳における、凝集したPHFタウと結合した[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の存在及び/又は量を測定すること、
(iii) (ii)で得られた測定結果を前記被験者のタウオパシー(例えばAD)状態と相関させること、
を含む。
【0217】
1つの実施形態において、本明細書で開示されるフェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を[11C]-放射標識する方法では、以下の追加のステップ、
(i)[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を被験者に導入すること、
(ii)前記被験者の脳における、凝集したPHFタウと結合した[11C]放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の存在及び/又は量を測定すること、
(iii) (ii)で得られた測定結果を前記被験者のタウオパシー(例えばAD)状態と相関させること、
が続く。
【0218】
処置
病気の治療に関連して、本明細書で使用される用語「処置(treatment)」は、ヒト又は動物(例えば獣医学的適用)にかかわらず、一般的に処置及び治療に関し、幾つかの望ましい治療効果、例えば病状の進行の抑制が達成され、また進行速度が遅くなること、進行速度が止まること、状態の退行、状態の回復及び状態の治癒が含まれる。また、予防対策としての処置(例えば病気の予防法、防止法)も含まれる。
【0219】
本明細書で使用される用語「治療上の有効量」は、所望の治療計画に従って投与される場合に、合理的な効果/リスク率に見合った、幾つかの望ましい治療効果を上げるのに効果的な、活性化合物の量、または活性化合物を含む物質、組成物または剤形の量に関する。
【0220】
用語「治療」は、処置及び治療の組み合わせを含み、例えば連続的に又は同時に2つ以上の処置または治療が組合わされる。処置及び治療の例として、化学療法(例えば薬物、抗体(例えば免疫療法において)、プロドラッグ(例えば光力学療法、GDEPT、ADEPTなどにおけるもの)を含む活性薬剤の投与)、手術、放射線治療及び遺伝子治療が挙げられるが、これらに限定されない。
【0221】
投与経路
[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物、またはそれを含む医薬組成物は、全身的/末梢的または局所的(即ち所望の作用部位)のどれであろうと、好都合な投与経路で被験者/患者に投与することができる。
【0222】
投与経路として、経口(例えば経口摂取)、口腔(buccal)、舌下、経皮(例えばパッチ、絆創膏など)、経粘膜(例えばパッチ、絆創膏など)、経鼻(例えば鼻内噴霧)、眼内(例えば点眼)、肺(例えば口または鼻を通じて例えばエアロゾルを用いる吸入または注入治療)、直腸(例えば座薬または注腸)、膣内(例えばペッサリー)、非経口、例えば皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心腔内、髄膜(intrathecal)、髄腔内、嚢内(intracapsular)、被膜下(subcapsular)、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下及び胸骨内(intrasternal)(例えば脳へのカテーテル内(intracatheter)注射を含む)の注射によるもの、例えば皮下または筋肉内へのデポーまたはリザーバーの埋め込みによるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0223】
被験者/患者
被験者/患者は、動物、哺乳動物、有胎盤哺乳類、有袋類(例えばカンガルー、ウォンバット)、単孔類の動物(例えばカモノハシ(duckbilled platypus))、齧歯動物(例えばモルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ(例えばマウス)、ウサギ目の動物(例えばウサギ)、鳥類(例えば鳥)、イヌ科の動物(例えばイヌ)、ネコ科の動物(例えばネコ)、ウマ科の動物(例えばウマ)、ブタ(porcine)(例えばブタ(pig))、ヒツジ属の動物(例えばヒツジ)、ウシ属の動物(例えばウシ)、霊長類、サル(例えばモンキーまたは類人猿)、モンキー(例えばマーモセット、ヒヒ)、類人猿(例えばゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)、またはヒトである。
【0224】
更に、被験者/患者は発達過程のどんな形態のものでのよく、例えば胎児でもよい。
【0225】
1つの好ましい実施形態において、被験者/患者はヒトである。
【0226】
製剤
[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物は単独で使用(例えば投与)することが可能であるが、しばしば、製剤として存在することが好ましい。
【0227】
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される方法により得られる、または得ることができる[11C]-放射標識フェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物と担体を含む組成物に関する。
【0228】
本発明の1つの態様は、本明細書で開示される[11C]-放射標識フェノチアジン及びフェノチアジン類似化合物及び担体を含む組成物に関する。
【0229】
1つの実施形態において、前記組成物は本明細書で開示される化合物及び製薬上許容できる担体を含む医薬組成物(例えば剤形、製剤、薬物)である。
【0230】
1つの実施形態において、前記組成物は、本明細書で開示される少なくとも1つの化合物を、当業者に周知の1種類以上の他の製薬上許容できる成分と一緒に含む医薬組成物であり、その成分として製薬上許容できる担体、希釈剤、賦形剤、補助剤、増量剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、滑沢剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、風味剤及び甘味剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0231】
1つの実施形態において、前記組成物は他の活性剤、例えば他の治療薬又は予防薬を更に含む。
【0232】
適切な担体、希釈剤、賦形剤等は、標準的な製薬のテキストを見ればわかる。例えば、Handbook of Pharmaceutical Additives, 第2版 (M. Ash 及び I. Ash編), 2001 (Synapse Information Resources, Inc., Endicott, New York, USA)、 Remington's Pharmaceutical Sciences, 第20版, 発行元Lippincott, Williams & Wilkins, 2000、及び Handbook of Pharmaceutical Excipients, 第2版, 1994を参照されたい。
【0233】
本発明の別の態様は、本明細書に開示される少なくとも1つの[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を、例えば担体、希釈剤、賦形剤等の当業者に周知の製薬上許容できる1種類以上の他の成分と一緒に混合する工程を含む、医薬組成物の製造方法に関する。個別の単位(例えば錠剤など)として処方される場合、各単位は活性化合物の所定量(投与量)を含む。
【0234】
本明細書で使用される用語「製薬上許容される」は、化合物、成分、物質、組成物、剤形などに関し、これらは、適切な医学的判断の範囲内で、問題の被験者(例えばヒト)の組織と接触させて使用するのに適切で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、或いは他の問題または合併症が無く、合理的な効果/リスクの比率と見合う。また、各担体、希釈剤、賦形剤などは、製剤の他の成分と適合するという意味で「許容でき」なければならない。
【0235】
前記製剤は、製薬学の技術分野で周知の方法で製造できる。このような方法は、活性化合物を1種類以上の副成分を構成する担体と組み合わせる工程を含む。一般的に、製剤は、活性化合物を担体(例えば液状の担体、微粉砕された固形の担体など)と組合わせて均一によく混合・製造し、必要に応じて製造物を成形する。
【0236】
製剤は、迅速な放出または徐放、即時放出、遅延放出、時限放出、持続放出、またはそれらの組み合わせを提供するように調製することができる。
【0237】
非経口的投与に適切な剤形(例えば注射)として、活性成分が溶解され、懸濁され、或いは別の形(例えばリポソームまたは他の微粒子)で提供される、水溶液又は非水溶液、等張液、発熱物質非含有液、滅菌液(例えば溶液、懸濁液)が挙げられる。このような液体は、他の製薬上許容できる成分、例えば抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、安定剤、静菌剤、懸濁化剤、増粘剤、及び対象となる受容者の血液(又は、他の関連体液)と等張にする溶質を追加で含めることができる。賦形剤の例として、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などが挙げられる。このような製剤に使用するのに適切な等張性担体の例として、塩化ナトリウム注射液、リンガー液、または乳酸加リンガー液が挙げられる。典型的には、液体中の活性成分の濃度は、約1ng/ml〜約10μg/ml、たとえば約10ng/ml〜約1μg/mlである。製剤は、単位用量または複数の用量が、密封された容器、例えばアンプルおよびバイアルに入っていてもよく、使用する直前に、滅菌された液体担体、例えば注射用の水を添加するだけでよい、フリーズドライ(凍結乾燥)された状態で保存してもよい。即席の注射液または懸濁液は、滅菌された粉末剤、顆粒剤または錠剤から製造してもよい。
【0238】
投与量
活性化合物の適切な投与量、及び活性化合物を含む組成物は、患者によって様々に変えうることは当業者に理解される。最適な投与量を決定することは、一般的に、リスクまたは有害な副作用と治療効果のレベルのバランスをとることが含まれると考えられる。選択された投与量のレベルは様々な因子、例えば特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、化合物の排出速度、治療期間、組合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は物質、病気の重症度、及び種、性別、年、体重、病状、全体的な健康状態、及び患者の従前の病歴に依存するであろうが、これらに限定されない。一般的に投与量は、実質的に有害な又は悪い副作用を起こすことなく望ましい効果が得られる局所濃度に作用部位で達するように選択されるが、化合物の量及び投与経路は、最終的には、医師、獣医、または臨床医の判断による。
【0239】
投与は、治療過程中、1回の投与で、連続的、あるいは断続的に(例えば適切な間隔での分割投与で)効果が得られる。投与の最も効果的な方法と投与量を決定する方法は当業者に周知であり、治療で使用される剤形、治療目的、治療される標的細胞及び治療を受ける被験者で変わる。1回または複数回の投与は、治療を行う医師、獣医または臨床医により選択される服用レベル及びパターンで行うことができる。
【0240】
一般的に、活性化合物の適切な投与量は、約100ng〜約25mg(より典型的には約1μg〜約10mg)/kg(被験者の体重)/日の範囲内である。活性化合物が塩、エステル、アミド、プロドラッグなどの場合、投与される量は親化合物に基づいて計算されるので、使用される実際の量はそれに比例して増加する。
【実施例】
【0241】
以下は、単に本発明を説明するために示される実施例であり、本明細書に開示された発明の範囲を制限するものではない。
【0242】
薬品及び溶媒
全ての試薬をSigma-Aldrichから購入し、特に断りのない限り、更に精製することなく使用した。使用した全ての溶媒を標準的な方法に従って精製し、脱気した。
【0243】
分析手法
標識された化合物の分析は全て、BIOSCAN NaI検出器(B-FC-3200)と連結した可変式Wavelength UV/VIS検出器(664nm)とGynkothek HPLCシステム(P580ポンプ)で行った。HPLCシステムはPhenomenex Luna C-18カラム(150×3.0mm, 粒径: 5μm)を使って作動させた。溶出剤は、0.75%の酢酸及び0.25%のメタンスルホン酸をHPLC等級アセトニトリルと蒸留水の混合物(1:4)に加えて作製した。溶出剤を濾過し、使用前にヘリウムで脱気した。流速を1ml/分に設定した。
【0244】
トリフルオロメタンスルホン酸銀カラムの調製
トリフルオロメタンスルホン酸銀(銀トリフレート)カラムを、Jewett, 1992に説明されている方法に従って調製した。粗銀トリフレート(1.0g)及びGraphpac-GC 80/100 (2.0g, Alltech)を粉砕して均質な混合物にした。空のステンレス鋼HPLC C-18 Luna カラム (250×3mm)の中央部にその混合物を軽く充填し(長さ10cm)、その充填剤を抑えるために、カラムの両端をグラスウールで塞いだ。第1反応の前に、カラムを管状炉(Carbolote炉)に挿入し、300℃で30分間、アルゴンガス気流下でならした。
【0245】
[11C]二酸化炭素の放射合成
[11C]二酸化炭素を、14N(p,α)11Cの核反応によるガス混合物(98%N2、2%O2)のプロトン射突により調製した。ガスターゲットを270psi(1.9 MPa)に加圧し、スコットランド、アバディーンにあるJohn Mallard Scottish P.E.T.センターのCTI RDS-111サイクロトロンで製造された11 MeVのプロトンを照射した。主として、27μAのビーム流で10分間の照射を用いた。
【0246】
[11C]ヨウ化メチルの放射合成
[11C]ヨウ化メチルを従来の水素化リチウムアルミニウム(LAH)/ヨウ化水素酸(HI)法に従って調製した(例えばCrouzelら, 1987参照)。「射突終了」(EOB)のときに、[11C]二酸化炭素を、ヘリウムガス気流中のターゲットからリモートコントロールされた自動化[11C]ヨウ化メチルモジュールに移し、[11C]二酸化炭素を200μlの冷却した0.1M LAHのテトラヒドロフラン(THF)溶液に通した。[11C]二酸化炭素はLAHと反応して、[11C]メトキシドアニオンを生成した。次に、第1反応容器を130℃に加熱して溶媒を蒸発させた。THF蒸発が完了した後、反応容器の内容物を0℃に冷却し、1mlの10%リン酸を加えて[11C]メタノールを合成した。次に、[11C]メタノールを600μlのヨウ化水素酸(HI)が入っている第2反応容器の中へ蒸留した。第2反応容器を135℃に加熱して、平均で4.8GBqの[11C]ヨウ化メチルを製造した。平均比放射能は、780GBq/mmolであった。
【0247】
[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸の放射合成
[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸([11C]メチルトリフレート)をJewett, 1992で説明されている方法に従って調製した。ヘリウムガス気流中で、[11C]ヨウ化メチルモジュールと連結した銀トリフレートgraphpacカラムに[11C]ヨウ化メチルを通した。カラムを200℃の管状炉に挿入し、平均で2.0GBqの[11C]メチルトリフレートを合成した。
【0248】
[N-メチル-11C]メチレンブルーの放射合成
[N-メチル-11C]メチレンブルーを、[11C]メチルトリフレートを使ってアズールBから調製した。[11C]メチルトリフレートを、1.5mlの滅菌水にアズールB(1mg、3.27μmol)と炭酸カリウム(K2CO3) (20mg, 144.72μmol)の溶液が入っている反応容器に捕集した。[11C]メチルトリフレートの回収後、溶液を室温(RT,20℃)で5分間撹拌した。
【0249】
前記溶液を、5mlのエタノールと15mlの滅菌水で洗浄した陽イオン交換カートリッジ(Waters, Sep-Pak Accell Plus CM)に移した。次にこのカートリッジを10mlの滅菌0.9%w/v塩化ナトリウム溶液で溶出し、[N-メチル-11C]メチレンブルーを得た。最終溶液の放射化学的純度及び比放射能をHPLCで測定した。
【0250】
放射標識生成物の同定をメチレンブルーの市販のサンプルで同時注入で確認した。UVクロマトグラムの保持時間は、放射能クロマトグラムの[N-メチル-11C]メチレンブルーの保持時間と同一であった。
【0251】
全てのケースで、[N-メチル-11C]メチレンブルーは、[11C]ヨウ化メチルに基づいて平均して4-6%の放射化学的収率で97%以上の放射化学的純度で得られた。平均比放射能は1.5GBq/μmolであった。
【0252】
分析用HPLCは、製造物が4〜6%の放射化学的収率で>97%の放射化学的純度であること、及び生成物が7.8分の同一保持時間でメチレンブルーの市販サンプルと共溶出されたことを示した(図1参照)。
【0253】
UV検出スペクトルで測定すると、平均でわずか7〜10μg/mlのアズールBが生成物の洗浄液中に見られた。
【0254】
EOBからの全合成時間は35分であった。
【0255】
以上、本発明の原理、好ましい実施形態及び操作様式を説明した。しかしながら、本発明は説明した特定の実施形態に限定するように解釈すべきではない。代わりに、前述の実施形態は制限的ではなく例示として考慮されるべきであり、これらの実施形態において、当業者により添付の特許請求の範囲により定められる本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変形がなされうることは認識されるべきである。
【0256】
参考文献
本発明及び本発明に関する技術の状況をより十分に説明し開示するため、上では、多くの特許及び出版物が引用された。これらの参考文献の全てを以下に示す。これらの各文献は、あたかも参照により本明細書に具体的にかつ個々に組み込まれていたかのごとく同程度に、その全体を参照により本開示の中に組み込まれる。
【0257】
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【図面の簡単な説明】
【0258】
【図1】(a)[N-メチル-11C]メチレンブルーの放射能-クロマトグラム(98%、7.8分)(5.8分の小さいピークは未同定である)及び(b)非放射性メチレンブルーのUVクロマトグラム(7.8分)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノチアジン化合物またはフェノチアジン類似化合物を[11C]-放射標識する方法であって、
前記化合物が、A環、B環及びC環で示され直線的に融合した3つの6員環の多環式母核を有し、前記B環が中央の環であり、
前記多環式母核が、一部芳香族または全部芳香族であり、
前記多環式母核が、それぞれ独立してN、O及びSから選択される、厳密に1または2個の環へテロ原子を含む14個の環原子を有し、
残りの環原子がCであり、
前記厳密に1または2個の環ヘテロ原子は、B環の一部を形成するが、A環またはC環の一部を形成せず、以下に示される前記多環式母核
【化1】

の中央の位置のハッシュマーク(♯)で示された一方または両方に位置し、
前記化合物が前記多環式母核の環原子と共有結合的に結合したペンダント基を有し、
該ペンダント基が、独立して、
第1級アミノ基、
陽イオン性第1級イミノ基、
第2級アミノ基、
陽イオン性第2級イミノ基、
第1級イミノ基、または
第2級イミノ基、
であり、以下の工程、
前記フェノチアジン化合物またはフェノチアジン類似化合物を[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO2O11CH3)と反応させる工程、
それにより、前記ペンダント基を、それぞれ、以下の対応する[11C]メチル標識ペンダント基:
[11C]メチル-標識第2級アミノ基、
[11C]メチル-標識陽イオン性第2級イミノ基、
[11C]メチル-標識第3級アミノ基、
[11C]メチル-標識陽イオン性第3級イミノ基、
[11C]メチル-標識第2級イミノ基、または
[11C]メチル-標識陽イオン性第3級イミノ基、
に変換し、[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を生じさせる工程、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記多環式母核が、それぞれ独立して、N、O及びSから選択された、厳密に2個の環へテロ原子を含む、14個の環原子を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多環式母核が、以下に示す、厳密に2個のヘテロ原子:N及びS
【化2】

を含む14個の環原子を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多環式母核が全部芳香族である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ペンダント基が、独立して、前記多環式母核の環炭素原子と結合する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ペンダント基が、独立して、前記A環またはC環の環炭素原子と結合するが、前記B環の環炭素原子と結合しない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ペンダント基が、独立して、アスタリスク(*)で示された前記A環またはC環末端の位置の1つに結合する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ペンダント基が、独立して、
第2級アミノ基又は
陽イオン性第2級イミノ基
であり、前記対応する[11C]メチル-標識ペンダント基が、それぞれ、
[11C]メチル-標識第3級アミノ基、または
[11C]メチル-標識陽イオン性第3級イミノ基
である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ペンダント基が、独立して、
-NH2、-NHR、=N(+)H2、=N(+)HR、=NH 及び =NR
から選択され、
Rが、独立して、C1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル, C1-6シクロアルキル及び C1-6シクロアルケニルから選択され、及び任意に、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)、ヒドロキシ及びC1-4アルコキシから選択される1つ以上の基で置換され、
前記対応する[11C]メチル-標識ペンダント基が、それぞれ、
-NH-(11CH3)、-NR-(11CH3)、=N(+)H-(11CH3)、=N(+)R-(11CH3) または =N-(11CH3)
である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ペンダント基が、独立して、-NHR 及び =N(+)HRから選択され、
Rが、独立して、C1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、C1-6シクロアルキル及び C1-6シクロアルケニルから選択され、及び任意に、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)、ヒドロキシ及び C1-4アルコキシから選択される1つ以上の基で置換され、
前記対応する[11C]メチル-標識ペンダント基が、それぞれ、-NR-(11CH3) または =N(+)R-(11CH3)である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記Rが独立してC1-4アルキルである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記Rが独立して-Me又は-Etである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
前記Rが独立して−Meである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、前記ペンダント基の他に、
アミノ(-NH2)、メチルアミノ(-NHMe)、ジチルアミノ(-NMe2)、エチルアミノ(-NHEt)、ジエチルアミノ(-NEt2)、イミノ(=NH)、メチルイミノ(=NMe)、エチルイミノ(=NEt)、メチル(-Me)、エチル(-Et)、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)、ヨード(-I)、オキソ(=O)、ヒドロキシ(-OH)、カルボキシ(-COOH)、並びにそれらのプロトン化された形態及び脱プロトン化された形態、
から選択された1つ以上の置換基を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物が、以下の式
【化3】

(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、-H、C1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、C1-6シクロアルキル 及び C1-6シクロアルケニルであり、及び任意に、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)、ヒドロキシ及びC1-4アルコキシから選択される1つ以上の基で置換され、
M-は、陰イオンである。)
で示される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記-NHR1が、独立して-NHMeである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記-NR2R3が、独立して-NH2である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記-NR2R3が、独立して-NHMeである、請求項15または16に記載の方法。
【請求項19】
前記-NR2R3が、独立して-NMe2である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項20】
前記M-が、独立してハロゲンイオンである、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記M-が、独立してCl-である、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物が、以下の式
【化4】

で示されるアズールBであり、
前記[11C]-放射標識フェノチアジン又はフェノチアジン類似化合物が、以下の式
【化5】

で示される[N-メチル-11C]メチレンブルーである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記反応をブロンステッド塩基の存在下で行う、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記反応をアルカリ金属炭酸塩または炭酸水素塩の存在下で行う、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記反応を炭酸カリウム(K2CO3)の存在下で行う、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記反応を水性媒体中で行う、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記反応を、前記[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸を前記フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の水溶液又は懸濁液に導入して行い、反応混合物を製造する、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記水溶液または懸濁液が、ブロンステッド塩基を更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記水溶液または懸濁液が、アルカリ金属炭酸塩または炭酸水素塩を更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記水溶液または懸濁液が、炭酸カリウム(K2CO3)を更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記反応混合物を1〜30分の混合時間で混合する、請求項27〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記反応混合物を1〜10分の混合時間で混合する、請求項27〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記反応を20℃〜25℃で行う、請求項27〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記反応を不活性雰囲気下で行う、請求項27〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記反応をアルゴン下で行う、請求項27〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を精製する後工程を更に含む、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を、イオン交換法を使って精製する後工程を更に含む、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を、陽イオン交換法を使って精製する後工程を更に含む、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記反応及び任意の精製を60分以下で行う、請求項1〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記反応及び任意の精製を45分以下で行う、請求項1〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記反応及び任意の精製を40分以下で行う、請求項1〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
放射化学的純度が90%以上である、請求項1〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
放射化学的収率が少なくとも2%である、請求項1〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
平均比放射能が少なくとも0.5GBq/μmolである、請求項1〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
部分的にまたは完全に自動化される、請求項1〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
請求項1〜45のいずれか1項に記載の方法により得られた、[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物。
【請求項47】
請求項46に記載の化合物を含有する組成物。
【請求項48】
請求項46に記載の化合物及び製薬上許容できる担体または賦形剤を含有する組成物。
【請求項49】
請求項46に記載の化合物を用いる、PET画像診断方法。
【請求項50】
(i)[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を、請求項1〜45のいずれか1項に記載の方法で作製し、
(ii)前記化合物を被験者に導入し、
(iii)被験者(例えば一部または全部)をPET画像診断する
ことを含む、PET画像診断方法。
【請求項51】
治療による人体または動物体の処置方法に使用するための、請求項46に記載の化合物。
【請求項52】
人体または動物体で行われる診断または予後診断方法に使用するための、請求項46に記載の化合物。
【請求項53】
皮膚癌(例えばメラノーマ)又はタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の治療に使用するための薬剤の製造における、請求項46に記載の化合物の使用。
【請求項54】
皮膚癌(例えばメラノーマ)又はタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の診断または予後診断に使用するための薬剤(例えば診断用試薬または予後診断用試薬)の製造における、請求項46に記載の化合物の使用。
【請求項55】
皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の治療に使用するための薬剤の製造における、
(i)フェノチアジン化合物またはフェノチアジン類似化合物であって、
ここで、前記化合物が、A環、B環及びC環で示され直線的に融合した3つの6員環の多環式母核を有し、前記B環が中央の環であり、
前記多環式母核が、一部芳香族または全部芳香族であり、
前記多環式母核が、それぞれ独立してN、O及びSから選択される、厳密に1または2個の環へテロ原子を含む14個の環原子を有し、
残りの環原子がCであり、
前記厳密に1または2個の環ヘテロ原子が、B環の一部を形成するが、A環またはC環の一部を形成せず、以下に示される前記多環式母核
【化6】

の中央の位置のハッシュマーク(♯)で示された一方または両方に位置し、
前記化合物が前記多環式母核の環原子と共有結合的に結合したペンダント基を有し、
該ペンダント基が、独立して、
第1級アミノ基、
陽イオン性第1級イミノ基、
第2級アミノ基、
陽イオン性第2級イミノ基、
第1級イミノ基、または
第2級イミノ基、
である化合物、及び
(ii)[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO2O11CH3
の使用。
【請求項56】
皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の診断又は予後診断の使用のための薬剤(例えば診断用試薬または予後診断用試薬)の製造における、
(i)フェノチアジン化合物またはフェノチアジン類似化合物であって、
ここで、前記化合物が、A環、B環及びC環で示され直線的に融合した3つの6員環の多環式母核を有し、前記B環が中央の環であり、
前記多環式母核が、一部芳香族または全部芳香族であり、
前記多環式母核が、それぞれ独立してN、O及びSから選択される、厳密に1または2個の環へテロ原子を含む14個の環原子を有し、
残りの環原子がCであり、
前記厳密に1または2個の環ヘテロ原子が、B環の一部を形成するが、A環またはC環の一部を形成せず、以下に示される前記多環式母核
【化7】

の中央の位置のハッシュマーク(♯)で示された一方または両方に位置し、
前記化合物が前記多環式母核の環原子と共有結合的に結合したペンダント基を有し、
該ペンダント基が、独立して、
第1級アミノ基、
陽イオン性第1級イミノ基、
第2級アミノ基、
陽イオン性第2級イミノ基、
第1級イミノ基、または
第2級イミノ基、
である化合物、及び
(ii)[11C]メチルトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO2O11CH3
の使用。
【請求項57】
請求項1〜45のいずれか1項に記載の方法の工程を含む、皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の治療に使用するための、薬剤の製造方法。
【請求項58】
請求項1〜45のいずれか1項に記載の方法の工程を含む、(例えば皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の)診断または予後診断に使用するための、薬剤の製造方法。
【請求項59】
請求項46に記載の化合物の治療上の有効量を患者に投与することを含む、前記患者の皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の治療方法。
【請求項60】
(i)請求項1〜45のいずれか1項に記載の方法を使用して[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を作製し、
(ii)前記[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の治療上の有効量を患者に投与する
ことを含む、患者の皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の治療方法。
【請求項61】
請求項46に記載の化合物を用いる皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の診断または予後診断方法。
【請求項62】
皮膚癌(メラノーマ)またはタウオパシー(アルツハイマー病)の診断または予後診断方法であって、
(i)請求項1〜45のいずれか1項に記載の方法を使って[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を製造し、
(ii)前記[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物を被験者に導入し、
(iii)被験者(例えば一部または全部)における、[11C]-放射標識フェノチアジンまたはフェノチアジン類似化合物の存在及び/又は位置及び/又は量を測定し、
(IV) (iii)で得られた測定結果を前記被験者の病気と相関させる
ことを含む、皮膚癌(例えばメラノーマ)またはタウオパシー(例えばアルツハイマー病)の診断または予後診断方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−508282(P2007−508282A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530567(P2006−530567)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004153
【国際公開番号】WO2005/030676
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(503241331)ザ・ユニバーシティ・コート・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・アバディーン (2)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY COURT OF THE UNIVERSITY OF ABERDEEN
【Fターム(参考)】