説明

フェノール系バイオマス樹脂組成物およびゴム組成物

【課題】高硬度及び高貯蔵弾性率の機能を備え、かつ組成物中の化石燃料依存を少なくすることができ、二酸化炭素の増加抑制効果の高いゴム組成物を提供する。
【解決手段】植物の非可食部由来の天然フェノール類(A)と化石燃料由来のフェノール類(B)との質量比(A)/(B)が10/90〜40/60の範囲であるフェノール類をアルデヒド類で架橋したフェノール系バイオマス樹脂と、シランカップリング剤を含有することを特徴とするフェノール系バイオマス樹脂組成物、及びゴムと、該フェノール系バイオマス樹脂組成物と、硬化剤及びフィラーを含有することを特徴とするゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール系バイオマス樹脂組成物およびそれを用いたゴム組成物に関し、さらに詳しくはゴムの硬度向上および高貯蔵弾性率化に効果を有し、かつバイオマス比率向上に伴う地球温暖化防止に効果のあるフェノール系バイオマス樹脂組成物、特にそれを用いた空気入りタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からタイヤ用ゴムの硬度向上や高貯蔵弾性率化を目的として、カーボンブラック量の増量、カーボンブラック種の変更、硫黄の配合がなされると同時に、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂やパラターシャリーブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、パラオクチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂といったアルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂の配合がなされてきた(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
一方近年、地球温暖化防止のため、使用済み製品の焼却時に排出される二酸化炭素量を削減することや、バイオマス由来の原料を使用することにより、大気中の二酸化炭素総量を増加させない、カーボンニュートラルの考えが普及している。カーボンニュートラルとは、植物はその生育過程で光合成により二酸化炭素を吸収、固定化するため、廃棄、焼却より発生した二酸化炭素発生量は、光合成の二酸化炭素吸収量により相殺され、大気中の二酸化炭素は増加しないとみなすことである。このため、各種工業製品において、化石燃料由来の原料を使用した材料の比率を減らし、代わりに植物由来の成分を原料としたいわゆるバイオマス材料をはじめとした非化石燃料由来原料を使用した材料の比率を高めることにより、二酸化炭素排出抑制効果の高い環境調和型材料の開発が活発に進められている。
【0004】
これら開発傾向はタイヤ業界においても例外ではなく、非化石燃料由来原料を使用した材料の比率を高める開発が進められている。例えば、二酸化炭素排出抑制効果の高い環境調和型タイヤ(エコタイヤ)では、タイヤ組成物中の合成ゴム成分を天然ゴムで代替する方法や、通常のタイヤで使用されるカーボンブラックを天然無機フィラーで代替する方法等、タイヤ組成物をバイオマス材料や天然無機材料へ置換することにより、タイヤ全体の非化石燃料由来材料の含有割合を増加させている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「便覧」編集室編 「便覧 ゴム・プラスチック配合薬品 最新版」 ラバーダイジェスト社 1989年3月30日 p.466−467
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、現状では通常タイヤ及び環境調和型タイヤ用ゴム組成物において、硬度向上、高貯蔵弾性率化を目的として配合されるフェノール樹脂やアルキルフェノール樹脂を始め、老化防止剤、加硫促進剤などは化石燃料由来の材料を使用せざるを得ない状況となっている。タイヤ用ゴム組成物のフェノール樹脂配合量は、タイヤ全体では少量であるものの、全世界におけるタイヤ生産量は大変多いため、タイヤ焼却時、配合されたフェノール樹脂から発生される化石燃料由来の二酸化炭素量も莫大な量となる。
本発明では、高硬度及び高貯蔵弾性率の機能を備え、かつ二酸化炭素総量の増加を抑制するゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]植物の非可食部由来の天然フェノール類(A)と化石燃料由来のフェノール類(B)との質量比(A)/(B)が10/90〜40/60の範囲であるフェノール類をアルデヒド類で架橋したフェノール系バイオマス樹脂とシランカップリング剤を含有することを特徴とするフェノール系バイオマス樹脂組成物。
[2]植物の非可食部由来の天然フェノール類(A)が、カシューナット殻油、カルダノール、ウルシオールの1種以上である[1]に記載のフェノール系バイオマス樹脂組成物。
[3]植物の非可食部由来の天然フェノール類(A)の金属元素濃度が100ppm未満である[1]または[2]記載のフェノール系バイオマス樹脂組成物。
[4]ゴムと、[1]〜[3]のいずれかに記載のフェノール系バイオマス樹脂組成物と、硬化剤及びフィラーを含有することを特徴とするゴム組成物。
[5]硬化剤がヘキサメチレンテトラミンである[4]に記載のゴム組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明のゴム組成物は、高硬度及び高貯蔵弾性率の機能を備え、かつ組成物中の化石燃料依存を少なくすることができる。さらには使用原料が植物の非可食部であるため、食料とのトレードオフも発生しない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<フェノール系バイオマス樹脂組成物>
本発明のフェノール系バイオマス樹脂組成物は、植物の非可食部由来の天然フェノール類(A)と化石燃料由来のフェノール類(B)との質量比(A)/(B)が10/90〜40/60の範囲であるフェノール類をアルデヒド類で架橋したフェノール系バイオマス樹脂と、シランカップリング剤を含有することを特徴とする。
【0010】
まず、本発明のフェノール系バイオマス樹脂組成物に含有されるフェノール系バイオマス樹脂について説明する。フェノール系バイオマス樹脂は植物の非可食部由来の天然フェノール類(A)と化石燃料由来のフェノール類(B)との質量比(A)/(B)が10/90〜40/60の範囲であるフェノール類をアルデヒド類で架橋したものである。
植物の非可食部由来の天然フェノール類(A)としては、カシューナット殻油や、カルダノール、ウルシオールが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。一般的に、植物の非可食部由来の天然フェノール類は、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン等の金属元素を含む場合が多いが、これらの成分が多くなるとフェノール類とアルデヒド類の反応を阻害し、樹脂合成時に高分子量化が妨げられ、ゴム組成物の補強効果が低下し、硬度が高くならない。フェノール類とアルデヒド類の反応を阻害しないためには、植物の非可食部由来の天然フェノール類(A)の金属元素濃度が100ppm未満であることが好ましい。
化石燃料由来のフェノール類(B)としては特に限定されないが、フェノール、レゾルシン、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどが挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも経済性及びタイヤ組成物の硬度向上及び高貯蔵弾性率化の点から、フェノール、クレゾール、ビスフェノールAが好ましい。
天然フェノール類(A)と化石燃料由来のフェノール類(B)との質量比において、(A)成分が10質量%以上であれば、フェノール系バイオマス樹脂中の植物由来率が高くなり、環境調和性に対する寄与効果が向上する。また(B)成分が60質量%以上であれば、ゴム組成物の硬度及び貯蔵弾性率が良好になる。
【0011】
フェノール類と反応させるアルデヒド類としては、特に限定されないが、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、グリオキザール、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドなどが挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも経済性、フェノール類との反応性の点からホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。
【0012】
フェノール系バイオマス樹脂は、上記フェノール類とアルデヒド類を酸性触媒存在下、または塩基性触媒存在下、通常のフェノール樹脂製造方法を施すことによって、ノボラック型フェノール樹脂、あるいはレゾール型フェノール樹脂として得ることができる。
【0013】
次にフェノール系バイオマス樹脂組成物に含有されるシランカップリング剤について説明する。シランカップリング剤は特に限定されないが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
またフェノール系バイオマス樹脂組成物に含有されるシランカップリング剤の量は、フェノール系バイオマス樹脂100質量部に対し、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。フェノール系バイオマス樹脂100質量部に対し、シランカップリング剤0.01質量部以上であれば、樹脂とフィラーの密着性が向上することによりゴムの補強効果が大きくなり、10質量部以下であれば、経済的に優れる。
【0014】
フェノール系バイオマス樹脂組成物中に化石燃料由来のフェノール類のみを原料としたフェノール樹脂(以下、「化石燃料原料フェノール樹脂」という。)を含有しても良い。化石燃料原料フェノール樹脂は特に限定されないが、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、パラターシャリーブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、パラオクチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−パラターシャリーブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられ、これらは1種を単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。フェノール系バイオマス樹脂組成物中の、化石燃料原料フェノール樹脂の含有量は特に限定されないが、フェノール系バイオマス樹脂と化石燃料原料フェノール樹脂との質量比が、5/95〜100/0の範囲であり、30/70〜100/0の範囲であることが好ましい。フェノール系バイオマス樹脂の質量比が5/95以上であれば、フェノール系バイオマス樹脂組成物中の植物由来率が高くなり、環境調和性に対する寄与効果が向上する。
【0015】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ゴムとフェノール系バイオマス樹脂組成物と、硬化剤及びフィラーを含有する。
本発明のゴム組成物に使用するゴムは、特に限定されないが、天然ゴム(NB)のほか、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等の合成ジエン系ゴムが挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、ゴム組成物、またはそれ用いたタイヤにおける植物由来率を向上させ、環境調和性を高めるため、天然ゴムを用いることが好ましい。
【0016】
本発明のゴム組成物に使用するゴムとフェノール系バイオマス樹脂の配合比率は特に限定されないが、ゴム100質量部に対し、フェノール樹脂1〜50質量部、より好ましくは1〜30質量部である。ゴム100質量部に対し、フェノール樹脂が1〜50質量部である場合、ゴム組成物に対する硬度向上、高貯蔵弾性率化が良好となる。
【0017】
本発明のゴム組成物に使用する硬化剤としては特に限定されないが、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、パラホルムアルデヒド、グリオキザールなどが挙げられるが、中でもヘキサメチレンテトラミンが経済性、ゴムとの相溶性、ゴム組成物製造後の安定性の観点から好ましい。
【0018】
本発明のゴム組成物に使用するフィラーは特に限定されないが、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、クレー、マイカなどが挙げられるが、中でもゴム組成物に対する硬度付与の観点からカーボンブラックとシリカが好ましい。
【0019】
本発明のゴム組成物は、この他にカーボンブラック等の補強剤、硫黄等の加硫剤、さらには加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、各種オイル、ワックス等、ゴム工業界で通常使用される配合剤を含有しても良い。
【0020】
本発明のゴム組成物は一般的な方法、例えば前記フェノール樹脂、ゴム成分のほか、補強剤や必要に応じて使用する配合剤をバンバリーミキサー、ロール、ニーダーなどで混練することにより製造することができる。
【0021】
本発明のゴム組成物は、高硬度及び高貯蔵弾性率の機能を備え、かつ組成物中の化石燃料依存を少なくすることが出来るため、タイヤ用途に使用することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0023】
[合成例1]
攪拌装置、冷却管、温度計を付した3L四つ口フラスコに金属元素濃度68ppmのカルダノール300g、フェノール1081g、50%ホルマリン645g、シュウ酸27.6gを入れ、6時間還流させた。これを脱水還流により200℃まで昇温後、0.093MPaにて1時間減圧濃縮を行い、140℃でシランカップリング剤(信越化学工業製KBE−903)5gを添加したのち取り出し、フェノール系バイオマス樹脂組成物aを1436g得た。
【0024】
[合成例2]
攪拌装置、冷却管、温度計を付した2L四つ口フラスコに金属元素濃度55ppmのウルシオール158g、フェノール1296g、50%ホルマリン450g、シュウ酸28.9gを入れ、6時間還流させた。これを脱水還流により200℃まで昇温後、0.093MPaにて1時間減圧濃縮を行い、140℃でシランカップリング剤(信越化学工業製KBE−903)2gを添加したのち取り出し、フェノール系バイオマス樹脂組成物bを1428g得た。
【0025】
[合成例3]
攪拌装置、冷却管、温度計を付した2L四つ口フラスコに金属元素濃度3480ppmのカシューナット殻油300g、フェノール630g、50%ホルマリン277g、シュウ酸19.2gを入れ、6時間還流させた。これを脱水還流により200℃まで昇温後、0.093MPaにて1時間減圧濃縮を行い、140℃でシランカップリング剤(信越化学工業製KBE−903)5gを添加したのち取り出し、フェノール系バイオマス樹脂組成物cを1000g得た。
【0026】
[比較合成例1]
攪拌装置、冷却管、温度計を付した2L四つ口フラスコに金属元素濃度55ppmのウルシオール158g、フェノール1296g、50%ホルマリン450g、シュウ酸28.9gを入れ、6時間還流させた。これを脱水還流により200℃まで昇温後、0.093MPaにて1時間減圧濃縮を行い、取り出し、フェノール系バイオマス樹脂を1428g得た。
【0027】
(金属元素濃度の測定)
合成例1〜3及び比較合成例1で使用した植物の非可食部由来の天然フェノール類の金属元素濃度は、エスエスアイ・ナノテクノロジー社製誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS4000にて測定した。
【0028】
合成例1〜3で得られたフェノール系バイオマス樹脂組成物及び比較合成例1で得られたフェノール系バイオマス樹脂の軟化点を以下の方法で測定し、植物由来率を以下の方法で算出した。結果を表1に示す。
[軟化点]
JIS K6910に従って測定した。
[フェノール系バイオマス樹脂組成物中の植物由来率]
フェノール系バイオマス樹脂組成物中の植物由来率=(植物の非可食部由来の天然フェノール類)/(フェノール系バイオマス樹脂組成物収量質量)×100
ただし、比較合成例1のフェノール系バイオマス樹脂については、以下の方法で算出した。
フェノール系バイオマス樹脂中の植物由来率=(植物の非可食部由来の天然フェノール類)/(フェノール系バイオマス樹脂収量質量)×100
【0029】
【表1】

【0030】
(ゴム組成物の製造)
実施例、比較例で使用した各種配合材料について、以下まとめて説明する。
天然ゴム(NR):RSS3号
化石燃料原料フェノール樹脂:PS−6200(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、植物由来率0%、群栄化学工業社製)
カーボンブラック:HAF(三菱化学社製)
ワックス:サンノック(大内振興化学社製)
オイル:ダイアナプロセスAH40(出光興産社製)
老化防止剤:ノクラック6C(大内振興化学社製)
ステアリン酸:ステアリン酸さくら(日本油脂社製)
硫黄:硫黄(鶴見化学工業社製)
亜鉛華:酸化亜鉛(堺化学社製)
硬化剤:ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学社製)
加硫促進剤:ノクセラーNS−P(大内振興化学社製)
【0031】
[実施例1]
天然ゴム 100g、フェノール系バイオマス樹脂組成物a 10g、カーボンブラック 60g、ワックス 2g、オイル 4g、老化防止剤 2g、ステアリン酸 4g、亜鉛華 5gを加圧ニーダーにて、150℃5分間混練した。これに硫黄 2.5g、硬化剤 5g、加硫促進剤を添加し、2軸ロールにて80℃2分間混練し、シート状の未加硫ゴム組成物を得た。
【0032】
[実施例2]
フェノール系バイオマス樹脂組成物a 10gの代わりに、フェノール系バイオマス樹脂組成物b 10gを用いたこと以外は実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。
【0033】
[実施例3]
フェノール系バイオマス樹脂組成物a 10gの代わりに、フェノール系バイオマス樹脂組成物c 10gを用いたこと以外は実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。
【0034】
[比較例1]
フェノール系バイオマス樹脂組成物a 10gの代わりに、フェノール系バイオマス樹脂 10gを用いたこと以外は実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。
【0035】
[比較例2]
フェノール系バイオマス樹脂組成物a 10gの代わりに、化石燃料原料フェノール樹脂 10gを用いたこと以外は実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。
【0036】
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた未加硫ゴム組成物について、それぞれ下記式に従い、植物由来率を算出した。結果を表2に示す。
【0037】
[ゴム組成物中の植物由来率]
ゴム組成物中の植物由来率(%)=[(フェノール系バイオマス樹脂組成物使用量)×(フェノール系バイオマス樹脂組成物中の植物由来率)×0.01+(天然ゴム使用量)]/(全使用成分の総量)×100
ただし、比較例1のゴム組成物については、以下の方法で算出した。
ゴム組成物中の植物由来率=[(フェノール系バイオマス樹脂使用量)×(フェノール系バイオマス樹脂中の植物由来率)×0.01+(天然ゴム使用量)]/(全使用成分の総量)×100
植物由来成分は、大気中の二酸化炭素を用いた光合成により得られる。そのため、前述のカーボンニュートラルの考えにより、二酸化炭素増加に影響を与えないと考えられる。したがって、植物由来率の値が高いほど、大気中の二酸化炭素増加を抑制でき、地球温暖化防止効果が高くなる。
【0038】
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた未加硫ゴム組成物について、それぞれ150mm×150mm×2mmの金型を用い、150℃30分間プレス加硫することにより試験サンプルを作成し、以下の方法により、硬さ、破断強度、貯蔵弾性率測定を行った。測定結果を表2に示す。
【0039】
[硬さ]
JIS K6253に準じ、テクロック製タイプAデュロメータGS−719Gを使用し硬さ(ショアA)を測定した。この硬さ(ショアA)の値が高いほど、硬度が良好で優れている。
【0040】
[破断強度]
JIS K6251に準じ、東洋精機製ストログラフV10−Cにて、ダンベル状3号とした試験片の破断強度を測定した。破断強度の値が高いほど引張り強度に優れている。
【0041】
[貯蔵弾性率]
エスエスアイ・ナノテクノロジー製DMS110を使用し、温度40℃、周波数10Hzにて貯蔵弾性率を測定した。この貯蔵弾性率の値が高いほど、剛性に優れる。
【0042】
【表2】

【0043】
表2の結果より、実施例1〜3は比較例2と比べて、ゴム組成物の植物由来率が0.6〜1.6%高い結果が得られた。ゴム組成物としての植物由来率の差は小さいが、前述したように全世界でのタイヤ生産量は大変多いため二酸化炭素総量の増加抑制効果は大きい。また、実施例1〜3は比較例2と比べて、貯蔵弾性率及び硬さが高いため、このようなゴム組成物をタイヤとした場合、操縦安定性に優れたタイヤとなる。特に、配合したフェノール樹脂組成物の原料として使用した植物の非可食部由来の天然フェノール類の金属元素濃度が100ppm未満の実施例1〜2は、100ppm以上の実施例3と比べて硬さ、破断強度、貯蔵弾性率が高かった。
シランカップリング剤を配合しない比較例1は実施例2と比べて、硬さ、破断強度、貯蔵弾性率が低かった。そのため、比較例1のゴム組成物をタイヤとした場合、操縦安定性に対する効果は小さくなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の非可食部由来の天然フェノール類(A)と化石燃料由来のフェノール類(B)との質量比(A)/(B)が10/90〜40/60の範囲であるフェノール類をアルデヒド類で架橋したフェノール系バイオマス樹脂とシランカップリング剤を含有することを特徴とするフェノール系バイオマス樹脂組成物。
【請求項2】
植物の非可食部由来の天然フェノール類(A)が、カシューナット殻油、カルダノール、ウルシオールの1種以上である請求項1に記載のフェノール系バイオマス樹脂組成物。
【請求項3】
植物の非可食部由来の天然フェノール類(A)の金属元素濃度が100ppm未満である請求項1または2に記載のフェノール系バイオマス樹脂組成物。
【請求項4】
ゴムと、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフェノール系バイオマス樹脂組成物と、硬化剤及びフィラーを含有することを特徴とするゴム組成物。
【請求項5】
硬化剤がヘキサメチレンテトラミンである請求項4に記載のゴム組成物。

【公開番号】特開2012−67201(P2012−67201A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213475(P2010−213475)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000165000)群栄化学工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】