フェルール継手、フェルール継手の接続構造およびフェルール継手の接続方法
【課題】サニタリー配管におけるクランプ部材の脱着作業において、作業を容易に行うことができるように、配管を仮止めして保持をすることができる新規なフェルール継手と、このフェルール継手の接続構造、接続方法を提供する。
【解決手段】フェルール継手1は、接続される相手側のフェルール継手との接続口となる継手側開口部10と固定されるサニタリー配管との接続口となる配管側開口部11とを備えた短い管状の継手本体16と、継手側開口部10の外周に一体に形成された相手側フェルール継手と接続されるフランジ部12と、接続の際に仮止めをするための仮止め係止部材50を備える。
【解決手段】フェルール継手1は、接続される相手側のフェルール継手との接続口となる継手側開口部10と固定されるサニタリー配管との接続口となる配管側開口部11とを備えた短い管状の継手本体16と、継手側開口部10の外周に一体に形成された相手側フェルール継手と接続されるフランジ部12と、接続の際に仮止めをするための仮止め係止部材50を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サニタリー配管の接続に用いられるフェルール継手(または、クランプユニオン継手などともいわれる)に関するもので、食品、飲料、医薬品、酪農、化学などの分野のプラントにおいて粉粒体及び液体などを移送するサニタリー配管に用いるフェルール継手、フェルール継手の接続構造およびフェルール継手の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サニタリー配管は、JIS G3447等で規定されるステンレスパイプを指すが、世界的にはIDF(国際酪農連盟)やISO(国際標準化機構)などの規格に準拠して製造・施工されるものである。サニタリー配管を接続するための継手も同様のステンレス材で形成されている。また、サニタリー、すなわち、衛生的である必要に応じ、各配管を分解して洗浄・殺菌を行えるようにするため、サニタリー配管にフェルール継手を配設して、配管の取り外しができるようクランプ部材でクランプして固定している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−213682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のフェルール継手が配設されたサニタリー配管は、クランプする際、フェルール継手同士を突き合わせた状態にした後にクランプして固定するため、多くの場合は作業者が移動側の配管を手で支えて保持し、そのうえで、別の作業者がクランプ部材でクランプする作業を行う必要があった。これは、配管を外すためにクランプを解除する場合も同様である。このため、クランプ部材を脱着する際は、少なくとも2人の作業者が必要となり、特に、作業スペースが狭い場合は作業が行いにくく、作業性に劣るという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためにされたもので、その目的は、サニタリー配管におけるクランプ部材の脱着作業(すなわち、配管の接続作業、配管の洗浄や殺菌を行う際の分解作業、および、分解後の再接続作業など)において、作業を容易に行うことができるように、配管を仮止めして保持をすることができる新規なフェルール継手と、このフェルール継手の接続構造、接続方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、サニタリー配管同士をクランプ部材によりクランプして着脱自在に接続するためにサニタリー配管の端部に配設されるフェルール継手であって、両端に開口を有する管状の継手本体と、継手本体の一方の端部の外周に形成されて、接続の際にシール部材を介して相手側フェルール継手に突き合わされてクランプされるフランジ部と、接続の際に仮止めのために相手側フェルール継手に係合する仮止め係止部材を少なくとも一つ有し、仮止め係止部材は、仮止めの際に相手側フェルール継手に係合して継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持するように形成されていること、を特徴とする。
【0007】
このような構成により、接続の際仮止めのために相手側フェルール継手に係合して、継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持するフェルール継手を提供できる。このとき、これら一対のフェルール継手が仮止めされた状態を、作業者が手で支えて保持している必要はない。このため、クランプの脱着作業を容易に行うことができる。
【0008】
この場合、フランジ部は、接続の際にシール部材を受けてシールをするシール面を有し、シール面は、シール部材の凸部に嵌合する凹部を有し、フランジ部は、仮止めの際にシール部材が嵌合するように形成してもよい。
【0009】
このような構成により、仮止めの際、仮止め係止部材の係合に加え、シール部材とフランジ部が嵌合することにより保持を確実にすることができる。
【0010】
また、本発明に係る継手付サニタリー配管は、サニタリー配管の少なくとも一方の端部に前記したフェルール継手が配設されたことを特徴とする。
【0011】
このような構成により、仮止めの際、相手側フェルール継手に係合して継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持することができ、また、その保持を確実にすることができる継手付サニタリー配管を提供できる。
【0012】
さらに、本発明に係るフェルール継手の接続構造は、一のサニタリー配管の端部に配設された一のフェルール継手と他のサニタリー配管の端部に配設された他のフェルール継手とをシール部材を介して密接させクランプ部材によりクランプして着脱自在に接続されたフェルール継手の接続構造であって、一のフェルール継手または他のフェルール継手のいずれか一方または双方は、前記したフェルール継手であることを特徴とする。
【0013】
このような構成により、仮止めの際に継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持して、容易に接続できるフェルール継手の接続構造を提供することができる。
【0014】
本発明に係るフェルール継手の接続方法は、一のサニタリー配管の端部に配設された一のフェルール継手と他のサニタリー配管の端部に配設された他のフェルール継手とをシール部材を介して密接させクランプ部材によりクランプして着脱自在に接続するフェルール継手の接続方法であって、一のフェルール継手または他のフェルール継手のいずれか一方または双方は、前記したフェルール継手であり、一のフェルール継手と他のフェルール継手とがシール部材を介して突き合わされ、仮止め係止部材が他のフェルール継手に係合して継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持するように仮止めするステップと、仮止めされた両フェルール継手の両フランジをクランプ部材でクランプするステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
このような構成により、容易に接続できるフェルール継手の接続方法を提供できる。仮止めの際に相手側のフェルール継手に係合して、継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持するので、クランプの脱着の際も、作業者が配管を手で支えて保持している必要はない。
【0016】
この場合、一のフェルール継手と他のフェルール継手は、シール部材を介して突き合わされたそれぞれのシール面において直接にまたはシール部材を介して間接に嵌合するように形成され、仮止めするステップにおいて、さらに、両継手同士が直接にまたは間接に嵌合するように仮止めすることを含むようにしてもよい。
【0017】
このような構成により、仮止めの際、仮止め係止部材の係合に加え、シール部材とフランジ部の嵌合により保持を確実にすることができるフェルール継手の接続方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のような構成としたので、サニタリー配管システムにおける配管同士の接続、分解および再度の接続作業に伴うクランプ作業を容易に行うことができ、作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るフェルール継手の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のフェルール継手に、シール部材として平パッキンが嵌合される例を示している。
【図3】図1に示すフェルール継手が配設された継手付サニタリー配管と、仮止め係止部材を備えない他のフェルール継手が配設された他の継手付サニタリー配管を仮止めする例を示す斜視図である。
【図4】シール部材として平パッキンを介して仮止めした接続構造を示す要部縦断面図である。
【図5】図4の要部拡大断面図である。
【図6】シール部材として平パッキンを介して仮止めをしたクリアランスのある接続構造の説明図である。
【図7】シール部材としてOリングを介して仮止めした接続構造を示す要部縦断面図である。
【図8】図7の要部拡大断面図である。
【図9】図7で仮止めした後、クランプバンドでクランプする接続構造の説明図である。
【図10】クランプバンドでクランプした接続構造を示す要部縦断面図である。
【図11】本発明に係るフェルール継手の別例を示す斜視図である。
【図12】別例のフェルール継手が配設された継手付サニタリー配管と係止部材を備えない他のフェルール継手が配設された他の継手付サニタリー配管を仮止めする例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜図12を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
図1に本発明に係るフェルール継手の一例を示す。
本例のフェルール継手1(以下、単に「フェルール継手1」と称する場合がある。)は、接続の際、サニタリー配管3の端部の一方又は両方に、溶接などによる固定手段によりあらかじめ配設されて用いられるものである。フェルール継手1とサニタリー配管3は、いずれも同質のステンレス材(たとえば、SUS304)からなる。
【0022】
フェルール継手1は、接続される相手側のフェルール継手2´(以下、単に「相手側フェルール継手2´」と称する場合がある。)との接続口となる継手側開口部10と固定されるサニタリー配管3との接続口となる配管側開口部11とを備えた短い管状の継手本体16と、継手側開口部10の外周に一体に形成された相手側フェルール継手2´と接続されるフランジ部12と、接続の際に仮止めをするための仮止め係止部材50を備える。
【0023】
相手側フェルール継手2´と接続のために接するフランジ部12の面は、フェルール継手1の継手本体16の継手中心軸に垂直のシール面13が形成されており、フランジ部12は、継手本体16に向かって下る一定傾斜(たとえば、60度)の係止用傾斜面14が形成されている。相手側フェルール継手2´と接続される場合は、接続箇所をシールするため、平パッキン20やOリング22などのガスケットといわれるシール部材が、シール面13、13´間に挿入される。このシール面13は、平パッキン20をシール部材とする場合は、平パッキン20と嵌合して平パッキン20を装着するための凹部15が環状に形成されており(図2、4など参照)、また、Oリング22をシール部材とする場合は、相手側フェルール継手2´と嵌合してシール部材を収納するための段部17、または凹溝18´および凸壁19´が環状に形成されている(図7、8等参照)。
【0024】
相手側フェルール継手2´は、仮止め係止部材50を備えないこと以外は、フェルール継手1と同材料、同構造で構成される。ただし、仮止め係止部材50を備えることを妨げるものではない。
すなわち、相手側フェルール継手2´は、フェルール継手1と同質のステンレス材からなり、フェルール継手1の接続口となる継手側開口部10´と、サニタリー配管4´の接続口となる配管側開口部11´とを備えた短い継手本体16´と、継手側開口部10´の外周に一体に形成されたフェルール継手1と接続されるフランジ部12´とを備える。なお、フェルール継手2´の継手側開口部10´、配管側開口部11´、継手本体16´は、図面上で示さないが、図1に示す同構造のフェルール継手1の対応する部材を参照のこと。
【0025】
フェルール継手1と接続のために接するフランジ部12´の面は、継手本体16´の継手中心軸に垂直のシール面13´が形成されており、フランジ部12´は、継手本体16´に向かって下る一定傾斜(たとえば、60度)の係止用傾斜面14´が形成されている。このシール面13´は、シール部材である平パッキン20と嵌合して装着するための凹部15´が環状に形成されている(図5など参照)。
【0026】
相手側フェルール継手2´は、接続の際、サニタリー配管4´の端部の一方又は両方に、溶接などによる固定手段によりあらかじめ配設されて用いられる。
【0027】
仮止め係止部材50は、図1、図2などに示すように、フェルール継手1のフランジ部12に基端側が溶接で固定され、先端側は外方へ延出して、相手側フェルール継手2´のフランジ部12´の係止用傾斜面14´に係合可能な係止爪51が形成されている。
【0028】
仮止め係止部材50は、図3、図4などに示すように、相手側フェルール継手2´の係止用傾斜面14´に係合するように、フランジ部12、12´に沿ったほぼ台形状となる凹みを有するように形成されている。本例では、係止爪51は傾斜状係合面53が相手側フェルール継手2´のフランジ部12´の係止用傾斜面14´にほぼ沿うようにして係合するように形成されている。
【0029】
(仮止め方法〜係止)
次に、このように構成されたフェルール継手1を用いた仮止め方法について、相手側フェルール継手2´との仮止め方法を示す。
【0030】
(継手付配管)
まず、フェルール継手1および相手側フェルール継手2´は、それぞれサニタリー配管3、4´の端部に固定させて取りつける。継手と配管の径および厚さは同じものが便宜である。これにより、図3に示すようにフェルール継手付サニタリー配管が形成される。
通常は、固定側の配管に相手側フェルール継手2´を取り付け、移動側の配管にフェルール継手1を取り付けるのが望ましい。多くの場合、サニタリー配管系においてフェルール継手により接続する箇所は、定期的にクリーニング等を行うところであるため、移動側の配管に仮止め係止部材のような突起がある方が、クリーニング作業等がしやすいためである。フェルール継手1は、固定側の配管に取り付けても構わない。
【0031】
(シール部材装着)
次に、フェルール継手1にシール部材である平パッキン20を装着する。図2は、図1に示すフェルール継手1に平パッキン20を嵌合させて装着することを示している。図2に示すように、フェルール継手1のシール面13に対し、平パッキン20の凸部21がシール面の凹部15に陥入されて、装着する。平パッキン20は、相手側フェルール継手2´に装着しても構わない。
平パッキン20は、それぞれの継手の間に嵌合し密着して配されるため、シールするとともに、継手同士が互いに容易に横滑りをしないようになる。
【0032】
(平パッキン)
図2から図4では、シール部材として平パッキン20と呼ばれるシリコン、フッ化炭素樹脂などのゴム材等からなる環状のシートが用いられている。なお、材質は配管内の粉粒体及び流体を考慮して選択される。図4に拡大して示すように、このシートにはシート面の表裏にそれぞれシートと同心円状の凸部21が設けられ、それぞれのフェルール継手のシール面13、13´に設けられた環状の凹部15、15´に嵌入して、シール部材20とシール面13、13´は嵌合してシールするように形成されている。
これにより、それぞれのフェルール継手1、2´のシール面13、13´の間に挟まれて、両フェルール継手1、2´間のシールを保持するようになっている。
【0033】
また、後述のように、仮止め係止部材50は、接続される相手側フェルール継手2´の配管4´に設けられたフェルール継手2´の係止用傾斜面14´に係合してフェルール継手1と配管3を保持可能にするが、両継手間にこのようなシール部材を介した間接的な嵌合構造がある場合は、さらに、シール部材20とフェルール継手1、2´の摩擦力が大きくなるため、フェルール継手1と配管3の保持をさらに確実にする。
【0034】
(突き合わせ)
次に、フェルール継手を備えた配管同士を突き合わせる。通常は、固定側の配管に合わせて移動側の配管を移動してそれぞれのシール面が向き合うようにして突き合わせる。図3は、フェルール継手1が配設されたサニタリー配管3が移動側であり、フェルール継手2´が配設されたサニタリー配管4´が固定側の場合を示している。前述のように、どちらが固定側でも移動側でも差し支えない。
【0035】
(仮止め)
両フェルール継手1,2´の両継手側開口部10,10´が突き合わされるにあたり、仮止め係止部材50の係止爪51が、相手側フェルール継手2´の係止用傾斜面14´に係合し、それぞれのフェルール継手のシール面13,13´の間にシール部材である平パッキン20を挟む状態で保持されて、両フェルール継手1,2と両サニタリー配管3,4が仮止めされる。
【0036】
(仮止め係止部材50の位置と作用)
この際、仮止め係止部材50は、その位置が重力に対しもっとも上側になるようにしてフェルール継手2´に係合することが望ましい。たとえば、両サニタリー配管3,4´がほぼ水平に接続されるような場合は、仮止め係止部材50がもっとも上側に位置して、それぞれのフェルール継手1,2´同士の上側を仮止め係止部材50で係止する。また、平パッキンの凸部21がフェルール継手の凹部15、15´に陥入して、両フェルール継手1,2´が、継手のシール面方向に動かなくなるため、両サニタリー配管3,4´の仮止めが確実に保持される(図4など参照)。
【0037】
このようにすると、前述のように平パッキン20を介して突き合わされた配管は互いにシール面で横滑りをせず、重力により、移動側配管には仮止め係止部材50の反対側となるもっとも下側のシール面の箇所を中心として配管の長手軸が回転しようとするモーメントが発生する。このようなモーメントに対し、仮止め係止部材50は係止爪51の傾斜状係合面53と相手側フェルール継手2´の係止用傾斜面14´が係合して回転しないようにロックする。
したがって、移動側の配管について支持をしなくてもその突き合わせ状態を維持することができる。すなわち、移動側配管の仮止めをすることができる。
【0038】
(作用効果)
仮止めができると、配管の接続作業において、配管の突き合わせ状態を一時的に保持するために機械や作業員を投入して配管を支持する必要はなくなる。このため、作業が容易になるばかりか、作業員を減らすことができる。特に、作業スペースの狭い箇所で作業をする必要がある場合は、著しく作業が容易になる。また、小規模な作業では、一人作業も可能になる。従来は、クランプして固定する際に、機械や作業員を要して突き合わせ状態を維持する必要があったが、このような仮止めができることによって、その必要はなくなるからである。
【0039】
(クリアランスなし)
なお、仮止めする際は、仮止爪51と係止用傾斜面14´とのクリアランス40は、図4および図5に示すように、ほとんどゼロでも構わない。本例では、クリアランス40がゼロとなるように、係止用傾斜面14´に係合して相手側のフェルール継手2を保持可能な傾斜状係合面53を備えている。しかしながら、後述するように、適当な大きさに調整してもよい。
【0040】
(クリアランスあり)
図6は、クリアランス40のある場合を示している。図6では、仮止爪51と係止用傾斜面14´の間は、クリアランスがないように見えるが、図6は、係止爪51が係止用傾斜面14´に係合してロックしている様子を示しており、シール面13´と平パッキン間の空隙が実質的にクリアランス40に相当する。このクリアランス40は、シール面13、13´で横滑りをせずに、係止爪51が係止用傾斜面14´に係合してロックされる大きさであるとともに、クランプが容易にできる大きさを限度とすればよい。たとえば、ほぼシール部材としての平パッキン20の厚み程度が望ましい。
【0041】
(Oリング)
シール部材は、平パッキン20でなくOリング22であってもよい。図7および図8は、シール部材がOリング22、すなわち、NBRなどのゴム材等からなる環状の断面円形のリング状である場合を示す。なお、材質は配管内の粉粒体及び流体を考慮して選択される。
この場合は、フェルール継手1のシール面13に段部17が形成され、相手側フェルール継手2´のシール面13´に、Oリングを収納する凹溝18´とこれから立ち上がり段部17と嵌合する凸壁19´が形成されている。この段部17と凸壁19´が嵌合することにより、両継手間に直接的な嵌合構造を形成するとともに、シール面13と凹溝18´で囲まれた収納空間23を形成し、この収納空間23にOリングを収納するようになっている。この収納空間の大きさは、OリングによりシールができるようにOリングが収納空間を形成するシール面13と凹溝18´にややつぶれて弾性的に接触するような大きさとすればよい。このようにすると、Oリングは、嵌合構造の中の収納空間に収納されて、継手間の接続部をシールする。フェルール継手1が凹溝を有し、相手側フェルール継手2´が段部と凸壁を有する構造としてもかまわない。
【0042】
仮止め係止部材50は、接続される相手側フェルール継手2´の配管4´に設けられたフェルール継手2´の係止用傾斜面14´に係合してフェルール継手1と配管3を保持可能にするが、両継手間にこのようなシール部材を介した直接的な嵌合構造がある場合は、フェルール継手1と配管3の保持をさらに確実にする。
この場合も、仮止め係止部材50と係止用傾斜面14´のクリアランスは、Oリングが挟持されたときに、嵌合された厚み(凸壁19´が段部17に嵌まっている深さ)と等しいか小さくなるように構成されていると、仮止めの際の保持が確実にされる。
【0043】
(クランプ)
次に、仮接続された両フェルール継手1,2´は、この後、クランプ部材30で相互にクランプされて固定され、フェルール継手の接続構造を構成する。
クランプ部材30は、継手同士を平パッキン20やOリング22などのシール部材を介してシール面で密着させた後に着脱可能に固定する固定具であり、本例では、クランプバンド30が用いられている。構造としては、クランプの際に仮止め係止部材50と干渉しないものであれば、この種分野で通常用いられるもので差し支えない。
【0044】
クランプバンド30は、図9、図10などに示すように、フェルール継手1,2´に形成されたフランジ部12、12´に跨がって装着される二つ割りしたほぼ半円形状の挟持片31,31と、これら挟持片31,31の一端に設けられて両挟持片31,31をそれぞれ左右に開閉自在とする保持体32と、一方の挟持片31の他端に回動可能に取り付けられ、他方の挟持片31の他端に設けた切欠き33に固定のために挿入されるアーム34と、このアーム34に設けた雄ねじ部35に螺合して固定する蝶ナット36を備えている。
【0045】
クランプバンド30は、仮止めされたそれぞれのフェルール継手1,2´のフランジ部12,12´に、クランプバンド30のそれぞれの挟持片31,31が被さるように巻回し、さらに、アーム34を回動させて切欠き33に挿入した後、蝶ナット36を締め込むと、フェルール継手1,2´のフランジ部12,12´同士が、シール部材20を介して緊密に固定され、これに伴いサニタリー配管3,4´が強固に接続されてフェルール継手の接続構造を構成する。
【0046】
図11、図12は、本発明の他の実施例を示す。
この例のフェルール継手100は、前述のフェルール継手1において、仮止め係止部材150を二つ備えたものである。この2つの仮止め係止部材150,150は、相手側のフェルール継手2´のフランジ部12´へ係合させるため、フェルール継手100の継手中心軸に対し対称の箇所に対向して配置されている。
2つの仮止め係止部材150は必ずしもこれに限らないが、このような180度対向する位置が最も安定しかつ2方向の箇所から係合することを許容する点で好ましい。また、上下に180度対抗する位置におけばより保持も安定する。それ以外の場合は、上側の頂点から等距離の位置に置くのが対称であるため安定性がよい。
仮止め係止部材150以外の構成部材については、図1〜図10に示す実施形態と同様のため、図中に前記と同一の符号を付して、重複する説明および図示を省略する。
【0047】
なお、本発明は、前記した仮止め係止部材150が、フェルール継手1におけるフランジ部12に三つ以上備えられていてもよい。ただし、この場合は接続される相手側のフェルール継手2´のフランジ部12´と係合できるようにするため、それぞれの仮止め係止部材150,150・・・が、フランジ部12の外周における半分の領域(半円弧状の領域)内に配置される必要がある。
【0048】
また、図示例においては、接続する相互のフェルール継手1,2´を同形同寸のものとして直管状の配管の形成について説明している。しかし本発明は、接続する一方のフェルール継手を他方のフェルール継手に対し、接続可能なフェルール継手の構造を保持しつつ、三方型ないし四方型などとした各種分岐構造のフェルール継手にも適応することができ、任意な配管の形成に対応することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態例について図面を参照しながら説明したが、本発明はこれら図示例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に記載された技術的思想の範疇において、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1、100:フェルール継手
2´:接続される相手側フェルール継手
3:サニタリー配管
4´:サニタリー配管
10、110、10´:一端開口部(開口)
11、111、11´:他端開口部(開口)
12、112、12´:フランジ部
13、113、13´:シール面
14、114、14´:係止用斜面
15、15´:凹部
16、16´:継手本体
17:段部(Oリング用)
18´:凹溝(Oリング用)
19´:凸壁(Oリング用)
20:平パッキン(シール部材)
21:凸部
22:Oリング(シール部材)
23:収納空間
30:クランプバンド(クランプ部材)
40:クリアランス
50、150:仮止め係止部材
51、151:係止爪
53:傾斜状係合面
【技術分野】
【0001】
本発明は、サニタリー配管の接続に用いられるフェルール継手(または、クランプユニオン継手などともいわれる)に関するもので、食品、飲料、医薬品、酪農、化学などの分野のプラントにおいて粉粒体及び液体などを移送するサニタリー配管に用いるフェルール継手、フェルール継手の接続構造およびフェルール継手の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サニタリー配管は、JIS G3447等で規定されるステンレスパイプを指すが、世界的にはIDF(国際酪農連盟)やISO(国際標準化機構)などの規格に準拠して製造・施工されるものである。サニタリー配管を接続するための継手も同様のステンレス材で形成されている。また、サニタリー、すなわち、衛生的である必要に応じ、各配管を分解して洗浄・殺菌を行えるようにするため、サニタリー配管にフェルール継手を配設して、配管の取り外しができるようクランプ部材でクランプして固定している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−213682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のフェルール継手が配設されたサニタリー配管は、クランプする際、フェルール継手同士を突き合わせた状態にした後にクランプして固定するため、多くの場合は作業者が移動側の配管を手で支えて保持し、そのうえで、別の作業者がクランプ部材でクランプする作業を行う必要があった。これは、配管を外すためにクランプを解除する場合も同様である。このため、クランプ部材を脱着する際は、少なくとも2人の作業者が必要となり、特に、作業スペースが狭い場合は作業が行いにくく、作業性に劣るという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためにされたもので、その目的は、サニタリー配管におけるクランプ部材の脱着作業(すなわち、配管の接続作業、配管の洗浄や殺菌を行う際の分解作業、および、分解後の再接続作業など)において、作業を容易に行うことができるように、配管を仮止めして保持をすることができる新規なフェルール継手と、このフェルール継手の接続構造、接続方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、サニタリー配管同士をクランプ部材によりクランプして着脱自在に接続するためにサニタリー配管の端部に配設されるフェルール継手であって、両端に開口を有する管状の継手本体と、継手本体の一方の端部の外周に形成されて、接続の際にシール部材を介して相手側フェルール継手に突き合わされてクランプされるフランジ部と、接続の際に仮止めのために相手側フェルール継手に係合する仮止め係止部材を少なくとも一つ有し、仮止め係止部材は、仮止めの際に相手側フェルール継手に係合して継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持するように形成されていること、を特徴とする。
【0007】
このような構成により、接続の際仮止めのために相手側フェルール継手に係合して、継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持するフェルール継手を提供できる。このとき、これら一対のフェルール継手が仮止めされた状態を、作業者が手で支えて保持している必要はない。このため、クランプの脱着作業を容易に行うことができる。
【0008】
この場合、フランジ部は、接続の際にシール部材を受けてシールをするシール面を有し、シール面は、シール部材の凸部に嵌合する凹部を有し、フランジ部は、仮止めの際にシール部材が嵌合するように形成してもよい。
【0009】
このような構成により、仮止めの際、仮止め係止部材の係合に加え、シール部材とフランジ部が嵌合することにより保持を確実にすることができる。
【0010】
また、本発明に係る継手付サニタリー配管は、サニタリー配管の少なくとも一方の端部に前記したフェルール継手が配設されたことを特徴とする。
【0011】
このような構成により、仮止めの際、相手側フェルール継手に係合して継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持することができ、また、その保持を確実にすることができる継手付サニタリー配管を提供できる。
【0012】
さらに、本発明に係るフェルール継手の接続構造は、一のサニタリー配管の端部に配設された一のフェルール継手と他のサニタリー配管の端部に配設された他のフェルール継手とをシール部材を介して密接させクランプ部材によりクランプして着脱自在に接続されたフェルール継手の接続構造であって、一のフェルール継手または他のフェルール継手のいずれか一方または双方は、前記したフェルール継手であることを特徴とする。
【0013】
このような構成により、仮止めの際に継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持して、容易に接続できるフェルール継手の接続構造を提供することができる。
【0014】
本発明に係るフェルール継手の接続方法は、一のサニタリー配管の端部に配設された一のフェルール継手と他のサニタリー配管の端部に配設された他のフェルール継手とをシール部材を介して密接させクランプ部材によりクランプして着脱自在に接続するフェルール継手の接続方法であって、一のフェルール継手または他のフェルール継手のいずれか一方または双方は、前記したフェルール継手であり、一のフェルール継手と他のフェルール継手とがシール部材を介して突き合わされ、仮止め係止部材が他のフェルール継手に係合して継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持するように仮止めするステップと、仮止めされた両フェルール継手の両フランジをクランプ部材でクランプするステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
このような構成により、容易に接続できるフェルール継手の接続方法を提供できる。仮止めの際に相手側のフェルール継手に係合して、継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持するので、クランプの脱着の際も、作業者が配管を手で支えて保持している必要はない。
【0016】
この場合、一のフェルール継手と他のフェルール継手は、シール部材を介して突き合わされたそれぞれのシール面において直接にまたはシール部材を介して間接に嵌合するように形成され、仮止めするステップにおいて、さらに、両継手同士が直接にまたは間接に嵌合するように仮止めすることを含むようにしてもよい。
【0017】
このような構成により、仮止めの際、仮止め係止部材の係合に加え、シール部材とフランジ部の嵌合により保持を確実にすることができるフェルール継手の接続方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のような構成としたので、サニタリー配管システムにおける配管同士の接続、分解および再度の接続作業に伴うクランプ作業を容易に行うことができ、作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るフェルール継手の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のフェルール継手に、シール部材として平パッキンが嵌合される例を示している。
【図3】図1に示すフェルール継手が配設された継手付サニタリー配管と、仮止め係止部材を備えない他のフェルール継手が配設された他の継手付サニタリー配管を仮止めする例を示す斜視図である。
【図4】シール部材として平パッキンを介して仮止めした接続構造を示す要部縦断面図である。
【図5】図4の要部拡大断面図である。
【図6】シール部材として平パッキンを介して仮止めをしたクリアランスのある接続構造の説明図である。
【図7】シール部材としてOリングを介して仮止めした接続構造を示す要部縦断面図である。
【図8】図7の要部拡大断面図である。
【図9】図7で仮止めした後、クランプバンドでクランプする接続構造の説明図である。
【図10】クランプバンドでクランプした接続構造を示す要部縦断面図である。
【図11】本発明に係るフェルール継手の別例を示す斜視図である。
【図12】別例のフェルール継手が配設された継手付サニタリー配管と係止部材を備えない他のフェルール継手が配設された他の継手付サニタリー配管を仮止めする例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜図12を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
図1に本発明に係るフェルール継手の一例を示す。
本例のフェルール継手1(以下、単に「フェルール継手1」と称する場合がある。)は、接続の際、サニタリー配管3の端部の一方又は両方に、溶接などによる固定手段によりあらかじめ配設されて用いられるものである。フェルール継手1とサニタリー配管3は、いずれも同質のステンレス材(たとえば、SUS304)からなる。
【0022】
フェルール継手1は、接続される相手側のフェルール継手2´(以下、単に「相手側フェルール継手2´」と称する場合がある。)との接続口となる継手側開口部10と固定されるサニタリー配管3との接続口となる配管側開口部11とを備えた短い管状の継手本体16と、継手側開口部10の外周に一体に形成された相手側フェルール継手2´と接続されるフランジ部12と、接続の際に仮止めをするための仮止め係止部材50を備える。
【0023】
相手側フェルール継手2´と接続のために接するフランジ部12の面は、フェルール継手1の継手本体16の継手中心軸に垂直のシール面13が形成されており、フランジ部12は、継手本体16に向かって下る一定傾斜(たとえば、60度)の係止用傾斜面14が形成されている。相手側フェルール継手2´と接続される場合は、接続箇所をシールするため、平パッキン20やOリング22などのガスケットといわれるシール部材が、シール面13、13´間に挿入される。このシール面13は、平パッキン20をシール部材とする場合は、平パッキン20と嵌合して平パッキン20を装着するための凹部15が環状に形成されており(図2、4など参照)、また、Oリング22をシール部材とする場合は、相手側フェルール継手2´と嵌合してシール部材を収納するための段部17、または凹溝18´および凸壁19´が環状に形成されている(図7、8等参照)。
【0024】
相手側フェルール継手2´は、仮止め係止部材50を備えないこと以外は、フェルール継手1と同材料、同構造で構成される。ただし、仮止め係止部材50を備えることを妨げるものではない。
すなわち、相手側フェルール継手2´は、フェルール継手1と同質のステンレス材からなり、フェルール継手1の接続口となる継手側開口部10´と、サニタリー配管4´の接続口となる配管側開口部11´とを備えた短い継手本体16´と、継手側開口部10´の外周に一体に形成されたフェルール継手1と接続されるフランジ部12´とを備える。なお、フェルール継手2´の継手側開口部10´、配管側開口部11´、継手本体16´は、図面上で示さないが、図1に示す同構造のフェルール継手1の対応する部材を参照のこと。
【0025】
フェルール継手1と接続のために接するフランジ部12´の面は、継手本体16´の継手中心軸に垂直のシール面13´が形成されており、フランジ部12´は、継手本体16´に向かって下る一定傾斜(たとえば、60度)の係止用傾斜面14´が形成されている。このシール面13´は、シール部材である平パッキン20と嵌合して装着するための凹部15´が環状に形成されている(図5など参照)。
【0026】
相手側フェルール継手2´は、接続の際、サニタリー配管4´の端部の一方又は両方に、溶接などによる固定手段によりあらかじめ配設されて用いられる。
【0027】
仮止め係止部材50は、図1、図2などに示すように、フェルール継手1のフランジ部12に基端側が溶接で固定され、先端側は外方へ延出して、相手側フェルール継手2´のフランジ部12´の係止用傾斜面14´に係合可能な係止爪51が形成されている。
【0028】
仮止め係止部材50は、図3、図4などに示すように、相手側フェルール継手2´の係止用傾斜面14´に係合するように、フランジ部12、12´に沿ったほぼ台形状となる凹みを有するように形成されている。本例では、係止爪51は傾斜状係合面53が相手側フェルール継手2´のフランジ部12´の係止用傾斜面14´にほぼ沿うようにして係合するように形成されている。
【0029】
(仮止め方法〜係止)
次に、このように構成されたフェルール継手1を用いた仮止め方法について、相手側フェルール継手2´との仮止め方法を示す。
【0030】
(継手付配管)
まず、フェルール継手1および相手側フェルール継手2´は、それぞれサニタリー配管3、4´の端部に固定させて取りつける。継手と配管の径および厚さは同じものが便宜である。これにより、図3に示すようにフェルール継手付サニタリー配管が形成される。
通常は、固定側の配管に相手側フェルール継手2´を取り付け、移動側の配管にフェルール継手1を取り付けるのが望ましい。多くの場合、サニタリー配管系においてフェルール継手により接続する箇所は、定期的にクリーニング等を行うところであるため、移動側の配管に仮止め係止部材のような突起がある方が、クリーニング作業等がしやすいためである。フェルール継手1は、固定側の配管に取り付けても構わない。
【0031】
(シール部材装着)
次に、フェルール継手1にシール部材である平パッキン20を装着する。図2は、図1に示すフェルール継手1に平パッキン20を嵌合させて装着することを示している。図2に示すように、フェルール継手1のシール面13に対し、平パッキン20の凸部21がシール面の凹部15に陥入されて、装着する。平パッキン20は、相手側フェルール継手2´に装着しても構わない。
平パッキン20は、それぞれの継手の間に嵌合し密着して配されるため、シールするとともに、継手同士が互いに容易に横滑りをしないようになる。
【0032】
(平パッキン)
図2から図4では、シール部材として平パッキン20と呼ばれるシリコン、フッ化炭素樹脂などのゴム材等からなる環状のシートが用いられている。なお、材質は配管内の粉粒体及び流体を考慮して選択される。図4に拡大して示すように、このシートにはシート面の表裏にそれぞれシートと同心円状の凸部21が設けられ、それぞれのフェルール継手のシール面13、13´に設けられた環状の凹部15、15´に嵌入して、シール部材20とシール面13、13´は嵌合してシールするように形成されている。
これにより、それぞれのフェルール継手1、2´のシール面13、13´の間に挟まれて、両フェルール継手1、2´間のシールを保持するようになっている。
【0033】
また、後述のように、仮止め係止部材50は、接続される相手側フェルール継手2´の配管4´に設けられたフェルール継手2´の係止用傾斜面14´に係合してフェルール継手1と配管3を保持可能にするが、両継手間にこのようなシール部材を介した間接的な嵌合構造がある場合は、さらに、シール部材20とフェルール継手1、2´の摩擦力が大きくなるため、フェルール継手1と配管3の保持をさらに確実にする。
【0034】
(突き合わせ)
次に、フェルール継手を備えた配管同士を突き合わせる。通常は、固定側の配管に合わせて移動側の配管を移動してそれぞれのシール面が向き合うようにして突き合わせる。図3は、フェルール継手1が配設されたサニタリー配管3が移動側であり、フェルール継手2´が配設されたサニタリー配管4´が固定側の場合を示している。前述のように、どちらが固定側でも移動側でも差し支えない。
【0035】
(仮止め)
両フェルール継手1,2´の両継手側開口部10,10´が突き合わされるにあたり、仮止め係止部材50の係止爪51が、相手側フェルール継手2´の係止用傾斜面14´に係合し、それぞれのフェルール継手のシール面13,13´の間にシール部材である平パッキン20を挟む状態で保持されて、両フェルール継手1,2と両サニタリー配管3,4が仮止めされる。
【0036】
(仮止め係止部材50の位置と作用)
この際、仮止め係止部材50は、その位置が重力に対しもっとも上側になるようにしてフェルール継手2´に係合することが望ましい。たとえば、両サニタリー配管3,4´がほぼ水平に接続されるような場合は、仮止め係止部材50がもっとも上側に位置して、それぞれのフェルール継手1,2´同士の上側を仮止め係止部材50で係止する。また、平パッキンの凸部21がフェルール継手の凹部15、15´に陥入して、両フェルール継手1,2´が、継手のシール面方向に動かなくなるため、両サニタリー配管3,4´の仮止めが確実に保持される(図4など参照)。
【0037】
このようにすると、前述のように平パッキン20を介して突き合わされた配管は互いにシール面で横滑りをせず、重力により、移動側配管には仮止め係止部材50の反対側となるもっとも下側のシール面の箇所を中心として配管の長手軸が回転しようとするモーメントが発生する。このようなモーメントに対し、仮止め係止部材50は係止爪51の傾斜状係合面53と相手側フェルール継手2´の係止用傾斜面14´が係合して回転しないようにロックする。
したがって、移動側の配管について支持をしなくてもその突き合わせ状態を維持することができる。すなわち、移動側配管の仮止めをすることができる。
【0038】
(作用効果)
仮止めができると、配管の接続作業において、配管の突き合わせ状態を一時的に保持するために機械や作業員を投入して配管を支持する必要はなくなる。このため、作業が容易になるばかりか、作業員を減らすことができる。特に、作業スペースの狭い箇所で作業をする必要がある場合は、著しく作業が容易になる。また、小規模な作業では、一人作業も可能になる。従来は、クランプして固定する際に、機械や作業員を要して突き合わせ状態を維持する必要があったが、このような仮止めができることによって、その必要はなくなるからである。
【0039】
(クリアランスなし)
なお、仮止めする際は、仮止爪51と係止用傾斜面14´とのクリアランス40は、図4および図5に示すように、ほとんどゼロでも構わない。本例では、クリアランス40がゼロとなるように、係止用傾斜面14´に係合して相手側のフェルール継手2を保持可能な傾斜状係合面53を備えている。しかしながら、後述するように、適当な大きさに調整してもよい。
【0040】
(クリアランスあり)
図6は、クリアランス40のある場合を示している。図6では、仮止爪51と係止用傾斜面14´の間は、クリアランスがないように見えるが、図6は、係止爪51が係止用傾斜面14´に係合してロックしている様子を示しており、シール面13´と平パッキン間の空隙が実質的にクリアランス40に相当する。このクリアランス40は、シール面13、13´で横滑りをせずに、係止爪51が係止用傾斜面14´に係合してロックされる大きさであるとともに、クランプが容易にできる大きさを限度とすればよい。たとえば、ほぼシール部材としての平パッキン20の厚み程度が望ましい。
【0041】
(Oリング)
シール部材は、平パッキン20でなくOリング22であってもよい。図7および図8は、シール部材がOリング22、すなわち、NBRなどのゴム材等からなる環状の断面円形のリング状である場合を示す。なお、材質は配管内の粉粒体及び流体を考慮して選択される。
この場合は、フェルール継手1のシール面13に段部17が形成され、相手側フェルール継手2´のシール面13´に、Oリングを収納する凹溝18´とこれから立ち上がり段部17と嵌合する凸壁19´が形成されている。この段部17と凸壁19´が嵌合することにより、両継手間に直接的な嵌合構造を形成するとともに、シール面13と凹溝18´で囲まれた収納空間23を形成し、この収納空間23にOリングを収納するようになっている。この収納空間の大きさは、OリングによりシールができるようにOリングが収納空間を形成するシール面13と凹溝18´にややつぶれて弾性的に接触するような大きさとすればよい。このようにすると、Oリングは、嵌合構造の中の収納空間に収納されて、継手間の接続部をシールする。フェルール継手1が凹溝を有し、相手側フェルール継手2´が段部と凸壁を有する構造としてもかまわない。
【0042】
仮止め係止部材50は、接続される相手側フェルール継手2´の配管4´に設けられたフェルール継手2´の係止用傾斜面14´に係合してフェルール継手1と配管3を保持可能にするが、両継手間にこのようなシール部材を介した直接的な嵌合構造がある場合は、フェルール継手1と配管3の保持をさらに確実にする。
この場合も、仮止め係止部材50と係止用傾斜面14´のクリアランスは、Oリングが挟持されたときに、嵌合された厚み(凸壁19´が段部17に嵌まっている深さ)と等しいか小さくなるように構成されていると、仮止めの際の保持が確実にされる。
【0043】
(クランプ)
次に、仮接続された両フェルール継手1,2´は、この後、クランプ部材30で相互にクランプされて固定され、フェルール継手の接続構造を構成する。
クランプ部材30は、継手同士を平パッキン20やOリング22などのシール部材を介してシール面で密着させた後に着脱可能に固定する固定具であり、本例では、クランプバンド30が用いられている。構造としては、クランプの際に仮止め係止部材50と干渉しないものであれば、この種分野で通常用いられるもので差し支えない。
【0044】
クランプバンド30は、図9、図10などに示すように、フェルール継手1,2´に形成されたフランジ部12、12´に跨がって装着される二つ割りしたほぼ半円形状の挟持片31,31と、これら挟持片31,31の一端に設けられて両挟持片31,31をそれぞれ左右に開閉自在とする保持体32と、一方の挟持片31の他端に回動可能に取り付けられ、他方の挟持片31の他端に設けた切欠き33に固定のために挿入されるアーム34と、このアーム34に設けた雄ねじ部35に螺合して固定する蝶ナット36を備えている。
【0045】
クランプバンド30は、仮止めされたそれぞれのフェルール継手1,2´のフランジ部12,12´に、クランプバンド30のそれぞれの挟持片31,31が被さるように巻回し、さらに、アーム34を回動させて切欠き33に挿入した後、蝶ナット36を締め込むと、フェルール継手1,2´のフランジ部12,12´同士が、シール部材20を介して緊密に固定され、これに伴いサニタリー配管3,4´が強固に接続されてフェルール継手の接続構造を構成する。
【0046】
図11、図12は、本発明の他の実施例を示す。
この例のフェルール継手100は、前述のフェルール継手1において、仮止め係止部材150を二つ備えたものである。この2つの仮止め係止部材150,150は、相手側のフェルール継手2´のフランジ部12´へ係合させるため、フェルール継手100の継手中心軸に対し対称の箇所に対向して配置されている。
2つの仮止め係止部材150は必ずしもこれに限らないが、このような180度対向する位置が最も安定しかつ2方向の箇所から係合することを許容する点で好ましい。また、上下に180度対抗する位置におけばより保持も安定する。それ以外の場合は、上側の頂点から等距離の位置に置くのが対称であるため安定性がよい。
仮止め係止部材150以外の構成部材については、図1〜図10に示す実施形態と同様のため、図中に前記と同一の符号を付して、重複する説明および図示を省略する。
【0047】
なお、本発明は、前記した仮止め係止部材150が、フェルール継手1におけるフランジ部12に三つ以上備えられていてもよい。ただし、この場合は接続される相手側のフェルール継手2´のフランジ部12´と係合できるようにするため、それぞれの仮止め係止部材150,150・・・が、フランジ部12の外周における半分の領域(半円弧状の領域)内に配置される必要がある。
【0048】
また、図示例においては、接続する相互のフェルール継手1,2´を同形同寸のものとして直管状の配管の形成について説明している。しかし本発明は、接続する一方のフェルール継手を他方のフェルール継手に対し、接続可能なフェルール継手の構造を保持しつつ、三方型ないし四方型などとした各種分岐構造のフェルール継手にも適応することができ、任意な配管の形成に対応することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態例について図面を参照しながら説明したが、本発明はこれら図示例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に記載された技術的思想の範疇において、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1、100:フェルール継手
2´:接続される相手側フェルール継手
3:サニタリー配管
4´:サニタリー配管
10、110、10´:一端開口部(開口)
11、111、11´:他端開口部(開口)
12、112、12´:フランジ部
13、113、13´:シール面
14、114、14´:係止用斜面
15、15´:凹部
16、16´:継手本体
17:段部(Oリング用)
18´:凹溝(Oリング用)
19´:凸壁(Oリング用)
20:平パッキン(シール部材)
21:凸部
22:Oリング(シール部材)
23:収納空間
30:クランプバンド(クランプ部材)
40:クリアランス
50、150:仮止め係止部材
51、151:係止爪
53:傾斜状係合面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サニタリー配管同士をクランプ部材によりクランプして着脱自在に接続するためにサニタリー配管の端部に配設されるフェルール継手であって、
両端に開口(10,11)を有する管状の継手本体(16)と、
前記継手本体(16)の一方の端部の外周に形成されて、接続の際にシール部材を介して相手側フェルール継手に突き合わされてクランプされるフランジ部(12)と、
接続の際に仮止めのために前記相手側フェルール継手に係合する仮止め係止部材(50)を少なくとも一つ有し、
前記仮止め係止部材(50)は、仮止めの際に前記相手側フェルール継手に係合して継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持するように形成されていることを特徴とするフェルール継手(1)。
【請求項2】
前記フランジ部(12)は、接続の際に前記シール部材(20)を受けてシールをするシール面(13)を有し、
前記シール面(13)は、前記シール部材(20)の凸部(21)に嵌合する凹部(15)を有し、
前記フランジ部(12)は、仮止めの際に前記シール部材(20)が嵌合するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたフェルール継手(1)。
【請求項3】
サニタリー配管の少なくとも一方の端部に請求項1又は2に記載されたフェルール継手(1)が配設されたことを特徴とする継手付サニタリー配管。
【請求項4】
一のサニタリー配管(3)の端部に配設された一のフェルール継手(1)と他のサニタリー配管(4´)の端部に配設された他のフェルール継手(2´)とをシール部材(20)を介して密接させクランプ部材(30)によりクランプして着脱自在に接続されたフェルール継手の接続構造であって、
前記一のフェルール継手(1)または前記他のフェルール継手(2)のいずれか一方または双方は、請求項1または2記載のフェルール継手であることを特徴とするフェルール継手の接続構造。
【請求項5】
一のサニタリー配管(3)の端部に配設された一のフェルール継手(1)と他のサニタリー配管(4´)の端部に配設された他のフェルール継手(2´)とをシール部材(20)を介して密接させクランプ部材(30)によりクランプして着脱自在に接続するフェルール継手の接続方法であって、
前記一のフェルール継手(1)または前記他のフェルール継手(2)のいずれか一方または双方は、請求項1または2記載のフェルール継手であり、
前記一のフェルール継手(1)と前記他のフェルール継手(2´)とが前記シール部材(20)を介して突き合わされ、前記仮止め係止部材(50)が前記他のフェルール継手(2´)に係合して継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持するように仮止めするステップと、
前記仮止めされた両フェルール継手(1、2´)の両フランジ(12、12´)をクランプ部材でクランプするステップと、
を含むことを特徴とするフェルール継手の接続方法。
【請求項6】
前記一のフェルール継手(1)と前記他のフェルール継手(2´)は、シール部材(20,22)を介して突き合わされたそれぞれのシール面(13、13´)において直接にまたはシール部材を介して間接に嵌合するように形成され、
前記仮止めするステップにおいて、さらに、両継手同士(1,2´)が直接にまたは間接に嵌合するように仮止めすることを含むことを特徴とする請求項5記載の接続方法。
【請求項1】
サニタリー配管同士をクランプ部材によりクランプして着脱自在に接続するためにサニタリー配管の端部に配設されるフェルール継手であって、
両端に開口(10,11)を有する管状の継手本体(16)と、
前記継手本体(16)の一方の端部の外周に形成されて、接続の際にシール部材を介して相手側フェルール継手に突き合わされてクランプされるフランジ部(12)と、
接続の際に仮止めのために前記相手側フェルール継手に係合する仮止め係止部材(50)を少なくとも一つ有し、
前記仮止め係止部材(50)は、仮止めの際に前記相手側フェルール継手に係合して継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持するように形成されていることを特徴とするフェルール継手(1)。
【請求項2】
前記フランジ部(12)は、接続の際に前記シール部材(20)を受けてシールをするシール面(13)を有し、
前記シール面(13)は、前記シール部材(20)の凸部(21)に嵌合する凹部(15)を有し、
前記フランジ部(12)は、仮止めの際に前記シール部材(20)が嵌合するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたフェルール継手(1)。
【請求項3】
サニタリー配管の少なくとも一方の端部に請求項1又は2に記載されたフェルール継手(1)が配設されたことを特徴とする継手付サニタリー配管。
【請求項4】
一のサニタリー配管(3)の端部に配設された一のフェルール継手(1)と他のサニタリー配管(4´)の端部に配設された他のフェルール継手(2´)とをシール部材(20)を介して密接させクランプ部材(30)によりクランプして着脱自在に接続されたフェルール継手の接続構造であって、
前記一のフェルール継手(1)または前記他のフェルール継手(2)のいずれか一方または双方は、請求項1または2記載のフェルール継手であることを特徴とするフェルール継手の接続構造。
【請求項5】
一のサニタリー配管(3)の端部に配設された一のフェルール継手(1)と他のサニタリー配管(4´)の端部に配設された他のフェルール継手(2´)とをシール部材(20)を介して密接させクランプ部材(30)によりクランプして着脱自在に接続するフェルール継手の接続方法であって、
前記一のフェルール継手(1)または前記他のフェルール継手(2)のいずれか一方または双方は、請求項1または2記載のフェルール継手であり、
前記一のフェルール継手(1)と前記他のフェルール継手(2´)とが前記シール部材(20)を介して突き合わされ、前記仮止め係止部材(50)が前記他のフェルール継手(2´)に係合して継手同士が突き合わされた状態を一時的に保持するように仮止めするステップと、
前記仮止めされた両フェルール継手(1、2´)の両フランジ(12、12´)をクランプ部材でクランプするステップと、
を含むことを特徴とするフェルール継手の接続方法。
【請求項6】
前記一のフェルール継手(1)と前記他のフェルール継手(2´)は、シール部材(20,22)を介して突き合わされたそれぞれのシール面(13、13´)において直接にまたはシール部材を介して間接に嵌合するように形成され、
前記仮止めするステップにおいて、さらに、両継手同士(1,2´)が直接にまたは間接に嵌合するように仮止めすることを含むことを特徴とする請求項5記載の接続方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−72548(P2013−72548A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214635(P2011−214635)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(511029796)三豊化工機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(511029796)三豊化工機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]