説明

フェロコークスの製造方法

【課題】フェロコークスを製造するに際して、乾留工程における成型物の変形や熱割れを抑制させ、乾留炉出側での原形歩留まり、ハンドリング強度を向上させることのできる新たなフェロコークスの製造方法を提供する。
【解決手段】石炭30、鉄源原料31およびバインダーを含む成型用原料を成型した成型物を乾留してフェロコークスを製造する際に、乾留した成型物を篩い4で篩い分けして、製品フェロコークスと金属鉄を含むコークス粉とに分離し、該金属鉄を含むコークス粉を前記成型物の成型用原料として用いることを特徴とするフェロコークスの製造方法。金属鉄を含むコークス粉の粒径が6mm以下であること、石炭30と鉄源原料31との合計量に対して、0.5質量%〜8質量%を用いること、竪型シャフト炉3を用いて成型物を乾留することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石等の鉄源原料と、石炭とを原料として冶金用のフェロコークスを製造するフェロコークスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の操業を効率よく行うために、石炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークスを高炉に投入することが行われている。高炉内でのコークスには、高炉内の通気をよくするためのスペーサーの役割、還元材としての役割、熱源としての役割などがある。近年、コークスの反応性を向上させるという観点から、石炭に鉄鉱石を混合して冶金用のフェロコークスを得る技術が知られている。
【0003】
鉄鉱石等の鉄源原料と、石炭とを原料として、通常の室炉式コークス炉で乾留してフェロコークスを製造する技術としては、(a)石炭と粉鉄鉱石の混合物を室炉式コークス炉に装入する方法、(b)石炭と鉄鉱石を冷間、すなわち室温で成型し、その成型物を室炉式コークス炉に装入する方法などが検討されてきた(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、通常の室炉式コークス炉は珪石煉瓦で構成されているので、鉄鉱石を装入した場合に鉄鉱石が珪石煉瓦の主成分であるシリカと反応し、低融点のファイアライトが生成して珪石煉瓦の損傷を招く。このため室炉式コークス炉でフェロコークスを製造する技術は、工業的に実施されていない。
【0004】
近年、室炉式コークス製造方法にかわるコークス製造方法として、連続式成型コークス製造法が開発されている。連続式成型コークス製造法では、乾留炉として、珪石煉瓦ではなくシャモット煉瓦にて構成される竪型シャフト炉を用い、石炭を冷間で所定の大きさに成型後、シャフト炉に装入し、循環熱媒ガスを用いて加熱することにより成型炭を乾留し、成型コークスを製造する。資源埋蔵量が豊富で安価な非微粘結炭を多量に使用しても、通常の室炉式コークス炉と同等の強度を有するコークスが製造可能なことが確認されているが、使用する石炭の粘結性が高い場合には、シャフト炉内で成型炭が軟化融着し、シャフト炉操業が困難になると共に変形や割れ等のコークス品質低下を招く。
【0005】
連続式成型コークス製造法でのシャフト炉内での融着抑制のために、石炭に鉄鉱石を全体量の15〜40質量%となるように添加し、冷間で成型物を製造し、シャフト炉に装入する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、鉄鉱石に粘結性がないため、冷間の状態で成型物を製造するためにバインダーを多く添加する必要があり、石炭と鉄鉱石を加熱した熱間の状態で塊成型物に成型する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
上記のように石炭と鉄鉱石とを混合した成型物を熱処理して、成型コークス(フェロコークス)を製造する際に、変形や割れ等のコークス品質低下を押さえるために、成型物を乾留する際のヒートパターンの検討が行われ、成型物の温度に応じた最適な加熱速度設計方法が提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)。
【非特許文献1】燃料協会「コークス技術年報」 1958年、p.38
【特許文献1】特開平6−65579号公報
【特許文献2】特開2004−217914号公報
【特許文献3】特開昭52−23103号公報
【特許文献4】特開平7−102260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようにフェロコークスの製造には、塊成化する成型工程と、その後、塊成化された成型物を乾留してフェロコークスの製品を得る工程とがある。フェロコークスを製造するに際して、乾留工程における成型物の変形や熱割れを抑制させることは、乾留炉出側での原形歩留まりを高めると共にハンドリング強度をも向上させることになり、重要な課題である。
【0008】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、フェロコークスを製造するに際して、乾留工程における成型物の変形や熱割れを抑制させ、乾留炉出側での原形歩留まり、ハンドリング強度を向上させることのできる新たなフェロコークスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)石炭、鉄源原料およびバインダーを含む成型用原料を成型した成型物を乾留してフェロコークスを製造する際に、
乾留した成型物を篩い分けして、製品フェロコークスと金属鉄を含むコークス粉とに分離し、該金属鉄を含むコークス粉を前記成型物の成型用原料として用いることを特徴とするフェロコークスの製造方法。
(2)金属鉄を含むコークス粉の粒径が6mm以下であることを特徴とする(1)に記載のフェロコークスの製造方法。
(3)石炭と鉄源原料との合計量に対して、0.5質量%〜8質量%の金属鉄を含むコークス粉を、成型用原料として用いることを特徴とする(1)または(2)に記載のフェロコークスの製造方法。
(4)竪型シャフト炉を用いて成型物を乾留することを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載のフェロコークスの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属鉄を含むコークス粉を成型用原料に用いることによって、乾留工程における還元率の上昇により炭材が鉄鉱石の還元に使用されることが押さえられ、フェロコークス中に発生する欠陥構造を抑制し、乾留後の強度低下が防ぐことができる。
【0011】
また、竪型シャフト炉を用いて乾留することにより、通常室炉式コークス製造法と異なり、連続的な乾留が可能となり、さらに、何らかのトラブルが発生した際、緊急停止が可能となり、操業方法に柔軟性が生じる。
【0012】
さらに、製品フェロコークスは粉状部が除去されているので、高炉内の通気性を良好に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明のフェロコークスの製造方法の一実施形態を説明する。図1はフェロコークスの製造設備を示す概略図である。石炭30および鉄源原料31は粉砕機(図示せず。)にて所定の粒度以下に粉砕された後、所定の割合で配合される。例えば石炭は3mm以下に、鉄源原料は0.5mm以下に粉砕される。そして、例えば石炭60〜90質量%、鉄源原料10〜40質量%の割合で配合される。鉄源原料31としては、主に鉄鉱石が使用されるが、鉄鉱石の替わりに高炉ダスト、転炉ダスト、圧延スラッジなどの製鉄所内で副生する鉄源原料を用いてもよい。本実施形態においては、鉄源原料31として鉄鉱石を用いるものとする。
【0014】
配合された石炭、鉄鉱石は攪拌機1に投入される。攪拌機1には、バインダータンク6よりバインダーが添加される。バインダーには通常使用されるSOP(軟ピッチ)、中ピッチ、PDA(プロパン脱瀝アスファルト)、ASP(アスファルトピッチ)などが使用され、1種類もしくは2種類以上を併用して使用することもできる。
【0015】
図2に、攪拌機1部分をより詳細に示す。攪拌機1は、成型用原料が装入される容器本体9と、この容器本体9の内部に設けられて成型用原料を攪拌する攪拌羽根10と、を有する。石炭および鉄鉱石の分散性を考えると、スクリュー式の攪拌機よりも高速回転する攪拌羽根10で攪拌する攪拌機1を用いることが望ましい。容器本体9の周囲には、加熱部として高温オイルまたは高圧水蒸気が流れ込むジャケット11が設けられる。ジャケット11は、成型用原料が120℃〜240℃の範囲になるように容器本体9を加熱する。攪拌されて得られた混合原料は、排出部12から排出される。
【0016】
バインダーは、石炭および鉄鉱石を攪拌機1に投入すると同時に、もしくは攪拌の最中にバインダータンク6から添加される。
【0017】
図1に示されるように、攪拌機1から排出された混合原料は、高圧成型機であるダブルロール成型機2で高圧成型される。ダブルロール成型機2は攪拌機1からの排出直後に混合原料を成型する。このため、ダブルロール成型機2の成型温度は攪拌機1の攪拌温度に近いものである。ダブルロール成型機2自体は、必ずしも加熱機構を有する必要はない。
【0018】
図3に、ダブルロール成型機2をより詳細に示す。ダブルロール成型機2は、互いに反対方向に回転する一対の成型ロール13を有し、一対の成型ロール13の接触箇所で混合原料が加圧成型される。図4に、成型ロール13の斜視図を示す。図4に示されるように、成型ロール13の外周面には凹み14が形成されていて、凹み14の形状の成型物32が成型される。成型物のサイズは特に限定されるものではなく、3〜95cm3程度、好ましくは6〜60cm3程度である。高炉での使用状態によって、必要とされる成型サイズは異なる。
【0019】
図1に示されるように、ダブルロール成型機2で成型された成型物は、竪型シャフト炉3で乾留され、竪型シャフト炉3の炉下部より排出される。排出方法は特に限定させるものではないが、乾留されたフェロコークスは金属鉄を含むため、炉下部において再酸化を受けないように、十分に低い温度まで冷却する必要があるので、低酸素濃度雰囲気もしくは窒素雰囲気で80℃程度まで冷却することが好ましい。乾留されたフェロコークスは、竪型シャフト炉3下部より排出され、篩い4でフェロコークスと、金属鉄を含むコークス粉とに分離され、篩い上は製品フェロコークスとしてフェロコークス搬送ライン7から貯留槽5に搬送される。篩い下の金属鉄を含むコークス粉は、高炉内に搬送されると炉内の通気性を悪化させる原因となり、高炉操業に支障をきたす恐れがある。そこで本発明では、金属鉄を含むコークス粉をコークス粉搬送ライン8から攪拌機1へ搬送し、成型用原料として再利用する。金属鉄を含むコークス粉をフェロコークスの成型用原料として再利用することにより、高炉内の通気性の悪化を抑制すると共にフェロコークスの強度を向上させることができる。石炭と鉄鉱石の成型物を乾留した場合、乾留の進行に伴い、炭材が鉄鉱石の還元に使用され鉄鉱石の還元率も上昇し、結果としてフェロコークス中に欠陥構造を生じる。本発明では、乾留の際に発生する金属鉄を含むコークス粉を成型用原料として再利用することで、成型物が初めから所定量の金属鉄を含むため、乾留に伴う炭材の使用が押さえられ、フェロコークス中に発生する欠陥構造を抑制することができる。篩い4の篩い目は特に限定されるものではないが、製品として使用できるフェロコークスが篩い上に残る篩い目が好ましく、そのサイズは成型物の成型サイズによって異なる。好ましくは粒径10mm以下が篩い下となるような篩い目、さらに好ましくは粒径6mm以下の未成型物が篩い下となるような篩い目がよい。
【0020】
成型用原料として再利用される金属鉄を含むコークス粉は、攪拌機1に添加されるが、その添加量は石炭30および鉄源原料31に対し、0.5〜8質量%程度、好ましくは1〜5質量%程度である。金属鉄を含むコークス粉の添加量が石炭および鉄源原料に対し、0.5質量%未満では金属鉄の添加効果がなく、石炭と鉄鉱石のみの成型物で製造したフェロコークスと同様の結果となる。一方、金属鉄を含むコークス粉が8質量%より多い添加量では、同じバインダー添加量で製造した場合の成型物のハンドリング強度が低くなり、乾留後のフェロコークス強度も低くなる場合があり好ましくない。
【実施例1】
【0021】
乾留工程における成型物の変形や熱割れを抑制させ、乾留炉出側での原形歩留まり、ハンドリング強度を向上させるために、実験的にフェロコークスを製造し、その品質評価を行った。
【0022】
フェロコークスは以下の方法で製造した。まず、フェロコークス用原料の調整を行い、石炭はジョークラッシャーで粒径3mm以下(−3mm)に調整したものを使用し、この石炭に粒径0.5mm以下(−0.5mm)にロールミルで粉砕した鉄鉱石を30質量%の割合で配合した。石炭には平均最大反射率が0.70%の微粘炭(石炭1)と平均最大反射率が1.70%の非粘炭(石炭2)を50質量%ずつ配合した配合炭を用いた。鉄鉱石にはカラジャス鉱石を用いた。鉄鉱石の性状を表1に、石炭の性状を表2示す。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
上記の石炭および鉄鉱石を攪拌機に投入し、加熱攪拌し、原料排出直前に軟ピッチを5質量%添加した。さらに攪拌を続け180℃で混合原料を排出した。排出した混合原料をダブルロール成型機により6cm3の成型物に成型し、図5に示す熱風加熱炉を備えた電気抵抗加熱型竪型乾留炉の炉上部から装入し、最高到達温度900℃で3時間程度乾留し、フェロコークスを得た(金属鉄含有コークス粉添加量0質量%に相当)。
【0026】
次に、乾留したフェロコークスを6mmの篩目の篩いで塊状のフェロコークスと金属鉄を含むコークス粉とに篩い分け、金属鉄を含むコークス粉を成型用原料のうち石炭、鉄鉱石の合計量に対し、それぞれ、0.5質量%、5質量%、8質量%、12質量%添加し、上記と同様に成型した。成型物は、同様に最高到達温度900℃で3時間程度乾留し、フェロコークスを得た。
【0027】
それぞれの場合について、I型ドラム試験装置(内径130mmΦ×700mmの筒状)を用いて、成型物の強度とフェロコークスの強度とを測定した。1分間に20回転の回転速度で、成型物の強度は、30回転させた後の6mm以上の残存率(DI30/6)により、フェロコークスについては、600回転させた後の6mm以上の残存率(DI600/6)により強度評価を行った。図6に成型物の強度を、図7にフェロコークスの強度の測定結果を示す。
【0028】
図6によれば、金属鉄を含むコークス粉を添加し、成型した成型物の強度は、未添加の成型物に比べ、添加量の増加と共に若干減少する傾向にあるが、8質量%まではハンドリング強度として十分であることが分かる。また、図7によれば、乾留後のフェロコークス強度は、金属鉄を含むコークス粉の添加量が5質量%までは強度が向上する傾向にあり、8質量%添加で未添加と同等の強度であることが分かる。
【0029】
以上のように、フェロコークス製造の乾留工程で生じる金属鉄を含むコークス粉を成型用原料として再利用することにより、乾留工程における成型物の変形や熱割れを抑制させ、乾留炉出側での原形歩留まり、ハンドリング強度を向上させることができることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】フェロコークスの製造設備を示す概略図。
【図2】攪拌機部分の説明図。
【図3】ダブルロール成型機の説明図。
【図4】ダブルロール成型機の成型ロールの斜視図。
【図5】熱風加熱炉を備えた電気抵抗加熱型竪型乾留炉の説明図。
【図6】成型物の強度に及ぼす金属鉄含有コークス粉添加量の影響を示すグラフ。
【図7】フェロコークスの強度に及ぼす金属鉄含有コークス粉添加量の影響を示すグラフ。
【符号の説明】
【0031】
1 高速攪拌機
2 ダブルロール成型機
3 竪型シャフト炉
4 篩い
5 貯留槽
6 バインダータンク
7 フェロコークス搬送ライン
8 コークス粉搬送ライン
9 容器本体
10 攪拌羽根
11 ジャケット
12 排出部
13 成型ロール
14 凹み
15 電気炉
16 熱風炉
17 反応管
18 バケットコンベア
19 タールポット
20 燃焼炉
21 成型物装入
22 フェロコークス排出
23 炉頂ガス
30 石炭
31 鉄源原料
32 成型物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭、鉄源原料およびバインダーを含む成型用原料を成型した成型物を乾留してフェロコークスを製造する際に、
乾留した成型物を篩い分けして、製品フェロコークスと金属鉄を含むコークス粉とに分離し、該金属鉄を含むコークス粉を前記成型物の成型用原料として用いることを特徴とするフェロコークスの製造方法。
【請求項2】
金属鉄を含むコークス粉の粒径が6mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のフェロコークスの製造方法。
【請求項3】
石炭と鉄源原料との合計量に対して、0.5質量%〜8質量%の金属鉄を含むコークス粉を、成型用原料として用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフェロコークスの製造方法。
【請求項4】
竪型シャフト炉を用いて成型物を乾留することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のフェロコークスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−235221(P2009−235221A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82519(P2008−82519)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発/革新的製銑プロセスの先導的研究」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】