説明

フェンス及びフェンス構造

【課題】外部応力が作用しても縦部材を確実に保持する。
【解決手段】平行かつ水平な複数の桟と平行な複数の縦部材とが、ほぼ直交する状態に設けられる格子状のフェンスであって、複数の桟の少なくとも1つが、縦部材20を通すための縦部材通し孔11b、12bを有する枠体と、枠体の内部にスライド可能に設けられ縦部材20が内部を通る縦部材固定孔13bを有するスライド部材と、スライド部材を枠体に対してスライドさせて縦部材20を縦部材固定孔13bにより固定するスライド固定手段とを具備してなり、縦部材固定孔13bは縦部材20の外径寸法よりも大きい幅寸法の縦部材挿通部13eと、スライドによる縦部材20および縦部材固定孔13bのうちの少なくとも一方の変形により縦部材20の外径寸法とほぼ同じ幅寸法となる縦部材固定部13fとをスライド方向に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家の境界などに設けられるフェンス、及びそのフェンスを支柱により立設したフェンス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したフェンスの1つとして、例えば矩形に形成したパイプ状の枠の上桟部と下桟部に取付孔を設け、上桟部の取付孔と下桟部の取付孔との両方に縦部材を通して縦部材を平行に多数配設した構成のものが知られている(例えば特許文献1等参照)。
【特許文献1】実開昭57−137272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1のフェンスは、縦部材を通す取付孔を縦部材の外径よりも大きく形成して縦部材との間の隙間により挿入を容易にさせ、縦部材を通した上桟部及び下桟部を円弧状に湾曲させて前記隙間を短くすることで、取付孔の上縁と下縁との距離が縦部材の外径に接近する2箇所で縦部材を挟持する構成となっている。つまり、縦部材を通すときには縦部材に対して上桟部及び下桟部を直交させ、縦部材を挟持して拘束するときには縦部材に対して上桟部及び下桟部を斜めにさせる構成となっている。
【0004】
しかしながら、上記フェンスにおいては、枠体に外部応力が作用して、縦部材に対し上桟部及び下桟部が直交する状態に近づくと、取付孔の2箇所で縦部材を挟持する力が弱くなって縦部材を確実に保持することが困難になるという難点があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、外部応力が作用しても縦部材を確実に保持することができるフェンス及びフェンス構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係るフェンスは、平行かつ水平な複数の桟と平行な複数の縦部材とが、ほぼ直交する状態に設けられる格子状のフェンスであって、前記複数の桟の少なくとも1つが、前記縦部材を通すための縦部材通し孔を有する枠体と、前記枠体の内部に枠体長手方向へスライド可能に設けられ前記縦部材が内部を通る縦部材固定孔を有するスライド部材と、前記スライド部材を前記枠体に対してスライドさせて前記縦部材を前記縦部材固定孔により固定するスライド固定手段とを具備してなり、前記縦部材固定孔は縦部材の外径寸法よりも大きい幅寸法の縦部材挿通部と、スライドによる前記縦部材および前記縦部材固定孔のうちの少なくとも一方の変形により前記縦部材の外径寸法とほぼ同じ幅寸法となる縦部材固定部とをスライド方向に有し、スライド固定手段は縦部材挿通部に縦部材を挿通させた状態のスライド部材をスライドさせて縦部材固定部にて縦部材を固定させることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明に係るフェンスは、請求項1に記載のフェンスにおいて、前記スライド固定手段は、前記枠体のスライド部材を挟んで対向する2箇所及び前記スライド部材の対応箇所を1組として1または複数組設けたボルト挿通孔と、各組のボルト挿通孔を貫通するボルトと、前記枠体の外側に突出したボルトの先端側に螺着されるナットとを有し、前記枠体に形成した同じ組の2つのボルト挿通孔のうちの1つが長孔に形成されているとともに、枠体の他の1つのボルト挿通孔に対し前記スライド部材に設けたボルト挿通孔がスライド部材のスライド方向に位置がずれることで、各組のボルト挿通孔に挿通させたボルトが棒部材に対して傾斜した姿勢になり、かつ、前記ナットを締め付けていくと傾斜した姿勢から縦部材に対して平行な姿勢へボルトが変化し、これに伴う前記スライド部材のスライドにより縦部材を前記縦部材固定部により固定させる構成となっていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明に係るフェンスは、請求項1に記載のフェンスにおいて、前記スライド固定手段は、前記枠体の端部に枠体とほぼ平行に設けられるとともに前記スライド部材に取付けられていて回動に伴って枠体と平行な方向に前記スライド部材をスライドさせるネジ部材を有することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明に係るフェンスは、請求項2または3に記載のフェンスにおいて、前記枠体の内部にスライド部材を有する桟を3以上備え、そのうちの隣り合う桟が、前記スライド部材をスライドさせる方向を逆にして設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明に係るフェンスは、請求項3に記載のフェンスにおいて、前記ネジ部材が前記枠体の両端部に設けられていて、両ネジ部材に取付けられた前記スライド部材のそれぞれが互いに逆方向へスライドし、両スライド部材の縦部材固定部にて縦部材を挟んで固定させることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明に係るフェンス構造は、請求項1乃至5のいずれか1つに記載のフェンスと、該フェンスを立設する支柱とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による場合には、少なくとも1つの桟が、枠体の内部に設けたスライド部材を有し、そのスライド部材に形成した縦部材固定孔の縦部材挿通部を枠体の縦部材通し孔に一致させると、これら一致した縦部材挿通部及び縦部材通し孔に縦部材を容易に挿通させることができる。そして、スライド固定手段によりスライド部材を枠体に対してスライドさせて縦部材固定部で縦部材を固定すると、外部応力がフェンスに作用しても縦部材を確実に保持することができる。
【0013】
請求項2の発明による場合には、枠体とスライド部材に形成されたボルト挿通孔の位置的にほぼ一致する3つのボルト挿通孔にボルトを挿通させるとそのボルトが棒部材に対して傾斜した姿勢になり、つまり棒部材に対して傾斜した姿勢でボルトを3つのボルト挿通孔に挿通させ得、その後ナットを締めることでボルトが縦部材に対して平行な姿勢へ変化している。この姿勢変化に伴ってスライド部材がスライドし、縦部材が縦部材固定部により固定される。
【0014】
請求項3の発明による場合には、ネジ部材をいずれか一方の方向に回すと、スライド部材のスライドにより縦部材を縦部材固定孔の縦部材固定部が固定する。
【0015】
請求項4の発明による場合には、スライド部材を有する桟のうち、隣り合う桟でのスライド部材のスライド方向が逆であるので、スライド部材の縦部材固定部で固定する方向が前記隣り合う桟で逆になるので、縦部材の保持がより確実になる。
【0016】
請求項5の発明による場合には、2つのスライド部材の縦部材固定部で縦部材の1箇所を両側から挟持して固定するので、1つの桟において縦部材を確実に保持することができる。
【0017】
請求項6の発明による場合には、支柱によりフェンスを立設することができ、また増設することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明を具体的に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るフェンス構造を示す正面図である。
【0020】
このフェンス構造1は、フェンス2と、フェンス2を支える支柱3とを備える。
【0021】
フェンス2は、鉛直方向に並んで複数、この図示例では3つの桟10が平行に設けられるとともに、桟10とは直交する状態に複数、この図示例では19本の縦部材20が平行に設けられた、格子状のものである。
【0022】
図2は桟10の構成を示す断面図である。
【0023】
この桟10は、断面がコの字状をしたチャンネル材11、12、13を組み合わせて構成されていて、最も大きい溝底幅W1のチャンネル材11の開口を下向きにし、中間寸法の溝底幅W2のチャンネル材12の開口を上向きにして重ねて、両チャンネル材11、12の両端を揃えた状態で接続することにより断面が矩形状をした枠体14を形成し、その枠体14の内部に、最も小さい溝底幅W3のチャンネル材13をスライド部材として挿入した構成となっている。上記スライド部材としてのチャンネル材13は、スライド可能となっている。
【0024】
また、縦部材20としては、断面円形または断面矩形の棒状をした部材などが用いられ、本実施形態では例えば円筒状のパイプ材が用いられている。
【0025】
図3は、チャンネル材11の構成を示す図で、(a)はチャンネル材11を溝長方向から見た側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。また、図4は、チャンネル材13の構成を示す図で、(a)はチャンネル材13を溝長方向から見た側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。更に、図5は、チャンネル材12の構成を示す図で、(a)はチャンネル材12を溝長方向から見た側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。更にまた、図6は3つのチャンネル材に設けた各種の孔の位置関係を説明するために用いる図であり、(a)はチャンネル材11を、(b)はチャンネル材13を、(c)はチャンネル材12をそれぞれ示す。
【0026】
枠体14を構成するチャンネル材11とチャンネル材12には、両チャンネル材11、12を接続させるための接続用孔11a、12aが形成され、また縦部材20を通すための縦部材通し孔11b、12bが形成されている。また、両端には、支柱3に固定するための固定孔11c、12cが設けられていて、各固定孔11c、12cよりも中央寄りにボルト挿通孔11d、12dが設けられている。但し、ボルト挿通孔12dは、溝長方向に長い長孔として形成されており、これ以外の孔は全て丸孔に形成されている。
【0027】
なお、接続用孔11aと接続用孔12aとは対応する位置に配され、縦部材通し孔11bと縦部材通し孔12bも、固定孔11cと固定孔12cも、スライド固定孔11dとボルト挿通孔12dもそれぞれ対応する位置に配されている。
【0028】
チャンネル材13には、接続用孔11a、12aに対応する位置に接続用孔13aが設けられ、縦部材通し孔11b、12bに対応する位置に縦部材固定孔13bが、固定孔11c、12cに対応する位置に固定孔13cが、ボルト挿通孔11d、12dに対応する位置にボルト挿通孔13dがそれぞれ設けられている。接続用孔13aは長孔に形成され、縦部材固定孔13bは縦部材20の外径寸法よりも大きい幅寸法の縦部材挿通部13eと、後述する強制スライドによる縦部材20および縦部材固定孔13bのうちの少なくとも一方の変形により縦部材20の外径寸法とほぼ同じ幅寸法となる縦部材固定部13fとをスライド方向に有する。
【0029】
枠体14の内部にチャンネル材13を挿入した状態において、接続用孔11a、12a、13aの位置を揃えてボルト・ナット15で締結することにより、両チャンネル材11、12が接続されて枠体14が形成されるとともに、チャンネル材13は長孔状をした接続用孔13aにボルト・ナット15のボルトが挿通しているので所定範囲内でスライド可能となっている。この状態において、枠体14を形成するチャンネル材11の縦部材通し孔11b、固定孔11c、ボルト挿通孔11dと、チャンネル材12の縦部材通し孔12b、固定孔12c、ボルト挿通孔12dとが上下方向に位置する。なお、接続用孔11a、12a、13aは、それぞれ該当するチャンネル材11、12、13において、長手方向の少なくとも両側に設けられる。但し、長手方向に3箇所以上設けてもよい。
【0030】
この枠体14においては、縦部材通し孔11b、12bは上下方向で一致している。そして、これら縦部材通し孔11b、12bに対して、スライド部材としてのチャンネル材13の縦部材固定孔13bを、縦部材挿通部13eが一致する状態となし、これら縦部材通し孔11b、12bと縦部材固定孔13bの縦部材挿通部13eとに対して縦部材20を上下方向に挿通させる。また、この状態において、ボルト挿通孔11d、12d、13dは、図6及び図7(a)に示すような位置関係となる。つまり、ボルト挿通孔11dに対してボルト挿通孔13dが、枠体14の長手方向に少しずれる。よって、ボルト挿通孔11d、12d、13dにボルト・ナット16のボルト16aを挿通させると、そのボルト16aの螺刻部16bが斜めに傾斜した状態になる。前記螺刻部16bは、ボルト16aの頭部に繋がる軸部の外周に雄ネジが刻設された部分である。
【0031】
そして、そのボルト16aの枠体14から外部に突出した先端部分にナット16cを螺着して締めていくことで、ボルト16aの螺刻部16bが図7(b)に示すように両チャンネル材11、12に対して直交する(縦部材20に対して平行な)姿勢に変化していく。これによりチャンネル材13が強制的にスライドしてボルト挿通孔13dがボルト挿通孔11dと上下方向で一致した位置になる。これに伴って、枠体14の固定孔11c、12cに対してチャンネル材13の固定孔13cが一致する。また、上記チャンネル材13の強制的なスライドにより縦部材20及び縦部材固定孔13bの少なくとも一方が変形し、図8に二点鎖線で示すように縦部材固定部13fにより縦部材20が固定される。ここで、ボルト挿通孔11d、12d、13dと、ボルト・ナット16とは、スライド固定手段を構成する。
【0032】
なお、縦部材20は、図8に一点鎖線で示す状態から実線で示す縦部材挿通部13eまでの範囲において、縦部材挿通部13e及び縦部材通し孔11b、12bに対して縦部材20が挿通される。
【0033】
図9は、支柱3を示す正面図である。
【0034】
この支柱3は、支柱本体4と、その支柱本体4の両側に固定された取付部5とを有する構成となっている。支柱本体4は、例えば水平断面が矩形状をしたもので、下部が地面等に埋設され、フェンス2の高さに応じた高さ寸法に設定されている。取付部5は、例えばコの字状に形成されたもので、対向する2面を平行かつ水平にして背面5bが支柱本体4に取付けられる。この取付部5の対向2面には、固定孔11c、12c、13cに挿通させるボルトを止める取付孔5a、5aが形成されていて、取付孔5a、5aに取付けたボルト・ナット17により、支柱3にフェンス2の桟10が固定される。
【0035】
なお、支柱本体4は、水平断面が矩形状である必要はなく、任意の断面形状であってもよい。また、取付部5は、コの字状である必要はなく、2枚の板を平行な状態で支柱本体4に取付けたものでも、或いは1枚の板を支柱本体4に直交するように取付けたものなどでもよい。
【0036】
したがって、この第1実施形態のフェンス構造にあっては、桟10が、枠体14の内部に設けたスライド部材としてのチャンネル材13を有し、そのチャンネル材13に形成した縦部材固定孔13bの縦部材挿通部13eを枠体14の縦部材通し孔11b、12bに一致させると、これら縦部材挿通部13e及び縦部材通し孔11b、12bに縦部材20を容易に挿通させることができる。そして、スライド固定手段(ボルト挿通孔11d、12d、13d、ボルト・ナット16)によりスライド部材13をスライドさせて縦部材固定部13fで縦部材20を固定すると、外部応力がフェンス2に作用しても縦部材20を確実に保持することができる。また、支柱3によりフェンス2を立設することができ、また増設することもできる。
【0037】
また、第1実施形態による場合には、枠体14とスライド部材13に形成された3つのボルト挿通孔11d、12d、13dにボルト16aを挿通させるとそのボルト16aが縦部材20に対して傾斜した姿勢になり、つまり縦部材20に対して傾斜した姿勢でボルト16aを3つのボルト挿通孔11d、12d、13dに挿通させ得、その後ボルト・ナット16のナットを締めることでボルト16aが縦部材20に対して平行な姿勢へ変化し、この姿勢変化に伴ってスライド部材13がスライドし、縦部材20が縦部材固定部13fにより固定される。
【0038】
(第2実施形態)
図10は第2実施形態に係るフェンス2Aを用いたフェンス構造1Aを示す正面図である。また、図11及び図12はそのフェンス2Aに用いる桟10Aの内部構造を示す正面断面図であり、図11はスライド部材をスライドさせる前の状態を示し、図12はスライド後の状態を示す。更に、図13は桟10Aの内部構造を示す分解斜視図である。
【0039】
このフェンス2Aは、第1実施形態のフェンス2とは異なる桟10Aを有する点で相違する。その桟10Aは、断面が矩形状をした枠体22と、その両端の開口22cを塞ぐ一対の蓋23と、各蓋23のそれぞれに取付けられたボルト・ナット24と、そのボルト・ナット24に取付けられた固定具25と、その固定具25に取付けられたスライド部材26とを有する。蓋23、ボルト・ナット24、固定具25及びスライド部材26は、枠体22の両端の開口22に対し一対として設けられている。
【0040】
枠体22は、図11(b)および図12(b)に示すように断面がコの字状の部材22a、22bを組み合わせて断面矩形状になし、その端部の開口22cを塞ぐように蓋23を取付け、これら蓋23に設けた孔23cと、図14、図15に示すように両部材22a、22bにそれぞれ設けた孔22d、22eとの3つを一致させてネジ23aで止めて形成されている。なお、両部材22a、22bの孔22d、22eを一致させて両部材22a、22bを溶接などで繋ぎ、その両端開口22cに蓋23をネジ23aで止めてもよい。
【0041】
蓋23には、図13に示すようにボルト取付孔23bが形成されていて、そのボルト取付孔23bにはボルト・ナット24が取付けられている。このボルト・ナット24は、ボルト24aとナット24bとを有し、ボルト24aは蓋23のボルト取付孔23bと、L字状をした固定具25の取付孔25aとに通されていて、ボルト24aの先端にナット24bを螺着することで、固定具25が蓋23に取付けられる。
【0042】
更に、固定具25には別の固定孔25bが形成されていて、その固定孔25bに、スライド部材26に設けた固定孔26aを一致させて、両固定孔25b、26aをボルト・ナット27で連結することにより、スライド部材26が固定具25に固定されている。ここで、図16に示すように右側のボルト・ナット24に取付けられたスライド部材26を右側スライド部材26(R)とし、図17に示すように左側のボルト・ナット24に取付けられたスライド部材26を左側スライド部材26(L)とする。
【0043】
上記ナット24bは、枠体22の内面に接触していて、ボルト24aを回動させても回動しない構成となっており、ボルト24aの回動によりナット24bの位置がボルト24aの頭部に対して接離する。これによりスライド部材26が枠体22の内部をその長手方向に沿ってスライドする。このとき、各ボルト・ナット24のナット24bの位置がボルト24aの頭部に対して離れた状態はボルト・ナット24が緩んだ状態で、逆に各ボルト・ナット24のナット24bの位置がボルト24aの頭部に対して接近した状態はボルト・ナット24が締まった状態である。そして、左右のボルト・ナット24が図11に示す緩んだ状態から図12に示す締まった状態になると、右側スライド部材26(R)は右側へスライドし、左側スライド部材26(L)は左側へスライドする。逆に、左右のボルト・ナット24が図12に示す締まった状態から図11に示す緩んだ状態になると、右側スライド部材26(R)は左側へスライドし、左側スライド部材26(L)は右側へスライドする。そして、このボルト・ナット24は、スライド部材26をスライドさせるネジ部材を構成する。
【0044】
図16は右側スライド部材26(R)を示す図であり、図16(a)は側面図、図16(b)は平面図である。また、図17は左側スライド部材26(L)を示す図であり、図17(a)は側面図、図17(b)は平面図である。
【0045】
前記右側スライド部材26(R)には、固定具25に固定されるための固定孔26aの他に、縦部材固定孔26bを有する。この縦部材固定孔26bは、縦部材20の本数と同一の数だけ設けられていて、固定孔26aの側が大径の縦部材挿通部26cとして形成され、固定孔26aとは反対側が小径の縦部材固定部26dとして形成されている。
【0046】
そして、この図16に示す右側スライド部材26(R)の上下と左右を逆にすることで、図17に示す左側スライド部材26(L)として用いられている。
【0047】
このように構成されたフェンス2Aの桟10Aは、縦部材20を固定するものであり、以下のように用いられる。
【0048】
図11に示す左右のボルト・ナット24が緩んだ状態においては、右側スライド部材26(R)の縦部材固定孔26b(R)と、左側スライド部材26(L)の縦部材固定孔26b(L)とは、図18(a)に示すように大径の縦部材挿通部26c同士が重なる状態になり、その重なる孔部に縦部材20が挿通される。
【0049】
その後、図12に示す左右のボルト・ナット24が締まった状態にしていくと、右側スライド部材26(R)の縦部材固定孔26b(R)がA(R)方向にスライドし、左側スライド部材26(L)の縦部材固定孔26b(L)がB(L)方向にスライドしていき、最終的には図18(b)に示すように縦部材20が縦部材固定孔26b(R)の縦部材固定部26dと縦部材固定孔26b(L)の縦部材固定部26dとで挟まれて固定される。
【0050】
そして、左右のボルト・ナット24を締まった状態から緩んだ状態にすることで、縦部材20の固定が解除される。
【0051】
したがって、第2実施形態による場合には、左右のスライド部材26により縦部材20の同一箇所が挟まれて固定されるので、1つの桟10Aにおいて縦部材20を確実に保持することができる。よって、この第2実施形態では、上下方向に3つ並んだ桟10Aの全てを上述した構成としてもよいが、3つの桟10Aの少なくとも1つを上述した構成にしてもよい。
【0052】
なお、第2実施形態のフェンス2Aにおいては、桟10Aの端部を支柱に固定するに際し、スライド部材のスライドに支障を及ぼさないことを条件として、第1実施形態と同様の構成を採用することや、異なる構成を採用するようにしてもよい。
【0053】
また、この第2実施形態においては、1つの桟10Aの内部にスライド部材26が2つ配設される構成としているが、本発明はこれに限らず、1つの桟10Aの内部に1つのスライド部材26をスライド可能に配設した構成としても実施できることは勿論である。この構成において、内部にスライド部材を有する複数の桟が上下方向に配設されている場合には、上下方向で隣り合う桟のスライド部材のスライド方向が逆向きになるようにすることが、縦部材20の保持をより確実にする上で好ましい。このことは、前述した第1実施形態においても同様である。
【0054】
更に、上述した第1、第2実施形態では桟10(又は10A)を3つ設けたフェンス2(又は2A)を例に挙げているが、本発明はこれに限らず、2以上の数量の桟10(又は10A)を有するフェンスとしてもよい。特に、多数の桟10(又は10A)、例えば図19に示すように8個の桟10(又は10A)を有するフェンスとした場合には、強度の向上を図り得るため、縦部材20及び桟10(又は10A)としてより細いものを使用することで軽量化が可能となって、家庭の境界や庭用のフェンスとして用いることが可能になる。
【0055】
更にまた、上述した第1、第2実施形態では隣り合う支柱の間にフェンス2、2Aを1つずつ配設する構成としているが、本発明はこれに限らない。例えば、隣り合う支柱の間に、複数のフェンス2、2Aを、連結部材を介して連結したものを配設する構成としてもよい。前記連結部材としては、隣り合う2つのフェンス2、2Aの桟10、10Aを連結できれば、どのような構成のものでも構わない。例えば、前記支柱3における取付部5の背面5b同士を繋いだ構成のものなどが該当する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフェンス構造を示す正面図である。
【図2】桟の構成を示す断面図である。
【図3】チャンネル材の構成を示す図で、(a)はチャンネル材を溝長方向から見た側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図4】別のチャンネル材の構成を示す図で、(a)はそのチャンネル材を溝長方向から見た側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図5】更に別のチャンネル材の構成を示す図で、(a)はそのチャンネル材を溝長方向から見た側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図6】3つのチャンネル材に設けた各種の孔の位置関係を説明するために用いる図である。
【図7】3つのボルト挿通孔の状態とボルトの傾きとの関係を説明するための図である。
【図8】縦部材と縦部材固定孔との位置関係の説明図である。
【図9】支柱を示す正面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るフェンスを用いたフェンス構造を示す正面図である。
【図11】図10のフェンスに用いる桟の内部構造を示す正面断面図であり、スライド部材をスライドさせる前の状態を示す。
【図12】図10のフェンスに用いる桟の内部構造を示す正面断面図であり、スライド後の状態を示す。
【図13】桟の内部構造を示す分解斜視図である。
【図14】枠体を構成する一方の断面がコの字状部材を示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図15】枠体を構成する他方の断面がコの字状部材を示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図16】右側スライド部材を示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図17】左側スライド部材を示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図18】左右のスライド部材の縦部材固定孔と縦部材との位置関係の説明図である。
【図19】本発明の他の実施形態に係るフェンスを示す正面図である。
【符号の説明】
【0057】
1、1A フェンス構造
2、2A フェンス
3 支柱
10、10A 桟
20 縦部材
14、22 枠体
13 チャンネル材(スライド部材)
11b、12b 縦部材通し孔
11d、12d、13d ボルト挿通孔(スライド固定手段)
13b、26b 縦部材固定孔
13e、26c 縦部材挿通部
13f、26d 縦部材固定部
15 ボルト・ナット
16 ボルト・ナット(スライド固定手段)
24 ボルト・ナット(ネジ部材)
26 スライド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行かつ水平な複数の桟と平行な複数の縦部材とが、ほぼ直交する状態に設けられる格子状のフェンスであって、
前記複数の桟の少なくとも1つが、前記縦部材を通すための縦部材通し孔を有する枠体と、前記枠体の内部に枠体長手方向へスライド可能に設けられ前記縦部材が内部を通る縦部材固定孔を有するスライド部材と、前記スライド部材を前記枠体に対してスライドさせて前記縦部材を前記縦部材固定孔により固定するスライド固定手段とを具備してなり、
前記縦部材固定孔は縦部材の外径寸法よりも大きい幅寸法の縦部材挿通部と、スライドによる前記縦部材および前記縦部材固定孔のうちの少なくとも一方の変形により前記縦部材の外径寸法とほぼ同じ幅寸法となる縦部材固定部とをスライド方向に有し、スライド固定手段は縦部材挿通部に縦部材を挿通させた状態のスライド部材をスライドさせて縦部材固定部にて縦部材を固定させることを特徴とするフェンス。
【請求項2】
請求項1に記載のフェンスにおいて、
前記スライド固定手段は、前記枠体のスライド部材を挟んで対向する2箇所及び前記スライド部材の対応箇所を1組として1または複数組設けたボルト挿通孔と、各組のボルト挿通孔を貫通するボルトと、前記枠体の外側に突出したボルトの先端側に螺着されるナットとを有し、前記枠体に形成した同じ組の2つのボルト挿通孔のうちの1つが長孔に形成されているとともに、枠体の他の1つのボルト挿通孔に対し前記スライド部材に設けたボルト挿通孔がスライド部材のスライド方向に位置がずれることで、各組のボルト挿通孔に挿通させたボルトが棒部材に対して傾斜した姿勢になり、かつ、前記ナットを締め付けていくと傾斜した姿勢から縦部材に対して平行な姿勢へボルトが変化し、これに伴う前記スライド部材のスライドにより縦部材を前記縦部材固定部により固定させる構成となっていることを特徴とするフェンス。
【請求項3】
請求項1に記載のフェンスにおいて、
前記スライド固定手段は、前記枠体の端部に枠体とほぼ平行に設けられるとともに前記スライド部材に取付けられていて回動に伴って枠体と平行な方向に前記スライド部材をスライドさせるネジ部材を有することを特徴とするフェンス。
【請求項4】
請求項2または3に記載のフェンスにおいて、
前記枠体の内部にスライド部材を有する桟を3以上備え、そのうちの隣り合う桟が、前記スライド部材をスライドさせる方向を逆にして設けられていることを特徴とするフェンス。
【請求項5】
請求項3に記載のフェンスにおいて、
前記ネジ部材が前記枠体の両端部に設けられていて、両ネジ部材に取付けられた前記スライド部材のそれぞれが互いに逆方向へスライドし、両スライド部材の縦部材固定部にて縦部材を挟んで固定させることを特徴とするフェンス。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載のフェンスと、
該フェンスを立設する支柱とを有するフェンス構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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