説明

フェーダ操作子及びそれを備えた操作子装置

【課題】設置面積を小さく抑えて、操作感覚と表示部の表示とが直感的に一致するようにでき、かつ、操作の連続的な検出による正確な操作位置の取得が可能なタッチセンス式のフェーダ操作子を提供する。
【解決手段】指による操作位置を検出するタッチセンス式のフェーダ部43と、フェーダ部43による操作位置の検出に基づいてその位置情報を取得する位置情報取得手段と、フェーダ部43に対する操作位置の位置表示を行うための表示部48とを備えたフェーダ操作子40において、表示部48は、フェーダ部43のスライド方向に対する幅方向の中央においてスライド方向に沿って配列された複数の透光性を有する窓部43aと、複数の窓部43aそれぞれに対向して配置された回路基板20上のLED素子23とで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の一部が接近又は接触することで操作される操作位置を検出可能なタッチセンス式のフェーダ操作子、及びそれを備えた操作子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ピアノ及び電子オルガンなどの電子楽器や、ミキサー装置などの音響機器をはじめとする各種の電子機器には、各種の音響効果などの機能選択や音量及び音色などの調節を行うためのスイッチなどの操作子を有する操作子装置が設けられている。また、この種の操作子装置では、各種操作を検出するためのスイッチなどの検出部に加えて、操作状態を視覚的に表示するための発光体を備えた表示部を有している場合が多い。このような操作子装置の従来例として、特許文献1に記載のフェーダ機構がある。
【0003】
特許文献1に記載のフェーダ機構は、機械式のフェーダ機構であり、直線型のスライドボリューム(可変抵抗)あるいはリニアエンコーダをベースとして、指で移動させるためのスライダーノブが取り付けられている。スライダーノブの位置をスライドレール上で動かすことによって変化する抵抗値を読み込み、操作する機器のパラメータを連続的に変化させるために用いられる。このような手動操作により操作された操作量(レベル)を検出し、該検出したレベルに応じて例えば対応する入力チャンネルのフェーダゲインを調節するようになっている。そして、特許文献1に示すフェーダ装置では、表示器を構成するランプが操作子の側部(スライダーノブのスライド方向に対する側部)に配列されている。
【0004】
また、操作子装置の他の従来例として、特許文献2に記載された照光式操作子装置がある。特許文献2に記載の操作子装置は、透明パネルの下面側に設けた操作子部を備え、該操作子部は、隔壁によって形成された凹部を有し、該凹部の中央に光検出用素子を設け、その周囲に該操作子部が選択されたことを表示する照光用素子をそれぞれ配設し、その光検出用素子と照光用素子との間に遮光用筒状体を突設してなるものである。そして、上記操作子部の光検出用素子は、常時上方の光源からの照射光を受光してオン状態になっており、透明パネル上に指が置かれて遮光用筒状体の上部が覆われて照射光が遮られたときにオフ状態となる光スイッチを構成している。このような操作子部を一直線状に複数並べて配列し、透明パネルの上面を当該配列方向に沿って指がスライド移動することで、その動きを連続的に検出するようになっている。
【0005】
また、操作子装置の他の従来例として、特許文献3,4に記載された操作子装置(操作子ユニット)がある。特許文献3,4に記載の操作子ユニットは、一直線状に配列した複数の押釦スイッチと、各押釦スイッチの上記配列方向に対する一方の側部に配置した発光ダイオード(LED)からなる照光部とを備えている。そして、複数の押釦スイッチをその配列方向に沿って指で連続的に操作することで、その動きを検出すると共に、その操作状態を照光部で表示するようになっている。
【0006】
ところが、上記従来の操作子装置には、下記のような課題がある。すなわち、特許文献1,3,4に記載の操作子装置では、表示器が操作部のスライド方向に対する側部に配列されている。このように表示器が操作部の側部に離れて配列されていると、操作部の操作感覚と表示部の表示位置とが直感的に一致し難く、感覚的な操作が行い難いという不都合がある。また、表示器が操作部の側部に離れて配列されていると、その分、操作子装置の幅方向の寸法が大きくなってしまい、その設置面積の小型化の妨げとなる。
【0007】
また、特許文献2に記載の操作子装置では、操作を検出するための光検出手段やスイッチなどからなる操作子部が複数並べて設けられており、それらが配列方向に沿って連続しておらず、いわば飛び石状に配列されている。そのため、指などを直線状に滑らせるスライド操作に対する検出信号が階段状になってしまい、スライド操作を連続的に(滑らかに)検出することができない。
【0008】
また、特許文献2に記載の操作子装置のような光検出手段による操作の検出では、誤検出の頻度が高いという問題がある。そのため、誤検出の頻度を低下させるために変調をかけた信号処理をするのが一般的である。これにより、構成の複雑化、装置のコスト増を招くおそれがある。
【0009】
また、上記のような機械式のスイッチや光検出式の操作子装置に代えて、最近では、指など身体の一部が電極に接近又は接触したことを静電容量の変化で検知するように構成した静電容量センサからなる操作子装置が多く用いられている。このような静電容量センサからなる操作子装置の一例として、特許文献5に示す装置がある。特許文献5に記載の装置では、静電容量センサでスライドする指の位置情報を検出するようになっている。
【0010】
しかしながら、特許文献5に記載の操作子装置は、構造あるいは原理が複雑で装置の大型化につながるおそれがある。また、特許文献5に記載の操作子装置をはじめとする従来の静電容量センサからなる操作子装置においても、指のスライド移動を連続的に検出するように構成したものの場合、検出用の電極を中途で分断して設けているとその検出値が階段状になってしまう。そのために、操作状態を表示するための表示部はセンサ領域の内部に設けることができず、センサ領域の外部に設けることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−323122号公報
【特許文献2】特許3687170号公報
【特許文献3】実開昭61−127524号公報
【特許文献4】特許3209050号公報
【特許文献5】特開2010−286981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作位置の位置表示を行うための表示部を備えていても設置面積を小さく抑えることが可能な構成であって、操作感覚と表示部の表示とが直感的に一致するようにでき、かつ、連続的な検出による正確な操作位置の取得が可能となるタッチセンス式のフェーダ操作子、及びそれを備えた操作子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明にかかるフェーダ操作子は、身体の一部が接近又は接触することで操作される操作位置を検出するタッチセンス式のフェーダ部(43)と、フェーダ部(43)による操作位置の検出に基づいてその位置情報を取得する位置情報取得手段(80)と、フェーダ部(43)に対する操作位置の位置表示を行う表示部(48)と、を備え、フェーダ部(43)は、その面に沿って身体の一部がスライド移動するスライド方向を長手方向とし、短手方向を所定幅とする帯状体で構成され、表示部(48)は、フェーダ部(43)の長手方向と直角をなす幅方向中央において長手方向に沿って配列された複数の透光性を有する窓部(43a)と、複数の窓部(43a)それぞれに対向してフェーダ部(43)の反対側に配置された発光体(23)と、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明にかかるフェーダ操作子によれば、フェーダ部のスライド方向に対する幅方向の中央においてスライド方向に沿って配列された複数の透光性を有する窓部と、複数の窓部それぞれに対向して配置された発光体とを備えて構成されたレベルメータとしての表示部をフェーダ部(センサ領域)の内部に設けているので、フェーダ部に対する操作感覚と表示部の位置表示とを直感的に一致させることが可能となる。それに加えて、表示部をフェーダ部の内部に設けたことで、フェーダ部のスライド方向に対する側部に表示部を設ける従来構成と比較して、フェーダ操作子の幅方向の設置面積を小さく抑えることが可能となる。したがって、本発明にかかるフェーダ操作子を、複数チャンネルが並設されたミキサー装置などの機器の各チャンネルを操作するためのフェーダ操作子として用いた場合、機器のパネル面に並設する複数のフェーダ操作子の設置面積を小さく抑えることができるので、その分、機器の幅寸法の小型化を図ることができる。
【0015】
また、本発明にかかる操作子装置(1)は、ケース(11)内に設置した第1の回路基板(20)上に設けた第1発光体(23a)と、第1の回路基板(20)上の第1発光体(23a)の周囲に形成した接点パターン(21)と、第1発光体(23)及び接点パターン(21)に対向して配置された操作用部品(33)とからなるスイッチ(30a)を複数有してなるスイッチ操作子(30)と、第1の回路基板(20)上に設けた複数の第2発光体(23b)と、複数の第2発光体(23b)それぞれに対応して配設される複数の透孔又は透光部を有する導光体(47)と、導光体(47)を介して第1の回路基板(20)上に設置された第2の回路基板(41)と、第2の回路基板(41)上に設けられて身体の一部が接近又は接触することで操作される操作位置をセンシングするタッチセンス式のフェーダ部(43)と、フェーダ部(43)における導光体(47)の透孔又は透光部に対応する位置に設けた窓部(43a)と、からなるフェーダ操作子(40)と、を備えた操作子装置(1)であって、フェーダ操作子(40)が備える複数の第2発光体(23b)のうち少なくともいずれかは、その周囲に接点パターン(21)が設けられて第1発光体(23a)と同一の構成になっていることで、スイッチ操作子(30)が備える第1の発光体(23a)として兼用可能なものであることを特徴とする。
【0016】
本発明にかかる操作子装置によれば、フェーダ操作子が備える複数の第2発光体のうち少なくともいずれかは、その周囲にスイッチ用の接点パターンが設けられており、当該第2の発光体は、スイッチ操作子の第1発光体として兼用可能なものであるため、1種類の回路基板で、上記のフェーダ操作子とスイッチ操作子の両方を備えた操作子装置と、スイッチ操作子のみを備えた操作子装置の両方に用いることが可能な回路基板を構成することが可能となる。したがって、複数種類の操作子装置において回路基板の共通化を図ることで、部品の種類を少なく抑えることができ、製品の製造効率を高めることが可能となる。
【0017】
また、本発明にかかるフェーダ操作子(1)は、身体の一部が接近又は接触することで操作される操作位置を検出可能なタッチセンス式のフェーダ部(43)と、フェーダ部(43)に設けた操作位置を検出するための電極部(45)と、を備えたフェーダ操作子(40)であって、フェーダ部(43)は、その面に沿って身体の一部がスライド移動するスライド方向を長手方向とする所定幅の帯状であり、電極部(45)は、フェーダ部(43)におけるスライド方向に沿って境界部(Li)を跨いで配列された複数の電極パターン(Mi)を有しており、フェーダ部(43)には、その幅方向の一部に電極パターン(Mi)が形成されていない空白領域(43a)がスライド方向に沿って等間隔で複数設けられており、フェーダ部(43)におけるスライド方向の同一位置(Q)に、空白領域(43a)と境界部(Li)で分割された複数の電極パターン(Mi)との両方が存在することを特徴とする。さらにこの場合、境界部(Li)は、フェーダ部(43)におけるスライド方向に対して傾斜する方向に延びる直線状の境界線であってよい。
【0018】
従来構成の静電容量センサ型のフェーダ操作子では、電極部の途中に電極を形成していない空白領域を設けると、指などが空白領域を跨ぐ際に電極部による検出値が断続的な値となってしまうため、正確な操作位置の検出が不可能となってしまう。これに対して、本発明にかかる上記構成のフェーダ操作子によれば、フェーダ部におけるスライド方向の同一箇所に、空白領域と境界部で分割された複数の電極パターンとの両方が存在するように構成したことで、フェーダ部のスライド方向に沿って移動する指などが空白領域を跨ぐ際に、同時に複数の電極パターンに接するようになる。これにより、隣り合う電極パターン間の境界部でのセンシング値が両方の電極パターンでなだらかに検出されるようになるので、操作位置を検出するための検出値が断続的な値とならずに済む。すなわち、フェーダ部の電極部の一部に電極パターンを形成しない空白領域を設けていても、空白領域と同位置に設けた複数の電極パターンによって、指などによる操作位置の情報を滑らかな連続値として得ることが可能となる。
【0019】
また、本発明は、上記のフェーダ操作子(40)と、身体の一部と電極部(45)との間の静電容量の変化に基づいて操作位置を取得するための回路を有する位置情報取得手段(80)と、を備えた操作子装置(1)であって、位置情報取得手段(80)は、電極部(45)が備える各電極パターン(Mi)に対する身体の一部の接近又は接触を該電極パターン(Mi)の静電容量の変化によって検出する静電容量型の検出手段(90)と、身体の一部と複数の電極パターン(Mi)それぞれとの間で検出された静電容量を加重平均して得られる加重平均値(P)を算出する加重平均値算出手段(87)と、を備え、加重平均値算出手段(87)で算出した各電極パターン(Mi)の静電容量の加重平均値に基づいて操作位置を取得するものであってよい。
【0020】
この構成によれば、フェーダ部(43)のスライド方向の同一位置に境界部で分割された複数の電極パターンが存在するようにしたことに加えて、各電極パターンで検出された静電容量の加重平均値に基づいてフェーダ部の操作位置を取得するようにしたことによって、フェーダ部に対する操作位置(スライド方向の操作位置)を高い精度で取得することが可能となる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかるフェーダ操作子及びそれを備えた操作子装置によれば、表示部をフェーダ部の内部に設けたことで、従来構成と比較して設置面積を小さく抑えることができ、操作感覚と表示部の表示とを直感的に一致させることが可能であり、かつ、フェーダ部に対する操作位置の連続的な検出による正確な操作位置の取得が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるフェーダ操作子を備えた楽曲データ入力装置の外観構成を示す斜視図である。
【図2】楽曲データ入力装置の構成部品を示す分解斜視図である。
【図3】回路基板上に設けたスイッチ接点パターン及びLED素子を示す部分拡大図である。
【図4】フェーダ基板及びその周辺部品を示す図で、(a)は、フェーダ基板を上面側から見た斜視図、(b)は、フェーダ基板を下面側から見た斜視図である。
【図5】フェーダ部の詳細構成を示す図で、(a)は、フェーダ部の平面図、(b)は、(a)のX−X矢視断面を示す図、(c)は、電極部の側断面図である。
【図6】操作検出回路の概略構成を示すブロック図である。
【図7】楽曲データ入力装置におけるフェーダ操作子の操作に対する処理フローを示す図である。
【図8】楽曲データ入力装置のハード構成例を示すブロック図である。
【図9】楽曲データ入力装置による処理フロー(メインルーチン)を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態にかかる楽曲データ入力装置の構成部品を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明にかかる操作子装置の一実施形態である楽曲データ入力装置1の外観構成を示す斜視図である。また、図2は、楽曲データ入力装置1の構成部品を示す分解斜視図である。これらの図に示す楽曲データ入力装置1は、上ケース11及び下ケース15からなる外装ケース10と、外装ケース10の内部に設置した回路基板(第1の回路基板)20と、外装ケース10内の回路基板20上に設けたスイッチ操作子30及びフェーダ操作子40などを備えて構成されている。以下、各構成部品について詳細に説明する。
【0024】
外装ケース10を構成する上ケース11及び下ケース15は、合成樹脂材などで形成された周囲壁(外縁)を有する略長方形の平板状部材である。下ケース15の外縁15aは上方に折曲形成されており、上ケース11(枠体12)の外縁12aは下方に折曲形成されている。上ケース11と下ケース15を上下に重ね合わせ、それらの外縁12a,15a同士を接合して一体化するようになっており、その内部に楽曲データ入力装置1の構成部品である回路基板20、スイッチ操作子30、フェーダ操作子40、金属製の補強板50などを収容するようになっている。
【0025】
また、下ケース15の下面側にはスタンド17が取り付けられている。スタンド17は、下ケース15の下面に対して支点17aを中心に回動可能に取り付けられている。図1に示すように、スタンド17を回動させて下ケース15の下面に対して起こした状態とすることで、スタンド17で下ケース15を斜めに支持し、楽曲データ入力装置1を傾斜させた状態で設置することができる。
【0026】
また、図2に示すように、下ケース15の内面には、回路基板20上の後述するスイッチ接点パターン21に対応する位置に、略円柱状の突起15bが複数形成されている。突起15bは、キートップ部33を介して指で押圧操作される回路基板20上のスイッチ接点パターン21をその下面側から支持するもので、キートップ部33の打撃による回路基板20の変形を防止する機能、及びタッチ出力の検出精度低下を防止するための機能を有している。また、下ケース15の内面における長手方向の外縁15a,15aの近傍には、上ケース11(枠体12)に設けた複数の係合部12cそれぞれに係合する複数の爪片15cが突出形成されている。
【0027】
上ケース11は、その外縁12aが下ケース15の外縁15aと重なる枠体(第1上ケース)12と、枠体12に設けた開口部12e内に設置される略平板状のパネル板(第2上ケース)13との2部品で構成されている。パネル板13は、その外形が枠体12の外形よりも一回り小さい長方形状で、その外縁13aの下面側には、枠体12の開口部12eの内周縁に設けた係合部12bに係合する爪片13bが形成されている。係合部12b及び爪片13bは、複数個ずつが設けられている。係合部12b及び爪片13bによって、パネル板13を枠体12の開口部12eに嵌め込んでスナップイン係合で取り付けることができる。また、パネル板13には、後述する各キートップ部33の操作面(上面)33aを露出させるための複数の透孔(開口部)13fと、ロータリーエンコーダ30cの軸部を挿通させるための透孔(開口部)13hと、フェーダ操作子40のフェーダ部43を露出させるための透孔(開口部)13gとが形成されている。
【0028】
パネル板13に設けた透孔13f,13g,13hの形状、配置、個数は、楽曲データ入力装置1が備えるスイッチ操作子30の各スイッチ30a,30b(後述するパッド状のスイッチ30a及び機能選択用のスイッチ30b)やロータリーエンコーダ30c、フェーダ操作子40の種類及び個数に合わせて設定されている。そして、楽曲データ入力装置1は、その製品バリエーションとして、スイッチ操作子30やフェーダ操作子40の種類及び個数などが互いに異なる複数種類の機種を用意するようになっているが、この場合、下ケース15と上ケース11の枠体12は各機種で共通の形状とし、パネル板13のみの形状を変更することで、複数の機種に対応することが可能である。すなわち、下ケース15と枠体12を共通部品として、パネル板13の形状、及びスイッチ操作子30やフェーダ操作子40の構成を機種に応じて変更する。これにより、少ない種類の部品で複数機種の製造を行うことが可能となる。
【0029】
回路基板20は、下ケース15内に収容可能な略長方形状の外形を有する平板状の硬質基板である。回路基板20上には、スイッチ操作子30の各スイッチ30a,30b用のスイッチ接点パターン(固定接点パターン)21が形成されており、また、ロータリーエンコーダ30cが実装されている。また、回路基板20上には、複数のLED素子(発光体)23が実装されている。LED素子23は、スイッチ操作子30用の第1LED素子(第1発光体)23aと、フェーダ操作子40用の第2LED素子(第2発光体)23bのいずれかである。なお、回路基板20の角部には、上ケース11と下ケース15を固定するためのネジ(図示せず)を挿通させるための挿通孔20hが形成されている。
【0030】
図3は、回路基板20上に設けたスイッチ接点パターン21及びLED素子23を示す図で、回路基板20の部分拡大図である。同図に示すように、回路基板20上に形成されたスイッチ接点パターン21は、複数が所定間隔でマトリクス状に整列配置されている。そして、回路基板20上に実装されたLED素子23のうち、スイッチ操作子30用の第1LED素子23aは、各スイッチ接点パターン21の中心部(内側)に実装されている。なお、同図では、すべてのスイッチ接点パターン21の中心部に第1LED素子23aが実装されているが、これ以外にも、スイッチ接点パターン21の中心部に第1LED素子23aが実装されていないものがあってもよい。また、フェーダ操作子40用の第2LED素子23bは、回路基板20上のフェーダ基板41に対応する位置(図中の点線Yで囲んだ位置)に複数個(図では13個)が一直線状に整列配置されている。
【0031】
そして、複数の第2LED素子23bのうち幾つか(図示するものでは、向かって右側から1番目,5番目,9番目,13番目の4個)は、その周囲にスイッチ接点パターン21が形成されている。この周囲にスイッチ接点パターン21が形成された第2LED素子23bは、スイッチ操作子30用の第1LED素子23aとしても使用可能なものである。なお、本実施形態の楽曲データ入力装置1では、当該LED素子23は、フェーダ操作子40用の第2LED素子23bとして使用しており、その周囲のスイッチ接点パターン21は使用されていない。
【0032】
上記のように、本実施形態では、フェーダ操作子40用の第2LED素子23bの幾つか(図では4個)は、その周囲にスイッチ接点パターン21が設けられており、当該第2LED素子23bは、スイッチ操作子30用の第1LED素子23aとして兼用可能なものである。これにより、回路基板20は、スイッチ操作子30とフェーダ操作子40の両方を備えた本実施形態の楽曲データ入力装置1だけでなく、フェーダ操作子40を備えずにスイッチ操作子30のみを備えた他の構成の楽曲データ入力装置(後述する第2実施形態の楽曲データ入力装置1−2がこれに相当する。)に兼用することが可能なものである。このような構成を採用したことで、複数種類の楽曲データ入力装置1において回路基板20の共通化を図ることができる。したがって、部品の種類を少なく抑えることができ、製品の製造効率を高めることが可能となる。
【0033】
図2に戻り、回路基板20上に設置されるキートップ片31は、合成樹脂製の可撓性を有する板状の部材で、回路基板20上に設けた各スイッチ接点パターン21を押圧するための複数の突起状のキートップ部33と、隣接するキートップ部33同士を連結してなる薄板状の可撓性を有する連結部35とを一体に備えている。各キートップ部33は、各スイッチ接点パターン21に対応する寸法及び形状の小突起からなり、その上面が指などで操作する操作面33aになっており、下面側には、回路基板20上のスイッチ接点パターン21を押圧してオンするための押圧部(図示せず)が設けられている。また、押圧部の中央には、回路基板20上のLED素子23との干渉を防止するための窪みが形成されている。
【0034】
スイッチ操作子30の各スイッチ30a,30bは、上記の回路基板20上に設けた第1LED素子23aと、第1LED素子23aの周囲に形成したスイッチ接点パターン21と、第1LED素子23a及びスイッチ接点パターン21の上方に設置したキートップ部33とで構成されている。
【0035】
図1に示すように、楽曲データ入力装置1が備えるパッド状のスイッチ30aは、パネル板13上に、縦方向及び横方向に沿って複数個ずつがマトリックス状に並列配置されている。これら複数のスイッチ30aは、既述のようにキートップ部33とその下側に設置した回路基板20上のスイッチ接点パターン21とによって、それぞれのスイッチ30aのオン/オフ操作(叩打)、さらには叩いた強さ(操作強度)を検出できるようになっている。各スイッチ30aに対しては、例えばバスドラム、スネアドラム、ロータム、ハイタム、ハイハットクローズ、ハイハットオープンなどのドラム音色を任意に割り当てできるようになっている。したがって、楽曲データ入力装置1からは、最大16種類のドラム音色による演奏が可能な楽曲データを生成することが可能となっている。また、機能選択用のスイッチ30bは、それぞれが、音色バンクを切り替える機能、各種の「設定モード」に入る機能、各種の「設定モード」から抜ける機能、動作モードを切り替える機能、パラメータ値を編集する機能など所定の機能を受け持つものである。
【0036】
補強板50は、下ケース15内で回路基板20の下面側に設置されている。この補強板50は、下ケース15内に収容可能な略長方形状の外形を有する金属製の平板状部材である。補強板50の長手方向の両端辺50a,50aは、上方に折り曲げられた補強部になっている。また、補強板50における回路基板20上のスイッチ接点パターン21及び下ケース15の突起15bに対応する位置には、下ケース15の突起15bを挿通させて回路基板20の各スイッチ接点パターン21の裏面側に当接させるための透孔53が形成されている。透孔53は、概略T字状の外形を有している。なお、補強板50の角部にも、上ケース11と下ケース15を固定するためのネジ(図示せず)を挿通させるための挿通孔50hが形成されている。
【0037】
次に、フェーダ操作子40の構成について詳細に説明する。図4は、フェーダ操作子40が備えるフェーダ基板41を示す図で、(a)は、フェーダ基板41を上面41a側から見た斜視図、(b)は、フェーダ基板41を下面41b側から見た斜視図である。図5は、フェーダ操作子40の詳細構成を示す図で、(a)は、フェーダ部43の平面図、(b)は、(a)のX−X矢視に対応するフェーダ操作子40の側断面図、(c)は、フェーダ基板41上に設けた電極部45の詳細構成を示す部分拡大側断面図である。
【0038】
フェーダ操作子40は、先の図2に示すように、フェーダ基板(第2の回路基板)41と、フェーダ基板41の上面41aに設けた電極部45を覆う薄板状のカバーシート42と、フェーダ基板41の下面41bに設置された弾性保持体46と、弾性保持体46によって保持されて回路基板20とフェーダ基板41との間に介在する導光体47と、回路基板20上に実装されたLED素子23(第2LED素子23b)とを備えて構成されている。
【0039】
フェーダ基板41は、回路基板20の長手方向の一端辺20aに沿う位置(図2及び図3の点線Yで囲んだ位置)の上部に固定的に設置される略長方形状の硬質基板である。フェーダ基板41の上面41a側には、図4(a)及び図5(a)に示すように、フェーダ操作子40を操作する指の接近又は接触を検出するためのフェーダ部43が設けられている。フェーダ部43は、フェーダ基板41の長手方向に沿う長方形状に形成された電極部45を有しており、該電極部45で指の操作位置を検出するようになっている。
【0040】
電極部45の長手方向に対する幅方向の中央には、長手方向に沿って所定間隔で複数個(図では13個)の窓部(開口部)43aが配列形成されている。窓部43aは、回路基板20上に設置したLED素子23の発光をフェーダ部43に導くための透光性を有する部分である。窓部43aは、本実施形態ではフェーダ基板41に形成した開口からなる。
【0041】
一方、図4(b)に示すように、フェーダ基板41の下面41bには、下方に突出する突起状の枠体からなる弾性保持体46が取り付けられている。この弾性保持体46は、フェーダ基板41の下面41bに接着固定された合成樹脂材など弾性を有する材料からなる部材であって、フェーダ部43の外形に沿う長方形の枠型に形成されている。弾性保持体46には、その上下に貫通する略矩形状の開口46aが形成されており、開口46a内には、導光体47が嵌め込まれて設置されている。導光体47は、透光性を有する透明又は半透明の合成樹脂材などで構成された長尺状の角材であって、図5(b)に示すように、その上面には、フェーダ基板41の窓部43aに嵌合する形状の凸部47aが形成されている。凸部47aは、導光体47の長手方向に沿って各窓部43aに対応する複数個が直線状に配列形成されている。一方、導光体47の下面には、回路基板20上のLED素子23を収容配置するための凹部47bが形成されている。導光体47の各凹部47bは、各凸部47aに対応する位置に形成されている。上記の窓部43aと導光体47と回路基板20上に実装されたLED素子23とで、フェーダ部43の操作位置をLED素子23の発光によって表示する表示部48が構成されている。
【0042】
電極部45が形成されたフェーダ基板41は、多層基板からなる印刷配線基板である。電極部45の幅寸法は、操作する手指の幅の1/2以上の寸法(例えば、1.0〜1.2cm程度)に設定されている。図5(a)に示すように、電極部45は、操作する指がスライド移動する方向(以下、この方向を「スライド方向」という)に沿って、複数の電極パターンM1,M2,・・・M6が連続的に並設されている。隣り合う電極パターンM1,M2・・・間には、細帯状の境界部(仕切部)L1,L2・・・が設けられている。図5(c)の部分拡大側断面図に示すように、電極パターンMiは、回路基板20上に銅箔45aを貼着して形成された部分であり、境界部Liは、回路基板20上の銅箔45aを除去(エッチング:etching)した部分である。さらに、電極パターンMiと境界部Liの上面をレジストする絶縁体からなるレジスト層44で被着し、さらにその上面をカバーするカバーシート42を貼着して覆った構成である。
【0043】
境界部L1,L2・・・は、スライド方向に対して斜めに傾斜する直線状の境界線が複数回折り返された形状で、複数個の山部と谷部が連続して形成された略M字型である。従って、境界部L1,L2・・・は、スライド方向の同一位置(例えば、図5(a)に示す位置Q)では複数本が存在するようになる。即ち、スライド方向の一箇所を横切る同一位置では隣り合う2つの電極パターンM1とM2,M2とM3・・・の両方が存在する(図示部では、位置Qに電極パターンM3とM4が存在する)ように構成している。さらに、その位置には、電極パターンM1,M2・・・が形成されていない空白領域である窓部43aが設けられている。すなわち、フェーダ部43におけるスライド方向の同一位置Qに、空白領域である窓部43aと境界部L3で分割された複数の電極パターンM3,M4との両方が存在している。
【0044】
このように、電極部45は、スライド方向に沿って連続的に設けられた帯状検出部となる。即ち、この検出部によって静電誘導原理にて接近又は接触する指の位置情報(スライド方向の位置情報)を取得可能にしている。この検出原理及び検出回路の詳細については後述する。
【0045】
また、カバーシート42は、薄板状フィルムの合成樹脂材で形成され、黒色材料で形成される。このカバーシート42は、波長の短い光は透過せず、窓部43aの下方にある長波長光を出す赤色発光のLED素子23が発光され、カバーシート42に照射された場合には、その赤色光を上面側に透過するようになっている。
【0046】
上記の構成部品を備えるフェーダ操作子40は、図5(b)に示すように、回路基板(第1の回路基板)20上に実装されたLED素子23の上に弾性保持体46及び導光体47を介してフェーダ基板41が回路基板20とは別体にて支持されている。
【0047】
フェーダ基板41は、予めその下面側に弾性保持体46と導光体47を取り付け、かつ上面側にカバーシート42を取り付けてアッセンブリ化しておく。その状態で、図4(b)に示すフェーダ基板41の下面41bに設けたメス接続端子41cと、図1に示す回路基板20の上面に設けたオス接続端子27とを嵌合接続すると共に、図4(b)に示す導光体47の下面に突出形成された嵌合用の小突起47cを、回路基板20の上面に設けた嵌合孔(図示せず)に圧入固定する。これにより、フェーダ基板41を回路基板20上に固定している。
【0048】
図6は、上記のフェーダ操作子40に対する操作を検出するための操作検出回路(位置情報取得手段)の概略構成を示すブロック図である。同図を用いて、フェーダ操作子40に対する操作(操作位置)の検出について説明する。同図に示す操作検出回路80は、発振周波数fを一定値(一例として250kHz,400kHz等の固定値)に設定した発振器81を備え、フェーダ部43に身体の一部である手の指(以下、単に「指」という。)を接近させる際の指と電極パターンMiとの相対距離に応じて、発振器81の信号レベルの取出量を調整するように構成している。これにより、フェーダ部43のスライド方向における操作位置(タッチ位置)を検出するものである。
【0049】
すなわち、図6に示す操作検出回路80のブロック図において、発振器81は、一定周波数を発生する発振器で、この発振器81の出力は、電極部45の各電極パターンM1〜M6それぞれに対応する操作検出部90−1〜90−6に入力される。ここで、各電極パターンM1〜M6に対応する各操作検出部90−1〜90−6の構成は互いに共通なので、以下では、電極パターンM1に対応する操作検出部90−1についての図示及び説明のみとし、他の操作検出部90−2〜90−6についての図示及び説明は省略する。
【0050】
操作検出部90−1に入力された発振器81の出力は、タッチ検出回路82に入力される。タッチ検出回路82では、入力された発振器81の出力V0を2つの遅延回路82a,82bに入力する。一方の遅延回路82aは、抵抗R1と電極パターンM1とそれを操作する人の指との静電容量(コンデンサー容量)C1とで構成されるRC積分回路であり、他方の遅延回路82aは、抵抗R2とコンデンサーC2とで構成されるRC積分回路である。遅延回路82aは、入力された出力V0の矩形波に対して抵抗値R1とコンデンサー容量C1の積に比例した遅延を与えた波形の出力V1を出力し、遅延回路82bは、入力された出力V0の矩形波に対して抵抗値R2とコンデンサー容量C2の積に比例した遅延を与えた波形の出力V2を出力する。すなわち、遅延回路82aでは、電極パターンM1に指が接近してコンデンサー容量C1が増加する程、より遅れの大きな波形が出力される。そして、遅延回路82aの出力V1と遅延回路82bの出力V2は、EXOR回路(排他的論理和)82cに入力される。EXOR回路82cからは、遅延回路82aから入力した波形と遅延回路82bから入力した波形の位相差を表す波形の出力V3が出力される。このように、発振器81の出力を異なる2種類の積分回路82a,82bに入力し、その2種類の積分回路82a,82bそれぞれから出力された2つの信号の遅延度を比較して、それらの差信号を取り出すことで、電極パターンM1に対する指の接近又は接触の程度に応じたデューティ比の信号(PWM信号)を取り出すこができる。そして、EXOR回路82cから出力された信号を積分回路などからなるレベル検出回路85に入力してレベル値に変換する。これにより、電極パターンM1に対する指の接近度合に応じたレベルの出力値を得ることができる。つまり、ハイレベル状態の割合が多いとき程、レベル検出回路85の出力レベルが大きく出力されるようになっている。
【0051】
このようにして、操作検出部90−1〜90−6では、フェーダ部43の長手方向における指の位置によって、レベル検出回路85の出力レベル値が異なった値でそれぞれ出力される。例えば、分かり易い例として、最大値を100とすると、指の位置が図5(a)のQ位置にあるとすると、電極パターンM3からの出力値が98,電極パターンM2からの出力値が5,電極パターンM4からの出力値が45との各値が出力される。なおこの例は、電極パターンMiの出力値の傾向を説明するためのもので、実測した値ではない。上記のような出力値のレベルに基づいて電極パターンM1〜M6それぞれに対する指の相対位置を検出する。さらに、6個の電極パターンM1〜M6それぞれに対応する6個の操作検出部90−1〜90−6から出力された出力値を加重平均値算出部(加重平均算出手段)87に入力し、当該加重平均値算出部87で各電極パターンM1〜M6に対応する出力値の加重平均値を算出する。そして、この算出した加重平均値に基づいて、フェーダ操作子40の電極部45に対する指の位置(スライド方向の位置)を取得する。加重平均値算出部87での加重平均値の算出手順は、下記に示すようになっている。
【0052】
6個の電極パターンM1〜M6の出力値の加重平均値Pは、下記の式(1)で算出することができる。
P=(0*m1+1*m2+2*m3+3*m4+4*m5+5*m6)/(m1+m2+m3+m4+m5+m6)・・・(式1)
ここで、m1〜m6は、電極パターンM1〜M6の出力値である。
【0053】
続けて、下記の式(2)によって、上記の式(1)で算出した加重平均値Pを所定値Sで割った値PPを算出する。ここでの所定値Sは、Pの最大値PMAXを割った値であるPPMAXが128となるような値である。そして、PPは1〜128のいずれかの値(整数値)である。
PP=P/S・・・(式2)
なお、上記のPPの値の具体例を示すと、式(1)のPの最大値PMAXを「10000〜100000」程度の値に設定し、最小値PMINを「0」に設定することができる。
【0054】
式(2)で算出した値PPをフェーダ部43のスライド方向における操作位置の位置データ(MIDIデータ)として取得する。
【0055】
ここで、上記の各式に数値を入れて計算してみる。分かり易い例として、前記の各値を(式1)に代入する。
P=(0+5+196+135+0+0)/(0+5+98+45+0+0)=336/148≒2.27
つまり、図5(a)のQ位置に指の中心がある場合、P=2.27を出力する。
また、Pの最大値PMAXが出るような指接触があった場合、即ち、電極パターンM6のみに対応する位置(電極部45の右端)に指が接触した場合は、
P=(0+0+0+0+0+500)/(0+0+0+0+0+100)=5
となる。従って、Pは、0〜5の範囲の値を取り得る。上記のようにすることで、フェーダ操作子40の電極部45のスライド方向における指の相対位置を正確に検出することができる。
【0056】
なお、図5(a)に示すようなフェーダ部43の構成上、Pの最大値PMAX=5となるように指を接触させる(即ち、電極パターンM6のみで値が検出されるように接触させる)ことが困難である場合は、Pの最大値PMAXは、例えば4.5〜4.99程度の値となる。その場合でも、Pの最大値が5になる可能性がある以上、Pの最大値を5に設定しなければならない。ただしその場合は、電極部45の右端に指が接触した状態での妥当なP値(例えば、P=4.6)をPの最大値PMAXとみなす補正処理を、後述する図7のステップST2−3とステップST2−4との間に挿入して、その補正処理を行った後のP値でステップST2−4の処理を行うとよい。
【0057】
図7は、フェーダ操作子40に対する操作の検出処理の手順を示すフローチャートである。同図に示すフェーダ操作子40に対する操作の検出処理では、まず、楽曲データ入力装置1の処理モードがフェーダ操作子40に対する操作を受入可能な入力モードであるか否かを判断する(ステップST2−1)。その結果、入力モードでなければ(NO)、以降の処理を進行しない。一方、入力モードであれば(YES)、続けてフェーダ操作子40の電極パターンM1〜M6のいずれかの出力値(対応する操作検出部90−1〜90−6の出力値)が予め設定された所定の閾値以上であるか否かを判断する(ステップST2−2)。その結果、すべての電極パターンM1〜M6に対応する出力値が当該閾値未満であれば(NO)、以降の処理を進行しない。一方、電極パターンM1〜M6いずれかに対応する出力値が当該閾値以上であれば(YES)、6個の電極パターンM1〜M6に対応する出力値の加重平均値Pを上記式(1)で算出する(ステップST2−3)。
【0058】
続けて、上記式(2)によって、式(1)で算出した加重平均値Pを所定値Sで割った値PPを算出する。(ステップST2−4)。そして、式(2)で算出した値PPをフェーダ部43のスライド方向における操作位置の位置データ(MIDIデータ)として、記憶装置(後述するRAM103など)に取り込む(ステップST2−5)。
【0059】
そして、フェーダ部43に対する操作が行われる際には、フェーダ部43のスライド方向に沿って指がスライド移動することでその操作位置が遂次変化するため、上記手順による操作位置情報の算出を繰り返して、操作位置の検出を連続的に行う。また、フェーダ部43に対するスライド操作を検出する際、検出した操作位置に基づいて表示部48の各LED素子23を点灯させることで、操作位置の位置表示を行うようにする。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の楽曲データ入力装置1が備えるフェーダ操作子40は、身体の一部である指が接近又は接触することで操作される操作位置を検出するタッチセンス式のフェーダ部43と、このフェーダ部43による操作位置の検出に基づいてその位置情報を取得するための操作検出回路(位置情報取得手段)80と、フェーダ部43に対する操作位置の位置表示を行うための表示部48とを備えている。そして、フェーダ部43は、その面に沿って身体の一部がスライド移動するスライド方向を長手方向とする所定幅の帯状であって、表示部48は、フェーダ部43の幅方向中央においてスライド方向に沿って配列された複数の透光性を有する窓部43a,43aと、該窓部43aそれぞれに対向してその下方に配置されたLED素子(発光体)23とを備えている。
【0061】
このようなフェーダ操作子40によれば、レベルメータとしての表示部48をフェーダ部43(センサ領域)の内部に設けているので、フェーダ部43に対する操作感覚と表示部48の位置表示とを直感的に一致させることが可能となる。それに加えて、表示部48をフェーダ部43の内部に設けたことで、フェーダ部のスライド方向に対する側部に表示部を設ける従来構成と比較して、フェーダ操作子40の幅方向の設置面積を小さく抑えることが可能となる。
【0062】
また、本実施形態のフェーダ操作子40は、操作位置を検出するための電極部45を備え、操作検出回路80は、指と電極部45との間の静電容量の変化に基づいて操作位置を取得するための操作検出部(回路)90を備えており、これらによって静電容量型の検出手段が構成されている。
【0063】
上記の静電容量型の検出手段は、指の操作に伴って変位する機械的な構造部分が無いため、スイッチや接点パターンなどの機械的な構造部分を有する検出手段と比較して、長期の使用や繰り返しの使用に対する耐久性を高めることができる。したがって、フェーダ操作子40に故障などの不具合が発生する確率を低く抑えることができ、メンテナンスの手間を軽減することができる。
【0064】
また、本実施形態のフェーダ操作子40は、境界部Liがスライド方向に対して傾斜する方向に延設していることで、フェーダ部43におけるスライド方向の同一箇所に複数の電極パターンMiが存在するようになった。それによって、窓部43aをフェーダ部43の幅方向の中央に設けても、各電極パターンMiによる操作位置の検出値がステップ関数的に増減(変化)する値(断続的な値)として出力されることなく、滑らかに増減する連続的な値として出力されるようになる。従って、フェーダ部43による操作位置の検出を正確に行うことができる。即ち、本実施形態では、隣り合う電極パターンMi,Mi間の境界部Liがスライド方向に対して傾斜しているので、例えば、一本の指をフェーダ部43の長手方向に沿ってスライド移動させた場合でも、当該一本の指による操作位置を複数の電極パターンMiで同時にセンシングでき、各電極パターンMiの出力がその重み付け(電極パターンMiへの指の接近度合)に応じた値として出力される。その出力値に基づいて、最大出力の電極パターンMiに対してそれに隣り合う他の電極パターンMiがどの程度の偏差出力を出しているかを判断する。これらを総合した出力は、階段状にならず滑らかに(リニア状に)変化する値となる。したがって、フェーダ部43のスライド方向に対する正確な操作位置を求めることができる。これに対して、例えば特許文献3,4に記載のスイッチタイプの検出手段では、検出値の入力と出力の両方が階段的な値になってしまうため、連続的な出力値を得て正確な位置検出を行うことができない。
【0065】
また、本実施形態のフェーダ操作子40では、窓部43aをフェーダ部43の幅方向中央に設けていても、境界部Liが、フェーダ部43のスライド方向の同一箇所に複数本配設されることになるので、電極パターンMiの出力値が断続的な値(ステップ関数的に増減する値)となることをさらに効果的に防止できる。その結果、このフェーダ操作子40では、より滑らかに変化する出力値を得ることができる。
【0066】
また、フェーダ基板41は、回路基板20とは別部材であって該回路基板20上に固定的に設置され、LED素子23は、回路基板20上の各窓部43aに対応する位置に実装されることにより、フェーダ操作子40の構成要素である電極部45や窓部43aを設けたフェーダ基板41と、回路基板20及びそれに実装されたLED素子23とをあらかじめ別工程で製造し、後からフェーダ基板41を回路基板20上に設置することで、フェーダ部43の内部に表示部48を有してなるフェーダ操作子40を簡単に組み立てることができる。これにより、フェーダ操作子40を備えた電子部品の製造工程の効率化を図ることが可能となる。また、別工程で製造したフェーダ操作子40の構成要素と回路基板20とを予め検品して、問題の無い部品同士を組み立てることで最終的なアセンブリにすることが可能となるので、フェーダ操作子40を備えた電子部品の歩留まりを向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態のフェーダ操作子40では、回路基板20上のLED素子23の上方にフェーダ基板41を支持するための弾性保持体46及び導光体47からなる支持部材を備えている。そして、支持部材を構成している導光体47は、LED素子23の発光を窓部43aへ導くための導光部材としての機能を備えている。
【0068】
この構成によれば、回路基板20上にフェーダ部43を支持するための支持部材とLED素子43の発光をフェーダ部43の窓部43aへ導くための導光部材とを一部品で兼ねることができるので、その分、フェーダ操作子40の部品点数を少なく抑えることができる。
【0069】
また、本実施形態の楽曲データ入力装置(操作子装置)1は、上記のような構成を備えたフェーダ操作子40と、回路基板20上に形成したスイッチ接点パターン21と、スイッチ接点パターン21に対向して配置されたキートップ部(操作用部品)33とからなるスイッチ30aを複数有してなるスイッチ操作子30と、下ケース15と該下ケース15の上部に重ねて設置される上ケース11とからなる外装ケース10とを備えている。そして、回路基板20上のフェーダ操作子40及びスイッチ操作子30を外装ケース10の下ケース15と上ケース11の間に収容している。さらに、回路基板20上に設けたLED素子23は、複数が並べて配列されており、フェーダ部43は、その長手方向が回路基板20上のLED素子23(第2LED素子23b)の配列方向に沿うように回路基板20上に設置されている。
【0070】
また、本実施形態の楽曲データ入力装置(操作子装置)1では、上ケース11は、その縁部12aが下ケース15の縁部15aと重なる枠体(第1上ケース)12と、該枠体12の内側に取り付けられてフェーダ操作子40及びスイッチ操作子30を外装ケース10の外側へ露出させるための開口部13f,13gを有するパネル板(第2上ケース)13とを含んで構成されている。
【0071】
この構成によれば、パネル板13の形状を変更するだけで、形状や回路基板20上の配置構成が異なる複数種類の楽曲データ入力装置に対応可能な外装ケースを構成することができる。これにより、下ケース15及び枠体12や回路基板20を共通の仕様として、パネル板13及びスイッチ操作子30のみの仕様を変更することで、複数種類の楽曲データ入力装置を構成できるようになる。したがって、少ない部品点数で多機種の楽曲データ入力装置の製造が可能となる。
【0072】
また、本実施形態の楽曲データ入力装置1は、ケース11内に設置した回路基板20上に設けた第1LED素子23aと、回路基板20上の第1LED素子23aの周囲に形成したスイッチ接点パターン21と、第1LED素子23a及びスイッチ接点パターン21に対向して配置されたキートップ部(操作用部品)33とからなるスイッチ30aを複数有してなるスイッチ操作子30と、回路基板20上に設けた複数の第2LED素子23bと、複数の第2LED素子23bそれぞれに対応して配設される複数の透孔又は透光部を有する導光体47と、導光体47を介して回路基板20上に設置されたフェーダ基板41と、フェーダ基板41上に設けられたタッチセンス式のフェーダ部43と、フェーダ部43における導光体47の透孔又は透光部に対応する位置に設けた窓部43aとからなるフェーダ操作子40とを備えている。そして、フェーダ操作子40が備える複数の第2LED素子23bのうち少なくともいずれかは、その周囲にスイッチ接点パターン21が設けられて第1LED素子23aと同一の構成にすることで、スイッチ操作子30が備える第1LED素子23aとしても兼用可能できる。
【0073】
これにより、1種類の回路基板20で、フェーダ操作子40とスイッチ操作子30の両方を備えた本実施形態の楽曲データ入力装置1と、スイッチ操作子30のみを備えた後述する第2実施形態の楽曲データ入力装置1−2との両方に用いることが可能な回路基板を構成することが可能となる。したがって、複数種類の楽曲データ入力装置において回路基板の共通化を図ることで、部品の種類を少なく抑えることができ、製品の製造効率を高めることが可能となる。
【0074】
また、本実施形態のフェーダ操作子40によれば、フェーダ部43のスライド方向に沿って移動する指が窓部43aを跨ぐ際に、同時に複数の電極パターンMiに接するようになるので、その操作位置を検出するための検出値が断続的な値とならずに済む。すなわち、フェーダ部43の電極部45の一部に電極パターンMiを形成しない空白領域を設けていても、当該空白領域と同位置に設けた複数の電極パターンMiによって、指による操作位置の情報を滑らかな連続値として得ることが可能となる。
【0075】
また、本実施形態では、フェーダ部43に設けた電極パターンMiが形成されていない空白領域は、フェーダ基板41に形成した開口からなる窓部43aであり、該窓部43aは、LED素子23の発光をフェーダ部43に導くための表示部48の一部である場合を示したが、本発明にかかるフェーダ部の空白領域は、上記のような構成には限定されず、他の構成であってもよい。一例として、詳細な図示は省略するが、フェーダ部の空白領域として、フェーダ基板に設けた窓部と、該窓部内に配置したメンブレン型スイッチとを備えたスイッチ部を配置することが可能である。ここでいうメンブレン型スイッチは、窓部に対応する位置にスペーサを介して所定間隔で設置された二枚のフレキシブル基板(可撓性を有する基板)と、それら二枚のフレキシブル基板の対向する面に形成された一対の接点パターンとを有する構成とすることができる。この場合、フェーダ操作子をそのスライド方向に沿って操作する指が窓部の位置を通過する際、指が上記のメンブレン型スイッチに接触することで、当該スイッチがオンするように構成できる。そして、当該メンブレン型スイッチには、フェーダ操作子に対するスライド操作をその位置でロックする機能などを割り当てておくことが可能である。さらにいえば、フェーダ基板に設けた窓部に設けるスイッチは、上記のメンブレン型スイッチには限らず押釦型スイッチなど他の構成のスイッチであってもよい。
【0076】
また、本実施形態の楽曲データ入力装置1では、フェーダ部43のスライド方向の同一位置に境界部Liで分割された複数の電極パターンMiが存在するようにしたことに加えて、各電極パターンMiで検出された静電容量の加重平均値に基づいてフェーダ部43の操作位置を取得するようにしたことによって、フェーダ部43に対する操作位置(スライド方向の操作位置)を高い精度で取得することが可能となる。
【0077】
すなわち、本実施形態の楽曲データ入力装置1が備えるフェーダ操作子40では、フェーダ部43に設けた複数の電極パターンM1〜M6それぞれと、それらに接近又は接触する指との間に形成される各静電容量の加重平均値を算出し、この加重平均値を用いてフェーダ操作子40のスライド方向における操作位置情報(タッチ位置情報)を得るようにしている。
【0078】
ここで、フェーダ操作子40の好ましい使用態様について簡単に説明する。例えば、本実施形態のフェーダ操作子40は、ミキサー装置におけるトータルボリュームの音量制御を行うための操作子として用いることができる。この場合、リアルタイム制御であれば、算出値PPを記憶装置に取り込むと同時に音源の音量として出力制御する。また、リアルタイム制御でなければ、上記の算出値PPを記憶装置に取り込まずに音源の音量として出力制御する。また、フェーダ操作子40は、音楽データ作成中のスライド操作を行うための操作子として用いることができる。この場合、例えば、ボーカル、ギター、キーボードなど3チャンネルの使用でレコーディング後の編集モードの場合には、ボーカルチャンネルの音量調整にフェーダ操作子40の操作を利用しているのであれば、上記の算出値PPは、当該ボーカルチャンネルの音量が増加又は減少するようにレコーディングデータ(時間データ)と共に記憶装置に再取り込みされる。特に、レコーディング後にボーカルチャンネルのフェードインフェードアウトのような加工を行う場合において、本実施形態の楽曲データ入力装置1のフェーダ操作子40を利用した音量調整を行うようにすると便利である。
【0079】
次に、楽曲データ入力装置1が備える制御回路の構成について説明する。図8は、楽曲データ入力装置1の制御回路の構成を示すブロック図である。同図に示すように、楽曲データ入力装置1は、マイクロプロセッサユニット(CPU)101、リードオンリメモリ(ROM)102、ランダムアクセスメモリ(RAM)103からなるマイクロコンピュータによって制御される。CPU101は、楽曲データ入力装置1全体の動作を制御するものである。このCPU101に対して、バス109介してROM102、RAM103、検出回路104、表示回路106、通信インタフェース(I/F)108がそれぞれ接続されている。
【0080】
ROM102は、CPU101により実行あるいは参照される各種制御プログラムや各種データ等を格納する。RAM103は、CPU101が所定のプログラムを実行する際に発生する各種データなどを一時的に記憶するワーキングメモリとして、あるいは現在実行中のプログラムやそれに関連するデータを一時的に記憶するメモリ等として使用される。RAM103の所定のアドレス領域がそれぞれの機能に割り当てられ、レジスタやフラグ、テーブル、メモリなどとして利用される。
【0081】
操作子105は、各種機能付加や不付加又は設定パラメータの設定を行うもので、本実施形態では、上記のスイッチ操作子30が有するパッド状のスイッチ30a,機能選択用のスイッチ30b、ロータリーエンコーダ30c、及びフェーダ操作子40がこれに該当する。スイッチ操作子30のパッド状のスイッチ30aは、叩く操作の検出に応じて楽曲データを生成するものである。また、機能選択用のスイッチ30bは、タッチ操作の検出に応じて各種情報を出力するものである。検出回路104は、操作子105に対する操作の有無などを検出するもので、これには、フェーダ操作子40の操作を検出する上記の操作検出回路80が含まれている。検出回路104では、上記で説明したフェーダ操作子40に対する操作位置の検出に応じた検出出力を生じるほか、例えば、パッド状のスイッチ30aの押下操作がなされた場合には、オン/オフとその時々の操作強度の検出出力を生じ、機能選択用のスイッチ30bに対して操作が行われた場合には、オン/オフの検出出力を生じる。
【0082】
通信インタフェース(I/F)108は、例えば汎用又は専用の通信ケーブル、あるいはLANやインターネット、電話回線等の有線あるいは無線の通信ネットワークに接続されており、該通信ケーブルや通信ネットワーク等を介して他のコンピュータ(図示せず)と接続され、当該コンピュータとの間で楽曲データや各種信号さらには各種情報を送受信するためのインタフェースである。こうした通信インタフェース108は、有線あるいは無線のものいずれかでなく双方を備えていてよい。そして、楽曲データ入力装置1のスイッチ30aを叩くといった押下操作をすることによって、楽曲制作ソフトウェアプログラムを起動中のコンピュータに対してドラム音色の楽曲データを入力することができる。
【0083】
図9は、楽曲データ入力装置1の操作に対する処理フロー(メインフロー)を示す図である。以下、同図の処理フローに沿って楽曲データ入力装置1の操作に対する処理の手順を説明する。同図に示す処理フローでは、まず、楽曲データ入力装置1の各部の設定が初期化される(ステップST1−1)。その後、モード処理が実行される(ステップST1−2)。このモード処理では、スイッチ操作子30の各スイッチ30a,30bやフェーダ操作子40などに対する操作をどの機能にアサインするかを決定する。次に、第1スイッチ群の操作に対する検出処理を行う(ステップST1−3)。ここでの第1スイッチ群とは、スイッチ操作子30のパッド状のスイッチ30aを指す。次に、第2スイッチ群の操作に対する検出処理を行う(ステップST1−4)。ここでの第2スイッチ群とは、スイッチ操作子30の機能選択用のスイッチ30bを指す。次に、フェーダ操作子40の操作に対する検出処理(フェーダ操作検出処理)を行う(ステップST1−5)。このステップST1−5のフェーダ操作検出処理の指示が発生すると、先に説明した図7に示すフェーダ操作検出処理の処理フロー(サブルーチン)に移動して、その処理が実行される。ステップST1−5のフェーダ操作検出処理が終了したら、ステップST2−2のモード処理に戻る。
【0084】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項については、第1実施形態と同じである。図10は、本発明の第2実施形態にかかる楽曲データ入力装置1−2の構成部品を示す分解斜視図である。
【0085】
本実施形態の楽曲データ入力装置1−2では、第1実施形態の楽曲データ入力装置1が備えていたフェーダ操作子40を省略し、回路基板20上のフェーダ操作子40を設けていた箇所には、フェーダ操作子40に代えて、スイッチ操作子30のパッド状のスイッチ30a及びロータリーエンコーダ30cが増設されている。また、本実施形態の楽曲データ入力装置1−2では、フェーダ操作子40をパッド状のスイッチ30a及びロータリーエンコーダ30cに変更したことによって、パネル板13に形成した透孔13f,13hの形状や配列もそれに合わせて変更している。
【0086】
本実施形態の楽曲データ入力装置1−2に用いる回路基板20は、第1実施形態の楽曲データ入力装置1に用いる回路基板20と共通の構成とすることができる。すなわち、第1実施形態の楽曲データ入力装置1では、既述のように、回路基板20上に設けたフェーダ操作子40用の複数の第2LED素子23bの幾つかは、その周囲にスイッチ接点パターン21が設けられており、当該第2LED素子23bは、スイッチ操作子30用の第1LED素子23aとして兼用可能なものである。したがって、本実施形態の楽曲データ入力装置1−2では、上記の兼用可能な第2LED素子23bに対応する箇所にスイッチ30aを増設している。これにより、第1実施形態の楽曲データ入力装置1に用いる回路基板20を本実施形態の楽曲データ入力装置1−2の回路基板20としてそのまま流用することができる。したがって、複数種類の楽曲データ入力装置1,1−2において回路基板20の共通化を図ることで、部品の種類を少なく抑えることができるので、製品の製造効率を高めることが可能となる。
【0087】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、上ケース11を枠体(第1上ケース)12とパネル板(第2上ケース)13との2部品で構成し、パネル板13のみの仕様を変更することで、操作子の種類や個数が異なる複数機種の楽曲データ入力装置に対応できるように構成した場合を示したが、これ以外にも、図示は省略するが、上ケースを複数部品とせず一部品とし、この一部品である上ケースの形状を変更することで、操作子の種類や個数が異なる複数機種の楽曲データ入力装置に対応できるようにしてもよい。
【0088】
また、第1実施形態のフェーダ操作子40における電極パターンMiの間に設けた境界部Liは、スライド方向に対して斜めに傾斜する直線状の境界線が複数回折り返された形状であるが、本発明にかかるフェーダ操作子の境界部は、スライド方向に対して斜めに傾斜するものには限らず、他の構成であってもよい。例えば、図示は省略するが、境界部をスライド方向に対して平行な直線と直交する方向に延びる直線との組み合わせで略コ字型アの境界として形成するようにしてもよい。そのような形状の境界部によっても、電極部45におけるスライド方向の同一位置に境界部Liで分割された複数の電極パターンMiが存在するようにできる。
【符号の説明】
【0089】
1,1−2・・・楽曲データ入力装置(操作子装置)、10・・・外装ケース、11・・・上ケース、12・・・ 枠体(第1上ケース)、12a・・・外縁、12b・・・小突起、12c・・・係合部、12e・・・開口部、13・・・パネル板、13a・・・外縁、13b・・・爪片、13f,13g,13h・・・透孔、15・・・下ケース、15a・・・外縁、15b・・・小突起、15c・・・爪片、17・・・スタンド、20・・・回路基板(第1の回路基板)、20h・・・挿通孔、21・・・スイッチ接点パターン、23・・・LED素子(発光体)、23a・・・第1LED素子(第1発光体)、23b・・・第2LED素子(第2発光体)、27・・・オス接続端子、30・・・スイッチ操作子、30a・・・(パッド状の)スイッチ(操作子)、30b・・・(機能選択用の)スイッチ(操作子)、30c・・・ロータリーエンコーダ(操作子)、31・・・キートップ片、33・・・キートップ部(操作用部品)、33a・・・操作面、35・・・連結部、40・・・フェーダ操作子、41・・・フェーダ基板(第2の回路基板)、41c・・・メス接続端子、42・・・カバーシート、43・・・フェーダ部、43a・・・窓部(空白領域)、44・・・レジスト層、45・・・電極部、45a・・・銅箔、46・・・弾性保持体、46a・・・開口、47・・・導光体、47a・・・凸部、47b・・・ 凹部、47c・・・小突起、48・・・表示部、50・・・補強板、50a・・・補強部、50h・・・挿通孔、53・・・透孔、80・・・操作検出回路、81・・・発振器、82・・・タッチ検出回路、85・・・レベル検出回路、87・・・加重平均値算出部(加重平均算出手段)、90・・・操作検出部、104・・・検出回路、105・・・操作子、106・・・表示回路、108・・・通信インタフェース、109・・・バス、Mi(M1〜M6)・・・電極パターン、Li(L1〜L6)・・・境界部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の一部が接近又は接触することで操作される操作位置を検出するタッチセンス式のフェーダ部と、
前記フェーダ部による前記操作位置の検出に基づいてその位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記フェーダ部に対する前記操作位置の位置表示を行う表示部と、を備え、
前記フェーダ部は、その面に沿って前記身体の一部がスライド移動するスライド方向を長手方向とし、短手方向を所定幅とする帯状体で構成され、
前記表示部は、前記フェーダ部の前記長手方向と直角をなす幅方向中央において前記長手方向に沿って配列された複数の透光性を有する窓部と、前記複数の窓部それぞれに対向して前記フェーダ部の反対側に配置された発光体と、を備えて構成されている
ことを特徴とするフェーダ操作子。
【請求項2】
前記フェーダ部は、前記操作位置を検出するための電極部を備え、
前記位置情報取得手段は、前記身体の一部と前記電極部との間の静電容量変化に基づいて前記操作位置を取得するための操作検出部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のフェーダ操作子。
【請求項3】
前記電極部は、前記身体の一部がスライド移動するスライド方向に沿って配列された複数の電極パターンを有しており、
隣接する前記電極パターンの間に位置する境界部が前記スライド方向に対して傾斜する方向に延びていることで、前記フェーダ部における前記スライド方向の同一位置に前記窓部及び複数の前記電極パターンが存在するように構成した
ことを特徴とする請求項2に記載のフェーダ操作子。
【請求項4】
第1の回路基板と、
前記電極部が実装されていると共に前記窓部が設けられた第2の回路基板と、を備え、
前記第2の回路基板は、前記第1の回路基板とは別部材であって該第1の回路基板上に固定的に設置されており、
前記発光体は、前記第1の回路基板上における前記窓部に対応する位置に実装された発光素子である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフェーダ操作子。
【請求項5】
前記第1の回路基板上の前記発光素子の上方に前記第2の回路基板を支持するための支持部材を備え、
前記支持部材は、前記発光素子の発光を前記窓部へ導くための導光部材としての機能を備えている
ことを特徴とする請求項4に記載のフェーダ操作子。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のフェーダ操作子と、
前記第1の回路基板上に形成した接点パターンと、前記接点パターンに対向して配置された操作用部品とからなるスイッチを複数有してなるスイッチ操作子と、
少なくとも下ケースと該下ケースの上部に重ねて設置される上ケースとからなる外装ケースと、を備えた操作子装置であって、
前記第1の回路基板上の前記フェーダ操作子及び前記スイッチ操作子を前記外装ケースの前記下ケースと前記上ケースの間に収容し、
前記第1の回路基板上に設けた前記発光素子は、複数が並べて配列されており、
前記フェーダ操作子は、その長手方向が前記第1の回路基板上の前記発光素子の配列方向に沿うように前記第1の回路基板上に設置されている
ことを特徴とする操作子装置。
【請求項7】
前記上ケースは、その縁部が前記下ケースの縁部と重なる枠状の第1上ケースと、該第1上ケースの内側に取り付けられて前記フェーダ操作子及び前記スイッチ操作子を前記外装ケースの外側へ露出させるための開口部を有する第2上ケースとを含んで構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の操作子装置。
【請求項8】
ケース内に設置した第1の回路基板上に設けた第1発光体と、前記第1の回路基板上の前記第1発光体の周囲に形成した接点パターンと、前記第1発光体及び前記接点パターンに対向して配置された操作用部品とからなるスイッチを複数有してなるスイッチ操作子と、
前記第1の回路基板上に設けた複数の第2発光体と、前記複数の第2発光体それぞれに対応して配設される複数の透孔又は透光部を有する導光体と、前記導光体を介して前記第1の回路基板上に設置された第2の回路基板と、前記第2の回路基板上に設けられて身体の一部が接近又は接触することで操作される操作位置をセンシングするタッチセンス式のフェーダ部と、前記フェーダ部における前記導光体の前記透孔又は前記透光部に対応する位置に設けた窓部と、からなるフェーダ操作子と、を備えた操作子装置であって、
前記フェーダ操作子が備える前記複数の第2発光体のうち少なくともいずれかは、その周囲に前記接点パターンが設けられて前記第1発光体と同一の構成になっていることで、前記スイッチ操作子が備える前記第1の発光体として兼用可能なものである
ことを特徴とする操作子装置。
【請求項9】
身体の一部が接近又は接触することで操作される操作位置を検出可能なタッチセンス式のフェーダ部と、
前記フェーダ部に設けた前記操作位置を検出するための電極部と、を備えたフェーダ操作子であって、
前記フェーダ部は、その面に沿って前記身体の一部がスライド移動するスライド方向を長手方向とする所定幅の帯状であり、
前記電極部は、前記フェーダ部における前記スライド方向に沿って境界部を跨いで配列された複数の電極パターンを有しており、
前記フェーダ部には、その幅方向の一部に前記電極パターンが形成されていない空白領域が前記スライド方向に沿って等間隔で複数設けられており、
前記フェーダ部における前記スライド方向の同一位置に、前記空白領域と前記境界部で分割された複数の前記電極パターンとの両方が存在する
ことを特徴とするフェーダ操作子。
【請求項10】
前記境界部は、前記フェーダ部における前記スライド方向に対して傾斜する方向に延びる直線状の境界線である
ことを特徴とする請求項9に記載のフェーダ操作子。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のフェーダ操作子と、
前記身体の一部と前記電極部との間の静電容量の変化に基づいて前記操作位置を取得するための位置情報取得手段と、を備えた操作子装置であって、
前記位置情報取得手段は、前記電極部が備える各電極パターンに対する前記身体の一部の接近又は接触を該電極パターンの静電容量の変化によって検出する操作検出部と、前記身体の一部と前記複数の電極パターンそれぞれとの間で検出された静電容量を加重平均して得られる加重平均値を算出する加重平均値算出手段と、を備え、前記加重平均値算出手段で算出した前記各電極パターンの静電容量の加重平均値に基づいて前記操作位置を取得するものである
ことを特徴とする操作子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−51530(P2013−51530A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188034(P2011−188034)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】