説明

フォイル片を引き延ばす単軸又は2軸式装置

この発明は、望ましくは幅出機を用いて、実質的にポリマー製のフォイル片を単軸又は2軸で引き延ばす装置に関するものである。この装置では、長方形又は正方形のフォイル片を四辺をそれぞれ少なくとも2個の幅出機クリップで掴んで、上側のクリップ部分(11)が引き延ばされるフォイルの外側に配置された回転軸に関節式に軸支されており、下側の固定されたクリップ部分(13)が関節を支持しているのに対して、上側のクリップ部分(11)は上方に回動可能になっている。少なくとも1台のシリンダー(14)を90度回転させて配置して張力を発生させ、この張力を上側の回動可能なクリップ部分(11)にかける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的にポリマー製のフォイル片を引き延ばす、単軸又は2軸式の装置に関するものであり、この装置では、長方形又は正方形のフォイル片の、四辺をそれぞれ少なくとも2個のクリップで掴むように構成されており、ここでは固定されている下側クリップ部分が台架となり、フォイル面に向けて上から垂直に降りて来る上側クリップ部分がフォイルの周縁部を挟み込むようになっている。
【背景技術】
【0002】
上側のクリップ部分が下降する動作と張力をかける動作は、例えば空圧式又は油圧式のシリンダーで行なわれる。
【0003】
挟み込んだフォイルを例えば熱風又は赤外線照射によって加熱した後に、引き延ばし工程を実行するために、4群のクリップは四辺全方向に分散して行く。
【0004】
これらのクリップは、例えば駆動用モーター又は油圧式シリンダーによって動作し、それぞれガイドレール上を移動するようになっている。
【0005】
パンタグラフ・システム(交差型になっており関節で互いに連結された平行に動くアームで構成される写図器のシステム)によって、四辺全てで均等な引き延ばし工程が確実に行われるようにするために、これらのクリップはその動きが同期している(基本原理を図1に示す)。
【0006】
一般的に幅出機として特徴付けられるこのような公知の装置では、例えば100×100ミリメートルの大きさの正方形のフォイル素材の四辺を、それぞれ10乃至12ミリメートル幅のクリップ5個で挟み込むようになっている(図1参照)。
【0007】
フォイルを確実に均等に引き延ばすには、1個のクリップはむしろ幅を狭くして、その代わりに多数のクリップを用いることが必要である。
【0008】
クリップの幅を制限すると、張力をかけるために組み込まれた空圧式又は油圧式シリンダーの大きさも制約を受ける。とりわけ高温に当てるため、空気又はN(窒素)を用いてシリンダーを動作させる必要があり、従って、圧力が一定に制限される。
【0009】
これによって、フォイルの厚さが更に厚くなり、その結果、より大きな引張力が必要な場合、空圧式の拡張シリンダーによる張力が充分でなくフォイルがクリップから摺り出ることがある。
【0010】
別の重要なパラメーターは、フォイルを正確に引き延ばすための挟み込まれたフォイルの加温である。この課題については、垂直に配置された上側のクリップ部分を、組み込まれた拡張シリンダーに連結することが問題である。例えば挟み込まれた80×80ミリメートルのフォイルの正味の平面周縁には、60乃至80ミリメートルの高さで立ち上がるクリップの垂直な壁ができている。この狭い竪穴状の囲いの中で、熱風による又は赤外線照射による加熱が行なわれなければならないが、周縁エリアのフォイルやフォイルを保持しているクリップの均等な加温が確実に行なわれることは保障されていない。
【0011】
従来技術の装置には、次のような欠点がある:
・使用されているクリップの張力は、とりわけ厚いフォイル(例えば、厚さ1.5乃至3ミリメートル)に必要な保持力を確保するには小さすぎる。
・従来技術の装置では、垂直に取り付けられている拡張シリンダーが狭い囲まれた空間を形成してしまい、その中で、例えば熱風又は赤外線光線によって、クリップ・エリア内のフォイル面やクリップ周辺のフォイル、あるいはクリップ自体を均等に加温することが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、このような欠点を克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1に記載の本発明の特徴によって解決される。本発明によれば、クリップ上側部分が、引き延ばすフォイルの外側に位置する回転軸によって関節式に軸支されている。固定されたクリップ下側部分はこの関節を支持しており、一方、クリップ上側部分は上方に回動可能となっており、張力を発生させるシリンダーは90度回って水平方向に配置され、回動可能なクリップ上側部分に張力をもたらす。
【0014】
好ましい一実施例では、水平方向に配置された複数の拡張シリンダーがそれぞれのクリップと同軸にオフセットして配置されていて、隣に配置されたクリップの上に、例えば第1の拡張シリンダーが短継手で第1のクリップに連結されており、第2の拡張シリンダーは第2のクリップに対して同軸に拡張シリンダーの長さ分オフセットされて連結されている。第3の拡張シリンダーも短継手で連結されており、以下同様である。これによって、それぞれの拡張シリンダーに外径の大きいシリンダーを選択することができ、拡張シリンダーの張力を上げることができる。
【0015】
この構成により、例えば各拡張シリンダーの外径を、従来の、クリップの幅と同じである例えば12.5ミリメートルから、例えば19ミリメートルに拡大したシリンダーを装備することが可能である。その結果、真っ直ぐに延びたピストン・コネクティングロッドを用いて同軸に後方にオフセットされた拡張シリンダーが、両脇の短く連結された拡張シリンダーの間を通ることになる。このオフセット配置と、この配置によって可能となった拡張シリンダーの大径化で、張力係数が2.5乃至3と高くなる。
【0016】
多くの利点を持つ本発明による一実施例では、上側のクリップ部分が分割されている。更に多くの利点がある方法として、厚さの異なるフォイルをクリップ面が挟み込む位置を最適にするために、クリップが分割されて、高さを調節できる回動可能なベースハンドルに取り付けられている。
【0017】
多くの利点を持つ本発明の別の実施例では、上側と下側のクリップ部分のフォイルを掴む箇所がクリップ本体の幅より狭くなっており、これによって、フォイルがクリップ部分の間に挟まれるエリアの隣に、次のクリップまでの空間ができる。この空間は、フォイル周縁部やクリップ先端を加熱する熱風又は赤外線照射による熱又は熱媒体によって加熱され、従ってフォイルの内側エリアと同様に集中的に加熱されるようになる。
【0018】
多くの利点を持つ本発明の別の実施例では、回動可能なクリップ部分と対向するクリップ部分が、フォイル原材周囲に空間を確保するために最短の長さとなっていて、この空間がフォイル周縁部とクリップ自体を加熱する熱媒体によってフォイルの内側エリアと同様に集中的に加熱され、これによってフォイル周縁部と把持エリアのクリップを均等に加熱することができる。
【0019】
多くの利点を持つ本発明の別の実施例では、拡張シリンダーを選択的にガス状又は液体状の媒体によって押すか、或いは、電気的駆動源を投入して動力発生とその調整を行う。
【0020】
本発明によって構成された装置は、次の利点を具える。
・フォイルを引き延ばすための張力は、係数で2.5乃至3に強化されており(たとえば空気又は窒素を媒体とした40バールの圧力と同圧での比較時)、これによって非常に強い引き延ばし力がかかるため、厚さ約2乃至3ミリメートルのより強いフォイルも同じように確実に引き延ばすことができる。
・そして、引き延ばされるフォイルの周囲方向におけるより大きくなった空間は、フォイル方向に延在するクリップによって、中央のエリアだけでなくとりわけ縁部まで、クリップをも含めて、より適切にフォイルを加熱することができる。
・幅が狭いクリップは、均等に加熱するとともに、裂け目無く周縁部を引き延ばすことができるクリップ間の空白に対するクリップ幅の比率を最適にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の長所と特徴は、図面及び特許請求の範囲との関連でなされる以下の実施例の説明から明らかになる。
【図1】図1は、従来技術による単軸又は2軸でフォイル片を引き延ばす幅出機の平面図である。
【図2】図2は、図1に示すクリップ群の断面図である。
【図3】図3は、本発明による把持クリップの断面図である。
【図4】図4は、本発明による幅出機を、まだ引き延ばされていないフォイルが挟み込まれた状態の平面図であり、2列になって同軸でオフセットされた拡張シリンダーが示されている。
【図5】図5は、把持クリップ用拡張シリンダーを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、従来技術によるフォイル片を引き延ばす単軸又は2軸の幅出機の平面図である。左下のフォイル片は、引き延ばされていない正方形のフォイル1であり、1辺を5個のクリップで周囲を挟み込んだ初期状態を示している。クリップ2はそれぞれガイドレール3又は4に沿って移動する。
このパンタグラフ・システム6は、フォイルの四辺全てについて均等に引き延ばす工程を確実に行うために、個々のクリップの動きを同期させている。右上側は、フォイル7を引き延ばして互いに離れて行った状態の引き伸ばしフレームを示している。これに相当する幅出機は、本発明による装置と置換えて使用することができる。
【0023】
引き延ばし工程は、1台(又は同期して稼働する別々の2台)の駆動モーター又は油圧シリンダーで行い、これは右のガイドレールを右に向かって動き、同様に上のレール4を上に向かって動く。
【0024】
図2は、図1におけるクリップ群の断面を示している。初期状態のフォイル1は、組み込まれた拡張シリンダーに連結されたクリップ2に挟み込まれている。クリップ2は、ガイドレール3に沿って動き、個々のクリップの動きはパンタグラフ・システム6によって同期する。
フォイルの加温は、上下からの熱風11又は例えば赤外線照射によって行われる。
この組み込まれた状態は、挟み込まれたフォイルを均等に加温することが、中央の空いた領域でも難しく、クリップが有る領域では非常に難しいことを示している。
挟み込まれるフォイルは下方でクリップ保持具のスリット内に押し込まれており、周縁部は上下から完全に覆われている。
【0025】
図3は、本発明による2個の把持クリップの断面を示している。
上側のクリップ部分11は、ここでは挟み込まれるフォイルの外側にあるが、フォイルの基準面付近に位置する回転軸12で関節式に軸支されており、下側の固定されたクリップ部分13がこの関節部を支持している。張力をもたらすシリンダー14は、下側の固定されたクリップ部分の垂直な支台部分に、90度回転して水平方向に固定され、回動可能な上側のクリップ部分に張力をもたらす。
【0026】
クリップ部分と、例えば110ミリメートル幅の未加工状態の挟み込まれたフォイルが、開放状態で暖かい空気もしくは赤外線に晒されて最適に加温できる状態がわかる。
この図は、回動可能な上側のクリップ部分11を分けて示しており、クリップ部分が厚さの異なるフォイルにも最適な状態で適合するように、回動可能な上側のクリップ部分11が前方のクリップ部分15と分かれて、高さの調節ができるようにベースハンドルに取り付けられている状態を示している。
【0027】
図4は、本発明による幅出機の、まだ引き延ばされていないフォイルが挟み込まれた状態での平面図であり、2列になって同軸でオフセットされた拡張シリンダーが共に示されている。
複数の平行に配置されたクリップ(図に示す例では5個)は、クリップ自体と同じ12.5ミリメートル幅の拡張シリンダーが直接平行に並べられており、それで最大となる。
本発明は、水平に隣接して配置された複数の拡張シリンダーが、個々のクリップに対して同軸でオフセットされて配置されていることが特徴であり、例えば、奇数列1、3、5のクリップにそれぞれ拡張シリンダー14が短継手で連結されており、その間に並ぶクリップ2及び4は拡張シリンダー14と入れ替わりに長継手で拡張シリンダー16と、同軸にオフセットされて連結されている。この構成によって、それぞれの拡張シリンダーに明らかに外径が大きいものを選択して、拡張シリンダーの張力を上げることが可能になる。更に、個々の拡張シリンダーは、従来の例えば直径12ミリメートルのもの(クリップの幅と同じ)に代えて、直径19ミリメートルのものを使用することができ、延長されて後方にオフセットされた拡張シリンダーのピストンとのコネクティングロッドは、短く連結された拡張シリンダーの間を通り抜けている。
このようにオフセットされた配置にし、この配置によって可能となった拡張シリンダーの直径の拡大によって、張力係数を2.5乃至3に高めることができる。
【0028】
図4はまた、可動式のクリップ部分15ならびにその下に位置する固定式のクリップ部分13が、フォイルを掴む部分でクリップの全幅よりも細くなるようにしてあり、これによってフォイルがクリップの間で挟まれるエリアの隣に次のクリップまでの間の空間が発生し、この空間はフォイルが内側エリアと同様に縁部でまさに集中的に加熱されるようにしている。
【0029】
図4の矢印方向“A”から見た部分は、例えば圧縮空気を送り込む側から、拡張シリンダーを見たときの状態を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー製のフォイル片(7)を、主に幅出機を用いて単軸又は2軸で引き延ばす装置であって、長方形又は正方形の前記フォイル片の四辺をそれぞれ少なくとも2個のクリップ(15)で掴むように構成した装置において、
上側クリップ部分(11)が引き延ばされるフォイルの外側に位置する回転軸によって関節式に軸支され、固定された下側クリップ部分(13)がこの関節部を支持しているのに対して、上側クリップ部分(11)が上方に回動可能であり、張力をもたらす少なくとも1台のシリンダー(14、16)が90度回転した状態で配置されて、上側の回動可能なクリップ部分(11)に張力をもたらすことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
水平方向に相互に隣接して配置された複数の拡張シリンダー(14、16)は、例えば、第1の拡張シリンダー(14)と第1のクリップに短継手で連結され、第2の拡張シリンダー(16)は、第1の拡張シリンダー(14)と同じ長さ分が同軸にオフセットされて第2のクリップに連結され、第3の拡張シリンダーは第3のクリップに短継手で連結され、以下同様に個々のクリップと同軸でオフセットされて配置されていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置において、
上側のクリップ部分(11)が分割されて、元のクリップ(15)から分かれて高さ調節が可能となるように、回動可能なベースハンドル(11)に取り付けられており、これによってクリップ(15)を挟み込む面の高さを調節可能として、異なる厚さのフォイルに適合可能であることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置において、
上側及び下側クリップ部分(11、13)は、フォイル(7)を掴む部分の幅がクリップ全体の幅よりも狭く、これによって、フォイル(7)のクリップ部分(11、13)で掴まれるクリップ(15)領域においては、隣のクリップまでの間に空間が形成されることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置において、
クリップ(15)の幅が狭くなった部分が、引き延ばされるフォイル(7)の幅よりも明らかに長く、フォイル(7)の外周縁を加熱できることを特徴とする装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−522662(P2012−522662A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502552(P2012−502552)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053205
【国際公開番号】WO2010/115677
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(511237405)ドクター コリン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】DR.COLLIN GmbH
【Fターム(参考)】