説明

フォトクロミックシステム用光吸収層

紫外線暴露により活性化されて可逆的色変化を起こし、その色戻りは、温度に依存する速度で生じるフォトクロミック着色剤を含有する下位層に付着される、光吸収層を含む組成物を提供する。紫外線及び/又は可視光吸収層は、便利には、熱転写又はインクジェットによって、フォトクロミック着色剤を含む基材に適用され、望まないUV及び/又は一定波長の可視光への暴露から基材を保護する。本組成物は、温度時間インジケーター(TTI)において好都合に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フォトクロミック着色剤を含有する下位の基材又は層の上に光吸収層が付着される、フォトクロミック組成物を提供する。このフォトクロミック着色剤は、紫外線暴露により活性化されていて、可逆的色変化を起こすが、色戻り(color reversion)は温度に依存する速度で生じ、色戻りの速度は温度に依存する。光吸収層は、便利には、熱転写又はインクジェットによって、フォトクロミック着色剤を含む基材に適用され、望まない紫外線及び/又は一定波長の可視光への暴露から、基材を保護することができる。
【0002】
フォトクロミック、サーモクロミック及びエレクトロクロミック材料は、すべて公知であり、様々な商業的用途に広く使用されている。これらの「X−クロミック」材料は、特定の刺激物に暴露すると、変色する、すなわち、それらの可視光の吸光度及び透過度を変化させる。例えば、フォトクロミック材料は、一定の波長の光、例えば、紫外線に暴露すると変色し;サーモクロミック材料は、一定量の熱に暴露すると変色し;エレクトロクロミック材料は、一定の電界に暴露すると変色する。
【0003】
これらの材料を特定の刺激に暴露すれば、当然、他の変化、例えば、分子構造、導電率、赤外線吸収率、UV吸収率等の変化が生じるであろう。しかし、これは、観察可能な色の変化であり、フォトクロミック材料の色の変化に影響を与える要素が、本発明における関心事である。
【0004】
フォトクロミック材料、例えば、フォトクロミック染料及び顔料は、特定の波長の光、すなわち、活性な光に暴露すると変色し、その後、それらの波長に暴露されなくなると、元の色に戻る。この色変化は、ある色から別の色へ、もしくは、無着色材料から着色材料へ、又はその逆の場合がある。市販のフォトクロミック材料の1例は、屋外の太陽光のUV成分に暴露すると、色が濃くなり、その後、着用者が紫外線の少ない室内に入るか、日が沈んだり、空が暗くなると無着色状態に戻るメガネである。
【0005】
フォトクロミック材料が活性な光に暴露された場合、色の変化又は色の形成に関連する時間と、元の色への色戻りとの両方に関連する時間がある。特定の条件下での色戻りが生じる時間の長さを知り、その変化の起こる速度に影響する要因を理解することにより、この色変化のプロセスを、時間及び周辺状況の累積的な影響の尺度として使用することができる。
【0006】
例えば、ある物品が、活性な紫外線に暴露されて着色した場合、それが透明な状態に戻るのに、室温で一定の時間を要することが分かっていれば、単にその物品を見ることにより、UV暴露時からその時間が経過したか否かを判断することができる。色戻りが起こっている間に、フォトクロミック材料を活性な紫外線に再び暴露すれば、色戻りに要する時間は、当然延びる。
【0007】
傷みやすい商品の取り扱いをモニターするための、変色又は色形成温度感受性インジケーターは、当分野で周知である。この傷みやすい商品とは、例えば、食料品、医薬品、生物学的物質、化学物質、コーティング組成物、接着剤、化粧品、食品添加物、写真用品及びワクチンである。時間−温度積算インジケーターシステム及び装置も幾つか提案されている。一定の温度で一定の時間保存される物品の、温度及び時間を累積値としてモニターするインジケーターシステム及び装置に対する関心が高まっている。特に、このようなンジケーターシステムは、物品が、過度の温度暴露により、品質が失われるか、安全でない状態に達すると、それを知らせるために使用される。
【0008】
市販の温度時間インジケーターは、TTIとも称される公知のものであり、酵素によるカラーインジケーターを使用しており、保存又は輸送される温度感受性の高い商品の、高温暴露量を示すものである。酵素インジケーターは、モニター期間の開始時点で、プラスチックバブルストリップに圧力を加えることにより活性化され、それにより酵素が放出されて基材とインジケーターとが互いに反応する。一方、重合反応に基づく別のインジケーターシステムは、使用に先立って氷結保存する必要がある。さらに、紙片に沿って拡散する染色ワックスに基づく製品も知られている。
【0009】
最近、このように概念的に単純で、容易に加工可能な時間計測器において、フォトクロミック染料及び顔料のようなUV活性フォトクロミック着色剤を使用することができることが分かった。例えば、あるフォトクロミック着色剤の色戻りが、高温においてどのくらい速く起こるかが分かっており、色戻りの速度を様々な温度プロファイルにわたって計算することができる。このため、活性な光に暴露した後の、フォトクロミック着色剤の変色に与える、時間及び温度の累積的な影響に基づいて、温度時間インジケーター(TTI)を調製することができる。
【0010】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許明細書第7,081,364号は、このようなTTIを開示している。
【0011】
しかし、活性光への暴露後、すなわち、光活性化後は、活性化された顔料が、活性光にさらに暴露されることがないように注意しなければならない。計算された色戻りに要する時間を台無しにしてしまうためである。米国特許明細書第7,081,364号では、最初の活性化のためのUVの照射後に、黄色のセロハンフィルム又は他の黄色のポリマーを適用することによって、TTIを追加的な光の暴露から保護している。この問題に対するよりよい解決法が求められている。
【0012】
この問題は、紫外線暴露により活性化したフォトクロミック着色剤を含有する下位層を保護する光吸収層を提供する本発明により解決される。光吸収層は、便利には、熱転写、ホットスタンプ又はインクジェットプロセスにより、適用され、両プロセスとも、現在の印刷アプリケーションにおいて一般的である。したがって、光吸収層は、色戻りプロセスを、活性光への追加的かつ意図しない暴露によって妨げられることから保護し、これにより、計算された色戻りの温度依存速度の正確性を保証する。
【0013】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許明細書第6,855,666号は、ポリマー結合剤中にヒドロキシフェニルトリアジンUVAを2〜30重量%含む熱転写保護オーバーコートにより、印刷した染料ベースの画像をUVに誘発された退色から保護することを開示している。
【0014】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許明細書第4,522,881号は、UV遮蔽層が熱により紙に転写されている、耐熱性の下地と透明なUV遮蔽層とを含むカバーフィルムを開示している。
【0015】
米国特許明細書第6,855,666号及び米国特許明細書第4,522,881号の両者ともに、紫外線を吸収する積層体を被せることにより、染料ベースの画像を、光による退色から保護する、という常法に関するものである。
【0016】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第2006/0130734号は、TTIインジケーターとしても公知の、印刷の時間−温度積分インジケーターを開示している。このインジケーターは梱包材のような基材に印刷される。このTTIは、基材上の任意の保護層、拡散層、基材上又は保護層上又は拡散層上の薬剤A及び薬剤B、任意の外側の保護層、及び任意の外側の基材層を含んでいる。印刷されたTTIインジケーターは、選択的に、傷みやすい製品の梱包時点、またあるいは傷みやすい製品の開梱時点で、薬剤Aと薬剤Bとを互いに接触させることにより活性化される。
【0017】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許明細書第5,756,356号は、非接触状態にある、酸化重合性染料(薬剤A)と酸化剤(薬剤B)とを提供することを含み、その薬剤A及び/又は薬剤Bが担体(樹脂又は液体媒体であってよい)中に保持されているインジケーター材料、及び時間又は温度時間積算値を色変化として示す方法を開示している。
【0018】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれるEP 1048477では、記録材料を提供している。この材料は、ダイレクトサーマルイメージング装置での使用に適しており、そのダイレクトサーマルイメージング装置は、装置の熱を適用することにより、不活性状態から活性状態へ変換可能な、少なくとも1つのインジケーター化合物を含有している。
【0019】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO 01/64430は、感熱性で傷みやすい製品のユニットに取り付けられるインジケーターシステムを開示している。該インジケーターシステムは、色形成高温印刷組成物と、基材、接着性組成物及びダイレクトサーマルコーティングに適用される第1の組成物と一緒になってその色形成反応を可能にする活性成分を含み、自動接着性又はラベルの形状である、第2の活性な構成要素とを含む自動接着性感熱ラベル紙の使用を含む。
【0020】
発明の概要
本発明は、意図しないフォトクロミック材料の帯電(本明細書では、活性化とも称する)を防止するUV−VIS(紫外線・可視光)防御フィルターとして機能する光吸収層を提供する。フォトクロミック材料の「帯電」又は「活性化」とは、フォトクロミック着色剤を一定の波長のUV又は可視光に暴露することによりもたらされる、可逆的色変化を意味する。
【0021】
光吸収層は、当然、すべての光を遮断しないものの、使用中に下位層が再活性化されることがないように十分な量の活性光を遮断する。この層はまた、光、例えば紫外線及び一定波長の可視光を、例えば、光吸収層の成分により光を吸収したり、反射したり、様々な方法で遮断する。
【0022】
光吸収層は、例えば、デジタル印刷及び、例えば便利には、熱転写、ホットスタンプおよびインクジェット印刷のような他の印刷方法により、感光性材料上に印刷することができる。本発明の有用な特徴は、これらの方法による、感光性材料を含有する基材上への光吸収層の高速インラインアプリケーションを可能にする点である。熱転写印刷又はホットスタンプの場合、UV−VISフィルター組成物をキャリアリボン上にコーティングし、これを次に、熱転写印刷又はホットスタンプにおいてUV−VISフィルター組成物を感光性材料上に送り出すのに使用する。インクジェット式のフィルターの供給において、UV−VISフィルター組成物は、インクジェット印刷ヘッド又はスプレーノズルにより湿式インクとして送り出しされる。
【0023】
発明の詳細な説明
【0024】
紫外線暴露により活性化されて可逆的色変化を起こし、その色戻りは、温度に依存する速度で生じるフォトクロミック着色剤を含有する下位層に付着される、少なくとも1種の、紫外線及び/又は可視光の吸収層を含む組成物であって、光吸収層が、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾオキサゾン、α−シアノアクリラート、オキサニリド、トリス−アリール−s−トリアジン、ホルムアミジン、シンナマート、マロナート、ベンジリデン、サリチラート及びベンゾアート紫外線吸収剤からなる群より選択される紫外線吸収剤の層の全重量に基づき、1〜60重量%の結合剤を含む組成物を提供する。
【0025】
組成物は、時間温度インジケーターとして使用される。
【0026】
好ましくは、光吸収層は、上記の紫外線吸収剤の層の全重量に基づき、30重量%より大きい、例えば35〜60重量%の紫外線吸収剤を含む。
【0027】
光吸収層は、フォトクロミック材料の可逆的色変化が目に見えるように、可視光領域において十分に透明である。
【0028】
光吸収組成物は、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾオキサゾン、α−シアノアクリラート、オキサニリド、トリス−アリール−s−トリアジン、ホルムアミジン、シンナマート、マロナート、ベンジリデン、サリチラート及びベンゾアート紫外線吸収剤の群から選択される1種以上の成分を含んでよい。
【0029】
下位層は、通常基材層である。
【0030】
光吸収層は、典型的には、フォトクロミック着色剤を含有する下位の基材に付着されるが、その着色剤は、すでに活性な紫外線に暴露されている。色戻りは、フォトクロミック着色剤が、紫外線暴露の無いフォトクロミック着色剤の色に戻るプロセスである。このような例では、一般に、フォトクロミック着色剤の紫外線への暴露後、光吸収層をできるだけ速やかに適用するのが望ましい。紫外線の量及び波長は、所定のものであり、かつ存在するフォトクロミック着色剤に依存する。
【0031】
フォトクロミック着色剤を含有する下位の基材自体が、基材に適用した層であってよい。
【0032】
光吸収層における光吸収組成物の量について述べる際、示される重量パーセントは、光吸収層の固体に基づくものである。すなわち、光吸収層の調製において使用される溶媒のような、層の適用と同時又は適用後に蒸発する揮発性物質はいずれも、「層の全量」には含まれない。
【0033】
紫外線吸収剤は、UVAとも称されるが、広く公知の化合物であり、多くは市販されている。光吸収層に存在するUVAの量は、ある程度、層の厚さに依存する。薄い層は、厚い層と同量の紫外線を吸収するのにより高い濃度のUVAを必要とする。典型的には、比較的薄い層が、経済上、保存上、梱包上及び処理上の理由から好まれ、層の全量に基づき35〜60重量%のUVA濃度であれば、薄い層の形状であることができる。
【0034】
例えば、層は、0.1〜1,000ミクロン厚であるが、フィルムは、1〜500ミクロン又は2〜100ミクロン以下が望ましい。例えば、光吸収層は、0.1〜50ミクロン厚である。
【0035】
1つの実施態様においては、光吸収層は、2〜100ミクロン厚であり、層の全量に基づき35〜60重量%のUVAを含有する。
【0036】
光吸収層のもう1つの実施態様において、光吸収層は、0.1〜50ミクロン厚であり、層の全量に基づき約35〜60重量%のUVAを含有する。
【0037】
光吸収層の配合目標は、保護を要する領域全体を光吸収組成物で適切に覆うことにある。被覆量は、最終層、すなわち、すべての処理が完了し、揮発物が除去された光吸収層の光吸収組成物の単位面積当たりの重量である。例えば、低濃度の光吸収組成物を有する厚い層が、高濃度の薄い層の単位面積当たりの重量に匹敵する場合がある。典型的には、光吸収層中の光吸収組成物の単位面積当たりの重量は、0.7g/m2(すなわち、1平方メートル中0.7g)〜5g/m2、例えば0.8g/m2〜4g/m2である。これらの範囲は、本明細書に記載した配合により得ることができる。例えば、付着量2.5〜2.8g/m2を有する1〜4ミクロン厚の薄い層は、層の全量に基づき、30重量%〜35重量%乃至40重量%〜45重量%の光吸収組成物を含有するであろう。
【0038】
本発明において、1層より多い光吸収層を使用することができるが、その複数の光吸収層は、同一の組成物を有するか、又は2つ以上の光吸収層は、異なる組成物を有する。例えば、異なる層は、同一又は異なるポリマー結合剤、同一又は異なるUVA、同一又は異なるUVA濃度を含有してよく、また異なる層が、同一又は異なる厚さであってよい。
【0039】
異なる光吸収層は、また、異なる共添加剤、例えば、染料、顔料又は他の安定剤又は処理助剤、あるいは異なる濃度の共添加剤を含有してもよい。
【0040】
1層以上の光吸収層が存在するとき、一般に、より薄いフィルム、例えば、約0.1〜約50ミクロン厚のフィルムを使用することが望ましい。
【0041】
本発明において有用なUVAは、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾオキサゾン、α−シアノアクリラート、オキサニリド、トリス−アリール−s−トリアジン、ホルムアミジン、シンナマート、マロナート、ベンジリデン、サリチラート及びベンゾアートUVAから選択される。
【0042】
例えば、UVAは、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、α−シアノアクリラート、オキサニリド、トリス−アリール−s−トリアジン又はホルムアミジンUVAを含む。例えば、UVAは、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン及びトリス−アリール−s−トリアジンUVAから選択される化合物を含む。好ましくは、トリス−アリール−s−トリアジンUVAである。
【0043】
1種以上のUVAが存在してよい。UVA及び配合物中の他のいずれの成分も、ポリマー及びコーティング組成物において常法である周知の方法を用いて、結合剤とともに光吸収層配合物に組み込まれる。このような方法は、混合、押し出し、圧縮成形、ブラベンダー溶融加工、射出成形、含浸、懸濁、分散又は溶解を含み、通常使用される方法は、混合、押し出し、ブラベンダー溶融加工、懸濁液、分散体又は溶解を含む。
【0044】
幾つかのフォトクロミック着色剤は、一定波長の可視光、例えば、400〜500nm近くの、高次のエネルギーの可視光に対する感光性を有し、それによって帯電されることができるので、染料及び顔料を光吸収組成物の一部として使用してよい。このような成分を使用する場合も、光吸収組成物の全濃度(UVA及び染料又は顔料を合わせた重量)は、層の全量に基づき、1〜60重量%、例えば、30重量%より大きく、例えば35〜60重量%であることに変わりはない。フォトクロミック着色剤の色変化が、目に見えることもまた不可欠である。
【0045】
例えば、本発明の1実施態様である光吸収組成物も、UVAに加えて、染料、有機顔料、無機着色顔料、金属効果顔料、金属酸化物効果顔料及び非金属酸化物効果顔料から選択され、周知の方法で組み込まれた付加的成分を含有するが、光吸収組成物中のこれら全成分の全重量は、層の全量に基づき、1〜60重量%存在する。
【0046】
光吸収層の結合剤は、天然に存在するワックス又は合成のワックス、ゼラチン、天然ゴム、セルロース、又は、セルロースアセタート、プロピオナート及びブチラートのような、その化学修飾誘導体、メチルセルロースのようなセルロースエーテル、さらにコロホニウム樹脂及び誘導体から選択される化合物を含む。
【0047】
結合剤は、熱可塑性、ゴム弾性、熱硬化性、ゴム弾性、本質的に架橋性又は架橋性のポリマーをさらに含んでよい。このような熱可塑性、ゴム弾性、熱硬化性、ゴム弾性、本質的に架橋性又は架橋ポリマーの例は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアセタート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、PVCのようなハロゲン化ビニルポリマー、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、不飽和ポリアミド、ポリイミド、フッ素化ポリマー、シリコン含有カルバマートポリマー及び混合物並びにそれらのコポリマーを含むがそれらに限定されない。
【0048】
典型的には、結合剤は、熱転写印刷又はインクジェット印刷分野で一般的に使用される結合剤である。
【0049】
光吸収層は、さらに酸化防止剤、ヒンダードアミン類、ホスフィット又はホスホナイト、ベンゾフラン−2−オン、チオシナジスト、ポリアミド安定剤、メタルステアラート、核剤、充填剤、潤滑剤、乳化剤、染料、顔料、分散剤、蛍光増白剤、防炎剤、静電防止剤等又はそれらの混合物のような一般的な添加剤を含んでよい。
【0050】
調製
1つの実施態様において、UV暴露及び光吸収層の適用を含む多工程を有する単一プロセスの高速かつ連続的な実施を可能にすることに直接関わる単一の機械又は複数の機械において生じるその多工程プロセスの一部として、フォトクロミック着色剤を含む基材を活性な紫外線に暴露することと、その後直ちに請求項1又は4に記載の光吸収層を適用することとを含むプロセスにより、請求項1に記載の組成物を調製する。
【0051】
光吸収層を適用した後に下位の基材のフォトクロミック着色剤を帯電する場合は、その帯電光の強度は、光吸収層の遮断力に打ち勝つのに十分高くなければならない。
【0052】
本発明の1実施態様は、熱転写印刷、ホットスタンプ又はインクジェット印刷プロセスによって、光吸収層をフォトクロミック着色剤を含む基材に適用する方法に関する。
【0053】
本明細書において、熱転写印刷とは、画像を、標準の熱転写印字ヘッドによって、インクの付いたフィルムから目的の基材へ直接適用すること、及び、中間体基材に間接転写し、その後、ホットスタンプ又はホットローラーアプリケーションによりその画像を適用することの両方を意味する。
【0054】
光吸収層は、便利には、熱転写又はインクジェットプロセスのような、一般的な印刷方法により適用される。低融点担体、例えば、ワックスとエチレンビニルアセタートとの混合物は、熱転写プロセスに好都合な結合剤である。例えば、本発明の結合剤及びUVAを含む組成物を、PETキャリアリボンのようなキャリアリボンにコーティングし、フォトクロミック着色剤を含む基材上に印刷する。インクジェットプロセスによって適用する場合、結合剤及びUVAは、インクジェットインク及び他のインクジェット配合物において通常そうであるように、水及び/又は有機溶媒のような溶媒を一般に含むことになる液体組成物の一部となる。
【0055】
熱転写又はインクジェットアプリケーションのいずれにおいても、光吸収層を形成する組成物は、それぞれの技術において一般的な任意の他の添加物又は補助剤を、場合により含有してよい。インクジェットアプリケーションに見出される一般的な材料の例は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第2005/0032931に見出される。
【0056】
本発明のもう1つの実施態様は、熱転写リボンをコーティングする、光吸収層の結合剤及びUVAを含む組成物、又は、インクジェットプロセスにおいて有用な、光吸収層の結合剤及びUVAを含む液体組成物に関する。
【0057】
もう1つの実施態様は、請求項1又は4記載の組成物でコーティングした熱転写リボンに関する。
【0058】
もう1つの実施態様は、請求項1又は4に記載の組成物を含む、インクジェット印刷液に関する。
【0059】
さらに、フォトクロミック着色剤を含有する基材を照射することと、その後直ちに本明細書に記載の光吸収層を熱転写又はインクジェットによって適用することとを含む、TTIの調製プロセスを提供する。
【0060】
本明細書の光吸収層及びプロセスの有利な点は、(i)UV活性化並びに(ii)熱転写及び/又はインクジェット印刷の工程が、素早く柔軟に実施できることにより、迅速かつ便利な方法でTTI全体をすぐに使用できる状態にできることである。その方法は、梱包ラインと直接結合することができ、例えば、梱包ラインの速度増大及びTTI活性化のより優れた制御を通じて、効率化及びコスト削減をもたらす。
【0061】
TTIは、便利には、傷みやすい品物を収容する梱包に接着するラベル又はラベルの一部であってよい。
【0062】
TTIは、また、例えば、コーティング又は印刷等で適用することにより、品物又は梱包材の表面に直に形成してもよく、あるいはフォトクロミック着色剤を品物又は梱包材中に組み込み、その着色剤を紫外線に暴露し、所望の色変化を起こし、そして直ちに、つまり現実に可能なかぎり素早く、光吸収層を熱転写又はインクジェットプロセスにより品物又は梱包材上に適用してもよい。
【0063】
フォトクロミック着色剤は、フォトクロミック染料又は顔料である。様々なフォトクロミック染料及び顔料が公知であり、多くが市販されている。選択されるフォトクロミック着色剤は、処理条件に対し、安定でなければならず、UV活性化及び色戻りの両方に関して、予測可能かつ適切な速度を有していなければならない。
【0064】
参照により本明細書に既に組み込まれた米国特許明細書第7,081,364号は、本発明のフォトクロミック着色剤としての価値を有する着色剤の例を開示している。その他の多くのフォトクロミック染料及び顔料が、もちろん公知であり、本明細書に記載の目的に使用してもよい。これらの着色剤を含む組成物を印刷プロセスによって適用することができる。
【0065】
フォトクロミック着色剤として有用な種類の顔料の特定な例は、スピロピランであり、その1例は以下のとおりである:
【化1】

【0066】
本発明は、時間−温度インジケーター又はフォトクロミックインクのような感光性材料を保護するための、UV−VISフィルター組成物(光吸収層)及びUV−VISフィルターの高速インライン印刷を提供する。これらのフィルター組成物は、感光性材料上を覆うフィルターを転写する熱転写、ホットスタンプ、インクジェット印刷又は他の高速インライン方法用のコーティング又はインクであることができる。フォトクロミック時間温度インジケーター(TTI)用フィルターの場合、TTIは、通常帯電され、そしてフィルター(光吸収層)が直ちにTTI上に印刷され、光からTTIを保護する。
【0067】
本光吸収層は、米国特許第6,855,666号の熱転写性保護用オーバーコートに比し、多くの利点を有する。米国特許第6,855,666号は、特定のUV吸収トリアジン化合物を2〜20%含有する保護用オーバーコートを提供するのに対して、本発明は、
−より高レベルのUV吸収剤(最大60重量%)を含有しているので、より薄いフィルム層を可能とし、
−例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等、様々なUV吸収剤を使用し、
−熱転写性保護用オーバーコートに限らず、インクジェット印刷も可能であり、
−保護フィルターの高速インライン転写を提供し、さらに、
−TTI及びフォトクロミックインクのような感光性材料の保護用基材、特に、フォトクロミック顔料を含む基材に適用される層を提供する。
【0068】
今日まで、当分野には、フォトクロミック作用に基づくTTIを保護する有効なUV−VISフィルターがなかった。
【0069】
本発明は、従来技術において実証されているよりも多量のUV吸収剤を、フィルター組成物に組み込むことを可能にする。これは、本UV−VISフィルターが、非常に薄い場合でさえ、優れた保護を提供することを意味し、熱転写、インクジェット及びはるかに実践的なその他の印刷方法によるフィルターの印刷を可能にする。
【0070】
本発明は、容易に製造することができ、基材の印刷との関連で、基材上で直接、かつモニターする最終製品の梱包時点で適切に活性化することができる、確実かつ単純なフォトクロミック時間温度インジケーターの容易な製造を促進する。基材は、ラベル又は梱包材であることができ、プラスチックもしくは他のポリマー、紙、板紙、金属又はガラスを含んでよい。
【0071】
実施例
実施例1
熱転写組成物の形態の光吸収層を調製した。
【0072】
【表1】

【0073】
ELVAX 210は、E.I DuPont de Nemoursから市販されているエチレンビニルアセタート共重合体である。
【0074】
この上記の組成物を混合し、標準的なコーティング及び塗布技術を使用して、PETキャリアリボン上にコーティングし、次に熱転写により、UV−VIS照射に対して感光性を有するインクを含有するラベル上に印刷した。この組成物は、PETキャリアリボン上で、単層構造又は多層構造のいずれかで使用される。
【0075】
CGL 777 MPAは、Ciba Specialty Chemicalsから販売されている、次式の化合物を含むトリス−アリール−s−トリアジンである:
【化2】

【0076】
実施例2
実施例1のラベルに、まず、接着促進層をコーティングし、次にその上に実施例1の組成物を印刷により適用した。
【0077】
実施例3
標準コーティング配合技術により次の組成物を調製し、実施例1又は2に記載のとおり、PETキャリアリボンに塗布し、印刷した。
【0078】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線暴露により活性化されて可逆的色変化を起こし、その色戻りは、温度に依存する速度で生じるフォトクロミック着色剤を含有する下位層に付着される、少なくとも1種の紫外線及び/又は可視光の吸収層を含む組成物であって、光吸収層が、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾオキサゾン、α−シアノアクリラート、オキサニリド、トリス−アリール−s−トリアジン、ホルムアミジン、シンナマート、マロナート、ベンジリデン、サリチラート及びベンゾアート紫外線吸収剤からなる群より選択される紫外線吸収剤の層の全重量に基づき、1〜60重量%の結合剤を含む組成物。
【請求項2】
光吸収層が、0.1〜1,000ミクロン厚である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
光吸収層が、2〜100ミクロン厚であり、層の全量に基づき、35〜60重量%のUV吸収剤を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
光吸収組成物が、染料、有機顔料、無機着色顔料、金属効果顔料、金属酸化物効果顔料及び非金属酸化物効果顔料から選択される付加的成分を含有し、光吸収組成物中のこれら全成分の総量が、層の全重量に基づき1〜60重量%存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
光吸収層が、トリス−アリール−s−トリアジン紫外線吸収剤を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
光吸収層を1種以上含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
フォトクロミック着色剤が、スピロピランである、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
UV暴露及び光吸収層の適用を含む多工程を有する単一プロセスの高速かつ連続的な実施を可能にすることに直接関わる単一の機械又は複数の機械において生じる多工程プロセスの一部として、フォトクロミック着色剤を含む基材を活性な紫外線に暴露することと、その後直ちに請求項1又は4に記載の光吸収層を適用することとを含む、請求項1記載の組成物の調製方法。
【請求項9】
光吸収層が、熱転写、ホットスタンプ又はインクジェットプロセスにより適用される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項1又は4記載の組成物でコーティングした、コーティング済熱転写リボン。
【請求項11】
請求項1又は4記載の組成物を含む、インクジェット印刷用液。
【請求項12】
請求項8記載の温度時間インジケーター調製方法。
【請求項13】
時間温度インジケーターとしての請求項1記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2010−507699(P2010−507699A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533790(P2009−533790)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060987
【国際公開番号】WO2008/049755
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】