説明

フォトサーモグラフィ用途のための化学増感法

ハロゲン化銀粒子上又は粒子の周りの有機硫黄含有化合物の酸化分解によりハロゲン化銀粒子を化学増感することによってフォトサーモグラフィ乳剤を調製する。この手順は独特の工程順を用い、写真スピードおよび製造再現性の向上を提供する。得られたフォトサーモグラフィック乳剤を用いてフォトサーモグラフィ材料を調製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトサーモグラフィ乳剤及び材料中に使用するためのハロゲン化銀粒子を化学増感する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学線によって画像形成され、そして熱を用いて、しかも液体処理なしで現像される銀含有フォトサーモグラフィ画像形成材料(すなわち感光性の熱現像可能な画像形成材料)が長年にわたって当業者に知られている。このような材料は、特定の電磁線(例えばX線、紫外線、可視光、又は赤外線)による像様露光をフォトサーモグラフィ材料に施すことにより画像が形成され、この画像が熱エネルギーの使用により現像されるような記録プロセスにおいて使用される。「ドライシルバー」材料としても知られているこれらの材料は、一般に、下記の(a)〜(d)がコーティングされている支持体を含む:(a)光触媒(すなわちハロゲン化銀のような感光性化合物)、前記露光が施されると露光済粒子に潜像を提供し、これらの粒子が現像工程において銀画像を続いて形成するための触媒として作用することができる、(b)比較的又は完全に非感光性の被還元性銀イオン源、(c)被還元性銀イオンのための還元性組成物(通常は現像剤を含む)、及び(d)親水性又は疎水性のバインダー。この潜像は次いで熱エネルギーを加えることにより現像される。
【0003】
フォトサーモグラフィ材料において、写真ハロゲン化銀に露光を施すと、銀原子を含有する小さなクラスタ(Ag0)nが生成される。潜像として当業者に知られるこれらのクラスタの像様分布は一般に、通常の手段によっては見ることができない。このように感光性材料はさらに現像して可視像を生成しなければならない。このことは、潜像の銀含有クラスタを担持するハロゲン化銀粒子に触媒的に近接している銀イオンが還元されることにより達成される。このことは黒白画像を生成する。非感光性銀源は触媒的に還元されて可視黒白ネガティブ画像を形成するが、これに対して、ハロゲン化銀のほとんどは一般にはハロゲン化銀として残り、還元されない。
【0004】
フォトサーモグラフィ材料において、しばしば「現像剤」と呼ばれる被還元性銀イオンのための還元剤は、潜像の存在において銀イオンを金属銀に還元することができ、そして、反応を引き起こすのに十分な温度に加熱されるまでは好ましくは比較的低活性である任意の化合物であってよい。フォトサーモグラフィ材料のための現像剤として機能する種々様々なクラスの化合物が、文献において開示されている。高温において、被還元性銀イオンは還元剤によって還元される。フォトサーモグラフィ材料において、加熱時にはこの反応は、潜像を取り囲む領域内に優先的に発生する。この反応は、画像形成層内の調色剤及びその他の成分の存在に応じて、黄色から濃い黒までの範囲の色を有する金属銀のネガティブ画像を生成する。
【0005】
フォトサーモグラフィと写真との違い
画像形成の当業者は以前より、フォトサーモグラフィ分野は写真分野とは明らかに区別されることを認識している。フォトサーモグラフィ材料は、水性処理溶液による処理を必要とするコンベンショナルなハロゲン化銀写真材料とは著しく異なる。
【0006】
フォトサーモグラフィ画像形成材料の場合、材料内部に内蔵された現像剤の反応の結果としての熱によって、可視像が形成される。この乾式現像にとっては50℃以上での加熱が必要である。対照的に、コンベンショナルな写真画像形成材料は、可視像を提供するために、より穏やかな温度(30℃〜50℃)の水性処理浴内で処理することを必要とする。
【0007】
フォトサーモグラフィ材料の場合、光を捕らえるためにハロゲン化銀は少量しか使用されず、そして熱現像によって可視像を生成させるために、非感光性の被還元性銀イオン源(例えばカルボン酸銀塩又は銀ベンゾトリアゾール)が使用される。このように、画像形成済感光性ハロゲン化銀は、非感光性の被還元性銀イオン源及び内蔵された還元剤に関与する物理的現像プロセスのための触媒として役立つ。対照的に、コンベンショナルな湿式処理型黒白写真材料は銀の1つの形態(すなわちハロゲン化銀)だけを使用する。この銀形態は、化学的現像時には、それ自体が少なくとも部分的に銀画像に変換され、又は、物理的現像時には、外部銀源(又は、対応する金属に還元されると黒画像を形成する他の被還元性金属イオン)の添加を必要とする。このように、フォトサーモグラフィ材料が必要とする単位面積当たりのハロゲン化銀量は、コンベンショナルな湿式処理型写真材料中に使用される量のわずかな割合にすぎない。
【0008】
フォトサーモグラフィ材料の場合、画像形成のための「化学物質」の全てが、材料自体内部に内蔵される。例えば、このような材料は現像剤(すなわち、被還元性金属イオンのための還元剤)を含むのに対して、コンベンショナルな写真材料は通常これを含まない。フォトサーモグラフィ材料内に現像剤を内蔵することにより、種々のタイプの「カブリ」又はその他の望ましくないセンシトメトリックな副作用の形成が増大するおそれがある。従って、これらの問題を最小限に抑えるべく、フォトサーモグラフィ材料の調製及び製造に多大の努力が為されている。
【0009】
さらに、フォトサーモグラフィ材料の場合、未露光のハロゲン化銀は一般に、現像後に無傷のまま残り、材料はさらに画像形成及び現像に対して安定化されなければならない。対照的に、ハロゲン化銀はコンベンショナルな写真材料からは溶液現像後に除去され、更なる画像形成が防止される(すなわち水性定着工程)。
【0010】
フォトサーモグラフィ材料は乾式熱処理を必要とするので、コンベンショナルな湿式処理型ハロゲン化銀写真材料と比較して、明らかに異なる問題を提示し、そして製造時及び使用時に異なる材料を必要とする。コンベンショナルなハロゲン化銀写真材料において1つの効果を有する添加剤は、基礎となる化学物質が著しく込み入っているフォトサーモグラフィ材料中に内蔵されると、全く異なった挙動を示すことがある。コンベンショナルな写真材料における例えば安定剤、カブリ防止剤、スピード促進剤、超色増感剤、並びに分光増感剤及び化学増感剤のような添加剤を内蔵しても、このような添加剤がフォトサーモグラフィ材料において有益であるか又は有害であるかは予測できない。例えば、コンベンショナルな写真材料において有用な写真カブリ防止剤がフォトサーモグラフィ材料中に内蔵されると種々のタイプのカブリを引き起こすこと、又は、写真材料において効果的な超色増感剤が、フォトサーモグラフィ材料中では不活性であることは珍しいことではない。
【0011】
フォトサーモグラフィ材料と写真材料とのこれらの違い及びその他の違いは、上述のImaging Processes and Materials, (Nebletteの第8版), Unconventional Imaging Processes, E. Brinckman他(編), The Focal Press, London and New York, 1978, 第74-75, Zou他, J. Imaging Sci. Technol. 1996, 40, 第94-103頁、及びM. R. V. Sahyun, J. Imaging Sci. Technol. 1998, 42, 23に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
フォトサーモグラフィ材料の使用における難題の1つは、利用可能な画像形成源と適合するそのような材料において十分なフォトサーモグラフィ・スピードを達成することである。
【0013】
純粋な写真ハロゲン化銀(塩化銀、臭化銀及びヨウ化銀)及び混合型ハロゲン化銀(例えば臭塩ヨウ化銀)のそれぞれは、電磁スペクトルのUV、近UV及び青領域内で、波長(スペクトル感度)及び効率(スピード)の両方において輻射線に対する固有のレスポンスを有する。従って、ハロゲン化銀粒子は、銀原子とハロゲン原子とだけから構成される場合、特定のハロゲンのレベル、結晶の形態(結晶又は粒子の形状及び構造)、結晶の欠陥、応力及び転位、並びにハロゲン化銀の結晶格子内部又は結晶格子上に内蔵されたドーパントに応じて、規定の感度レベルを有する。
【0014】
化学増感(一般に硫黄増感)は、ハロゲン化銀結晶形成中又は形成後に、増感中心[例えば(Ag2S)nのような硫化銀のクラスタ]を個々のハロゲン化銀粒子上に導入するプロセスである。例えば、種々の段階中、又はハロゲン化銀粒子成長完了後に、硫黄付与化合物とハロゲン化銀とを直接的に反応させることにより、硫化銀片を導入することができる。これらの硫化銀片は通常、潜像中心を優先的に形成するための浅い電子トラップとして機能する。他のカルコゲン(Se及びTe)も同様に機能することができる。これらの硫化銀片の存在は、結果として生じるハロゲン化銀粒子の、輻射線に対するスピード又は感度を高める。この目的に有用な硫黄付与化合物は、Sheppard他、J. Franklin Inst., 1923, 第196, 653及び673頁、C. E. K. Mees及びT. H. James, The Theory of the Photographic Process, 第4版, 1977, 第152-3頁、及びTani, T., Photographic Sensitivity: Theory and Mechanisms, Oxford University Press, NY, 1995, 第167-176頁)によって記載されているようなチオスルフェート(例えばナトリウムチオスルフェート)及び種々のチオ尿素(例えばアリルチオ尿素、チオ尿素、トリエチルチオ尿素及び1,1'-ジフェニル-2-チオ尿素)、及び米国第6,368,779号明細書(Lynch他)に記載されている四置換型チオ尿素を含む。
【0015】
フォトサーモグラフィ乳剤の場合、感光性ハロゲン化銀は、非感光性の被還元性銀イオン源とは、触媒的に近接した関係(又は反応するように組み合わされた関係)になければならない。乳剤形成手順及びフォトサーモグラフィ乳剤の化学的な環境が異なるため、コンベンショナルな写真乳剤中の化合物(例えば化学増感剤)によって達成される効果は、フォトサーモグラフィ乳剤においては必ずしも可能ではない。
【0016】
例えば、フォトサーモグラフィ乳剤の場合、2つのタイプの化学増感:(a)予め形成されたハロゲン化銀粒子を化学増感し、次いでこれらの粒子を何らかの様式で、被還元性銀イオンを含有する溶液中に混和する、化学増感、及び(b)被還元性銀イオンと既に密に接触している予め形成されたハロゲン化銀粒子の化学増感を用いることにより、スピードを高めている。
【0017】
第1のアプローチ(a)において、伝統的な方法 (写真乳剤のために用いられる)の多くを用いることができるが、第2のアプローチ(b)の場合には、全く特異的な方法及び独自の化合物がしばしば必要となる。どのアプローチが用いられるかにかかわらず、低いカブリ(Dmin)を維持しつつ、追加のスピードを得ることはかなり困難である。
【0018】
強力な酸化剤、例えば臭化水素酸ピリジニウムペルブロミド(PHP)を添加することにより、米国特許第5,891,615号明細書(Winslow他)に記載されているようなフォトサーモグラフィ乳剤中の予め形成されたハロゲン化銀粒子上又は粒子の周りの硫黄含有分光増感色素を酸化的分解することによって、別の化学増感法が達成される。このとき、ハロゲン化銀粒子上又は粒子の周りの硫黄含有化合物が分解される。この分解に続いて、無機ハロゲン化物化合物を添加することにより、非感光性銀塩の一部がin-situでハロゲン化銀に変換される。
【0019】
フォトサーモグラフィ材料は、消費者、管理者、及び製造者によってもたらされる、性能、貯蔵及び製造に対して増え続ける需要を満たすように絶えず再設計されている。これらの需要の1つは、カブリ(Dmin)の顕著な増大又はDmaxの損失なしにフォトスピードを増大させることである。従って、米国特許第5,891,615号明細書に記載された現行の化学増感法は、フォトサーモグラフィ乳剤の望ましいスピードを提供しているものの、このような乳剤のためのさらに高いフォトスピードを提供する改善された方法が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、(A) 予め形成された感光性ハロゲン化銀及び非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散体を用意し、そして、工程(C)ではなく下記工程(B-1)及び(B-2)を順番に又は同時に実施すること、
(B-1) 前記予め形成されたハロゲン化銀粒子及び前記非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる有機硫黄含有化合物を用意すること、
(B-2) 前記非感光性の被還元性銀イオン源内の被還元性銀イオンのうちのいくつかを、感光性ハロゲン化銀粒子に変換すること、
そして次いで、
(C) 前記ハロゲン化銀粒子上又は粒子の周りの前記有機硫黄含有化合物を酸化性環境内で分解することにより、少なくとも前記予め形成されたハロゲン化銀粒子を化学増感し、これにより前記非感光性の被還元性銀イオン源と反応するように組み合わされた、硫黄で化学増感された感光性ハロゲン化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を提供すること
を含んで成るフォトサーモグラフィ乳剤の製造方法を提供する。
【0021】
好ましい態様の場合、本発明の黒白フォトサーモグラフィ乳剤の製造方法は、
(A) 予め形成された感光性ハロゲン化銀及び非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散体を用意し、そして、下記工程を順番に実施すること、
(B-1) 該予め形成されたハロゲン化銀粒子及び該非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる有機硫黄含有化合物を用意すること、ここで該有機硫黄含有化合物は、下記2つの化合物群のうちの一方から選択される:
a. ロダニン核を含有する1つ又は2つ以上の硫黄含有分光増感色素、及び
b. 下記ジフェニルホスフィンスルフィド化合物PS-1〜PS-19の1つ又は2つ以上:
(B-2) 該非感光性の被還元性銀イオン源内の0.1〜10モル%の被還元性銀イオンを、臭化物塩を添加することにより、感光性臭化銀粒子に変換すること、そして次いで、
(C) 20℃〜30℃で最大60分間にわたって、該ハロゲン化銀粒子に臭化水素酸ピリジニウムペルブロミドを1段階又は2段階以上で添加することによって、該ハロゲン化銀粒子上又は粒子の周りの該有機硫黄含有化合物を分解することにより、少なくとも該予め形成されたハロゲン化銀粒子を化学増感し、これによりベヘン酸銀を含む該非感光性の被還元性銀イオン源と反応するように組み合わさる化学増感された感光性臭化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を提供すること
を含んでなる。
【0022】
本発明はまた、(A) 予め形成された感光性ハロゲン化銀及び非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散体を用意し、そして、工程(C)ではなく下記工程(B-1)及び(B-2)を順番に又は同時に実施すること、
(B-1) 該予め形成されたハロゲン化銀及び該非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる有機硫黄含有化合物を用意すること、
(B-2) 該非感光性の被還元性銀イオン源内の被還元性銀イオンのうちのいくつかを、感光性ハロゲン化銀粒子に変換すること、
そして次いで、
(C) 前記ハロゲン化銀粒子上又は粒子の周りの前記有機硫黄含有化合物を酸化性環境内で分解することにより、少なくとも該ハロゲン化銀粒子を化学増感し、これにより該非感光性の被還元性銀イオン源と反応するように組み合わさる化学増感された感光性ハロゲン化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を提供すること、そして
(D) 工程(A)から(C)までのいずれかと同時に、又は(C)に続いて、バインダーを添加することにより、フォトサーモグラフィ乳剤配合物を形成すること、そして
(E) 工程(D)後、該フォトサーモグラフィ乳剤配合物を支持体上にコーティングして乾燥させることにより、フォトサーモグラフィ画像形成材料を提供すること
を含んでなるフォトサーモグラフィ材料の製造方法を提供する。
【0023】
予め形成されたハロゲン化銀のex-situ調製中、並びにカルボン酸銀塩石鹸分散体の形成中には、不純物が形成される。これらの不純物はカブリ中心として作用し、そして熟成時及び処理時にはDminを高くするおそれがある。これらの不純物は従来より、酸化剤を添加することにより除去される。1つの不純物は、銀(0)の銀原子、クラスタ又は粒子であると考えられる。酸化剤の添加は、銀(0)種を銀(I)に変換することによりこれらのカブリ中心を除去すると考えられる。これらの銀(0)種を臭化銀に変換するために、臭素含有酸化剤がしばしば使用される。
【0024】
米国特許第5,891,615号明細書(上記)には、硫黄含有分光増感色素を酸化的に分解することにより、フォトサーモグラフィ乳剤を化学増感する方法が記載されている。この方法はまた、いくつかのカブリ中心を同時に除去すると考えられる。硫黄含有分光増感色素の分解に続いて、非感光性の被還元性銀イオン源内の銀イオンのうちのいくつかが、ハロゲン化銀に変換される。
【0025】
我々は、酸化剤を添加する前に、非感光性の被還元性銀イオン源内の銀イオンのうちのいくつかをハロゲン化銀に変換すると、フォトサーモグラフィ乳剤の改善された化学増感法が提供されることを見いだした。変換は、フォトサーモグラフィ分散体への1種又は2種以上の有機硫黄含有化合物の添加前、添加後、又は添加と同時に行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
こうして、本発明は、Dmin(カブリ)又はDmaxを著しく損失させることなしに、フォトスピード(「スピード」)が高められ、銀効率が改善され、そして、再現性が改善されたフォトサーモグラフィ乳剤及び材料を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明によって調製されるフォトサーモグラフィ材料は、黒白又はカラーのフォトサーモグラフィ、並びに電子的に生成される黒白又はカラーのハードコピー記録に使用することができる。これらの材料は、マイクロフィルム用途、ラジオグラフィ画像形成(例えばデジタル医療用画像形成)、X線ラジオグラフィ、及び工業用ラジオグラフィにおいて使用することができる。さらに、これらの材料をグラフィックアート分野(例えばイメージセッティング、写真植字)、印刷版の製造、密着印画、複写(「デューピング」)及び校正に使用可能にするために、これらのフォトサーモグラフィ材料の350〜450 nmの吸光度は低い(0.5未満)ことが望ましい。
【0028】
本発明によって調製されるフォトサーモグラフィ材料は、診断に使用するための可視光又はX線に応答して、ヒト又は動物の患者の医学的な画像を形成するのに特に有用である。このような用途の一例としては、胸部画像形成、マンモグラフィ用、歯科用画像形成、整形外科用画像形成、一般医療用ラジオグラフィ、治療用ラジオグラフィ、獣医用ラジオグラフィ、及びオートラジオグラフィが挙げられる。X線と一緒に使用される場合には、本発明のフォトサーモグラフィ材料は、1つ又は2つ以上の燐光増感スクリーンとの組み合わせ、又はフォトサーモグラフィ乳剤内に内蔵された燐光体との組み合わせ、又はこれらの組み合わせで使用することができる。このような材料は歯科用ラジオグラフィに特に有用である。
【0029】
本発明の方法によって調製されるフォトサーモグラフィ材料を、任意の好適な波長の輻射線に対して感光させることができる。従っていくつかの態様の場合、これらの材料は、電磁スペクトルの紫外線、可視光、赤外線、又は近赤外線波長で感光する。好ましい態様の場合、これらの材料は、600 nmを上回る輻射線に対して感光する(例えば600〜1100 nmに対する感度)。特定のスペクトル領域に対する感度は、種々の増感色素を使用することにより高められる。他の態様の場合、これらの材料はX線に対して感光する。X線に対する感度は燐光体の使用によって高められる。
【0030】
本発明の方法によって調製されるフォトサーモグラフィ材料は、可視光又はX線(例えばX線リソグラフィ及び工業用ラジオグラフィ)の非医療用途にも有用である。このような画像形成用途において、フォトサーモグラフィ材料は「両側」型であることがしばしば望ましい。
【0031】
本発明によって調製されるフォトサーモグラフィ材料の場合、画像形成に必要な成分は、支持体の一方の側(「表側」)上の1つ又は2つ以上のフォトサーモグラフィ画像形成層内にあってよい。感光性光触媒(例えば感光性ハロゲン化銀)又は非感光性の被還元性銀イオン源、又はその両方を含有する層を、本明細書においては、フォトサーモグラフィ乳剤層と呼ぶ。光触媒と非感光性の被還元性銀イオン源とは、触媒的に近接した関係(すなわち、互いに反応するように組み合わされた関係)にあり、同じ乳剤層内にあることが好ましい。
【0032】
材料が支持体の一方の側だけに画像形成層を含有する場合、材料の「裏側」(非乳剤側又は非画像形成側)上に、導電層、ハレーション防止層、保護層、及び搬送可能化層を含む種々の非画像形成層が通常配置される。
【0033】
またこのような事例において、支持体の「表側」又は画像形成側又は乳剤側上には、保護トップコート層、プライマー層、中間層、不透明層、静電防止層、ハレーション防止層、アキュータンス層、補助層、及び当業者にとっては容易に明らかなその他の層を含む種々の非画像形成層を配置することもできる。
【0034】
いくつかの用途の場合、フォトサーモグラフィ材料は「両側」型であり、そして支持体の両側上に同じ又は異なるフォトサーモグラフィ・コーティング(又は画像形成層)を有することが有用である。このような構造において、それぞれの側は、1つ又は2つ以上の保護トップコート層、プライマー層、中間層、静電防止層、アキュータンス層、補助層、クロスオーバー防止層、及び当業者にとっては容易に明らかなその他の層を含むこともできる。
【0035】
本発明によって調製されるフォトサーモグラフィ材料が、像様露光後又は像様露光と同時にほとんど水のない状態で下記のように熱現像されると、銀画像(好ましくは黒白銀画像)が得られる。
【0036】
定義
本明細書中で使用する場合:
本発明によって調製されるフォトサーモグラフィ材料の説明中、「成分」とは、その「成分の1種以上」を意味する(例えば、化学増感のために使用される特定の硫黄含有化合物)。
【0037】
本明細書中に使用される、ほとんど水のない状態における加熱とは、存在する周囲水蒸気をほとんど上回らない状態で50℃〜250℃の温度で加熱することを意味する。「ほとんど水のない状態」という用語は、反応系が空気中の水とほぼ平衡しており、反応を誘発又は促進するための水が、材料外部からことさら又は積極的に供給されることはないことを意味する。このような状態は、T. H. James, The Theory of the Photographic Process, 第4版, Eastman Kodak Company, Rochester, NY, 1977, 第374頁に記載されている。
【0038】
「フォトサーモグラフィ材料」は、1つ以上のフォトサーモグラフィ乳剤層又はフォトサーモグラフィ乳剤層セット(この場合、感光性ハロゲン化銀及び被還元性銀イオン源は1つの層内にあり、その他の主要成分又は望ましい添加剤は、所望の通りに、隣接するコーティング層内に分配される)と、任意の支持体と、トップコート層と、画像受理層と、ブロック層と、ハレーション防止層と、下塗り層又はプライミング層とを含む構造を意味する。これらの材料はまた多層構造を含む。これらの多層構造において、1種又は2種以上の画像形成成分は異なる層内にあるが、しかし「反応するように組み合わされた関係」にあるので、これらの成分は画像形成中及び/又は現像中に互いに容易に接触することになる。例えば、1つの層が非感光性の被還元性銀イオン源を含むことができ、別の層が還元性組成物を含むことができる。しかしこれら2種の反応性成分は互いに反応するように組み合わされた関係にある。
【0039】
フォトサーモグラフィにおいて使用される場合、「像様露光」という用語は、電磁線を用いて潜像を提供する任意の露光手段によって材料が画像形成されることを意味する。このことは、例えば感光性材料上への投影によって画像が形成されるアナログ露光によるもの、並びに、走査レーザー線の変調のような、一度に1画像ずつ画像が形成されるデジタル露光によるものを含む。
【0040】
「触媒的に近接した関係」又は「反応するように組み合わされた関係」は、材料が同一層内又は隣接層内にあるので、これらの材料が熱画像形成中及び熱現像中に互いに容易に接触するようになっていることを意味する。
【0041】
「乳剤層」、「画像形成層」、又は「フォトサーモグラフィ乳剤層」は、感光性ハロゲン化銀(使用される場合)及び/又は非感光性の被還元性銀イオン源を含有するフォトサーモグラフィ材料層を意味する。前記用語は、感光性ハロゲン化銀(使用される場合)及び/又は非感光性の被還元性銀イオン源に加えて、追加の主要成分及び/又は望ましい添加剤を含有するフォトサーモグラフィ材料層を意味することもできる。これらの層は通常、支持体の「表側」として知られている面上に位置する。
【0042】
「光触媒」とは、輻射線による露光の際に化合物を提供するハロゲン化銀のような感光性化合物を意味し、この感光性化合物により提供された化合物は、引き続き行われる画像形成材料の現像のための触媒として作用することができる。
【0043】
本明細書中に使用される材料の多くは溶液として提供される。「活性成分」という用語は、試料中に含有される所望の材料の量又はパーセンテージを意味する。本明細書中に挙げられた全ての量は、添加された活性成分の量である。
【0044】
「紫外スペクトル領域」とは、410 nm以下、好ましくは100 nm〜410 nmのスペクトル領域を意味するが、これらの領域の一部はヒトの肉眼で見ることができる場合がある。より好ましくは紫外スペクトル領域は、190〜405 nmの領域である。
【0045】
「可視スペクトル領域」とは、400 nm〜700 nmのスペクトル領域を意味する。
【0046】
「短波長可視スペクトル領域」とは、400 nm〜450 nmのスペクトル領域を意味する。
【0047】
「赤スペクトル領域」とは、600 nm〜700 nmのスペクトル領域を意味する。
【0048】
「赤外スペクトル領域」とは、700 nm〜1400 nmのスペクトル領域を意味する。
【0049】
「非感光性」とは、意図的な感光性ではないことを意味する。
【0050】
センシトメトリックな用語である「フォトスピード」、「スピード」又は「写真スピード」(感度としても知られる)、吸光度、コントラスト、Dmin及びDmaxは、画像形成分野の当業者に知られている従来通りの定義を有する。
【0051】
フォトサーモグラフィ材料の場合、Dminは本明細書中では、フォトサーモグラフィ材料が輻射線による露光を予め施されることなしに熱現像されるときに達成される画像濃度として考えられる。Dminは、露光された側の基準マークの8つの最低濃度値の平均である。
【0052】
Dmaxは、画像形成済領域内のフィルムの最大濃度である。
【0053】
センシトメトリックな用語である吸光度は光学濃度(OD)の別の用語である。
【0054】
「SP-2」 (スピード-2)は、Dminを1.00上回る濃度値に相当するLog1/E + 4であり、Eは露光量(ergs/cm2)である。
【0055】
「SP-3」 (スピード-3)は、Dminを2.9上回る濃度値に相当するLog1/E + 4である。
【0056】
「AC-1」(平均コントラスト-1)は、Dminを0.60上回る濃度点と、Dminを2.00上回る濃度点とを繋ぐ線の勾配の絶対値である。
【0057】
「AC-2」(平均コントラスト-2)は、Dminを1.00上回る濃度点と、Dminを2.40上回る濃度点とを繋ぐ線の勾配の絶対値である。
【0058】
Dmax/Agコート重量は、最大濃度を銀コーティング重量(g/m2)で割算したものである。これは現像効率を表す。
【0059】
「透明」とは、さほどの散乱又は吸収なしに可視光又は画像形成用輻射線を透過させることができることを意味する。
【0060】
本明細書中に使用される「有機銀配位子」という用語は、銀原子と一緒に結合を形成することができる有機分子を意味する。このように形成された化合物は技術的には銀配位化合物であるが、銀塩ともしばしば呼ばれる。
【0061】
「両側型」及び「両面コーティング型」という用語は、支持体の両側(表側及び裏側)に配置された同じ又は異なる熱現像可能な乳剤層の1つ又は2つ以上を有するフォトサーモグラフィ材料を定義するのに使用される。両側型に対応する別の用語は「デュプリタイズ型」である。
【0062】
本明細書中に使用される化合物の場合、描かれた構造によって、特定の二重結合ジオメトリー(例えばcis又はtrans)が意図されることはない。同様に、単結合及び二重結合を交互に有し、そして電荷が局在化されている化合物において、これらの構造は形式として描かれる。実際に、電子及び電荷双方の非局在化が、共役鎖全体にわたって存在する。
【0063】
当業者にはよく理解されているように、本明細書中に記載された化合物の場合、置換は許容されるだけではなくしばしば望ましく、そして特に断りのない限り、本発明において使用される化合物に関して、種々の置換基が予想される。従って、化合物が所与の式の「構造を有する」と称されるときには、当該置換が言語によって(例えば「カルボキシ置換型アルキルがない」という言語)特定して排除されない限り、式の結合構造又はその構造内部の示された原子を変えない任意の置換が式内部に含まれる。例えば、ベンゼン環構造(縮合環構造を含む)が示される場合、ベンゼン環構造上に置換基を置くことができるが、しかしベンゼン環構造を形成する原子を置換することはできない。
【0064】
或る特定の置換基の論議及び列挙を簡単にする手段として、「基」という用語は、置換することができる化学種、並びにこのように置換されない化学種を意味する。こうして「基」、例えば「アルキル基」という用語は、純粋な炭化水素アルキル鎖、例えばメチル、エチル、n-プロピル、t-ブチル、シクロヘキシル、イソ-オクチル、及びオクタデシルだけでなく、当業者に知られた置換基を担持するアルキル鎖、例えばヒドロキシ、アルコキシ、フェニル、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びI)、シアノ、ニトロ、アミノ及びカルボキシをも含むものとする。例えば、アルキル基は、エーテル及びチオエーテル基(例えばCH3-CH2-CH2-O-CH2-及びCH3-CH2-CH2-S-CH2-)、ハロアルキル、ニトロアルキル、アルキルカルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキサミド、ヒドロキシアルキル、スルホアルキル及び当業者に容易に明らかな他の基を含む。他の活性成分と不都合に反応する置換基、例えば求電子性又は酸化性が極めて強い置換基はもちろん、不活性又は無害でないものとして当業者によって排除されることになる。
【0065】
リサーチディスクロージャ(Research Disclosure)は、Kenneth Mason Publications Ltd, Dudley House, 12 North Street, Emsworth, Hampshire PO10 7DQ, Englandの刊行物である(Emsworth Design Inc., 147 West 24th Street, New York, NY 10011からも入手可能)。
【0066】
本発明の他の観点、利点、及び利益が、本明細書中の詳細な説明、実施例及び特許請求の範囲から明らかである。
【0067】
光触媒
上述のように、本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料は、フォトサーモグラフィ乳剤層内に1種又は2種以上の光触媒を含む。有用な光触媒は典型的には感光性ハロゲン化銀、例えば臭化銀、ヨウ化銀、塩化銀、臭ヨウ化銀、塩臭ヨウ化銀、塩臭化銀、及び当業者には容易に明らかなその他のハロゲン化銀である。適切な比率でハロゲン化銀の混合物を使用することもできる。臭化銀及び臭ヨウ化銀がより好ましいハロゲン化銀であり、後者のハロゲン化銀は最大10モル%のヨウ化銀を有している。
【0068】
本発明に使用される感光性ハロゲン化銀粒子の形状は決して限定されない。ハロゲン化銀粒子は任意の晶癖、例えば、立方体状、八面体状、四面体状、斜方晶系、菱形、十二面体状、その他の多面体状、平板状、薄層状、双晶状、又は小板状の形態を有してよく、また、結晶のエピタキシャル成長を有してよい。所望の場合には、これらの結晶の混合物を採用することができる。立方体状及び平板状の形態を有するハロゲン化銀粒子が好ましく、立方体状粒子及び平板状粒子双方の混合物を本発明において使用することができる。
【0069】
ハロゲン化銀粒子は、全体にわたってハロゲン化物の均一な比を有していてよい。ハロゲン化銀粒子は、例えば臭化銀とヨウ化銀との比が連続的に変化する、徐々に変化するハロゲン化物含量を有してよく、又はコア・シェル型であってもよい。このコア・シェル型のハロゲン化銀粒子は、1種又は2種以上のハロゲン化銀から成る不連続的なコアと、1種又は2種以上の異なるハロゲン化銀から成る不連続的なシェルとを有している。フォトサーモグラフィ材料に有用なコア・シェル型ハロゲン化銀粒子、及びこれらの材料の調製方法は、例えば米国特許第5,382,504号明細書(Shor他)に記載されている。イリジウム及び/又は銅でドープされたコア・シェル型及び非コア・シェル型粒子が、米国特許第5,434,043号明細書(Zou他)及び同第5,939,249号明細書(Zou)に記載されている。
【0070】
いくつかの事例において、ヒドロキシテトラアザインデン(例えば4-ヒドロキシ-6-メチル-1,3,3a,7-テトラアザインデン)又は1つ以上のメルカプト基を含むN-複素環式化合物(例えば1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール)の存在において、感光性ハロゲン化銀粒子を調製することが、フォトスピードを高めるのに役立つことがある。この手順の詳細は米国特許第6,413,710号明細書(Shor他)に記載されている。
【0071】
感光性ハロゲン化銀は、非感光性の被還元性銀イオン源と触媒的に近接した関係にある限り任意の様式で、乳剤層に添加する(又は乳剤層内部に形成する)ことができる。
【0072】
ハロゲン化銀粒子がex-situプロセスによって予め形成され、調製されることが好ましい。ex-situで調製されたハロゲン化銀粒子は、次いで非感光性の被還元性銀イオン源に添加されるか、又はこのイオン源と物理的に混合されてよい。
【0073】
ex-situで調製されたハロゲン化銀の存在下で、非感光性の被還元性銀イオン源を形成することがより好ましい。このようなプロセスにおいて、被還元性銀イオン源、例えば長鎖脂肪酸カルボン酸銀塩(一般に銀「石鹸」と呼ばれる)は、予め形成されたハロゲン化銀粒子の存在において形成される。ハロゲン化銀の存在において被還元性銀イオン源を共沈させると、2つの材料のより緊密な混合物が提供される[例えば米国特許第3,839,049号明細書(Simons)参照]。このタイプの材料はしばしば「予め形成された石鹸」と呼ばれる。
【0074】
本発明の材料中に使用される、予め形成されたハロゲン化銀乳剤は、水性プロセス又は有機プロセスによって調製することができ、そして洗浄しないか又は洗浄することにより可溶性塩を除去することができる。後者の場合、可溶性塩は、限外濾過によって、又は低温硬化及び浸出によって、又は凝塊の洗浄によって除去することができる[例えば、米国特許第2,618,556号明細書(Hewitson他)、同第2,614,928号明細書(Yutzy他)、同第2,565,418号明細書(Yackel)、同第3,241,969号(Hart他)、及び同第2,489,341号明細書(Waller他)に記載された手順による]。
【0075】
ハロゲン化物含有化合物又はハロゲン含有化合物を有機銀塩に添加することにより、有機銀塩の銀をハロゲン化銀に部分的に変換するin-situプロセスを用いるのも効果的である。化合物は、1種又は2種以上の無機ハロゲン化物(例えば臭化亜鉛、臭化カルシウム又は臭化リチウム、又はヨウ化亜鉛、又はこれらの混合物)、又は有機ハロゲン含有化合物(例えばN-ブロモスクシニミド又は臭化水素酸ピリジニウムペルブロミド)であってよい。上記のように、in-situプロセスを用いて、本発明に使用されるハロゲン化銀粒子の一部を調製する。ハロゲン化銀のこのようなin-situ生成の詳細はよく知られており、例えば米国特許第3,457,075号明細書(Morgan他)に記載されている。この手順の更なる詳細を下記に示す。本発明の実施において、臭化亜鉛が添加されることが好ましい。
【0076】
予め形成されたハロゲン化銀と、in-situ生成されたハロゲン化銀との両方の混合物を使用することが特に効果的である。
【0077】
これらのハロゲン化銀及び銀塩を調製する追加の方法及びこれらのブレンドする様式が、リサーチディスクロージャ, 1978年6月, 第17029項、米国特許第3,700,458号明細書(Lindholm)及び同第4,076,539号明細書(Ikenoue他)、特開昭49-013224号公報(Fuji)、特開昭50-017216号公報(Fuji)、及び特開昭51-042529号公報(Fuji)に記載されている。
【0078】
画像形成用配合物において使用されるハロゲン化銀粒子の、最大数マイクロメートル(μm)の平均直径は、これらの所望の用途に応じて変化することができる。ハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズは好ましくは0.01〜1.5 μmであり、より好ましくは、0.03〜1.0 μmであり、最も好ましくは0.05〜0.8 μmである。当業者には明らかなように、粒子が分光増感される波長に部分的に依存する、ハロゲン化銀粒子の有限の実際的な下限値がある。このような下限値は例えば、0.01〜0.005 μmが典型的である。
【0079】
感光性ハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズは、これらの粒子が球体の場合には平均直径によって表現され、これらの粒子が立体形状又はその他の非球体形状の場合には、投影画像に対応する等価円の直径の平均によって表現される。
【0080】
粒子サイズは、粒子サイズ測定のために当業者によって共通に採用される方法のうちのいずれかによって測定することができる。代表的な方法は、「Particle Size Analysis」, ASTM Symposium on Light Microscopy, R.P. Loveland, 1955, 第94-122頁、及びC. E. K. Mees 及びT. H. James, The Theory of the Photographic Process, 第3版, Macmillan, New York, 1966, 第2章に記載されている。粒子サイズ測定値は、粒子の投影面積又は直径の概算値で表すことができる。これらの測定値は、当該粒子の形状が実質的に均一ならば、相応に正確な結果をもたらす。
【0081】
本発明のフォトサーモグラフィ材料において採用される1種又は2種以上の感光性ハロゲン化銀は、好ましくは、非感光性の被還元性銀イオン源1モル当たり、0.005〜0.5モル、より好ましくは0.01〜0.25モル、最も好ましくは0.03〜0.15モルの量で存在する。
【0082】
化学増感
本発明において有用なフォトサーモグラフィ乳剤は、
(A) 予め形成された感光性ハロゲン化銀及び非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散体を用意し、そして、工程(C)ではなく下記工程(B-1)及び(B-2)を順番に又は同時に実施すること、
(B-1) 予め形成されたハロゲン化銀粒子、及び非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる有機硫黄含有化合物を用意すること(例えばフォトサーモグラフィ分散体内に有機硫黄含有化合物を内蔵することによって)、
(B-2) 非感光性の被還元性銀イオン源内の被還元性銀イオンのうちのいくつかを、感光性ハロゲン化銀粒子に変換すること、
そして次いで、
(C) ハロゲン化銀粒子上又は粒子の周りの有機硫黄含有化合物を酸化性環境内で分解することにより、少なくとも予め形成されたハロゲン化銀粒子を化学増感し、これにより非感光性の被還元性銀イオン源と反応するように組み合わさる、化学増感された感光性ハロゲン化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を提供する
ことによって製造することができる。
【0083】
本発明はまた、(A) 予め形成された感光性ハロゲン化銀及び非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散体を用意し、そして、工程(C)ではなく下記工程(B-1)及び(B-2)を順番に又は同時に実施すること、
(B-1) 該予め形成されたハロゲン化銀及び該非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる有機硫黄含有化合物を用意すること、
(B-2) 該非感光性の被還元性銀イオン源内の被還元性銀イオンのうちのいくつかを、感光性ハロゲン化銀粒子に変換すること、
そして次いで、
(C) 前記ハロゲン化銀粒子上又は粒子の周りの前記有機硫黄含有化合物を酸化性環境内で分解することにより、少なくとも該ハロゲン化銀粒子を化学増感し、これにより該非感光性の被還元性銀イオン源と反応するように組み合わさる化学増感された感光性ハロゲン化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を提供すること、そして
(D) 工程(A)から(C)までのいずれかと同時に、又は(C)に続いて、バインダーを添加することにより、フォトサーモグラフィ乳剤配合物を形成すること、そして
(E) 工程(D)後、該フォトサーモグラフィ乳剤配合物を支持体上にコーティングして乾燥させることにより、フォトサーモグラフィ画像形成材料を提供すること
を含んでなるフォトサーモグラフィ材料の製造方法を提供する。
【0084】
感光性ハロゲン化銀、及び非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散体は、コンベンショナルな様式で用意することができる。このような分散体及びこれらの製造方法の代表例が、米国特許第5,434,043号明細書(Zou他)及び同第5,939,249号明細書(Zou)、並びに下記例に詳細に記載されている。
【0085】
一般に、このような分散体は、好適な溶剤、例えばアセトン、メチルエチルケトン(MEK、2-ブタノン)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びこれらの混合物中に、感光性ハロゲン化銀、及び非感光性の有機銀塩を含む。
【0086】
一つの態様の場合、次いで1種又は2種以上の有機硫黄含有化合物を添加し、そしてフォトサーモグラフィ分散体と好適に混合する。我々は、この工程において、有機硫黄含有化合物がハロゲン化銀粒子の表面上又は表面の周りに位置するようになる、と考える。
【0087】
有機硫黄含有化合物をフォトサーモグラフィ分散体に提供したあと、被還元性銀イオンのうちのいくつかを感光性ハロゲン化銀粒子にin-situ変換する。このことは一般に、フォトサーモグラフィ分散体に、1種又は2種以上のハロゲン化物含有化合物を添加することにより達成される。このようなハロゲン化物含有化合物の一例としては、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化カルシウム、臭化リチウム、又はヨウ化リチウム、又はこれらの混合物が挙げられる。被還元性銀イオンの変換は、ハロゲン化物含有化合物の一回添加によって、又はフォトサーモグラフィ乳剤を調製する際の種々の時点における複数回添加によって実施することができる。例えば、有機硫黄含有化合物の前にハロゲン化物含有化合物の一部を添加することができ、そして有機硫黄含有化合物の添加後に第2の部分を添加することができる。所望の場合には、種々異なるハロゲン化物含有化合物を、これらを複数回添加して使用することができる。
【0088】
次いで、ハロゲン化銀粒子上又は粒子の周りの有機硫黄含有化合物を酸化性環境内で分解することにより、ハロゲン化銀粒子を化学増感し、これにより非感光性の被還元性銀イオン源と反応するように組み合わさる、化学増感された感光性ハロゲン化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を提供する。
【0089】
いくつかの態様の場合、被還元性銀イオンのいくつかを感光性ハロゲン化銀粒子にin-situ変換した後で、1種又は2種以上の有機硫黄含有化合物を添加することができる。
【0090】
さらに別の態様の場合、被還元性銀イオンのいくつかを感光性ハロゲン化銀粒子にin-situ変換するのと同時に、1種又は2種以上の有機硫黄含有化合物を添加することができる。
【0091】
このように使用することができる有機硫黄含有化合物のタイプには、これらの化合物が酸化的に分解されることによってハロゲン化銀粒子と反応する残基又は反応生成物を提供し、これにより粒子上に化学増感部位を形成することができる限り、制限がないことを我々は認識している。これらの部位は、銀片又は硫化銀片の形態を成すことができる。例えば、好ましい酸化剤(例えば下記PHP)が使用されると、これらは、ハロゲン化銀粒子表面と組み合わさる有機硫黄含有化合物と反応することにより1種又は2種以上の化合物(例えばHSBr)を形成する。このような化合物は、ハロゲン化銀粒子表面と直接的に反応することにより、化学増感された部位の秩序正しい分布を形成することになる。
【0092】
特に有用な有機硫黄含有化合物は、化合物構造内部の環に硫黄原子が直接的に結合されている化合物であり、そしてより好ましくは、化合物は環構造内に1つ又は2つ以上のチオカルボニル(>C=S)、カルボニル(>C=O)、又はチオ(-S-)基を含有する分光増感色素である。両タイプの基、又はこれらの組み合わせ[例えば-S-(-C=S)-又は-C(=S)-S-S-基]を有する化合物も、本発明の実施に有用である。
【0093】
有用な有機硫黄含有化合物の多くは色素であるか、或いは色素様構造を有する。これらの化合物が好ましいのは、これらの構造が、ハロゲン化銀粒子の表面上に化合物が秩序正しく規則的に分布されるのを可能にするらしいという理由からである。フォトサーモグラフィの当業者に知られた硫黄原子を含有するこれらの化合物には多くの種類及びタイプがある。
【0094】
特に有用な硫黄含有化合物は、分光増感色素、すなわち写真乳剤及びフォトサーモグラフィ乳剤における分光増感用としても知られた色素である。好ましい硫黄含有分光増感色素は、チオヒダントイン、ロダニン、又は2-チオ-4-オキソ-オキサゾリジン核、又はこれらの任意の組み合わせを含有する色素である。これらの核を下記に示す:
【0095】
【化1】

【0096】
本発明において有用な硫黄含有分光増感色素、これらの製造方法、及び源が当業者に知られている。これらは米国特許第5,891,615号明細書(上記)にも記載されている。これらの核及び代表的な化合物CS-1〜CS-12を下に示す。
【0097】
【化2】

【0098】
【化3】

【0099】
【化4】

【0100】
ロダニン核を有する化合物がより好ましい。化合物CS-1及びCS-2が特に好ましい。
【0101】
化学増感のために酸化的分解することができる別の有用なクラスの有機硫黄含有化合物は、下記一般構造(PS):
【0102】
【化5】

【0103】
を有するジフェニルホスフィンスルフィド化合物を含み、
上記Ph1及びPh2は、同じ又は異なる置換型又は無置換型フェニル基である。フェニル基上の置換基の一例としては、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、シアノ及びニトロが挙げられる。
【0104】
また、構造(PS)において、R1及びR2はそれぞれ独立して水素、炭素原子数1〜10の置換型又は無置換型アルキル基(例えばメチル、エチル、イソ-プロピル、又はシクロヘキシル)、又は置換型又は無置換型フェニル基(例えばフェニル、4-メチルフェニル、及び3-クロロフェニル)である。好ましくは、R1及びR2が両方とも水素であるか、R1及びR2の少なくとも一方が水素である。より好ましくは、R1及びR2は両方とも水素である。
【0105】
さらに、mは1又は2であり、好ましくは、mは1である。
【0106】
Lは直接的な結合、又は鎖内原子数1〜3の有機結合基である。好ましい結合基は、スルホニル[-SO2-]、カルボニル[-(C=O)-]、及びスルホキシド[-SO-]である。最も好ましくは、結合基はカルボニル[-(C=O)-]である。
【0107】
mが1である場合には、R3は一価基、例えば炭素原子数1〜16、好ましくは炭素原子数1〜7の置換型又は無置換型アルキル基(例えばメチル、ベンジル、及びメチルカルボフェニル基)、置換型又は無置換型アリール基(例えばフェニル、ナフチル、フルアニル)、二置換型アミノ基(例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、モルホリノ、又はピペリジノ基)である。mが2である場合には、R3は、鎖内炭素、窒素、酸素又は硫黄原子数1〜20の置換型又は無置換型二価脂肪族結合基(例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ポリエーテル、又はポリチオエーテル基)である。好ましくは、mは1であり、そしてR3は、ジエチルアミノ又はフェニル基である。
【0108】
構造(PS)の代表的な化合物は、下記PS-1〜PS-19化合物である:
【0109】
【化6】

【0110】
【化7】

【0111】
【化8】

【0112】
【化9】

【0113】
【化10】

【0114】
所望の場合には、このような硫黄含有化合物の混合物を使用することができる。化合物PS-1及びPS-2が最も好ましい。
【0115】
一般に、粉末状水酸化カリウムの存在において30分〜24時間にわたって0℃〜室温の温度で塩化メチレン中のジフェニルホスフィンスルフィドをアルキル化することにより、本発明の実施において有用なジフェニルホスフィンスルフィドを調製することができる。係属中の同一譲受人によるU.S.S.N. 10/731,251(2003年12月9日付け出願、Simpson, Burleva及びSakizadehによる)に記載された教示によって、これらを調製することもできる。
【0116】
下記スキームIは、本発明のジフェニルホスフィンスルフィド化合物の調製を示し、Lはカルボニル基である。
【0117】
スキームI
【0118】
【化11】

【0119】
本発明の方法は多数の利点を提供する。これらの利点は、フォトサーモグラフィ材料を製造するのに有用なフォトサーモグラフィ乳剤を形成するための反応及び添加の独自の順序を含む。本発明において、化学増感のために使用される硫黄含有化合物を添加し、そして非感光性銀源の銀イオンの一部をハロゲン化銀に変換することにより、感光性ハロゲン化銀粒子をin-situ形成した後、次いで硫黄含有化合物(例えば硫黄含有分光増感色素又はジフェニルホスフィンスルフィド)を酸化性環境内で分解することにより、ハロゲン化銀粒子上の硫黄部位を提供する。
【0120】
有機硫黄含有化合物は、フォトサーモグラフィ分散体中の非感光性の被還元性銀イオン源内の総銀量1モル当たり1.5 × 10-6〜4 × 10-3モルの量で、本発明の実施において使用される。好ましい量は、総銀量1モル当たり4 × 10-4〜1 × 10-3モルである。
【0121】
被還元性銀源の被還元性銀イオンのうちのいくつかを、感光性ハロゲン化銀粒子に変換することは、一般に、フォトサーモグラフィ分散体に1種又は2種以上のハロゲン含有化合物を添加することにより達成される。このような化合物は、無機ハロゲン化物(例えば臭化亜鉛、臭化カルシウム、臭化リチウム、又はヨウ化亜鉛、又はこれらの混合物)、又は有機ハロゲン含有化合物(例えばN-ブロモスクシニミド又は臭化水素酸ピリジニウムペルブロミド)であってよい。上記のように、in-situプロセスを用いて、本発明に使用されるハロゲン化銀粒子の一部を調製する。ハロゲン化銀のこのようなin-situ生成の詳細はよく知られており、例えば米国特許第3,457,075号明細書(Morgan他)に記載されている。この手順の更なる詳細を下記に示す。本発明の実施において、臭化亜鉛が添加されることが好ましい。
【0122】
予め形成されたハロゲン化銀と、in-situ生成されたハロゲン化銀との両方の混合物を使用することが特に効果的である。
【0123】
ハロゲン含有化合物は、0.1〜10モル%の被還元性銀イオンを感光性ハロゲン化銀に変換するのに十分な量で添加される。好ましくは、0.5〜5モル%の被還元性銀イオンを感光性ハロゲン化銀に変換する。より好ましくは1〜3モル%の被還元性銀イオンを変換する。ハロゲン含有化合物は、非感光性の被還元性銀イオン源1モル当たりのハロゲン原子の量10-4〜10-1モルで添加される。
【0124】
一般に、被還元性銀イオンの変換は、適温で30分以内で生じる。しかしいくつかの態様の場合、ハロゲン含有化合物を複数段階で添加することにより、ハロゲン化銀の形成及び組成を制御することができる。例えば、臭化物塩をヨウ化物塩とともに添加し、次いで臭化物塩を単独で添加することができる。ハロゲン化物の混合物を添加する場合には、これらは、結果として生じるハロゲン化銀粒子内に所望のハロゲン化物組成を提供するような比率で添加される。
【0125】
上記のように、有機硫黄含有化合物が添加され、そしてin-situのハロゲン化銀粒子が生成されると、次いで有機硫黄含有化合物は、酸化性環境内でハロゲン化銀粒子上又は粒子の周りで分解される。分解は一般に、1種又は2種以上の酸化剤、好ましくは「強力」酸化剤を使用して行われる。強力酸化剤は、最大60分間にわたって10℃〜30℃の温度で化学増感剤として作用する、粒子上の種を形成することができる。好ましくは、この反応は周囲温度(一般に20℃)〜30℃で行われる。
【0126】
分解の効率は、酸化剤の機能及び効率、分解される有機硫黄含有化合物、分解時間の長さ、及び分解温度によって影響される。反応性がより高い酸化剤を、より低い温度及び/又はより短い時間で使用することができ、そして反応性がより低い酸化剤に関しては、その逆が当てはまる。
【0127】
分解は単一の反応で、又は複数の段階で行うことができる。複数の段階の場合には、同じ又は異なる酸化剤が添加される前に反応が中断又は完了される。このように、いくつかの態様の場合、単一の酸化剤を「分割して」添加することができる。この場合、総量が複数部分に小分けされ、複数の段階で添加される。
【0128】
硫黄含有化合物を分解するために添加することができる好ましい酸化剤は、さらに一対の臭素原子と組み合わさる窒素含有複素環化合物の臭化水素酸塩を含む。これらの化合物は、臭化水素酸過臭化物と組み合わさる第四窒素含有5-、6-又は7員単環又は多環としても知られている。このような化合物の例は、米国特許第5,028,523号明細書(Skoug)(本明細書中に引用する)においてカブリ防止剤として記載されており、置換型又は無置換型ピリジン、ピロリドン、ピロリジノン、ピロリジン、フタラジノン、及びフタラジン環を有する化合物を含む。ピリジン環を有する化合物はより好ましく、そして特に有用な酸化剤は、臭化水素酸ピリジニウムペルブロミド(PHP)である。
【0129】
好ましい態様の場合、PHPは20℃〜30℃の温度で最大60分間にわたって、酸化剤として使用される。
【0130】
分解工程に続いて、酸化を必要としない追加の化学増感剤、バインダー、トナー、カブリ防止剤、分光増感色素、艶消し剤、燐光体、高コントラスト剤、及びこのような乳剤内部に一般に含まれる他の添加物を添加することによって、結果として生じたフォトサーモグラフィ乳剤をさらに改質することができる。これらの化合物の更なる詳細は、多数の発行済文献に記載されており、また以下にも示す。
【0131】
有用な追加の化学増感剤を感光性ハロゲン化銀の調製において使用することができる。このような化合物は、硫黄、テルリウム又はセレンを含有してよく、或いは、金、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム又はイリジウム、又はこれらの組み合わせ、還元剤、例えばハロゲン化錫、又はこれらのうちのいずれかの組み合わせを含有する化合物を含んでよい。これらの材料の詳細は、例えば、T. H. James, The Theory of the Photographic Process, 第4版, Eastman Kodak Company, Rochester, NY, 1977, 第5章, 第149-169頁に記載されている。好適なコンベンショナルな化学増感処置は、米国特許第1,623,499号明細書(Sheppard他)、同第2,399,083号明細書(Waller他)、同第3,297,447号明細書(McVeigh)、同第3,297,446号明細書(Dunn)、同第5,049,485号明細書(Deaton)、同第5,252,455号明細書(Deaton)、同第5,391,727号明細書(Deaton)、同第5,912,111号明細書(Lok他)、同第5,759,761号明細書(Lushington他)、及び欧州特許出願公開第0 915 371号明細書(Lok他)にも記載されている。
【0132】
或る特定の置換型及び無置換型チオ尿素化合物を、化学増感剤として使用することができる。特に有用な四置換型チオ尿素が米国特許第6,368,779号明細書(Lynch他)に記載されている。
【0133】
別の有用な化学増感剤は、米国特許出願公開第2002-0164549号明細書(本明細書中に引用する)に記載された或る特定のテルリウム含有化合物、及び、同一譲受人による米国特許第6,620,577号(Lynch他)に記載された或る特定のセレン含有化合物を含む。
【0134】
金(3+)含有化合物と、硫黄含有化合物又はテルリウム含有化合物との組み合わせも、同一譲受人による米国特許第6,423,481号明細書(Simpson他)に記載されているような化学増感剤として有用である。
【0135】
追加の化学増感剤は、一般にハロゲン化銀粒子の平均サイズに依存するコンベンショナルな量で存在することができる。一般に総量は、平均サイズ0.01〜2 μmのハロゲン化銀粒子の場合、総銀量1モル当たり10-10モル以上であり、そして好ましくは、総銀量1モル当たり10-8〜10-2モルである。上限は、使用される化合物、ハロゲン化銀のレベル、及び平均粒子サイズに応じて変化することができ、当業者によって容易に見極めることができる。
【0136】
分光増感剤
本発明のフォトサーモグラフィ構成要件において使用される感光性ハロゲン化銀は、紫外線、可視光及び/又は赤外線に対するハロゲン化銀の感度を高めることが知られている種々の分光増感色素で分光増感することができる。採用可能な増感色素の一例としては、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポラー・シアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素及びヘミオキサノール色素が挙げられる。シアニン色素、メロシアニン色素及び複合メロシアニン色素が特に有用である。分光増感色素は、最適な感光性、安定性及び合成しやすさに関して選ばれる。分光増感色素は、フォトサーモグラフィ乳剤の化学的な仕上げ時における任意の段階で添加することができる。化学増感が達成された後、フォトサーモグラフィ乳剤に1種又は2種以上の分光増感色素を添加することにより、分光増感が一般に行われる。600〜1100 nmにおける分光増感を可能にするために、1種又は2種以上の分光増感色素を使用することが特に望ましい。
【0137】
米国特許第3,719,495号明細書(Lea)、同第4,396,712号明細書(Kinoshita他)、同第4,439,520号明細書(Kofron他)、同第4,690,883号明細書(Kubodera他)、同第4,840,882号明細書(Iwagaki他)、同第5,064,753号明細書(Kohno他)、同第5,281,515号明細書(Delprato他)、同第5,393,654号明細書(Burrows他)、同第5,441,866号明細書(Miller他)、同第5,508,162号明細書(Dankosh)、同第5,510,236号明細書(Dankosh)、同第5,541,054号明細書(Miller他)、特開2000-063690号公報(Tanaka他)、同2000-112054号公報(Fukusaka他)、同2000-273329号公報(Tanaka他)、同2001-005145号公報(Arai他)、同2001-064527号公報(Oshiyama他)、及び同2001-154305号公報(Kita他)に記載されているような好適な増感色素を本発明の実施において使用することができる。一般に有用な分光増感色素の概要は、リサーチディスクロージャ, 1989年12月, 第308119項、セクションIVに含まれる。他の波長における増感を含む、分光増感に有用な追加のクラスの色素が、リサーチディスクロージャ, 1994年、第36544項、セクションVに記載されている。
【0138】
分光増感色素の特定の組み合わせに関する教示はまた、米国特許第4,581,329号明細書(Sugimoto他)、同第4,582,786号明細書(Ikeda他)、同第4,609,621号明細書(Sugimoto他)、同第4,675,279号明細書(Shuto他)、同第4,678,741号明細書(Yamada他)、同第4,720,451号明細書(Shuto他)、同第4,818,675号明細書(Miyasaka他)、同第4,945,036号明細書(Arai他)、及び同第4,952,491号明細書(Nishikawa他)を含む。
【0139】
光又は熱の作用により色を失う分光増感色素も有用である。このような色素は、米国特許第4,524,128号明細書(Edwards他)、特開2001-109101号公報(Adachi)、同2001-154305号公報(Kita他)、及び同2001-183770号公報(Hanyu他)に記載されている。
【0140】
分光増感色素は単独で、又は組み合わせて使用することができる。色素は、分光感度の波長分布を調整する目的で、また、超色増感の目的で選択される。超色増感効果を有する色素の組み合わせを使用すると、各色素を単独で使用することにより達成可能な感度の和よりも著しく高い感度を得ることが可能である。それ自体は分光増感作用を有しない色素、又は可視光をほとんど吸収しない化合物を使用することによって、このような超色増感作用を得ることも可能である。ジアミノスチルベン化合物が、超色増感剤としてしばしば使用される。
【0141】
添加される分光増感色素の適量は一般に、ハロゲン化銀1モル当たり、10-10〜10-1モルであり、好ましくは10-7〜10-2モルである。
【0142】
非感光性の被還元性銀イオン源
本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料に使用される非感光性の被還元性銀イオン源は、被還元性銀(1+)イオンを含有するいかなる金属有機化合物であってもよい。このような化合物は一般に、銀配位子の銀塩である。好ましくはこの銀イオン源は、光に対して比較的安定であり、そして、露光された光触媒(フォトサーモグラフィ材料中に使用される場合には、例えばハロゲン化銀)及び還元性組成物の存在において50℃以上に加熱されると、銀画像を形成する有機銀塩である。
【0143】
長鎖カルボン酸の銀塩を含む有機酸の銀塩が好ましい。これらの鎖の炭素原子数は、10〜30、好ましくは15〜28である。好適な有機銀塩は、カルボン酸基を有する有機化合物の銀塩を含む。これらの例は、脂肪族カルボン酸の銀塩、又は芳香族カルボン酸の銀塩を含む。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例は、ベヘン酸銀、アラキン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、フロ酸銀、リノレン酸銀、酪酸銀、樟脳酸銀、及びこれらの混合物を含む。好ましくは、少なくともベヘン酸銀が単独で、又は他のカルボン酸銀塩との混合物中で使用される。
【0144】
芳香族カルボン酸及び他のカルボン酸基含有化合物の代表的な銀塩の一例としては、安息香酸銀、銀置換型安息香酸塩(例えば銀3,5-ジヒドロキシ-ベンゾエート、銀o-メチルベンゾエート、銀m-メチルベンゾエート、銀p-メチルベンゾエート、銀2,4-ジクロロベンゾエート、銀アセトアミドベンゾエート、銀p-フェニルベンゾエート)、タンニン酸銀、フタル酸銀、テレフタル酸銀、サリチル酸銀、フェニル酢酸銀、及びピロメリット酸銀が挙げられる。
【0145】
米国特許第3,330,663号明細書(Weyde他)に記載されたチオエーテル基を含有する脂肪族カルボン酸の銀塩も有用である。エーテル又はチオエーテル結合、又は(炭化水素基上の)α-位置又は(芳香族基上の)ortho-位置に立体障害置換を内蔵する炭化水素鎖を含む可溶性カルボン酸銀塩であって、コーティング溶剤中の溶解度の増大を示し、そして光散乱が少ないコーティングをもたらすものを使用することもできる。このようなカルボン酸銀塩は米国特許第5,491,059号明細書(Whitcomb)に記載されている。所望の場合にはここに記載された銀塩のいずれかの混合物を使用することもできる。
【0146】
ジカルボン酸の銀塩も有用である。このような酸は、脂肪族、芳香族、又は複素環式であってよい。このような酸の例は、例えばフタル酸、グルタミン酸、又はホモ-フタル酸を含む。
【0147】
スルホネートの銀塩も本発明の実施において有用である。このような材料は、例えば米国特許第4,504,575号明細書(Lee)に記載されている。例えば欧州特許出願公開第0 227 141号明細書(Leenders他)に記載されているように、スルホスクシネートの銀塩も有用である。
【0148】
メルカプト基又はチオン基、及びこれらの誘導体を含有する化合物の銀塩を使用することもできる。これらの化合物の好ましい一例としては、環内原子数5又は6の複素環式核であって、これらの原子のうちの1つ以上が窒素原子であり、他の原子が炭素、酸素又は硫黄原子であるものが挙げられる。このような複素環式核の一例としては、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、チアゾリン、イミダゾール、ジアゾール、ピリジン、及びトリアジンが挙げられる。これらの銀塩の代表例としては、3-メルカプト-4-フェニル-1,2,4-トリアゾールの銀塩、5-カルボキシル-1-メチル-2-フェニル-4-チオピリジンの銀塩、メルカプトトリアジンの銀塩、2-メルカプトベンゾオキサゾールの銀塩、米国特許第4,123,274号明細書(Knight他)に記載された銀塩(例えば1,2,4-メルカプトチアゾール誘導体の銀塩、例えば3-アミノ-5-ベンジルチオ-1,2,4-チアゾールの銀塩)、及びチオン化合物の銀塩[例えば米国特許第3,785,830号明細書(Sullivan他)に記載された3-(2-カルボキシエチル)-4-メチル-4-チアゾリン-2-チオン]が挙げられる。
【0149】
複素環式核を含有しないメルカプト又はチオン置換型化合物の他の有用な銀塩の一例としては、チオグリコール酸の銀塩、例えばS-アルキルチオグリコール酸の銀塩(アルキル基の炭素原子数は12〜22である)、ジチオカルボン酸の銀塩、例えばジチオ酢酸の銀塩、及びチオアミドの銀塩が挙げられる。
【0150】
いくつかの態様の場合、イミノ基を有する化合物の銀塩が、特に水性画像形成配合物において好ましい。これらの化合物の好ましい例としては、ベンゾトリアゾール及びこれらの置換型誘導体の銀塩(例えば、銀メチルベンゾトリアゾール及び銀5-クロロベンゾトリアゾール)、1,2,4-トリアゾール又は1-H-テトラゾール、例えば米国特許第4,220,709号明細書(deMauriac)に記載されているようなフェニルメルカプトテトラゾールの銀塩、及び、米国特許第4,260,677号明細書(Winslow他)に記載されているようなイミダゾール及びイミダゾール誘導体の銀塩が挙げられる。このタイプの特に有用な銀塩は、ベンゾトリアゾール及びこれらの置換型誘導体の銀塩である。水性サーモグラフィ及びフォトサーモグラフィ配合物中では、ベンゾトリアゾールの銀塩が好ましい。
【0151】
さらに、例えば米国特許第4,761,361号明細書(Ozaki他)及び同第4,775,613号明細書(Hirai他)に記載されているように、アセチレンの銀塩を使用することもできる。
【0152】
有機溶剤系フォトサーモグラフィ材料中で特に有用な有機銀塩は、カルボン酸銀塩(脂肪族及び芳香族双方のカルボン酸塩)、トリアゾール酸銀、スルホン酸銀、スルホ琥珀酸銀、及び銀アセチリドを含む。炭素原子数15〜28の長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩(及びベヘン酸銀を含む)が特に好ましい。
【0153】
銀半石鹸を使用するのも便利である。銀半石鹸の好ましい例は、カルボン酸銀塩とカルボン酸との等モル・ブレンドである。このブレンド中14.5重量%が銀固形分であると分析され、このブレンドは、アンモニウム又は商業的に入手可能な脂肪カルボン酸のアルカリ金属塩の水溶液からの沈澱により、又は銀石鹸に遊離脂肪酸を添加することにより調製される。透明フィルムの場合、15%以下の脂肪カルボン酸を含有し、22%が銀であることが分析されているカルボン酸銀塩完全石鹸を使用することができる。不透明なフォトサーモグラフィ材料の場合、種々異なる量を使用することができる。
【0154】
銀石鹸乳剤を形成するのに用いられる方法は当業者によく知られており、リサーチディスクロージャ, 1983年4月, 第22812項、リサーチディスクロージャ, 1983年10月, 第23419項、米国特許第3,985,565号明細書(Gabrielson他)、及び上に引用した参考文献に開示されている。
【0155】
非感光性の被還元性銀イオン源は、米国特許第6,355,408号明細書(Whitcomb他)に記載されているようなコア・シェル型銀塩として提供することもできる。これらの銀塩は、1種又は2種以上の銀塩から成るコアと、1種又は2種以上の異なる銀源を有するシェルとを含む。
【0156】
本発明の実施において有用なさらに別の非感光性の被還元性銀イオン源は、銀二量体化合物である。これらの銀二量体化合物は、米国特許第6,472,131号明細書(Whitcomb)に記載されているような2種の異なる銀塩を含む。このような非感光性銀二量体化合物は2種の異なる銀塩を含むが、ただし、これら2種の異なる銀塩が直鎖状の飽和型炭化水素基を銀配位子として含む場合には、これらの配位子は炭素原子数が最小6だけ異なるものとする。
【0157】
本発明の実施におけるさらに別の有用な非感光性の被還元性銀イオン源は、1種又は2種以上の感光性ハロゲン化銀、又は1種又は2種以上の非感光性無機金属塩又は銀非含有有機塩を含む一次コアと、一次コアを少なくとも部分的に覆うシェルとを含む銀コア・シェル型銀塩であって、シェルは1種又は2種以上の非感光性銀塩を含み、これらの銀塩のそれぞれは有機銀配位子を含む。このような化合物は、係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/208,603号明細書(Bokhonov, Burleva, Whitcomb, Howlader及びLeichterによって2002年7月30日付けで出願)に記載されている。
【0158】
当業者には明らかなように、非感光性の被還元性銀イオン源は、本明細書中に記載された種々の銀塩化合物の種々の混合物を、任意の望ましい比率で含むことができる。
【0159】
光触媒と非感光性の被還元性銀イオン源とは、触媒的に近接した関係(すなわち、互いに反応するように組み合わされた関係)になければならない。これらの反応性成分は、同じ乳剤層内にあることが好ましい。
【0160】
1種又は2種以上の非感光性の被還元性銀イオン源は、乳剤層の総乾燥重量を基準として、好ましくは5重量%〜70重量%の量で、より好ましくは10重量%〜50重量%の量で存在する。別の言い方をすれば、被還元性銀イオン源の量は一般に、乾燥フォトサーモグラフィ材料の0.001〜0.2モル/m2の量で、好ましくは前記材料の0.01〜0.05モル/m2の量で存在する。
【0161】
フォトサーモグラフィ材料中の(全ての銀源から得られる)銀の総量は、一般に0.002モル/m2以上であり、好ましくは0.01〜0.05モル/m2である。
【0162】
還元剤
被還元性銀イオン源のための還元剤(又は、2種又は3種以上の成分を含む還元剤組成物)は、銀(1+)イオンを金属銀に還元することのできる任意の材料、好ましくは有機材料であってよい。
【0163】
還元剤としては、コンベンショナルな写真現像剤、例えば芳香族ジ-及びトリ-ヒドロキシ化合物(例えばヒドロキノン、没食子酸及び没食子酸誘導体、カテコール及びピロガロール)、アミノフェノール(例えば、N-メチルアミノフェノール)、p-フェニレンジアミン、アルコキシナフトール(例えば4-メトキシ-1-ナフトール)、ピラゾリジン-3-オン型還元剤(例えばPHENIDONE(商標))、ピラゾリン-5-オン、ポリヒドロキシスピロ-ビス-インダン、インダン-1,3-ジオン誘導体、ヒドロキシテトロン酸、ヒドロキシテトロンイミド、例えば米国特許第4,082,901号明細書(Laridon他)に記載されているようなヒドロキシルアミン誘導体、ヒドラジン誘導体、ヒンダード・フェノール、アミドキシム、アジン、レダクトン(例えばアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体)、ロイコ色素、及び当業者に容易に明らかなその他の材料を使用することができる。
【0164】
銀ベンゾトリアゾール銀源を使用する場合、アスコルビン酸還元剤が好ましい。「アスコルビン酸」還元剤(現像剤又は現像主薬とも呼ばれる)とは、アスコルビン酸、その複合体及びその誘導体を意味する。アスコルビン酸現像主薬は、写真プロセスにおいて相当数の刊行物、例えば米国特許第5,236,816号明細書(Purol他)及びこの明細書に引用された参考文献に記載されている。有用なアスコルビン酸現像主薬は、アスコルビン酸及びこれらの類似体、異性体、及び誘導体を含む。このような化合物の一例としては、米国特許第5,498,511号明細書(Yamashita他)、欧州特許出願公開第0 585 792号明細書(Passarella他)、同第0 573 700号明細書(Lingier他)、同第0 588 408号明細書(Hieronymus他)、米国特許第5,089,819号明細書(Knapp)、同第5,278,035号明細書(Knapp)、同第5,384,232号明細書(Bishop他)、同第5,376,510号明細書(Parker他)、特開平7-56286号公報(Toyoda)、及び米国特許第2,688,549号明細書(James他)、及びリサーチディスクロージャ、第37152項、1995年3月に記載されているような、D-又はL-アスコルビン酸、これらの糖型誘導体(例えばソルボアスコルビン酸、γ-ラクトアスコルビン酸、6-デソキシ-L-アスコルビン酸、L-ラムノアスコルビン酸、イミノ-6-デソキシ-L-アスコルビン酸、グルコアスコルビン酸、フコアスコルビン酸、グルコヘプトアスコルビン酸、マルトアスコルビン酸、L-アラボアスコルビン酸)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、イソアスコルビン酸(又はL-エリトロアスコルビン酸)、及びこれらの塩(例えばアルカリ金属、アンモニウム又は当業者に知られているその他のもの)、エンジオール型アスコルビン酸、エナミノール型アスコルビン酸、チオエノール型アスコルビン酸、及びエナミン-チオール型アスコルビン酸が挙げられる。D-、L-又はD,L-アスコルビン酸(及びこれらのアルカリ金属塩)又はイソアスコルビン酸(又はこれらのアルカリ金属塩)が好ましい。所望の場合には、これらの現像主薬の混合物を使用することもできる。
【0165】
カルボン酸銀塩銀源を使用する場合、ヒンダード・フェノール還元剤が好ましい。いくつかの事例において、還元剤組成物は、2種又は3種以上の成分、例えばヒンダード・フェノール現像剤、及び、下記の種々のクラスの共現像剤及び還元剤から選ぶことができる共現像剤を含む。コントラスト促進剤のさらなる添加に関与する三元現像剤混合物も有用である。このようなコントラスト促進剤は、下記の種々のクラスの還元剤から選ぶことができる。ヒンダード・フェノール還元剤が好ましい(単独、又は1種又は2種以上の高コントラスト共現像主薬及び共現像剤コントラスト促進剤との組み合わせ)。
【0166】
「ヒンダード・フェノール還元剤」は、所与のフェニル環上に唯1つのヒドロキシ基を含有し、そして、このヒドロキシ基に対してorthoに配置された1つ以上の追加の置換基を有する化合物である。各ヒドロキシ基が互いに異なるフェニル環上に配置されている限り、ヒンダード・フェノール還元剤は、2つ以上のヒドロキシ基を含有することができる。ヒンダード・フェノール還元剤は、例えばビナフトール(すなわちジヒドロキシビナフチル)、ビフェノール(すなわちジヒドロキシビフェニル)、ビス(ヒドロキシナフチル)メタン、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン(すなわちビスフェノール)、ヒンダード・フェノール、及びヒンダード・ナフトールを含み、これらはそれぞれ種々に置換されていてよい。
【0167】
代表的なビナフトールの一例としては、1,1'-ビ-2-ナフトール、1,1'-ビ-4-メチル-2-ナフトール、及び6,6'-ジブロモ-ビ-2-ナフトールが挙げられる。追加の化合物に関しては、米国特許第3,094,417号明細書(Workman)及び同第5,262,295号明細書(Tanaka他)を参照されたい。
【0168】
代表的なビナフトールの一例としては、2,2'-ジヒドロキシ-3,3'-ジ-t-ブチル-5,5-ジメチルビフェニル、2,2'-ジヒドロキシ-3,3',5,5'-テトラ-t-ブチルビフェニル、2,2'-ジヒドロキシ-3,3'-ジ-t-ブチル-5,5'-ジクロロビフェニル、2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4-メチル-6-n-ヘキシルフェノール、4,4'-ジヒドロキシ-3,3',5,5'-テトラ-t-ブチルビフェニル及び4,4'-ジヒドロキシ-3,3',5,5'-テトラ-メチルビフェニルが挙げられる。追加の化合物に関しては、米国特許第5,262,295号明細書(上記)を参照されたい。
【0169】
代表的なビス(ヒドロキシナフチル)メタンの一例としては、4,4'-メチレンビス(2-メチル-1-ナフトール)が挙げられる。追加の化合物に関しては、米国特許第5,262,295号明細書(上記)を参照されたい。
【0170】
代表的なビス(ヒドロキシフェニル)メタンの一例としては、ビス(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)メタン(CAO-5)、1,1'-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサン(NONOX(商標)又はPERMANAX WSO)、1,1'-ビス(3,5-ジ-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2'-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、4,4'-エチリデン-ビス(2-t-ブチル-6-メチルフェノール)、2,2'-イソブチリデン-ビス(4,6-ジメチルフェノール)(LOWINOX(商標)221B46)、及び2,2'-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。追加の化合物に関しては、米国特許第5,262,295号明細書(上記)を参照されたい。
【0171】
代表的なヒンダード・フェノールの一例としては、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジクロロフェノール、2,6-ジメチルフェノール及び2-t-ブチル-6-メチルフェノールが挙げられる。
【0172】
代表的なヒンダード・ナフトールの一例としては、1-ナフトール、4-メチル-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、4-クロロ-1-ナフトール及び2-メチル-1-ナフトールが挙げられる。追加の化合物に関しては、米国特許第5,262,295号明細書(上記)を参照されたい。
【0173】
所望の場合には、ヒンダード・フェノール還元剤の混合物を使用することができる。
【0174】
還元剤のさらに別の特に有用なクラスは、米国特許第3,440,049号明細書(Moede)に写真タンニング剤として記載されたポリヒドロキシスピロ-ビス-インダン化合物である。例は、3,3,3',3'-テトラメチル-5,6,5',6'-テトラヒドロキシ-1,1'-スピロ-ビス-インダン(インダンIと呼ばれる)、及び3,3,3',3'-テトラメチル-4,6,7,4',6',7'-ヘキサヒドロキシ-1,1'-スピロ-ビス-インダン(インダンIIと呼ばれる)を含む。
【0175】
現像剤として使用することができる追加のクラスの還元剤は、米国特許第5,464,738号明細書(Lynch他)に記載されたスルホニルヒドラジドを含む置換型ヒドラジンである。さらに別の有用な還元剤は、例えば米国特許第3,074,809号明細書(Owen)、同第3,094,417号明細書(Workman)、同第3,080,254号明細書(Grant, Jr.)、及び同第3,887,417号明細書(Klein他)に記載されている。米国特許第5,981,151号明細書(Leenders他)に記載されているように、還元助剤が有用な場合がある。
【0176】
ドライシルバー系において開示されたより具体的な別の還元剤は、アミドキシム、例えばフェニルアミドキシム、2-チエニル-アミドキシム及びp-フェノキシフェニルアミドキシム、アジン(例えば4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンズアルデヒドラジン)、脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組み合わせ[例えば2,2'-ビス(ヒドロキシメチル)-プロピオニル-β-フェニルヒドラジドとアスコルビン酸との組み合わせ]、ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミンとの組み合わせ、レダクトン及び/又はヒドラジン[例えばヒドロキノンとビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミンとの組み合わせ]、ピペリジノヘキソース・レダクトン又はホルミル-4-メチルフェニルヒドラジン、ヒドロキサム酸(例えばフェニルヒドロキサム酸、p-ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸、及びo-アラニン-ヒドロキサム酸)、アジンとスルホナミドフェノールとの組み合わせ(例えばフェノチアジン及び2,6-ジクロロ-4-ベンゼンスルホンアミドフェノール)、α-シアノフェニル-酢酸誘導体(例えばエチルα-シアノ-2-メチルフェニルアセテート及びエチルα-シアノフェニルアセテート)、ビス-o-ナフトール[例えば2,2'-ジヒドロキシ-1-ビナフチル、6,6'-ジブロモ-2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチル、及びビス(2-ヒドロキシ-1-ナフチル)-メタン]、ビス-o-ナフトールと1,3-ジヒドロキシベンゼン誘導体(例えば2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン又は2,4-ジヒドロキシアセトフェノン)との組み合わせ、5-ピラゾロン、例えば3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾロン、レダクトン(例えばジメチルアミノヘキソース・レダクトン、無水ジヒドロ-アミノヘキソース・レダクトン及び無水ジヒドロ-ピペリドン-ヘキソース・レダクトン)、スルホンアミドフェノール還元剤(例えば2,6-ジクロロ-4-ベンゼンスルホンアミド-フェノール、及びp-ベンゼンスルホンアミドフェノール)、インダン-1,3-ジオン(例えば2-フェニルインダン-1,3-ジオン)、クロマン(例えば2,2-ジメチル-7-t-ブチル-6-ヒドロキシクロマン)、1,4-ジヒドロピリジン(例えば2,6-ジメトキシ-3,5-ジカルベトキシ-1,4-ジヒドロピリジン)、アスコルビン酸誘導体(例えば1-アスコルビルパルミテート、アスコルビルステアレート及び不飽和型アルデヒド及びケトン)、及び3-ピラゾリドンを含む。
【0177】
例えば米国特許第6,387,605号明細書(Lynch他)に記載されているように、有用な共現像・還元剤を使用することもできる。これらの化合物の例としては、2,5-ジオキソ-シクロペンタンカルボキサルデヒド、5-(ヒドロキシメチレン)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン、5-(ヒドロキシメチレン)-1,3-ジアルキルバルビツール酸、及び2-(エトキシメチレン)-1H-インデン-1,3(2H)-ジオンが挙げられる。
【0178】
共現像剤として使用することができる追加のクラスの還元剤は、米国特許第5,496,695号明細書(Simpson他)に記載されたトリチルヒドラジド及びホルミルフェニルヒドラジド、米国特許第5,654,130号明細書(Murray)に記載された2-置換型マロンジアルデヒド化合物、及び米国特許第5,705,324号明細書(Murray)に記載された4-置換型イソキサゾール化合物である。追加の現像剤が、米国特許第6,100,022号明細書(Inoue他)に記載されている。
【0179】
さらに別のクラスの共現像剤は、米国特許第5,635,339号明細書(Murray)及び同第5,545,515号明細書(Murray)に記載された置換型アクリロニトリル化合物を含む。このような化合物の一例としては、米国特許第5,635,339号明細書(上述)でHET-01及びHET-02として、また米国特許第5,545,515号明細書(上述)でCN-01〜CN-13として同定された化合物が挙げられる。このタイプの特に有用な化合物は(ヒドロキシメチレン)シアノアセテート及びこれらの金属塩である。
【0180】
いくつかのフォトサーモグラフィ材料において、特定の共現像剤とともに種々のコントラスト促進剤を使用することができる。有用なコントラスト促進剤の一例としては、ヒドロキシルアミン(ヒドロキシルアミン、並びにアルキル置換型及びアリール置換型誘導体を含む)、アルカノールアミン、及び例えば米国特許第5,545,505号明細書(Simpson)に記載されているようなフタルアミド酸アンモニウム化合物、例えば米国特許第5,545,507号明細書(Simpson他)に記載されているようなヒドロキサム酸化合物、例えば米国特許第5,558,983号明細書(Simpson他)に記載されているようなN-アシルヒドラジン化合物、米国特許第5,637,449号明細書(Harring他)に記載されているような水素原子供与体化合物が挙げられる。
【0181】
ヒンダード・フェノール還元剤との組み合わせで、又は1種又は2種以上の高コントラスト共現像主薬及び共現像・コントラスト促進剤との組み合わせで、芳香族ジ-及びトリヒドロキシ還元剤を使用することもできる。
【0182】
本明細書中に記載された還元剤(又はその混合物)は一般に、乳剤層の1〜10 %(乾燥重量)として存在する。多層構造において、還元剤が乳剤層以外の層に添加される場合、還元剤は2〜15重量%という僅かに高い比率で存在することがより望ましい。いかなる共現像剤も一般に、乳剤層コーティングの0.001 %〜1.5 %(乾燥重量)の量で存在してよい。
【0183】
カラー画像形成材料(例えばモノクローム、ジクローム又は完全カラー画像)の場合、直接的又は間接的に酸化させることによって1種又は2種以上の色素を形成又は放出することができる1種又は2種以上の還元剤を使用することができる。
【0184】
ロイコ色素又は「ブロック型」ロイコ色素は、色素形成化合物(又は「ブロック型」色素形成化合物)の1クラスであり、これらの化合物は、銀イオンによって酸化されると、色素を形成して放出することにより、本発明の実施において可視カラー画像を形成する。ロイコ色素は、可視領域において一般に無色又は極めて僅かに有色(光学濃度0.2未満)の色素の還元された形態である。このように酸化は、無色から有色への色の変化、0.2単位以上の光学濃度の増加、又は色相の実質的な変化を可能にする。
【0185】
有用なロイコ色素の代表的なクラスの一例としては、発色ロイコ色素(例えばインドアニリン、インドフェノール、又はアゾメチン色素)、イミダゾール・ロイコ色素、例えば米国特許第3,985,565号明細書(Gabrielson他)に記載された2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール、例えば米国特許第4,563,415号明細書(Brown他)、同第4,622,395号明細書(Bellus他)、同第4,710,510号明細書(Thien他)、及び同第4,782,010号(Mader他) に記載されたアジン、ジアジン、オキサジン又はチアジン核を有する色素、及び例えば米国特許第4,932,792号明細書(Grieve他)に記載されたベンジリデン・ロイコ化合物が挙げられる。上記発色ロイコ色素の更なる詳細は、米国特許第5,491,059号明細書(上記、第13欄)及びこの明細書中に記載された参考文献から得ることができる。
【0186】
ロイコ色素の別の有用なクラスは、例えば米国特許第4,587,211号明細書(Ishida他)及び同第4,795,697号(Vogel他)に記載されている「アルダジン」及び「ケタジン」ロイコ色素として知られているものを含む。
【0187】
色素放出化合物のさらに別の有用なクラスは、酸化されると拡散性色素を放出する化合物を含む。これらは、予め形成された色素放出(PDR)化合物又はレドッキス色素放出(RDR)化合物として知られている。このような化合物において、還元剤は、酸化時に移動性の予め形成された色素を放出する。このような化合物の例は、米国特許第4,981,775号明細書(Swain)に記載されている。
【0188】
さらに、還元剤は、写真分野において知られているように、酸化されると、カラー・カプラー又は現像剤を形成するコンベンショナルな写真色素を放出する化合物であってもよい。
【0189】
形成又は放出される色素は、同じ又は異なる画像形成層内で同じであってよい。反射最大吸光度に60 nm以上の差があることが好ましい。より好ましくは、この差は80〜100 nmである。種々の色素吸光度の更なる詳細は、米国特許第5,491,059号明細書(上記、第14欄)に記載されている。
【0190】
本発明のフォトサーモグラフィ材料中に内蔵することができる、1種又は2種以上の色素形成化合物又は色素放出化合物の総量は一般に、これらの材料が配置された各画像形成層の総重量の0.5〜25重量%である。好ましくは、各画像形成層内の量は、総乾燥層重量を基準として1〜10重量%である。ロイコ色素の有用な相対比率は、当業者に容易に明らかとなる。
【0191】
他の添加物
本発明によって調製されるフォトサーモグラフィ材料は、その他の添加剤、例えば貯蔵寿命安定剤、カブリ防止剤、コントラスト促進剤、現像促進剤、アキュータンス色素、処理後安定剤又は安定剤前駆体、熱溶剤(メルトフォーマーとしても知られる)、及び当業者には容易に明らかなその他の画像改質剤を含有することもできる。
【0192】
フォトサーモグラフィ材料の特性(例えばコントラスト、Dmin、スピード又はカブリ)をさらに制御するために、式Ar-S-M1及びAr-S-S-Arの1種又は2種以上の複素環式芳香族メルカプト化合物又は複素環式芳香族ジスルフィド化合物を添加することが好ましいことがあり、上記式中、M1は水素原子又はアルカリ金属原子を表わし、Arは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子又はテルリウム原子のうちの1種又は2種以上を含有する複素芳香環又は縮合複素芳香環を表わす。好ましくは、複素芳香環は、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン又はキナゾリノンを含む。その他の複素芳香環を有する化合物、及び他の波長における増感を促進する化合物も好適と考えられる。例えば、複素芳香族メルカプト化合物が、欧州特許第0 559 228号明細書(Philip Jr.他)において赤外フォトサーモグラフィ材料のための超色増感剤として記載されている。
【0193】
複素芳香環は置換基を担持することもできる。好ましい置換基の例はハロ基(例えばブロモ及びクロロ)、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル基(例えば炭素原子数1以上、好ましくは炭素原子数1〜4)、及びアルコキシ基(例えば炭素原子数1以上、好ましくは炭素原子数1〜4)である。
【0194】
複素芳香族メルカプト化合物が最も好ましい。好ましい複素芳香族メルカプト化合物の例は、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプト-5-メチルベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、及び2-メルカプトベンゾキサゾール、及びこれらの混合物である。
【0195】
複素芳香族メルカプト化合物が使用される場合、これは一般に、乳剤層内の総銀量1モル当たり0.0001モル以上の量で乳剤層内に存在する。より好ましくは、複素芳香族メルカプト化合物は、総銀量1モル当たり0.001モル〜1.0モル、最も好ましくは0.005モル〜0.2モルの範囲内で存在する。
【0196】
フォトサーモグラフィ材料は、さらに、カブリの生成に対して保護することができ、また、貯蔵中の感度損失に対して安定化させることができる。本発明の実施には必要ではないが、カブリ防止剤として乳剤層に水銀(2+)塩を添加すると有利な場合がある。これを目的とした好ましい水銀(2+)塩は、酢酸水銀及び臭化水銀である。その他の有用な水銀塩は、米国特許第2,728,663号明細書(Allen)に記載されているものを含む。
【0197】
単独又は組み合わせで使用することができる他の好適なカブリ防止剤及び安定剤は、米国特許第2,131,038号明細書(Brooker)及び同第2,694,716号明細書(Allen)に記載されているようなチアゾリウム塩、米国特許第2,886,437号明細書(Piper)に記載されているようなアザインデン、米国特許第2,444,605号明細書(Hembach他)に記載されているようなトリアザインドリジン、米国特許第3,287,135号明細書(Anderson他)に記載されているようなウラゾール、米国特許第3,235,652号明細書(Kennard他)に記載されているようなスルホカテコール、英国特許第623,448号明細書(Carrol他)に記載されているようなオキシム、米国特許第2,839,405号明細書(Jones)に記載されているような多価金属塩、米国特許第3,220,839号明細書(Herz)に記載されているようなチウロニウム塩、米国特許第2,566,263号明細書(Trirelli)及び同第2,597,915号明細書(Damshroder)に記載されているようなパラジウム塩、白金塩、及び金塩、例えば米国特許第5,594,143号明細書(Kirk他)及び同第5,374,514号明細書(Kirk他)に記載されているような-SO2CBr3基を有する化合物、及び米国特許第5,460,938号明細書(Kirk他)に記載されているような2-(トリブロモメチルスルホニル)キノリン化合物を含む。
【0198】
現像中に熱を加えると安定剤を放出することができる安定剤前駆体化合物を使用することもできる。このような前駆体化合物は、例えば米国特許第5,158,866号明細書(Simpson他)、同第5,175,081号明細書(Krepski他)、同第5,298,390号明細書(Sakizadeh他)、及び同第5,300,420号明細書(Kenney他)に記載されている。
【0199】
加えて、米国特許第6,171,767号明細書(Kong他)に記載されたように、ベンゾトリアゾールの或る特定の置換型スルホニル誘導体(例えばアルキルスルホニルベンゾトリアゾール及びアリールスルホニルベンゾトリアゾール)が、有用な安定化化合物(例えば処理後プリント安定化)であることが判っている。
【0200】
さらに、他の特定の有用なカブリ防止剤/安定剤が、米国特許第6,083,681号明細書(Lynch他)により詳細に記載されている。
【0201】
他のカブリ防止剤は、例えば米国特許第5,028,523号明細書(Skoug)に記載されているような複素環式化合物の臭化水素酸塩(例えば臭化水素酸ピリジニウムペルブロミド)、例えば米国特許第4,784,939号明細書(Pham)に記載されているようなベンゾイル酸化合物、例えば米国特許第5,686,228号明細書(Murray他)に記載されているような置換型プロペンニトリル化合物、例えば米国特許第5,358,843号明細書(Sakizadeh他)に記載されているようなシリル・ブロック型化合物、例えば米国特許第6,143,487号明細書(Philip, Jr.他)に記載されているようなビニルスルホン、例えば欧州特許出願公開第0 600 586号明細書(Philip, Jr.他)に記載されているようなジイソシアネート化合物、及び例えば欧州特許出願公開第0 600 587号明細書(Oliff他)に記載されているようなトリブロモメチルケトンである。
【0202】
本明細書中に記載されたフォトサーモグラフィ材料は、1種又は2種以上のポリハロカブリ防止剤を含んでもよい。このカブリ防止剤は、1種又は2種以上のポリハロ置換基、例えばジクロロ基、ジブロモ基、トリクロロ基及びトリブロモ基を含む。カブリ防止剤は、芳香族複素環式化合物及び炭素環式化合物を含む、脂肪族、脂環式又は芳香族化合物であってよい。
【0203】
特に有用なカブリ防止剤は、ポリハロカブリ防止剤、例えば-SO2C(X')3基(この式中、X'は同じ又は異なるハロゲン原子を表わす)を有するポリハロカブリ防止剤である。
【0204】
有利には、本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料は、1種又は2種以上の溶剤(又はメルト・フォーマー)を含むこともできる。このような化合物の代表例としては、サリチルアニリド、フタルイミド、N-ヒドロキシフタルイミド、N-カリウム-フタルイミド、スクシニミド、N-ヒドロキシ-1,8-ナフタルイミド、フタラジン、1-(2H)-フタラジノン、2-アセチルフタラジノン、ベンズアニリド、ジメチル尿素、D-ソルビトール及びベンゼンスルホンアミドが挙げられる。これらの化合物の組み合わせ、例えばスクシニミドとジメチル尿素との組み合わせを用いることもできる。例えば米国特許第3,438,776号明細書(Yudelson)、同第5,250,386号明細書(Aono他)、同第5,368,979号明細書(Freedman他)、同第5,716,772号明細書(Taguchi他)、及び同第6,013,420号明細書(Windender)に、公知の熱溶剤が開示されている。
【0205】
改善されたより効果的な画像現像を可能にするために、本発明の方法により調製されるフォトサーモグラフィ材料中に塩基放出剤又は塩基前駆体を含むことが、しばしば有利である。本明細書中に採用された塩基放出剤又は塩基前駆体は、フォトサーモグラフィ材料中の加熱時に、上記感光性ハロゲン化銀と、銀塩及びハロゲン化銀現像主薬を含む画像形成複合体とのより効果的な反応を可能にする化合物を含むようになっている。代表的な塩基放出剤又は塩基前駆体は、グアニジニウム化合物、例えばトリクロロ酢酸グアニジニウム、及び塩基を放出するがしかし写真ハロゲン化銀材料に不都合な影響を与えないことが知られているその他の化合物、例えばフェニルスルホニルアセテートを含む。更なる詳細は、米国特許第4,123,274号明細書(Knight他)に示されている。
【0206】
所定の範囲の濃度の塩基放出剤又は塩基前駆体が、上記フォトサーモグラフィ材料中で有用である。塩基放出剤又は塩基前駆体の最適濃度は、所望の画像、フォトサーモグラフィ材料中の特定の成分、及び処理条件に依存することになる。
【0207】
画像を改善する「トナー」又はこれらの誘導体は、フォトサーモグラフィ材料の極めて望ましい成分である。トナーは、フォトサーモグラフィ画像形成層に添加されると、現像済銀画像の色を、黄色がかった橙色から茶色がかった黒又は濃い藍色にシフトする。一般に、このトナーを含む層の総乾燥重量を基準として、0.01重量%〜10重量%の量で、より好ましくは0.1重量%〜10重量%の量で、本明細書中に記載された1種又は2種以上の化合物が存在する。トナーは、フォトサーモグラフィ乳剤層内又は隣接層内に内蔵することができる。
【0208】
トナーとして有用な化合物は、例えば米国特許第3,080,254号明細書(Grant, Jr.)、同第3,847,612号明細書(Winslow)、同第4,123,282号明細書(Winslow)、同第4,082,901号明細書(Laridon他)、同第3,074,809号明細書(Owen)、同第3,446,648号明細書(Workman)、同第3,844,797号明細書(Willems他)、同第3,951,660号明細書(Hagemann他)、同第5,599,647号明細書(Defieuw他)、及び英国特許第1,439,478号明細書(AGFA)に記載されている。
【0209】
フタラジン及びその誘導体[例えば米国特許第6,146,822号明細書(Asanuma他)に記載されたもの]、フタラジノン及びフタラジノン誘導体が、特に有用なトナーである。
【0210】
追加の有用なトナーは、例えば米国特許第3,832,186号明細書(Masuda他)、同第6,165,704号明細書(Miyake他)、同第5,149,620号明細書(Simpson他)、及び係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/193,443号明細書(Lynch, Zou及びUlrichにより2002年7月11日付けで出願)、米国特許出願第10/192,944号明細書(Lynch, Ulrich及びZouにより2002年7月11日付けで出願)に記載されているような置換型及び無置換型メルカプトトリアゾールである。
【0211】
同一譲受人による米国特許第6,605,418号明細書(Ramsden他)に記載されたフタラジン化合物、米国特許出願第10/341,754号明細書(Lynch, Ulrich及びSkougにより2003年1月14日付けで出願)に記載されているようなトリアジンチオン化合物、及び米国特許出願第10/384,244号明細書(Lynch及びUlrichにより2003年3月7日付けで出願)に記載されているような複素環式ジスルフィド化合物も有用である。
【0212】
トナーの一例としては、フタルイミド及びN-ヒドロキシフタルイミド、環状イミド(例えばスクシニミド)、ピラゾリン-5-オン、キナゾリノン、1-フェニルウラゾール、3-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、及び2,4-チアゾリジンジオン、ナフタルイミド(例えばN-ヒドロキシ-1,8-ナフタルイミド)、コバルト錯体[例えばヘキサアミンコバルト(3+)トリフルオロアセテート]、メルカプタン[例えば3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2,4-ジメルカプトピリミジン、3-メルカプト-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール及び2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール)、N-(アミノメチル)-アリールジカルボキシミド(例えば(N,N-ジメチルアミノメチル)フタルイミド)、及びN-(ジメチルアミノメチル)ナフタレン-2,3-ジカルボキシミド、ブロックされたピラゾール、イソチウロニウム誘導体の組み合わせ、メロシアニン色素{例えば3-エチル-5-[(3-エチル-2-ベンゾチアゾリニリデン)-1-メチル-エチリデン]-2-チオ-2,4-o-アゾリジン-ジオン}、フタラジン及びその誘導体、フタラジノン及びフタラジノン誘導体、又は金属塩又はこれらの誘導体[例えば4-(1-ナフチル)フタラジノン、6-クロロフタラジノン、5,7-ジメトキシフタラジノン、及び2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン]、フタラジン(又はその誘導体)及び1種又は2種以上のフタル酸誘導体(例えばフタル酸、4-メチルフタル酸、4-ニトロフタル酸、及び無水テトラクロロフタル酸)の組み合わせ、キナゾリンジオン、ベンゾオキサジン又はナフトオキサジン誘導体、色調改質剤としてだけではなくハロゲン化銀in-situ形成のためのハロゲン化物イオン源としても機能するロジウム錯体[例えばアンモニウムヘキサクロロロデート(3+)、臭化ロジウム、硝酸ロジウム、及びカリウムヘキサクロロロデート(3+)]、米国特許第5,817,598(Defieuw他)に記載されているようなベンゾオキサジン-2,4-ジオン及びナフトオキサジンジオン(例えば1,3-ベンゾオキサジン-2,4-ジオン、8-メチル-1,3-ベンゾオキサジン-2,4-ジオン、3,4-ジヒドロ-2,4-ジオキソ-1,3,2H-ベンゾオキサジン、3,4-ジヒドロ-2,4-ジオキソ-1,3,7-エチルカルボナトベンゾオキサジン、及び6-ニトロ-1,3-ベンゾオキサジン-2,4-ジオン)、ピリミジン及びasym-トリアジン(例えば2,4-ジヒドロキシピリミジン、2-ヒドロキシ-4-アミノピリミジン及びアザウラシル)及びテトラアザペンタレン誘導体[例えば3,6-ジメルカプト-1,4-ジフェニル-1H,4H-2,3a,5,6a-テトラアザペンタレン及び1,4-ジ-(o-クロロフェニル)-3,6-ジメルカプト-1H,4H-2,3a,5,6a-テトラアザペンタレン]が挙げられる。
【0213】
本発明の方法によって調製されるフォトサーモグラフィ材料は、通常は「裏側」層内に内蔵された1種又は2種以上の画像安定化化合物を含むこともできる。このような化合物の一例としては、具体的には同一譲受人による米国特許第6,599,685号明細書(Kong)に記載されているように、フタラジノン及びその誘導体、ピリダジン及びその誘導体、ベンゾキサジン及びベンゾキサジン誘導体、ベンゾチアジンジオン及びその誘導体、及びキナゾリンジオン及びその誘導体が挙げられる。その他の有用な裏側画像安定剤の一例としては、アントラセン化合物、クマリン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ナフタル酸イミド化合物、ピラゾリン化合物、又は例えば米国特許第6,465,162号明細書(Kong他)及び英国特許第1,565,043号明細書(Fuji Photo)に記載された化合物が挙げられる。
【0214】
燐光体
いくつかの態様において、化学増感されたフォトサーモグラフィ乳剤及び本明細書中に記載されたように調製された材料中に、X線に対して感光する燐光体を内蔵することも効果的である。有機溶剤系乳剤及び材料が米国特許第6,440,649号(Simpson他)に記載されており、水性乳剤及び材料が米国特許第6,573,033号明細書(Simpson他)に記載されている。
【0215】
本発明の実施において、任意のコンベンショナル又は有用な燐光体を単独又は組み合わせで使用することができる。有用な燐光体のより具体的な詳細を以下に示す。
【0216】
燐光体は、励起時に赤外線、可視光、又は紫外線を放射する材料である。固有燐光体は、自然(すなわち固有)に燐光を発する材料である。「活性化された」燐光体は、1種又は2種以上のドーパントが意図的に添加された、固有燐光体であってもなくてもよい基礎材料から構成された燐光体である。これらのドーパントは、燐光体を「活性化」し、そして燐光体に赤外線、可視光、又は紫外線を放射させる。例えば、Gd2O2S:Tbにおいて、Tb原子(ドーパント/アクチベーター)は、燐光体を光学発光させる。
【0217】
いくつかの燐光体、例えばBaFBrは、貯蔵燐光体として知られている。これらの材料の場合、ドーパントは貯蔵並びに輻射線の放射に関与する。貯蔵燐光体がフォトサーモグラフィ材料内部に内蔵される場合、X線による初期露光は、燐光体粒子内部に「貯蔵される」。次いで、材料が後で刺激電磁線(通常は可視光又は赤外線)によって二度目に露光されると、「貯蔵」されたエネルギーが可視光又は赤外線の放射として放出される。本明細書中に記載されたBaFBrは、このような貯蔵燐光体である。
【0218】
例えば、有用な燐光体は、蛍光増感スクリーンに関連する数多くの参考文献に記載されている。これらの参考文献は例えば、リサーチディスクロージャ, 第184巻, 1979年8月, 第18431項, セクションIX, X-ray Screens/Phosphors, 及び米国特許第2,303,942号明細書(Wynd他)、同第3,778,615号明細書(Luckey)、同第4,032,471号明細書(Luckey)、同第4,225,653号明細書(Brixner他)、同第3,418,246号明細書(Royce)、同第3,428,247号明細書(Yocon)、同第3,725,704号明細書(Buchanan他)、同第2,725,704号明細書(Swindells)、同第3,617,743号明細書(Rabatin)、同第3,974,389号明細書(Ferri他)、同第3,591,516号明細書(Rabatin)、同第3,607,770号明細書(Rabatin)、同第3,666,676号明細書(Rabatin)、同第3,795,814号明細書(Rabatin)、同第4,405,691号明細書(Yale)、同第4,311,487号明細書(Luckey他)、同第4,387,141号明細書(Patten)、同第5,021,327号明細書(Bunch他)、同第4,865,944号明細書(Roberts他)、同第4,994,355号明細書(Dickerson他)、同第4,997,750号明細書(Dickerson他)、同第5,064,729号明細書(Zegarski)、同第5,108,881号明細書(Dickerson他)、同第5,250,366号明細書(Nakajima他)、同第5,871,892号明細書(Dickerson他)、欧州特許出願公開第0 491 116号明細書(Benzo他)を含む。これら全ての開示内容を燐光体に関して本明細書中に引用する。
【0219】
燐光体の有用なクラスの一例としては、タングステン酸カルシウム(CaWO4)、活性化型又は不活性化型スズ酸リチウム、ニオビウム及び/又は希土類活性化型又は不活性化型タンタル酸イットリウム、タンタル酸ルテチウム、又はタンタル酸ガドリニウム、希土類(例えばテルビウム、ランタン、ガドリニウム、セリウム及びルテチウム)活性化型又は不活性化型中央カルコゲン燐光体、例えば希土類オキシカルコゲニド及びオキシハリド、及びテルビウム活性化型又は不活性化型ランタン及びルテチウム中央カルコゲン燐光体が挙げられる。
【0220】
さらに別の有用な燐光体は、例えば米国特許第4,988,880号明細書(Bryan他)、同第4,988,881号明細書(Bryan他)、同第4,994,205号明細書(Bryan他)、同第5,095,218号明細書(Bryan他)、同第5,112,700号明細書(Lambert他)、同第5,124,072号明細書(Dole他)、及び同第5,336,893号明細書(Smith他)に記載されているようなハフニウムを含有する燐光体である。これらは、希土類活性化型酸臭化ランタン、及びテルビウム活性化型又はツリウム活性化型酸化ガドリニウム、例えばGd2O2S:Tbを含む。
【0221】
他の好適な燐光体が、米国特許第4,385,397号明細書(Arakawa他)及び同第5,381,015号明細書(Dooms)(両方とも本明細書中に引用する)に記載されており、そして例えば二価ユウロピウム及びその他の希土類活性化型アルカリ土類金属ハロゲン化物燐光体、及び希土類元素活性化型希土類酸ハロゲン化物燐光体を含む。これらのタイプの燐光体のうち、より好ましい燐光体は、アルカリ土類金属フルオロハロゲン化物即時発光性燐光体及び/又は貯蔵燐光体[特にヨウ化物含有燐光体、例えば米国特許第5,464,568号明細書(Bringley他)に記載されたアルカリ土類金属フルオロブロモヨウ化物貯蔵燐光体]を含む。
【0222】
別のクラスの有用な燐光体は、希土類ホスト、例えば希土類活性化型混合型アルカリ土類金属硫酸塩、例えばユウロピウム活性化型硫酸バリウムストロンチウムを含む。
【0223】
さらに別の有用な燐光体は、ドープ型又は非ドープ型タンタル、例えばYTaO4、YTaO4:Nb、Y(Sr)TaO4、及びY(Sr)TaO4:Nbである。これらの燐光体は、米国特許第4,226,653号明細書(Brixner)、同第5,064,729号明細書(Zegarski)、同第5,250,366号明細書(Nakajima他)、同第5,626,957号明細書(Benso他)に記載されている。その他の有用な燐光体はアルカリ土類金属燐光体である。
【0224】
本発明の実施において、貯蔵燐光体を使用することもできる。種々の貯蔵燐光体が例えば米国特許第5,464,568号明細書(上記)に記載されている。このような燐光体は、任意にはヨウ化物を含有することができる二価アルカリ土類金属フルオロハロゲン化物燐光体を含む。これらの燐光体のいくつかの態様が、米国特許第5,464,568号明細書(上記)により詳細に記載されている。さらに他の貯蔵燐光体が、米国特許第4,368,390号明細書(Takahashi他)に記載されており、これらの燐光体は、より詳細に上述したように、二価ユウロピウム及びその他の希土類活性化型アルカリ土類金属ハロゲン化物、及び希土類元素活性化型希土類酸ハロゲン化物を含む。
【0225】
有用な燐光体の例は、SrS:Ce,SM, SrS:Eu,Sm, ThO2:Er, La2O2S:Eu,Sm, ZnS:Cu,Pb、及び米国特許第5,227,253号明細書(Takasu他)に記載されたその他のものを含む。
【0226】
1種又は2種以上の燐光体は、フォトサーモグラフィ材料中の総銀量1モル当たり0.1モル以上、好ましくは0.5〜20モルの量でフォトサーモグラフィ材料中に存在することができる。一般に総銀量は0.002モル/m2以上である。
【0227】
本発明において使用される燐光体のサイズの理由から、燐光体が内蔵される層(通常は1つ又は2つ以上の乳剤層)の乾燥コーティング重量は一般に5 g/m2以上、好ましくは5 g/m2〜200 g/m2である。最も好ましくは、1種又は2種以上の燐光体及び感光性ハロゲン化銀は、上記好ましい範囲内の乾燥コーティング重量を有する同じ画像形成層内部に内蔵される。
【0228】
バインダー
化学増感された感光性ハロゲン化銀、非感光性の被還元性銀イオン源、上述の還元剤組成物、及び本発明において使用される任意のその他の画像形成層添加剤は一般に、親水性又は疎水性の1種又は2種以上のバインダーと一般に組み合わされる。このように、水性溶剤系又は有機溶剤系の配合物を使用することにより、本発明の熱現像可能な材料を調製することができる。いずれか又は両方のタイプのバインダーの混合物を使用することもできる。バインダーは疎水性高分子材料、例えば、溶液又は懸濁液中に他の成分を保持するのに十分に極性の天然樹脂及び合成樹脂から選択されることが好ましい。
【0229】
典型的な疎水性バインダーの一例としては、ポリビニルアセタール、ポリビニルクロリド、ポリビニルアセテート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、メタクリレートコポリマー、無水マレイン酸エステルコポリマー、ブタジエン-スチレンコポリマー、及び当業者に容易に明らかなその他の材料が挙げられる。コポリマー(ターポリマーを含む)もポリマーの定義に含まれる。ポリビニルアセタール(例えばポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール)、及びビニルコポリマー(例えばポリビニルアセテート及びポリビニルクロリド)が特に好ましい。特に好適なバインダーは、BUTVAR(商標) (Solutia, Inc)、及びPIOLOFORM(商標)(Wacker Chemical Company)として入手可能なポリビニルブチラール樹脂である。
【0230】
疎水性ポリマーの水性分散体(又はラテックス)はバインダーとして単独で、又は他のバインダーとの組み合わせで使用することもできる。
【0231】
有用な親水性バインダーの一例としては、タンパク質及びタンパク質誘導体、ゼラチン及びゼラチン様誘導体(アルカリ処理及び酸処理されたゼラチンを含む硬化又は未硬化ゼラチン、アセチル化ゼラチン、酸化ゼラチン、フタル酸化ゼラチン及び脱イオン・ゼラチン)、セルロース系材料、例えばヒドロキシメチルセルロース及びセルロースエステル、アクリルアミド/メタクリルアミドポリマー、アクリル/メタクリルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルラクタム)、スルホアルキルアクリレート又はメタクリレートのポリマー、加水分解ポリビニルアセテート、ポリアミド、多糖(例えばデキストラン及び澱粉エーテル)、及び、水性写真乳剤に使用するものとして周知のその他の自然発生型又は合成型ビヒクル[例えばリサーチディスクロージャ, 第38957項(上記)参照]が挙げられる。米国特許第5,620,840号明細書(Maskasky)及び米国特許第5,667,955号明細書(Maskasky)に記載されているように、平板状ハロゲン化銀粒子のためのペプタイザーとして、カチオン性澱粉を使用することもできる。
【0232】
種々のバインダーのための硬化剤が所望の場合には存在してよい。有用な硬化剤がよく知られており、これらは例えば欧州特許第0 600 586号明細書(Philip, Jr他)に記載されているようなジイソシアネート化合物、米国特許第6,143,487号明細書(Philip, Jr他)及び欧州特許第0 640 589号明細書(Gathmann他)に記載されているようなビニルスルホン化合物、米国特許第6,190,822号明細書(Dickerson他)に記載されているようなアルデヒド及び種々の他の硬化剤を含む。フォトサーモグラフィ材料中に使用される親水性バインダーは一般に、任意のコンベンショナルな硬化剤を使用して部分的又は完全に硬化される。有用な硬化剤がよく知られており、例えば、T. H. James, The Theory of the Photographic Process, 第4版, Eastman Kodak Company, Rochester, NY, 1977, 第2章, 第77-78頁に記載されている。
【0233】
フォトサーモグラフィ材料の比率及び活性が特定の現像時間及び温度を必要とする場合、バインダーはこれらの条件に耐えることが可能であるべきである。疎水性バインダーが使用される場合、バインダーは60秒間にわたって120℃でその構造完全性を分解又は損失しないことが好ましい。親水性バインダーが使用される場合、バインダーは60秒間にわたって150℃でその構造完全性を分解又は損失しないことが好ましい。バインダーは60秒間にわたって177℃でその構造完全性を分解又は損失しないことがより好ましい。
【0234】
ポリマーバインダーは、バインダー中に分散された成分を担持するのに十分な量で使用される。バインダー量の効果的な範囲は、当業者によって適切に決定することができる。好ましくはバインダーは、バインダーが含まれる層の総乾燥重量を基準として、10重量%〜90重量%のレベル、より好ましくは20重量%〜70重量%のレベルで使用される。両側型フォトサーモグラフィ材料中のバインダー量は同じであっても異なっていてもよい。
【0235】
支持体の両側上の画像形成層及び非画像形成層の両方に、大部分(総バインダー重量の50重量%超)が疎水性であるバインダーを使用することが、フォトサーモグラフィ材料において特に有用である。こうして、本発明に従って調製されるフォトサーモグラフィ乳剤中に疎水性バインダーを混和することにより、支持体上にコーティングするためのフォトサーモグラフィ乳剤配合物が形成される。
【0236】
支持体材料
本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料は高分子支持体を含む。この高分子支持体は、好ましくはフレキシブルで透明なフィルムである。このフィルムは任意の所望の厚さを有しており、材料の用途に応じて、1種又は2種以上の高分子材料から成っている。支持体は一般には透明(特に材料がフォトマスクとして使用される場合)であるか又は少なくとも半透明であるが、しかし、不透明な支持体が有用な場合もある。これらの支持体は、熱現像中に寸法安定性を示すこと、また、上側の層との好適な接着特性を有することが必要とされる。このような支持体を形成するための有用な高分子材料の一例としては、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート)、セルロースアセテート及びその他のセルロースエステル、ポリビニルアセタール、ポリオレフィン(例えばポリエチレン及びポリプロピレン)、ポリカーボネート、及びポリスチレン(及びスチレン誘導体のポリマー)が挙げられる。好ましい支持体は、良好な熱安定性を有するポリマー、例えばポリエステル及びポリカーボネートから成っている。ポリエチレンテレフタレート・フィルムが特に好ましい支持体である。種々の支持体材料が、例えばリサーチディスクロージャ, 1979年8月, 第18431項に記載されている。寸法安定性のポリエステル・フィルムの製造方法が、リサーチディスクロージャ, 1999年9月, 第42536項に記載されている。支持体材料を処理又はアニールすることにより、収縮を低減し、そして寸法安定性を促進することもできる。
【0237】
二色性ミラー層を含む支持体を使用することも有用である。二色性ミラー層は、少なくとも所定の波長範囲を有する輻射線を乳剤層に対して反射させ、そして所定の波長範囲外の波長を有する輻射線を透過させる。このような二色性支持体は米国特許第5,795,708号明細書(Boutet)に記載されている。
【0238】
2種以上の異なる高分子材料から成る多数の交互の層を含む透明多層高分子支持体を使用することが、さらに有用である。このような多層高分子支持体は好ましくは、フォトサーモグラフィ感光性材料が感光する波長範囲内の化学線の50%以上を反射させ、そしてスピードが高められたフォトサーモグラフィ材料を提供する。このような透明多層高分子支持体は米国特許第6,630,283号明細書(Simpson他)に記載されている。
【0239】
高い温度に対して安定的な不透明支持体、例えば色素含有高分子フィルム及び樹脂コート紙を使用することもできる。
【0240】
支持体材料は、所望の場合には、種々の着色剤、顔料、ハレーション防止色素又はアキュータンス色素を含有することができる。例えば、支持体は、その結果として画像形成されるフィルム内に青色を提供する1種又は2種以上の色素を含むことができる。コンベンショナルな処置(例えばコロナ放電)によって支持体材料を処理することにより、上側の層の接着力を改善することができ、或いは、下塗り層又はその他の接着促進層を使用することができる。有用な下塗り層配合物は、写真材料のために従来より使用されている配合物、例えばハロゲン化ビニリデン・ポリマーを含む。
【0241】
フォトサーモグラフィ配合物
フォトサーモグラフィ乳剤層のための有機溶剤系コーティング配合物は、本発明に従って調製されるフォトサーモグラフィ乳剤と、1種又は2種以上のバインダー、還元性組成物、トナー、及び任意の添加物とを、好適な溶剤系中で混合することにより調製することができる。この溶剤系は通常は、有機溶剤、例えばトルエン、2-ブタノン(メチルエチルケトン)、アセトン又はテトラヒドロフランを含む。
【0242】
或いは、フォトサーモグラフィ乳剤配合物を、水又は水-有機溶剤混合物中で親水性バインダー(例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、又はラテックス)を有するように構成することにより、水性コーティング配合物を提供することもできる。
【0243】
本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料は、可塑剤及び滑剤、例えば米国特許第2,960,404号明細書(Milton他)に記載されたタイプのポリアルコール及びジオール、米国特許第2,588,765号明細書(Robijin他)及び同第3,121,060号明細書(Duane)に記載されているような脂肪酸又はエステル、及び英国特許第955,061号明細書(DuPont)に記載されているようなシリコーン樹脂を含有することができる。これらの材料は、艶消し剤、例えば澱粉、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、及び米国特許第2,992,101号明細書(Jelley他)及び同第2,701,245号明細書(Lynn)に記載されたタイプのビードを含む高分子ビードを含有することもできる。高分子フッ素処理界面活性剤も、種々の目的、例えば米国特許第5,468,603号明細書(Kub)に記載されているようなコーティング性及び光学濃度の均一性の改善のために、画像形成材料から成る1つ又は2つ以上の層内で有用である。
【0244】
米国特許第6,436,616号(Geisler他)には、「木目(woodgrain)」効果として知られるもの、又は不均一な光学濃度を低減するための種々のフォトサーモグラフィ材料改質手段が記載されている。この効果は、支持体の処理、トップコートへの艶消し剤の添加、特定層内でのアキュータンス色素の使用、又は上記刊行物に記載されたその他の処置を含む、いくつかの手段によって低減又は排除することができる。
【0245】
本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料は、支持体のいずれかの側又は両側で、フォトサーモグラフィ乳剤層を含む層のうちのいずれか、又は別個の導電層内に1種又は2種以上の静電防止剤を含むことができる。このように、導電性成分の一例としては、可溶性塩(例えば塩化物又は硝酸塩)、蒸着金属層、又は米国特許第2,861,056号明細書(Minsk)及び同第3,206,312号明細書(Sterman他)に記載されているようなイオン性ポリマー、又は米国特許第3,428,451号明細書(Trevoy)に記載されているような不溶性無機塩、米国特許第5,310,640号明細書(Markin他)に記載されているような導電性下層、米国特許第5,368,995号明細書(Christian他)に記載されているような電子伝導性金属アンチモン酸塩粒子、及び欧州特許出願公開第0 678 776号明細書(Melpolder他)に記載されているような高分子バインダー中に分散された導電性金属含有粒子が挙げられる。特に有用な導電性粒子は、係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/304,224号明細書(LaBelle, Sakizadeh, Ludemann, Bhave及びPhamによって2002年11月27日付けで出願)に記載されているような、非針状金属アンチモン酸塩粒子である。他の静電防止剤は当業者によく知られている。
【0246】
さらに他の導電性組成物は、1種又は2種以上のフルオロ化学物質を含む。これらのそれぞれは、Rf-CH2CH2-SO3Hとアミンとの反応生成物であり、Rfは4つ又は5つ以上の完全フッ素化された炭素原子を含む。これらの静電防止組成物は、米国特許出願公開第2003-0198901号明細書(Sakizadeh他)により詳細に記載されている。
【0247】
追加の導電性組成物は、構造Rf-R-N(R'1)(R'2)(R'3)+X-を有する1種又は2種以上のフルオロ化学物質を含み、上記式中、Rfは、炭素原子数4〜18の直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキル基であり、Rは、鎖内に4つ以上の炭素原子及び硫化物基を含む二価結合基であり、R'1、R'2、R'3は独立して水素又はアルキル基であり、又は、R'1、R'2、及びR'3のうちの任意の2つが結合して、カチオン性窒素原子を有する5〜7員複素環を提供するのに必要な炭素原子及び窒素原子を表すことができ、そして、X-は一価アニオンである。これらの静電防止組成物は、係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/265,058号明細書(Sakizadeh, LaBelle及びBhaveによって2002年10月4日付けで出願)により詳細に記載されている。
【0248】
本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料は、支持体の画像形成側上の1つ又は2つ以上の層から構成することができる。単層材料は、化学増感されたハロゲン化銀、非感光性の被還元性銀イオン源、還元剤組成物、バインダー、並びに任意の添加物、例えばトナー、アキュータンス色素、コーティング助剤及び他のアジュバントを含有するべきである。
【0249】
全ての成分を含有する単一の画像形成層コーティングと、表面保護トップコートとを含む二層構造が、フォトサーモグラフィ材料の表側において普通は見いだされる。しかし、化学増感されたハロゲン化銀と非感光性の被還元性銀イオン源とを第1の画像形成層(通常、支持体に隣接する層)内に含有し、そしてその他の成分を第2の画像形成層内に含有するか又は両層間に分配された二層構造も考えられる。
【0250】
フォトサーモグラフィ材料において層間の接着を促進するための層も、例えば米国特許第5,891,610号明細書(Bauer他)、同第5,804,365号明細書(Bauer他)、及び同第4,741,992号明細書(Przezdziecki)に記載されているように知られている。例えば米国特許第5,928,857号明細書(Geisler他)に記載されているような特定の高分子接着材料を使用して、接着を促進することもできる。
【0251】
フィルムからの放射を低減するための層が存在してもよい。これらの層は、米国特許第6,352,819号明細書(Kenney他)、同第6,352,820号明細書(Bauer他)、及び同第6,420,102号明細書(Bauer他)、及び係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/341,747号明細書(Rao, Hammerschmidt, Bauer, Kress及びMillerによって2003年1月14日付けで出願)、及び米国特許出願第10/351,814号明細書(Huntによって2003年1月27日付けで出願)に記載された高分子バリヤ層を含む。
【0252】
本明細書中に記載された配合物(及びバリア層配合物)は、巻線ロッド・コーティング、浸漬コーティング、エアナイフ・コーティング、カーテン・コーティング、スライド・コーティング、又は、米国特許第2,681,294号明細書(Beguin)に記載されたタイプのホッパーを使用する押出コーティングを含む種々のコーティング処置によって、コーティングすることができる。層は一度に1つずつコーティングすることができ、或いは、例えば米国特許第2,761,791号明細書(Russell)、同第4,001,024号明細書(Dittman他)、同第4,569,863号明細書(Keopke他)、同第5,340,613号明細書(Hanzalik他)、同第5,405,740号明細書(LaBelle他)、同第5,415,993号明細書(Hanzalik他)、同第5,525,376号明細書(Leonard他)、同第5,733,608号明細書(Kessel他)、同第5,849,363号明細書(Yapel他)、同第5,843,530号明細書(Jerry他)、同第5,861,195号明細書(Bhave他)、及び英国特許第837,095号(Ilford)に記載されているような処置によって同時に2つ又は3つ以上の層をコーティングすることができる。乳剤層のための典型的なコーティング・ギャップは、10〜750 μmであってよく、そして層は、温度20℃〜100℃の強制空気中で乾燥させることができる。層の厚さは、MacBeth Color Densitometer Model TD 504によって測定して、0.2を上回る、そしてより好ましくは0.5〜5.0又はそれ以上の最大画像濃度を提供するように選択されることが好ましい。
【0253】
例えば、フォトサーモグラフィ乳剤配合物を支持体に塗布した後、又は塗布するのと同時に、乳剤配合物上に保護オーバーコート配合物を塗布することができる。好ましくは、2種以上の配合物が同時に塗布される。
【0254】
他の態様において、上述の2種又は3種以上のポリマーの単一相混合物を含む「キャリヤ」層配合物を、支持体上に直接的に塗布し、そしてこれにより、乳剤層の下側に配置することができる。このような配合物は米国特許第6,355,405号明細書(Ludemann他)に記載されている。好ましくは、キャリヤ層配合物は、フォトサーモグラフィ乳剤層配合物の塗布と同時に、支持体に塗布される。
【0255】
例えば米国特許第5,532,121号明細書(Yonkoski他)に記載されているようなフッ素処理ポリマーを内蔵することにより、又は例えば米国特許第5,621,983号明細書(Ludemann他)に記載されているような特定の乾燥技術を用いることにより、本発明により調製されたフォトサーモグラフィ材料内で斑点及びその他の表面異常を低減することができる。
【0256】
好ましくは、スライド・コーティングを用いてフィルム支持体に2つ又は3つ以上の層配合物が塗布される。第1の層は、第2の層がまだ湿っている間に、第2の層の上側にコーティングすることができる。これらの層のコーティングに使用される第1の流体及び第2の流体は、同じ溶剤であっても異なる溶剤(又は溶剤混合物)であってもよい。
【0257】
第1の層及び第2の層はフィルム支持体の一方の側にコーティングすることができるが、製造法は、前記高分子支持体の対向側又は裏側に、1つ又は2つ以上の追加の層、例えば導電層、ハレーション防止層、又は艶消し剤(例えばシリカ)を含有する層、又はこのような層の組み合わせを形成することを含むこともできる。或いは、1つの裏側層が所望の機能の全てを発揮することもできる。
【0258】
本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料が、支持体の両側にフォトサーモグラフィ乳剤層を含み、そして、1つ以上の乳剤層の下方のハレーション防止下層として1種以上の赤外線吸収性の熱漂白可能な組成物を含むことも考えられる。
【0259】
支持体の両側に熱現像可能な層が配置されたフォトサーモグラフィ材料は、しばしば「クロスオーバー」を蒙る。クロスオーバーは、フォトサーモグラフィ材料の一方の側を画像形成するのに使用される輻射線が、支持体を通して透過され、支持体の対向側にフォトサーモグラフィ層を画像形成する場合に生じる。このような輻射線は、画質(特に鮮鋭度)の低下を招く。クロスオーバーが低減されると、画像はより鮮鋭になる。クロスオーバーの低減には種々の方法が利用可能である。このような「クロスオーバー防止」材料は、クロスオーバーを低減するために特定的に含まれる材料であってよく、或いは、アキュータンス色素又はハレーション防止色素であってよい。いずれの場合にも、可視光で画像形成される場合には、クロスオーバー防止材料は処理中に無色にさせられることがしばしば必要である。
【0260】
画像鮮鋭度を促進するために、本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料は、アキュータンス色素及び/又はハレーション防止色素を含有する1つ又は2つ以上の層を含有することができる。これらの色素は、露光波長に近い吸光度を有するように選ばれ、散乱光を吸収するように構成される。ハレーション防止裏層、ハレーション防止下層、又はハレーション防止オーバーコートとして、公知技術に従って、1つ又は2つ以上のハレーション防止層内に1種又は2種以上のハレーション防止色素を内蔵することができる。加えて、公知の技術に従って、1つ又は2つ以上の表側層、例えばフォトサーモグラフィ乳剤層、プライマー層、下層、又はトップコート層内に、1種又は2種以上のアキュータンス色素を内蔵することもできる。フォトサーモグラフィ材料は、支持体の裏側に、より好ましくは裏側導電層内にハレーション防止組成物を含有することが好ましい。
【0261】
ハレーション防止色素及びアキュータンス色素として有用な色素は、米国特許第5,380,635号明細書(Gomez他)、同第6,063,560号明細書(Suzuki他)、及び欧州特許出願公開第1 083 459号明細書(Kimura)に記載されているスクアレイン色素、欧州特許出願第0 342 810号明細書(Leichter)に記載されたインドレニン色素、及び米国特許出願公開第2003-0162134号明細書(Hunt他)に記載されたシアニン色素を含む。
【0262】
処理中に熱で色を失うか又は白くなることになるアキュータンス色素又はハレーション防止色素を含む組成物を採用することも有用である。色素、及びこれらのタイプの色素を採用する構造が、例えば米国特許第5,135,842号明細書(Kitchin他)、同第5,266,452号明細書(Kitchin他)、同第5,314,795号明細書(Helland他)、及び同第6,306,566号明細書(Sakurada他)、特開2001-142175号公報(Hanyu他)、及び同第2001-183770号公報(Hanyu他)に記載されている。特開平11-302550号公報(Fujiwara)、特開2001-109101号公報(Adachi)、特開2001-51371号公報(Yabuki他)、及び特開2000-029168号公報(Noro)に記載された漂白組成物も有用である。
【0263】
特に有用な熱漂白可能な裏側ハレーション防止組成物は、ヘキサアリールビイミダゾール(「HABI」としても知られる)との組み合わせで使用される赤外線吸収化合物、例えばオキソノール色素及び種々のその他の化合物を含むことができる。このようなHABI化合物は、例えば米国特許第4,196,002号明細書(Levinson他)、同第5,652,091号明細書(Perry他)及び米国特許第5,672,562号明細書(Perry他)のように当業者に良く知られている。このような熱漂白可能な組成物の例は、例えば米国特許第6,455,210号明細書(Irving他)、同第6,514,677号明細書(Ramsden他)及び同第6,558,880号明細書(Goswami他)に記載されている。
【0264】
実際の使用条件下で、これらの組成物は、90℃以上の温度で0.5秒以上にわたって、漂白を可能にするように加熱される。好ましくは、100℃〜200℃の温度で5〜20秒間にわたって漂白を行う。最も好ましい漂白は、110℃〜130℃の温度で20秒間以内で行われる。
【0265】
いくつかの好ましい態様の場合、フォトサーモグラフィ材料は、支持体の両側で、1つ又は2つ以上の画像形成層上に表面保護層を含む。
【0266】
他の好ましい態様の場合、フォトサーモグラフィ材料は、1つ又は2つ以上のフォトサーモグラフィ乳剤層と同じ支持体の側に、表面保護層を含み、そしてハレーション防止組成物及び/又は導電性静電防止成分を含む層を裏側に含む。これらの態様には、別個の裏側表面保護層を含むこともできる。
【0267】
画像形成/現像
本発明に従って調製されるフォトサーモグラフィ材料は、任意の好適な画像形成源(典型的には、何らかのタイプの輻射線又は電子信号)を使用して、材料のタイプと呼応した任意の好適な形式で画像形成することができる。いくつかの態様の場合、材料は、300 nm以上〜1400 nm、好ましくは300 nm〜850 nmの範囲の輻射線に対して感光する。
【0268】
本発明によって調製されるフォトサーモグラフィ材料に、材料が感光する好適な輻射線源、例えば紫外線、可視光、近赤外線及び赤外線による露光を施すことにより潜像を提供することによって、画像形成を達成することができる。好適な露光手段がよく知られており、白熱灯又は蛍光灯、キセノン・フラッシュランプ、レーザー、レーザーダイオード、発光ダイオード、赤外線レーザー、赤外線レーザーダイオード、赤外線発光ダイオード、赤外線ランプ、又は当業者には容易に明らかな任意の他の紫外線、可視光、又は赤外線源、及びリサーチディスクロージャ, 1996年、第38957項のような当業者に記載された他のものを含む、輻射線源を含む。特に有用な赤外線露光手段は、レーザーダイオードを含み、米国特許第5,780,207号明細書(Mohapatra他)に記載されているような多長手方向露光技術として知られている技術によって、画像形成効率を高めるように変調されたレーザーダイオードを含む。その他の露光技術は、米国特許第5,493,327号明細書(McCallum他)に記載されている。
【0269】
いくつかの態様の場合、本発明中に記載されたフォトサーモグラフィ材料を、任意の好適なX線画像形成源を使用して画像形成することにより、潜像を提供することができる。好適な露光手段がよく知られており、これらの手段は、医療用、マンモグラフィ用、歯科用、及び工業用のX線ユニットを含む。
【0270】
貯蔵燐光体がフォトサーモグラフィ材料内部に内蔵される場合、X線による初期露光は、燐光体粒子内部に「貯蔵される」。次いで、材料が後で刺激電磁線(通常は可視光又は赤外線)によって二度目に露光されると、「貯蔵」されたエネルギーが可視光又は赤外線の放射として放出される。次いでフォトサーモグラフィ材料は加熱によって現像することができる。本明細書中に開示されたBaFBrは、このような貯蔵燐光体である。
【0271】
熱現像条件は、使用される構造に応じて変化することになるが、しかし、典型的には像様露光を施された材料を、好適に上昇させた温度で加熱することに関与することになる。従って潜像は、中程度に上昇させた温度、例えば50℃〜250℃(好ましくは80℃〜200℃、より好ましくは100℃〜200℃)の温度で十分な時間、一般には1〜120秒間にわたって露光済材料を加熱することにより、現像することができる。加熱は好適な加熱手段、例えば熱板、蒸気アイロン、熱ローラ又は加熱浴を使用して達成することができる。好ましい熱現像処置は、110℃〜135℃で3〜25秒間にわたって加熱することを含む。
【0272】
いくつかの方法において、現像は2工程で行われる。熱現像が、より短時間でより高い温度で行われ(例えば150℃で最大10秒間)、続いて転移溶剤の存在においてより低い温度(例えば80℃)で熱拡散が行われる。
【0273】
別の2工程現像法の場合、予加熱工程(例えば110℃で最大10秒間)、そしてその直後に最終現像工程(例えば125℃で最大20秒間)によって、熱現像を行うことができる。
【0274】
フォトマスクとしての使用
本明細書中に記載されるフォトサーモグラフィ材料は、画像形成されていない領域において350〜450 nmの範囲で十分に透過性を有するので、紫外線又は短波長可視光に対して感光する画像形成性媒体を引き続き露光する方法においてこれらの材料を使用することが可能である。例えば、材料を画像形成し、続いて現像を行うことにより、可視像がもたらされる。熱現像済フォトサーモグラフィ材料は、可視像がある領域では、紫外線又は短波長可視光を吸収し、そして可視像がない領域では、紫外線又は短波長可視光を透過させる。熱現像済材料を次いでマスクとして使用し、画像形成用輻射線源(例えば紫外線又は短波長可視光エネルギー源)と、このような画像形成用輻射線に対して感光する画像形成性材料、例えばフォトポリマー、ジアゾ材料、フォトレジスト、又は感光性印刷版との間に配置することができる。画像形成性材料を、露光・熱現像済フォトサーモグラフィ材料に含まれる可視像を通過する画像形成用輻射線に当てることにより、画像形成性材料において画像が提供される。この方法は、画像形成性媒体が印刷版を含み、フォトサーモグラフィ材料がイメージセッティング・フィルムとして役立つ場合に特に有用である。
【0275】
このように、可視像(通常は黒白画像)の形成法は:
(A) 化学増感された感光性ハロゲン化銀が感光する電磁線による露光を、フォトサーモグラフィ材料に施すことにより、潜像を形成し、そして
(B) 同時に又は続いて、露光済材料を加熱することにより、潜像を現像して可視像にすることを含む。
【0276】
フォトサーモグラフィ材料は、これが感光する任意の輻射線源:例えば紫外線、可視光、赤外線、又は当業者に容易に明らかな任意の他の赤外線源を使用して、工程(A)で露光することができる。
【0277】
フォトサーモグラフィ材料から調製される可視像は、次いで、好適な画像形成用輻射線(例えばUV線)に対して感光する他の感光性画像形成性材料、例えばグラフィック・アート・フィルム、校正用フィルム、印刷版、及び回路基板フィルムの露光のためのマスクとして使用することができる。このことは、熱現像済フォトサーモグラフィ材料を通して画像形成性材料(例えばフォトポリマー、ジアゾ材料、フォトレジスト、感光性印刷版)を画像形成することにより行うことができる。こうして、フォトサーモグラフィ材料が透明支持体を含むいくつかの他の態様において、画像形成法はさらに:
(C) 画像形成用輻射線源と、画像形成用輻射線に対して感光する画像形成性材料との間に、露光・熱現像済フォトサーモグラフィ材料を位置決めし、そして
(D) 画像形成性材料を、露光・熱現像済フォトサーモグラフィ材料に含まれる可視像を通過する画像形成用輻射線に当てることにより、画像形成性材料において画像を提供する
ことを含む。
【0278】
画像形成用集成体
本明細書中に記載されたフォトサーモグラフィ材料は、フォトサーモグラフィ材料の表側及び/又は裏側に隣接する1つ又は2つ以上の燐光増感スクリーンを含む画像形成用集成体においても有用である。このようなスクリーンは当業者によく知られている[例えば、米国特許第4,865,944号明細書(Roberts他)及び同第5,021,327号明細書(Bunch他)]。フォトサーモグラフィ材料、及び1つ又は2つ以上のスクリーンを好適なホルダー内に配列し、そしてこれらの搬送用途及び画像形成用途のために適切にパッケージングすることにより、集成体(カセットとしても知られる)を調製することができる。
【0279】
使用中、X線を吸収するように、そしてフォトサーモグラフィ材料が増感させられている300 nmを上回る波長の電磁線を放射するように、燐光増感スクリーンをフォトサーモグラフィ材料の「表側」に位置決めすることができる。
【0280】
ダブルコート型X線感光性フォトサーモグラフィ材料(すなわち、支持体の両側に1つ又は2つ以上の熱現像可能な画像形成層を有する材料)が好ましくは、2つの増感スクリーンと組み合わせて使用される。一方のスクリーンは材料の「表側」に、他方のスクリーンは材料の「裏側」に配置される。表側及び裏側の増感スクリーンは、所望の発光タイプ、所望の透光性、乳剤スピード及びクロスオーバー%に応じて、適切に選ぶことができる。所望の場合には、金属(例えば銅又は鉛)スクリーンを含むこともできる。
【0281】
画像形成集成体又はカセット内のスクリーン及びフォトサーモグラフィ材料の他の配列は、当業者には容易に明らかである。工業用ラジオグラフィに有用な構造及び集成体は、例えば米国特許第4,480,024号明細書(Lyons他)、同第5,900,357号明細書(Feumi-Jantou他)及び欧州特許出願公開第1 350 883号明細書(Pesce他)を含む。
【実施例】
【0282】
下記例は、本発明の実施を例示するために記載するものであって、本発明がこれにより限定されるものではない。
【0283】
試験及び例のための材料及び方法:
下記の例に使用される全ての材料は、他に特定しない限りは標準的な商業的供給元、例えばAldrich Chemical Co. (Milwaukee WI)から容易に入手可能である。全てのパーセンテージは、特に示さない限りは重量で示す。下記の追加の用語及び材料を使用した。
【0284】
ACRYLOID(商標)A-21は、Rohm and and Haas(Philadelphia, PA)から入手可能なアクリル系コポリマーである。
【0285】
BUTVAR(商標)B-79は、Solutia, Inc.(St. Louis, MO)から入手可能なポリビニルブチラール樹脂である。
【0286】
CAB 171-15S及びCAB 381-20は、Eastman Chemical Co. (Kingsport, TN)から入手可能なセルロースアセテートブチレート樹脂である。
【0287】
DESMODUR(商標)N3300は、Bayer Chemicals (Pittburgh, PA)から入手可能な脂肪族ヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0288】
Fischer X-Ray機械は、Model 36600Gであり、Fischer Imaging Corporation (Denver, CO)から入手した。
【0289】
LOWINOX(商標)221B446は、Great Lakes Chemical(West Lafayette, IN)から入手可能な2'-イソブチリデン-ビス(4,6-ジメチルフェノール)である。
【0290】
ジフェニルホスフィンスルフィド(DPPS)は、Organometallics, Inc (East Hampstead, NH)から入手した。
【0291】
PERMANAX(商標)WSO(又はNONOX(商標))は、1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサン[CAS RN=7292-14-0]であり、St-Jean PhotoChemicals, Inc.(Quebec, Canada)から入手可能である。
【0292】
MEKは、メチルエチルケトン(又は2-ブタノン)である。
【0293】
「PHP」は臭化水素酸ピリジニウムペルブロミドであり、Great Western Inorganics, Inc, Arvada, COから入手可能である。
【0294】
PIOLOFORM(商標)BL-16及びBN-18は、Wacker Polymer Systems (Adrian, MI)から入手可能なポリビニルブチラール樹脂である。
【0295】
X-Rite(商標)Model 301濃度計は、X-Rite Inc.(Grandville, MI)から入手した。
【0296】
ビニルスルホン-1(VS-1)は米国特許第6,143,487号明細書に記載され、下記構造を有する。
【0297】
【化12】

【0298】
2-(トリブロモメチルスルホニル)ピリジン(カブリ防止剤-A)は、下記構造を有する:
【0299】
【化13】

【0300】
エチル-2-シアノ-3-オキソブタノエート(カブリ防止剤-B)は、米国特許第5,686,228号明細書に記載され、下記構造を有すると考えられる:
【0301】
【化14】

【0302】
化合物Au-2は金(III)ターピリジントリクロリドであり、下記構造を有する。
【0303】
【化15】

【0304】
増感色素Aは、下記構造を有する。
【0305】
【化16】

【0306】
バックコート色素BC-1は、シクロブテンジイリウム、1,3-ビス[2,3-ジヒドロ-2,2-ビス[[1-オキソヘキシル)オキシ]メチル]-1H-ペリミジン-4-イル]-2,4-ジヒドロキシ-、ビス((分子内塩)である。これは、下記構造を有すると考えられる。
【0307】
【化17】

【0308】
アキュータンス色素ADは下記構造を有する:
【0309】
【化18】

【0310】
着色色素TDは下記構造を有する:
【0311】
【化19】

【0312】
有機硫黄色素化合物OSD-1は下記構造を有する:
【0313】
【化20】

【0314】
例1:
この例では、本発明の化学増感の化合物及び方法(発明例1-2〜1-4)を、米国特許第5,891,615号明細書(Winslow他)に記載された化合物及び方法と比較する。比較例も調製した。これを対照例1-1と称した。
【0315】
対照例1-1の調製
予め形成されたハロゲン化銀を含有するベヘン酸銀完全石鹸のフォトサーモグラフィ乳剤を、米国特許第5,939,249号明細書(上記)に記載されているように調製した。乳剤を、2% PIOLOFORM(商標) BM-18ポリビニルブチラール・バインダーを含有するMEK中で、27.2 %固形物まで均質化した。
【0316】
196部のこの乳剤に、MEK/メタノール(1:1)混合物中の有機硫黄色素(OSD-1)の0.66%溶液3部を添加した。15分間にわたって23℃で混合するのに続いて、撹拌を続けながら、メタノール中臭化水素酸ピリジニウムペルブロミドの15%溶液1.6部を添加した。60分間にわたる混合後、メタノール中11%の臭化亜鉛溶液2.1部を添加した。撹拌を続け、そして30分後、0.15部の2-メルカプト-5-メチルベンズイミダゾール、0.007部の増感色素A、1.7部の2-(4-クロロベンゾイル)安息香酸、10.8部のメタノール、及び3.8部のMEKの溶液を添加した。
【0317】
さらに75分間にわたる撹拌後、26部のPIOLOFORM(商標)BM-18ポリビニルブチラールと、20部のPIOLOFORM(商標)BM-16とを添加し、温度を10℃まで下げ、そして混合をさらに30分間にわたって続けた。
【0318】
フォトサーモグラフィ・コーティング配合物
溶液A
カブリ防止剤A: 1.2部
テトラクロロフタル酸 0.37部
4-メチルフタル酸 0.60部
MEK 16部
メタノール 0.28部
LOWINOX(商標)221B446 9.5部
【0319】
溶液B
DESMODUR(商標)N3300 0.66部
MEK 0.33部
【0320】
溶液C
フタラジン 1.3部
MEK 6.3部
溶液A、LOWINOX(商標)、溶液B及び溶液Cを5分間の間隔を置いて添加することにより、フォトサーモグラフィ・コーティング配合物を完成させた。混合を維持した。
【0321】
保護トップコート配合物
フォトサーモグラフィ乳剤層のための保護トップコートの原液配合物を下記のように調製した:
ACRYLOID(商標)A-21 2.9部
CAB 171-15S 32部
MEK 459部
ビニルスルホン(VS-1) 1.6部
ベンゾトリアゾール 0.9部
カブリ防止剤B 0.8部
アキュータンス色素(AD-1) 0.5部
着色色素(TD-1) 0.02部
【0322】
発明例1-2の調製
下記の点:
MEK/メタノール中の化合物OSD-1の66%溶液3部を添加した後で、しかもメタノール中の臭化水素酸ピリジニウムペルブロミドの15%溶液1.6部を添加する前に、メタノール中の11%臭化亜鉛溶液2.1部を乳剤中に添加することを除けば比較例1-1と同様に、発明例1-2を調製した。
【0323】
発明例1-3の調製
下記の点:
MEK/メタノール(1:1)混合物中のOSD-1の0.66%溶液3部と一緒に、メタノール中の11%臭化亜鉛溶液2.1部を乳剤中に添加し、これに続いて、メタノール中の臭化水素酸ピリジニウムペルブロミドの15%溶液1.6部を添加することを除けば比較例1-1Cと同様に、発明例1-3を調製した。
【0324】
発明例1-4の調製
下記の点:
メタノール中の11%臭化亜鉛溶液2.1部をフォトサーモグラフィ乳剤196部に添加し、これに続いて、MEK/メタノール(1:1)混合物中の化合物OSD-1の0.66%溶液3部を添加し、これに続いて、メタノール中の臭化水素酸ピリジニウムペルブロミドの15%溶液1.6部を添加することを除けば比較例1-1Cと同様に、発明例1-4を調製した。
【0325】
フォトサーモグラフィ配合物及びトップコート配合物を同時にデュアルナイフで、178 μmのポリエチレンテレフタレート支持体上にコーティングすることにより、フォトサーモグラフィ材料を提供した。この場合トップコートは支持体から最も隔たって位置した。ウェブ(支持体及び塗布された層)を、コーティング中及び乾燥中に5 m/分の速度で搬送した。コーティング直後に、試料を5分間にわたって85℃で炉内で乾燥させた。画像形成層配合物をコーティングすることにより、2 g/m2の銀乾燥コーティング重量をもたらした。トップコート配合物をコーティングすることにより、2.6 g/m2の乾燥コーティング重量をもたらした。
【0326】
コーティングされ乾燥させられた上記調製済フォトサーモグラフィ材料を1.5インチ × 10インチのストリップ(3.6 cm × 25.4 cm)にカットし、そして、811 nmレーザー・ダイオードを内蔵する走査用レーザー感光度計を用いて、10 cmの連続楔を通して露光した。試料に対する総走査時間は6秒であった。15秒間にわたって252°F(122.2℃)で、熱ロール処理装置を使用して、試料を現像した。
【0327】
ISO標準5-2及び5-3を満たすカスタムメイドのコンピューター走査用濃度計で、濃度を測定した。このような濃度測定値は、商業的に入手可能な濃度計から得られる測定値に匹敵すると考えられる。次いで、フォトサーモグラフィ材料の感度に適したフィルターを使用して、楔の濃度を測定することにより、対数露光に対する濃度(D log E曲線)のグラフを得た。Dminは、現像後の未露光領域の濃度である。
【0328】
下記表Iに示す結果は、本発明の試料においてスピードが高くなることを実証する。
【0329】
【表1】

【0330】
例1-2a及び1-2bは、両側型コーティングを調製して評価したものであった。
【0331】
例2:
有機硫黄色素化合物OSD-1の代わりにジフェニルホスフィンスルフィド化合物PS-1を使用して、フォトサーモグラフィ乳剤配合物を調製した。
【0332】
上記比較例1-1と同様に、対照例2-1を調製した。
【0333】
上記例1-2と同様に、例2-2を調製した。
【0334】
下記の点:
化合物OSD-1の代わりに、MEK/メタノール(1:1)中の化合物PS-1の0.5%溶液8部を使用することを除けば発明例1-2において上述したように、発明例2-3を調製した。
【0335】
全ての試料を例1において上述したようにコーティングし、乾燥させ、画像形成し、そして現像した。下記TABLE IIに示した結果は、ジフェニルホスフィンスルフィド化合物が、米国特許第5,891,615号明細書(上記)に記載された処置に使用されると、有機硫黄色素化合物を凌ぐ改善されたスピードを提供し、そして、本発明の処置に使用されると、著しいスピード改善(試料2-3及び2-4の比較)を可能にしたことを実証する。
【0336】
【表2】

【0337】
例3:
発明例1-2に記載されているように調製され、化合物OSD-1を内蔵するフォトサーモグラフィ乳剤配合物を、同様に調製されてはいるもののジフェニルホスフィンスルフィド化合物と有機硫黄色素OSD-1との種々の組み合わせを使用して調製された試料と比較した。
【0338】
例 化学増感化合物
3-1 MEK中のPS-15の1%溶液2部
3-2 MEK中のPS-15の1%溶液3部
3-3 MEK中のPS-15の1%溶液2部に続いて20分で、MEK中のOSD-1の1%溶液2部を添加
3-4 MEK中のOSD-1の1%溶液2部に続いて20分で、MEK中のPS-15の1%溶液2部を添加
3-5 MEK/メタノール(1:1)中のPS-1の1%溶液4部
3-6 MEK/メタノール(1:1)中のPS-1の1.2%溶液4部
3-7 MEK中のPS-1の1%溶液2部に続いて20分で、MEK中のOSD-1の1%溶液2部を添加
3-8 MEK中のOSD-1の1%溶液2部に続いて20分で、MEK中のPS-1の1%溶液2部を添加
3-9 MEK中のPS-1の1%溶液2部と一緒に添加された、MEK中のOSD-1の1%溶液2部
3-10 MEK中のPS-2の1%溶液4部
3-11 MEK中のPS-3の1.2%溶液4部
3-12 MEK中のPS-4の0.9%溶液4部
【0339】
全ての試料を例1において上述したようにコーティングし、乾燥させ、画像形成し、そして現像した。下記TABLE IIIに示したセンシトメトリックな結果は、ジフェニルホスフィンスルフィド化合物を使用すると、スピードが高められることを実証する。いくつかの例において、Dminの小さな増加が見いだされた。
【0340】
【表3】

【0341】
例3:
フォトサーモグラフィ配合物を下記のように調製した:
米国特許第6,413,710号明細書(Shor他)に記載されているように、予め形成された臭化銀、カルボン酸銀「石鹸」を調製した。平均粒子サイズは、0.15 μmであった。
【0342】
フォトサーモグラフィ乳剤配合物
米国特許第6,423,481号明細書(Simpson他)に記載された手順に従って、しかしジフェニルホスフィンスルフィド化合物を内蔵するように、そして下記のような材料及び量を用いて、化学増感されたフォトサーモグラフィ乳剤を調製した。これらの材料は、10〜60分の間隔を置いて添加し、添加中の温度は50°F〜70°F(10℃〜21℃)であった。
【0343】
28.4%固形物のこの銀石鹸分散体163.0 gに、下記のものを順番に添加した:
化学増感剤(PS-1) 8.64 gのMEOH中の1.53 × 10-4モル溶液8.1 ml
PHP 1.58 gのMeOH中の0.20g
Au-2 50 gのMeOH中の0.0052gの溶液4.8 ml
クロロベンゾイル安息香酸 1.42 g
BUTVAR(商標)B-79 20 g
カブリ防止剤A: 19.4 gのMEK中の1.71 g
DESMODUR(商標)N3300 1.5 gのMEK中の0.63 g
フタラジン 5 gのMEK中の1.0 g
テトラクロロフタル酸 2 gのMEK中の0.35 g
4-メチルフタル酸 4 gのMEK中の0.45 g
PERMANAX(商標)WSO 10.6 g
【0344】
フォトサーモグラフィ配合物の調製においてZnBr2の溶液を添加する(1.19 gのMeOH中0.169 g)時を、下記表IIIに示す。
【0345】
保護トップコート配合物
フォトサーモグラフィ乳剤層のための保護トップコートを下記のように調製した:
ACRYLOID(商標)A-21 0.58 g
CAB 171-15S 14.9 g
MEK 200 g
VS-1 0.3 g
ベンゾトリアゾール 1.6 g
カブリ防止剤A 0.24 g
カブリ防止剤B 0.12 g
【0346】
フォトサーモグラフィ乳剤及びトップコート配合物を、安全光条件下でデュアルナイフ・コーティング機械を用いて、7ミル(178 μm)の青みがかったポリエチレンテレフタレート支持体上にコーティングした。この支持体は、CAB 171-15S樹脂バインダー中に色素BC-1を含有する裏側ハレーション防止層を備えた。銀コーティング重量は約2.2〜2.3 g/m2であった。
【0347】
連続トーン「楔」を提供するためにP-16フィルター及び0.7ニュートラル・デンシティ・フィルターの両方を備えたEG&G Flash感光度計を使用して、10-3秒間にわたる像様露光をフォトサーモグラフィ材料の試料に施した。露光に続いて、15秒間にわたって122.2℃〜122.8℃で、熱ロール処理装置を用いてフィルムを現像した。
【0348】
上記例1に記載されているように、カスタムメイドのコンピューター走査用濃度計で、濃度を測定した。下記表IIIに示したセンシトメトリックな結果は、化合物PS-1の添加前又は添加後、そして酸化化合物PHPの前にZnBr2を添加すると、良好なDmin、スピード及びコントラストを有するフォトサーモグラフィ材料が提供されることを実証する。
【0349】
【表4】

【0350】
例4-燐光体含有フォトサーモグラフィ材料における使用
上記例3において調製されたフォトサーモグラフィ乳剤配合物のそれぞれ25 gに、平均サイズ4.0 μmを有する18.2 gのYSrTaO4燐光体を添加した。材料を5分間にわたって混合することにより、最終フォトサーモグラフィ・コーティング配合物を調製した。そして例4に記載されているように、フォトサーモグラフィ材料をコーティングし、乾燥させた。近似燐光体コーティング重量は76〜77 g/m2であった。
【0351】
フォトサーモグラフィ材料を、上記例4に記載されているように、画像形成し、現像し、そして評価した。下記表IVに示したセンシトメトリックな結果は、PS化合物(PS-1)の添加前又は添加後、そして酸化化合物(PHP)の前にZnBr2を添加することによる、Dmin、スピード及びコントラストに与える効果を実証する。
【0352】
【表5】

【0353】
これらのフォトサーモグラフィ材料のX線センシトメトリック応答を、Fischer X線ユニットを使用して試料を露光することにより測定した。Fischer X線ユニットは200 mA及び76 KeVで動作し、そして3.0 mmのアルミニウム・シートでフィルタリングされた。X線源から85.5 cmの位置にセットされたテーブル上に、試料を置いた。一定の強度を有する一連のX線露光、及び0.1秒〜1.5秒の露光時間を形成した。露光済試料を、例1に記載されたものと同様に現像した。
【0354】
これらの試料の濃度を、A状態フィルターを使用したX-Rite(商標)310濃度計によって測定し、そして可視フィルターで測定した。下記表Vに示したセンシトメトリックな結果は、PS化合物(PS-1)の添加前又は添加後、そして酸化化合物(PHP)の前にZnBr2を添加すると、現像済濃度とDminとの間に良好な区別を有するフォトサーモグラフィ材料が提供されたことを実証する。D log E曲線は、低いDmin、並びに良好なスピード及びコントラストを示した。
【0355】
【表6】

【0356】
例5-フォトサーモグラフィ材料における使用
フォトサーモグラフィ乳剤及び保護トップコート配合物を、上記例3に記載されたように調製した。乳剤配合物を化合物PS-1と一緒に形成した。フォトサーモグラフィ配合物の調製においてZnBr2の溶液を添加する時を、下記表VIに示す。溶液は1.19 gのMeOH中0.169 gの溶液として、又は0.595 gのMeOH中0.0845 gから成る2回の添加分として添加された。
【0357】
フォトサーモグラフィ材料を、上記例3に記載されているように、コーティングし、乾燥させ、画像形成し、現像し、そして評価した。
【0358】
下記表VIに示したセンシトメトリックな結果は、PS-1化合物の前に、又は前及び後に分割してZnBr2を添加することによる、Dmin、スピード及びコントラストに与える効果を実証する。化合物PS-1の前及び後に分割してZnBr2を添加することによって、より高いスピードを観察した。
【0359】
【表7】

【0360】
例6-燐光体含有フォトサーモグラフィ材料における使用
上記例3において調製されたフォトサーモグラフィ乳剤配合物のそれぞれ25 gに、平均サイズ4.0 μmを有する18.2 gのYSrTaO4燐光体を添加した。材料を5分間にわたって混合することにより、最終フォトサーモグラフィ・コーティング配合物を調製した。そして例3に記載されているように、フォトサーモグラフィ材料をコーティングし、乾燥させた。近似燐光体コーティング重量は77〜78 g/m2であった。
【0361】
フォトサーモグラフィ材料を、上記例3に記載されているように、画像形成し、現像し、そして評価した。下記表VIIに示したセンシトメトリックな結果は、PS-1化合物の前、又は前及び後に分割してZnBr2を添加することによる、Dmin、スピード及びコントラストに与える効果を実証する。PHPの前に、しかし化合物PS-1の後にZnBr2を添加することにより、より高いコントラストが観察された。最速スピードは、PS-1化合物の前及び後に分割してZnBr2を添加することにより観察された。
【0362】
【表8】

【0363】
これらのフォトサーモグラフィ材料のX線センシトメトリック応答を、Fischer X線ユニットを使用して試料を露光することにより測定した。Fischer X線ユニットは200 mA及び76 KeVで動作し、そして3.0 mmのアルミニウム・シートでフィルタリングされた。X線源から85.5 cmの位置にセットされたテーブル上に、試料を置いた。一定の強度を有する一連のX線露光、及び0.1秒〜1.5秒の露光時間を形成した。露光済試料を、例1に記載されたものと同様に現像した。
【0364】
これらの試料の濃度を、A状態フィルターを使用したX-Rite(商標)310濃度計によって測定し、そして可視フィルターで測定した。下記表VIIIに示したセンシトメトリックな結果は、本発明の(PS)化合物が燐光体含有フォトサーモグラフィ材料中に調製されると、X線に対する感度が高くなることを実証する。X線に対する最高感度は、PS-1化合物の前及び後に分割してZnBr2を添加することにより観察された。表VIIIはまた、材料が現像済濃度とDminとの間に良好な区別を有することを示す。加えて、D log E曲線は、低いDmin、並びに良好なスピード及びコントラストを示した。
【0365】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 予め形成された感光性ハロゲン化銀及び非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散体を用意し、そして、工程(C)ではなく下記工程(B-1)及び(B-2)を順番に又は同時に実施すること、
(B-1) 前記予め形成されたハロゲン化銀粒子及び前記非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる有機硫黄含有化合物を用意すること、
(B-2) 前記非感光性の被還元性銀イオン源内の被還元性銀イオンのうちのいくつかを、感光性ハロゲン化銀粒子に変換すること、
そして次いで、
(C) 前記ハロゲン化銀粒子上又は粒子の周りの前記有機硫黄含有化合物を酸化性環境内で分解することにより、少なくとも前記予め形成されたハロゲン化銀粒子を化学増感し、これにより前記非感光性の被還元性銀イオン源と反応するように組み合わされた、硫黄で化学増感された感光性ハロゲン化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を提供すること
を含んで成るフォトサーモグラフィ乳剤の製造方法。
【請求項2】
該フォトサーモグラフィ乳剤とバインダーとを混合し、そしてその結果生じたフォトサーモグラフィ乳剤配合物を支持体上にコーティングすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該非感光性の被還元性銀イオン源が、脂肪酸中の炭素原子数が10〜30の銀脂肪酸カルボン酸塩又は該銀脂肪酸カルボン酸塩の混合物であり、該カルボン酸塩の1つ以上がベヘン酸銀である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該有機硫黄含有化合物が、環構造内部にチオ、チオカルボニル、又はカルボニル基を有する環構造を含む硫黄含有分光増感色素である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該有機硫黄含有化合物が、チオヒダントイン、ロダニン、又は2-チオ-4-オキソ-オキサゾリジン核、又はこれらの任意の組み合わせを含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該有機硫黄含有化合物が、ジフェニルホスフィンスルフィドである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該有機硫黄含有化合物が、下記構造PSによって表され請求項6に記載の方法:
【化1】

(上記式中、Ph1及びPh2は、同じ又は異なるフェニル基であり、R1及びR2は独立して水素、又はアルキル又はフェニル基を表し、Lは直接的な結合又は結合基であり、mは1又は2であり、そして、mが1である場合には、R3は一価基であり、またmが2である場合には、R3は鎖内の炭素、窒素、酸素又は硫黄原子数が1〜20の二価脂肪族結合基である。)
【請求項8】
R1及びR2が両方とも水素であるか又はこれらの一方がメチルであり、Lが直接的な結合又はスルホニルもしくはカルボニル結合基であり、mが1であり、そしてR3がアルキル、アリール又はジアルキルアミノ基である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該有機硫黄含有化合物が、フォトサーモグラフィ分散体中の非感光性の被還元性銀イオン源からの総銀量1モル当たり10-6〜10-1モルの量で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
被還元性銀イオン1モル当たり10-4〜10-1モルのハロゲン原子の量でハロゲン含有化合物を1回又は2回以上添加することにより、該被還元性銀イオンが感光性ハロゲン化銀に変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
該有機硫黄含有化合物が、一対の臭素原子と組み合わさるN-複素環式化合物の臭化水素酸塩の存在によって分解される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
該有機硫黄含有化合物が、酸化剤を分割して添加することにより分解される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
該化学増感工程が最大60分間にわたって10℃〜30℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
該化学増感工程の後、分光増感色素を添加することにより、該感光性ハロゲン化銀粒子を600 nm〜1100 nmに対して分光増感することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
該フォトサーモグラフィ乳剤に還元剤組成物を添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
該フォトサーモグラフィ乳剤に燐光体を添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
(A) 予め形成された感光性ハロゲン化銀及び非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散体を用意し、そして、下記工程を順番に実施すること、
(B-1) 該予め形成されたハロゲン化銀粒子及び該非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる有機硫黄含有化合物を用意すること、ここで該有機硫黄含有化合物は、下記2つの化合物群のうちの一方から選択される:
a. ロダニン核を含有する1つ又は2つ以上の硫黄含有分光増感色素、及び
b. 下記ジフェニルホスフィンスルフィド化合物PS-1〜PS-19の1つ又は2つ以上:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

(B-2) 該非感光性の被還元性銀イオン源内の0.1〜10モル%の被還元性銀イオンを、臭化物塩を添加することにより、感光性臭化銀粒子に変換すること、そして次いで、
(C) 20℃〜30℃で最大60分間にわたって、該ハロゲン化銀粒子に臭化水素酸ピリジニウムペルブロミドを1段階又は2段階以上で添加することによって、該ハロゲン化銀粒子上又は粒子の周りの該有機硫黄含有化合物を分解することにより、少なくとも該予め形成されたハロゲン化銀粒子を化学増感し、これによりベヘン酸銀を含む該非感光性の被還元性銀イオン源と反応するように組み合わさる化学増感された感光性臭化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を提供すること
を含んでなる黒白フォトサーモグラフィ乳剤の製造方法。
【請求項18】
フォトサーモグラフィ乳剤に分光増感色素を添加することにより、該感光性臭化銀粒子を600 nm〜1100 nmに対して分光増感することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1種又は2種以上のカブリ防止剤、静電防止剤、トナー、艶消し剤、現像促進剤、アキュータンス色素、処理後安定剤又は処理剤前駆体、熱溶剤、貯蔵寿命安定剤、共現像剤、コントラスト促進剤、又は高コントラスト剤を、該フォトサーモグラフィ乳剤に添加することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
さらに、該フォトサーモグラフィ乳剤に燐光体を添加することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
さらに、該フォトサーモグラフィ乳剤に疎水性バインダーを添加することにより、フォトサーモグラフィ乳剤配合物を提供することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
さらに、該フォトサーモグラフィ乳剤配合物を支持体上にコーティングすることをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項23】
(A) 予め形成された感光性ハロゲン化銀及び非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散体を用意し、そして、工程(C)ではなく下記工程(B-1)及び(B-2)を順番に又は同時に実施すること、
(B-1) 該予め形成されたハロゲン化銀及び該非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる有機硫黄含有化合物を用意すること、
(B-2) 該非感光性の被還元性銀イオン源内の被還元性銀イオンのうちのいくつかを、感光性ハロゲン化銀粒子に変換すること、
そして次いで、
(C) 前記ハロゲン化銀粒子上又は粒子の周りの前記有機硫黄含有化合物を酸化性環境内で分解することにより、少なくとも該ハロゲン化銀粒子を化学増感し、これにより該非感光性の被還元性銀イオン源と反応するように組み合わさる化学増感された感光性ハロゲン化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を提供すること、そして
(D) 工程(A)から(C)までのいずれかと同時に、又は(C)に続いて、バインダーを添加することにより、フォトサーモグラフィ乳剤配合物を形成すること、そして
(E) 工程(D)後、該フォトサーモグラフィ乳剤配合物を支持体上にコーティングして乾燥させることにより、フォトサーモグラフィ画像形成材料を提供すること
を含んでなるフォトサーモグラフィ材料の製造方法。
【請求項24】
工程(E)と同時に又は工程(E)に続いて、該フォトサーモグラフィ画像形成層上に、保護オーバーコート配合物がコーティングされる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程(E)の前に又は工程(E)と同時に、該フォトサーモグラフィ画像形成層の下側の該支持体上にキャリヤ層がコーティングされる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
該支持体の非画像形成側に層をコーティングすることをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
該非画像形成側にコーティングされた層が導電層である、請求項26に記載の方法。

【公表番号】特表2007−514199(P2007−514199A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543862(P2006−543862)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/039917
【国際公開番号】WO2005/062121
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】