フォトダイオードアレイ
【課題】 結像位置と一致させたPDアレイを実現する。
【解決手段】 入射光を波長分散素子を備えた分光装置に入射し、この分光装置からの出力光を検出するフォトダイオードレイにおいて、該フォトダイオードアレイを構成するダイオード素子の配列をずらして配置した。
【解決手段】 入射光を波長分散素子を備えた分光装置に入射し、この分光装置からの出力光を検出するフォトダイオードレイにおいて、該フォトダイオードアレイを構成するダイオード素子の配列をずらして配置した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分散素子を用いた分光装置に用いられ、光パワーのモニタリングに用いて好適なフォトダイオードアレイ(以下、単にPDアレイという)に関する。
【背景技術】
【0002】
波長分散素子である回折格子等に入射光を照射して波長分散された光をPDアレイで受光することにより波長毎に光を分離して検出するものとして下記の特許文献がある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−303736号公報
【0004】
図3はPDアレイを検出素子として用いた分光装置の一例を示す構成図である。図3において1は光源の出力光、若しくは、光ファイバからの光が出射する出射端、2はコリメーティングレンズ、3は回折格子等の波長分散素子、4はフォーカシングレンズ、5はPDアレイである。
【0005】
出射端1から出射した光はコリメーティングレンズ2により平行光に変換されて波長分散素子3に入射する。波長分散素子3からの波長分散された光はフォーカシングレンズ4により集光されてPDアレイ5に入射する。
回折格子3に入射した光はその波長により回折角が異なるので、それぞれ異なる方向に回折光として出射し、フォーカシングレンズ4によりPDアレイ5にそれぞれ集光される。
【0006】
図3中”FP01”、”FP02”及び”FP03”に位置するPDアレイ5では異なる波長の光が集光される。このような分光装置では回折格子3を回転させる必要がないので高速性及び信頼性に優れている。
【0007】
例えば、回折格子3の回折の次数を”m”、格子定数を”d”、回折格子3への入射角を”i”出射角を”θ”、波長を”λ”とすれば、
mλ/d=sini+sinθ (1)
となる。
【0008】
図3に示すような分光装置をWDM(波長多重:Wavelength Division Multiplxing)伝送システム監視モニタ等のように狭い波長範囲を扱うように設計した場合には、フォーカシングレンズ4の焦点距離と比較して波長分散による光路の広がりが小さくなり、1次元配列のPDアレイ5を用いたときの各素子の位置と出射角はほぼ比例関係になる。
【0009】
但し、波長と出射角との関係は式(1)を微分した、
dλ/dθ|i=(d/m)・cosθ (2)
となる。
【0010】
式(2)から分かるように波長と分散角は出射角の余弦に比例することになる。この出射角は分光装置の波長範囲、用いる回折格子3の格子定数及びフォーカンシングレンズ4の焦点距離等を用いて式(1)から求めることができる。
【0011】
図4はこのような分光装置の一設計例を示す表であり、図5は各波長に対する出射角を示す表である。この場合、例えば、”λ=1.55[μm]”、溝本数”900[l/mm]”及び”32[nm]”の波長範囲で”190素子”の受光素子(PD)とすれば、平均波長分散は”32/190=約0.17[nm]”となる。
【0012】
ところで、図4に示す表を用いて式(2)から実際の波長の波長分散を計算すると図6に示すようになる。図6は波長と波長分散との関係を示す表であり、図6から分かるように”1531[nm]”の波長の波長分散はPDアレイ5を構成する受光素子(PD)1素子当たり”0.1927[nm]”であるのに対して、”1563[nm]”の波長の波長分散はPDアレイ5を構成する受光素子1素子当たり”0.1462[nm]”となり、波長分散に依存性がある。
【0013】
図7は上述の依存性を改善した分光装置の構成図である。図7において1,2,3,4及び5は図3と同一符号を付してある。6はプリズム等の非線形分散補償手段である。
出射端1からの出力光はコリメーティングレンズ2により平行光に変換され回折格子3に入射する。回折格子3からの回折光は非線形分散補償手段6を介してフォーカシングレンズ4により集光されてPDアレイ5に入射する。
【0014】
図8は波長分散素子3及び非線形分散補償手段6での光路の説明図である。基本的な動作は図3に示すものと同様なので説明は省略する。
【0015】
式(2)を変形すると、dλ=(d/m)・cosθ・dθ (3)
となり、PDアレイ5を構成する受光素子が等間隔に配置されているとすると余弦成分(cosθ)に起因して波長分散に不均一が生じることなる。
言い換えれば、非線形性が存在する。
【0016】
一方、屈折の式は媒質の屈折率を”n1 ”及び”n2 ”、入射角及び出射角を”φ”及び”ψ”とすると、
n1・sinφ=n2・sinψ (4)
となり、”φ”で微分すると、
n1・cosφ・dφ=n2・cosψ・dψ (5)
となる。
【0017】
式(5)から分かるように屈折角もまた余弦成分に依存する。従って、波長分散素子3の出射角の余弦成分に起因する非線形性を屈折(非線形分散補償手段6)の余弦成分による非線形性で補償することが可能になる。
【0018】
図8において波長分散素子3の入射角及び出射角を”θ1 ”及び”θ2 ”、非線形分散補償手段6の入射角及び出射角を”θ3 ”及び”θ4 ”とし、非線形分散補償手段6の屈折率を”n”、波長を”λ”とすれば、
sinθ1+sinθ2=λ/d (6)
(1/n)・(dθ2/dλ)=−dθ3/dλ (7)
n・sinθ3=sinθ4 (8)
となる。
【0019】
そして、式(6)から式(8)を微分して整理することにより平均波長分散が得られ、
dθ4/dλ=cosθ3/(d・cosθ2・cosθ4) (9)
となる。
【0020】
さらに、式(9)を変形して、
d2θ4/dλ2=(dθ4/dλ)2
×{sinθ4/cosθ4
−(sinθ2・cosθ4)/(cosθ2・cosθ3)
−(sinθ3・cosθ4)/(n・cos2θ3)} (10)
となる。
【0021】
ここで、この特性が線形であるためには、”d2θ4/dλ2=0”であるから、式(10)を変形して、 tanθ3/(1−n2・sin2θ3)
=n・tanθ2/(n2−1) (11)
となる。
【0022】
例えば、以下の条件に基づいて波長分散特性を式(9)を用いて計算すると図9に示すようになる。図9は受光素子位置に対する波長差を示す特性曲線図である。
(a)PDアレイ5の使用素子数 約180
(b)PDアレイ5の素子間隔 50[μm]
(c)フォーカシングレンズの焦点距離 103.5[mm]
(d)使用波長範囲 1532〜1564[nm]
(e)回折格子の入射角 31.22[°]
(f)回折格子の出射角 61[°]
(g)回折格子のライン数 900[本/mm]
(h)プリズムの入射角 33.5643[°]
(i)プリズムの出射角 56[°]
(j)屈折率 1.5
【0023】
図9から分かるように隣接する受光素子間の波長誤差は”0.173〜0.1745”の範囲であり図6に示したものよりも平坦な特性になっている。
図10(a,b)はこのような非線形分散補償手段6を設けた構成における波長分散補償手段の効果を示すもので、図10(b)は(a)図をグラフ化したものである。
【0024】
これらの図において、散補償手段無しの場合のフォーカシングレンズの焦点距離f2は
100mmから60mmとなり、隣合うPDの波長差(Δλ)の最大値は0.194μmから0.165μmに改善され、同じく最小値は0.146μmから0.16μmに改善されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
ところで、PDアレイ上の結像位置には、フォーカシングレンズの歪曲特性も影響している。図11は一定の条件下で最適化した構成でのPDアレイ上の結像位置ずれの特性を示すもので、この図では88個のPDを80μmピッチで並べた状態を示している。
【0026】
実際の装置としての条件下では、図11に示すように結像位置におよそ±8μmの範囲のずれがある。そのため、PDのピッチと比較した位置精度としては±10%となり、十分に一致しているとはいえない。
従って本発明は、PDアレイ各素子位置をずらして配置することにより、結像位置と一致させたPDアレイを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
このような課題を達成するために、本発明のPDアレイは請求項1においては
入射光を波長分散素子を備えた分光装置に入射し、この分光装置からの出力光を検出するフォトダイオードレイにおいて、該フォトダイオードアレイを構成するダイオード素子の配列をずらして配置したことを特徴とする。
【0028】
請求項2においては、請求項1記載のPDアレイにおいて、
分光装置の分光特性に起因する結像位置のずれに合わせてダイオード素子の配列をずらしたことを特徴とする。
【0029】
請求項3においては、請求項1又は2に記載のPDアレイにおいて、
隣合うフォトダイオード素子の間に光遮蔽部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトダイオードアレイ。
【0030】
請求項4においては、請求項1乃至3に記載のPDアレイにおいて、
フォトダイオード素子の配列のずれは光遮蔽部材の幅を変化させて行うことを特徴とする請求項3に記載のフォトダイオードアレイ
【発明の効果】
【0031】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
請求項1及び2の発明によれば、分光特性に起因する結像位置のずれに合わせてPD素子の配列をずらしたので、分光装置の波長による受光感度特性の平坦化を図ることができる。
【0032】
請求項3の発明によれば、
隣合うPD素子の間に光遮蔽部材を設けたので、隣合うPD素子の中央部の電界中立点における励起された電子の引き抜き応答速度の低下を防ぐことができる。
【0033】
請求項4の発明によれば、
隣合うPD素子の配列のずれを光遮蔽部材の幅を変化させて行うので、PDアレイ各素子の受光窓の形状に変更がないため受光特性にバラツキが生じるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明のPDアレイの一実施例を示す要部拡大平面図である。
この図では分光装置の光学系で吸収し切れなかった結像位置ずれに合わせてPDを配置した例を示している。実際にはPDアレイチップでは図11で示すものとは異なり88個以上のPDを配置しているが、PDをずらして配置している様子を分かりやすくするためにチップ一部分の拡大図を示している。
【0035】
図1において10はアレイ状に形成されたPD素子、11はPD素子間に形成されたシャドウマスク、12はボンディングパッド13とPD素子10を接続する配線である。
【0036】
なお、図1の拡大部分は図11で結像位置ずれが0になる3点のうち最も左側の点と対応している。図中"5"、"10"、"15"といった表示はそのすぐ下のPDがアレイ構造の何番目に配置されている素子かを示しており、この例では結像位置ずれが0になるPD素子番号(PD素子10の中心とボンディングパッド13の中心が同じaとなる位置)は12番となっている。
【0037】
また、一般にこのようなPDアレイでは、PDAチップの実装組立性に支障を与えることのないようボンディングパッド13は一定間隔(例えば80um)で配置されている。そのため、ボンディングパッド13とPD素子10及び取り出し配線12の中心位置が相対的にずれることになる。
【0038】
図1の例では結像位置ずれに合わせるためにPDピッチを例えば81umとしているため、12番より前のPD素子ではボンディングパッドに対して左側(−側)にずれて(例えば図の7番はa>b)おり、12番より後ろのPD素子ではボンディングパッドに対して右側(+側)にずれて(例えば図の17番はa<b)となっているのが見て取れる。
【0039】
図2はPD配置をずらした際に各PD素子の受光特性を変化させないための工夫についての説明図である。
PDA出力の高速読み出しを行なう際、隣合うPD素子の中央部には電界中立点があり、この場所では励起された電子の引き抜き応答速度が遅いことが問題となる。そのため、PD間への光入射を遮断するシャドゥマスクを用いている。
【0040】
またPDアレイ各素子の受光特性にバラツキができないようにするためには各素子受光部のパターンを同一としなければならないため、PD位置のずれをシャドゥマスク11の幅を変更して吸収する必要がある。
【0041】
図2は1um刻みでシャドゥマスク幅を変えた例を示している。図示のように結像位置のずれに合わせてシャドゥマスク幅を変えることにより、結像位置とのずれを±0.5um以内に収めることが可能である。このように、シャドゥマスク幅を更に細かく変更することにより、PD位置と結像位置のずれ量を少なくすることができる。
なお、結像の大きさがPD素子に対し充分に小さい構成ではシャドゥマスクは不要である。
【0042】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るPDアレイの一実施例を示す要部拡大平面図である。
【図2】PD配置をずらした際に各素子の受光特性を変化させないための説明図である。
【図3】本発明が適用される分光装置の一例を示す構成図である。
【図4】分光装置の一設計例を示す表である。
【図5】各波長に対する出射角を示す表である。
【図6】波長と波長分散との関係を示す表である。
【図7】非線形分散補償手段を挿入した分光装置の一例を示す構成図である。
【図8】波長分散素子及び非線形分散補償手段での光路を説明する説明図である。
【図9】受光素子位置に対する波長差を示す特性曲線図である。
【図10】非線形分散補償手段を設けた構成における波長分散補償手段の効果を示す図である。
【図11】一定の条件下で最適化した構成でのPDアレイ上の結像位置ずれの特性を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 出射端
2 コリメーティングレンズ
3 波長分散素子
4 フォーカシングレンズ
5 PDアレイ
6 非線形分散補償手段
10 PD素子
11 シャドウマスク
12 配線
13 ボンディングパッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分散素子を用いた分光装置に用いられ、光パワーのモニタリングに用いて好適なフォトダイオードアレイ(以下、単にPDアレイという)に関する。
【背景技術】
【0002】
波長分散素子である回折格子等に入射光を照射して波長分散された光をPDアレイで受光することにより波長毎に光を分離して検出するものとして下記の特許文献がある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−303736号公報
【0004】
図3はPDアレイを検出素子として用いた分光装置の一例を示す構成図である。図3において1は光源の出力光、若しくは、光ファイバからの光が出射する出射端、2はコリメーティングレンズ、3は回折格子等の波長分散素子、4はフォーカシングレンズ、5はPDアレイである。
【0005】
出射端1から出射した光はコリメーティングレンズ2により平行光に変換されて波長分散素子3に入射する。波長分散素子3からの波長分散された光はフォーカシングレンズ4により集光されてPDアレイ5に入射する。
回折格子3に入射した光はその波長により回折角が異なるので、それぞれ異なる方向に回折光として出射し、フォーカシングレンズ4によりPDアレイ5にそれぞれ集光される。
【0006】
図3中”FP01”、”FP02”及び”FP03”に位置するPDアレイ5では異なる波長の光が集光される。このような分光装置では回折格子3を回転させる必要がないので高速性及び信頼性に優れている。
【0007】
例えば、回折格子3の回折の次数を”m”、格子定数を”d”、回折格子3への入射角を”i”出射角を”θ”、波長を”λ”とすれば、
mλ/d=sini+sinθ (1)
となる。
【0008】
図3に示すような分光装置をWDM(波長多重:Wavelength Division Multiplxing)伝送システム監視モニタ等のように狭い波長範囲を扱うように設計した場合には、フォーカシングレンズ4の焦点距離と比較して波長分散による光路の広がりが小さくなり、1次元配列のPDアレイ5を用いたときの各素子の位置と出射角はほぼ比例関係になる。
【0009】
但し、波長と出射角との関係は式(1)を微分した、
dλ/dθ|i=(d/m)・cosθ (2)
となる。
【0010】
式(2)から分かるように波長と分散角は出射角の余弦に比例することになる。この出射角は分光装置の波長範囲、用いる回折格子3の格子定数及びフォーカンシングレンズ4の焦点距離等を用いて式(1)から求めることができる。
【0011】
図4はこのような分光装置の一設計例を示す表であり、図5は各波長に対する出射角を示す表である。この場合、例えば、”λ=1.55[μm]”、溝本数”900[l/mm]”及び”32[nm]”の波長範囲で”190素子”の受光素子(PD)とすれば、平均波長分散は”32/190=約0.17[nm]”となる。
【0012】
ところで、図4に示す表を用いて式(2)から実際の波長の波長分散を計算すると図6に示すようになる。図6は波長と波長分散との関係を示す表であり、図6から分かるように”1531[nm]”の波長の波長分散はPDアレイ5を構成する受光素子(PD)1素子当たり”0.1927[nm]”であるのに対して、”1563[nm]”の波長の波長分散はPDアレイ5を構成する受光素子1素子当たり”0.1462[nm]”となり、波長分散に依存性がある。
【0013】
図7は上述の依存性を改善した分光装置の構成図である。図7において1,2,3,4及び5は図3と同一符号を付してある。6はプリズム等の非線形分散補償手段である。
出射端1からの出力光はコリメーティングレンズ2により平行光に変換され回折格子3に入射する。回折格子3からの回折光は非線形分散補償手段6を介してフォーカシングレンズ4により集光されてPDアレイ5に入射する。
【0014】
図8は波長分散素子3及び非線形分散補償手段6での光路の説明図である。基本的な動作は図3に示すものと同様なので説明は省略する。
【0015】
式(2)を変形すると、dλ=(d/m)・cosθ・dθ (3)
となり、PDアレイ5を構成する受光素子が等間隔に配置されているとすると余弦成分(cosθ)に起因して波長分散に不均一が生じることなる。
言い換えれば、非線形性が存在する。
【0016】
一方、屈折の式は媒質の屈折率を”n1 ”及び”n2 ”、入射角及び出射角を”φ”及び”ψ”とすると、
n1・sinφ=n2・sinψ (4)
となり、”φ”で微分すると、
n1・cosφ・dφ=n2・cosψ・dψ (5)
となる。
【0017】
式(5)から分かるように屈折角もまた余弦成分に依存する。従って、波長分散素子3の出射角の余弦成分に起因する非線形性を屈折(非線形分散補償手段6)の余弦成分による非線形性で補償することが可能になる。
【0018】
図8において波長分散素子3の入射角及び出射角を”θ1 ”及び”θ2 ”、非線形分散補償手段6の入射角及び出射角を”θ3 ”及び”θ4 ”とし、非線形分散補償手段6の屈折率を”n”、波長を”λ”とすれば、
sinθ1+sinθ2=λ/d (6)
(1/n)・(dθ2/dλ)=−dθ3/dλ (7)
n・sinθ3=sinθ4 (8)
となる。
【0019】
そして、式(6)から式(8)を微分して整理することにより平均波長分散が得られ、
dθ4/dλ=cosθ3/(d・cosθ2・cosθ4) (9)
となる。
【0020】
さらに、式(9)を変形して、
d2θ4/dλ2=(dθ4/dλ)2
×{sinθ4/cosθ4
−(sinθ2・cosθ4)/(cosθ2・cosθ3)
−(sinθ3・cosθ4)/(n・cos2θ3)} (10)
となる。
【0021】
ここで、この特性が線形であるためには、”d2θ4/dλ2=0”であるから、式(10)を変形して、 tanθ3/(1−n2・sin2θ3)
=n・tanθ2/(n2−1) (11)
となる。
【0022】
例えば、以下の条件に基づいて波長分散特性を式(9)を用いて計算すると図9に示すようになる。図9は受光素子位置に対する波長差を示す特性曲線図である。
(a)PDアレイ5の使用素子数 約180
(b)PDアレイ5の素子間隔 50[μm]
(c)フォーカシングレンズの焦点距離 103.5[mm]
(d)使用波長範囲 1532〜1564[nm]
(e)回折格子の入射角 31.22[°]
(f)回折格子の出射角 61[°]
(g)回折格子のライン数 900[本/mm]
(h)プリズムの入射角 33.5643[°]
(i)プリズムの出射角 56[°]
(j)屈折率 1.5
【0023】
図9から分かるように隣接する受光素子間の波長誤差は”0.173〜0.1745”の範囲であり図6に示したものよりも平坦な特性になっている。
図10(a,b)はこのような非線形分散補償手段6を設けた構成における波長分散補償手段の効果を示すもので、図10(b)は(a)図をグラフ化したものである。
【0024】
これらの図において、散補償手段無しの場合のフォーカシングレンズの焦点距離f2は
100mmから60mmとなり、隣合うPDの波長差(Δλ)の最大値は0.194μmから0.165μmに改善され、同じく最小値は0.146μmから0.16μmに改善されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
ところで、PDアレイ上の結像位置には、フォーカシングレンズの歪曲特性も影響している。図11は一定の条件下で最適化した構成でのPDアレイ上の結像位置ずれの特性を示すもので、この図では88個のPDを80μmピッチで並べた状態を示している。
【0026】
実際の装置としての条件下では、図11に示すように結像位置におよそ±8μmの範囲のずれがある。そのため、PDのピッチと比較した位置精度としては±10%となり、十分に一致しているとはいえない。
従って本発明は、PDアレイ各素子位置をずらして配置することにより、結像位置と一致させたPDアレイを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
このような課題を達成するために、本発明のPDアレイは請求項1においては
入射光を波長分散素子を備えた分光装置に入射し、この分光装置からの出力光を検出するフォトダイオードレイにおいて、該フォトダイオードアレイを構成するダイオード素子の配列をずらして配置したことを特徴とする。
【0028】
請求項2においては、請求項1記載のPDアレイにおいて、
分光装置の分光特性に起因する結像位置のずれに合わせてダイオード素子の配列をずらしたことを特徴とする。
【0029】
請求項3においては、請求項1又は2に記載のPDアレイにおいて、
隣合うフォトダイオード素子の間に光遮蔽部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトダイオードアレイ。
【0030】
請求項4においては、請求項1乃至3に記載のPDアレイにおいて、
フォトダイオード素子の配列のずれは光遮蔽部材の幅を変化させて行うことを特徴とする請求項3に記載のフォトダイオードアレイ
【発明の効果】
【0031】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
請求項1及び2の発明によれば、分光特性に起因する結像位置のずれに合わせてPD素子の配列をずらしたので、分光装置の波長による受光感度特性の平坦化を図ることができる。
【0032】
請求項3の発明によれば、
隣合うPD素子の間に光遮蔽部材を設けたので、隣合うPD素子の中央部の電界中立点における励起された電子の引き抜き応答速度の低下を防ぐことができる。
【0033】
請求項4の発明によれば、
隣合うPD素子の配列のずれを光遮蔽部材の幅を変化させて行うので、PDアレイ各素子の受光窓の形状に変更がないため受光特性にバラツキが生じるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明のPDアレイの一実施例を示す要部拡大平面図である。
この図では分光装置の光学系で吸収し切れなかった結像位置ずれに合わせてPDを配置した例を示している。実際にはPDアレイチップでは図11で示すものとは異なり88個以上のPDを配置しているが、PDをずらして配置している様子を分かりやすくするためにチップ一部分の拡大図を示している。
【0035】
図1において10はアレイ状に形成されたPD素子、11はPD素子間に形成されたシャドウマスク、12はボンディングパッド13とPD素子10を接続する配線である。
【0036】
なお、図1の拡大部分は図11で結像位置ずれが0になる3点のうち最も左側の点と対応している。図中"5"、"10"、"15"といった表示はそのすぐ下のPDがアレイ構造の何番目に配置されている素子かを示しており、この例では結像位置ずれが0になるPD素子番号(PD素子10の中心とボンディングパッド13の中心が同じaとなる位置)は12番となっている。
【0037】
また、一般にこのようなPDアレイでは、PDAチップの実装組立性に支障を与えることのないようボンディングパッド13は一定間隔(例えば80um)で配置されている。そのため、ボンディングパッド13とPD素子10及び取り出し配線12の中心位置が相対的にずれることになる。
【0038】
図1の例では結像位置ずれに合わせるためにPDピッチを例えば81umとしているため、12番より前のPD素子ではボンディングパッドに対して左側(−側)にずれて(例えば図の7番はa>b)おり、12番より後ろのPD素子ではボンディングパッドに対して右側(+側)にずれて(例えば図の17番はa<b)となっているのが見て取れる。
【0039】
図2はPD配置をずらした際に各PD素子の受光特性を変化させないための工夫についての説明図である。
PDA出力の高速読み出しを行なう際、隣合うPD素子の中央部には電界中立点があり、この場所では励起された電子の引き抜き応答速度が遅いことが問題となる。そのため、PD間への光入射を遮断するシャドゥマスクを用いている。
【0040】
またPDアレイ各素子の受光特性にバラツキができないようにするためには各素子受光部のパターンを同一としなければならないため、PD位置のずれをシャドゥマスク11の幅を変更して吸収する必要がある。
【0041】
図2は1um刻みでシャドゥマスク幅を変えた例を示している。図示のように結像位置のずれに合わせてシャドゥマスク幅を変えることにより、結像位置とのずれを±0.5um以内に収めることが可能である。このように、シャドゥマスク幅を更に細かく変更することにより、PD位置と結像位置のずれ量を少なくすることができる。
なお、結像の大きさがPD素子に対し充分に小さい構成ではシャドゥマスクは不要である。
【0042】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るPDアレイの一実施例を示す要部拡大平面図である。
【図2】PD配置をずらした際に各素子の受光特性を変化させないための説明図である。
【図3】本発明が適用される分光装置の一例を示す構成図である。
【図4】分光装置の一設計例を示す表である。
【図5】各波長に対する出射角を示す表である。
【図6】波長と波長分散との関係を示す表である。
【図7】非線形分散補償手段を挿入した分光装置の一例を示す構成図である。
【図8】波長分散素子及び非線形分散補償手段での光路を説明する説明図である。
【図9】受光素子位置に対する波長差を示す特性曲線図である。
【図10】非線形分散補償手段を設けた構成における波長分散補償手段の効果を示す図である。
【図11】一定の条件下で最適化した構成でのPDアレイ上の結像位置ずれの特性を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 出射端
2 コリメーティングレンズ
3 波長分散素子
4 フォーカシングレンズ
5 PDアレイ
6 非線形分散補償手段
10 PD素子
11 シャドウマスク
12 配線
13 ボンディングパッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を波長分散素子を備えた分光装置に入射し、この分光装置からの出力光を検出するフォトダイオードレイにおいて、該フォトダイオードアレイを構成するダイオード素子の配列をずらして配置したことを特徴とするフォトダイオードアレイ。
【請求項2】
分光装置の分光特性に起因する結像位置のずれに合わせてダイオード素子の配列をずらしたことを特徴とする請求項1記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項3】
隣合うフォトダイオード素子の間に光遮蔽部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項4】
フォトダイオード素子の配列のずれは光遮蔽部材の幅を変化させて行うことを特徴とする請求項3に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項1】
入射光を波長分散素子を備えた分光装置に入射し、この分光装置からの出力光を検出するフォトダイオードレイにおいて、該フォトダイオードアレイを構成するダイオード素子の配列をずらして配置したことを特徴とするフォトダイオードアレイ。
【請求項2】
分光装置の分光特性に起因する結像位置のずれに合わせてダイオード素子の配列をずらしたことを特徴とする請求項1記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項3】
隣合うフォトダイオード素子の間に光遮蔽部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項4】
フォトダイオード素子の配列のずれは光遮蔽部材の幅を変化させて行うことを特徴とする請求項3に記載のフォトダイオードアレイ。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【公開番号】特開2006−343223(P2006−343223A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169385(P2005−169385)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]