説明

フォトマスクの製造方法

【課題】フォトマスクの製造難易度を定量的に表現し、フォトマスクを効率的に製造できる技術を提供する。
【解決手段】マスク製造負荷予測システムによる計算で求めたマスク製造負荷指数でマスクレイアウト、製品およびマスク層ごとに異なるマスク製造難易度を相対的に把握し、レイアウト修正可能な段階では最終的なレイアウトを難易度の低いものに修正し、マスク発注者からマスク製造者に早いタイミングでマスク製造難易度に関する情報を提供する。マスク製造負荷指数は、欠陥保証負荷指数と描画負荷指数とで示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクの製造技術に関し、特に、マスク製造の効率化に有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、より先端の半導体デバイスの開発を目的として、継続したデザイン(回路パターン)寸法の縮小およびRET(Resolution Enhancement Technique)による半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)上での解像性能向上への取り組みがなされている。そのため、フォトマスクについても、形成される回路パターン(寸法)の微細化、集積化およびOPC(Optical Proximity Correction)の複雑さ等が進行し、フォトマスク製造をより難しくしている。すなわち、回路パターン寸法の微細化で回路パターンの集積度が向上してフォトマスクレイアウト内の回路パターン数(図形数)が増加するのに加え、高精度なOPCや補助パターンなどの高度なRETが採用されると、回路パターンの複雑さが増すからである。
【0003】
一般に、製造する難しさ(以下、製造難易度と記す)が高いと製造コストが増加し、フォトマスク製造の場合には、フォトマスクの価格に反映し上昇する。半導体デバイスの中でも、少量生産で製品数の多いSoC(System on Chip)製品の生産では、収益に対するフォトマスクのコストの割合がメモリ製品に比べて大きく、フォトマスク発注総額も増加するので、フォトマスクのコストのマネージメントは非常に重要になる。フォトマスクのコストを低減させるためには、フォトマスクメーカーの製造コスト削減努力とフォトマスク発注側の協力との両方が不可欠である。フォトマスクメーカーでは、製造歩留りの向上および作業効率化のための製造工程の最適化がなされ、フォトマスク発注側からはフォトマスクの寸法スペックおよび欠陥スペックなどのスペックの適正化や、無駄のない合理的なフォトマスクの合否判定方法の採用などが検討および実施されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近では、製造容易性を前提としたマスクレイアウトの採用、フォトマスク内の領域別のスペックの設定による規格緩和、およびこれらの条件を満たすフォトマスク製造を効率化するためのデザイン(マスクレイアウト)の形成、すなわちマスクDFM(Design For Manufacturing)が重要とされてきている。マスクDFMを取り入れることで、フォトマスク製造の難易度を確実に低下することができる。このようなマスクDFMは、マスクレイアウト創出の様々な段階で採用されていくが、総合的なフォトマスク製造効率化への効果が判断し難いという問題がある。そのため、フォトマスク製造効率化の効果の指標の1つであるフォトマスクのコストを低減することによるフィードバックが明確でない限り、マスクDFMへの取り組みをさらに進められなくなるといった点が課題となっている。
【0005】
また、半導体デバイス製品毎、あるいはマスク層毎にマスクレイアウトは大きく異なるため、実際には個々のフォトマスクで製造難易度は異なるはずである。しかしながら、フォトマスク製造難易度は客観的に判断するのが困難となっている。ウエハ製造でのDFMはウエハ製造歩留りおよびプロセスマージンとして比較的顕著に現れる。それに対し、フォトマスク製造では、1デザインに1マスク製造が一般であり歩留り表現が難しいこと、製作不良で2枚目のフォトマスク製造投入を実施してもフォトマスクメーカーの負担増のみでフォトマスク単価には反映されないこと、フォトマスク価格は設計ノードとスペックで決定されるのが一般的で、マスクレイアウトの違いによるマスク価格の設定ということがなされていなかったこと、という点が製造難易度の客観的判断が困難となっていた原因である。
【0006】
ところで、フォトマスク製造難易度を予測するために、事前設定したルールに基づいてマスクレイアウトを解析し、フォトマスク製造時に問題となりうるレイアウトを抽出するMRC(Mask Rule Check(もしくはDRC(Design Rule Check)と記す))と、描画装置での描画単位である“Shot”にマスクレイアウトを分割し、その数を計数して描画時間を予測するソフトウエアを用いた手段とがある。
【0007】
MRCはフォトマスク製造時に問題となるレイアウトを抽出し、可能であればレイアウト修正することを促す警告を発するために使用される。しかしながら、MRCによる抽出結果をフォトマスク製造へ与える負荷の計算に使用する具体的な手段の開発が課題となっている。また、ソフトウエアによりマスクレイアウトからShot数を計数して描画時間を予測する方法でも、フォトマスク製造全体への負荷計算を実施する手段の開発が課題となっている。
【0008】
本発明の目的は、フォトマスクの製造難易度を定量的に表現できる技術を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、フォトマスクを効率的に製造できる技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
(1)本発明によるフォトマスクの製造方法は、
(a)フォトマスク発注者がフォトマスク製造負荷指数を求め、前記フォトマスク製造負荷指数をフォトマスク製造者に転送する工程、
(b)前記フォトマスク発注者が前記フォトマスク製造者にフォトマスクを発注する工程、
(c)前記フォトマスク製造者が前記フォトマスク製造負荷指数を基にフォトマスク製造計画を立て、前記フォトマスクを製造する工程、
を含み、
前記フォトマスク製造負荷指数は、フォトマスク製造難易度を基に求められるものである。
【0013】
(2)また、本発明によるフォトマスクの製造方法は、
上記(1)における前記(a)工程にて、
(a1)マスクレイアウトを解析する工程、
を含み、
前記フォトマスク製造負荷指数は、欠陥保証負荷指数および描画負荷指数の少なくとも一方を含み、
前記欠陥保証負荷指数は、前記(a1)工程時に抽出した前記フォトマスクの製造時に問題となるパターンの抽出数であるエラー数と、前記マスクレイアウト中に配置されたパターンの重要度とを基に決定する第1の関数であり、
前記描画負荷指数は、描画装置における描画単位をShotとした場合の半導体チップ当たりの総Shot数と、前記半導体チップの面積とを基に決定する第2の関数である。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0015】
フォトマスクの製造難易度を定量的に表現することができる。
【0016】
フォトマスクを効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本願発明を詳細に説明する前に、本願における用語の意味を説明すると次の通りである。
【0018】
ウエハとは、集積回路の製造に用いる単結晶シリコン基板(一般にほぼ平面円形状)、SOI(Silicon On Insulator)基板、エピタキシャル基板、サファイア基板、ガラス基板、その他の絶縁、反絶縁または半導体基板等並びにそれらの複合的基板をいう。また、本願において半導体集積回路装置というときは、シリコンウエハやサファイア基板等の半導体または絶縁体基板上に作られるものだけでなく、特に、そうでない旨明示された場合を除き、TFT(Thin Film Transistor)およびSTN(Super-Twisted-Nematic)液晶等のようなガラス等の他の絶縁基板上に作られるもの等も含むものとする。
【0019】
デバイス面とは、ウエハの主面であって、その面にフォトリソグラフィにより、複数のチップ領域に対応するデバイスパターンが形成される面を言う。
【0020】
マスクとは、パターン原画が描かれた基板の総称で、パターンの原寸法の数倍のパターンが形成されるフォトマスク(レチクル)を含む。可視、紫外光等を用いた露光装置に用いられる。マスクには、通常のマスク、位相シフトマスクおよびレジストマスクがある。
【0021】
通常のマスク(メタルマスクまたはクロムマスク)とは、透明なマスク基板上に、メタルからなる遮光パターンと、光透過パターンとでマスクパターンを形成した一般的なマスクのことを言う。
【0022】
フォトレジスト膜とは、一般に有機溶剤、ベース樹脂および感光剤を主成分とし、その他の成分も加わって構成されている。紫外線または電子線等のような露光光により感光剤は、光化学反応を起こし、その光化学反応による生成物が、あるいはその光化学反応による生成物が触媒となる反応により、ベース樹脂の現像液への溶解速度を大きく変化させ、露光および露光後に行われる現像処理によりパターンを形成するものを言う。露光部でのベース樹脂の現像液への溶解速度が小から大に変化するものをポジ型のフォトレジストといい、露光部でのベース樹脂の現像液への溶解速度が大から小に変化するものをネガ型のフォトレジストという。一般的なフォトレジスト膜では、主成分中に無機材料は含まれないが、例外としてSiを含有するフォトレジスト膜もこのフォトレジスト膜に含まれるものとする。一般的なレジスト膜と感光性SOG(Spin On Glass)との違いは、感光性SOGでは、主成分中にSi−OやSi−N等が含まれ、この部分が無機材料である点である。感光性SOGの主骨格は、SiOである。有機か無機かの違いは、終端部分にCH等が結合しているか否かで決まる。一般に有機で終端させた方が安定であり、広く使われているが、感光性SOGの主要部とは関係無く、有機または無機のいずれでも可能である。
【0023】
ホールパターンとは、ウエハ上で露光波長と同程度又はそれ以下の二次元的寸法を有するコンタクトホール、ビアホール(スルーホール)等の微細パターンである。一般には、マスク上では正方形またはそれに近い長方形あるいは八角形等の形状であるが、ウエハ上では円形に近くなることが多い。
【0024】
ラインパターンとは、ウエハ上で配線等を形成する帯状のパターンを言う。
【0025】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0026】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0027】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、実施例等において構成要素等について、「Aからなる」、「Aよりなる」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。
【0028】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0029】
また、材料等について言及するときは、特にそうでない旨明記したとき、または、原理的または状況的にそうでないときを除き、特定した材料は主要な材料であって、副次的要素、添加物、付加要素等を排除するものではない。たとえば、シリコン部材は特に明示した場合等を除き、純粋なシリコンの場合だけでなく、添加不純物、シリコンを主要な要素とする2元、3元等の合金(たとえばSiGe)等を含むものとする。
【0030】
また、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0031】
また、本実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするために部分的にハッチングを付す場合がある。
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、露光装置の構成の一例を示す説明図である。なお、図1においては、露光装置の機能を説明するために必要な部分のみを示したが、その他の通常の露光装置(スキャナやステッパ)に必要な部分は通常の範囲で同様である。
【0034】
露光装置EXPは、たとえば縮小比4:1の走査型縮小投影露光装置(スキャナ)である。露光装置EXPの露光条件は、たとえば次の通りである。すなわち、露光光Lpには、たとえば露光波長248nm程度のKrFエキシマレーザ光を用い、光学レンズの開口数NA=0.65、照明の形状は円形であり、コヒーレンシ(σ:sigma)値=0.7である。ただし、露光光Lpは、上記のものに限定されるものではなく種々変更可能であり、たとえばg線、i線、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)またはF(フッ素)ガスレーザ光(波長157nm)を用いても良い。
【0035】
露光光源E1から発する光は、フライアイレンズE2、アパーチャE3、コンデンサレンズE4、E5およびミラーE6を介してマスクRETを照明する。光学条件のうち、コヒーレンシはアパーチャE3の開口部の大きさを変化させることにより調整した。マスクRET上には異物付着によるパターン転写不良等を防止するためのペリクルPEが設けられている。マスクRET上に描かれたマスクパターンは、投影レンズE7を介して処理基板であるウエハ(被処理対象体)1上に投影される。なお、マスクRETは、マスク位置制御手段E8およびミラーE9で制御されたステージEst上に載置され、その中心と投影レンズE7の光軸とは正確に位置合わせがなされている。マスクRETは、その第1主面がウエハ1の主面(デバイス面)に向けられ、第2主面がコンデンサレンズE5に向けられた状態でステージEst上に置かれている。したがって、露光光Lpは、マスクRETの第2主面側から照射され、マスクRETを透過して、マスクRETの第1主面側から投影レンズE7に照射される。
【0036】
ウエハ1は、その主面を投影レンズE7側に向けた状態で試料台E11上に真空吸着されている。ウエハ1の主面上には、露光光Lpに感光するフォトレジスト膜が塗布されている。試料台E11は、投影レンズE7の光軸方向、すなわち、試料台E11の基板載置面に垂直な方向(Z方向)に移動可能なZステージE12上に載置され、さらに試料台E11の基板載置面に平行な方向に移動可能なXYステージE13上に搭載されている。ZステージE12およびXYステージE13は、主制御系E14からの制御命令に応じてそれぞれの駆動手段E15、E16により駆動されるので、所望の露光位置に移動可能である。その位置はZステージE12に固定されたミラーE17の位置としてレーザ測長機E18で正確にモニタされている。また、ウエハ1の表面位置は、通常の露光装置が有する焦点位置検出手段で計測される。計測結果に応じてZステージE12を駆動させることにより、ウエハ1の表面は常に投影レンズE7の結像面と一致させることができる。
【0037】
マスクRETとウエハ1とは、縮小比に応じて同期して駆動され、露光領域がマスクRET上を走査しながらマスクパターンをウエハ1上に縮小転写する。この時、ウエハ1の表面位置も上述の手段によりウエハ1の走査に対して動的に駆動制御される。ウエハ1上に形成された回路パターンに対してマスクRET上の回路パターンを重ね合わせ露光する場合、ウエハ1上に形成されたマークパターンの位置をアライメント検出光学系を用いて検出し、その検出結果からウエハ1を位置決めして重ね合わせ転写する。主制御系E14はネットワーク装置と電気的に接続されており、露光装置EXPの状態の遠隔監視等が可能となっている。上記の説明では、露光装置として走査型縮小投影露光装置(スキャナ)を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、たとえばマスク上の回路パターンの投影像に対してウエハを繰り返しステップすることで、マスク上の回路パターンをウエハ上の所望の部分に転写する縮小投影露光装置(ステッパ)を用いても良い。
【0038】
図2および図3は、上記のマスクRETの一例を示している。なお、図3は、図2中のA−A線に沿った断面図である。
【0039】
マスクRETのマスク基板3は、たとえば平面四角形に形成された厚さ6mm程度の透明な合成石英ガラス基板等からなる。マスクRETを用いる場合は、ウエハ上でポジ型のフォトレジスト膜を用いる。
【0040】
マスクRETにおけるマスク基板3の主面(パターン形成面)中央の集積回路パターン領域には、平面長方形状の光透過領域4Aが形成されており、マスク基板3の主面の一部が露出されている。この光透過領域4Aには、メタルからなる遮光パターン5Aが配置されている。この遮光パターン5Aは、ウエハ上のラインパターン(集積回路パターン)として転写される。遮光パターン5Aは、たとえばCr(クロム)またはCr上に酸化クロムが堆積されてなる。ただし、メタルの遮光パターンの材料は、これに限定されるものではなく種々変更可能である。
【0041】
マスク基板3の主面において集積回路パターン領域は、メタルからなる帯状の遮光パターン5C(メタル枠)によって取り囲まれている。遮光パターン5Cの材料は、上記遮光パターン5Aと同じである。また、マスクRETの上記周辺領域の大半は、遮光膜が除去されて光透過領域4Bとなっている。
【0042】
ところで、上記ウエハに作り込まれる半導体チップ(以降、単にチップと記す)CHP(図4参照)が、1つのチップ内にロジック回路C1、RAM(Random Access Memory)回路C2、ROM(Read Only Memory)回路C3、CPU(Central Processing Unit)回路C4、IP(Intellectual Property)回路C5、C6および入出力回路C7等の複数の回路ブロックが形成されるSoC製品である場合には、各回路ブロック毎に回路(配線)設計ルールが異なる。たとえば、ロジック回路C1を形成する配線は、最も小さな加工寸法で形成され、かつ最も複雑な配線パターンや最も高い配線密度で配置されるのに対し、入出力回路C7では、配線の加工寸法はロジック回路C1ほど小さくはなく、配線パターンもロジック回路C1ほど複雑ではなく、配線密度もロジック回路C1ほど高くない。また、RAM回路C2での配線の加工寸法、配線パターンの複雑さおよび配線密度の高さ等は、ロジック回路C1と入出力回路C7との間くらいになる。
【0043】
さらに、上記配線の加工寸法、配線パターンの複雑さおよび配線密度の高さ等は、同一の回路ブロックでも、各配線層毎に異なるものである。また、同一の配線層でも、たとえば図5に示すように、半導体基板(ウエハ(図示は省略))上の層間絶縁膜11に形成した配線溝12(以降、配線溝12と記す場合には、配線溝12下にて下層の層間絶縁膜13形成され下層の配線14に達する接続孔15も含むものとする)に銅膜または銅を主成分とする銅合金膜を埋め込むことで埋め込み配線16形成する場合には、埋め込み配線16が形成される領域LRと形成されない領域LDとで配線密度が異なってしまうことになる。埋め込み配線16を形成する際には、たとえば配線溝12内を含む層間絶縁膜11上に銅膜または銅合金膜を堆積することで配線溝12を銅膜または銅合金膜で埋め込み、次いで層間絶縁膜11上の余分な銅膜または銅合金膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法による研磨で除去する。しかしながら、同一の配線層で配線密度の異なる領域LR、LDが存在する状況下において、このようなCMP法による研磨を行うと、局所的に研磨が進行してしまういわゆるディッシングやエロージョンが発生し、埋め込み配線16が目減りを起こしたり、同一の配線層で段差が生じたりしてしまう不具合が懸念される。そこで、埋め込み配線16が形成されない領域LDにおいては、前述の配線溝12および埋め込み配線16を形成する工程と同一の工程で配線溝12Dおよびダミー配線16Dを形成することで、領域LRと領域LDとで配線密度を近づける手段がある。なお、ダミー配線16Dは、下層の配線14とは接続せず、回路としても機能しないものである。このような埋め込み配線16とダミー配線16Dとでは、加工寸法および配線パターンの複雑さ等が異なってくる。
【0044】
ここで、マスク製造難易度(フォトマスク製造難易度)とは、文字通りマスク発注者(マスクユーザー)の要求する品質(上記配線の加工寸法精度、パターン位置精度および欠陥品質等)を満たすマスクRETを製造する難しさであり、マスクRETを製造、出荷および納品するために要する労力(負荷(load))の大きさを表現する。マスクRETの製造は、ウエハ製造と異なり、1つのデザインに対して1枚から数枚程度のマスクしか製造しない少量多品種生産である。そのためウエハ製造で用いられる「歩留り(投入ロット(チップ)数に対する合格ロット(チップ)数)」では、マスクレイアウトによるマスク製造難易度を表現することができない。
【0045】
マスク製造難易度を決定する主な要因は、(i)マスクRET上のパターン(遮光パターン5A)の複雑さ、寸法および図形数などパターンのレイアウトに関する要素、(ii)マスクRETの材料および製造工程の選択に関する要素、(iii)マスクRETの製造のための工程能力と関係し、マスクRETの合格もしくは不合格を左右するマスクRETに要求される品質スペック値の要素、(iv)マスクRETの発注時に指定する納入期日(期限)までに残された時間(納期)の要素、等が挙げられる。従って、マスク製造難易度を下げる(本実施の形態では、容易に製造できるようにすることと、製造コストを下げることができることとを意味する)ためには、(a)マスクRET上のパターン(遮光パターン5A)をマスクRETの製造にとって困難な(負荷が高い)ものから製造が容易な(製造する上での負荷の小さい)レイアウトに変更する、(b)マスクRETの材料および製造工程を特殊な高コストのものではなく、汎用の低コストのものを選択する、(c)マスクRETに要求するスペック(CD(Critical Dimension)スペック(MTTおよびレンジなど)および欠陥スペック等)を必要最小限に設定する、あるいはウエハプロセス側でマスクRETの仕上り寸法および形状等を補うように調整してマスクRETを使用する、(d)マスクRETの製造に許容される納期を十分確保して設定する、等の取り組みが重要となる。なお、(b)の条件については、品質管理レベルが高くない材料を使用したマスクRETでも問題なくウエハ製造に使用できることを意味し、ウエハプロセスの余裕度が大きいマスクパターン(レイアウト)またはマスクエラーの許容度の大きいウエハプロセスが構築されることが前提となる。
【0046】
上記(ii)の材料および製造工程の選択は、ウエハ製造の許容度からマスクRET上の品質(たとえばCD精度、Flatness精度、および透過率・位相角の制御・面内ばらつき等)が半導体デバイス製品の属するデザインノード毎に固定されることが多い。上記(iv)の納期設定は、マスクRETのタイプ(binary、Att−PSM、Levenson)およびデザインノードで標準的な納期が固定されることが多い。上記(iii)のスペック設定は、マスクRETのタイプおよびデザインノードで固定されることが一般的である。
【0047】
ところで、マスク製造難易度を低減する取り組みとして、ウエハ製造工程の特性(プロセスウインドウ)を考慮した自由度の広いスペックに緩和する手法がある。これに対して、個々のマスクRETの製造状況では、上記(c)のスペック設定に対するマスクRET製造の工程能力や、上記(d)の納期設定に対する実際に要する製造期間は、いずれも(i)のマスクRET上のレイアウトの複雑さに影響されていることが経験的に認識できる。デザインノード毎に設計ルールが設定されており、完成したレイアウトがそのルールの範囲内であったとしても、たとえば最小寸法が採用されたレイアウト箇所の数やレイアウト内の配置が、半導体デバイス製品によって明らかに異なる。この製品によるレイアウトの違いが各マスクRET毎の製造の困難さに差を与え、マスクRETの製造コストおよび必要となる期間(工期)に違いを生じさせる。従って、マスクRETの製造難易度を測る指標としては、他要因から影響される要素や従属する要素を排除し、マスク設計(レイアウト)からの情報を要素として判断することが好ましい。
【0048】
前述したように、マスクRETの製造は、ほぼ一品一様の特注生産であり、同一製品を大量生産する半導体デバイス製品の歩留り計算と比べて実際のマスク製造の実態を反映し難い。さらに、マスクRET毎の製造難易度は、指示されたスペック値およびデザインノードだけでは把握することが困難であり、実際に製造が開始した後で急に困難さが浮き彫りとなる場合もある。特に、顧客へのサンプル品の納入を急ぐSoC製品でこのような事態が生じた場合、マスクRETのコストが増加するだけでなく、マスクRETの納入が遅れたことでウエハの製造および販売の計画を狂わせる重大な問題を生じる危険性がある。このような不具合を防ぐためにも、マスク発注者およびマスク製造者共に、早い段階でマスクRETのレイアウトの情報を元に個々のマスクRETのマスク製造難易度を把握しておくことが重要である。
【0049】
そこで、本発明者らは、レイアウトの違いによる個々のマスクRETの製造難易度(マスク製造に与える負荷)を定量化する手法と、それを実現するシステム(以降、マスク製造負荷予測システムと記す)を開発した。この手法では、マスク発注者側が事前に(マスクレイアウトデータをマスク製造者に発注および出力する前に)マスクレイアウトを解析することで、マスク製造難易度を見積もるものである。このような本実施の形態のマスク製造負荷予測システムについて、以下に詳細に説明する。
【0050】
図6は、本実施の形態のマスク製造負荷予測システムのワークフロー図である。この図6に示す本実施の形態のマスク製造負荷予測システムの基本となる入力情報は、各チップのレイアウトのデザインルールチェック(DRC)結果、電子ビームによるマスク描画の最小単位であるShotの数を計算するシミュレータからの出力情報、およびチップ配置数やスペック設定などのマスク発注仕様情報である。MRCツールを用いてマスク製造に負荷を与えるパターンをチップレイアウトからすべて探し出し、ルール毎に抽出されたレイアウト箇所の数と位置の情報を生成する。Shot数計算シミュレータを用いて、チップレイアウト全面をマスク電子ビーム描画装置が行う描画時の最小図形単位であるShotへの分割をシミュレーションしてその総Shot数を見積る。遮光パターン5Aのデザイン寸法の縮小、レイアウトの集積度の向上、およびOPC処理が大きく影響して遮光パターン5Aのレイアウトの複雑さが増加し、これらはマスク電子ビーム描画のShot数の増加をもたらし、その結果マスク電子ビームによる描画時間を延長させる。そこで、マスク描画工程に与える負荷を見積もる入力情報としてShot数の見積り値を使用する。その他、チップレイアウトの面積、および特定のレイアウトの機能を区別した設計インテント情報等も入力情報として活用する。いずれの情報もマスク作成を依頼する(発注する)側がOPC処理を行ったレイアウトデータを用いて実施することで、マスク発注前のタイミングで得ることができる。また、開発段階のレイアウトの検証のタイミングでも、これらの情報を作成することができる。次に、実際のマスク製造工程負荷状況の調査結果と、レイアウト解析(MRCおよびShot数計数)からの入力情報との関係を考察し総合的なマスク製造難易度を表現する指数と、マスク製造負荷指数とを計算するための係数を設定する。マスク製造負荷指数の計算式については後述するが、そのマスク製造負荷指数は、チップ単位のレイアウト解析入力情報とマスク発注仕様情報とを用いた総合的な指数となる。このようなマスク製造負荷指数を基に、マスク製造者がマスクの製造計画を立て、またマスクの価格を設定するものである。
【0051】
本実施の形態のマスク製造負荷予測システムを用い、図6に示すワークフローを実現することで後述する計算式で求めたマスク製造負荷指数でマスクレイアウト、製品およびマスク層ごとに異なるマスク製造難易度を相対的に把握し、レイアウト修正可能な段階では、最終的なレイアウトを難易度の低いものに修正することでマスクの製造コストを低減することができる。また、本実施の形態のマスク製造負荷予測システムを用い、開発段階を終了した量産段階の半導体デバイス製造用のマスクに対しても、マスク製造難易度を見積もる計算を行うだけでなく、マスク製造を効率化して製造コストを低減することができるレイアウトに関する情報を抽出し、マスク発注者からマスク製造者に早いタイミングでマスク製造難易度に関する情報を提供することができる仕組みも実現できる。
【0052】
マスク製造難易度は、結果としてマスク製造コストに反映されるため、製造コストの内訳が難易度を見積もる計算の元情報となる。製造コストは、概ね、(i)マスク検査および欠陥修正に要するコスト、(ii)マスク電子ビーム描画に要するコスト、(iii)その他の材料および製造工程に要するコスト、の3つのカテゴリに分割される。これらコストのうち、(i)および(ii)に要するコストは、それぞれが全体のおよそ1/4〜1/3である。また、(i)および(ii)の負荷の割合は、マスクRETのデザインノードが進むにつれてその割合が大きくなると予測されている。そこで、本実施の形態では、(i)を決定付ける欠陥保証工程負荷(前記検査負荷を含む)および(ii)を決定付けるマスク描画工程負荷に注目し、それぞれの工程に要する平均的な時間を主とするレイアウト起因のマスク製造負荷をレイアウトの解析情報(MRCエラー抽出数およびShot数)から見積もる計算式を次のように設定した。すなわち、MMI=a1×DAT+a2×EBI、DAT=f(x)、EBI=f(y)である。ここで、MMIはマスク製造負荷指数、DATは欠陥保証負荷指数、EBIは描画負荷指数、a1およびa2は製造環境でのマスク欠陥保証工程およびマスク描画工程の重み付けの違いを調整するための調整用の係数、f(x)はMRCエラー数、設計インテント情報およびチップ面積によって決定される変数xの関数(第1の関数)、f(y)はShot数およびチップ面積によって決定される変数yの関数(第2の関数)である。
【0053】
上記のように、各マスクRET毎に異なるレイアウト起因のマスク製造難易度は、マスク製造負荷指数MMIで表現することができる。マスク製造負荷指数MMIは、欠陥保証工程(欠陥検査(第1の負荷)および欠陥修正(第2の負荷))の負荷を表現する欠陥保証負荷指数DATと描画工程の負荷を表現する描画負荷指数EBIとの線形結合とで表すことができる。また、a1およびa2には、たとえばマスク発注者、マスク製造者、検査および描画それぞれの適用装置の所有数、装置の価格、ランニングコスト、ウエハ面内におけるチップの配置レイアウト、ウエハ内におけるチップの数、チップの製品分類、マスクのスペック、マスクの製造に用いる材料、マスクの製造工程およびマスクの納期などのうちの少なくとも1つが関連する。
【0054】
欠陥保証負荷指数DATには、MRCで探し出したエラーの数と、レイアウト内に指示された重要度(設計インテント)によるレイアウトの区別と、それに基づいてマスク製造負荷を分散させる色々なマスク製造での運用を採用することで区別されたレイアウト毎のマスク製造負荷の相対比、およびチップ面積・パターン面積を係数として関数に盛り込んでいる。描画負荷指数EBIは、チップ当たりの総Shot数とマスク電子ビーム描画対象の領域の面積(チップ面積)とを組み合わせた関数としている。
【0055】
マスク電子ビーム描画は、マスク基板3(図2および図3参照)の表面に塗布したレジストの表面に収束した電子ビームを絞りで矩形化してマスクレイアウト通りに打ち込むことでマスク上にパターンを形成していく。矩形化された図形が前述のShotであり、これを最小の単位として電子ビームが走査される。従って、Shot数が多くなると電子ビームを移動させる回数が増加し、描画時間が増加する。また、マスク基板3には、電子ビームを偏光により移動できる範囲を超えて隣接した領域に対して、連続あるいはステップアンドリピート方式で順次移動されてマスク全面に電子ビームを走査してパターンが描画される。そのため、描画対象の領域の面積は、ステージを移動する時間に影響される。なお、描画したパターンの品質を向上させるために、電子ビーム照射当たりの電気量を減らし、複数回重ねて描画する方法がある。本実施の形態の描画負荷指数EBIの計算には、OPC後のレイアウトデータを用いたシミュレーションで見積もったShot数の情報を用いている。このシミュレーションで見積もったShot数で実際の描画装置にて生成するShotの総数を想定することができる。図7は、チップでの最小加工寸法が約67nmである製品用のマスクRETにおいて、予め把握されているチップ面積(チップの設計寸法から計算)とシミュレーションで見積もったShot数とを用いて計算した描画負荷指数EBIと描画工程仕掛時間との関係を示したものであり、描画負荷指数EBIおよび描画工程仕掛時間の双方とも任意の基準値を基にした相対値(単位はau(arbitrary unit))で示されている。図7に示すように、計算で求めた描画負荷指数EBIと描画工程仕掛時間とには十分な相関が確認され、マスクレイアウトからシミュレーションにより見積もったShot数の情報とレイアウトの面積情報を元にした描画負荷指数EBIとから、描画負荷を見積もることが可能であることがわかる。すなわち、描画負荷指数EBIからマスク製造負荷を示すマスク製造負荷指数MMIを見積もることが可能となる。
【0056】
上記のような本実施の形態によれば、マスク発注データの転送前にマスク製造負荷予測システムによってマスクレイアウトによるマスク製造負荷指数MMIを計算することが可能であり、このマスク製造負荷指数MMIを開発段階などで事前に確認することでマスク製造を容易にすることができる。それにより、マスク製造を効率化できる。また、マスク製造を効率化することによって、マスクの製造コストを低減できるようになるので、マスク自体のコストも低減できる。
【0057】
(実施の形態2)
本実施の形態における設計インテントとは、設計者の意図によるレイアウトの重要度分類のことであり、この情報をマスクレイアウトデータ内に盛り込んでおいてマスク製造に活用することができる。たとえば、パターンの重要度別に設定されたマスク欠陥規格の運用であり、(a)重要度別に検査感度を変える、(b)検出後の欠陥の判定を差別化する、(c)検出された欠陥の修正および修正後の検証作業方法および基準の差別化、等である。この設計インテントの活用で、パターンの重要度が比較的低い部分の欠陥規格を緩和する等を実施し、欠陥検査および欠陥修正作業負荷を相対的に小さくすることができる。また、パターンの重要度別でマスク製造への負荷が異なることになり、それぞれの重要度に割り当てられたパターンおよび領域の面積を求め、重要度別にマスク欠陥規格等を調整する効果を相対的な重み付けで表現することにより、チップ(またはマスク)全体での実際の欠陥保証工程の負荷を見積もることができる。この考え方を基に以下の式で実効検査面積を計算する。すなわち、EIAを実効検査面積とし、S1,S2,…を設計インテントで重要度1,2,…とされたパターンまたは領域の面積の合計とし、b1,b2,…をそれぞれの重み付けを表現する係数とし、EIA=b1×S1+b2×S2+…で表される式から計算するものである。実効検査面積EIAは、欠陥保証の中の欠陥修正工程に影響を与えるものであり、前記実施の形態1で説明したマスク製造負荷指数MMIを決定する欠陥保証負荷指数DATに影響するものである。すなわち、実効検査面積EIAからマスク製造負荷を示すマスク製造負荷指数MMIを見積もることが可能となる。
【0058】
上記のような本実施の形態によれば、前記実施の形態1と同様に、マスク発注データの転送前にマスク製造負荷予測システムによってマスクレイアウトによるマスク製造負荷指数MMIを計算することが可能であり、このマスク製造負荷指数MMIを開発段階などで事前に確認することでマスク製造を容易にすることができる。それにより、マスク製造を効率化できる。また、マスク製造を効率化することによって、マスクの製造コストを低減できるようになるので、マスク自体のコストも低減できる。
【0059】
(実施の形態3)
前記実施の形態1で説明した欠陥保証負荷指数DATのうち、欠陥修正負荷には欠陥修正工程仕掛時間が関係し、この欠陥修正工程仕掛時間は修正対象となる欠陥の数と関係する。この欠陥数は、開口面積(マスクパターン描画部の面積)と関係する。図8は、チップでの最小加工寸法が約90nmである製品用のマスクにおける、マスク毎の欠陥数と開口率との関係を示したものである。欠陥数は、マスク製造に用いられる材料の品質、製造工程の状況および製造工程条件等に左右されるが、図8に示すように、開口率が増えれば発生する欠陥数は増加する。つまり、保証すべきパターンの面積が多いほど欠陥発生の確率は大きくなり、結果として欠陥修正の負荷が増加する。特に、先端半導体デバイス用のマスクの欠陥保証には、高精度な欠陥修正技術の適用および欠陥修正部の検証方法の適用が必須となっており、これらが欠陥修正負荷を増加させている。以上のことから、前記実施の形態2で示した実効検査面積EIAと欠陥修正負荷を結びつけることで、設計インテントを含むマスクレイアウトから欠陥修正負荷を見積もることができる。すなわち、欠陥修正負荷からマスク製造負荷を示すマスク製造負荷指数MMIを見積もることが可能となる。
【0060】
上記のような本実施の形態によれば、前記実施の形態1、2と同様の効果を得ることができる。また、先端半導体デバイス用のマスクの製造を容易にするための取り組み(マスクDFM)の効果を定量的に検証することができるようになり、その後に取り組まれるあらゆるDFM手法のワークフローを効果的に加速することが可能となる。
【0061】
(実施の形態4)
マスク検査は、マスクの製造工程の中で最も時間を要する工程の一つである。マスク検査工程は、所要時間が概ね一定しているが、マスク毎にレイアウトが異なることから、時には疑似欠陥が想定外に発生し、レビュー作業の増加、検査感度設定の見直し、およびマスク発注側への対処相談等の作業が追加で発生する場合がある。このような場合にマスク検査工程の負荷が増加する。図9は、マスク当りの欠陥(疑似欠陥を含む)の検出数とマスク検査工程の仕掛時間との関係を示したものであり、マスク当りの欠陥検出数が多くなり、あるしきい値を越えるとマスク検査工程の仕掛かり時間が増える傾向があることがわかる。実際の欠陥数は、プロセス管理で少ない数に抑えられており、図9の欠陥検出数のほとんどは疑似欠陥と判断されるため、疑似欠陥が多くなる可能性のあるマスクレイアウトでは、マスク検査工程の負荷が増加するといえる。
【0062】
そこで、本実施の形態では、疑似欠陥となる可能性のあるレイアウトの形状と寸法とを想定したルールを設定し、そのルールが盛り込まれたMRCをレイアウトデータに実施し、ルール毎に抽出されるエラー数を元に検査工程の負荷を見積もる。以上より、欠陥修正工程の負荷と検査工程の負荷とを合わせた欠陥保証工程の負荷は、MRCで抽出したエラー数の情報と実効検査領域との組み合わせとし、これらの情報から前記実施の形態1で説明した欠陥保証負荷指数DATを決定することができる。
【0063】
上記のような本実施の形態によれば、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0064】
(実施の形態5)
本実施の形態5では、前記実施の形態1〜4で説明したように設定したマスク製造負荷指数MMIの計算を最小加工寸法が90nmの半導体デバイス(チップ)のクリティカル工程のマスクレイアウトに実施し、出力されたマスク製造負荷指数MMIを製品毎およびマスク層毎に比較した。ここで、クリティカル工程とは、特に微細な加工が求められる工程であり、パターンの寸法精度ばかりでなく、パターンの重ね合わせ余裕が特に小さくなることも含まれる。
【0065】
図10は、チップでの最小加工寸法が約90nmである製品(チップ)における金属(配線)層でのパターン占有面積で、設計インテントを元にした重要度別の面積の割合を示している。図10において、重要度1は重要度2よりも必要な保証精度が高くなっている。図10に示した比と製品毎のチップ面積(描画パターン占有面積)とを組み合わせて実効検査面積EIA(前記実施の形態2参照)が計算される(図11の棒グラフ参照)。図11の実効検査面積は、製品#1で規格化している。実効検査面積(実際に欠陥品質保証する必要のある面積)は、製品毎のレイアウトと設計インテントの定義の仕方とによって決定される。図12は、MRCで抽出した疑似欠陥になる可能性のあるレイアウト箇所の数をまとめたものであり、各MRCルール(カテゴリ(解析目的)A、B、Cおよびそれぞれにおける1〜6のレベル(予め設定した解析基準(カテゴリBは1〜5レベル)))で疑似欠陥になる可能性のあるレイアウトを抽出し、各MRCルールにおける疑似欠陥発生の危険性を相対的な重み付けを設定し、そのMRC抽出数×重み付けの総和でマスク毎の疑似欠陥発生予想数が計算される。図13は、製品#1で規格化した製品毎の疑似欠陥発生予想数を示したものである。また、図14は、上記の実効検査面積と疑似欠陥予想数を用いて求められた欠陥保証負荷指数DAT(前記実施の形態1も参照)である。描画負荷指数は、Shot数計数シミュレーションの出力とチップ面積とから計算され、図15に示すようになり、図15からは、製品#3、#4の描画負荷は、製品#1、#2の描画負荷よりも低いことがわかる。図16は、欠陥保証負荷指数DATと描画負荷指数EBIとを合わせて全体のマスク製造負荷指数MMIを算出したものを図示している。このマスク製造負荷指数MMIを用いて、製品毎もしくはマスク(レイアウト)毎のマスク製造難易度が相対比較できるようになる。すなわち、このようなマスク製造負荷指数MMIをマスク発注者側で算出し、マスク製造者側に転送する工程を、マスク製造工程のルーチン処理に組み込むことにより、製品またはマスク層ごとの製造難易度の違いを定量的に認識することが可能となり、マスク製造工程の仕掛り制御に有効に活用することが可能となる。
【0066】
図14〜図16の例では、異なる製品のマスクレイアウト間で欠陥保証負荷指数、描画負荷指数、およびマスク製造負荷指数を比較したが、それぞれの指数に対して予め設定した標準値(基準値)と比較して製造難易度の違いを定量的に認識することも可能である。
【0067】
(実施の形態6)
前記実施の形態1〜5で説明したマスク製造難易度を表現するマスク製造負荷指数MMIを計算するマスク製造負荷予測システムでは、(a)マスクデータベース検査で使用する画像補正パターンの選択機能、(b)検査不問領域設定機能、(c)マスク単位のShot数見積り情報をマスクメーカーに事前提供する機能、(d)マスク製造難易度を上げる要因となるマスクレイアウトの分析機能、(e)マスク製造難易度集計に関わるデータ転送システム機能、(f)ユーザーインターフェース機能、といった機能を盛り込む。
【0068】
上記(a)では、MRCで抽出した疑似欠陥になる危険性が高いパターンの存在箇所の情報を用いてマスク検査でデータベースとの画像照合(Die-to-Database検査)をする際に、データベースのパターンの画像補正に使用する実際のマスク上のパターンの位置を選択する。検査工程前の準備段階でレイアウトをビュアで確認し、マスクレイアウト内に存在する特徴的なパターンをオペレータが経験的に選択することで補正用パターンを選択する方法では、疑似欠陥が発生する場合には補正パターンの選択を見直して再度の検査となってしまう場合がある。一方、本実施の形態のマスク製造負荷予測システムでは、MRCで抽出した疑似欠陥の危険性があるパターンの位置からマスク検査装置で画像補正するのに使用する領域サイズに最も対象となるパターンが多く入る箇所をマスク上で位置的に偏りがないように自動的に選択することができる。
【0069】
上記(b)では、上記(a)の場合と同様にMRCで疑似欠陥になる危険性のあるパターンが選択されるが、必ず疑似になるレイアウトの形状および寸法に合致するレイアウトの存在する位置から、検査領域から除外すべき領域を自動的に設定することができる。
【0070】
上記(c)では、チップ単位でシミュレーションしたShot数の情報(チップ当たりの総Shot数およびチップ内のShot数密度分布)をマスク全体分に再集計することができる。チップの配置数、配置位置、チップ本体とスクライブ部との位置関係、およびそれぞれのShot数を元に、マスク全体での総Shot数とShot数の密度分布を生成する。マスク製造者側では、このShot数情報(フォトマスクの製造に用いるパラメータ)をマスク製造負荷指数MMIの計算値とともに事前に把握することで、マスク製造への負荷および製造時の要注意点を認識することができ、マスク製造をより効率的に行うことができる。
【0071】
上記(d)では、マスク製造負荷となるパターンを抽出するルールを設定し、MRCでマスク製造負荷となるパターンを抽出した後、本実施の形態のマスク製造負荷予測システムを用いてサンプルとなるレイアウトを選択して自動的にレイアウト画像を切り出してレポートする。また、ライブラリセルレイアウトの製造性テストの一環として、マスク製造負荷予測システムを活用し、セル単位でマスク製造難易度を判定することができる。本実施の形態のマスク製造負荷予測システムでは、ライブラリセルのレイアウト評価用データを用い、セル単位でShot数計数シミュレーションを起動させてその結果を集計することができる。評価用レイアウト内に複数個をランダムに配置した同一のライブラリセルは、OPC処理後には、周囲に隣接して配置された他のセルの影響でそれぞれ異なるセルとされる。これらのセルをすべて1つずつShot数を計数して、最終的にはOPC前のセル単位でOPC後のレイアウトのShot数が集計される。また、OPC前のレイアウトも用いてShot数計数を行うことで、OPC処理によってShot数が多くなるセルを特定し、マスク描画負荷が増加する原因を調査することができる。
【0072】
上記(e)では、マスク製造難易度集計の入力時に用いるMRCエラーファイル、Shot数計数シミュレーション結果ファイル、GDSファイル、スペック(材料も含む)、チップ配置(数およびレイアウト)、デザインノード、製品種別、製造工程、および納期設定などが記載された電子ファイル(フォトマスク発注情報(複数の電子ファイルに分かれていてもよい))をそれぞれMRCツール、Shot数計数シミュレータ、マスク発注者側のCADサーバー、およびマスク発注情報サーバーなどから、それぞれの電子ファイルが生成された後に個別またはまとめてマスク製造負荷予測システムを備えたサーバーに転送する。この場合、途中に別サーバーを経由するなどの経路の制限はしないが、各電子ファイルは、サーバーでの保管時も含めてマスク発注者とマスク製造者との間で取り決めたパスワードで保護してもよい。本実施の形態のマスク製造負荷予測システムをコントロールするサーバーは、必要な入力ファイルがそろったタイミングでマスク製造負荷予測システムを起動するコマンドを自動実行する。この際、実行する条件が記載された実行ファイルも自動生成してもよい。マスク製造負荷予測システムでの出力は、上記のあらゆる目的および方法で計算されたファイルであり、出力されたタイミングで管理サーバー内に保管される。同時に、必要な出力情報はマスク製造者およびマスクユーザー(マスク発注者)に自動的に転送される。この転送処理は、マスクの発注時でもその前後でもよい。マスク製造者およびマスクユーザーに転送される情報は、マスク製造負荷予測システムからの出力ファイルをさらに整理および加工したファイルであってもよい。
【0073】
上記(f)では、手動でマスク製造難易度集計を実施する場合に、マスク製造負荷予測システムとのユーザーインターフェースが利用される。このユーザーインターフェースでの入力画面では、MRCエラーの記載された電子ファイル名、Shot数計数シミュレーション結果が記載された電子ファイル名、スペックとチップ配置(数)とデザインノードと製品種別と納期設定などが記載された電子ファイルのファイル名、およびマスク製造負荷予測システムによる計算条件が記載された電子ファイル名等のうち、少なくとも1つを入力できる。また、入力は手動でも可能である。また、CAD処理の認識番号などを元に自動的に入力ファイル名を表示させてもよい。このユーザーインターフェースには、実行するコマンドの選択欄、指定するボタンまたは入力欄が含まれ、マスク製造難易度計算、マスク検査リファレンスパターン選択、検査不問領域設定、およびその他の出力ファイル名の設定欄も含まれる。入力ファイル名から派生した出力ファイル名が自動的に形成される設定としてもよい。マスク製造難易度集計条件ファイルには、欠陥検査負荷を計算するためにMRCエラールール毎に設定する係数、描画負荷を計算するためにShot数に対して設定する係数、および設計インテントで分割されたレイアウトごとに設定される係数等の係数が記載される。
【0074】
(実施の形態7)
本実施の形態のマスク製造負荷予測システムを用いたマスク製造難易度の見積りは、DFMの手法を用いた場合のマスク製造難易度の低減効果を定量的に検証することができる。
【0075】
たとえば、OPC処理後にパターンの頂点位置をそろえるレイアウト補正を行い、マスク電子ビーム描画でのShot分割を効率よく行えるようにして、Shot数を約10%減少できるとすると、マスク製造負荷指数MMIは、レイアウト補正前に比べて約2%減少する結果となり、マスク製造負荷の低減が確認できる。
【0076】
また、たとえば設計インテントの情報をより詳細にマスクレイアウトに導入し、CMP法により形成したダミー配線16D(図5参照)と同等の欠陥保証スペックとなるパターン面積が約10%増加したとすると、マスク製造負荷指数MMIの低減率は約1%となった。マスクレイアウト内に存在する比較的重要度の低いパターンの割合は、製品により異なるが、製造難易度の高いチップ内の1層目の金属配線などで、信号線などのクリティカル工程で形成されるパターンと、電源線およびグランド線などのクリティカル工程で形成されるパターンに比較して必要精度が緩和できるパターン(これらのパターンはデザイン寸法が少し大きくパターン変動に対する許容値が広い)とを区別し、欠陥規格の緩和と、欠陥修正方法および検証方法の制限緩和とを行うことで、欠陥保証作業負荷をクリティカル工程で形成されるパターンに比べて必要精度が緩和できるパターンで低減できたとすると、必要精度が緩和できるパターンの面積割合が多いほどマスク製造難易度の低減効果を大きくすることができる。
【0077】
(実施の形態8)
本実施の形態における設計インテントとは、設計者の意図によるレイアウトの重要度分類のことであり、この情報をマスクレイアウトデータ内に盛り込んでおいてマスク製造に活用することができる。たとえば、パターンの重要度別に設定されたマスク欠陥規格の運用であり、(a)重要度別に検査感度を変える、(b)検出後の欠陥の判定を差別化する、(c)検出された欠陥の修正および修正後の検証作業方法および基準の差別化、(d)重要度情報に応じて、欠陥修正工程(方法)を変更する、等である。この設計インテントの活用で、パターンの重要度が比較的低い部分の欠陥規格を緩和する等を実施し、欠陥検査および欠陥修正作業負荷を相対的に小さくすることができる。また、前記(d)により、欠陥修正工程をリスクの低い簡単な工程(方法)に変更することが可能となり、その結果、欠陥修正時間の削減と、欠陥修正ミスの削減とを実現できる。
【0078】
また、パターンの重要度別でマスク製造への負荷が異なることになり、それぞれの重要度に割り当てられたパターンおよび領域の面積を求め、重要度別にマスク欠陥規格等を調整する効果を相対的な重み付けで表現することにより、チップ(またはマスク)全体での実際の欠陥保証工程の負荷を見積もることができる。この考え方を基に以下の式で実効検査面積を計算する。すなわち、EIAを実効検査面積とし、S1,S2,…を設計インテントで重要度1,2,…とされたパターンまたは領域の面積の合計とし、b1,b2,…をそれぞれの重み付けを表現する係数とし、EIA=b1×S1+b2×S2+…で表される式から計算するものである。実効検査面積EIAは、欠陥保証の中の欠陥修正工程に影響を与えるものであり、前記実施の形態1で説明したマスク製造負荷指数MMIを決定する欠陥保証負荷指数DATに影響するものである。すなわち、実効検査面積EIAからマスク製造負荷を示すマスク製造負荷指数MMIを見積もることが可能となる。
【0079】
上記のような本実施の形態によれば、前記実施の形態1と同様に、マスク発注データの転送前にマスク製造負荷予測システムによってマスクレイアウトによるマスク製造負荷指数MMIを計算することが可能であり、このマスク製造負荷指数MMIを開発段階などで事前に確認することでマスク製造を容易にすることができる。それにより、マスク製造を効率化できる。また、マスク製造を効率化することによって、マスクの製造コストを低減できるようになるので、マスク自体のコストも低減できる。
【0080】
(実施の形態9)
前記実施の形態1〜5で説明したマスク製造難易度を表現するマスク製造負荷指数MMIを計算するマスク製造負荷予測システムでは、(a)マスクデータベース検査で使用する画像補正パターンの選択機能、(b)検査不問領域設定機能、(c)マスク単位のShot数見積り情報をマスクメーカーに事前提供する機能、(d)マスク製造難易度を上げる要因となるマスクレイアウトの分析機能、(e)マスク製造難易度集計に関わるデータ転送システム機能、(f)ユーザーインターフェース機能、といった機能を盛り込む。
【0081】
上記(a)では、MRCで抽出した疑似欠陥になる危険性が高いパターン(問題となるパターン)の存在箇所の情報を用いてマスク検査でデータベースとの画像照合(Die-to-Database検査)をする際に、データベースのパターンの画像補正に使用する実際のマスク上のパターンの位置を選択する。検査工程前の準備段階でレイアウトをビュアで確認し、マスクレイアウト内に存在する特徴的なパターンをオペレータが経験的に選択することで補正用パターンを選択する方法では、疑似欠陥が発生する場合には補正パターンの選択を見直して再度の検査となってしまう場合がある。一方、本実施の形態のマスク製造負荷予測システムでは、MRCで抽出した疑似欠陥の危険性があるパターンの位置からマスク検査装置で画像補正するのに使用する領域サイズに最も対象となるパターンが多く入る箇所をマスク上で位置的に偏りがないように自動的に選択することができる。また、疑似欠陥になる危険性が高いパターンを欠陥検査装置の補正処理パターンに用いることにより、疑似欠陥数を減らし、マスクの欠陥検査後の欠陥レビュー時間を減らすことができるようになる。それにより、欠陥検査工程において、疑似欠陥を多発させてしまう不具合を回避することが可能となる。また、疑似欠陥になる危険性が高い複数のパターンのうち、一部のパターンを検査不問領域として定義し、欠陥検査を行わないことによっても、疑似欠陥数を減らし、マスクの欠陥検査後の欠陥レビュー時間を減らすことができるようになる。
【0082】
上記(b)では、上記(a)の場合と同様にMRCで疑似欠陥になる危険性のあるパターンが選択されるが、必ず疑似になるレイアウトの形状および寸法に合致するレイアウトの存在する位置から、検査領域から除外すべき領域を自動的に設定することができる。
【0083】
上記(c)では、チップ単位でシミュレーションしたShot数の情報(チップ当たりの総Shot数およびチップ内のShot数密度分布)をマスク全体分に再集計することができる。チップの配置数、配置位置、チップ本体とスクライブ部との位置関係、およびそれぞれのShot数を元に、マスク全体での総Shot数とShot数の密度分布を生成する。この時、これら総Shot数およびShot数密度分布のデータが、使用予定(所望)の描画装置に装備されているメモリの制限を超えてしまう場合には、そのメモリの制限を超えないように、さらに大容量のメモリが装備された他の描画装置を選定するようにする。また、Shot数密度分布が局所的に高くなり、使用予定の描画装置に装備されているメモリの制限を超えてしまう場合には、描画装置に装備されているメモリの許容サイズ内に収まるように、1回に処理するデータサイズを小さくしたフォトマスク描画データを準備する。その結果、マスク製造者側では、このShot数情報(フォトマスクの製造に用いるパラメータ)をマスク製造負荷指数MMIの計算値とともに事前に把握することで、マスク製造への負荷および製造時の要注意点を認識することができ、マスク製造をより効率的に行うことができる。また、描画装置に送られるデータのサイズが、描画装置に装備されたメモリの容量を超えてしまうことを防ぐことができるので、描画工程においてはメモリ容量不足によって描画失敗(中止)となってしまう不具合を防ぎ、最後まで正常に描画工程を行うことができるようになる。
【0084】
上記(d)では、マスク製造負荷となるパターンを抽出するルールを設定し、MRCでマスク製造負荷となるパターンを抽出した後、本実施の形態のマスク製造負荷予測システムを用いてサンプルとなるレイアウトを選択して自動的にレイアウト画像を切り出してレポートする。また、ライブラリセルレイアウトの製造性テストの一環として、マスク製造負荷予測システムを活用し、セル単位でマスク製造難易度を判定することができる。本実施の形態のマスク製造負荷予測システムでは、ライブラリセルのレイアウト評価用データを用い、セル単位でShot数計数シミュレーションを起動させてその結果を集計することができる。評価用レイアウト内に複数個をランダムに配置した同一のライブラリセルは、OPC処理後には、周囲に隣接して配置された他のセルの影響でそれぞれ異なるセルとされる。これらのセルをすべて1つずつShot数を計数して、最終的にはOPC前のセル単位でOPC後のレイアウトのShot数が集計される。また、OPC前のレイアウトも用いてShot数計数を行うことで、OPC処理によってShot数が多くなるセルを特定し、マスク描画負荷が増加する原因を調査することができる。
【0085】
上記(e)では、マスク製造難易度集計の入力時に用いるMRCエラーファイル、Shot数計数シミュレーション結果ファイル、GDSファイル、スペック(材料も含む)、チップ配置(数およびレイアウト)、デザインノード、製品種別、製造工程、および納期設定などが記載された電子ファイル(フォトマスク発注情報(複数の電子ファイルに分かれていてもよい))をそれぞれMRCツール、Shot数計数シミュレータ、マスク発注者側のCADサーバー、およびマスク発注情報サーバーなどから、それぞれの電子ファイルが生成された後に個別またはまとめてマスク製造負荷予測システムを備えたサーバーに転送する。この場合、途中に別サーバーを経由するなどの経路の制限はしないが、各電子ファイルは、サーバーでの保管時も含めてマスク発注者とマスク製造者との間で取り決めたパスワードで保護してもよい。本実施の形態のマスク製造負荷予測システムをコントロールするサーバーは、必要な入力ファイルがそろったタイミングでマスク製造負荷予測システムを起動するコマンドを自動実行する。この際、実行する条件が記載された実行ファイルも自動生成してもよい。マスク製造負荷予測システムでの出力は、上記のあらゆる目的および方法で計算されたファイルであり、出力されたタイミングで管理サーバー内に保管される。同時に、必要な出力情報はマスク製造者およびマスクユーザー(マスク発注者)に自動的に転送される。この転送処理は、マスクの発注時でもその前後でもよい。マスク製造者およびマスクユーザーに転送される情報は、マスク製造負荷予測システムからの出力ファイルをさらに整理および加工したファイルであってもよい。
【0086】
上記(f)では、手動でマスク製造難易度集計を実施する場合に、マスク製造負荷予測システムとのユーザーインターフェースが利用される。このユーザーインターフェースでの入力画面では、MRCエラーの記載された電子ファイル名、Shot数計数シミュレーション結果が記載された電子ファイル名、スペックとチップ配置(数)とデザインノードと製品種別と納期設定などが記載された電子ファイルのファイル名、およびマスク製造負荷予測システムによる計算条件が記載された電子ファイル名等のうち、少なくとも1つを入力できる。また、入力は手動でも可能である。また、CAD処理の認識番号などを元に自動的に入力ファイル名を表示させてもよい。このユーザーインターフェースには、実行するコマンドの選択欄、指定するボタンまたは入力欄が含まれ、マスク製造難易度計算、マスク検査リファレンスパターン選択、検査不問領域設定、およびその他の出力ファイル名の設定欄も含まれる。入力ファイル名から派生した出力ファイル名が自動的に形成される設定としてもよい。マスク製造難易度集計条件ファイルには、欠陥検査負荷を計算するためにMRCエラールール毎に設定する係数、描画負荷を計算するためにShot数に対して設定する係数、および設計インテントで分割されたレイアウトごとに設定される係数等の係数が記載される。
【0087】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のフォトマスクの製造方法は、種々のフォトマスクの発注から製造までを含むフォトマスクの製造工程に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】露光装置の構成の一例を示す説明図である。
【図2】マスクの一例を示す平面図である。
【図3】マスクの一例を示す断面図である。
【図4】SoCの回路ブロックを示す説明図である。
【図5】層間絶縁膜に形成した配線溝に銅膜または銅合金膜を埋め込んで形成した埋め込み配線を説明する要部断面図である。
【図6】本発明の実施の形態であるフォトマスクの製造方法にて用いるマスク製造負荷予測システムのワークフロー図である。
【図7】描画負荷指数と描画工程仕掛時間との関係を示した説明図である。
【図8】マスク毎の欠陥数と開口率との関係を示した説明図である。
【図9】マスク当りの欠陥(疑似欠陥を含む)の検出数とマスク検査工程の仕掛時間との関係を示した説明図である。
【図10】設計インテントを元にした重要度別のパターン占有面積の割合を示した説明図である。
【図11】製品毎の実効検査面積およびチップ領域を比で表した説明図である。
【図12】疑似欠陥になる可能性のあるレイアウト箇所の数をMRCルールおよびレベル毎にまとめた説明図である。
【図13】製品#1で規格化した製品毎の疑似欠陥発生予想数を示した説明図である。
【図14】実効検査面積と疑似欠陥予想数を用いて求められた欠陥保証負荷指数を製品毎に示した説明図である。
【図15】Shot数計数シミュレーションの出力とチップ面積とから計算した描画負荷指数を示した説明図である。
【図16】欠陥保証負荷指数と描画負荷指数とを合わせて全体のマスク製造負荷指数を算出したものを図示した説明図である。
【符号の説明】
【0090】
1 ウエハ
3 マスク基板
4A、4B 光透過領域
5A、5C 遮光パターン
11 層間絶縁膜
12、12A、12D 配線溝
13 層間絶縁膜
14 配線
15 接続孔
16 埋め込み配線
16D ダミー配線
C1 ロジック回路
C2 RAM回路
C3 ROM回路
C4 CPU回路
C5、C6 IP回路
C7 入出力回路
CHP 半導体チップ
E1 露光光源
E2 フライアイレンズ
E3 アパーチャ
E4、E5 コンデンサレンズ
E6 ミラー
E7 投影レンズ
E8 マスク位置制御手段
E9 ミラー
E11 試料台
E12 Zステージ
E13 XYステージ
E14 主制御系
E15、E16 駆動手段
E17 ミラー
E18 レーザ測長機
Est ステージ
EXP 露光装置
LD 領域
Lp 露光光
LR 領域
PE ペリクル
RET マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フォトマスク発注者がフォトマスク製造負荷指数を求め、前記フォトマスク製造負荷指数をフォトマスク製造者に転送する工程、
(b)前記フォトマスク発注者が前記フォトマスク製造者にフォトマスクを発注する工程、
(c)前記フォトマスク製造者が前記フォトマスク製造負荷指数を基にフォトマスク製造計画を立て、前記フォトマスクを製造する工程、
を含み、
前記フォトマスク製造負荷指数は、フォトマスク製造難易度を基に求められることを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のフォトマスクの製造方法において、
前記(a)工程は、
(a1)マスクレイアウトを解析する工程、
を含み、
前記フォトマスク製造負荷指数は、欠陥保証負荷指数および描画負荷指数の少なくとも一方を含み、
前記欠陥保証負荷指数は、前記(a1)工程時に抽出した前記フォトマスクの製造時に問題となるパターンの抽出数であるエラー数と、前記マスクレイアウト中に配置されたパターンの重要度とを基に決定する第1の関数であり、
前記描画負荷指数は、描画装置における描画単位をShotとした場合の半導体チップ当たりの総Shot数と、前記半導体チップの面積とを基に決定する第2の関数であることを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載のフォトマスクの製造方法において、
前記欠陥保証負荷指数は、前記フォトマスクの製造時に形成された前記パターンの欠陥検査にかかる第1の負荷、および前記欠陥検査にて欠陥とされた前記パターンの修正にかかる第2の負荷の少なくとも一方を表すことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項4】
請求項2記載のフォトマスクの製造方法において、
前記(a1)工程では、予め設定した解析基準に基づいて前記マスクレイアウトを解析して、前記フォトマスクの製造時に問題となる前記パターンを抽出し、さらに前記半導体チップ当たりの前記総Shot数を算出することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載のフォトマスクの製造方法において、
前記解析基準は、複数の解析目的に対応して複数設定することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のフォトマスクの製造方法において、
前記複数の解析目的の各々に対し、複数の前記解析基準を設けることを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項7】
請求項2記載のフォトマスクの製造方法において、
前記(a)工程において、前記フォトマスク発注者は、前記フォトマスク製造負荷指数と共にフォトマスク発注情報を前記フォトマスク製造者に転送し、
前記フォトマスク発注情報は、少なくとも、半導体ウエハ面内における前記半導体チップの配置レイアウト、前記半導体ウエハ内における前記半導体チップの数、前記フォトマスクのスペック、前記フォトマスクの製造に用いる材料、前記フォトマスクの製造工程および前記フォトマスクの納期のうちの1つ以上を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項8】
請求項2記載のフォトマスクの製造方法において、
前記フォトマスク発注者は、前記(a1)工程によって定量化した前記フォトマスク製造負荷指数を求め、かつ前記(a1)工程での解析結果を基に前記フォトマスクの製造に用いるパラメータを生成し、
前記(b)工程時もしくは前記(b)工程の前後で、前記フォトマスク発注者が前記フォトマスク製造者に前記パラメータを転送することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項9】
請求項8記載のフォトマスクの製造方法において、
前記欠陥保証負荷指数を決定する前記第1の関数および前記描画負荷指数を決定する前記第2の関数は、少なくとも、前記フォトマスクを利用する前記フォトマスク発注者、前記フォトマスク製造者、半導体ウエハ面内における前記半導体チップの配置レイアウト、前記半導体ウエハ内における前記半導体チップの数、前記半導体チップの製品分類、前記フォトマスクのスペック、前記フォトマスクの製造に用いる材料、前記フォトマスクの製造工程および前記フォトマスクの納期のうちの1つ以上によって決定される係数を備えていることを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項10】
請求項9記載のフォトマスクの製造方法において、
前記フォトマスク製造負荷指数、前記欠陥保証負荷指数、前記描画負荷指数、前記第1の関数、前記第2の関数および前記係数は、予め前記フォトマスク発注者と前記フォトマスク製造者との間で取り決めたパスワードで保護される電子データとして保管することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項11】
請求項2記載のフォトマスクの製造方法において、
前記フォトマスク製造負荷指数、前記欠陥保証負荷指数および前記描画負荷指数のそれぞれに対し、前記(a)工程に先立って予め基準値を設定し、
前記(a)工程で求めた前記フォトマスク製造負荷指数、前記欠陥保証負荷指数および前記描画負荷指数と、それぞれの前記基準値とを比較することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜9および11のいずれか1項に記載のフォトマスクの製造方法において、
前記フォトマスク製造者は、前記フォトマスク製造負荷指数を基に前記フォトマスクの価格を設定することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項13】
(a)フォトマスク製造難易度を基にフォトマスク製造負荷指数を求める工程、
(b)前記フォトマスク製造負荷指数を基に、フォトマスク描画装置で行う描画工程、欠陥検査装置で行う欠陥検査工程、および欠陥修正装置で行う欠陥修正工程により前記フォトマスクを製造する工程、
を含み、
前記(a)工程は、
(a1)マスクレイアウトを解析する工程、
を含み、
前記フォトマスク製造負荷指数は、欠陥保証負荷指数および描画負荷指数の少なくとも一方を含み、
前記欠陥保証負荷指数は、前記(a1)工程時に抽出した前記フォトマスクの製造時に問題となるパターンの抽出数であるエラー数と、前記マスクレイアウト中に配置されたパターンの重要度とを基に決定する第1の関数であり、
前記描画負荷指数は、前記フォトマスク描画装置における描画単位をShotとした場合の半導体チップ当たりの総Shot数と、前記半導体チップの面積とを基に決定する第2の関数であり、
前記(a1)工程では、予め設定した解析基準に基づいて前記マスクレイアウトを解析して、前記フォトマスクの製造時に問題となる前記パターンを抽出し、さらに前記半導体チップ当たりの前記総Shot数を算出することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項14】
請求項13記載のフォトマスクの製造方法において、
前記フォトマスクの製造時に問題となる前記パターンの情報を解析し、前記Shotの密度分布を算出し、前記Shotの密度が高く、所望の前記フォトマスク描画装置のメモリ制限を超える場合には、前記メモリ制限を超えない他の前記フォトマスク描画装置を選定することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項15】
請求項13記載のフォトマスクの製造方法において、
前記フォトマスク製造時に問題となる前記パターンを解析し、前記Shotの密度分布を算出し、局所的に前記Shotの密度が高く、所望の前記フォトマスク描画装置のメモリ制限を超える場合には、前記所望のフォトマスク描画装置の許容メモリサイズ内に収まるように1回に処理するデータサイズを小さくしたフォトマスク描画データを準備することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項16】
請求項13記載のフォトマスクの製造方法において、
前記フォトマスクの欠陥検査において問題となる前記パターンを前記欠陥検査装置の補正処理パターンに用いることにより、疑似欠陥数を減らし、前記フォトマスクの前記欠陥検査後の欠陥レビュー時間を減らすことを可能にするフォトマスクの製造方法。
【請求項17】
請求項13記載のフォトマスクの製造方法において、
前記フォトマスクの欠陥検査において問題となる複数の前記パターンのうち、一部の前記パターンを検査不問領域として定義し、前記欠陥検査を行わないことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項18】
請求項13記載のフォトマスクの製造方法において、
前記パターンの重要度情報に応じて、前記欠陥修正工程を変更することを特徴とするフォトマスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−86639(P2009−86639A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175491(P2008−175491)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】