説明

フォトマスク用保護膜材料

【課題】高い紫外線透過率、高硬度、高密着性、高耐薬品性に優れた塗布特性、拭きシミ跡の残らない優れた拭き洗浄性、低温硬化、リワークを容易にするフォトマスク用保護膜材料を提供する。
【解決手段】(A)成分として(a−1)不飽和カルボン酸、(a−2)エポキシ基含有ラジカル重合性化合物および(a−3)モノオレフィン系不飽和化合物の共重合体と、(B)成分として多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸から選択された少なくとも1種の化合物と、(C)成分としてアルコキシシラノ基およびエポキシ基を有する化合物とを含有し、(A)、(B)および(C)成分が(D)有機溶媒に溶解されているフォトマスク用保護膜材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクの表面に保護膜を形成するフォトマスク用保護膜材料に関する。
【背景技術】
【0002】
精密電子部品(タッチパネル、プリント配線、ICパッケージ)等のフォトリソグラフィー工程においては、紫外線を選択的に照射するためフォトマスクが用いられている。フォトマスクは、一般にガラス基板の上に、非透過部分に銀塩を含んだゼラチン膜を形成したものが用いられている。
【0003】
しかしながら、ゼラチン膜が柔らかいため、コンタクト露光やハンドリングの際に、ゼラチン膜が傷つきやすいという問題があった。また、異物や指紋等がゼラチン膜に付着した際に、これを容易に除去することができないという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するため、フォトマスクの上に表面保護コートを設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、有機膜により表面保護コートを形成すると、紫外線透過率が低下するという問題があった。また、高い耐薬品性及び高硬度が得られないという問題があった。また、無機膜により表面コートを形成すると、硬度及び耐薬品性の高い表面コートを形成することができるが、高い膜形成温度が必要であるので、フォトマスクの寸法精度が悪くなるという問題があった。
【0006】
さらに、表面保護コートを形成する際に、異物が混入したり、ハンドリングミスなどにより不良が発生した場合に、表面保護コートを容易に除去し再加工(リワーク)することができないという問題があった。他にも、フォトリソグラフィー工程においては、フォトレジストや異物質がフォトマスク表面に付着しやすく、従来の表面コート保護膜は溶剤による特定シミ跡が残って、露光工程における歩留まりやフォトマスク寿命が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−157716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高い紫外線透過率、高硬度、高密着性、高耐薬品性に優れた塗布特性、拭きシミ跡の残らない優れた拭き洗浄性、低温硬化、リワークを容易にするフォトマスク用保護膜材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、(A)成分として(a−1)不飽和カルボン酸、(a−2)エポキシ基含有ラジカル重合性化合物および(a−3)モノオレフィン系不飽和化合物の共重合体と、(B)成分として多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸から選択された少なくとも1種の化合物と、(C)成分としてアルコキシシラノ基およびエポキシ基を有する化合物とを含有し、(A)、(B)および(C)成分が(D)有機溶媒に溶解されているフォトマスク用保護膜材料を要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フォトマスク用保護膜に要求される高い紫外線透過率、高硬度、高密着性、高耐薬品性に優れた塗布特性、拭きシミ跡の残らない優れた拭き洗浄性を有し、低温で硬化させることが可能でリワークも容易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
[フォトマスク用保護膜材料]
実施形態に係るフォトマスク用保護膜材料は、(A)成分として(a−1)不飽和カルボン酸、(a−2)エポキシ基含有ラジカル重合性化合物および(a−3)モノオレフィン系不飽和化合物の共重合体と、(B)成分として多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸から選択された少なくとも1種の化合物と、(C)成分としてアルコキシシラノ基およびエポキシ基を有する化合物とを含有し、(A)、(B)および(C)成分が(D)有機溶媒に溶解されているフォトマスク用保護膜材料である。以下各成分毎に説明する。
【0013】
[(A)成分]
(A)成分としての共重合体は、(a−1)不飽和カルボン酸と、(a−2)エポキシ基を有するラジカル重合性化合物と、(a−3)モノオレフィン系不飽和化合物との共重合体である。
【0014】
(a−1)不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などのジカルボン酸が好ましくは挙げられる。これらのうち、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0015】
(a−2)エポキシ基を有するラジカル重合性化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチルなどが挙げられる。これらのうち、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチルが好ましい。これらは、単独であるいは組み合わせて用いられる。
【0016】
(a−3)モノオレフィン系不飽和化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル、メチルメタクリレート、イソプロピルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル、シクロヘキシルメタクリレート、2−メチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレート、イソポルニルメタクリレートなどのメタクリル酸環状アルキルエステル、シクロヘキシルアクリレート、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタオキシエチルアクリレート、イソポルニルアクリレートなどのアクリル酸環状アルキルエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸アリールエステル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸アリールエステル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどのジカルボン酸ジエステル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシアルキルエステル、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニルなどが挙げられる。これらのうち、スチレン、ジシクロペンタニルメタアクリレート、p−メトキシスチレンが好ましい。これらは、単独であるいは組み合わせて用いられる。
【0017】
(a−1)、(a−2)、(a−3)の構成単位からなる(A)成分としての共重合体[A−1]としては、下記式(1)〜(4)で表される構成単位からなる共重合体が好ましい。
【0018】
式(1)は、不飽和カルボン酸から誘導される構成単位である。式(2) は、(a−2)エポキシ基を有するラジカル重合性化合物から誘導される構成単位である。式(3) および式(4)は、(a−3)モノオレフィン系不飽和化合物から誘導される構成単位である。
【化1】

【0019】
(式中、R1 は水素原子または低級アルキル基である。)
【化2】

【0020】
(式中、R1 は水素原子または低級アルキル基であり、nは1〜10の整数である。)
【化3】

【0021】
(式中、R1 は水素原子または低級アルキル基である。)
【化4】

【0022】
(式中、R1 は水素原子または低級アルキル基であり、R1 は炭素数1〜6のアルキル基または炭素数5〜12のシクロアルキル基である。このシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。)
(A)成分は、(A)成分の全重量基準で(a−1)不飽和カルボン酸から誘導される構成単位を、好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下の量で含有している。また(A)成分は、(A)成分の全重量基準で(a−2)エポキシ基を有するラジカル重合性化合物から誘導される構成単位を、好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは20〜50重量%の量で含有している。さらに(A)成分は、(A)成分の全重量基準で(a−3)モノオレフィン系不飽和化合物から誘導される構成単位を、好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは20〜50重量%の量で含有している。
【0023】
ここで(a−1)不飽和カルボン酸と(a−2)エポキシ基含有ラジカル重合性化合物とのみから共重合体を製造する際には、エポキシ基とカルボン酸基とが反応し、架橋して重合系がゲル化してしまうことがある。これに対して実施形態明で用いられる(A)成分は、(a−1)不飽和カルボン酸と、(a−2)エポキシ基を有するラジカル重合性化合物に加えて(a−3)モノオレフィン系不飽和化合物が上記のような量で共重合されている。そのため、エポキシ基とカルボン酸基とが反応して重合系がゲル化しにくく、また保存安定性にも優れる。
【0024】
このような(A)成分を含むフォトマスク用保護膜材料は、優れた硬化膜を形成することができる。なお(A)成分の(a−2)エポキシ基を有するラジカル重合性化合物構成単位が10重量%未満であったり、(a−3)モノオレフィン系不飽和化合物構成単位が70重量%を超えたりすることは好ましくない。(A)成分を含むフォトマスク用保護膜材料から得られる硬化膜の硬度が低下するおそれがあるからである。
【0025】
(A)成分は、アルカリ水溶液に可溶である。(A)成分は、変性工程が必要なく共重合工程のみによって製造することができる。(A)成分は、上記のような(a−1)不飽和カルボン酸、(a−2)エポキシ基を有するラジカル重合性化合物、(a−3)モノオレフィン系不飽和化合物を溶媒中で、触媒(重合開始剤)の存在下にラジカル重合することによって得ることができる。
【0026】
この際用いられる溶媒としては、例えばメタノール、エタノールなどのアルコール類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、メチルセロソルブアセテートなどのセロソルブエステル類、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類などが挙げられる。
【0027】
触媒としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用でき、例えば、2,2′−アゾビスイソプチロニトリル、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−プチルペルオキシピバレート、1,1′−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどの有機過酸化物および過酸化水素などが挙げられる。
【0028】
ラジカル重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、過酸化物を還元剤とともに用いてレドックス型開始剤としてもよい。(A)成分である上述の共重合体の分子量およびその分布は、実施形態に係る組成物の溶液を均一に塗布することが可能である限り、特に限定されるものではない。
【0029】
本発明に係るフォトマスク用保護膜材料は、(A)成分が、(B)有機溶媒に溶解されてなる。本発明で用いられる有機溶媒としては、(A)成分を均一に溶解させることができ、これらと反応しないものが用いられる。このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのジエチレングリコール類、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が挙げられる。
【0030】
さらにこれらとともに、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−プチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどの高沸点溶媒を用いることもできる。
【0031】
[(B)成分]
(B)成分として使用される多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸は、(A)成分の硬化材として作用するものである。多価カルボン酸無水物としては、例えば無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸等の脂肪族ジカルボン酸無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂環族多価カルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸無水物、エチレングリコールビス無水トリメリテート、グリセリントリス無水トリメリテート等のエステル基含有酸無水物を例示することができる。これらの内、特に芳香族多価カルボン酸無水物が硬度の見地から好ましい。
【0032】
また多価カルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸等の脂肪族多価カルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸を例示することができる。特に、反応性、硬度の見地から芳香族多価カルボン酸が好ましい。
【0033】
これらの(B)成分の多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸は、単独または2種以上の組み合わせで使用することができ、通常、(A)成分100重量部当り1〜100重量部、特に3〜50重量部の割合で使用することが好ましい。これよりも少ないと形成される保護膜の架橋密度が十分でなく、各種耐性が低下し、また多すぎると未反応の硬化剤成分が保護膜中に多く残り、この結果として膜の性質が不安定になったり、密着性が低下したりする。
【0034】
[(C)成分]
(C)成分のアルコキシシラノ基とエポキシ基とを有する化合物は、保護膜に平坦化作用を与えるとともに、保護膜に密着性を付与するものである。このような化合物としては、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらは単独または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0035】
この(C)成分の化合物の使用量は、一般に、(A) 成分100重量部当り、0.1〜200重量部、特に5〜150重量部の範囲が好ましい。この範囲よりも少ないと保護膜と基板との間に十分な密着性が得られず、また十分な平坦化性が得られない。さらにこの範囲よりも多いと保護膜の耐アルカリ性、耐溶剤性等が低下することがある。
【0036】
[その他の配合例]
本発明の保護膜材料においては、上述した(A)〜(C)成分以外に、必要に応じて他の配合剤、例えば硬化促進剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を配合することができる。
【0037】
硬化促進剤は、(A)成分および(C)成分と、(B)成分との反応を促進させるために使用されるものであり、一般に2級窒素原子または3級窒素原子を含むヘテロ環構造を有する化合物が用いられる。具体的には、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、インドール、インダゾール、ベンズイミダゾール、イソシアヌル酸等を例示することができる。これらの中でも、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2′−シアノエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2′−(3″,5″−ジアミノトリアジニル)エチル)イミダゾール、ベンズイミダゾール等のイミダゾール誘導体が好ましい。最も好ましくは、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールが使用される。これらの硬化促進剤は、単独または2種以上の組み合わせで使用することができる。一般に(A)成分100重量部当り0〜30重量部、特に好ましくは0.1〜10重量部の割合で使用されることが望ましい。
【0038】
界面活性剤としては、フッ素系およびシリコーン系の界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤としては、未端、主鎖および側鎖の少なくとも何れかの部位にフルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基を有する化合物が好ましい。具体的には、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2−テトラフロロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロプチル)エーテル、ヘキサエチレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロプチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフロロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロデカン等を挙げることができる。またこれらの市販品としては、BM−1000,BM−1100(BM Chemie 社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(大日本インキ化学工業(株)製)等をあげることができる。
【0039】
またシリコーン系界面活性剤としては、例えばトーレシリコーンDC3PA、同SH7PA、同DC11PA、同SH21PA、同SH28PA、同SH29PA、同SH30PA(トーレシリコーン(株)製)TSF−4440、TSF−4300、TSF−4445、TSF−4446、TSF−4460、TSF−4452(東芝シリコーン(株)製)等の市販品をあげることができる。
【0040】
これら界面活性剤は単独または2種以上の組み合わせで使用することができる。またその使用量は、その種類や(A)〜(C)の各成分の種類や濃度等によっても異なるが、一般に(A)成分100重量部当り0〜5重量部、特に0.001〜2重量部の範囲が好ましい。
【0041】
[有機溶媒]
実施形態に係るフォトマスク用保護膜材料は、上述した各成分を均一に混合することによって容易に調製することができ、適当な溶媒に溶解させて溶液の形で使用に供される。用いる溶媒としては、各成分を均一に溶解させることができ、且つ各成分と反応しないものであれば特に制限されない。一般的には塗膜の形成のし易さからセロソルブアセテート系およびジグライム系の溶剤が好ましい。特にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。これらの溶剤は、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。この組成物の溶液の濃度は特に制限されず、使用目的に応じて適宜選定することができるが、通常固形分濃度が5〜50重量%程度で使用される。
【0042】
[使用方法]
実施形態においては、上述したフォトマスク用保護膜材料の溶液を、所定の基体表面に塗布し、加熱により硬化することによって所望の保護膜を形成することができる。基体表面への塗布方法は特に限定されず、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法等の各種の方法を採用することができる。フォトマスク用保護膜材料の熱硬化条件は、各成分の具体的種類、配合割合等によっても異なるが、通常は、150〜250℃で0.2〜1.5時間程度である。
【実施例】
【0043】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0044】
[実施例1〜3]
(1)A成分(共重合体)の合成
表1に実施例1〜3の成分及びその組成比を示す。
【表1】

【0045】
表1のA成分の欄に示す単量体を、表1に示された重量比で使用した。この合計量100重量部をジエチレングリコールジメチルエーテル240重量部に混合した。重合開始剤として2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.7重量部を添加し75℃で5時間重合させることでA成分(共重合体)の濃度が30重量%の溶液を得た。
【0046】
(2)フォトマスク用保護膜材料の調整
(1)で得られたA成分を含む共重合体溶液100重量部(重合比:30重量部)をプロピレングリコールメチルエチルエーテル200重量部で希釈した。その後、表1に示す配合処方に従ってB,C成分を加え十分攪拌してフォトマスク用保護膜材料を得た。
【0047】
[比較例1,2]
表2に示す配合割合で比較例1、2のコート剤を調製した。
【表2】

【0048】
ポリシランとしては、以下に示すメチルフェニルシラン−フェニルシリン共重合体及びポリフェニルシリンを用いた。エポキシ樹脂、光酸発生剤、離型性付与剤、表面調整剤、及び溶剤としては、以下のものを用いた。なお、表2に示す配合割合は重量部である。
【0049】
・メチルフェニルシラン−フェニルシリン共重合体:数平均分子量約1100、重量平均分子量約1600、モル比(メチルフェニルシラン:フェニルシリン)=2:1
・ポリフェニルシリン:数平均分子量約1300、重量平均分子量約2200
・エポキシ樹脂:ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、エポキシ当量303
・光酸発生剤:トリアリルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、旭電化工業社製SP−172
・離型性付与剤:変性シリコーンオイル、東レダウコーニングシリコーン社製SH190
・表面調整剤:大日本インキ化学工業社製R−08
・溶剤:アニソール、みどり化学社製
[評価]
(1)評価用保護膜の形成
実施例1〜3、比較例1、2で得られた試料を、それぞれガラス基板上に膜厚が2μmになる様に塗布しクリーンオーブン中150℃で30分熱硬化を行って評価用保護膜を形成した。
【0050】
(2)保護膜の評価
評価用保護膜について以下の基準で評価実験を行った。
【0051】
・外観:マスク透明部を下部から光りを当て異物、クラック、濁り等の外観不良のないものを「○」とし認められるものを「×」とした。
【0052】
・鉛筆硬度:JIS KS4001に準拠して測定した。
【0053】
・UV透過率:g線(436mm)、h線(405mm)及びi線(365mm)におけるUV透過率を自記分光光度計(U−3500型、日立製作所製)により測定した。
【0054】
・撥水性:JIS R3257に準拠して接触角を測定した(協和界面科学製 DM−301)
・密着性:JISK5400に準拠して測定した。
【0055】
・耐薬品性:以下の溶液に1時間浸漬して変化しなかったものを「○」とした。溶液:エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、酸(5%H2SO4
・ラビング耐性
試験対象を以下の溶媒をつけたベンコットガーゼを用いて100往復擦った。そして変化がなかったものを「○」とした。溶媒:エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、純水
・アセトン溶剤での拭き洗浄:ベンコットガーゼにアセトンをしみ込ませ、マスク型の表面の汚れを拭き取った。拭きシミが残らないものを「○」とし、拭きシミが残るものを「×」とした。
【0056】
(3)塗布性
実施例1〜3、比較例1,2で得られた試料を、500mm角のガラス基板上に塗布し、4角の干渉ジマが3cm未満のものを「○」とし、3cm以上のものを「×」とした。
【0057】
以上、得られた結果を表3にまとめて示す。
【表3】

【0058】
表3に示されるように、実施例1〜実施例3においては、全ての試験項目で良好な結果が得られた。特に、鉛筆硬度、拭きシミ残り、塗布性の項目において、比較例よりも良好な結果が得られた。これにより実施例1〜実施例3によれば、高い紫外線透過率、高硬度、高密着性、高耐薬品性に優れた塗布特性が示された。また、拭きシミ跡の残らない優れた拭き洗浄性が得られることが示された。さらに低温硬化特性が良好で、リワークを容易にすることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として(a−1)不飽和カルボン酸、(a−2)エポキシ基含有ラジカル重合性化合物および(a−3)モノオレフィン系不飽和化合物の共重合体と、
(B)成分として多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸から選択された少なくとも1種の化合物と、
(C)成分としてアルコキシシラノ基およびエポキシ基を有する化合物とを含有し、
前記(A)、(B)および(C)成分が(D)有機溶媒に溶解されていることを特徴とするフォトマスク用保護膜材料。
【請求項2】
前記(A)成分は、下記式(1)〜(4)で表される構成単位からなる共重合体であることを特徴とする請求項1記載のフォトマスク用保護膜材料。
【化5】

(式中、R1 は水素原子または低級アルキル基である。)
【化6】

(式中、R1 は水素原子または低級アルキル基であり、nは1〜10の整数である。)
【化7】

(式中、R1 は水素原子または低級アルキル基である。)
【化8】

(式中、R1 は水素原子または低級アルキル基であり、R1 は炭素数1〜6のアルキル基または炭素数5〜12のシクロアルキル基である。)
【請求項3】
前記(A)成分は、前記(A)成分の全重量基準で、前記(a−1)不飽和カルボン酸から誘導される構成単位を40重量%以下、前記(a−2)エポキシ基を有するラジカル重合性化合物から誘導される構成単位を10〜70重量%、前記(a−3)モノオレフィン系不飽和化合物から誘導される構成単位を10〜70重量%の量で含有していることを特徴とする請求項1記載のフォトマスク用保護膜材料。
【請求項4】
前記(A)成分は、前記(A)成分の全重量基準で、前記(a−1)不飽和カルボン酸から誘導される構成単位を30重量%以下、前記(a−2)エポキシ基を有するラジカル重合性化合物から誘導される構成単位を20〜50重量%、前記(a−3)モノオレフィン系不飽和化合物から誘導される構成単位を20〜50重量%の量で含有していることを特徴とする請求項1記載のフォトマスク用保護膜材料。
【請求項5】
前記(A)成分は、メタクリル酸と、メタクリル酸グリシジルと、スチレンからなる共重合体であることを特徴とする請求項1記載のフォトマスク用保護膜材料。
【請求項6】
前記(A)成分は、メタクリル酸と、メタクリル酸グリシジルと、ジシクロペンタニルメタクリレートからなる共重合体であることを特徴とする請求項1記載のフォトマスク用保護膜材料。
【請求項7】
前記(A)成分は、メタクリル酸と、メタクリル酸グリシジルと、ジシクロペンタニルメタクリレートと、スチレンからなる共重合体であることを特徴とする請求項1記載のフォトマスク用保護膜材料。

【公開番号】特開2012−185301(P2012−185301A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47996(P2011−47996)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(507353278)株式会社 マイクロプロセス (3)
【Fターム(参考)】