説明

フォトマスク製造方法、フォトマスク

【課題】プロセスモデル内に潜むマスクの製造誤差の影響を低減させ、転写時に高い数法制御精度を得る。
【解決手段】設計したテストパターンをテストマスクに形成し、テストパターンの設計データとテストマスクの実測データを合わせ込むことでマスク製造プロセスをモデル化したマスクモデルを作成し、これを用いてマスク製造プロセスのばらつきを排除したプロセスモデルを作成し、これらを用いてフォトマスクを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスなどの製造に用いられるフォトマスクの製造方法、及びフォトマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化に伴い、半導体デバイス製造工程におけるリソグラフィ工程では、100nm以下の非常に微細な線幅パターンを形成する必要がある。その際、露光装置の限界解像力付近まで微細化されたレイアウトパターンをフォトレジスト膜等に露光転写すると、フォトマスク(以下、単にマスクと称す)上の微細なパターンを通過した近接する光束同士が光干渉し、露光像が歪み、マスクのマスクパターンを正確に転写することができず、ウェハ上のパターンの形状及び寸法が変化する問題が起きる。
【0003】
これら光近接効果の影響を抑制するために、光近接効果を補償する補正を予めマスクに施す、いわゆる、光近接効果補正(OPC:Optical Proximity Effect Correction)手法が開発されている。この手法は、光近接効果を見込んで設計データに予め補正を加え(OPCパターンと称す)、レイアウトデータを変形させておくことにより所望の感光性樹脂パターンを得る方法である。
【0004】
OPCは、補正のバイアス量(以下、補正量と称す)の決定方法から、一般にルールベースOPCとモデルベースOPCに大別されている。
ルールベースOPCはマスクパターンの大きさや形状、隣接するマスクパターンとの近接状況等のマスクパターンの属性から、マスクパターンの各々のエッジに対する補正量を決定し、マスクパターンの各エッジに対してバイアスをかける方法である。補正量の決定方法としては、予め用意した補正ルール作成用マスクを用いてウェハ上にパターンを形成し、そして、形成されたパターンの線幅を測定し、測定結果に基づいて補正テーブルを作成する。次に、この補正テーブルを用いてレイアウトパターンデータを修正して新たなレイアウトパターンデータを製造する。
【0005】
一方、モデルベースOPCでは、演算装置を用いて補正量を算出する関数を抽出する。
先ずは、予め用意したテストパターンを用いてウェハ上にパターンを形成し、そして、形成されたパターンの線幅などを測定し、演算装置に前記測定結果を入力し、半導体デバイスの製造プロセスのシミュレーションを行う数式モデルを作成する、つまりプロセスモデルの抽出を行う。次に、抽出されたプロセスモデルを用いて、演算装置で目標となるパターンに対応するレイアウトデータを用いてウェハ上に形成されるパターンをシミュレーションし、シミュレーションしたパターンの変形や寸法変動を抽出し、その結果から、レイアウトデータに対して、目標パターンを形成できる補正マスクパターン各辺の補正量を決定する。以下に従来法によるプロセスモデル作成フローを説明する。
【0006】
ステップ1
テストパターンのレイアウトデータをGDSIIデータ(米国カルマ社が提案したマスクパターンデータの標準的な表現形式で表された設計データ)にて作成する。なお、実際の半導体デバイスの回路では、様々な形状、大きさのパターンが存在するが、テストパターンは半導体デバイスの設計回路中に存在する様々な形状及び大きさのレイアウトパターンを代表しうる単純化されたパターンの集合体である。テストパターンを作成する上では、設計上許可されるパターンを規定するデザインルールを考慮する。
【0007】
ステップ2
作成されたテストパターンで、描画、現像、エッチング等のパターニング技術を使ってテストマスクを作成する。
【0008】
ステップ3
現行プロセスによるサンプル作成を行う。先ず、サンプル作成用のウェハ上にレジストを塗布し、テストマスクを介してレジストに露光する。レジストを現像し、テストパターンが転写されたレジストパターンを形成する。次に、レジストパターンをマスクとして、ウェハにエッチングを行い、ウェハにテストパターンを転写してから、レジストを除去する。以下、テストパターンが転写されたウェハをサンプルと呼ぶ。
【0009】
ステップ4
ステップ3でサンプルに転写されたテストパターンの測長を行う。測長には例えば走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いる。
【0010】
ステップ5
シミュレータに入力する条件ファイルを作成する。条件ファイルの項目としては、例えば、ステップ1で作成したテストパターンのレイアウトデータ(GDSIIデータ)、ステップ4で測定されたテストパターンの座標及び寸法、あるいは露光装置の設定等が挙げられる。
【0011】
ステップ6
プロセスモデルを作成する。具体的には、ステップ5で作成した各種条件ファイルをシミュレータに入力し、サンプルに転写されるテストパターン(エッチング加工によって形成されるパターン)の寸法を算出するための関数であるプロセスモデルを出力する。ステップ5で作成された条件ファイルには、ステップ1で作成されたGDSIIデータや、ステップ4で得られたサンプル上での測長結果が取り込まれている。
【0012】
ステップ7
ステップ6で出力されるプロセスモデルについて、ステップ4での実測結果と、作成されたプロセスモデルによるシミュレーション結果との差分(以下、フィッティング残さと称す)が、規定値に収まっているかを確認する。ここで、規定値とはプロセスに起因する製造ばらつきや、演算装置であるリソグラフィシミュレータの精度等を考慮して、予め設定されたモデルフィッティング精度のスペック(目標値)とする。
【0013】
ステップ7
フィッティング残さが規定値を外れる場合にはステップ5に戻り、適宜シミュレータの条件ファイルを修正する。規定値を満たす場合にはモデルフィッティングを終了する。
【0014】
現在、レイアウトパターン等のGDSIIデータを用いて、OPC等のシミュレーションを実行できる多様なツールが市販されている。このようなモデル作成ツールであるシミュレータに、テストパターンのGDSIIデータとサンプルでの実測結果を含む各種条件ファイルを入力しモデルフィッティングを行う。
【0015】
以上のようにして作成されたモデル関数(プロセスモデル)を用いてシミュレーションを行うことにより、実際の半導体デバイス製造用マスクパターンの転写結果を算出できる。また、作成されたプロセスモデルと、本来のレイアウトデータ(GDSIIデータ)をシミュレータに入力すると、OPCパターンを付加したレイアウトパターンデータが得られる。
【0016】
これに対し、モデルフィッティング精度を向上させる方法として、マスクの製造誤差分を加味したテストパターンのレイアウトデータを再作成することで、マスクの製造誤差によるフィッティング精度への影響を排除する方法がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−157160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
近年の半導体装置では高集積・高速動作が求められ、パターン線幅の微細化が進んでいる。そのため、例えば数nm程度の微小な誤差でもデバイス特性に与える影響は大きい。また、レイアウトパターン密度が異なるメモリ部とロジック部を同時に作成するなど、集積回路も複雑となっているため、マスク及びサンプルを作成する上で、ともにプロセス技術の限界にきている。
【0019】
一方、前述のモデルフィッティング時の入力データとなるサンプルの実測結果には、マスク製造プロセスの過程で発生したマスクの製造誤差が含まれている。しかし、プロセスシミュレーションにおいては、マスクが理想的に作成されていると仮定して、本来の設計データ(GDSIIデータ)が入力される。すなわち、プロセスシミュレーションでは実際のマスクの製造誤差が考慮されない。マスクの製造誤差を含まないシミュレーション結果と、マスクの製造誤差を含む実際の転写結果(サンプルの実測結果)との合わせ込みが行われるため、例えば、ウェハ上で数nmの誤差となるようなマスクの製造誤差であってもプロセスモデルに歪みが生じ、モデルフィッティング精度が悪化し、最終的な寸法制御精度が悪化する。
【0020】
シミュレーションの条件設定、すなわちシミュレータに入力する条件ファイルを最適化してモデルフィッティング精度を向上させても、マスクの製造誤差を含むプロセスモデルの場合、所望のモデルフィッティング精度が得られない。したがって、モデルベースOPCにおいて、適切なマスク補正量が求められず、所望の微細パターンを所望の寸法精度で形成することができない。
【0021】
本発明の課題は、プロセスモデル内に潜むマスクの製造誤差の影響を低減させ、転写時に高い数法制御精度を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1に係る本発明は、 フォトマスクにマスクパターンを形成するフォトマスク製造方法であって、前記マスクパターンの一部を選択または変更したマスクモデル作成用テストパターンデータを作成する工程と、前記マスクモデル作成用テストパターンデータを用いてマスクモデル作成用テストマスクを作成する工程と、前記マスクモデル作成用テストマスクに形成されたマスクモデル作成用テストパターンの寸法を測長する工程と、前記測長結果と前記マスクモデル作成用テストパターンデータとを入力し、前記マスクモデル作成用テストマスクに形成される前記マスクモデル作成用テストパターンの寸法を算出するためのマスクモデルを作成する工程と、前記マスクパターンの一部を選択または変更したプロセスモデル作成用テストパターンデータを作成する工程と、前記マスクモデルに従って前記プロセスモデル作成用テストパターンデータを補正する工程と、前記補正後のプロセスモデル作成用テストパターンデータを用いてプロセスモデル作成用テストマスクを作成する工程と、前記プロセスモデル作成用テストマスクをウェハに転写してサンプルを作成する工程と、前記サンプルに転写されたプロセスモデル作成用テストパターンの寸法を測長する工程と、前記測長結果と前記プロセスモデル作成用テストパターンデータとを入力し、前記テストマスクに転写されるプロセスモデル作成用テストパターンの寸法を算出するためのプロセスモデルを作成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0023】
請求項2に係る本発明は、前記プロセスモデルに従って、実際のデバイスパターンのレイアウトデータに対してモデルベースOPC処理を行う工程を備えることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、前記モデルベースOPC処理を行った前記レイアウトデータに対してモデルベースMPC処理を行う工程を備えることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、前記モデルベースMPC処理を行った前記レイアウトデータに応じて、パターニングによって前記フォトマスクを製造する工程を備えることを特徴とする。
【0024】
請求項5に係る発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載のフォトマスク製造方法によってフォトマスクを製造したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、例えばOPC等のマスクパターン補正を行うシミュレーションで用いられるプロセスモデルから、マスクの製造誤差の影響が排除されたフィッティング残さの少ないプロセスモデルを作成することが可能となる。したがって、実際にはプロセスモデルを用いたモデルベースOPC後のレイアウトデータに対しても、MPC処理を合わせて行うことを前提に、マスクパターンの転写結果をシミュレーションにより高精度に予測して、所望の転写結果が得られるようなマスク補正量をより正確に決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】マスクモデル作成方法を示すフローチャートである。
【図2】プロセスモデル作成方法を示すフローチャートである。
【図3】マスクパターン設計方法のマスクモデル作成工程を示す概念図である。
【図4】マスクパターン設計方法のプロセスモデル作成工程を示す概念図である。
【図5】マスクパターン設計方法のOPC工程及びMPC工程を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
モデルベースMPCの実行にはモデルベースOPCと同様に、マスク製造プロセスのシミュレーションを行う数学モデル(マスク製造プロセスに特化したモデルであり、以下、マスクモデルと称す)が必要となる。
【0028】
以下に本実施形態におけるモデルベースMPCに用いるマスクモデル作成方法について、図1を使って説明する。
ステップ1(ST1)
マスクモデル作成用のテストパターン(以下、MPC用テストパターンと称す)のレイアウトデータをGDSIIデータにて作成する。MPC用テストパターンは半導体デバイスの設計回路中に存在する様々な形状及び大きさのレイアウトパターンを代表しうる単純化されたパターンの集合体である。MPC用テストパターンを作成する上では、設計上許可されるパターンを規定するデザインルールを考慮する。
【0029】
ステップ2(ST2)
ステップ1にて作成されたMPC用テストパターンを用いて、描画、現像、エッチング等のパターニング技術を使ってテストマスク(以下、MPC用テストマスクと称す)を作成する。
【0030】
ステップ3(ST3)
ステップ2で作成されたMPC用テストマスクの測長を行う。測長には例えば走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いる。
【0031】
ステップ4(ST4)
シミュレータに入力する条件ファイルを作成する。条件ファイルの項目としては、例えば、MPC用テストパターンのレイアウトデータ(GDSIIデータ)、ステップ3で測定されたMPC用テストパターンの座標及び寸法、あるいは各種マスク製造装置の設定等が挙げられる。
【0032】
ステップ5(ST5)
マスクモデルを作成する。具体的には、ステップ4で作成した各種入力ファイルをシミュレータに入力し、MPC用テストマスクにパターニングされるMPC用テストパターン(エッチング加工によって形成されるパターン)の寸法を算出するための関数であるマスクモデルを出力する。ステップ4で作成された入力ファイルには、ステップ1で作成されたレイアウトデータや、ステップ3で得られたMPC用テストマスク上での実測結果が取り込まれている。
【0033】
ステップ6(ST6)
ステップ5で出力されるマスクモデルについて、ステップ3での実測結果と、作成されたマスクモデルによるシミュレーション結果との差分(フィッティング残さ)が、規定値に収まっているかを確認する。ここで、規定値とはマスク製造プロセスに起因する製造ばらつきや、演算装置の精度等を考慮して、予め設定されたモデルフィッティング精度のスペック(目標値)とする。
【0034】
ステップ7(ST7)
フィッティング残さが規定値を外れる場合にはステップ4に戻り、適宜シミュレータの入力ファイルを修正する。規定値を満たす場合にはモデルフィッティングを終了する。
【0035】
次に、上記方法にて作成されたマスクモデルを取り込んだOPC用プロセスモデル作成方法について図2を使って説明する。
【0036】
ステップ1(ST1)
プロセスモデル作成用のテストパターン(以下、OPC用テストパターンと称す)のレイアウトデータをGDSIIデータにて作成する。OPC用テストパターンは、半導体デバイスの設計回路中に存在する様々な形状及び大きさのレイアウトパターンを代表しうる単純化されたパターンの集合体である。OPC用テストパターンを作成する上では、設計上許可されるパターンを規定するデザインルールを考慮する。
【0037】
ステップ2(ST2)
ステップ1で作成されたOPC用テストパターンに対して、上述の方法にて作成されたマスクモデルを用いたモデルベースMPC処理を施す。具体的にはコンピューター上のソフトウェアを用いて、OPC用テストパターンを用いてマスク製造を行ったときのマスク上でのパターニング結果をシミュレーションし、シミュレーションしたパターンの変形や寸法変動を抽出し、その結果から、OPC用テストパターンに対して、目標パターンを形成できる補正マスクパターンを付加したレイアウトデータが得られる。
【0038】
ステップ3(ST3)
プロセスモデル作成用のテストマスク(以下、OPC用テストマスクと称す)をステップ3で出力されたMPC後のレイアウトデータを用いて、描画、現像、エッチング等のパターニング技術を使って作成する。
【0039】
ステップ4(ST4)
現行プロセスによるサンプル作成を行う。まず、サンプル作成用のウェハ上にレジストを塗布し、ステップ3で作成したテストマスク2を介してレジストに露光する。レジストを現像し、転写されたレジストパターンを形成する。次に、レジストパターンをマスクとして、ウェハにエッチングを行ってからレジストを除去する。以下、OPC用テストパターンが転写されたウェハをサンプルと呼ぶ。
【0040】
ステップ5(ST5)
ステップ4でサンプルに転写されたOPC用テストパターンの測長を行う。測長には例えば走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いる。
【0041】
ステップ6(ST6)
シミュレータに入力する条件ファイルを作成する。条件ファイルの項目としては、例えば、ステップ1で作成されたOPC用テストパターンのレイアウトデータ(GDSIIデータ)、サンプルで測定されたOPC用テストパターンの座標及び寸法、あるいは露光装置の設定等が挙げられる。
【0042】
ステップ7(ST7)
プロセスモデルを作成する。具体的にはステップ6で作成した各種入力ファイルをシミュレータに入力し、サンプルに転写されるOPC用テストパターン(エッチング加工によって形成されるパターン)の寸法を算出するための関数であるプロセスモデルを出力する。
【0043】
ステップ8(ST8)
ステップ7で出力されるプロセスモデルについて、ステップ5での実測結果と、作成されたプロセスモデルによるシミュレーション結果との差分(フィッティング残さ)が、規定値に収まっているかを確認する。ここで、規定値とはプロセスに起因する製造ばらつきや、演算装置であるリソグラフィシミュレータの精度等を考慮して、予め設定されたモデルフィッティング精度のスペック(目標値)とする。
【0044】
ステップ9(ST9)
フィッティング残さが規定値を外れる場合にはステップ6に戻り、適宜シミュレータの入力ファイルを修正する。規定値を満たす場合にはモデルフィッティングを終了する。
【0045】
本実施形態によれば、マスクの製造誤差が排除されたOPC用テストマスクを転写してサンプルを作成し、同サンプルの実測結果を入力データとしたモデルフィッティングにより作成されたプロセスモデルを用いてシミュレーションを行うことにより、マスクの製造誤差が無いと仮定したリソグラフィ工程について、実際の半導体デバイス製造用マスクパターンの転写結果を正確に算出でき、プロセスモデルと本来のレイアウトデータ(GDSIIデータ)をシミュレータに入力することで、これに応じたOPCパターンを付加したレイアウトデータを高い精度で得られる。
【0046】
上述の方法にて得られたOPC後のレイアウトデータは、マスクの製造誤差が無いものとして作成されたプロセスモデルによるOPCパターンが付加されたものである。したがって、OPC後のレイアウトデータに対して実際にマスクの製造誤差を打ち消す補正(MPC)をモデルベースの手法に基づいて行う。
【0047】
具体的にはコンピューター上のソフトウェアを用いて、前記OPC後のレイアウトデータを用いてマスク製造を行ったときのマスク上に形成されるパターンをシミュレーションし、シミュレーションしたパターンの変形や寸法変動を抽出し、その結果から、前記OPC後のレイアウトデータに対して、目標パターンを形成できる補正マスクパターンを付加したレイアウトデータを得る。
【0048】
図3、図4及び図5は、上記の本実施形態のマスクパターン設計方法を示す概略図である。図3はマスクモデル作成工程を示し、図4はプロセスモデル作成工程を示し、図5はOPC工程及びOPC工程後のMPC工程を示す。
図3に示すマスクモデル作成工程では、(a)のマスクモデル作成用のテストパターン1の設計データが(b)のマスク製造プロセスを経て(c)のテストマスク2にパターニングされる。
【0049】
一方、(d)のテストパターン1の設計データと各種設定ファイル3を(e)のシミュレータ4に入力する。シミュレータ4は(f)のパターニング結果を予測する。(c)のテストマスク2での実測結果と(f)のシミュレーション結果との合わせ込みにより、マスクモデル5が出力される。
【0050】
図4に示すプロセスモデル作成工程では、(a)のテストマスク6上の、(d)のプロセスモデル作成用のテストパターン7に対してMPCを施したテストパターン8が(b)の転写プロセスを経て(c)のサンプル用ウェハ9に転写される。
【0051】
一方、(d)のテストパターン7の設計データと各種設定ファイル10を(e)のシミュレータ11に入力する。シミュレータ11は(f)の転写結果を予測する。(c)のサンプルでの実測結果と(f)のシミュレーション結果との合わせ込みにより、マスクの製造誤差の影響分を含まないプロセスモデル12が出力される。
【0052】
図5に示すOPC工程では、(a)の実際の半導体デバイス製造用のマスクパターン13の設計データを、シミュレータ14に入力する。シミュレータ14は図3に示す一連の工程で作成されたプロセスモデル15を用いて、(b)の転写結果16を予測する。プロセスモデル15を用いるシミュレータ17に(b)の転写結果16を入力することにより、OPCの最適化が行われ、(c)の補正されたレイアウトデータ18が出力される。(c)のOPC後のレイアウトデータ18を、シミュレータ19に入力する。シミュレータ19は図3に示す一連の工程で作成されたマスクモデル20を用いて、(d)のパターニング結果21を予測する。マスクモデル20を用いるシミュレータ22に(d)で予測されたパターニング結果21を入力することにより、レイアウトデータ18にマスクの製造誤差を打ち消すような補正を付加した(e)のレイアウトデータ23を出力する。
【0053】
以上のように、本実施形態では、プロセスモデル作成用のテストパターンにOPCの技術を用いてマスクの製造誤差を打ち消す補正処理(MPC)を行い、プロセスモデル内に潜むマスクの製造誤差の影響を低減させ、合わせて実際のデバイスパターンとなるモデルベースOPC後のレイアウトデータに対してMPC処理を行い、最終的なマスクデータを得ることで、転写時に高い寸法制御精度を得ることが可能になる。
【0054】
なお、マスクの製造誤差を打ち消す補正を行う工程(MPC)においては、モデルベースの手法(モデルベースMPC)を用いる。前述したモデルベースOPCが転写時の光学近接効果を補償するものであるのに対し、このモデルベースMPCはマスクの製造誤差に特化した補正処理である。
【0055】
また、モデルベースOPCとモデルベースMPCでは、対象となるレイアウトデータの外縁であるパターンエッジに対する補正動作が異なる。すなわち、OPCがパターンエッジをデザインルール程度の間隔距離で分割し、分割されたエッジ毎に光強度シミュレーションの結果に応じたエッジ移動が行われるのに対し、MPCではエッジ分割による頂点数の増加によって、マスクの描画時間が増加するのを抑制するために、エッジの分割方法を規定したルールを設けて補正処理が行われる。
【0056】
前述したように従来のプロセスモデルでは、サンプルの実測結果にマスクの製造誤差が含まれていることに起因するフィッティング残さが内包していたが、本実施形態では、プロセスモデル作成段階において、MPC処理を施したテストパターンが転写されたサンプルの実測結果を入力データとして取り込むことで、マスクの製造誤差の影響分によるフィッティング残さを排除したプロセスモデルが作成できる。
【0057】
なお、本実施形態のマスクパターン設計方法は、上記の説明に限定されない。例えば、本発明において用いられるMPCの手法としてはルールベースであっても構わない。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…テストパターン、2…テストマスク、3…各種設定ファイル、4…シミュレータ、5…マスクモデル、6…テストマスク、7…テストパターン、8…テストパターン、9…サンプル用ウェハ、10…各種設定ファイル、11…シミュレータ、12…プロセスモデル、13…マスクパターン、14…シミュレータ、15…プロセスモデル、16…転写結果、17…シミュレータ、18…レイアウトデータ、19…シミュレータ、20…マスクモデル、21…パターニング結果、22…シミュレータ、23…レイアウトデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクにマスクパターンを形成するフォトマスク製造方法であって、
前記マスクパターンの一部を選択または変更したマスクモデル作成用テストパターンデータを作成する工程と、前記マスクモデル作成用テストパターンデータを用いてマスクモデル作成用テストマスクを作成する工程と、前記マスクモデル作成用テストマスクに形成されたマスクモデル作成用テストパターンの寸法を測長する工程と、前記測長結果と前記マスクモデル作成用テストパターンデータとを入力し、前記マスクモデル作成用テストマスクに形成される前記マスクモデル作成用テストパターンの寸法を算出するためのマスクモデルを作成する工程と、
前記マスクパターンの一部を選択または変更したプロセスモデル作成用テストパターンデータを作成する工程と、前記マスクモデルに従って前記プロセスモデル作成用テストパターンデータを補正する工程と、前記補正後のプロセスモデル作成用テストパターンデータを用いてプロセスモデル作成用テストマスクを作成する工程と、前記プロセスモデル作成用テストマスクをウェハに転写してサンプルを作成する工程と、前記サンプルに転写されたプロセスモデル作成用テストパターンの寸法を測長する工程と、前記測長結果と前記プロセスモデル作成用テストパターンデータとを入力し、前記テストマスクに転写されるプロセスモデル作成用テストパターンの寸法を算出するためのプロセスモデルを作成する工程と、を備えることを特徴とするフォトマスク製造方法。
【請求項2】
前記プロセスモデルに従って、実際のデバイスパターンのレイアウトデータに対してモデルベースOPC処理を行う工程を備えることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスク製造方法。
【請求項3】
前記モデルベースOPC処理を行った前記レイアウトデータに対してモデルベースMPC処理を行う工程を備えることを特徴とする請求項2に記載のフォトマスク製造方法。
【請求項4】
前記モデルベースMPC処理を行った前記レイアウトデータに応じて、パターニングによって前記フォトマスクを製造する工程を備えることを特徴とするフォトマスク製造方法。
【請求項5】
請求項1〜5の何れか一項に記載のフォトマスク製造方法によって製造したことを特徴とするフォトマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−242722(P2011−242722A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117154(P2010−117154)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】