説明

フォトレジスト供給装置およびフォトレジスト供給方法

【課題】正確に濃度調節されたフォトレジストをオンサイトで調製でき、フォトレジスト塗布装置へのフォトレジストの供給コストを一層低減し得るフォトレジスト供給装置ならびにフォトレジスト供給方法を提供する。
【解決手段】フォトレジスト供給装置1Aは、所定濃度のフォトレジストを調製する調製容器3と、当該調製容器へ高濃度のフォトレジストを供給する原液供給ライン2と、調製容器3へシンナーを供給するシンナー供給流路6と、調製容器3からフォトレジスト塗布装置へ所定濃度のフォトレジストを供給するフォトレジスト供給ライン4と、当該フォトレジスト供給ラインから調製容器3にフォトレジストを戻す混合用の循環流路5と、フォトレジスト濃度を測定する濃度計とを備えており、予めシンナーが供給された調製容器3への高濃度のフォトレジストの供給量を濃度計7に基づいて制御可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト供給装置に関するものであり、詳しくは、半導体や液晶デバイスの製造に使用されるフォトレジスト塗布装置に対し、所定濃度のフォトレジストをオンサイトで調製して供給するフォトレジスト供給装置およびフォトレジスト供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィにより半導体や液晶基板を製造する場合、先ずフォトレジスト塗布装置によりガラス基板などにフォトレジストを塗布するが、フォトレジスト塗布装置へ供給されるフォトレジストとしては、可搬式容器で搬入された所定濃度の調製済みフォトレジストが使用されている。斯かるフォトレジストは、窒素で加圧することにより、可搬式容器内の内袋からフォトレジスト供給装置の貯槽に移し替えられた後、同様に窒素で加圧することにより、フォトレジスト塗布装置へ供給される。
【特許文献1】特開平9−7936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のフォトレジスト塗布装置においては、昨今、デバイスの大型化、量産化に伴い、大量のフォトレジストを消費する傾向にあり、調製済みフォトレジストの使用がコスト低減の障害になっている。すなわち、調製済みのフォトレジストを使用した場合、それ自体高価であり、しかも、受入れ時の容器の交換頻度に応じて、その労力と手間が増大する。更に、受入れ後の容器の処理費用も増大する。
【0004】
そこで、フォトレジスト塗布装置の近傍に高濃度のフォトレジストを供給し、これをシンナーで希釈し、所定濃度のフォトレジストをオンサイトで調製することが考えられる。しかしながら、以下の様な理由により、フォトレジストのオンサイトでの調製が行われていないのが実情である。
【0005】
すなわち、フォトレジストの濃度は、濃度計を使用して極めて高精度に調節しなければならない反面、濃度計(センサー)は、一旦高濃度のフォトレジストに接触すると、それがセンサー表面に付着するため、その後の濃度変化を正確に測定できなくなると言う問題がある。換言すれば、濃度測定を行いながら高濃度のフォトレジストを希釈しようとすると、濃度計がフォトレジストの濃度変化に追従できず、結局、必要とされる濃度のフォトレジストを正確に調製できない。
【0006】
本発明は、上記の様な実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、正確に濃度調節されたフォトレジストをオンサイトで調製でき、フォトレジスト塗布装置へのフォトレジストの供給コストを一層低減し得るフォトレジスト供給装置、ならびに、フォトレジスト塗布装置へより低コストでフォトレジストを供給できるフォトレジスト供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明においては、調製容器において所定濃度のフォトレジストを調製するに当たり、最初に希釈用のシンナーを調製容器に供給し、次いで、当該シンナー中のフォトレジスト濃度を漸次高める様に、高濃度のフォトレジストを調製容器に供給し、所定濃度のフォトレジストを調製する。その際、フォトレジスト塗布装置へ至るフォトレジスト供給ラインから分岐して調製容器に戻る循環流路を使用し、調製容器内のシンナー及びフォトレジストを循環混合しながら、循環流路において濃度計によりシンナー中のフォトレジスト濃度を測定し、原液供給ラインから調製容器への高濃度のフォトレジストの供給量を濃度計に基づいて制御する様にした。これにより、高濃度のフォトレジストが濃度計に直接接触するのを防止し、逐次変化するフォトレジストの濃度を正確に検出する様にした。
【0008】
すなわち、本発明は2つの要旨から成り、その第1の要旨は、高濃度のフォトレジストを所定濃度に希釈してフォトレジスト塗布装置へ供給するフォトレジスト供給装置であって、所定濃度のフォトレジストを調製する調製容器と、当該調製容器へ高濃度のフォトレジストを供給する原液供給ラインと、前記調製容器へ希釈用のシンナーを供給するシンナー供給流路と、前記調製容器からフォトレジスト塗布装置へ所定濃度のフォトレジストを供給するフォトレジスト供給ラインと、当該フォトレジスト供給ラインから前記調製容器にフォトレジストを戻す混合用の循環流路と、当該循環流路に付設され且つフォトレジスト濃度を測定する濃度計とを備え、かつ、予めシンナーが供給された前記調製容器への高濃度のフォトレジストの供給量を前記濃度計に基づいて制御可能に構成されていることを特徴とするフォトレジスト供給装置に存する。
【0009】
また、本発明の第2の要旨は、上記のフォトレジスト供給装置を使用してフォトレジスト塗布装置へフォトレジストを供給する方法であって、調製容器において所定濃度のフォトレジストを調製するに当たり、シンナー供給流路から前記調製容器へシンナーを供給した後、フォトレジスト供給ライン及び循環流路を使用して前記調製容器のシンナーを循環させ且つ濃度計でシンナー中のフォトレジスト濃度を測定しながら、原液供給ラインから前記調製容器への高濃度のフォトレジストの供給量を制御することを特徴とするフォトレジスト供給方法に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シンナー供給流路から調製容器へ希釈用のシンナーを供給し、フォトレジスト供給ラインと混合用の循環流路とを使用して調製容器のシンナーを循環させ、循環流路に付設された濃度計によりシンナー中のフォトレジスト濃度を測定しながら、原液供給ラインから調製容器への高濃度のフォトレジストの供給量を濃度計に基づいて制御することにより、高濃度のフォトレジストが濃度計に直接接触するのを防止でき、逐次変化するフォトレジストの濃度を正確に測定できるため、高精度に濃度調節されたフォトレジストを調製容器において調製でき、これをフォトレジスト塗布装置へ供給することが出来る。その結果、可搬式容器による受入れ量を減らすことが出来、フォトレジストの供給コストを一層低減することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るフォトレジスト供給装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るフォトレジスト供給装置の主要部の構成例を示す系統図である。図2は、本発明に係るフォトレジスト供給装置の使用例を示すフロー図であり、フォトレジスト塗布装置に対するフォトレジスト及びシンナーの供給システムの例を示す図である。なお、以下の説明においては、フォトレジスト供給装置を「供給装置」と略記する。
【0012】
本発明の供給装置は、図1に符号(1A)で示す様に、使用濃度よりも高濃度のフォトレジストを所定の使用濃度に希釈し、これをフォトレジスト塗布装置(9)(図2参照)へバッチ方式で供給する装置である。本発明の供給装置(1A)は、所定濃度のフォトレジストを調製する調製容器(3)と、複数(例えば2基)の可搬式容器(1a)、(1b)から調製容器(3)へ高濃度のフォトレジストを供給する原液供給ライン(2)と、調製容器(3)へ希釈用のシンナーを供給するシンナー供給流路(6)と、調製容器(3)からフォトレジスト塗布装置(9)(図2参照)へ所定濃度のフォトレジストを供給するフォトレジスト供給ライン(4)と、当該フォトレジスト供給ラインから調製容器(3)にフォトレジストを戻す混合用の循環流路(5)と、循環流路(5)に付設され且つフォトレジストの濃度を測定する濃度計(7)とを備えている。
【0013】
フォトレジストとしては、基板の露光された部分が現像液によって可溶となる各種のポジ型フォトレジスト、および、露光されなかった部分が現像液で溶解する各種のネガ型フォトレジストが挙げられる。本発明において、調製容器(3)に受け入れる高濃度のフォトレジスト(原液)の樹脂濃度は、通常、30〜40%である。
【0014】
可搬式容器(1a)、(1b)は、上記の高濃度のフォトレジストを搬送するための流通容器であり、その構造自体は周知である。可搬式容器(1a)、(1b)には、フォトレジストの変質を防止するため、フォトレジストと共に窒素などの不活性ガスが封入されている。可搬式容器(1a)、(1b)としては、フォトレジストを取り出すのに必要な圧力を窒素などの不活性ガスにより加えることの出来る容器、具体的には常用圧力10KPa程度の樹脂製密閉容器が使用される。通常、可搬式容器(1a)、(1b)の内容積は、20〜200リットル程度である。
【0015】
可搬式容器(1a)、(1b)の上端部には、加圧用の窒素を容器内に供給するためのガス供給口と、容器底部近傍まで伸びるサイホン管を備えたフォトレジスト取出口とが設けられている。すなわち、可搬式容器(1a)、(1b)は、各々、後述する原液供給ライン(2)の取出流路(21a)、取出流路(21b)の各基端にフレキシブルホースを介してフォトレジスト取出口が接続され、取出流路(21a)及び取出流路(21b)に各対応する窒素供給流路(20a)、(20b)にフレキシブルホースを介してガス導入口が接続される様に構成されている。
【0016】
なお、図示しないが、後述する原液供給ライン(2)の近傍には、上記の可搬式容器(1a)、(1b)からフォトレジストを受け入れる際、可搬式容器(1a)、(1b)に上記の窒素を供給するため、また、後述する調製容器(3)からフォトレジストをフォトレジスト塗布装置(9)側へ供給する際、調製容器(3)に保圧用の窒素を供給するため、窒素容器の集合装置または貯槽、減圧調整器、バッファタンク等から成る窒素供給装置が設けられている。斯かる窒素供給装置は、窒素供給流路(20a)、(20b)を通じて可搬式容器(1a)、(1b)に押出用の窒素を供給し、また、窒素供給排出流路(30)を通じて調製容器(3)に圧力保持用の窒素を供給する様になされている。
【0017】
本発明の供給装置(1A)は、上記の可搬式容器(1a)、(1b)での搬入に応じて逐次フォトレジストを受け入れるため、前述の様に、基端に可搬式容器(1a)、(1b)が接続され且つ当該可搬式容器から調製容器(3)へ至る原液供給ライン(2)を備えている。
【0018】
原液供給ライン(2)は、可搬式容器(1a)、(1b)を切り替えてフォトレジストを連続して調製容器(3)へ供給するため、通常、それぞれ取出弁(22a)、(22b)が介装された上記の様な少なくとも2つの系統の取出流路(21a)、(21b)を有し、これらの取出流路の下流側には、取出流路(21a)、(21b)を集約する共通の取出流路(23)が設けられる。また、取出流路(23)の下流側には、保守管理を円滑に行うため、2つの系統でポンプ(2a)、(2b)が配置されている。
【0019】
すなわち、取出流路(23)の下流側には、当該取出流路から分岐する分岐流路(24a)、(24b)と、これら分岐流路にそれぞれ配置されたポンプ(2a)、(2b)と、これらポンプの吸入側および吐出側にそれぞれ介装されたポンプ元弁(25a)、(25b)、ポンプ吐出弁(27a)、(27b)と、分岐流路(24a)、(24b)のポンプ吐出側を集約し且つ調製容器(3)へ至る調製容器導入流路(28)と、当該調製容器導入流路に介装された逆止弁(29a)、容器導入弁(29b)とが設けられている。
【0020】
上記の様に、2系統のポンプ(2a)、(2b)を配置することにより、常に一方のポンプ(2a)(又は(2b))を使用してフォトレジストを受け入れることが出来るため、装置を停止することなく、他方のポンプ(2b)(又は(2a))に洗浄や整備を施すことが出来る。なお、ポンプ(2a)、(2b)としては、例えば、日本ピラー工業(株)製の低脈圧ベローズポンプ「PS−10MA」(商品名)等の送液ポンプが使用される。
【0021】
調製容器(3)は、供給されたフォトレジストの濃度調節を行い、所定濃度のフォトレジストを必要に応じてフォトレジスト塗布装置(9)へ、通常は当該フォトレジスト塗布装置に付設されたバッファタンク(図示省略)へ供給する供給容器であり、可搬式容器(1a)、(1b)と同等の加圧に耐え得る構造を備えている。調製容器(3)は、気泡の混入を出来る限り防止するため、その上端部から底部近傍に至るサイホン管を内部に備えており、斯かるサイホン管には、上記の調製容器導入流路(28)の他端が接続されている。
【0022】
また、調製容器(3)の上端には、高濃度のフォトレジストを受け入れる際、および、調製されたフォトレジストをフォトレジスト塗布装置(9)側へ送り出す際に容器内の圧力を一定に保持するため、前述の窒素供給排出流路(30)が接続されている。そして、高濃度のフォトレジストを受け入れる際は、前述の窒素供給装置に余剰の窒素を回収し、また、調製されたフォトレジストを送り出す際は、前述の窒素供給装置から加圧用の窒素が供給される様にになされている。なお、通常、調製容器(3)の内容積は50〜200リットル程度に設計される。
【0023】
調製容器(3)の底部には、調製された所定濃度のフォトレジストをフォトレジスト塗布装置(9)側へ供給する上記のフォトレジスト供給ライン(4)が接続されている。フォトレジスト供給ライン(4)においては、原液供給ライン(2)と同様に、保守管理を円滑に行う観点から、2つの系統のポンプ(2a)、(2b)が配置されている。
【0024】
すなわち、フォトレジスト供給ライン(4)は、調製容器(3)の底部に設けられた取出流路(41)と、当該取出流路から分岐する分岐流路(42a)、(42b)と、これら分岐流路にそれぞれ配置されたポンプ(4a)、(4b)と、これらポンプの吸入側および吐出側にそれぞれ介装されたポンプ元弁(43a)、(43b)、ポンプ吐出弁(45a)、(45b)と、分岐流路(42a)、(42b)のポンプ吐出側を集約する送出し流路(46)と、当該送出し流路に介装されたフィルター(47)と、送出し流路(46)からフォトレジスト塗布装置(9)側へ伸長されたフォトレジスト供給流路(48)と、当該フォトレジスト供給流路に介装された供給元弁(49)とから構成されている。
【0025】
上記の様に、2系統のポンプ(4a)、(4b)を配置することにより、常に一方のポンプ(4a)(又は(4b))を使用してフォトレジストをフォトレジスト塗布装置(9)側へ供給することが出来るため、装置を停止することなく、他方のポンプ(4b)(又は(4a))に洗浄や整備を施すことが出来る。なお、ポンプ(4a)、(4b)としては、前述のポンプ(2a)、(2b)と同様の送液ポンプが使用される。また、フィルター(47)は、樹脂多孔質材料から成るフィルターであり、異物や凝集物、微細気泡を除去するために設けられている。
【0026】
本発明の供給装置(1A)においては、上記のフォトレジスト供給ライン(4)から調製容器(3)にフォトレジストを戻す混合用の循環流路(5)と、当該循環流路に希釈用のシンナーを供給するシンナー供給流路(6)とが設けられており、後述する様に、調製容器(3)に最初に収容されるシンナーを循環流路(5)によって循環させながら、調製容器(3)中のフォトレジスト濃度を次第に高める様に構成されている。
【0027】
循環流路(5)は、フォトレジスト供給ライン(4)の上記の送出し流路(46)から分岐し、調製容器(3)の底部まで伸長されている。循環流路(5)の先端を調製容器(3)の底部に接続し、調製容器(3)の底部から取り出した調製中のフォトレジストを再び調製容器(3)の底部に戻すことにより、気泡の混入を防止することが出来る。また、調製容器(3)のフォトレジストの循環混合と、フォトレジスト塗布装置(9)へのフォトレジストの供給とを切り替えるため、循環流路(5)の基端部には、循環流路元弁(51)が介装されている。
【0028】
シンナー供給流路(6)は、シンナー供給弁(61)を介して循環流路(5)の循環流路元弁(51)よりも下流側に接続されている。シンナー供給流路(6)は、通常、フォトレジスト塗布装置(9)においてフォトレジスト塗布後に基板から不要なフォトレジストを除去するためのシンナー供給装置から伸長されている。特に図示しないが、斯かるシンナー供給装置は、シンナー容器からポンプによってシンナーを吸い上げてこれをフォトレジスト塗布装置(9)へ供給する装置である。上記のシンナー供給流路(6)としては、後述するシンナーリサイクル供給装置(8)(図2参照)から伸長された抜取流路(86)、(87)を利用することも出来る。
【0029】
本発明においては、調製容器(3)のフォトレジストの濃度を正確に測定し、シンナーと高濃度のフォトレジストとの混合量を制御するため、フォトレジストの濃度を測定する濃度計(7)が循環流路(5)に付設されている。すなわち、本発明の供給装置(1A)においては、循環流路(5)を循環するフォトレジストの濃度を測定する様になされている。そして、上記の濃度計(7)は、循環流路(5)においてシンナー供給流路(6)の接続部よりも下流側に配置されているのが好ましい。これにより、濃度計(7)のセンサー表面を希釈用シンナーに晒すことが出来るため、濃度計(7)の測定精度を維持することが出来る。
【0030】
濃度計(7)としては、フォトレジストの樹脂濃度を測定し得る限り、各種の測定器を使用できる。例えば、濃度計(7)としては、フォトレジストの温度およびフォトレジストおける超音波伝播速度を測定し、予め作成された所定温度および所定濃度における超音波伝播速度の関係に基づいて樹脂濃度を検出する超音波方式の濃度計が使用される。斯かる濃度計は、溶液の温度が一定ならば、濃度に応じて液中の超音波の伝播速度が一義的に特定されると言う原理に基づくものであり、主に、超音波変換器、超音波発信器、電磁導電率変換器、電磁導電率発信器および所定の演算を行うマイクロプロセッサーから構成されている。上記の様な濃度計としては、例えば、富士工業(株)製の商品名「FUD−1 MODEL−82」として知られる液体用超音波濃度計が挙げられる。
【0031】
本発明の供給装置(1A)においては、予め所定のプログラムが書き込まれた制御装置(図示省略)が使用され、斯かる制御装置による弁の開閉操作により、シンナー供給流路(6)からの希釈用シンナーの供給、可搬式容器(1a)、(1b)からの高濃度のフォトレジストの供給、所定濃度のフォトレジストの調製、および、フォトレジスト塗布装置(9)へのフォトレジストの供給を自動的に行う様になされている。そして、上記のフォトレジストの調製においては、予めシンナーが供給された調製容器(3)への高濃度のフォトレジストの供給量を上記の濃度計(7)に基づいて制御可能に構成されている。
【0032】
次に、本発明の供給装置(1A)におけるフォトレジストの調製およびフォトレジスト塗布装置(9)へのフォトレジストの供給方法について説明する。フォトレジスト塗布装置(9)にフォトレジストを供給するに当たり、先ず、フォトレジスト塗布装置(9)で必要とされる所定濃度(目標濃度)のフォトレジストを調製する。フォトレジストの調製においては、最初に、シンナー供給弁(61)を開放し、シンナー供給流路(6)、循環流路(5)を通じて調製容器(3)へ一定量のシンナーを供給する。シンナーの供給量は、調製容器(3)において受け入れる高濃度のフォトレジストを目標濃度に希釈するのに必要な予め計算された量とされる。
【0033】
一定量のシンナーを調製容器(3)に供給した後は、フォトレジスト供給ライン(4)及び循環流路(5)を使用して調製容器(3)のシンナーを循環させる。すなわち、シンナー供給弁(61)を閉止し、例えば、ポンプ元弁(43a)、ポンプ吐出弁(45a)を開放し且つ循環流路元弁(51)を開放し、かつ、ポンプ元弁(43b)、ポンプ吐出弁(45b)を閉止した状態において、一方のポンプ(4a)を稼働させる。これにより、取出流路(41)、分岐流路(42a)、送出し流路(46)及び循環流路(5)を通じて、調製容器(3)のシンナーを循環させる。同時に、濃度計(7)を作動させ、濃度測定を開始する。なお、フォトレジスト供給流路(48)の供給元弁(49)は閉止しておく。
【0034】
次いで、原液供給ライン(2)から調製容器(3)へ高濃度のフォトレジスト(原液)を供給する。高濃度のフォトレジストの供給においては、例えば、取出弁(22a)、ポンプ元弁(25a)、ポンプ吐出弁(27a)及び容器導入弁(29b)を開放し、かつ、取出弁(22b)、ポンプ元弁(25b)及びポンプ吐出弁(27b)を閉止した状態において、窒素供給装置から窒素供給流路(20a)を通じて可搬式容器(1a)に窒素を供給しながら、一方のポンプ(2a)を稼働させる。これにより、取出流路(21a)、取出流路(23)、分岐流路(24a)及び調製容器導入流路(28)を通じて、可搬式容器(1a)から調製容器(3)に高濃度のフォトレジストを供給する。
【0035】
なお、可搬式容器(1a)と可搬式容器(1b)を切り替えて、可搬式容器(1b)からフォトレジストを受入れる場合は、上記の取出弁(22a)と取出弁(22b)の開閉操作を切り替え、窒素供給流路(20b)を通じて他方の可搬式容器(1b)に窒素を供給する。
【0036】
上記の様に高濃度のフォトレジストを供給すると、調製容器(3)においては、先に収容されたシンナー中にフォトレジストが溶解し、シンナー中のフォトレジスト濃度が次第に上昇する。一方、前述の様に、原液供給ライン(2)及び循環流路を使用して調製容器のシンナーを循環させているため、循環流路(5)のフォトレジスト濃度を濃度計(7)で測定することにより、調製容器(3)内のシンナー中のフォトレジスト濃度、すなわち、調製容器(3)で調製されるフォトレジストの濃度を測定することが出来る。
【0037】
そこで、本発明においては、循環流路(5)の濃度計(7)でシンナー中のフォトレジスト濃度を測定しながら、原液供給ライン(2)から調製容器(3)への高濃度のフォトレジストの供給量を制御する。すなわち、制御装置は、予め書き込まれたプログラムに従い、濃度計(7)で測定されたフォトレジスト濃度が目標濃度に到達した場合、ポンプ(2a)を停止し、取出弁(22a)、容器導入弁(29b)を閉止する。
【0038】
なお、本発明の供給装置(1A)においては、正確に目標濃度のフォトレジストを調製するため、調製容器(3)内のフォトレジスト(循環流路(5)のフォトレジスト))の濃度が目標濃度を超えた場合には、再度、シンナー供給流路(6)のシンナー供給弁(61)を開閉し、希釈用のシンナーを追加供給する様に構成されてもよい。
【0039】
濃度計(7)に基づいて調製容器(3)内のフォトレジストの濃度を目標濃度に調節する方法としては、濃度計(7)で連続的に濃度測定しながら、調製容器(3)のシンナー(又は低濃度のフォトレジスト)に高濃度のフォトレジストを添加して徐々に目標濃度に近づける方法、あるいは、濃度計(7)で間欠的に濃度測定しながら、調製容器(3)のシンナー(又は低濃度のフォトレジスト)を目標濃度にするための高濃度のフォトレジストの必要量を演算し、斯かる必要量の例えば90〜98%に相当する量を添加する操作を複数回繰り返すことにより、漸次目標濃度に近づける方法などが挙げられる。
【0040】
上記の様な濃度調節により、調製容器(3)において所定濃度(目標濃度)、例えば濃度10.0%に正確に濃度調節されたフォトレジストを調製できる。所定濃度のフォトレジストを調製した後は、これをフォトレジスト塗布装置(9)へ供給する。フォトレジスト塗布装置(9)へのフォトレジストの供給は、循環流路(5)の循環流路元弁(51)を閉止し、供給元弁(49)を開放してフォトレジスト供給流路(48)を通じて行う。なお、調製されたフォトレジストは、通常、フォトレジスト塗布装置(9)に付設されたバッファタンク(図示省略)に一旦貯留され、斯かるバッファタンクから必要時にフォトレジスト塗布装置(9)へ供給される。
【0041】
上記の様に、本発明の供給装置(1A)においては、調製容器(3)において所定濃度のフォトレジストを調製するに当たり、最初に希釈用のシンナーを調製容器(3)に供給し、次いで、当該シンナー中のフォトレジスト濃度を漸次高める様に、高濃度のフォトレジストを原液供給ライン(2)から調製容器(3)に供給し、所定濃度のフォトレジストを調製する。その際、フォトレジスト供給ライン(4)から分岐して調製容器(3)に戻る循環流路(5)を使用し、調製容器(3)内のシンナー及びフォトレジストを循環混合しながら、循環流路(5)において濃度計(7)によりフォトレジスト濃度を測定し、原液供給ライン(2)から調製容器(3)への高濃度のフォトレジストの供給量を濃度計(7)に基づいて制御する。
【0042】
従って、本発明の供給装置(1A)においては、高濃度のフォトレジストが濃度計(7)に直接接触するのを防止でき、逐次変化するフォトレジストの濃度を常に正確に検出することが出来る。換言すれば、循環流路(5)の内部に露出する濃度計(7)のセンサー表面を高濃度のフォトレジスト(原液)に晒すことがなく、センサーの当初の感度を維持できる。その結果、本発明の供給装置(1A)によれば、正確に濃度調節されたフォトレジストをオンサイトで調製することが出来、これにより、可搬式容器の交換頻度を低減でき、容器の処理費用も低減できるため、フォトレジスト塗布装置(9)へのフォトレジストの供給コストを一層低減することが出来る。
【0043】
また、上記の供給装置(1A)を使用した本発明のフォトレジスト供給方法においては、調製容器(3)において所定濃度のフォトレジストを調製するに当たり、シンナー供給流路(6)から調製容器(3)へシンナーを供給した後、原液供給ライン(2)及び循環流路(5)を使用して調製容器(3)のシンナーを循環させ且つ濃度計(7)でシンナー中のフォトレジスト濃度を測定しながら、原液供給ライン(2)から調製容器(3)への高濃度のフォトレジストの供給量を制御する。従って、本発明のフォトレジスト供給方法によれば、前述の通り、正確に濃度調節されたフォトレジストをオンサイトで調製することが出来、フォトレジスト塗布装置(9)へのフォトレジストの供給コストを一層低減することが出来る。
【0044】
更に、本発明によれば、バッチ毎に上記の様に濃度計(7)を使用して所定濃度のフォトレジストを調製容器(3)に調製するため、バッチ毎に濃度履歴を管理でき、フォトレジスト塗布装置(9)側のプロセスの変更や管理などに、フォトレジスト情報として利用することが出来る。
【0045】
また、フォトレジスト塗布装置(9)では、基板の端部やコータ内部に付着した不要なフォトレジストを除去するために洗浄用のシンナーを使用するが、斯かるシンナーは、前述のシンナー供給装置の他、図2に示す様なシンナーリサイクル供給装置(8)によっても供給することが出来る。そこで、本発明においては、供給装置(1A)にシンナーを供給するに当たり、図2に示す様なシンナーリサイクル供給装置(8)から得られるシンナーを利用してもよい。
【0046】
図2に示すシンナーリサイクル供給装置(8)は、顔料や樹脂などの不純物が含まれる使用済みのシンナーをフォトレジスト塗布装置(9)から回収して精製し、これをフォトレジスト塗布装置(9)に再び供給する装置であり、シンナー供給機構(8A)とシンナー精製機構(8B)とから主として構成されている。
【0047】
シンナー供給機構(8A)は、フォトレジスト塗布装置(9)に供給すべきシンナーを貯留するシンナー供給貯槽およびポンプ等から成り、調製シンナー供給流路(82)を通じてフォトレジスト塗布装置(9)へシンナーを供給する様に構成されている。上記のシンナー供給貯槽には、シンナー原液貯槽およびポンプにて構成された前述のシンナー供給装置からシンナー原液導入ライン(81)を通じて新たなシンナー原液が送液され様になされている。
【0048】
シンナー精製機構(8B)は、シンナー回収流路(83)を通じてフォトレジスト塗布装置(9)から回収された使用済みシンナーを精製し、これを精製シンナー取出流路(84)を通じて上記のシンナー供給貯槽に送液する機構である。斯かるシンナー精製機構(8B)は、回収液貯槽およびポンプと、回収されたシンナーから不純物を分離除去するセラミックス膜などの分離膜と、不純物が除去された精製シンナー中の不純物濃度を検出する濃度計とから構成されている。すなわち、シンナー精製機構(8B)においては、分離膜によって不純物を除去すると共に、分離回収された精製シンナー中の不純物濃度に応じて、回収液貯槽から上記のシンナー供給貯槽への精製シンナーの送液、および、シンナー供給装置から上記のシンナー供給貯槽へのシンナー原液の送液を制御可能になされている。
【0049】
上記の様なシンナーリサイクル供給装置(8)は、シンナー精製機構(8B)において、回収された精製シンナーを一定温度に調節すると共に、超音波伝播速度、電磁導電率、吸光度などの物性値を測定する方式の濃度計で不純物濃度を測定し、シンナー供給機構(8A)のシンナー供給貯槽においてシンナー中の不純物濃度が許容濃度以下となる様に、精製シンナーとシンナー原液を混合することにより、シンナーの再利用を図ることが出来る。なお、シンナー精製機構(8B)においては、分離膜で分離された不純物濃度の高いシンナーが廃液(濃縮液)流路(85)を通じて系外に取り出される様に構成なされている。
【0050】
本発明においては、上記の様なシンナーリサイクル供給装置(8)のシンナー供給機構(8A)において回収シンナーと新たなシンナー原液とから調製されたシンナーを使用することが出来る。すなわち、上記のシンナー供給機構(8A)で得られたシンナーは、調製シンナー抜取流路(86)を通じて循環流路(5)に供給してもよい。
【0051】
また、本発明の供給装置(1A)において調製されるフォトレジストの濃度(樹脂濃度)は上記のシンナーリサイクル供給装置(8)で廃棄されるシンナー中の樹脂濃度よりも高濃度である。従って、本発明においては、上記のシンナーリサイクル供給装置(8)のシンナー精製機構(8B)において分離除去されたシンナー(濃縮液)を使用することも出来る。すなわち、シンナー精製機構(8B)で排出されたシンナー(濃縮液)は、上記の廃液流路(85)から分岐する廃液(濃縮液)抜取流路(87)を通じて循環流路(5)に供給してもよい。上記の様に、再生したシンナーを利用して所定濃度のフォトレジストを調製することにより、フォトレジストの調製コストを一層低減することが出来る。
【0052】
なお、図2に示す様に、本発明を既存のフォトリソグラフィシステムに適用する場合には、供給装置(1A)のフォトレジスト供給流路(48)に対し、既存の調製済フォトレジスト供給ライン(1B)、すなわち、予め所定濃度に調製されたフォトレジストを可搬式容器から取り出してこれをフォトレジスト塗布装置(9)へ供給する従来の供給ラインが繋ぎ込まれてもよい。上記の様に、フォトレジスト供給流路(48)に従来の供給ラインを接続することにより、これをバックアップとして利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るフォトレジスト供給装置の構成例を示す系統図である。
【図2】本発明に係るフォトレジスト供給装置の使用例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0054】
1A :フォトレジスト供給装置
1B :調製済フォトレジスト供給ライン
1a :可搬式容器
1b :可搬式容器
2 :原液供給ライン
20a:窒素供給流路
20b:窒素供給流路
3 :調製容器
30 :窒素供給排出流路
4 :フォトレジスト供給ライン
5 :循環流路
6 :シンナー供給流路
7 :濃度計
8 :シンナーリサイクル供給装置
8A :シンナー供給機構
8B :シンナー精製機構
86 :調製液抜取流路
87 :廃液(濃縮液)抜取流路
9 :フォトレジスト塗布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度のフォトレジストを所定濃度に希釈してフォトレジスト塗布装置へ供給するフォトレジスト供給装置であって、所定濃度のフォトレジストを調製する調製容器と、当該調製容器へ高濃度のフォトレジストを供給する原液供給ラインと、前記調製容器へ希釈用のシンナーを供給するシンナー供給流路と、前記調製容器からフォトレジスト塗布装置へ所定濃度のフォトレジストを供給するフォトレジスト供給ラインと、当該フォトレジスト供給ラインから前記調製容器にフォトレジストを戻す混合用の循環流路と、当該循環流路に付設され且つフォトレジスト濃度を測定する濃度計とを備え、かつ、予めシンナーが供給された前記調製容器への高濃度のフォトレジストの供給量を前記濃度計に基づいて制御可能に構成されていることを特徴とするフォトレジスト供給装置。
【請求項2】
シンナー供給流路は、循環流路に接続され、濃度計は、循環流路においてシンナー供給流路の接続部よりも下流側に配置されている請求項1に記載のフォトレジスト供給装置。
【請求項3】
濃度計が、超音波方式の濃度計である請求項1又は2に記載のフォトレジスト供給装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のフォトレジスト供給装置を使用してフォトレジスト塗布装置へフォトレジストを供給する方法であって、調製容器において所定濃度のフォトレジストを調製するに当たり、シンナー供給流路から前記調製容器へシンナーを供給した後、フォトレジスト供給ライン及び循環流路を使用して前記調製容器のシンナーを循環させ且つ濃度計でシンナー中のフォトレジスト濃度を測定しながら、原液供給ラインから前記調製容器への高濃度のフォトレジストの供給量を制御することを特徴とするフォトレジスト供給方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−66520(P2008−66520A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242942(P2006−242942)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000176763)三菱化学エンジニアリング株式会社 (85)
【Fターム(参考)】