説明

フォンウィルブランド因子(vWF)含有調製品並びにこれに関連する方法、キット及び使用

本発明は、FVIIIを調製する方法、FVIIIの組成物及びキット、並びにその利用に関する。また、本発明は、vWFポリペプチド及びそれをコードする核酸分子も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2009年11月13日に出願された米国特許出願第61/261,145号の利益を主張し、当該出願は、本願にその全てが参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の技術分野
vWF含有調製品に関する方法、組成物及びキットが提供され、これらは、因子VIII(FVIII)の調製に関する方法、キット及び上記調製物の使用を含む。また、vWFポリペプチド及びこれをコードする核酸分子も提供する。
【0003】
発明の背景
哺乳類細胞が発現するFVIIIは、しばしば、細胞表面成分(例えばプロテオグリカン)により、又は受容体が媒介する事象(例えばLRP受容体との相互作用)により、特異的に、又は非特異的に細胞表面に吸着される。また、発現したFVIIIは、培養細胞の培地中で、酵素的に切断及び/又は分解されることもある。培養期間中、発現したFVIII濃度は、分泌された材料が発現後(例えばかん流技術により)迅速に回収されない限り、培地中で減少していく。
【0004】
通常の環境下では、FVIII-vWF複合体は、荷電したマトリックス上の吸着を含む公知のクロマトグラフィーにより、又は偽アフィニティークロマトグラフィーにより、培地から回収され得る。そして、FVIIIは、FVIII分子に富みvWFの混入が最小の集団を取得する、選択的洗浄工程により、FVIII:vWF複合体から精製されることが出来る。
【0005】
vWFは、血漿タンパク質の主要な供給源である血管内皮細胞中で形成され、構成的に、又は刺激により血漿中に遊離するが、巨核球も僅かに合成する。最初の翻訳産物は、2813アミノ酸からなると信じられている。シグナルペプチド(22アミノ酸)の切断後、ダイマー化が起こる。更なるプロセシングはゴルジ体の中で行われ、前記ダイマーは、プロペプチド(741アミノ酸)の切断及び除去の後、ポリマー化される。前記プロペプチドは、前記ダイマーの更なる連結において重要な役割を果たし、アミノ末端でのジスルフィド架橋の形成を触媒する。よって、500,000ダルトンのダイマーから2000万ダルトンのマルチマーまで様々なサイズのオリゴマーが形成され得る。タンパク質分解手順に加えて、vWFは、グリコシル化及び硫酸化を含む翻訳後修飾に供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において、本発明は、vWFポリペプチド中に存在する第一のアミノ酸配列及び当該第一のアミノ酸配列と異種(heterologous)の第二のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供し、当該ポリペプチドは、FVIIIと結合出来る。
【0007】
他の態様において、本発明は、前記第一及び第二のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含有する組成物を提供する。
【0008】
幾つかの側面において、本発明は、前記ポリペプチド及びFVIIIを含有するタンパク質複合体を提供する。
【0009】
他の側面において、本発明は、前記タンパク質複合体を含有する組成物を提供する。
【0010】
更なる側面において、本発明は、前記第一及び第二のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を提供する。
【0011】
一つの側面において、本発明は、前記ヌクレオチド配列を有する発現ベクターを提供する。
【0012】
他の側面において、本発明は、前記第一及び第二のアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現する細胞を提供する。
【0013】
幾つかの側面において、本発明は、前記ポリペプチド及びFVIIIを含むタンパク質複合体を発現する細胞を提供する。
【0014】
他の側面において、本発明は、前記ポリペプチド及びFVIIIを接触させる工程を含む、タンパク質複合体を調製する方法を提供する。
【0015】
一つの側面において、本発明は、前記第一及び第二のアミノ酸配列を含むポリペプチドをFVIIIと接触させて、当該ポリペプチド及びFVIIIを含有するタンパク質複合体を形成する工程を含む、FVIIIを調製する方法を提供する。
【0016】
他の側面において、本発明は、前記ポリペプチド及びFVIIIを含有するタンパク質複合体を含有する組成物を対象に投与する工程を含む、FVIIIの血漿薬物動態性能を改善する方法を提供する。
【0017】
幾つかの側面において、本発明は、前記タンパク質複合体及び医薬として許容される担体を含有する組成物を提供する。
【0018】
他の態様において、本発明は、血液の症状を処置する方法であり、前記ポリペプチド及びFVIIIを含有するタンパク質複合体を含有する組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【0019】
なおも更なる側面において、キットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、ヒトフォンウィルブランド因子タンパク質の構造、プロセシング及び成熟の模式図を示す。(A)フォンウィルブランド因子ポリペプチドの一次ドメイン構造を示す。SS=シグナルペプチド;D1及びD2=プロペプチド配列;D'-D3=名目上の(nominal)因子VIII結合領域を含む;A1及びA3=コラーゲン結合(及び他の相互作用に関する)ドメイン。(B)分泌及びプロセシングの過程において、前記シグナルペプチドが除去され、その後プロペプチドが、フリン様プロセシング段階により、vWFポリペプチドから切断されて、通常D'ドメインの接合部から始まる成熟vWFポリペプチドが取得される。(C)成熟vWFポリペプチドと協調したプロペプチドは、FVIII結合の増大及びマルチマー化を促進する。(D)プロペプチド-成熟vWF複合体により提供されるシステイン残基は、分子内、及び分子間のマルチマー形成を可能とする、共有結合を提供する。
【0021】
【図2】図2は、IgG1 Fcと共有結合により融合した、ドメイン短縮ヒトフォンウィルブランド因子の模式図を示す。(A)フォンウィルブランド因子ポリペプチドの一次ドメイン構造を示す。SS=シグナルペプチド;D1及びD2=プロペプチド配列;D'-D3=名目上の因子VIII結合領域を含む;A1及びA3=コラーゲン結合(及び他の相互作用に関する)ドメイン。(B)Fcを有する一次短縮vWFポリペプチドの模式図であり、シグナルペプチドの切断後の予想されるドメイン構造を示す。配列は、D'-D3、D'-A1又はD'-A3ドメインのいずれかが続き、それぞれは、IgG1の定常領域のヒンジ領域で共有結合する。(C)短縮vWFポリペプチド-Fc融合体(即ちD'-D3-Fc、D'-A1-Fc、又はD'A3-Fcと協調したプロペプチドは、成熟vWFプロセシングの場合と同様に、FVIII結合の増大及びマルチマー化を促進する。
【0022】
【図3】図3は、短縮vWF-Fc融合体のプロセシング、成熟及び一次翻訳産物のマルチマー化の模式図を示す。(A)シグナルペプチド切断後のプロペプチド及びvWFドメイン-Fc融合体の模式図を示す。この模式図において、前記ポリペプチドは例えば、図1に記載されたような、単一の一次翻訳産物に由来する。(B)一次翻訳産物のプロセシング後のプロペプチド及びvWFドメイン-Fc融合体モノマー、並びに適切なフォールディングを促進するための、プロペプチドと短縮されたvWFドメイン-Fcポリペプチドの協調を示す。(C) IgG1のヒンジ領域内に含まれるシステイン残基は、分子内架橋を提供して、血漿由来のvWFに見出されるのと同様の、FVIIIにも結合する機能性vWF-Fcダイマーの形成を助ける。vWFのプロペプチドは、融合ポリペプチドのマルチマー化を促進する。
【0023】
【図4】図4は、成熟独立したコード領域の2つの一次翻訳産物からの、短縮vWF-Fc融合体のプロセシング、マルチマー化の模式図を示す。(A)シグナルペプチドが切断されたプロペプチド及び短縮vWFドメイン-Fc融合ポリペプチドの、隔離された、及び独立した、一次翻訳産物の模式図を示す。通常のvWFプロセシングにおいて、フリン様プロセシングは必要とされない。この模式図において、前記ポリペプチドは、単一の発現ベクター又は同一の細胞内に共発現した2つの発現ベクターから転写された2つの独立したプロモーターカセットからの2つの独立した一次翻訳産物に由来する。単一の発現ベクターによる発現方法は、例えば図6に記載されている。(B)一次翻訳産物のプロセシング後のプロペプチド及びvWFドメイン-Fc融合体モノマーの模式図、ならびに共発現したプロペプチドと短縮vWFドメイン-Fvポリペプチドの協調が適切なフォールディングを促進することを示す。(C)のヒンジ領域内に含まれるシステイン残基は、分子内架橋を提供して、血漿由来のvWFに見出されるのと同様の、FVIIIにも結合する機能性vWF-Fcダイマーの形成を助ける。vWFのプロペプチドは、融合ポリペプチドのマルチマー化を促進する。
【0024】
【図5】図5は、幾つかの態様において、哺乳類細胞に、成熟vWF又は短縮vWFドメイン-Fc融合ポリペプチドを発現させるプラスミド発現ベクターをトランスフェクションすることを示す模式図である。(A) 成熟vWF又は短縮vWFドメイン-Fc融合タンパク質のコード配列を有する発現プラスミドを示し、それぞれシグナルペプチド配列及びプロペプチドドメインを、一次翻訳産物の部分として含む。(B)哺乳類細胞内にプラスミドを導入して選択条件下で培養し、ステーブル発現細胞系を樹立する。(C)(A)とは異なる選択マーカー(ネオマイシン)を使用した因子VIIIのコードカセットを有する発現プラスミドを示す。(D)哺乳類細胞に、FVIII(C)及びvWF又はvWF-Fc(A)プラスミドをコトランスフェクションし、選択条件下で培養して、FVIII及びvWF-Fc(又はvWF)を発現するステーブル細胞系を樹立する。
【0025】
【図6】図6は、他の態様において、哺乳類細胞に、同一の又は異なるプラスミドベクター上にあり、独立したプロモーターの制御下にある、成熟vWF又は短縮vWFドメイン-Fc融合ポリペプチド並びにプロペプチド配列を発現するプラスミド発現ベクターをトランスフェクションすることを示す模式図である。(A)一次翻訳産物の部分としてプロペプチドドメインを発現しないvWF又は短縮vWFドメイン-Fv融合タンパク質、及び独立したプロモーターの制御下にあるvWFプロペプチドドメイン発現カセット(それぞれ代表的なシグナルペプチド配列を有する)のコードカセットを有する発現プラスミドを示す。(B)哺乳類細胞内に、プロペプチドマイナスvWF又はvWF-Fc融合ポリペプチド及びプロペプチドポリペプチドプラスミドを導入して選択条件下で培養し、vWF又はvWF-Fcタンパク質とプロペプチドポリペプチドの両方を共発現するステーブル細胞系を樹立する。(C)(A)とは異なる選択マーカー(ネオマイシン)を使用した因子VIIIのコードカセットを有する発現プラスミドを示す。(D)哺乳類細胞に、FVIII(C)及びvWF又はvWF-Fc及びプロペプチド(A)プラスミドをコトランスフェクションし、選択条件下で培養して、FVIII及びvWF-Fc又はvWF、並びに独立してvWFプロペプチドを発現するステーブル細胞系を樹立する。
【0026】
【図7】図7は、強制発現させた培養上澄自体(A)、又は当該発現させた培養上澄のタンパク質G免疫沈降産物(B)を、還元及び変性条件下、4-12%Bis-Tris PAGEゲルで電気泳動したタンパク質をクーマシー染色したものを示す。短縮vWF-Fcを含むプラスミドコンストラクトをトランスフェクションしたPRE.C6細胞のステーブル系を、抗生物質選択を使用して選択した。上澄自体の試料として、20マイクロリットルをゲル上にロードした。免疫沈降試料として、20マイクロリットルのタンパク質Gのビーズを、1mlのD'-D3-Fcの培地に、又は0.2mlのD'-A1-Fc若しくはD'-A3-Fcの培地に添加した。両ゲルの各レーンの試料を以下に示す。レーン1: 分子量標準;レーン2: D’-D3-Fc;レーン3: pro-D’-D3-Fc;レーン4: D’-A1-Fc;レーン5: pro-D’-A1-Fc;レーン6: D’-A3-Fc;レーン7: pro-D’-A3-Fc;レーン8:トランスフェクションしていない対照のPER.C6調整培地。レーン3、5及び8の分子量の大きいバンドは、対応するvWFドメインに尚も結合したプロセシングされていないプロペプチドを表す。
【0027】
【図8】図8は、vWF-Fc融合タンパク質又は血漿由来vWFタンパク質を使用した、回復したFVIII活性を示す棒グラフである。点線は、対照(即ちvWFタンパク質を添加していないBDD-FVIII)の回復活性を示す。発現した短縮vWF-Fc融合タンパク質又は全長vWFを含有する細胞上澄を、FVIIIを組換え発現するBDD-078細胞と混合した。2日後、試料のFVIII発現を、発色FVIIIアッセイを使用して解析した。
【0028】
【図9】図9は、正常、血漿由来vWFのマルチマーと、マルチマー化したプロ-vWF-Fc融合タンパク質との比較を示す。血漿由来因子VIII(Koate-DVI(登録商標)を変性非還元1.6%(レーン1)及び2%(レーン2)HGT(P)アガロースゲルに流してマルチマー化の標準として泳動し、一方、pro-D’-D3-Fc(レーン3), pro-D’-A1-Fc (レーン4)及びpro-D’-A3-Fc(レーン5)タンパク質は1.6%ゲルに流して、ラダーサイズの差を可視化した。ブラケットは、レーン1のvWFダイマートリプレットの位置と、レーン2の対応する位置を示す。予想通り、プロ-vWF-Fcポリペプチド鎖のサイズの増大が、pro-D’-D3-Fc < pro-D’-A1-Fc < pro-D’-A3-Fcの順位で、マルチマーのバンドの分子量の増大をもたらした。
【0029】
【図10】図10は、pro-D’A3-Fc/FVIII複合体を含有する上澄からのFVIIIの精製を示す。(A)異なる緩衝液の条件の過程で溶出されたピークのクロマトグラフィートレースを示す。(B)(A)で示されたカラムトレースから得た試料を7.5%PAGEで電気泳動してクーマシー染色することにより、レーン4における、pro- D’A3-Fc/FVIII複合体からのFVIIIの特異的な溶出が示される。レーン1〜9は、それぞれ、レーン1:出発材料、レーン2:フロースルー、レーン3:0.1M CaCl2溶出物、レーン4:0.3M CaCl2溶出物、レーン5:pH5.5クエン酸溶出物、レーン6:濃縮BDD-FVIII調製物、レーン7:分子量マーカー(サイズは右側に記載)、レーン8:pro-D’-A3-Fcを発現するPER.C6細胞の上澄、レーン9:市販のBDD-FVIII (Xyntha(登録商標))を表す。アスタリスクは、それぞれ170、90及び80kdを表し、それぞれ全長BDD-FVIII、重鎖及び軽鎖に対応する。
【0030】
【図11】図11は、市販の組換えB-ドメイン除去FVIII(Xyntha)を含有する上澄から、当該上澄中に含有されるpro-D’D3-Fcタンパク質を用いてFVIIIを精製することを示す。様々な緩衝剤組成物を用いてゲルから溶出を行った後、フラクションを、7%NuPAGE還元/変性ポリアクリルアミドゲルで分析し、クーマシーブリリアントブルーで染色した。レーン7は、タンパク質Aに結合したpro-D’-D3-Fc/FVIII複合体からの溶出により回収された本質的に純粋なFVIIIを示す。レーン1〜9は、それぞれ、レーン1:分子量ポリペプチドマーカー(分子量は左側に記載)、レーン2:pro-D’-D3-Fc細胞上澄、レーン3:市販のB-ドメイン除去FVIII(Xyntha(登録商標))、レーン4:pro-D’-D3上澄と混合したXyntha(登録商標)、レーン5:タンパク質Aカラムにロードした上澄(pro-D’D3-Fc+Xyntha(登録商標))、レーン6:20mM Tris-HCl、pH7.0による洗浄のフロースルー、レーン7:0.3M CaCl2溶出物、及びレーン8:更なるタンパク質A-結合タンパク質をカラムから剥がし取るように作用するpH3.9グリシン洗浄を示す。レーン3中の3つのアスタリスクは、それぞれ170、90及び80kdを表し、それぞれ全長BDD-FVIII、重鎖及び軽鎖に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
一つの態様において本発明は、vWFポリペプチド中に存在する第一のアミノ酸配列及び当該第一のアミノ酸配列と異種(heterologous)の第二のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供し、ここで当該ポリペプチドは、FVIIIと結合出来る。
【0032】
本明細書中で使用されるとき、「結合出来る」という用語は、FVIIIと結合するポリペプチドの性質が、より高次のタンパク質集合、及び/又は1つ以上の翻訳後修飾、例えばシグナルペプチド切断、プロペプチド切断、プロペプチド協調(association)、リン酸化、グリコシル化等により達成される態様を想定する。例えば、幾つかの態様において、ポリペプチドは、ポリペプチドのマルチマー化の後で形成される、ダイマー、トリマー、テトラマー、又はより高次のマルチマー複合体として、FVIIIと「結合出来る」。又は、例えば、他の態様において、前記ポリペプチドは、プロペプチドと当該ポリペプチドとが協調して、ポリペプチドがマルチマーかした後、FVIIIと「結合出来る」。「マルチマー化」及び「オリゴマー化」は、本明細書中で区別無くしようされ、共有結合(例えば分子間ジスルフィド結合)及び/又は非共有相互作用等により仲介される、2つ以上のタンパク質分子の協調を意味する。従って、「マルチマー」および「オリゴマー」も、本明細書中では区別されない。
【0033】
ヒト及び非ヒト(例えば霊長類、イヌ、ネコ、馬、ブタ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ウシ、他の脊椎動物)起源のvWF及びFVIIIポリペプチドは、本発明において想定され、天然、合成、及び組換えタンパク質を含む。また、野生型、又は突然変異、バリアント、及び/又はその短縮物(truncation)に対応する、VWF及びFVIIIポリペプチドも、本発明の範囲内である。例えば、幾つかの態様において、第一のアミノ酸配列はヒト起源のvWFポリペプチドの断片に対応し、これと異種の第二のアミノ酸配列は、ヒト又はそれ以外のいずれのvWFタンパク質中にも存在しない配列を含み、又はそれからなる。FVIII及び/又はvWFは元来の(native)タンパク質、及びその誘導体、例えば欠失、置換若しくは挿入により突然変異したタンパク質、又は化学的な誘導体、又はそれらの断片を含む。
【0034】
第一のアミノ酸配列
一つの態様において、第一のアミノ酸配列は、FVIII結合ドメインを有するvWFポリペプチドの領域と特異的に結合出来るモノクローナル抗vWF抗体と反応する構造又はドメインを規定する。一つの態様において、前記モノクローナル抗体は、例えばFoster et al., JBC, 262:8443 (1987)及びFulcher et al., J. Clin. Invest., 76:117 (1985)に記載のモノクローナル抗体C3である。これらの文献はモノクローナル抗体C3、及びモノクローナル抗体、特にモノクローナル抗体C3の調製の教示のために、本明細書中に参照により援用される。
【0035】
vWFアミノ酸配列及びvWFをコードする核酸配列又はそれらの部分は、例えば、GenBank Accession Nos.: NP_000543, NM_000552, AAE20723, AAB59512, P04275, EAW88815, ACP57027, EAW88816,及びAAD04919; U.S Patent No. 5,260,274; Titani et al., Biochemistry, 25:3171-84 (1986);並びにSadler et al., PNAS, 82:6391-6398 (1985)により開示されている。これらは、vWFに対応するアミノ酸及び核酸配列の教示のために、本明細書中に参照により援用される。
【0036】
当業者は、原型的なpreprop-vWFが、22アミノ酸からなるシグナルペプチド及び反復機能ドメインA、B、C、D及びCKを有する2813アミノ酸のポリペプチドであり、アミノ酸末端から、「D1」、「D2」、「D’」、「D3」、「A1」、「A2」、「A3」、「D4」、「B1」、「B2」、「B3」(B1〜3はまとめて「B」とされる)、「C1」、「C2」、「CKの順番で分布する。「成熟」vWFサブユニットは、N末端からC末端にかけて、以下の順番でドメインを有する。D’-D3-A1-A2-A3-D4-B1-B2-B3-C1-C2-CK
【0037】
例示的な全長ヒトvWFのアミノ酸配列は、配列番号:29に記載されており、当該配列は、配列番号:30のヌクレオチド251〜8689にコードされている。配列番号:29において、「シグナルペプチド」部分は、アミノ酸の1〜Cys22にわたり、「プロペプチド」部分(D1-D2)は、アミノ酸の23〜Arg763にわたり、そして「成熟」vWFタンパク質は、アミノ酸の764〜2813にわたる。個々のドメインもおよそ以下のように位置が示される。D’: 764 - 865; D3: 866 - 1242; A1: 1260 - 1479; A2: 1480 - 1672; A3: 1673 - 1874; D4: 1947 - 2298; B: 2296 - 2399; C1: 2400 - 2516; C2: 2544 - 2663;そしてCK: 2720 - 2813。他のvWFドメインの配置及び命名系は、EXPASY Protein Database convention (worldwideweb.uniprot.org/uniprot/P04275)により使用され、D1: 34 - 240; D2: 387 - 598; D’: 776 - 827; D3: 866 - 1074; A1: 1277 - 1453; A2: 1498 - 1665; A3: 1691 - 1871; D4: 1949 - 2153; B: 2255 - 2328 (EXPASYではC1と命名される); C1: 2429 - 2495 (EXPASYではC2と命名される); C2: 2580 - 2645 (EXPASYではC3と命名される);及びCK: 2724 - 2812。
【0038】
FVIIIアミノ酸及び核酸配列の非限定的な例として、例えば、GenBank Accession nos. 1012296A AAA52420.1, CAA25619.1, AAA52484.1, 1012298A, EAW72647.1, EAW72646.1, XP_001498954.1, ACK44290.1, ACO95359.1, NP_001138980.1, ABZ10503.1, NP_032003.2, U.S. Patent No. 6,307,032,及びWood et al., Nature, 312:330-7 (1984)により開示されるものが挙げられる。それぞれのFVIII配列の教示のために、本明細書中に参照により援用される。また、FVIIIのバリアント、誘導体、修飾体(modification)及び複合体も当該技術分野で公知であり、それらは本明細書中に包含される。例えば、U.S. Pat. No. 5,668,108に記載される因子VIIIのバリアントは、1241位のアスパラギン酸がグルタミン酸に置換され、対応する核酸配列も同様に置換されている。U.S. Pat. No. 5,149,637に記載のFVIIIバリアントは、C末端が部分的にグリコシル化され、又はグリコシル化されていないものを含む。そしてU.S. Pat. No. 5,661,008に記載のFVIIIバリアントは、アミノ酸1649〜2332とアミノ酸1〜740が少なくとも3つのアミノ酸残基により連結している。それぞれは、FVIIIバリアントの配列の教示のために、本明細書中に参照により援用される。
【0039】
一つの態様において、前記FVIIIは、血漿又は血清由来のFVIIIである。他の態様において、前記FVIIIは組換えFVIIIであり、例えば、組換えDNAクローン由来の培養哺乳類細胞で発現された活性ヒトFVIIIである。因子VIIIを生産するための発現系は当該技術分野で公知であり、真核細胞及び原核細胞を含み、例えばU.S. Pat. Nos. 5,633,150, 5,804,420,及び5,422,250に記載される。これらの文献は、FVIIIの生産の教示のために、本明細書中に参照により援用される。
【0040】
当業者は、FVIIIと結合するポリペプチドの性質が、様々な方法で判定され得ることを理解する。具体的には、本発明のポリペプチドは、本明細書中に記載の技術、及び/又は当該技術分野で公知の技術を適用して、FVIIIと結合する性質について試験され得る。例えば、結合を分析/判定するために、免疫アッセイを採用でき、限定されないが、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素連結免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素(precipitin)反応、ゲル分散沈降素反応、免疫分散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量測定アッセイ、蛍光イムノアッセイ等の技術を使用した、競合的、及び非競合的アッセイが用いられ得る(例えば、Ausubel et al., eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照されたい。当該文献は、そお全体が本明細書中に参照により援用される。)。
【0041】
例えば、前記第一及び第二のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、TBS等の適切な緩衝液中、セファロースと会合するモノクローナル抗体の存在下、FVIIIと接触し得る。当該抗体は、当該抗体とポリペプチドの結合がFVIIIに干渉しないように、当該ポリペプチドの特定の領域を指向出来る。例えば、前記抗体は、第二のアミノ酸配列、又はそのような配列も当該ポリペプチド上に存在する場合、vWFのA1又はA2又はA3反復領域を指向する。接触の後、ポリペプチド/抗体と結合したFVIII及び結合しなかったFVIIIは、例えば遠心分離により区別され、そしてFVIIIは、例えば発色基質アッセイを使用して測定出来る(Factor VIII Coatest; Chromogenix, Molndal, Sweden)。
【0042】
好ましい態様において、本発明のポリペプチドの第一のアミノ酸配列は、短縮vWFポリペプチドである。例えば、幾つかの態様において、vWFの短縮形態として、(i)プロペプチド配列を欠いた短縮vWFポリペプチド、及び(ii)成熟配列の「A1」「A2」「A3」「D4」「B」(「B1」「B2」及び「B3」とも書く)「C1」「C2」及び/又は「CK」ドメインを欠いた短縮vWFポリペプチドが挙げられる。vWFの他の短縮又は他の修飾形態も想定される。
【0043】
一つの態様において、前記第一のアミノ酸配列は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:33、配列番号:34、又は配列番号:35に記載されたものである。
【0044】
I. 第二のアミノ酸配列
他の態様において、前記ポリペプチドの第二のアミノ酸配列は、結合パートナーに対する親和性を有する構造又はドメインを提供する。
【0045】
前記第二のアミノ酸配列は、第一のアミノ酸配列と異種である。一つの態様において、前記異種の第二のアミノ酸配列は、いずれのvWFタンパク質中にも存在しない配列を含み又はそれからなる。一つの態様において、前記異種の第二のアミノ酸配列の少なくとも一部(例えば接触部分(contiguous portion))は、いずれのvWFポリペプチド中にも存在しない配列に対応する。
【0046】
好ましくは、幾つかの態様において、前記第二のアミノ酸配列は、例えばヒトIgG1Fc領域等の抗体Fcポリペプチドに対応する。例えば、前記第二のアミノ酸配列は、N末端ヒンジ領域からC末端に向かって伸びるアミノ酸残基に対応し、寸話血、本質的に全長の抗体Fc領域である。Fc領域の断片、例えば、C末端で短縮されたものも採用され得る。幾つかの態様において、前記断片は、好ましくは、1つ以上のシステイン残基を有している(1つはヒンジ領域に存在するシステイン残基)ことにより、本発明の2つの別個のポリペプチドのFcポリペプチド部分の間でジスルフィドを形成して、ダイマーを形成する。
【0047】
他の抗体Fc領域が、ヒトIgG1Fc領域に代えられる場合もある。例えば、他の適切なFc領域は、タンパク質A若しくはタンパク質G又は他の類似のFc結合マトリックスに対する親和性により結合するものであり、マウスIgG, IgA, IgE, IgD, IgM、又はヒトのIgG IgA, IgE, IgD, IgM Fc領域の断片、例えば鎖間ジスルフィド結合が形成されるように少なくともヒンジ領域を含む断片である。
【0048】
IgG1 Fc領域は、例えばGenBank Accession no. X70421に開示されており、これは、その全体が本明細書中に参照により援用される。
【0049】
一つの態様において、前記第二のアミノ酸配列は、配列番号:16に記載の配列を有する。
【0050】
幾つかの態様において、前記第二のアミノ酸配列は、好ましくは、第一のアミノ酸配列に対してC末端側にある。他のアミノ酸配列の様々な部分と融合した異種アミノ酸配列を有する融合ポリペプチドの調製は、Ashkenazi et al., PNAS, 88:10535 (1991)及びByrn et al., Nature 344:677 (1990)等に記載されている。これらの文献は、それぞれ、その全体が本明細書中に参照により援用される。例えば、第一及び第二のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする遺伝子融合物は、適切な発現ベクター内に挿入される。発現される融合タンパク質は、集合して、ポリペプチド間で鎖間ジスルフィド結合が形成されて、ダイマーが得られる。他の態様において、本発明の融合ポリマーは、スペーサーアミノ酸連結基の存否にかかわらず発現される。例えば、幾つかの態様において、本発明のポリペプチドは、更に、第一と第二のアミノ酸配列の間にリンカーを有し、当該リンカーは、第一と第二の配列を区分する1つ以上のアミノ酸残基を有する。
【0051】
他の態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:36、配列番号:38、又は配列番号:39に記載のアミノ酸配列を有する。
【0052】
一つの態様において、前記ポリペプチドは、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:37、配列番号:42、又は配列番号:43に記載のヌクレオチド配列を有する核酸分子によりコードされる。
【0053】
また、本明細書中に記載の配列のバリアントも、本発明の範囲内にある。ポリペプチドのバリアントは、1つ以上のアミノ酸により変更したアミノ酸配列を意味してもよい。当該バリアントは、「保存的な」変化を有することができ、ここで、置換されたアミノ酸は、類似の構造的又は化学的性質を有しており、例えば、ロイシンがイソロイシンに置換される。あるいは、バリアントは、「非保存的な」変化を有することもでき、例えば、グリシンがトリプトファンに置換される。類似の僅かな変化も、アミノ酸の欠失もしくは挿入、又はその両方を含み得る。「バリアント」ポリペプチドの特定の形態は、「機能的に同等の」ポリペプチドであり、即ち、本発明のポリペプチドの例と実質的に類似のインビトロ若しくはインビボの活性及び/又は結合を呈するポリペプチドである。生物学的又は免疫学的活性を損なわずにいずれのアミノ酸残基を置換、挿入又は欠失できるかの決定の手掛かりは、当該技術分野で周知のコンピュータープログラムを使用して見出され、例えばDNASTAR software (DNASTAR, Inc., Madison, WI)が挙げられる。更に、特定の手掛かりが以下に提供され、本明細書中に参照により援用される引用文献中に提供されるものを含む。
【0054】
他の態様において、指名された残基の具体的な位置は幾らか変動するが、それらはなおも構造的及び機能的に類似の位置にあるポリペプチド中に存在している(Chang, Y., et al., Biochemistry 37:3258-3271 (1998))。
【0055】
更に、本発明の特定の態様は、vWFポリペプチド又はその断片と、FVIII結合性能の点で機能的に関連があることを特徴とすることが出来る。幾つかの態様において、本発明のポリペプチドは、FVIIIタンパク質(例えば野生型内在性FVIII)と結合できる、vWFタンパク質(例えば野生型内在性vWF)又はその断片の結合性能よりも低い、同等の、又は高い、FVIIIに対する結合性能を呈する。
【0056】
故に、本発明は、本明細書中に開示されるポリペプチドのそのようなバリエーションを含む。そのようなバリアントとして、欠失、挿入、転位、反復、及び置換が挙げられる。いずれのアミノ酸の変更が形質的に静か(phenotypically silent)であるかに関する更なる手掛かりは、Bowie, J. U., et al., “Deciphering the Message in Protein Sequences: Tolerance to Amino Acid Substitutions,” Science 247:1306-1310 (1990)中に見出される。
【0057】
故に、本発明のポリペプチドの断片、誘導体又は類似体は、本発明のポリペプチドと比較したとき、(i)保存的又は非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)で置換された1つ以上のアミノ酸残基(例えば1、3、5、8、10、15又は20残基)を有する配列を有する断片、誘導体又は類似体を含む。そのような置換されたアミノ酸残基は、遺伝子コードによりコードされてもいなくてもよく;又は(ii)1つ以上のアミノ酸残基(例えば1、3、5、8、10、15又は20残基)は、置換基を含む。他の態様において、本発明のポリペプチドの断片、誘導体又は類似体は、ポリペプチドの半減期を増大させる化合物等の他の化合物(例えばポリエチレングリコール)と会合した、又はポリペプチドと融合する追加のアミノ酸を有する、本発明のポリペプチドを含む。そのような断片、誘導体及び類似体は、本明細書中の教示に基づき、当業者が想到可能な範囲内と認められる。
【0058】
示唆されているように、好ましくは変更は、フォールディング又はFVIII結合性能に顕著に影響しない保存的なアミノ酸の置換等の、僅かな程度のものである。当然に、アミノ酸置換の数は、上記のような多くの要因に依存する。幾つかの態様において、いずれかのポリペプチドにおける置換の数は、50、40、30、25、20、15、10、5、3、2、又は1個を越えない。
【0059】
FVIIIに結合するのに必須のアミノ酸残基(本発明のポリペプチドの)は、部位指向突然変異誘発又はアラニン走査突然変異誘発(alanine-scanning mutagenesis)(Cunningham and Wells, Science 244:1081-1085 (1989))等の当該技術分野で公知の方法により同定出来る。後者の手順は、当該分子の全ての残基に単一のアラニン突然変異を誘導するものである。得られた突然変異分子のFVIII結合を、本明細書中に記載のように試験する。FVIIIへの結合に重要な部位は、結晶化、核磁気共鳴法又は光親和性ラベリング(Smith, et al., J. Mol. Biol. 224:399-904 (1992) and de Vos, et al. Science 255:306-312 (1992))等の構造解析によっても判定できる。
【0060】
一つの態様において、前記組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、本明細書中に記載のアミノ酸配列のいずれかと、70%、80%、90%、95%、98%以上の同一性を有する。
【0061】
他の態様において、前記第一のアミノ酸配列は、配列番号:29に記載のアミノ酸配列を有するvWFポリペプチド、又はそのバリアント若しくは断片中に存在する。
【0062】
他の態様において、前記第一のアミノ酸配列は、配列番号:30に記載の核酸配列にコードされるvWFポリペプチド、又はそのバリアント若しくは断片中に存在する。
【0063】
他の側面において、本発明は、組換えvWF-Fc融合タンパク質を提供し、ここで当該融合タンパク質のvWF部分が成熟全長vWFポリペプチドの1つ以上のドメインを欠いた短縮vWFであり、当該融合タンパク質は、FVIIIタンパク質に結合できるマルチマーを形成出来る。一つの態様において、当該短縮vWFはD'及びD3ドメインを有し、但し、当該短縮vWFは、ドメインA1、A2、A3、D4、B1、B2、B3、C1、C2、CK、又はこれらの組合せを欠く。他の態様において、当該短縮vWFはD'、D3及びA1ドメインを有し、但し、当該短縮vWFは、ドメインA2、A3、D4、B1、B2、B3、C1、C2、及びCKを欠く。幾つかの態様において、当該短縮vWFはD'、D3、A1及びA2ドメインを有し、但し、当該短縮vWFは、ドメインA3、D4、B1、B2、B3、C1、C2、及びCKを欠く。他の態様において、当該短縮vWFはD'、D3、A1、A2及びA3ドメインを有し、但し、当該短縮vWFは、ドメインD4、B1、B2、B3、C1、C2、及びCKを欠く。なおも更なる態様において、当該短縮vWFは、ドメインD4、B1、B2、B3、C1、C2、及びCKを欠く。
【0064】
III. 核酸、ベクター及び発現系
他の側面において、本発明は、前記第一及び第二のアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現する組換え発現ベクター及び当該発現ベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。任意の適切な発現系が採用されてもよい。前記ベクターは、前記第一及び第二のアミノ酸配列をそれぞれコードする第一及び第二のDNA配列を有し、それらが、哺乳類、微生物、ウイルス又は昆虫遺伝子等に由来する適切な転写又は翻訳制御配列と操作可能に連結する。制御配列の例として、転写プロモーター、オペレーター、又はエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、及び転写並びに翻訳の開始及び終結をコントロールする適切な配列が挙げられる。コードしているDNA配列とヌクレオチド配列が機能的に関連するとき、ヌクレオチド配列は、操作可能に連結している。故に、プロモーターヌクレオチド配列は、そのプロモーターヌクレオチド配列がコードされたDNA配列の転写をコントロールするとき、操作可能に連結しているといえる。所望の宿主細胞中で複製する能力は、通常複製起点によりもたらされ、そして形質転換体を同定するための選択遺伝子は、発現ベクター内に追加的に含まれ得る。
【0065】
なおも更なる態様において、前記第一のアミノ酸配列が起源であってもなくてもよい適切なシグナルペプチドをコードするDNA配列が、発現ベクター中に含まれ得る。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNA配列は、発現したポリペプチドがシグナルペプチドを有する融合タンパク質として最初に翻訳されるように、第一の配列に対してインフレームで提供され得る。所望の宿主細胞中で機能を発揮するシグナルペプチドは、第一及び第二のアミノ酸配列を有するポリペプチドの細胞外分泌を促進する。幾つかの態様において、当該シグナルペプチドは、細胞からのポリペプチドの分泌後、当該ポリペプチドから切り離される。他の態様において、第一のアミノ酸配列を起源としない適切なシグナルペプチドは、元のシグナル配列の代わりに、又は加えて提供され得る。
【0066】
幾つかの対応において、前記シグナルペプチドは、配列番号:40として示されるアミノ酸配列を有する。
【0067】
本発明のポリペプチドを発現するのに適した宿主細胞として原核生物、酵母、菌糸類、又は高等真核細胞が挙げられる。細菌、真菌、酵母及び哺乳類細胞宿主に使用するのに適したクローニング及び発現ベクターは、例えば、Pouwels et al. Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, New York, (1985)に記載されている。DNAコンストラクト由来のRNAを使用した無細胞翻訳系も本発明のポリペプチドを生産するのに採用出来る。
【0068】
原核細胞として、グラム陰性又はグラム陽性生物、例えばE. coliが挙げられる。形質転換に適切な原核宿主細胞として、E. coli、バチルス・スブチルス(Bacillus subtilis)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)等、及びシュードモナス(, Streptomyces)、及びストレプトコッカス(Staphylococcus)属に含まれる他の種が挙げられる。
【0069】
原核宿主細胞に使用される発現ベクターは、一般に、1つ以上の形質選択マーカー遺伝子を有する。形質選択マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質耐性をもたらし、又は独立栄養要求性(autotrophic requirement)を供給するタンパク質をコードする遺伝子である。細菌における使用に適したベクターとして、例えば、Novagen, Madison, WI で入手可能なpET24b及びpET22b(pET-24b(+)及びpET-22b(+) = pET Expression System 24b (Cat. No. 69750)、そして22b (Cat. No. 70765)、EMD Biosciences, Inc., Novagen Brand, Madison, WI; pET24b及びpET22bベクターに関して詳細はhttp://worldwideweb.emdbiosciences.comのproduct informationの項を参照されたい)、Qiagen Inc., Valencia, CA で入手可能なpQE70、pQE60及びpQE-9; Stratagene, LaJolla, CA で入手可能なpBS ベクター、PHAGESCRIPTベクター、BLUESCRIPTベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A;並びにPharmacia (現Pfizer, Inc., New York, NY)で入手可能なptrc99a, pKK223-3, pKK233-3, pDR540, pRIT5が挙げられる。とりわけ好ましいベクターは、Stratagene で入手可能なpWLNEO, pSV2CAT, pOG44, pXT1及びpSG ;並びにPharmacia で入手可能なpSVK3, pBPV, pMSG and pSVLである。他の適切なベクターは、当業者にとって明白である。
【0070】
本発明における使用に適した細菌プロモーターとして、E. coli lac Zプロモーター、T3及びT7プロモーター、gptプロモーター、ラムダPR及びPLプロモーター、及びtrpプロモーターが挙げられる。適切な真核細胞プロモーターとして、CMV前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、早期及び後期SV40プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)等レトロウイルスLTRのプロモーター、及びマウスメタロチオネイン-Iプロモーター等のメタロチオネインプロモーター等が挙げられる。例えば、組換え原核宿主細胞発現ベクターに使用されるプロモーター配列として、限定されないが、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びtacプロモーター(Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1982)が挙げられる。特に有用な原核ホスト細胞発現系は、ファージλPLプロモーター及びcI85ts熱不安定性リプレッサー配列を採用する。λPLプロモーターの誘導体を含むAmerican Type Culture Collectionから入手可能なプラスミドベクターとして、プラスミドpHUB2 (E. coli株 JMB9 (ATCC 37092)中に存在する)及びpPLc28 (E. coli RR1 (ATCC 53082)中に存在する)が挙げられる。
【0071】
本発明のポリペプチドは、酵母宿主細胞、好ましくはサッカロマイケス(Saccharomyces)属、例えばS. セレウィシアエ(S. cerevisiae)にも発現し得る。他の酵母の属、例えばピキア(Pichia)又はクルイウェロマイケス(Kluyveromyces)も採用され得る。酵母ベクターは、しばしば、2μ酵母プラスミド由来の複製配列の起点、自己複製配列(ARS)、プロモーター配列、ポリデニル化配列、転写終結配列、及び選択的マーカー遺伝子を含む。酵母ベクターとして適切なプロモーター配列として、特に、メタロチオネイン、3-ホスホグリセレートキナーゼ又は他の糖分解酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホルホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ及びグルコキナーゼ等が挙げられる。酵母での発現における使用における他の適切なベクター及びプロモーターとして、グルコース抑制ADH2プロモーターが挙げられる。酵母及びE. coliの両方で複製できるシャトルベクターは、E. coliでの選択及び複製用のpBR322からのDNA配列(Ampr遺伝子および複製起点)を酵母ベクターに挿入することによりコンストラクトされ得る。
【0072】
幾つかの態様において酵母α因子リーダー配列は、ポリペプチドの分泌を指向するために採用され得る。当該α因子リーダー配列は、プロモーター配列及び構造的遺伝子配列の間に挿入され得る。酵母宿主からの組換えポリペプチドの分泌を促進するのに適した他のリーダー配列は、当業者に知られている。リーダー配列は、3’末端付近が、1つ以上の制限酵素部位を含むように改変されてもよい。これは、リーダー配列と構造的遺伝子との融合を促進し得る。
【0073】
酵母の形質転換のプロトコルは、当業者に知られている。そのようなプロトコルの一つは、Hinnen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:1929, 1978に記載されている。当該Hinnenらのプロトコルは、選択培地中でTrp+形質転換体を選択するもので、ここで選択培地は、0.67%酵母窒素ベース、0.5%カザミノ酸、2%グルコース、10μg/mlアデニン及び20μg/mlウラシルからなる。ADH2プロモーター配列を有するベクターにより形質転換した酵母宿主細胞は、リッチな培地中で発現を誘導するように培養されてもよい。リッチな培地の例として、1%酵母抽出物、2%ペプトン、及び1%グルコースに80 μg/mlのアデニン及び80 μg/mlのウラシルを添加したものが挙げられる。グルコースが培地から枯渇したとき、ADH2プロモーターの抑制解除が起こる。
【0074】
哺乳類又は昆虫宿主細胞培養系も、組換えポリペプチドの発現に採用することが出来る。昆虫細胞における異種タンパク質の生産のためのバキュロウイルス系は、Luckow et al., Bio/Technology 6:47 (1988)に概説されている。哺乳類起源の樹立された細胞株も採用され得る。適切な哺乳類宿主細胞株の例として、猿腎臓細胞株COS-7(ATCC CRL 1651)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞及びBHK(ATCC CRL 10)細胞株、及びMcMahan et al., EMBO J. 10:2821 (1991)に記載のミドリザル腎臓細胞株CVI(ATCC CCL 70)由来のCV-1/EBNA-1細胞株が挙げられる。
【0075】
他の適切な細胞株として、限定されないが、HeLa細胞、幼ハムスター腎臓(BHK)細胞、猿腎臓細胞(COS-1)、ヒト肝臓癌細胞(例えばHep G2)、ヒトアデノウイルス形質転換293細胞、マウスL-929細胞、HaKハムスター細胞株、Swiss, Balb-c又はNIHマウス由来のマウス3T3細胞、及び他の様々な細胞株が挙げられる。他の適切な哺乳類細胞株は、CV-1細胞株である。正常な脂肪系細胞、一次組織のインビトロ培養により得た細胞系、あるいは摘出したばかりの細胞も適切である。候補細胞は選択遺伝子において遺伝子的に障害があってもよく、又は優勢に働く選択遺伝子を有してもよい。
【0076】
幾つかの態様において、培養宿主細胞へのベクターコンストラクトの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質-媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、感染又は他の方法により達成できる。そのような方法は、Davis et al., Basic Methods In Molecular Biology, 2nd Edition (1995)等の多くの標準的なラボラトリーマニュアルに記載されている。
【0077】
例えば、前記宿主細胞は、当該技術分野で公知の方法等により本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むDNAを担持する1つ以上のベクターにより形質転換され、そして必要に応じて、適切な条件下で培養され、その間に、導入された遺伝子の1つ又は両方が増幅され得る。そして発現したポリペプチドは、当該技術分野で公知の方法により、培養培地から(細胞内で発現する場合等は細胞から)回収及び精製される。幾つかの態様において、発現下ポリペプチドは、FVIIIの有無に拘らず、2つの別個のポリペプチドの間の1つ以上の鎖間ジスルフィド結合により、例えばホモダイマー等のタンパク質複合体として調製され得る。
【0078】
哺乳類宿主細胞の発現ベクターの転写及び翻訳調整配列は、ウイルスゲノム由来であってもよい。通常使用されるプロモーター配列及びエンハンサー配列は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)及びサイトメガロウイルス(CMV)由来である。SV40ウイルスゲノム由来のDNA配列として、例えば、SV40基点、早期又は後期プロモーター、エンハンサー、スプライシング及びポリアデニル化部位が、哺乳類宿主細胞における構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝子要素を提供するのに使用され得る。ウイルス早期及び後期プロモーターは、特に有用である。ウイルスの複製起点も含み得る断片としてウイルスゲノムから容易に取得され得るからである。
【0079】
哺乳類細胞の複製に適したベクターとして、ウイルスレプリコン、又は宿主ゲノム内にポリペプチドをコードする配列を挿入させる配列が挙げられる。適切なベクターとして、例えば、シミアンウイルスSV40、レトロウイルス、ウシパピローマウイルス、ワクシニアウイルス及びアデノウイルス由来のものが挙げられる。レプリコン、選択遺伝子、エンハンサー、プロモーター等のベクターの成分は、公知の手順により天然の供給源から、又は合成により取得できる。
【0080】
適切なベクターは、例えば、ワクシニアウイルス由来であってもよい。この場合、前記異種DNAは、ワクシニアゲノム内に挿入される。ワクシニアウイルス内に外来DNAを挿入する技術は当該技術分野で公知であり、例えば相同組換えが挙げられる。異種DNAの挿入は、チミジンキナーゼ遺伝子(tk)等の本質的に必須ではない遺伝子内にされ、この場合は、選択マーカーも提供することになる。
【0081】
故に、哺乳類発現ベクターは、哺乳類細胞内で発現できる1つ以上の真核細胞転写単位を有し得る。例えば、当該転写単位は、外来DNA配列の転写を仲介するための1つ以上のプロモーター要素を含み得る。幾つかの態様において、哺乳類細胞用のプロモーターとして、SV40、CMV、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、アデノウイルス(ADV)、及びウシパピローマウイルス(BPV)等に由来するウイルスプロモーターが挙げられる。
【0082】
前記転写単位は、前記ポリペプチドをコードする配列と操作可能に連結した、終結配列及びポリ(A)追加配列も含み得る。また、前記転写単位は、発現を増大させるエンハンサー配列も含み得る。
【0083】
任意で、前記遺伝子の増幅を可能とする配列や、選択マーカーをコードする配列も含まれる。哺乳類細胞の選択マーカーは当該技術分野で公知であり、例えば、チミジンキナーゼ、ジヒドロフォレートリダクターゼ(DHFRを増幅するメトトレキサートと共に)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、アスパラギンシンターゼ、アデノシンデアミナーゼ、メタロチオニエン、及び抗生物質耐性遺伝子、例えばネオマイシン等が挙げられる。あるいは、当該ベクターDNAは、例えば、ウシパピローマウイスルゲノムの全て又は一部を有し、安定なエピソーム要素としてC127マウス細胞等の細胞株中に担持される。
【0084】
哺乳類細胞に使用される発現ベクターおよび系の非限定的な例として、例えばOkayama et al., Mol. Cell. Biol. 3:280 (1983), Cosman et al., Mol. Immunol. 23:935 (1986) (system for stable high level expression of DNAs in C127 murine mammary epithelial cells), Cosman et al., Nature 312:768 (1984) (expression vector PMLSV N1/N4; ATCC 39890), EP-A-0367566,及びU.S. Pat. No. 5,350,683に記載されるようにして構築され、これらは発現ベクター及び/又は系の教示のために、本明細書中に参照により援用される。ベクターは、レトロウイルス由来であってもよい。幾つかの態様において、元のシグナル配列の場所に、異種シグナル配列が含まれ、シグナル配列として、例えば、U.S. Pat,. No. 4,965,195等に記載のインターロイキン7(IL-7)のシグナル配列;Cosman et al., Nature 312:768 (1984)等に記載のインターロイキン2受容体のシグナル配列;EP 367,566等に記載のインターロイキン4シグナルペプチド;U.S. Pat. No. 4,968,607等に記載のI型インターロイキン1受容体シグナルペプチド;及びEP 460,846等に記載のII型インターロイキン1受容体シグナルペプチドが挙げられる。各文献は、シグナル配列の教示のために、本明細書中に参照により援用される。
【0085】
一つの態様において、前記組換えポリペプチドは、PER.C6(登録商標)技術(Crucell, Holland, The Netherlands)を使用して調製出来る。組換えタンパク質の発現は、例えばU.S. Patent No. 6,855,544に記載され、当該文献は、ヒト細胞株における組換えタンパク質の生産のための方法および組成物の教示のために、本明細書中に参照により援用される。
【0086】
本発明のポリペプチドは、固相合成手段により調製出来ることも想定される。Houghten, R. A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:5131-5135 (1985);及びU.S. Pat. No. 4,631,211 to Houghten et al. (1986)を参照されたい。
【0087】
他の態様において、本発明は、前記第一及び第二のアミノ酸配列を含む組換えポリペプチドも包含し、ここで当該ポリペプチドは、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解による切断、抗体分子又は他の細胞リガンドとの結合等により、転写の過程で、又は後に特異的に修飾される。任意の様々な化学的修飾が、公知の技術により実行されてもよく、例えば、限定されないが、シアノゲンブロマイド、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、S. aureus V8プロテアーゼ、NaBH4による化学的切断;アセチル化、脱アミド化、ホルミル化、メチル化、酸化、還元;ツニカマイシンの存在下での代謝合成;等が挙げられる。本発明に包含される更なる翻訳後修飾として、例えばN-結合又はO-結合炭水化物鎖、N-末端又はC-末端のプロセシング、アミノ酸骨格への化学部分の結合、N-結合又はO-結合炭水化物鎖の化学修飾、及び例えば原核培養宿主細胞中の発現のためにされる、前記組換えポリペプチドの発現に適合したベクター及びコンストラクトによるN-末端メチオニン残基の追加が挙げられる。
【0088】
幾つかの態様において、不溶性のポリペプチドが宿主細胞(例えば原核宿主細胞)から単離される場合に、当該宿主細胞は、殆どの宿主タンパク質を可溶化するために適切なイオン強度の緩衝液に晒されてもよいが、当該緩衝液の中で、関心のある凝集したポリペプチドは実質的に不溶であってもよく、封入体(inclusiton body)を放出させ、それらを例えば遠心分離により回収できるように、細胞が破壊されてもよい。この技術は当業者に公知であり、例えばU.S. Pat. No. 4,511,503には変法が記載されている。当該文献は、組換え宿主細胞培養系中に不溶性屈折(refractile)形態で生産される、異種タンパク質の可溶化方法の教示のために、本明細書中に参照により援用される。特定の理論に拘束されず、例えばE. coli中の組換えタンパク質の発現は、封入体と呼ばれる不溶性の凝集体中への組換えタンパク質の細胞内蓄積をもたらし得ると考えられる。封入体中への組換えタンパク質の蓄積は、当該封入体が高度に精製された組換えタンパク質を蓄積すること、及び封入体中に閉じ込められたタンパク質が細菌のプロテアーゼの作用から保護されることの両方が有利である。
【0089】
一般に、宿主細胞(例えばE. coli細胞)は、適切な量となるように培養され、適切な緩衝液の中で懸濁され、それが回収され、例えば機械的方法(例えば音波発振器)、又は化学的若しくは酵素的手段等の技術を使用した溶解により破壊される。細胞を破壊する化学的又は酵素的手段の例として、リソザイムを使用して細菌の細胞壁を溶解する工程を含むスフェロプラスティング、及び生きた細胞を高張溶液で処理し、そして低張の冷水で処理してポリペプチドを放出させる工程を含む、浸透圧ショックが挙げられる。
【0090】
宿主細胞の破壊に続いて、当該懸濁液を、典型的には遠心分離して、封入体をペレットにする。得られたペレットは実質的に全ての不溶性ポリペプチドフラクションを含有するが、細胞破壊プロセスが不完全な場合、全形の細胞や細胞の破片が混入することもある。細胞破壊の成否は、少量の同一の緩衝溶液でペレットを再懸濁し、位相差顕微鏡で当該懸濁物を検査することにより試験出来る。全形の細胞や細胞の破片の存在は、破片又は細胞、及び関連する非屈折ポリペプチドを除去するために追加の破壊が必要なことを示す。そのような更なる破壊の後、必要な場合、当該懸濁液は、再び遠心分離され、ペレットが回収され、再懸濁され、分析され得る。当該プロセスは、ペレット材料中に細胞の破片が存在しないことが視覚的に明らかになるまで、又は更なる処理が得られたペレットのサイズを減少できなくなるまで繰り返すことが出来る。可溶化された封入体から、又はその後の精製段階で一旦取得されたポリペプチドは、適切には、当該技術分野で周知のもの等の、適切な再フォールディング緩衝液中で再フォールディングされ得る。フォールディングしていないものの割合は、逆相高性能液体クロマトグラフィーを含むクロマトグラフィーにより決定できる。
【0091】
本発明の組換え発現ポリペプチドが再フォールディングの前に可溶性形態になっていない場合、それらは、カオトロピック剤(尿素、グアニジン等)及び還元剤(例えばグルタチオン、ジチオスレイトール(DTT)、システイン)をポリペプチドを実質的に可溶化するのに必要な量含有する可溶化緩衝液中でインキュベーションすることにより可溶化され得る。このインキュベーションは、ポリペプチドの可溶化が起こるポリペプチド濃度、インキュベーション時間及びインキュベーション温度の条件下で行われる。可溶化の割合の測定は、濁度判定により、還元SDSゲル上での遠心分離後の上澄とペレットの間のポリペプチドフラクションの分析により、タンパク質アッセイ(例えばBio-Radタンパク質アッセイキット)により、又は高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により実施され得る。
【0092】
可溶化緩衝液のpHはアルカリ性であってもよく、好ましくは約pH7.5以上、好ましい範囲は約pH7.5〜約pH11である。可溶化のための緩衝溶液中の本願ポリペプチドの濃度は、当該ポリペプチドが実質的に可溶化され、部分的に又は完全に還元され、変性するものでなければならない。あるいは、当該組換えポリペプチドは、当初は不溶性であってもよい。採用される正確な量は、例えば、緩衝溶液中の他の成分の濃度及び種類、特に還元剤の量及び種類、カオトロピック剤の量及び種類、並びに緩衝剤のpHに依存する。例えば、組換えポリペプチドの濃度は、還元剤、例えばグルタチオンの濃度の増大と同調して増大し得る。
【0093】
なおも更なる態様において、本発明は、第一及び第二のアミノ酸配列を有する均一な、又は実質的に均一なポリペプチドを提供する。一つの態様において、本発明は、vWFポリペプチド中に存在する第一のアミノ酸配列及び当該第一の配列と異種の第二のアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドを提供し、ここで、当該ポリペプチドは、FVIIIに結合できる。他の態様において、前記ポリペプチドは、実質的に均一となるように精製され、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で単一のタンパク質のバンドが生じる。
【0094】
当業者は、組換えタンパク質を精製する手順は、当該タンパク質が培養培地中に分泌されるか否かや、採用される宿主細胞の種類等の要因に従って変動し得ることを認識する。例えば、組換えタンパク質を分泌する発現系が採用される場合、当該培養培地は、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmiconやMillipore Pellicon超遠心ユニット等を使用して濃縮され得る。濃縮工程に続いて、当該濃縮物は、ゲル濾過媒体等の精製マトリックスにアプライされ得る。あるいは、ジエチルアミノエチル(DEAE)ペンダント基を有するマトリックス又は器質等、アニオン交換樹脂が採用されてもよい。当該マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース又は他のタンパク質精製に通常採用されるものである。あるいは、カチオン交換工程が採用されうる。適切なカチオン交換材料として、サルフォプロピル又はカルボキシメチル基を有する様々な不溶性のマトリックスが挙げられる。するフォプロピル基が好ましい。最後に、1つ以上の逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)工程を採用した疎水RP-HPLC媒体(例えばメチル又は他の脂肪族ペンダント基を有するシリカ)が、組換え発現したポリペプチドを更に精製するのに採用され得る。上記の一部又は全ての精製工程は、様々な組合せで、実質的に均一な組換えタンパク質の提供に採用され得る。
【0095】
幾つかの態様において、前記第二のアミノ酸配列により規定される構造又はドメインの結合パートナーを含有するアフィニティーカラムが、発現した組換えポリペプチド又はそれらを含有するタンパク質複合体をアフィニティー精製するのに採用される。例えば、前記第二のアミノ酸配列が抗体Fcポリペプチドに対応する場合、タンパク質A又はGを含有するアフィニティーカラムが、前記ポリペプチド又はそれらを含有するタンパク質複合体をアフィニティー精製するのに使用され得る。幾つかの態様において、結合したポリペプチド及び/又は複合体は、高塩濃度の溶出緩衝液によりアフィニティーカラムから溶出され、そして低塩濃度の緩衝剤中で透析される。他の例において、当該アフィニティーカラムは、前記ポリペプチド又はそれらを含有するタンパク質複合体に結合する抗体、例えば第一又は第二のアミノ酸配列により規定される構造又はドメインに対する抗体を含有し得る。
【0096】
他の側面において、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が提供され、ここで、当該ポリペプチドは、vWFポリペプチド中に存在する第一のアミノ酸配列及び当該第一の配列と異種の第二のアミノ酸配列を含み、ここで、当該ポリペプチドは、FVIIIと結合できる。一つの態様において、本発明は、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28, 37, 42,及び43に記載のヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を提供する。
【0097】
本発明のポリヌクレオチドは、1つ以上のヌクレオチドが関与し得る、置換、欠失及び/又は付加を有するバリアントを含む。当該バリアントは、コード領域、非コード領域又はそれらの両方が変化していてもよい。コード領域の変化は保存的又は非保存的アミノ酸置換、欠失又は付加をもたらすことができる。それらの中で特に好ましいのは、静かな置換、付加及び欠失であり、これらは、本発明のポリペプチドの性質及びFVIII結合能力を変化させない。
【0098】
本発明の更なる態様として、(a)本明細書中に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;及び(b)上記(a)のヌクレオチド配列のいずれかと相補的なヌクレオチド配列と、90%以上、より好ましくは95%, 96%, 97%, 98%又は99%以上の同一性を有するポリヌクレオチドを有する核酸分子を含む。
【0099】
ポリヌクレオチドをコードする参照ヌクレオチド配列と少なくとも例えば95%「同一」のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、前記ポリペプチドをコードする参照ヌクレオチド配列の100ヌクレオチドあたり、最大で5点の変異を含み得ることを除いて、当該参照配列と同一であることを想定する。言い換えると、参照ヌクレオチド配列と95%以上の同一性のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを取得するために、参照配列中のヌクレオチドの最大で5%を欠失させ、又は他のヌクレオチドと置換することが出来、又は参照配列の全ヌクレオチドの最大で5%に想到する数のヌクレオチドを、参照配列中に挿入することが出来る。参照配列のこれらの突然変異は、参照ヌクレオチド配列の5'又は3'末端部位に生じてもよく、又はそれらの末端の間のどこに生じてもよく、参照配列中のヌクレオチドの間に個別に散在してもよく、参照配列内で1つ以上の隣接した群となってもよい。
【0100】
2つ以上のポリヌクレオチド配列は、同一性パーセントを決定することにより比較できる。2つ以上のアミノ酸配列も、同様に、同一性パーセントを決定することにより比較できる。核酸又はペプチド配列の2つの配列の同一性パーセントは、一般に、2つの揃えた配列の間のマッチした残基の数を短い配列の長さで割ってこれを100倍したもので表現される。ヌクレオチド配列のおおよその整列は、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2:482-489 (1981)のローカルホモロジーアルゴリズムにより提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff, Atlas of Protein Sequences and Structure, M. O. Dayhoff ed., 5 suppl. 3:353-358, National Biomedical Research Foundation, Washington, D.C., USAにより開発され、そしてGribskov, Nucl. Acids Res. 14(6):6745-6763 (1986)により補正されたスコアリングマトリックスを使用して、ペプチド配列に対する使用にまで拡張できる。核酸及びペプチド配列におけるこのアルゴリズムの導入は、Genetics Computer Group (Madison, Wis.)によりBESTFITとして提供されている。この方法の標準のパラメーターは、Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual, Version 8 (1995) (available from Genetics Computer Group, Madison, Wis.)に記載されている。
【0101】
例えば、遺伝子コードの縮重(degeneracy)のため、当業者は、本明細書中に記載の核酸配列のいずれか1つと90%, 95%, 96%, 97%, 98%, 又は99%以上の同一性を有する多くの核酸分子が前記ポリペプチドをコードすることを理解し得る。
【0102】
実際に、これらのヌクレオチド配列の縮重バリアントは同一のポリペプチドをコードしているため、このことは、当業者にとっては、本明細書中に記載の機能性アッセイ又は測定を実施するまでもなく明らかであろう。更に、当該技術分野において、縮重バリアントではない核酸分子においては、FVIII結合性能を有するポリペプチドをもコードするものの数は合理的な数に収まることが理解される。これは、当業者は、タンパク質の結合に顕著な効果をそれほど又は全く与えないであろうアミノ酸置換(例えばある脂肪族アミノ酸を別の脂肪族アミノ酸で置換すること)には確実に気付くからである。
【0103】
近年、より長いポリヌクレオチド配列の合成技術の進歩により、従来のクローニング技術を使用せずに顕著に長いポリペプチドをコードする核酸を合成することができるようになった。そのようなサービスの提供者として、Blue Heron, Inc., Bothell, WA (http://worldwideweb.blueheronbio.com)が挙げられる。Blue Heron, Inc. により実用化された技術は、U.S. Patent Nos. 6,664,112; 6,623,928; 6,613,508; 6,444,422; 6,312,893; 4,652,639; U.S. Published Patent Application Nos. 20020119456A1; 20020077471A1;及びPublished International Patent Applications (Publications Nos) WO03054232A3; WO0194366A1; WO9727331A2;及びWO9905322A1に記載されており、これらの文献は、本明細書中に参照により援用される。
【0104】
当全に、従来の分子生物学、微生物学、及び組換え核酸の技術も、本発明のポリヌクレオチドの生産に使用出来る。これらの技術は周知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausebel, ed., Vols. I, II and III (1997); Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989); DNA Cloning: A Practical Approach, D. N. Glover, ed., Vols. I and II (1985); Oligonucleotide Synthesis, M. L. Gait, ed. (1984); Nucleic Acid Hybridization, Hames and Higgins, eds. (1985); Transcription and Translation, Hames and Higgins, eds. (1984); Animal Cell Culture, R. I. Freshney, ed. (1986); Immobilized Cells and Enzymes, IRL Press (1986); Perbal, “A Practical Guide to Molecular Cloning”; the series, Methods in Enzymology, Academic Press, Inc. (1984); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, J. H. Miller and M. P. Calos, eds., Cold Spring Harbor Laboratory (1987); and Methods in Enzymology, Wu and Grossman and Wu, eds., respectively, Vols. 154 and 155に記載されており、これらの文献は、本明細書中に参照により援用される。
【0105】
他の態様において、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子を含む発現ベクターも提供される。また、本発明のポリペプチドを発言する宿主細胞も提供される。一つの態様において、本発明は、vWFポリペプチド中に存在する第一のアミノ酸配列及び当該第一の配列と異種の第二のアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現する細胞を提供し、ここで、当該ポリペプチドは、FVIIIに結合することが可能であり、ここで、当該細胞は、更に、FVIIIを発現する。他の態様において、当該FVIIIは、組換えFVIIIである。
【0106】
IV. タンパク質複合体
他の態様において、本発明は、ポリペプチド及びFVIIIを含有するタンパク質複合体を提供し、ここで、当該ポリペプチドは、vWFポリペプチド中に存在する第一のアミノ酸配列及び当該第一の配列と異種の第二のアミノ酸配列を有し、ここで当該ポリペプチドは、FVIIIと結合できる。一つの態様において、当該複合体は、ダイマー形態の別個のポリペプチド鎖を有し、FVIIIと複合体を形成する。
【0107】
他の態様において、本発明は、本発明の2つのポリペプチド鎖を有するホモダイマータンパク質複合体を提供し、ここで、当該鎖間で1つ以上のジスルフィド結合が形成される。一つの態様において、2つの別個の鎖の第一のアミノ酸配列の間で1つ以上のジスルフィド結合が形成されることによりダイマーとなる。他の態様において、2つの別個の鎖のFc領域の間で1つ以上のジスルフィド結合が形成されることによりダイマーとなる。幾つかの態様において、当該ホモダイマー複合体は、本発明の2つのポリペプチドからなり、又は本質的になる。なおも更なる態様において、ヘテロダイマーも、本発明の範囲内である。
【0108】
他の態様において、本発明は、例えば、更なるダイマーの結合により、オリゴマーを提供する。幾つかの態様において、異なるサイズのオリゴマーが提供され、好ましくは、本発明のポリペプチドのアミノ末端でジスルフィド架橋が形成される。故に、他の態様において、ダイマーから、少なくとも約100,000, 250,000, 500,000ダルトンのサイズの範囲の様々なサイズのオリゴマー、又は更に約5, 10, 20, 30, 40, 又は50メガダルトンに達するマルチマーが提供される。
【0109】
なおも更なる態様において、前記オリゴマーは、ホモ又はヘテロオリゴマーである。他の態様において、当該ダイマーは、ヘテロダイマーである。
【0110】
他の態様において、前記タンパク質複合体は、前記ポリペプチド及びFVIIIを発現する細胞又は組織培養発現系から調製される。一つの態様において、当該ポリペプチド及びFVIIIは、同一の細胞中で共発現される。
【0111】
一つの態様において、本発明は、FcポリペプチドのN-末端と融合した第一のアミノ酸配列を有する可溶性の融合タンパク質を提供し、ここで、当該第一のアミノ酸配列は、vWFポリペプチド中に存在し、ここで、当該ポリペプチドは、FVIIIと結合できる。幾つかの態様において、当該ポリペプチドは、ジスルフィド結合により連結した可溶性融合タンパク質を2つ含むダイマーとしてFVIIIと結合できる。
【0112】
他の態様において、本発明は、ジスルフィド結合により連結された2つの可溶性融合タンパク質を含むダイマーを提供し、ここで各タンパク質は、FcポリペプチドのN末端と融合した第一のアミノ酸配列を有し、ここで、当該ダイマーは、FVIIIと結合できる。
【0113】
他の側面において、本発明は、前記第一及び第二のアミノ酸配列を有する2つ以上のポリペプチドを有するジスルフィド結合したマルチマーを有するタンパク質複合体を提供する。
【0114】
一つの態様において、前記ジスルフィド結合したマルチマーは、vWFプロペプチド断片と前記ポリペプチドを接触させることにより調製されるため、当該vEFプロペプチド断片は、当該ジスルフィド結合したマルチマーの組み立てを指向するための「trans」において作用する。
【0115】
幾つかの態様において、前記vWFプロペプチド断片は、配列番号:31に記載のアミノ酸配列又はその断片を有する。
【0116】
他の態様において、前記接触は、前記ポリペプチドとvWFプロペプチド断片を共発現させることを含む。
【0117】
例えば、一つの態様において、本発明は、前記第一及び第二のアミノ酸配列を有する2つ以上のポリペプチドを有するジスルフィド結合したマルチマーを有するタンパク質複合体を提供し、ここで、当該第一のアミノ酸配列は、配列番号:1、配列番号:4、又は配列番号:7に記載されている。他の態様において、前記第一のアミノ酸配列は、配列番号3、配列番号:6、又は配列番号:9に記載されている。幾つかの態様において、前記第一のアミノ酸配列は、配列番号:17、配列番号:18、又は配列番号:19に記載されている。他の態様において、前記タンパク質複合体は、好ましくは、組換え発現系を使用して、前記ポリペプチドと、配列番号:31に記載のアミノ酸配列を有するvWFプロペプチド断片を共発現することにより調製されるので、当該断片は、当該当該ポリペプチドを有するジスルフィド結合したマルチマーの組み立てを指向するための「trans」において作用する。
【0118】
V. 方法
なおも更なる側面において、本発明は、本発明のタンパク質複合体を調製する方法を提供する。幾つかの態様において、前記第二のアミノ酸配列により規定される構造又はドメインの結合パートナーを含有するアフィニティーカラムが、前記複合体をアフィニティー精製するために採用される。例えば、前記第二のアミノ酸配列がFcポリペプチド抗体に対応する場合、タンパク質A又はGを含有するアフィニティーカラムが、前記複合体のアフィニティー精製に使用できる。幾つかの態様において、前記結合パートナーは、不動化されている。あるいは、前記アフィニティーカラムは、前記ポリペプチドのFc部分に結合する、又は前記ポリペプチドの第一のアミノ酸配列により規定される構造又はドメインに結合する抗体を含有し得る。幾つかの態様において、調製される抗体は、ジスルフィド結合により連結した可溶性融合タンパク質を2つ含むダイマーを有し、ここで、各タンパク質は、FcポリペプチドのN末端と融合した第一のアミノ酸配列を有し、ここで、当該第一のアミノ酸配列はvWFポリペプチド中に存在し、ここで、当該ダイマーは、FVIIIと結合できる。
【0119】
他の態様において、前記複合体は、更に、前記ダイマーと結合するFVIIIを含む。FVIIIは、前記複合体から除去/解離でき、任意で、部分的に純粋な、実質的に純粋な、又は純粋なFVIIIを取得するために1つ以上の追加の精製工程に供される。
【0120】
一つの側面において、本発明は、FVIIIを調製する方法を提供し、当該方法は、FVIIIをポリペプチドと接触させて当該FVIIIとポリペプチドを含有するタンパク質複合体を形成する工程を含み、ここで当該ポリペプチドはvWFポリペプチド中に存在する第一のアミノ酸配列及び当該第一の配列と異種の第二のアミノ酸配列を含み、ここで当該ポリペプチドはFVIIIに結合して前記タンパク質複合体を形成できる。
【0121】
一つの態様において、前記方法は、更に、第二のアミノ酸配列により定義される領域又はドメインに親和性を有する結合パートナーを含有する分離媒体に前記複合体を選択的に接着させる工程を含む。他の態様において、前記第二のアミノ酸配列は、イムノグロブリンFc領域に対応する。他の態様において、前記結合パートナーは、抗体である。幾つかの態様において、前記結合パートナーは、イムノグロブリンFc領域に対する抗体である。なおも更なる態様において、前記複合体は、ダイマーの形態のポリペプチド鎖を2つ有し、ここで当該ダイマーは、FVIIIとアフィニティー結合する。
【0122】
結合パートナーの不動化において、任意の数の異なる固体の支持体が利用されてもよい。例えば、前記固体支持材料は、多糖類、例えばセルロース、澱粉、デキストラン、寒天若しくはアガロース等、又は親水性合成ポリマー、例えば置換された、又はされていない、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニル親水ポリマー、ポリスチレン、ポリスルホン等で形成されてもよい。他の前記固体支持材料として適切な材料として、多孔質鉱物材料、例えばシリカ、アルミナ、チタニア酸化物、ジルコニア酸化物及び他のセラミック構造が挙げられる。あるいは、複合材料も、前記固体支持材料として使用され得る。そのような複合体材料は、上記要素の2つ以上のコポリマー化により、又はそれらが相互に行き渡ったネットワークにより形成され得る。適切な複合材料の例として、多糖類-合成ポリマー及び/又は多糖類-鉱物構造及び/又は合成ポリマー-鉱物構造が挙げられ、これらはU.S. Pat. Nos. 5,268,097, 5,234,991, 及び5,075,371に開示され、それらの文献は、複合材料の教示のために、本明細書中に参照により援用される。
【0123】
本発明の固体支持材料は、直径約0.1mm〜1000mmのサイズ範囲のビーズ又は不定形の粒子、任意のサイズの繊維(中空又は非中空)、膜、厚さ約0.1mm〜1mmの範囲の平らな表面、及び直径1μm〜数mmの孔を有するスポンジ様材料の形態をとってもよい。
【0124】
好ましくは、前記結合パートナーは、例えば当該結合パートナーのメルカプト基及び前記固体支持体上に存在する反応基の間意で形成される共有結合を介して、当該固体支持体上に化学的に不動化される。前記メルカプト基と反応出来る反応基として、エポキシ基、トシレート、トレシレートハラド、及びビニル基が挙げられる。多くの上記固体支持材料は上記反応基のいずれかを有しないので、前記固体支持材料との反応及び必要な反応基の提供の両方が可能な二機能性活性化剤(bifunctional activating agent)が使用され得る。適切な活性化剤の例として、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、ジブロモ及びジクロロプロパノール、ジブロモブタン、エチレングリコール、ジグリシジルエーテル、ブタンジオール、ジグリシジルエーテル、ジビニルスルホン等が挙げられる。
【0125】
典型的な適切な支持体の例として、Sepharose(商標)アガロース、Pharmacia (Sweden)製の樹脂活性化CH Sepharose(商標)4B(N-ヒドロキシスクシミド含有アガロース)、樹脂NHS活性化Sepharose(商標)4 Fast Flow (6-アミノヘキサン酸で活性化されて活性N-ヒドロキシスクシミドエステルを形成する; Amersham Biosciences)、樹脂CNBr活性化Sepharose(商標) Fast Flow (シアノゲンブロマイドで活性化される; Amersham Biosciences)、樹脂PROTEIN PAK(商標)エポキシ-活性化アフィニティー樹脂(Waters, USA)、樹脂EUPERGIT(商標) C30 N (Rohm & Haas, Germany)、UltraLink Biosupport Medium (Pierce), Trisacryl GF-2000 (Pierce)、又はBioRad (USA)製AFFI-GEL(商標)が挙げられる。好ましくは、アフィニティークロマトグラフィーの支持体は、ペプチド及びタンパク質の会合を指向するために、エポキシ基で予め活性化される。
【0126】
本発明の方法の実施に有用なアフィニティークロマトグラフィーの樹脂は、限定されないが、上記いずれかのリガンド又は化合物と、上記いずれかの支持体との組合せを含む。具体的なアフィニティークロマトグラフィー樹脂の非限定的な例は、Protein A-Sepharose(商標), Protein A-アガロース, Protein A-アガロース CL-4B, Protein G-Sepharose(商標), Protein G-アガロース, Protein G-アガロース CL-4B, Protein A/G アガロース (上記全て、様々な種類の製品が入手できる。例えばSigma-Aldrich, Amersham, 及びPierce), Protein A Ultraflow(商標) (Sterogene), Protein A Cellthru(商標) 300 (Sterogene), QuickMab (Sterogene), QuickProtein A(商標) (Sterogene), Thruput(商標)及びThruput Plus (Sterogene), PROSEP-A又はPROSEP-G (Millipore), 並びにこれらの任意の別製品が挙げられる。
【0127】
前記アフィニティークロマトグラフィーに使用される方法は、少なくとも部分的には、使用される具体的な試薬に依存し、それらの方法は、典型的には試薬の供給者により提示され、又は当該技術分野で公知である。例えば、前記アフィニティークロマトグラフィー試薬は、クロマトグラフィーカラム中に封入されてもよく、前記タンパク質複合体と結合パートナーとの間の相互作用を促進できる緩衝剤で平衡化され、そして前記複合体を含有する組成物と接触させられる。そして当該カラムは、前記複合体とアフィニティーリガンドとの間の相互作用に干渉せずに不純物を溶出できる1つ以上の溶液で洗浄されてもよい。そして、前記ポリペプチド及びFVIIIを含有する全部の複合体は、当該複合体を取得するための適切な溶出剤を使用して溶出される。あるいは、当該複合体からFVIIIを解離させることもでき、その場合、当該複合体はその結合パートナーと結合したままである。
【0128】
例えば、FVIIIと結合した又はしていないポリペプチド(例えばポリペプチドのダイマー)を有するタンパク質複合体を調製する方法において、当該複合体を含有する組成物が、リガンドとしてタンパク質Aを有する1つ以上のアフィニティークロマトグラフィー樹脂と、当該複合体と当該樹脂が結合可能な条件下で接触させられることが出来る。望ましくは、当該タンパク質Aは、天然の又は組換えのタンパク質Aである。そして、当該クロマトグラフィー樹脂は、酸性が漸増する一連の洗浄緩衝液(例えばpH 7.0, 6.5, 6.0, 5.8, 5.5, 5.2, 5.0, 4.8, 4.6, 4.5, 4.4, 又は4.0)で洗浄することにより、当該洗浄が、前記複合体を実質的に離脱させることなく、樹脂から複合体以外の材料を離脱させることが出来る。当前記樹脂は1回以上、好ましくは2回以上、最も好ましくは3回以上、洗浄緩衝液で洗浄され得て、ここで、第一の洗浄緩衝液のpHは約5.0〜6.0、好ましくは約5.2であり、そして各連続的な洗浄緩衝液のpHは、一回前の洗浄緩衝液よりも酸性が強い。好ましい態様において、当該洗浄緩衝液は、樹脂から80%, 70%, 60%, 50%, 40%, 30%, 20%, 10%,又は5%を超える前記複合体を解離させない。
【0129】
幾つかの態様において、前記樹脂の洗浄の後、前記複合体は、pHが約2.5〜3.5(好ましくはpH2.5、3.0、3.5)で、前記洗浄緩衝液のどれよりも酸性が強い、溶出剤を使用して、クロマトグラフィー樹脂から溶出され得る。その溶出物は、純度が50%, 60%, 70%, 80%, 85%, 90%, 又は95%を超える、精製された、部分的に精製された、又は実質的に生成された複合体を含有する。
【0130】
他の態様において、調製されるタンパク質複合体が、前記ポリペプチドのダイマー形態と結合したFVIIIを含有する場合、当該ダイマーとFVIIIとのアフィニティー結合が維持される条件下で樹脂結合及び洗浄条件が設けられることにより、樹脂との結合が維持される。そして、樹脂と結合したダイマーからFVIIIが分離することにより、FVIIIを含有する組成物が提供され、ここで、当該組成物は、部分的に、実質的に、又は完全に、前記ダイマーを含有しない。
【0131】
故に、幾つかの態様において、前記第一及び第二のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、FVIIIに結合して当該ポリペプチドとFVIIIの複合体を形成する性能により、FVIIIの調製に採用される。幾つかの態様において、そのようなタンパク質複合体は、当該複合体及び/又はそれと協調する任意のFVIIIを調製するためのアフィニティークロマトグラフィーに供され得る。
【0132】
他の側面において、本発明は、前記FVIIIを含有する組成物を提供し、ここで、当該FVIIIは、本明細書中に記載の方法に従い調製される。また、前記第一及び第二のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含有するタンパク質複合体を含有し、そして当該複合体と結合するFVIIIを含有し、又はしない、組成物も提供される。一つの態様において、前記組成物は、前記FVIIIと結合したダイマー(例えばホモ又はヘテロダイマー)の形態の2つの前記ポリペプチドを含有するタンパク質複合体を含有する。
【0133】
故に、幾つかの態様において、本発明は、
哺乳類細胞による組換えFVIIIの発現を促進するための組成物(例えば短縮組換えvWF融合タンパク質)及び方法を提供し、これらは、FVIIIの除去及び/又は分解を防ぎ、あるいは、本発明の組換えvWFポリペプチド内に含まれる融合タンパク質ハンドル(例えば前記第二のアミノ酸配列)の使用により、得られるFVIII:vWF複合体の迅速なクロマトグラフィー精製を可能とする。
【0134】
従って、様々な態様において、強力かつ単純な方法は、完全なvWF分子と同様に、発現及び生産の過程で、FVIIIと複合体を形成し、又はこれを保護する、イムノグロブリン(例えばイムノグロブリンG1)のFc部分と会合するvWFの短縮バージョンを使用して提供される。本明細書中に記載する特異なアプローチは、少なくとも本発明のvWF融合ポリペプチドのサイズが小さく発現が早いため、及び/又はFVIII:vWF融合複合体上のFc領域を介して当該複合体を迅速に精製でき、故にvWFや他のタンパク質からの汚染が少ない所望のFVIII分子を選択的に増幅出来るため、より有効である。加えて、Fc領域との高度な親和性により、FVIII:vWF融合複合体は、例えば収量及び純度を増大させるために、インラインのタンパク質Aカートリッジを通じてin situで除去されてもよい。
【0135】
一つの態様において、本発明は、vWF融合Fc領域のタンパク質A(又は他の類似の)マトリックスに対する選択的なアフィニティー結合を通じて、連続的にFVIII:組換えvWF融合複合体を精製するために、かん流プロセスの過程でインラインの精製を使用する方法を提供する。
【0136】
幾つかの態様において本発明は、優れたFVIII精製方法を形成するにあたり、少なくとも以下の2つの観点において有利である。(a)組換えvWFポリペプチド、特にFVIIIへの結合能は保持するが全長分子よりも顕著に小さい組換え短縮vWFポリペプチドを使用している。(b)リガンドのタンパク質Aに対する高い親和性を有するイムノグロブリン(例えばIgG1)のFc領域を有する融合タンパク質を形成する。この組合せは、哺乳類細胞系において強力な発現を提供しつつ、発現上澄中の他の成分又は培地に拘らず、またイオン強度等に関する問題に拘らず、FVIII:recvWF複合体を回収することが出来る、迅速な方法を提供する。これは、更に、活性を完全に保持しつつそして産物の回収率が優れた様々な試薬/溶液がFVIIIの回収に使用されることを示す。Fc部分とタンパク質A(又は高親和性抗体)カラムとの高親和性の結合は、FVIII:vWFの相互作用に干渉しない。それらは別個の独立した分子構造だからである。
【0137】
尚も更なる態様において、本発明は、本発明のポリペプチドを組換え調製する方法を提供する。幾つかの態様において、本方法は:(a)哺乳類細胞株を本発明のポリペプチドをコードする発現ベクターで形質転換する工程;(b)当該細胞株を前記ポリペプチドを発現するのに充分な条件下で培養する工程;(c)工程(b)の細胞培養系から発現したタンパク質を精製して、vWF-Fc融合タンパク質を取得する工程を含み、ここで当該融合タンパク質のvWF部分は、成熟全長vWFポリペプチドの少なくとも1つのドメインを欠く短縮vWFであり、当該融合タンパク質は、FVIIIタンパク質に結合できるマルチマーを形成できる。一つの態様において、前記短縮vWFはドメインD'及びD3を有するが、但し、当該短縮vWFは、ドメインA1, A2, A3, D4, B, C1, C2, CK,又はこれらの組合せを欠く。他の態様において、当該短縮vWFは、ドメインD'、D3およびA1を有するが、但し、当該短縮vWFは、ドメインA2, A3, D4, B, C1, C2, CK,又はこれらの組合せを欠く。幾つかの態様において、当該短縮vWFは、ドメインD'、D3、A1およびA2を有するが、但し、当該短縮vWFは、ドメインA3, D4, B, C1, C2, CK,又はこれらの組合せを欠く。他の態様において、当該短縮vWFは、ドメインD'、D3、A1、A2及びA3を有するが、但し、当該短縮vWFは、ドメインD4, B, C1, C2, CK,又はこれらの組合せを欠く。なおも更なる態様において、当該短縮vWFは、ドメインD4, B, C1, C2, 及びCKを欠く。他の態様において、本方法は、更に、組換えプロペプチドの共発現を含み、ここで、前記vWF-Fc融合タンパク質は、更にプロペプチド配列を欠く組換え融合タンパク質として発現し、これらの組換えプロペプチド及び組換えvWF-Fc融合体は、組換え発現の後、協調して、プロペプチド/vWF-Fc複合体を形成する。
【0138】
VI. 他の組成物及び方法
他の側面において、本発明は、FVIIIの血漿半減期を延長させる方法及び組成物を提供する。例えば、幾つかの態様において、本発明の組換えvWF融合ポリペプチドは、FVIII及び/又は組み合わせられた複合体の半減期の延長を促進し得る、組換え又は血漿由来のFVIIIへの添加物として採用され得る。本発明に従い、幾つかの態様において、前記Fc領域は、FVIIIとの結合が提供され、当該Fc領域が更に複合体に追加の半減期を提供するように、vWFの短縮した断片と融合する。例えば、一つの態様において、前記組換えFVIII:組換えvFW-Fc融合複合体は、発現した培養培地から直接精製されてもよく、その後、例えば過剰の組換えvWV-Fc融合体(即ち本発明のポリペプチド)と共に、又は非存在下で、医薬製剤として患者に注射(例えば静脈内)され得る。幾つかの態様において、過剰のvWF-Fc融合体と一緒(例えばモルベースで2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10倍)の前記複合体の添加は、血漿内での融合ポリペプチド濃度の増大に寄与し、また当該複合体が血漿中で解離した場合に、FVIIIとvWF-Fc融合タンパク質の再結合を提供する。
【0139】
なおも更なる態様において、本発明の融合ポリペプチドは、高濃度でFVIIIが製剤化され、これがヒト又は非ヒト対象に、静脈内又は他のルートで投与されることにより、FVIIIが、トロンビンにより切断され、創傷部位に放出される前に、循環器の経路中でvWF融合タンパク質と協調する。
【0140】
従って、幾つかの態様において、本発明のポリペプチド及び/又はそれらを含有するタンパク質複合体は、治療用に製剤化され得る。例えば、本発明のポリペプチド及び/又はタンパク質複合体は、医薬として有用な組成物を調製する公知の方法に従い製剤化されてもよく、好ましくは、医薬として許容される担体ビヒクルと組み合わせて混合される。適切なビヒクル及びそれらの製剤として、ヒト血清アルブミン等の他のヒトタンパク質成分等が挙げられ、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences by E. W. Hartinに記載されており、当該文献は本明細書中に参照により援用される。一つの態様において、そのような組成物は、有効量のFVIIIを組換えvWFポリペプチドとの複合体の状態で含有し、例えば血友病Aに罹患した対象への非経口投与等、対象への効果的な投与に適した医薬として許容される組成物を調製するために、一緒に適切な量のビヒクルを含有する。
【0141】
血友病の治療用の平均的な用量は、出血症状の重症度により変動する。例えば、静脈内投与される平均の用量の範囲は:手術前適応(pre-operative indication)のために体重1kgあたり約40単位、軽微な出血のために体重1kgあたり約15〜約40単位、そして維持量のために、体重1kgあたり約20〜約40単位が約8時間かけて投与される。血友病を処置する当業者により、他の用量及び投与計画が容易に決定され得る。
【0142】
VII. キット
なおも更なる側面において、本発明のポリペプチド、核酸配列、タンパク質複合体及び/又は組成物を含有するキットが提供される。当該キットは、単一の容器を有していてもよく、又はそれぞれの所望の構成品について別個の容器を有していてもよい。前記組換えポリペプチド及び/又はそれに由来するタンパク質複合体を調製するのに必要な試薬を有するキットも想定され、例えば、試薬として、限定されないが、発現ベクター、当該発現ベクターを有する組換え宿主細胞、及び精製試薬が挙げられる。更に、当該キットの構成品が1つ以上の液体溶液である場合、当該液体溶液は水溶液であり、滅菌水溶液であるのが特に好ましい。しかしながら、当該キットの構成品は、乾燥した粉末として提供されてもよい。試薬又は構成品が乾燥した粉末として提供される場合、当該粉末は、適切な溶媒を添加することにより再構成される。当該キットにおいてかかる溶媒が提供されることも想定される。
【0143】
下記実施例は、本発明のプロセスの例示のみを目的として提示され、本発明の限定を目的としない。当業者であれば、これらの提示された実施例が請求項に記載の発明を例示するものに過ぎず、本発明が特許請求の範囲においてのみ規定されることを理解する。
【実施例】
【0144】
実施例1
短縮vWF-Fc融合ポリペプチドの発現プラスミドの構築
短縮vWF-Fc融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をそれぞれ有するDNA分子が、商業的に合成された。当該DNA分子のヌクレオチド配列及び対応するコードされるアミノ酸配列を同定する配列を表1に示す。
【0145】
【表1】

【0146】
各DNA分子において、前記短縮vWF領域をコードする分子のヌクレオチド配列部分は、コドン使用頻度(codon usage)、二次構造、阻害配列等を考慮するアルゴリズムを使用して、コドンを最適化した。各分子のFc DNA領域は、配列番号16に示すアミノ酸配列に対応し、IgG1に由来するが、配列最適化は行わなかった。更に、各DNA分子は、配列番号:40に示すシグナルペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を有する。配列番号20〜22は、配列番号41に示すプロペプチドアミノ酸配列を追加で含む。
【0147】
前記合成遺伝子に含まれる制限酵素部位は切断され、プラスミド発現ベクターpcDNA3002Neo (Crucell, Netherlands)中の対応する制限酵素部位中に再クローニングされた。組換えDNAは、Sambrook et al., (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH; Jones (1995) Gel Electrophoresis: Nucleic Acids Essential Techniques, Wiley等に記載される周知のプロトコルに従い、SDS-アルカリ溶解法により、調製及びクローニングされた。制限酵素により消化されたDNAは1%アガロースゲルで分離されて、サイズおよび同一性が判定された。プラスミドクローン配列の照合は、蛍光デオキシリボヌクレオチドプライマーを使用した自動DNAシークエンシング(Applied Biosystems, Carlsbad, CA)により実施された。調製された様々な短縮vWF-Fcをコードするプラスミド発現ベクターコンストラクトは、沈殿させた後70%エタノール洗浄によりそれぞれ滅菌され、そして最終濃度が1マイクロリットルあたり約0.2〜約1.0μgとなるように、滅菌水で再懸濁された。
【0148】
実施例2
PER.C6哺乳類細胞への発現ベクターのエレクトロポレーション
PER.C6細胞及びB−ドメイン欠失FVIII(BDD−FVIII)を発現するPER.C6細胞であるクローン株078(BDD−078細胞)をそれぞれ、PER−MAb培地(Hyclone, Logan, UT)中でルーチンで継代して、連続的な培養により維持した。エレクトロポレーションの48時間前、細胞を1 x 106 cells/mlで新鮮なPER−MAb培地に播種してリフレッシュした。エレクトロポレーションの当日、を100マイクロリットルのAmaxa Nucleofector(登録商標)Kit V Solution (Lonza Walkersville Inc., Walkersville, MD)に再懸濁した。
【0149】
各エレクトロポレーションにおいて、前記細胞懸濁物を約2〜5マイクログラムの、表1に記載のポリペプチドの発現用の発現プラスミドDNAと混合した。当該細胞混合物をAmaxa Nucleofector(登録商標) Device (Lonza Walkersville Inc., Walkersville, MD)のエレクトロポレーションキュベットに移し、そしてプレ−セットプログラムX−001を使用して、DNAを細胞内にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの後、当該細胞懸濁物を直ちに6ウェルプラスチックマイクロプレート中の温めておいた(37℃)のMab培地(SAFC Biosciences, Lenexa, Kansas)に移した。細胞を、混合せずに、37℃、5% CO2 及び湿度95%に設定した加湿インキュベーターチャンバー中でインキュベーションした。
【0150】
約48時間の培養後、各エレクトロポレーション反応物を前記6ウェルマイクロプレートから取り出し、適切な選択抗生物質を含有した新鮮なMAb培地20mlを入れた125培養フラスコ内に移した。適切な抗生物質として、最終濃度がそれぞれ125又は100マイクログラム/mlのジェネティシン/G418またはゼオシン;最終濃度が50マイクログラム/mlのハイグロマイシンが使用された。そして細胞を、混合せずに、37℃、5% CO2 及び湿度95%で培養した。7〜10日後、細胞をPER−MAb培地中で攪拌しながら培養し、ルーチンで継代して、トランスフェクションした細胞のポリクローナルプールを調製した。あるいは、選択された細胞を、例えばHarlow, E and Lane, D. (1988). Antibodies: A Laboratory Manual, pp. 116-117 and pp. 222-223. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYに記載されるように限外希釈クローニングにより調製した。クローニングした細胞の増殖を通常の方法でチェックし、最終的に、これらをPER−MAb培地(Hyclone, Logan, UT)を入れた懸濁細胞の増幅及び増殖用の攪拌フラスコに移した。
【0151】
実施例3
アッセイ
FVIII:
市販のBDD−FVIIIBDD-FVIII (a/k/a Xyntha(登録商標); Antihemophilic Factor (Recombinant)) (Wyeth (現在Pfizer Inc., New York, NYの系列会社)のタンパク質を、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用した、ロバスト線形アッセイ(robust linear assay)の開発の標準として使用した。マイクロプレートウェルに結合した捕捉抗体は、ヒトFVIIIのA2ドメインを指向するクローンGMA-012 (R8B12) (Green Mountain Antibodies, Inc., Burlington, VT)であり;そして検出抗体は、ヒトFVIIIを認識する、市販のビオチン化羊ポリクローナル抗体SAF8C-APBIO, (Affinity Biologicals, Ontario, Canada)であった。抗体の添加の間の洗浄は、pH7.5のTris緩衝生理食塩水(TBS)の存在下で行われた。405nmでの発色は、pNpp基質のストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ媒介切断によって検出された。あるいは、FVIII単位の活性の発色は、製造者の説明に従い、内部血漿キャリブレーター対照を使用するBeckman ACL Coagulation Analyzerにより、又はBDD−FVIII標準を使用するChromogenix Coatest SP4 FVIII kit (Diapharma Group, Columbus, OH)により実施された。
【0152】
vWF:
研究グレードの血漿由来vWF(Haemtech, Essex Junction, VT)を、タンパク質量のELISA測定用の抗原標準として使用された。使用された捕捉抗体は、ヒトvWFタンパク質に対する市販のマウスモノクローナル抗体であり;そして検出用抗体として、ヤギ抗ヒトvWF抗体が使用された。450nmにおける発色は、酵素基質のテトラメチルベンジジンとインキュベーションすることにより検出される。
【0153】
前記組換えvWF-Fc融合タンパク質において、類似のELISAフォーマットが使用され、例えばFc領域の捕捉はタンパク質Aにより行われ、又は抗ヒトFc抗体がマイクロプレート上に不動化され、その後、発現コンストラクトに依存して、vWFのD’-D3, D’-A1 またはD’-A3に結合するマウス抗ヒトvWFポリクローナル抗体により検出された。
【0154】
実施例3
短縮vWF-Fcポリペプチドの特定
PER.C6細胞中で発現した前記短縮vWF-Fcタンパク質(即ちD’-D3-Fc, Pro-D’-D3-Fc, D’-A1-Fc, Pro-D’-A1-Fc, D’-A3-Fc, Pro-D’-A3-Fc;表1)に対応する組換えポリペプチドは、0.2〜1mlの細胞上澄を20μlのタンパク質Gビーズとインキュベーションすることにより免疫沈降された。遠心によりビーズを回収し、そしてTris緩衝液によりこれらを洗浄した。遠心分離したビーズを25マイクロリットルのLaemmli緩衝液中に懸濁し、これを95℃で10分間加熱し、続いて4〜12%濃度勾配Bis-Tris PAGEゲルにロードした。バンドの可視化は、クーマシーブリリアントブルー染色/脱染により行われた。
【0155】
BDD-FVIII及びpro-D’-A3-Fc融合体の共発現、又は市販のBDD-FVIIIであるXyntha(登録商標)(Wyeth)とpro-D’-D3-Fcを発現するPER.C6細胞上澄との混合のいずれかに関する実験において、アフィニティーカラムから溶出した試料を還元及び変性NuPAGE Tris酢酸ポリアクリルアミドゲルで電気泳動により分離し、クーマシーブルーで染色し、脱染し、そして撮像して、同じゲル上での公知の分子量マーカーの泳動距離と比較した。
【0156】
配列解析
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により分離した組換えポリペプチドをPVDF膜上にブロッティングし;高速Ponceau S染色によりタンパク質バンドを可視化し、そして当該膜からの脱染をエドマン分解用調製物(AIBioTech, Richmond VA)中で実施して、N末端配列情報を取得した。取得されたアミノ末端配列は、vWFの成熟N末端またはプロセシングが不完全な代表的なvWF産物に存在すると考えられるN末端プロペプチド配列の公知の配列と比較した。
【0157】
BDD-FVIII及び短縮vWF-Fcタンパク質のインビトロでの協調
D’-D3-Fc, Pro-D’-D3-Fc, D’-A1-Fc, Pro-D’-A1-Fc, D’-A3-Fc, 及びPro-D’-A3-Fcタンパク質を発現する細胞を選択及び育苗した後、細胞上澄の試料を清澄し、活発に増殖するBDD-078細胞(B-ドメイン欠失FVIIIを発現する哺乳類細胞クローン)に添加した。BDD-078細胞は、12.5 x 106 cells/mlで播種され、短縮vWF−Fc融合タンパク質(即ちD’-D3-Fc, Pro-D’-D3-Fc, D’-A1-Fc, Pro-D’-A1-Fc, D’-A3-Fc, Pro-D’-A3-Fc)を発現させるプラスミドコンストラクトをトランスフェクションしたPER.C6細胞上澄で培養した。「BDD Ctrl」において、調整培地が置換された。細胞は、記載されているように、37℃で2日間培養した。その時点で、一部を回収し、遠心し、上澄を、FVIII活性並びにFVIII及びvWF抗原の両方について試験した。図8に、FVIII活性を示す。棒グラフは、vWF-Fcタンパク質を加えなかった対照BDD-FVIIIを基準にした増大を示す。
【0158】
通常の条件下で、BDD-078細胞で発現されたBDD-FVIIIは、細胞により代謝又は隔離される(Kalind et al., J. Biotechnology, 147:198-204 (2010))。しかしながら、血漿由来vWFタンパク質又は前記短縮vWF-Fc融合タンパク質の1つを発現する細胞の上澄を添加することで、FVIII活性の高度な維持が引き起こされ、これは、増殖する細胞によるFVIIIの望ましくない取込みや代謝を防御する効果を示唆する。この結果は、短縮vWF-Fc融合体が、培養下でのFVIII収率を増大させる機能を有することを実証する。FVIIIを発現させて37℃で2日間培養した後、一部を回収して、FVIII活性の蓄積を評価した。回収されたFVIII活性の実質的な増大が観察された(図8)。
【0159】
マルチマー分析
血漿由来vWF(pd-vWF)及び組換えポリペプチドの高分子量複合体を形成する能力を、非還元1.6又は2%高融点(HGT-P)アガロースゲルでの電気泳動により評価した(Raines et al., Thrombosis Res., 60:201-212 (1990)の変法)。血漿由来FVIII(KOATE-DVI(登録商標)が、vWF-Fcマルチマーの評価の電気泳動標準として使用された。タンパク質は、iBlot装置(Invitrogen Corp., Rockville, MD)を用いた半湿式ブロッティング法によりニトロセルロース膜に転写され、SuperBlock Solution (Pierce, Rockford, IL)でブロッキングした。試料は、ウサギ抗ヒトvWFポリクローナル抗体(Abcam cat# ab6994)、その後、アルカリホスファターゼをコンジュゲートしたヤギ抗ウサギIgG F(ab′)2断片(cat# A3937; Sigma)とインキュベーションされ、そして、バンドは、Western Blue solution (Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)とインキュベーションすることにより検出された。反応を終結させるために、蒸留水でリンスをし、そしてバンドをBioRad Molecular Imager ChemiDoc XRS+ Imaging System (Bio-Rad Laboratories Hercules, CA)で可視化した。その結果を、図9に示す。
【0160】
タンパク質の精製及びタンパク質Aのクロマトグラフィー
BDD-FVIII及びpro-D’-A3-Fcタンパク質を発現する細胞培養系の清澄した上澄を、三重の遠心分離、並びに2500xgを7分間、続いて2500xgで11分間分離することにより調製した。そして、上澄をSartobran 150デプスフィルター(0.45マイクロメートル)、続いて0.2マイクロメートルの酢酸セルロースフィルター(#5231307-H4-00) (Sartorius Stedim Stedim Biotech S.A., Aubagne, France)で濾過された。当該フィルターは、ポンプを用いてに100〜200 mlの20 mM Tris, pH 7.0より湿らせておき、そして細胞上澄をアプライし、最後に約25 mlの20 mM Tris, pH 7.0を加えた。最後の濾液は、2倍に希釈された細胞上澄であり、カラムクロマトグラフィーに使用された材料であった。濾過された上澄は、AKTA Explorer Chromatography System (GE Healthcare, Piscataway, NJ)にセットした5又は10ミリリットルのProtein A-HiTrapカラム(part 17-1403-01) (GE Healthcare, Piscataway, NJ)にアプライされた。システムのチューブは20mM Tris, pH 7.0で予め濯がれて、試料のカラムへのアプライの前のベースラインを安定させた。濾過された試料はカラムを5ミリリットル/分で移動させられ、そして溶出物は、「フロースルー」として回収された。全ての材料がロードされた後、当該Protein A-HiTrapカラムは、カラムの5倍の体積の20mM Tris, pH 7.0でベースラインが安定するまで洗浄された。この時点で、当該カラムは、0.1 M CaCl2を含有する、カラムの4倍の体積の20mM Tris, pH 7.0で洗浄され、そして溶出した材料を回収した。前記短縮したvWF-Fc融合体に結合した因子FVIIIは、当該フラクションが溶出するまで(カラム体積の約3倍)、0.3 M CaCl2を含有する20mM Tris, pH 7.0で溶出させられた。当該カラムは更にカラム体積分の20mM Tris, pH 7.0で5回洗浄された。タンパク質Aへの結合を維持している短縮vWF-Fcタンパク質は、250mM Glycine, 150mM NaCl, pH 3.9を添加することにより、カラムから剥離させられた。他の溶出方法は、例えばArakawa et al., Prot. Expr. Purif., 63:158-163 (2009)に記載されている。Protein A-HiTrapカラムから回収された全ての試料は保存され、発色及び/又は凝固アッセイ(上記)を使用して因子VIII活性が試験され、そして一部はSDS-PAGE電気泳動用に調製された。幾つかの場合、例えばFVIIIピーク活性が検出された場合、当該タンパク質は、25mlの所望のFVIII保存緩衝液で予め洗浄されたPD10カラム(GE Healthcare 45000148)にロードした。2及び1.5ミリリットルの溶出したBDD-FVIIIは、各カラムにアプライされ、そして脱塩されたBDD-FVIIIは、3.5mlのFVIII保存緩衝液で溶出させられた。そして、タンパク質は長期保存用に-80℃で保存され、そして、場合によっては、10mg/mlの血清アルブミンが添加された。
【0161】
pro-D'-A3-Fc/FVIII結合複合体からのFVIIIの精製
前記短縮vWF-FcポリペプチドがFVIIIに結合するか否かを判定するために、BDD-FVIII及びpro-D’-A3-Fcを共発現する細胞を、125μg/mlのネオマイシン及びゼオシンを添加したPER-MAb培地中で5日間培養した。実質的に上記のように、上澄の調製及びクロマトグラフィーを行った。溶出の過程での様々な時点で、試料を保存し、電気泳動した(図10)。図10Aにおいて、5 mlのHiTrap Protein Aカラムに10 mlのBDD-FVIII/proD’A3-Fc PER.C6細胞上澄をアプライした後、様々な緩衝液の条件で溶出したクロマトグラフィートレースのピークを示す(工程5は洗浄工程、工程6は0.1 M CaCl2による溶出物、工程7は0.3M CaCl2洗浄後のFVIII溶出物、工程8は1 M CaCl2洗浄後の溶出物、工程9は低塩濃度での洗浄、そして工程10は、pH5.5のクエン酸でカラムをストリッピングした後の溶出物)。図10Bは、当該溶出試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動を示す。レーン1〜9は、それぞれ(1)出発材料、(2)フロースルー、(3) 0.1M CaCl2溶出物、(4) 0.3M CaCl2溶出物、(5) pH 5.5クエン酸溶出物、(6)濃縮されたBDD-FVIII調製物、(7)分子量マーカー(右側に分子量表示)、(8) pro-D’-A3-Fcを発現するPER.C6細胞の上澄、(9)市販BDD-FVIII (Xyntha(登録商標))を表す。アスタリスクは、170、90及び80kdの3つのバンドを示し、これらはそれぞれ全長BDD-FVIII、重鎖及び軽鎖を表す。
【0162】
レーン5及び8のバンドの隣の点は、プロペプチドを有するproD’-A3-Fc及び成熟proD’-A3-Fcタンパク質の予想サイズを示す(それぞれ分子量が大きく、及び小さくなっている)。
【0163】
pro-D’A3-Fcに結合するBDD-FVIIIの実質的に純粋なフラクションは、タンパク質Aマトリックス上に捕捉される。当該複合体は、洗浄工程では安定であり、その後の0.3 M CaCl2溶出工程においてのみ、vWF-Fcマトリックスから分離及び溶出される(図10A,工程7;及び図10B、レーン4)。pro-D’-A3-Fcタンパク質自体は、酸性pH3.9のより厳しい(harsher)洗浄条件下でマトリックスを濯いだときにのみ視認された(図10A、工程10;及び図10B、レーン5)。pH3.9の洗浄により溶出したタンパク質は、従来真正の短縮pro-D’-A3-Fc分子として調製及び同定されていた一連のタンパク質と共に移動した(図10B、レーン8)。
【0164】
D'-D3-Fc結合複合体からのFVIIIの精製
強制発現したpro-D’-D3-Fcタンパク質を含有するPER.C6細胞上澄の溶液10mlを(図11、レーン2)、250単位の市販のBDD-FVIII (Xyntha(登録商標)、レーン3)に添加し、そして37℃で4時間インキュベーションした(レーン4及び5)。当該混合物を20 mM Tris-HCl, pH 7.0で2倍に希釈し、そして1 ml Protein A-HiTrapカラムにアプライした。本質的には、上記図10に記載したpro-D'-A3-Fc複合体からのFVIIIの精製と同様に行われた。未結合のタンパク質は、20 mM Tris-HCl, pH 7.0でカラムから洗い流された(レーン6)。図11のレーン6にはFVIII及び/又はvWF-Fcポリペプチドのバンドが認められない(レーン7と比較)ことから、pro-D’-D3タンパク質と複合体を形成したFVIIIの明らかな保持が認められる。その後、0.3 M CaCl2によりFVIIIは劇的に溶出した(レーン7)。これは、FVIII/pro-D’-A3-Fc複合体から溶出したFVIIIと大いに比較される(図10B、レーン4)。短縮vWF-Fcに想到する保持されたポリペプチドは、低pH緩衝液の0.1 Mグリシン、0.15 M NaCl, pH 3.9を用いて溶出される(図11、レーン8)。レーン3の3つのアスタリスクは、170、90及び80kdの3つのバンドを示し、これらはそれぞれ全長BDD-FVIII、重鎖及び軽鎖を表す。pro-D’D3-Fc/FVIII精製の結果から、pro-D’D3-FcへのFVIIIの添加は、FVIIIの捕捉、保持及びその後の特異的な溶出を実証し、この結果は、図10で示されたのと概ね同一である。
【0165】
薬物動態
FVIIIに結合した、又は裸の精製組換えvWF-Fc融合タンパク質を、アルブミン等の安定化剤を含有するリン酸緩衝液中に添加し、これを約5マイクログラム/マウスの濃度で、マウスの尾部静脈に静脈内注射した。対照として、vWFを有する/有しないFVIIIも同様に注射し、動物内での排出を評価した。5〜8頭の動物(野生型又はFVIII若しくはvWFのいずれか、又はそれら両方の遺伝的欠損による出血疾患を有するマウス系統)を、血液損失の試験に使用した。注射後の様々な時点で(例えば0分、3分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、16時間、24時間)動物をサクリファイスし、下大静脈を通じて抜き取り、そして血漿が調製及び凍結させられた。そして、動物の遺伝的背景に依存して、血漿試料の抗原及び/又は機能的活性を、それぞれELISA及び/又は発色若しくは凝固アッセイにより評価した。血漿からの排出は、抗原及び/又は活性と時間との間の薬物動態的解析により(例えばMordenti et al., Toxicol. Appl. Pharmacol., 137:75-78 (1996)及びLenting et al., J. Biol. Chem., 279:12102-12109 (2004)に記載されるように行われ、これらの文献は、薬物動態解析の教示のため、本明細書中に参照により援用される)、及び対照との比較により決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
vWFポリペプチド中に存在する第一のアミノ酸配列及び当該第一のアミノ酸配列と異種(heterologous)の第二のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、当該ポリペプチドがFVIIIと結合出来、但し当該ポリペプチドがvWFのA1、A2、A3、D4、B1、B2、B3、C1、C2、CK、又はそれらの組合せを欠く、前記ポリペプチド。
【請求項2】
前記第一のアミノ酸配列が、配列番号1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:33、配列番号:34、又は配列番号35のいずれかに記載されたものである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:36、配列番号:38、又は配列番号:39に記載された配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
ダイマーを形成出来る、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記第二のアミノ酸配列が、イムノグロブリンFcに対応する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記第二のアミノ酸配列が、配列番号:16に記載された配列を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
請求項1に記載のポリペプチドを含有する組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のポリペプチド及びFVIIIを含有する、タンパク質複合体。
【請求項9】
請求項8に記載のタンパク質複合体を含有する組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列。
【請求項11】
配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:37、配列番号:42、又は配列番号:43に記載されたものである、請求項10に記載のヌクレオチド配列。
【請求項12】
請求項10に記載のヌクレオチド配列を含む、発現ベクター。
【請求項13】
請求項1に記載のポリペプチドを発現する細胞。
【請求項14】
請求項8に記載のタンパク質複合体を発現する細胞。
【請求項15】
前記ポリペプチドとFVIIIとを接触させる工程を含む、請求項8に記載のタンパク質複合体を調製する方法。
【請求項16】
前記接触工程が、FVIIIを発現する細胞中で前記ポリペプチドを組換え発現させる工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
FVIIIを調製する方法であり:請求項1に記載のポリペプチドをFVIIIと接触させて、当該ポリペプチド及びFVIIIを含有するタンパク質複合体を形成する工程を含む、前記方法。
【請求項18】
更に、第二のアミノ酸配列により定義されるドメインに親和性を有する結合パートナーを含有する樹脂に前記複合体を選択的に接着させる工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第二のアミノ酸配列が、イムノグロブリンFcに対応する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記結合パートナーがタンパク質A又はタンパク質Gである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
対象に請求項8に記載のタンパク質複合体を含有する組成物を投与する工程を含む、FVIIIの血漿薬物動態性能を改善する方法。
【請求項22】
前記性能が血漿半減期の延長である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項8に記載のタンパク質複合体及び医薬として許容される担体を含有する組成物。
【請求項24】
血液の症状を処置する方法であり、請求項23に記載の組成物を対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項25】
前記症状が血友病である、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−510581(P2013−510581A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539007(P2012−539007)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/056496
【国際公開番号】WO2011/060242
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(506074484)グリフオルス・セラピユーテイクス・インコーポレーテツド (10)
【氏名又は名称原語表記】Grifols Therapeutics,Inc.
【Fターム(参考)】