説明

フォークシフト装置

【課題】 フォークの間隔を調整する際に用いるシリンダ式のフォークシフト装置に於て、コストの低減を図ると共に、フォーク作業時には前方視界が妨げられずにフォーク作業が容易に行える様にする。
【解決手段】 キャリッジ2、フォーク3、シフトシリンダ4、搖動体5、掛合手段6とで構成し、とりわけ、何れか一方のフォーク3に搖動可能に設けられて当該フォーク3の背後に隠れる格納位置と他方のフォーク3側に延びる使用位置とをとり得る搖動体5と、搖動体5と他方のフォーク3との間に設けられて搖動体5が使用位置の時には掛合される掛合手段6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフォークリフト等の荷役車両に装備されて荷物の大きさに呼応してフォークの間隔を調整する際に用いられるシリンダ式のフォークシフト装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシリンダ式のフォークシフト装置としては、例えば次の様なものが知られている。
(1) シフトシリンダを左右のフォーク毎に設けたもの(特許文献1参照)。
(2) 単一のシフトシリンダとチェーン・スプロケット機構とを用いたもの(特許文献2参照)。
(3) 単一のシフトシリンダと左右のフォークの上部同士を連結する連結手段とを用いたもの(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3091852号公報
【特許文献2】実開昭59−123094号公報
【特許文献3】実開昭62−181597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然しながら、前記(1)のものは、シフトシリンダを二つ設けねばならなかったので、油圧配管及び油圧機器等を含めてコストが高く付く難点があった。
【0005】
前記(2)及び(3)のものは、シフトシリンダが一つであるので、コストの低減を図る事ができるものの、チェーン・スプロケット機構や連結手段が常に前方視界を妨げる要因になっていた。
【0006】
要するに、従来の何れのものも、コストの低減を図ると共に、フォーク作業時には前方視界が妨げられずにフォーク作業が容易に行えるものではなかった。
【0007】
本発明は、叙上の問題点に鑑み、これを解消する為に創案されたもので、その課題とする処は、コストの低減を図ると共に、フォーク作業時には前方視界が妨げられずにフォーク作業が容易に行える様にしたフォークシフト装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフォークシフト装置は、基本的には、昇降可能なキャリッジと、キャリッジに横動可能に設けられた左右のフォークと、一方のフォークを横動すベく設けられた単一のシフトシリンダと、何れか一方のフォークに搖動可能に設けられて当該フォークの背後に隠れる格納位置と他方のフォーク側に延びる使用位置とをとり得る搖動体と、搖動体と他方のフォークとの間に設けられて搖動体が使用位置の時には掛合される掛合手段と、から構成した事に特徴が存する。
【0009】
フォーク作業時を含む通常時は、搖動体が格納位置にされて一方のフォークの背後に隠れている。
【0010】
フォークの間隔を調整する時は、搖動体が使用位置に搖動されて掛合手段が掛合される。もし、左右のフォークの間隔に依り掛合手段が掛合できない場合には、シフトシリンダが作動されて一方のフォークがキャリッジに沿って横動されて他方のフォークに対して遠近される。掛合手段が掛合されると、シフトシリンダが作動されて左右のフォークが一緒にキャリッジに沿って一方向へ横動される。その後、掛合手段の掛合が解除されて搖動体が格納位置に搖動されると共に、シフトシリンダが作動されて一方のフォークのみがキャリッジに沿って他方向へ横動される。そうすると、左右のフォークの間隔が拡狭されて調整される。
【0011】
フォーク作業時を含む通常時は、搖動体が格納位置にされて一方のフォークの背後に隠れているので、搖動体が前方視界の妨げにならない。とりわけ、フォーク作業時には、搖動体が前方視界が妨げにならない事に依りフォーク作業が容易に行える。
【0012】
搖動体が使用位置にされて掛合手段が掛合された状態でシフトシリンダが作動されると、左右のフォークが所定間隔を保ったままキャリッジに沿って一方向にサイドシフトされる。従って、フォークシフトだけでなく、サイドシフトも行なう事ができる。
【0013】
掛合手段は、搖動体と他方のフォークのうちの何れか一方に設けられた凸部と、何れか他方に設けられて凸部に掛合される凹部とを備えているのが好ましい。この様にすれば、構造が極めて簡単なものにする事ができる。
【0014】
掛合手段の凸部と凹部のうち少なくとも何れか一方は、フォークの横動方向に間隔を置いて複数設けられているのが好ましい。この様にすれば、左右のフォークの間隔を多段階に保つ事ができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
【0016】
(1) キャリッジ、フォーク、シフトシリンダ、搖動体、掛合手段とで構成し、とりわけ、何れか一方のフォークに搖動可能に設けられて当該フォークの背後に隠れる格納位置と他方のフォーク側に延びる使用位置とをとり得る搖動体と、搖動体と他方のフォークとの間に設けられて搖動体が使用位置の時には掛合される掛合手段とを備えているので、コストの低減を図ると共に、フォーク作業時には前方視界が妨げられずにフォーク作業が容易に行える。
【0017】
(2) 何れか一方のフォークに搖動可能に設けられて当該フォークの背後に隠れる格納位置と他方のフォーク側に延びる使用位置とをとり得る搖動体と、搖動体と他方のフォークとの間に設けられて搖動体が使用位置の時には掛合される掛合手段とを備えているので、掛合手段を掛合状態に保ったままシフトシリンダを作動させれば、キャリッジに対して左右のフォークを一緒に一方向へサイドシフトする事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のフォークシフト装置に係り、搖動体を格納位置にした状態を示す概要背面図。
【図2】搖動体を使用位置にした状態を示す図1と同様図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明のフォークシフト装置に係り、搖動体を格納位置にした状態を示す概要背面図。図2は、搖動体を使用位置にした状態を示す図1と同様図である。
【0021】
フォークシフト装置1は、キャリッジ2、フォーク3、シフトシリンダ4、搖動体5、掛合手段6とからその主要部が構成されて居り、フォークリフト等の荷役車両に適用される。
【0022】
キャリッジ2は、昇降可能なもので、この例では、左右のリフトブラケット7と、これらの前側に設けられた上下のフィンガバー8と、これらの端部どうしを連結すべく設けられた左右のサイドプレート9等を備えている。
【0023】
両リフトブラケット7は、図略しているが、荷役車両の昇降装置(マスト装置)に依り昇降される様になっている。
【0024】
上部フィンガバー8の上側と下部フィンガバー8の下側には、夫々突条10が形成されている。
【0025】
フォーク3は、キャリッジ2に横動可能に設けられた左右のもので、この例では、略L型を呈し、垂直片11と、これの下端から前方に延びる水平片12とを備えている。フォーク3の垂直片11の背面には、上下のフィンガバー8の突条10に掛合し得る略L型の上下の爪片13が設けられて居り、これに依りフォーク3がキャリッジ2のフィンガバー8に沿って横動可能に懸架されている。
【0026】
シフトシリンダ4は、一方のフォーク3を横動すベく設けられた単一のもので、この例では、キャリッジ2の右側のサイドプレート9と左側のフォーク3の各上部間に介設されている。つまり、シフトシリンダ4は、テール側がサイドプレート9に枢結されていると共に、ロッド側がフォーク3に枢結されている。
【0027】
搖動体5は、何れか一方のフォーク3に搖動可能に設けられて当該フォーク3の背後に隠れる格納位置と他方のフォーク3側に延びる使用位置とをとり得るもので、この例では、棒状を呈し、キャリッジ2の上下のフィンガバー8間に位置する右側のフォーク3の背面に配されて居り、その下部が前後方向の支軸14に依り枢結されて起立状態から俯伏状態まで搖動(俯仰)可能に設けられている。搖動体5は、図略しているが、格納位置(起立状態)を保つ為の保持手段を備えている。
【0028】
掛合手段6は、搖動体5と他方のフォーク3との間に設けられて搖動体5が使用位置の時には掛合されるもので、この例では、左側のフォーク3に設けられた凸部15と、搖動体5に設けられて凸部15に掛合される凹部16とを備えている。凸部15は、フォーク3の背面に設けられた前後方向の単一のピンにされていると共に、凹部16は、搖動体5の長手方向に所定の間隔を置いて下向きに付設された複数のピンに依って形成されている。
【0029】
次に、この様な構成に基づいてその作用を述解する。
【0030】
フォーク作業時を含む通常時は、図1に示す如く、搖動体5が格納位置(起立状態)にされて右側のフォーク3の背後に隠れている。
【0031】
フォーク3の間隔を調整する時は、図2に示す如く、搖動体5が使用位置(俯伏状態)に搖動(俯動)されて掛合手段6の凹部16の一つと凸部15が掛合される。
【0032】
もし、左右のフォーク3の間隔(距離)に依り掛合手段6が掛合できない場合には、シフトシリンダ4が作動されて左側のフォーク3がキャリッジ2に沿って横動されて右側のフォーク3に対して遠近されて調整される。
【0033】
掛合手段6が掛合されると、シフトシリンダ4が作動されて左右のフォーク3が一緒にキャリッジ2に沿って一方向(右方向又は左方向)へ横動される。
【0034】
その後、掛合手段6の掛合が解除されて搖動体5が格納位置に搖動(起立)されると共に、シフトシリンダ4が作動されて左側のフォーク3のみがキャリッジ2に沿って他方向(左方向又は右方向)へ横動される。そうすると、左右のフォーク3の間隔が拡狭されて調整される。
【0035】
フォーク作業時を含む通常時は、搖動体5が格納位置にされて右側のフォーク3の背後に隠れているので、搖動体5が前方視界の妨げにならない。
【0036】
搖動体5が使用位置にされて掛合手段6が掛合された状態でシフトシリンダ4が作動されると、左右のフォーク3が所定間隔を保ったままキャリッジ2に沿って一方向にサイドシフトされる。
【0037】
実作業では、フォーク3を最大幅から最小幅まで何度も動かす事は稀であり、パレット等、定型サイズの扱物の場合には、そのポケットに入る程度のフォーク移動量(実用上100〜200mm程度)で充分であり、片側のフォーク3を移動するだけで対応できる。
【0038】
尚、搖動体5は、先の例では、シフトシリンダ4に依り横動されるフォーク3とは異なる側のフォーク3に設けたが、これに限らず、例えばシフトシリンダ4に依り横動されるのフォーク3に設けても良い。
【0039】
搖動体5は、先の例では、下部が枢結されていたが、これに限らず、例えば上部が枢結されていても良い。この場合、重力に依り常に垂下状態に保たれるので、同状態を保つ為の保持手段を割愛する事もできる。
【0040】
搖動体5は、先の例では、棒状であったが、これに限らず、例えば板状等でも良い。
【0041】
搖動体5は、先の例では、一定の長さのものであったが、これに限らず、例えば長手方向に伸縮できると共に、その長さを保持できるものにしても良い。この様にすれば、全長を小さくして格納できるので、格納スペースを小さくできる。
【0042】
掛合手段6は、先の例では、凸部15をフォーク3側に凹部16を搖動体5側に設けたが、これに限らず、例えばこれらを逆にしても良い。
【0043】
掛合手段6の凹部16は、先の例では、隣接するピンに依り形成したが、これに限らず、例えば貫孔等にしても良い。
【符号の説明】
【0044】
1…フォークシフト装置、2…キャリッジ、3…フォーク、4…シフトシリンダ、5…搖動体、6…掛合手段、7…リフトブラケット、8…フィンガバー、9…サイドプレート、10…突条、11…垂直片、12…水平片、13…爪片、14…支軸、15…凸部、16…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能なキャリッジと、キャリッジに横動可能に設けられた左右のフォークと、一方のフォークを横動すベく設けられた単一のシフトシリンダと、何れか一方のフォークに搖動可能に設けられて当該フォークの背後に隠れる格納位置と他方のフォーク側に延びる使用位置とをとり得る搖動体と、搖動体と他方のフォークとの間に設けられて搖動体が使用位置の時には掛合される掛合手段と、から構成した事を特徴とするフォークシフト装置。
【請求項2】
掛合手段は、搖動体と他方のフォークのうちの何れか一方に設けられた凸部と、何れか他方に設けられて凸部に掛合される凹部とを備えている請求項1に記載のフォークシフト装置。
【請求項3】
掛合手段の凸部と凹部のうち少なくとも何れか一方は、フォークの横動方向に間隔を置いて複数設けられている請求項2に記載のフォークシフト装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−159138(P2010−159138A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3192(P2009−3192)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】