フグの雌雄を判別する方法
【課題】 トラフグ属に属するフグの雌雄を判別しうる方法、および、この方法に用いられる試薬を提供すること。
【解決手段】 amhrII遺伝子における雌雄特異的な多型を標的として、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別することが可能であることを見出した。また、amhrII遺伝子領域の塩基配列に相補的な少なくとも15塩基の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが、当該多型を検出するための試薬として利用可能であることを見出した。
【解決手段】 amhrII遺伝子における雌雄特異的な多型を標的として、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別することが可能であることを見出した。また、amhrII遺伝子領域の塩基配列に相補的な少なくとも15塩基の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが、当該多型を検出するための試薬として利用可能であることを見出した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別する方法に関し、より詳しくは、amhrII遺伝子領域の多型を検出することにより、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別する方法、並びにその方法に用いられるオリゴヌクレオチドを含む試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
日本において、トラフグの養殖は1933年から山口県で始まった。当初は採捕した天然魚を数ヶ月間蓄養する程度であったが、1960年に種苗生産の技術が開発され、現在では人工孵化仔魚から次世代の親魚まで飼育する完全養殖が確立している。主な産地は長崎県を筆頭とする九州各県、愛媛県、香川県、福井県であり、近年ではトラフグは、ブリ類、マダイに次ぐ日本の主要海産養殖魚種となっている。
【0003】
しかしながら、高級魚として販路は拡大したものの、その後、中国から安価な養殖トラフグが輸入されるに及び、価格は下落して、トラフグ養殖から撤退する業者も相次いだ。そこで、何らかの付加価値をつけて、トラフグ養殖を維持発展させる手法が求められるようになり、このような付加価値になり得るものとして、雌雄が判別されたトラフグが注目されている。
【0004】
トラフグの精巣(白子)にはテトロドトキシンが蓄積せず、美味であるため、精巣を発達させた雄は雌の1.5倍ほどの高値で消費者に提供されている。一方、雌のトラフグは雄よりも肉質に優れ、テッサ(フグの刺身)として珍重されている。そのため、雌雄を計画的に養殖する技術が求められてきたが、トラフグの雌雄は成体においても外観では区別することができず、調理した段階で始めて判ることであり、こと種苗(トラフグ養殖業者が購入する稚魚)の段階では雌雄を判別する方法がないのが現状である。
【0005】
したがって、もしトラフグを雄化又は雌化させるような飼育方法があれば、また種苗の段階で雌雄を判別できる方法があれば、生産者の収入の増加に直結し、購入する業者も計画的な販売を画することができると考えられる。
【0006】
トラフグを雄化又は雌化させるような飼育方法に関しては、近畿大学のグループが富山湾の深層水を利用し、13〜17℃の長期低温飼育により、トラフグの雄化に成功した例がある(特許文献1)。また、メス化を誘導するホルモンの生成酵素アロマターゼの阻害剤投与により雄化した例も知られている(非特許文献1)。しかしながら、このような処置を講じなければトラフグの性は転換せず、前述のような低温飼育では成体になるまでに時間がかかってしまうため、実用化においては難がある。また、前述のような薬剤投与による方法においては、用いられる薬剤の人体への影響は短期間で確認できないため、かかる方法で養殖された魚体を食用とすることには安全性の観点から難がある。
【0007】
一方、種苗の段階で雌雄を判別できる方法に関して、その基盤となるのが、性決定遺伝子と性決定機構の情報である。性がどのように決定されているのかは種間で大きな相違が見られるが、ヒトの性決定遺伝子はSRYというY染色体上にある遺伝子であり、染色体の組み合わせがXYの時オスに、XXの時メスになることはよく知られている(非特許文献2)。ヒトの場合は、SRYを含むY染色体上のほとんどの領域が組換えを起こさないので(連鎖不平衡状態)、父親のY染色体上の配列は常にSRYと共に男子に伝達される。従って、Y染色体上の任意の配列を用いて、遺伝的雌雄を判別することが可能である。トラフグでも同様の手法が有効と予想できるが、性決定遺伝子は生物間で異なっており、SRYに類似する遺伝子をトラフグは持たない。このような背景のもと、本発明者らはトラフグがゲノムプロジェクトの対象動物である(非特許文献3)ことを利用し、オス決定遺伝子が19番染色体上に存在していることを証明した(非特許文献4、非特許文献5)。
【0008】
しかしながら、ヒトのY染色体と異なり、トラフグの19番染色体は、その大部分の領域で相同染色体間組換えを起こすことが示されているため、トラフグの雌雄判別を行うためには、トラフグのオス決定遺伝子と組換えを起こさない領域(SD領域)を同定し、さらにSD領域内において雌雄判別に用いることのできる多型を見つけることが必要であった。
【0009】
このように、出荷されるトラフグに付加価値を付与するためにも、種苗の段階でトラフグの雌雄を判別できる方法等の開発が求められているものの、実用化されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−136708号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Rashidら、Sexual Development、2007年、1巻、311〜322ページ
【非特許文献2】Sinclairら、Nature、1990年、346巻、240〜244ページ
【非特許文献3】Aparicioら、Science、2002年、297巻、1301〜1310ページ
【非特許文献4】Kikuchiら、Genetics、2007年、175巻、2039〜2042ページ
【非特許文献5】Kaiら、Genetics、2005年、171巻、227〜238ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便迅速、かつ、種苗段階においても、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別しうる方法を提供することにある。さらに本発明は、この方法に用いられる試薬を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、トラフグの雌雄を決定する遺伝的要因の特定を試みた。まず、トラフグの複数の解析家系を作出し、411個体を用いた連鎖解析を行いSD領域を絞り込み、さらに1034個体のSD領域付近における染色体交差を調べ、SD領域を18kbまで絞り込んだ。そして、この領域を解析したところ、オス特異的なタンパク質をコードする遺伝子は確認されなかったが、anti−Mullerian hormone receptor type II遺伝子(amhrII遺伝子)、およびNFX1−type zinc finger−containing protein 1様遺伝子(NFX1様遺伝子)という2つの既知遺伝子が存在することを見出した。
【0014】
次に、本発明者らは、8家系のトラフグのSD領域の塩基配列を調べたところ、amhrII遺伝子に雌雄特異的な分布を示す一塩基多型(SNP)が複数存在することを見出した(そのうちの1例については図1を参照のこと)。この雌雄特異的な分布は、天然魚(雌57個体及び雄47個体)でも認められるのに対して、SD領域外では雌雄特異的な多型の分布は全く認められなかった。同様の雌雄特異的な分布は約500万年前に分岐した近縁種であるヒガンフグにも認められた。これらの結果は、同定したSNPsがオス決定遺伝子と、少なくとも500万年間は組換えを起していない領域内に存在することを示している。
【0015】
このように雌雄特異的な分布を示す多型が見出されたことから、本発明者らは、さらに、この多型を標的とした雌雄の判別を試みた。その結果、この多型をダブルダイプローブ法又はHRM(high resolution melting、高分解融解曲線解析)法を用いて検出することによって、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別することが可能であることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明は、amhrII遺伝子における雌雄特異的な多型を標的としたトラフグ属に属するフグの雌雄を判別する方法、および、この方法に用いられる試薬に関し、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。
(1) 次の工程を含む、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別するための方法
(a)トラフグ属に属する被検フグが有する、amhrII遺伝子領域の多型を検出する工程
(b)工程(a)で検出した前記多型に基づいて前記被検フグの雌雄を判別する工程、
(2) 前記多型が一塩基多型である、(1)に記載の方法
(3) 前記多型が、配列番号:1に記載の塩基配列の3798位における一塩基多型である、(1)又は(2)に記載の方法、
(4) 以下の(a)〜(f)の工程を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法
(a)トラフグ属に属する被検フグからDNA試料を調製する工程
(b)amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列に相補的な塩基配列を有し、レポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素が標識されたオリゴヌクレオチドプローブを調製する工程
(c)前記DNA試料に、前記オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせる工程
(d)前記オリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズした前記DNA試料を鋳型として、amhrII遺伝子領域の前記多型を含む塩基配列を増幅する工程
(e)前記増幅に伴うオリゴヌクレオチドプローブの分解により、前記レポーター蛍光色素が発する蛍光を検出する工程
(f)工程(e)で検出した前記蛍光を対照と比較する工程、
(5) 以下の(a)〜(d)の工程を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法
(a)トラフグ属に属する被検フグからDNA試料を調製する工程
(b)DNA二重鎖間に挿入されると蛍光を発するインターカレーターを含む反応系において、前記DNA試料を鋳型として、amhrII遺伝子領域の前記多型を含む塩基配列を増幅する工程
(c)前記反応系の温度を変化させ、前記インターカレーターが発する蛍光の強度の変動を検出する工程
(d)工程(c)で検出した前記温度の変化に伴う前記蛍光の強度の変動を対照と比較する工程、
(6) (1)〜(5)のうちのいずれか一項に記載の方法に用いられるための試薬であって、amhrII遺伝子領域の塩基配列に相補的な少なくとも15塩基の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む試薬。
(7) オリゴヌクレオチドが、以下の(a)〜(b)に記載のオリゴヌクレオチドのうちのいずれかである、(6)に記載の試薬。
(a)amhrII遺伝子領域の多型を挟み込むように設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマー
(b)amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブ
【発明の効果】
【0017】
本発明により、amhrII遺伝子領域の多型を標的として、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別する方法、および該方法に用いられる試薬が提供された。これにより、簡便かつ迅速に、かつ、性成熟前の種苗段階においても、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】トラフグの性染色体上のamhrII遺伝子領域内に存在するSNPの一例を示す図である。図1中、斜字で記載されているのがSNPであり、X染色体においてはCとなっており、Y染色体においてはGとなっていること、すなわちX/X遺伝子型を有する雌はC/Cであり、X/Y遺伝子型を有する雄はC/Gであることを示す。また図1中の数字はamhrII遺伝子の第一エクソンの5’末端を1番目とした時に何番目の塩基であることを示す。
【図2】トラフグ属に属するフグの雌雄を判別するための方法の作業工程の一形態を示す概略図である。
【図3】トラフグの性染色体上のamhrII遺伝子領域内における、トラフグの雌雄を判別するために用いたダブルダイプローブ法用のオリゴヌクレオチドプローブと、ダブルダイプローブ法及びHRM法用のオリゴヌクレオチドプライマーセットとの位置関係を示す概略図である。なお図3中、5’側の下線が付されており且つ大文字で表記されている塩基配列はフォワードプライマーの塩基配列を示し、3’側の下線が付されており且つ大文字で表記されている塩基配列はリバースプライマーに相補的な塩基配列を示す。また図3中、四角で囲まれており且つ大文字で表記されている塩基配列はオリゴヌクレオチドプローブの配列を示し、その中で斜字で記載されているのがSNPであり、文字の前に+が付された塩基はLNAであることを示している。さらに図3中の数字はamhrII遺伝子の第一エクソンの5’末端を1番目とした時に何番目の塩基であることを示す。
【図4】ダブルダイプローブ法によるトラフグの雌雄の判別結果を示すプロット図である。緑色のプロットは雌、赤色は雄を示す。他の色は、後述の解析ソフトでは他のグループに属すると判断したプロットである。なお図4中、縦軸は533〜580nm、横軸は465〜510nmの蛍光強度を表している。また、縦軸に平行なプロット(緑色のプロット)は雌であることを示し、60°程度の角度の直線状にプロット(赤色のプロット)は雄であることを示している。さらに、灰色のプロットは蛍光量が少なかったもの、他の色は解析ソフトが他のグループに区分したものを示している。
【図5】HRM法によるトラフグの雌雄の判別結果を示すグラフである。図5中、左側は、HRM解析の結果を示し、それらの縦軸は標準サンプルと他のサンプルの蛍光強度の差を表わし、横軸は融解温度を表わす(なお、明らかに解析不能であるサンプルは除去して表示してある)。また図5中右側はメルティングカーブの微分値のカーブの中から,典型的な雌雄のカーブを示した。すなわち、メルティングカーブ微分曲線のグラフにおいて,高い1本のピークのみを示しているのが雌個体由来のサンプルを示しており,その左側に低いピークを併せ持っているカーブが雄個体由来のサンプルを示している。図5中A及びBは方法1(インターカレーターとしてLCGreen Plus(Roche社製)を使用した方法)、C及びDは方法2(インターカレーターとしてEvaGreen(Bio−Rad社製)を使用した方法)、E及びFは方法3(インターカレーターとしてLCGreen Plus(Idaho Tchnology 社製)を使用した方法)による結果を各々示している。また、図5左側において、HRM解析において,基線とその付近の線は青で示し,基線から逸脱して別のグループであると後述の解析ソフトが判断した線を赤で示した。なお、図5左側において、Aは雌個体由来のサンプルを基線とし、C及びEは雄個体由来のサンプルを基線としている。
【図6】HRM法によるヒガンフグの雌雄の判別結果を示すグラフである。図6中、雌雄それぞれ4個体のメルティングカーブの微分値のカーブを示す。なお、トラフグと同様に、高い1本のピークのみを示しているのが雌個体由来のサンプルを示しており(赤線),その左側に低いピークを併せ持っているカーブが雄個体由来のサンプルを示している(灰色の線)。
【図7】HRM法によるコモンフグの雌雄の判別結果を示すグラフである。図7中、雌雄それぞれ4個体のメルティングカーブの微分値のカーブを示す。なお、トラフグと同様に、高い1本のピークのみを示しているのが雌個体由来のサンプルを示しており(赤線),その左側に低いピークを併せ持っているカーブが雄個体由来のサンプルを示している(灰色の線)。
【図8】HRM法によるゴマフグの雌雄の判別結果を示すグラフである。図8中、雌雄それぞれ4個体のメルティングカーブの微分値のカーブを示す。なお、トラフグと同様に、高い1本のピークのみを示しているのが雌個体由来のサンプルを示しており(赤線),その左側に低いピークを併せ持っているカーブが雄個体由来のサンプルを示している(灰色の線)。
【図9】ヒガンフグ、コモンフグ、及びゴマフグの性染色体上のamhrII遺伝子領域内に存在するSNPの一例を示す図である。図9中、斜字で記載されているのがSNPであり、トラフグと同様に、X染色体においてはCとなっており、Y染色体においてはGとなっている。また図9中の数字はトラフグamhrII遺伝子を参照配列として用い、その第一エクソンの5’末端を1番目とした時に何番目の塩基であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のトラフグ属に属するフグの雌雄を判別するための方法は、下記工程を含むことを特徴とする方法である。
(a)トラフグ属に属する被検フグが有する、amhrII遺伝子領域の多型を検出する工程
(b)工程(a)で検出した前記多型に基づいて前記被検フグの雌雄を判別する工程。
【0020】
本発明において「トラフグ属に属するフグ」とは、フグ目(Tetraodontiformes)フグ科(Tetraodontidae)トラフグ属(Takifugu)に属する硬骨魚を意味する。しかしながら、魚類において、属を超えて雑種が発生する場合は多々あることから、本発明においては、トラフグ属に属する硬骨魚と他の硬骨魚との雑種として発生した硬骨魚をも含む。トラフグ属に属するフグとしては、例えば、トラフグ、ヒガンフグ、コモンフグ、ゴマフグおよびこれらの雑種が挙げられる。
【0021】
本発明において「amhrII(anti−Mullerian hormone receptor type II)遺伝子」とは、典型的には配列番号:1に記載のDNA配列からなる、トラフグ由来の遺伝子である。しかしながら、遺伝子のDNA配列は、その変異などにより、自然界において(すなわち、非人工的に)変異しうる。従って、本発明においては、このような天然の変異体もamhrII遺伝子に含まれる。
【0022】
なお、amhrII遺伝子がコードするタンパク質は、TGFβ受容体ファミリーII型に属する受容体であり(Schmiereら、Nature Rev.Mol.Cell.Biol.8巻、970〜981ページ 参照)、哺乳類においては、精巣のセルトリ細胞から分泌されたanti−Mullerianホルモンが、精巣の間質細胞表面上の受容体(amhrII)に結合し、ミューラー管の発達を抑制することが知られている(Jaminら、Molecular and Cellular Endocrinology、2003年、211巻、15〜19ページ 参照)。さらに、メダカのamhrII遺伝子に変異が生じた個体の生殖腺は、精巣、卵巣とも肥大し、さらにY染色体を持った個体の半数が性転換していること(Morinagaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、2007年、104巻、9691〜9696ページ 参照)から、amhrII遺伝子が生殖腺の発達にとってなんらかの役割を果たしていることは示唆されている。
【0023】
また、本発明において「amhrII遺伝子領域」とはamhrII遺伝子を含むゲノムDNA上の一定領域を意味する。該領域には、amhrII遺伝子の発現制御領域(例えば、プロモーター領域、エンハンサー領域)やamhrII遺伝子の3’末端非翻訳領域などが含まれる。
【0024】
本発明において「多型」とは、遺伝学的には、母集団中1%以上の頻度で存在している塩基変化と一般的に定義される。しかしながら、本発明における「多型」は、この定義に制限されず、1%未満の塩基の変化も「多型」に含む。本発明における多型の種類としては、例えば、一塩基多型、一から数十塩基(時には数千塩基)が欠失、置換あるいは挿入している多型等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、多型部位の数についても特に制限はなく、1個以上の多型を有していてもよい。
【0025】
本発明における多型としては、amhrII遺伝子領域内に存在し、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別することに利用することができるものであれば特に制限はないが、好ましくはamhrII遺伝子領域内に存在する1塩基多型であり、より好ましくはamhrII遺伝子の第一エクソンの5’末端を1番目とした時に3798番目(例えば、配列番号:1に記載の塩基配列において、3798位の塩基)の塩基部位における1塩基多型である。また、前記3798番目の多型としては、好ましくはGまたはCである。そして、かかる場合、前記3798番目の多型としてGが検出された場合、トラフグ属に属する被検フグは雄と判断され、前記3798番目の多型としてCのみが検出された場合、トラフグ属に属する被検フグは雌と判断される。
【0026】
本発明において「多型を検出する」とは、原則として、ゲノムDNA上の多型を検出することを意味するが、当該ゲノムDNA上の多型が転写産物における塩基の変化や翻訳産物におけるアミノ酸の変化に反映される場合には、これら転写産物や翻訳産物における当該変化を検出すること(即ち、間接的な検出)をも含む意味である。
【0027】
以下、本発明の方法の好ましい態様を記載するが、本発明の方法はそれらの方法に限定されるものではない。
【0028】
本発明の方法の好ましい態様は、被検フグのamhrII遺伝子領域の塩基配列を直接決定することにより、多型を検出する方法である。この方法においては、先ずトラフグ属に属する被検フグからDNA試料を調製する。DNA試料は、例えば被検フグの粘膜(体表粘膜、口腔粘膜等)、皮膚、血液、鰭から調製することができるが、被検フグに対する侵襲性が低く、また試料の調製が容易であるという観点から、体表粘膜から調製することが好ましい。DNA試料としては、ゲノムDNA試料、およびRNAからの逆転写によって調製されるcDNA試料が挙げられる。
【0029】
かかる被検フグの組織からゲノムDNAまたはRNAを抽出する方法としては特に制限はなく、公知の手法を適宜選択して用いることができ、例えば、ゲノムDNAを抽出する方法としては、SDSフェノール法(尿素を含む溶液又はエタノール中に保存した組織を、タンパク質分解酵素(proteinase K)、界面活性剤(SDS)、及びフェノールで該組織のタンパク質を変性させ、エタノールで該組織からDNAを沈殿させ抽出する方法)、Clean Columns(登録商標、NexTec社製)、AquaPure(登録商標、Bio-Rad社製)、ZR Plant/Seed DNA Kit(Zymo Research社製)、AquaGenomicSolution(登録商標、Mo Bi Tec社製)、prepGEM(登録商標、ZyGEM社製)、BuccalQuick(登録商標、TrimGen社製)を用いるDNA抽出方法が挙げられる。これらの中では、10分以内に粘液からDNAを抽出する方法を選択する場合、迅速にフグの粘液からDNAを効率良く抽出できるという観点から、BuccalQuickを用いるDNA抽出方法が好ましい。また、RNAを抽出する方法としては、例えば、フェノールとカオトロピック塩とを用いた抽出方法(より具体的には、トリゾール(Invitrogen社製)、アイソジェン(和光純薬社製)等の市販キットを用いた抽出方法)や、その他市販キット(RNAPrepトータルRNA抽出キット(Beckman Coulter社製)、RNeasy Mini(QIAGEN社製)、RNA Extraction Kit(Pharmacia Biotech社製)等)を用いた方法が挙げられる。さらに、抽出したRNAからcDNAを調製するのに用いられる逆転写酵素としては特に制限されることなく、例えば、RAV(Rous associated virus)やAMV(Avian myeloblastosis virus)等のレトロウィルス由来の逆転写酵素や、MMLV(Moloney murine leukemia virus)等のマウスのレトロウィルス由来の逆転写酵素が挙げられる。
【0030】
この態様においては、次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを単離し、単離したDNAの塩基配列を決定する。該DNAの単離は、例えば、後述する、amhrII遺伝子領域の多型を挟み込むように設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ゲノムDNA、あるいはRNAを鋳型としたPCR等によって行うことができる。単離したDNAの塩基配列の決定は、マキサムギルバート法やサンガー法など当業者に公知の方法で行うことができる。
【0031】
決定したDNAの塩基配列を対照(トラフグ属に属するフグの雄のDNAの塩基配列又は雌のDNAの塩基配列)と比較することにより、被検フグの雌雄を判別することができる。
【0032】
本発明の雌雄を判別するための方法は、上記の如く被検フグ由来のDNAの塩基配列を直接決定する方法以外に、多型の検出が可能な種々の方法によって行うことができる。
【0033】
例えば、本発明における多型の検出は、以下のような方法によっても行うことができる。まず、トラフグ属に属する被検フグからDNA試料を調製する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列に相補的な塩基配列を有し、レポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素が標識されたオリゴヌクレオチドプローブを調製する。そして、前記DNA試料に、前記オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、さらに前記オリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズした前記DNA試料を鋳型として、amhrII遺伝子領域の前記多型を含む塩基配列を増幅する。そして、前記増幅に伴うオリゴヌクレオチドプローブの分解により、前記レポーター蛍光色素が発する蛍光を検出し、次いで検出した前記蛍光を対照と比較する。このような方法としては、ダブルダイプローブ法、いわゆるTaqMan(登録商標)プローブ法が挙げられる。
【0034】
具体的には、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブの5’末端にレポーター蛍光色素を標識する。本発明において用いるレポーター蛍光色素としては、例えば、FAM、VIC(登録商標)、Yakima Yellow(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、上記プローブの3’末端にクエンチャー蛍光色素を標識する。本発明において用いるクエンチャー蛍光色素としては、レポーター蛍光を消光できる物質であれば特に制限されず、例えば、Eclipse(登録商標)Dark Quencher、TAMRA、DABCYLが挙げられる。次いで、レポーター蛍光色素およびクエンチャー蛍光色素が標識されたオリゴヌクレオチドプローブを、被検フグから調製したDNAにハイブリダイズさせる。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを、5’−3’エクソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを用いて増幅する。この増幅過程において、DNAポリメラーゼの5’−3’エクソヌクレアーゼ活性により、レポーター蛍光色素とクエンチャー蛍光色素とを標識したオリゴヌクレオチドプローブが分解されて、レポーター蛍光色素が遊離する。本発明において、5’−3’エクソヌクレアーゼを有するDNAポリメラーゼとしては、好適にはTaqDNAポリメラーゼが例示できるが、これに限定されるものではない。本方法においては、次いで、遊離したレポーター蛍光色素が発する蛍光を検出し、さらに、該蛍光を対照と比較する。なお、本方法においては、amhrII遺伝子領域の多型部位の塩基がY染色体由来である場合とX染色体由来である場合で異なるレポーター蛍光色素を標識した2種類のオリゴヌクレオチドプローブを用いることで、1回の反応でタイピングすることが可能である。
【0035】
さらに別の方法においては、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、DNA二重鎖間に挿入されると蛍光を発するインターカレーターを含む反応系において、前記DNA試料を鋳型として、amhrII遺伝子領域の前記多型を含む塩基配列を増幅する。そして、前記反応系の温度を変化させ、前記インターカレーターが発する蛍光の強度の変動を検出し、検出した前記温度の変化に伴う前記蛍光の強度の変動を対照と比較する。このような方法としては、HRM(high resolution melting、高分解
融解曲線解析)法が挙げられる。
【0036】
本発明において、インターカレーターとしてはDNA二重鎖間に挿入されると蛍光を発するものであれば特に制限されず、例えば、SYBR Green、LCGreen、LCGreenPlus、EvaGreen、SYTO9が挙げられる。
【0037】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを増幅する。さらに、増幅したDNAを制限酵素により切断する。次いで、DNA断片をその大きさに応じて分離する。次いで、検出されたDNA断片の大きさを、対照と比較する。このような方法としては、例えば、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism/RFLP)を利用した方法やPCR−RFLP法等が挙げられる。
【0038】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを増幅する。さらに、増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる。次いで、解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離する。分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度を対照と比較する。このような方法としては、例えばPCR−SSCP(single−strand conformation polymorphism、一本鎖高次構造多型)法が挙げられる。
【0039】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを増幅する。さらに、増幅したDNAを、DNA変性剤の濃度が次第に高まるゲル上で分離する。次いで、分離したDNAのゲル上での移動度を対照と比較する。このような方法としては、例えば、変性剤濃度勾配ゲル(denaturant gradient gel electrophoresis:DGGE法)が挙げられる。
【0040】
さらに別の方法としては、被検フグから調製したamhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNA、および、該DNAにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが固定された基板、を用いる方法がある。このような方法としては、例えば、DNAアレイ法等が挙げられる。
【0041】
本発明において「基板」とは、オリゴヌクレオチドプローブを固定することが可能な板状の材料を意味する。本発明の基板は、オリゴヌクレオチドプローブを固定することができれば特に制限はないが、一般にDNAアレイ技術で使用される基板を好適に用いることができる。一般にDNAアレイは、高密度に基板にプリントされた何千ものヌクレオチドで構成されている。通常これらのDNAは非透過性(non−porous)の基板の表層にプリントされる。基板の表層は、一般的にはガラスであるが、透過性(porous)の膜、例えばニトロセルロースメンブレムを使用することができる。本発明において、ヌクレオチドの固定(アレイ)方法として、Affymetrix社開発によるオリゴヌクレオチドを基本としたアレイが例示できる。オリゴヌクレオチドのアレイにおいて、オリゴヌクレオチドは通常インサイチュ(in situ)で合成される。例えば、photolithographicの技術(Affymetrix社)、および化学物質を固定させるためのインクジェット(Rosetta Inpharmatics社)技術等によるオリゴヌクレオチドのインサイチュ合成法が既に知られており、いずれの技術も本発明の基板の作製に利用することができる。
【0042】
基板に固定するオリゴヌクレオチドプローブは、amhrII遺伝子領域の多型を検出することができるものであれば、特に制限されない。該プローブは、例えば、amhrII遺伝子領域の多型部位を含む塩基配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブである。特異的なハイブリダイズが可能であれば、オリゴヌクレオチドプローブは、amhrII遺伝子領域の多型部位を含む塩基配列に対し、完全に相補的である必要はない。本発明において基板に結合させるヌクレオチドプローブの長さは、オリゴヌクレオチドを固定する場合は、通常15〜100塩基であり、好ましくは15〜50塩基であり、さらに好ましくは15〜25塩基である。
【0043】
本方法においては、次いで、該DNAと該基板を接触させる。この過程により、上記オリゴヌクレオチドプローブに対し、DNAをハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの反応液および反応条件は、基板に固定するヌクレオチドプローブの長さ等の諸要因により変動しうるが、一般的に当業者に周知の方法により行うことができる。
【0044】
本方法においては、次いで、該DNAと該基板に固定されたヌクレオチドプローブとのハイブリダイズの強度を検出する。この検出は、例えば、蛍光シグナルをスキャナー等によって読み取ることによって行うことができる。なお、DNAアレイにおいては、一般的にスライドガラスに固定したDNAをプローブといい、一方溶液中のラベルしたDNAをターゲットという。従って、基板に固定された上記ヌクレオチドを、本明細書においてヌクレオチドプローブと記載する。本方法においては、さらに、検出したハイブリダイズの強度を対照と比較する。
【0045】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。また、「amhrII遺伝子領域の多型部位の塩基の1塩基3’側の塩基およびその3’側の塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマ―」を調製する。次いで、該DNAを鋳型とし、該プライマーを用いて、ddNTPプライマ―伸長反応を行う。次いで、プライマ―伸長反応産物を質量分析機にかけ、質量測定を行う。次いで、質量測定の結果から遺伝子型を決定する。次いで、決定した遺伝子型を対照と比較する。このような方法としては、例えば、MALDI−TOF/MS法が挙げられる。
【0046】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、5’−「amhrII遺伝子領域の多型部位の塩基およびその5’側の塩基配列と相補的な塩基配列」−「amhrII遺伝子領域の多型部位の1塩基3’側の塩基およびその3’側の塩基配列とハイブリダイズしない塩基配列」−3’(フラップ)からなるオリゴヌクレオチドプローブを調製する。また、「amhrII遺伝子領域の多型部位の塩基およびその3’側の塩基配列と相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプローブ」を調製する。次いで、調製したDNAに、上記2種類のオリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせる。次いで、ハイブリダイズしたDNAを一本鎖DNA切断酵素で切断し、フラップを遊離させる。本発明において、一本鎖DNA切断酵素としては、特に制限はなく、例えばcleavaseが挙げられる。本方法においては、次いで、フラップと相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドプローブであって、レポーター蛍光およびクエンチャー蛍光が標識されたオリゴヌクレオチドプローブをフラップにハイブリダイズさせる。次いで、発生する蛍光の強度を測定する。次いで、測定した蛍光の強度を対照と比較する。このような方法としては、例えば、Invader法が挙げられる。
【0047】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを増幅する。そして、増幅したDNAを一本鎖に解離させ、解離させた一本鎖DNAのうち、片鎖のみを分離する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位の塩基の近傍より1塩基ずつ伸長反応を行い、その際に生成されるピロリン酸を酵素的に発光させ、発光の強度を測定する。そして、測定した蛍光の強度を対照と比較する。このような方法としては、例えば、Pyrosequencing法が挙げられる。
【0048】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを増幅する。次いで、「amhrII遺伝子領域の多型部位の塩基の1塩基3’側の塩基およびその3’側の塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマ―」を調製する。次いで、蛍光ラベルしたヌクレオチド存在下で、増幅したDNAを鋳型とし、調製したプライマーを用いて一塩基伸長反応を行う。そして、蛍光の偏光度を測定する。次いで、測定した蛍光の偏光度を対照と比較する。このような方法としては、例えば、AcycloPrime法が挙げられる。
【0049】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを増幅する。次いで、「amhrII遺伝子領域の多型部位の塩基の1塩基3’側の塩基およびその3’側の塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマ−」を調製する。次いで、蛍光ラベルしたヌクレオチド存在下で、増幅したDNAを鋳型とし、調製したプライマ−を用いて、一塩基伸長反応を行う。次いで、一塩基伸長反応に使われた塩基種を判定する。次いで、判定された塩基種を対照と比較する。このような方法として、例えば、SNuPE法が挙げられる。
【0050】
また、上記以外の方法として、特定位置の変異のみを検出する目的にはアレル特異的オリゴヌクレオチド(Allele Specific Oligonucleotide/ASO)ハイブリダイゼーション法が利用できる。変異が存在すると考えられる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを作製し、これとDNAでハイブリダイゼーションを行わせると、変異が存在する場合、ハイブリッド形成の効率が低下する。それをサザンブロット法や、特殊な蛍光試薬がハイブリッドのギャップにインターカレーションすることにより消光する性質を利用した方法等により検出することができる。
【0051】
以上、本発明の好ましい態様について説明したが、本発明のトラフグ属に属するフグの雌雄を判別するための方法は上記態様に限定されるものではない。例えば、多型がamhrIIタンパク質におけるアミノ酸の変化(例えば、置換、欠失、挿入)を伴うものであれば、トラフグ属に属する被検フグから調製される試料はタンパク質であってもよい。このような場合、多型を検出するには、該多型によりアミノ酸の変化が生じた部位に特異的に結合する分子(例えば、抗体、アプタマー)を用いる方法を用いることができる。かかる方法としては、例えば、ウェスタンブロッティング法、ELISA法、免疫沈降法、表面プラズモン共鳴法、抗体アレイを用いた解析方法が挙げられる。
【0052】
さらに、本発明は、本発明のトラフグ属に属するフグの雌雄を判別するための方法に用いられるための試薬であって、amhrII遺伝子領域の塩基配列に相補的な少なくとも15塩基の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む試薬を提供する。当該オリゴヌクレオチドには、オリゴヌクレオチドプライマーおよびオリゴヌクレオチドプローブの双方が含まれる。当該オリゴヌクレオチドは、上記本発明の方法に使用し得る限り、amhrII遺伝子領域の塩基配列に対して完全に相補的である必要はない。
【0053】
本発明のオリゴヌクレオチドの一つの好ましい態様は、amhrII遺伝子領域の多型を挟み込むように設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマーである。該オリゴヌクレオチドプライマーの長さは、通常15〜100塩基であり、好ましくは17〜30塩基である。
【0054】
本発明のオリゴヌクレオチドの他の好ましい態様は、amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(例えば、アニーリング温度を50℃としたPCR反応)において、amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列にハイブリダイズし、一方、他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないものが好ましい。このような特異的なハイブリダイズが可能であれば、該オリゴヌクレオチドプローブは、amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列に対し、完全に相補的である必要はない。
【0055】
該オリゴヌクレオチドプローブは、適宜標識して用いることが好ましい。標識する方法としては、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて、オリゴヌクレオチドの5’端を32Pでリン酸化することにより標識する方法、およびクレノウ酵素等のDNAポリメラーゼを用い、ランダムヘキサマーオリゴヌクレオチド等をプライマーとして32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識された基質塩基を取り込ませる方法(ランダムプライム法等)を例示することができる。
【0056】
本発明のオリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブは、例えば市販のオリゴヌクレオチド合成機により作製することができる。オリゴヌクレオチドプローブは、制限酵素処理等によって取得される二本鎖DNA断片として作製することもできる。また、本発明のオリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブは、天然のヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド(DNA)やリボヌクレオチド(RNA))のみから構成されていなくともよく、非天然型のヌクレオチドにてその一部又は全部が構成されていてもよい。本発明に用いられる非天然型のヌクレオチドとしては、天然のヌクレオチドと同様の機能を有するものであれば特に制限されないが、amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列等に対するハイブリダイゼーションの効率を上昇させ、オリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブの鎖長を短くすることができるという観点から、PNA(polyamide nucleic acid)、LNA(登録商標、locked nucleic acid)、ENA(登録商標、2’−O,4’−C−Ethylene−bridged nucleic acids)、及びこれらの複合体が好ましい。なお、PNAは、DNAやRNAのリン酸と5炭糖からなる主鎖をポリアミド鎖に置換したものである。LNAとはBNA(Bridged Nucleic Acid、架橋化核酸)とも称され、ヌクレオチドの2’の酸素と4’の炭素を架橋したRNAである。
【0057】
上記の試薬においては、有効成分であるオリゴヌクレオチド以外に、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、緩衝剤、保存剤等が必要に応じて混合されていてもよい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
<簡易DNA抽出法>
トラフグからのDNAの抽出は、DNA抽出キット BuccalQuick(登録商標、TrimGen社製)を用いて行った。すなわち、先ずキット付属のマニュアルに従い、キット中の300μLの溶液と7μLの酵素液とを均一に混ぜてDNA抽出液を調製し、8連PCRチューブ(QSP(登録商標)435440、Quality Scientific Plastics社製)に1チューブあたり25μLずつ分注した。なお、この状態で、室温にて1日保存しても十分に使用に耐え得ることは確認した。
【0060】
次に、90〜180日齢のトラフグを飼育水槽から柄つき網で掬い取り、平板なテーブルの上に乗せた(図2中(1)及び(2)参照)。トラフグは体型上、背面を真上にしてうつぶせの状態で静止するため、背鰭の根元側面を、木製の爪楊枝の太い先端(爪楊枝として使用する場合は指先でつまむ側)でなぞり、前記DNA抽出液中に入れた(図2中(2)及び(3)参照)。そして、チューブに差し込んだままにして、約5分間以内に爪楊枝を溶液中で撹拌したうえで廃棄した。このようにして粘膜(体表粘膜)を加えたDNA抽出液が入っているチューブを、サーマルサイクラー(MP TP3300、タカラバイオ社製)にて、55℃で4分間、90℃で6分間処理し、室温に戻し、粘膜中の細胞からDNAを抽出した。そして、3,200×gで約10秒間遠心分離し、後述のSNP判別法に供した。なお、一回のSNP判別の検査あたり384個体を使用した。
【0061】
また、粘液を採取したトラフグはただちに個別仕切り網に回収した。本実施例に用いた個別仕切り網は、図2中(1)に示したものであり、体長(口吻先端から尾柄基部までの長さ)約5cmのトラフグ(90日齢前後)を回収するための仕切り網で、64個体を回収できる。また網の周囲にはフロートを取り付け、水面に浮かべることができる。サイズは縦1050mm×横1050mm×高260mmで、8×8区画に分けてある。別に、トラフグの体サイズに合わせて、同様の仕切り網を使用する。
【0062】
(実施例1) ダブルダイプローブ法によるトラフグの雌雄判別
先ず、トラフグから調製した前記DNA試料を用いた雌雄(SNP)判別方法として、いわゆるTaqMan(登録商標)プローブ法を試した。本法に用いたオリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブを、表1及び図3に示す。なお、プライマーとプローブの設計および合成は株式会社ニッポンイージーティーに委託した。いずれもHPLC精製標品である。
【0063】
表1及び図3に示す通り、X染色体SNP検出用プローブ及びY染色体SNP検出用プローブは、amhrII遺伝子領域の多型(配列番号:1に記載の塩基配列の3798位)を含む塩基配列に相補的な塩基配列であり、各々のプローブが検出する多型に対応して、5’末端から数えて11番目の塩基がCまたはGとなっている。また、プローブ配列の一部にLNA(登録商標、locked nucleic acid、図中文字の前に+が付された塩基がLNAである)を用いた。LNAとはBNA(Bridged Nucleic Acid、架橋化核酸)とも称され、ヌクレオチドの2’の酸素と4’の炭素を架橋したRNAである。LNAを2塩基ごとにプローブに配置することによって、ハイブリダイゼーションの効率が上昇する。そのため、プローブ長を短くすることができる。本実施例のようなSNPを検出する際には、この特徴が生かされる。すなわち、プローブ長を短くすれば、1塩基違うだけでアニーリング効率が大きく異なることになり、SNPの検出を容易にすることができるため、本実施例においてはかかるLNAを含むプローブを用いた。
【0064】
【表1】
【0065】
さらに、表1に示す通り、レポーター蛍光色素として、Y染色体SNP検出用プローブの5’端にはFAM(最大励起波長494nm、最大蛍光波長520nm)を結合させ、X染色体SNP検出用プローブの5’端にはYakima Yellow(登録商標、最大励起波長549nm、最大蛍光波長530.5nm)を結合させた。また、3’端には各々クエンチャー蛍光色素として、Eclipse(登録商標)Dark Quencherを結合させた。なお、このクエンチャー蛍光色素のエネルギー吸収能力によって、FAM、Yakima Yellow等から生じる蛍光エネルギーは吸収されるため、PCR反応前の状態、すなわち、鋳型(トラフグから調製した前記DNA)に結合している状態等においてはこれらのプローブから蛍光は発されない。しかし、PCR反応時、鋳型に結合しているプローブのヌクレオチド結合は、DNAポリメラーゼの5’−3’エクソヌクレアーゼ活性によって解離するため、レポーター蛍光色素とクエンチャー蛍光色素との物理的距離が離れて蛍光を発するようになる。従って、各レポーター蛍光色素が発する蛍光を検出することにより、トラフグから調製した前記DNA試料におけるX染色体及び/又はY染色体の有無を調べることができる。
【0066】
また、1反応あたりの反応液組成は表2に示した通りである。( )内はそれぞれプライマー名、プローブ名を示す。この反応液をLightCycler(登録商標)480 Multiwell Plate 384(Roch Applied Science社製)の各穴に加え、LightCycler(登録商標)480 System II(Roch Applied Science社製)でリアルタイムPCR反応を行った。
【0067】
【表2】
【0068】
反応条件は、プレインキュベーションを95℃で3分間行い、反復増幅蛍光測定反応は50サイクル(95℃で10秒間、50℃で10秒間、蛍光測定60℃で10秒間)、クーリングは40℃で行った。そして、測定した蛍光強度は、LightCyclerR 480ソフトウェア Version 1.5(Roche Diagnostics GmbH社製、カタログ番号:4994884)を用いて解析した。得られた結果を図4に示す。なお図4中、縦軸は533〜580nm、横軸は465〜510nmの蛍光強度を表している。
【0069】
図4に示した結果から明らかなように、X染色体SNP検出用プローブに結合したYakima Yellowの最大蛍光波長は530.5nmであるため、X染色体のみを有するトラフグは縦軸に平行なプロット(緑色のプロット)となり、雌のグループとして確認された。また、X染色体SNP検出用プローブ(雄検出用のプローブ)に結合したFAMの最大蛍光波長は520nmであるが、雄もX染色体を持つため、Yakima Yellow及びFAMの蛍光を発し、グラフ上では雄のグループは60°程度の角度の直線状にプロット(赤色のプロット)が配置される。
【0070】
このように、amhrII遺伝子領域の多型(配列番号:1に記載の塩基配列の3798位)に基づいて、ダブルダイプローブ法を用いることにより、トラフグの雌雄の判別を行うことができることが明らかになった。また、この方法を用いて384個体の雌雄を判別するのに要した時間は粘液採取から2時間程度であり、さらに、2009年7月〜8月にかけて6160個体の判別をこの方法によって行うことができた。うち、2696個体(44%)が雄、2551個体(41%)が雌、913個体が不明と判定された。不明個体から任意に16個体を選別し、再判定を行うと、判別が可能であったことから、不明と判定された理由はSNPにあるのではなく、粘液採取、その他の不定な要因が関わっていると考えられる。然るに、amhrII遺伝子領域の多型(配列番号:1に記載の塩基配列の3798位)とダブルダイプローブ法によるSNPの検出とを組み合わせることにより、トラフグの種苗を生かしたまま、簡単かつ効率良く雌雄の判別を行うことができることも明らかになった。
【0071】
(実施例2) HRM法によるトラフグの雌雄判別
次に、トラフグから調製した前記DNA試料を用いた雌雄(SNP)判別方法として、いわゆるHRM(high resolution melting、高分解融解曲線解析)法を試した。
【0072】
HRM法はインターカレーションダイリアルタイムPCR法を応用したものである。インターカレーションダイPCR法では、2本鎖DNAの溝に嵌り込んだ蛍光物質の量によって鋳型の量を決定することができる。SNP検出のために本法を用いる場合、増幅したDNAに熱を加え、水素結合の解離に伴う蛍光量減少の曲線(メルトカーブ)を求め、さらに解離度合いの差から塩基多型の有無を判断する。
【0073】
また、HRM法においては、多数検体を同時に測定するが、解析時にあるひとつの検体を任意に選び、グラフ上で水平直線として表示する。既知の検体を標準として用いても良い。その検体と同一の塩基配列を持っている他の検体の曲線は標準直線から大きく乖離しない。しかし、SNPがある場合には標準直線から大きくずれた曲線を描く。この曲線パターンの類似度から、塩基配列の異なるいくつかのグループに分けることができる。さらに、この解析での有利な点は、HRM解析ソフトではグルーピングが不明とされた場合でも、メルトカーブの微分曲線からグループを推定できることである。
【0074】
本法においては、HRM解析試薬として市販されている3種類の蛍光色素(インターカレ―タ―)として用い、オリゴヌクレオチドプライマーはダブルダイプローブ法で用いたものと同一の塩基配列を使用した。各インターカレ―タ―を含む反応系の組成は表3〜5に示す。また、本法を行うにあたっては、サーマルサイクラー内の各チューブ間の温度差を機械的に少なくするか、高い精度で補正することが要求されるため、それを可能とするLightCycler(登録商標)480 System IIを用いて行った。
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
いずれの方法においても、反応は、95℃で10分間プレインキュベーション行い、増幅反応は45サイクル(95℃で10秒間、50℃で15秒間、蛍光測定60℃で10秒間)行った後、メルトカーブ作成(95℃で1分間、40℃で1分間、65℃で1秒間、95℃まで25秒毎に1℃上昇)を行い、クーリングは40℃で10秒間かけて行った。そして、測定した蛍光強度は、LightCyclerR 480 Gene Scanningソフトウェア(Roche Diagnostics GmbH社製、カタログ番号:5103908)を用いて解析した。得られた結果を図5に示す。
【0079】
図5に示した結果から明らかなように、表3〜5に示したいずれの試薬を用いても、HRM法により雌雄差を判別することができた。また、同一のデータをもとにメルティングカーブを微分しても雌雄差を判別することができた(図5中右側のグラフ 参照)。すなわち、HRM法による解析では,図5中右側のグラフにおいて、雌のゲノムを用いた場合は単相性を示し、雄のゲノムを用いた場合は2相性を示すので、X染色体とY染色体とのSNPによってメルトカーブの位相が変化したことが分かる。また、雄の二つのピークの内、右側のピークが雌のピークと一致することから、これがX染色体由来であると判断される。
【0080】
このように、amhrII遺伝子領域の多型(配列番号:1に記載の塩基配列の3798位)に基づいて、HRM法を用いることにより、トラフグの雌雄の判別を行うことができることが明らかになった。また、この方法を用いて384個体の雌雄を判別するのに要した時間は粘液採取から2時間程度であり、雌雄の判別ができた割合は90%以上と非常に高いものであった。然るに、amhrII遺伝子領域の多型(配列番号:1に記載の塩基配列の3798位)とHRM法によるSNPの検出とを組み合わせることにより、トラフグの種苗を生かしたまま、簡単かつ効率良く雌雄の判別を行うことができることも明らかになった。
【0081】
(実施例3) トラフグ以外のトラフグ属に属するフグの雌雄判別
トラフグ属に属するフグ:ヒガンフグ、コモンフグ、及びゴマフグに関しても、amhrII遺伝子領域の多型(配列番号:1に記載の塩基配列の3798位)とHRM法によるSNPの検出とを組み合わせて、前述のトラフグの雌雄判別の方法と同様にして、これらフグにおける雌雄の判別を行った。得られた結果を図6〜8に示す。なお、かかるHRM法において、インターカレーターとしてLCGreen Plus(Idaho Tchnology 社製)を用いた。また、図9に示す通り、図に示した範囲においては、ヒガンフグ、コモンフグ、ゴマフグの性染色体上のamhrII遺伝子領域内の配列は、トラフグのその配列と同じである。
【0082】
図6〜8に示した結果から明らかなように、トラフグ同様、トラフグ属に属する他のフグ:ヒガンフグ、コモンフグ、及びゴマフグにおいても、種苗を生かしたまま、簡単かつ効率良く雌雄の判別を行うことができることが確認できた
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本発明により、amhrII遺伝子領域の多型を標的としたトラフグ属に属するフグの雌雄を判別する方法、並びにその方法に用いられる試薬が提供された。本発明の方法は、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別を簡便かつ迅速に実施することができるのみならず、性成熟前の種苗段階のフグに対して実施することもできる。従って、本発明は、トラフグの生産管理等において特に有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0084】
配列番号2〜3
<223> 人工的に合成されたプライマーの配列
配列番号4〜5
<223> 人工的に合成されたプローブの配列
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別する方法に関し、より詳しくは、amhrII遺伝子領域の多型を検出することにより、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別する方法、並びにその方法に用いられるオリゴヌクレオチドを含む試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
日本において、トラフグの養殖は1933年から山口県で始まった。当初は採捕した天然魚を数ヶ月間蓄養する程度であったが、1960年に種苗生産の技術が開発され、現在では人工孵化仔魚から次世代の親魚まで飼育する完全養殖が確立している。主な産地は長崎県を筆頭とする九州各県、愛媛県、香川県、福井県であり、近年ではトラフグは、ブリ類、マダイに次ぐ日本の主要海産養殖魚種となっている。
【0003】
しかしながら、高級魚として販路は拡大したものの、その後、中国から安価な養殖トラフグが輸入されるに及び、価格は下落して、トラフグ養殖から撤退する業者も相次いだ。そこで、何らかの付加価値をつけて、トラフグ養殖を維持発展させる手法が求められるようになり、このような付加価値になり得るものとして、雌雄が判別されたトラフグが注目されている。
【0004】
トラフグの精巣(白子)にはテトロドトキシンが蓄積せず、美味であるため、精巣を発達させた雄は雌の1.5倍ほどの高値で消費者に提供されている。一方、雌のトラフグは雄よりも肉質に優れ、テッサ(フグの刺身)として珍重されている。そのため、雌雄を計画的に養殖する技術が求められてきたが、トラフグの雌雄は成体においても外観では区別することができず、調理した段階で始めて判ることであり、こと種苗(トラフグ養殖業者が購入する稚魚)の段階では雌雄を判別する方法がないのが現状である。
【0005】
したがって、もしトラフグを雄化又は雌化させるような飼育方法があれば、また種苗の段階で雌雄を判別できる方法があれば、生産者の収入の増加に直結し、購入する業者も計画的な販売を画することができると考えられる。
【0006】
トラフグを雄化又は雌化させるような飼育方法に関しては、近畿大学のグループが富山湾の深層水を利用し、13〜17℃の長期低温飼育により、トラフグの雄化に成功した例がある(特許文献1)。また、メス化を誘導するホルモンの生成酵素アロマターゼの阻害剤投与により雄化した例も知られている(非特許文献1)。しかしながら、このような処置を講じなければトラフグの性は転換せず、前述のような低温飼育では成体になるまでに時間がかかってしまうため、実用化においては難がある。また、前述のような薬剤投与による方法においては、用いられる薬剤の人体への影響は短期間で確認できないため、かかる方法で養殖された魚体を食用とすることには安全性の観点から難がある。
【0007】
一方、種苗の段階で雌雄を判別できる方法に関して、その基盤となるのが、性決定遺伝子と性決定機構の情報である。性がどのように決定されているのかは種間で大きな相違が見られるが、ヒトの性決定遺伝子はSRYというY染色体上にある遺伝子であり、染色体の組み合わせがXYの時オスに、XXの時メスになることはよく知られている(非特許文献2)。ヒトの場合は、SRYを含むY染色体上のほとんどの領域が組換えを起こさないので(連鎖不平衡状態)、父親のY染色体上の配列は常にSRYと共に男子に伝達される。従って、Y染色体上の任意の配列を用いて、遺伝的雌雄を判別することが可能である。トラフグでも同様の手法が有効と予想できるが、性決定遺伝子は生物間で異なっており、SRYに類似する遺伝子をトラフグは持たない。このような背景のもと、本発明者らはトラフグがゲノムプロジェクトの対象動物である(非特許文献3)ことを利用し、オス決定遺伝子が19番染色体上に存在していることを証明した(非特許文献4、非特許文献5)。
【0008】
しかしながら、ヒトのY染色体と異なり、トラフグの19番染色体は、その大部分の領域で相同染色体間組換えを起こすことが示されているため、トラフグの雌雄判別を行うためには、トラフグのオス決定遺伝子と組換えを起こさない領域(SD領域)を同定し、さらにSD領域内において雌雄判別に用いることのできる多型を見つけることが必要であった。
【0009】
このように、出荷されるトラフグに付加価値を付与するためにも、種苗の段階でトラフグの雌雄を判別できる方法等の開発が求められているものの、実用化されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−136708号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Rashidら、Sexual Development、2007年、1巻、311〜322ページ
【非特許文献2】Sinclairら、Nature、1990年、346巻、240〜244ページ
【非特許文献3】Aparicioら、Science、2002年、297巻、1301〜1310ページ
【非特許文献4】Kikuchiら、Genetics、2007年、175巻、2039〜2042ページ
【非特許文献5】Kaiら、Genetics、2005年、171巻、227〜238ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便迅速、かつ、種苗段階においても、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別しうる方法を提供することにある。さらに本発明は、この方法に用いられる試薬を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、トラフグの雌雄を決定する遺伝的要因の特定を試みた。まず、トラフグの複数の解析家系を作出し、411個体を用いた連鎖解析を行いSD領域を絞り込み、さらに1034個体のSD領域付近における染色体交差を調べ、SD領域を18kbまで絞り込んだ。そして、この領域を解析したところ、オス特異的なタンパク質をコードする遺伝子は確認されなかったが、anti−Mullerian hormone receptor type II遺伝子(amhrII遺伝子)、およびNFX1−type zinc finger−containing protein 1様遺伝子(NFX1様遺伝子)という2つの既知遺伝子が存在することを見出した。
【0014】
次に、本発明者らは、8家系のトラフグのSD領域の塩基配列を調べたところ、amhrII遺伝子に雌雄特異的な分布を示す一塩基多型(SNP)が複数存在することを見出した(そのうちの1例については図1を参照のこと)。この雌雄特異的な分布は、天然魚(雌57個体及び雄47個体)でも認められるのに対して、SD領域外では雌雄特異的な多型の分布は全く認められなかった。同様の雌雄特異的な分布は約500万年前に分岐した近縁種であるヒガンフグにも認められた。これらの結果は、同定したSNPsがオス決定遺伝子と、少なくとも500万年間は組換えを起していない領域内に存在することを示している。
【0015】
このように雌雄特異的な分布を示す多型が見出されたことから、本発明者らは、さらに、この多型を標的とした雌雄の判別を試みた。その結果、この多型をダブルダイプローブ法又はHRM(high resolution melting、高分解融解曲線解析)法を用いて検出することによって、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別することが可能であることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明は、amhrII遺伝子における雌雄特異的な多型を標的としたトラフグ属に属するフグの雌雄を判別する方法、および、この方法に用いられる試薬に関し、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。
(1) 次の工程を含む、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別するための方法
(a)トラフグ属に属する被検フグが有する、amhrII遺伝子領域の多型を検出する工程
(b)工程(a)で検出した前記多型に基づいて前記被検フグの雌雄を判別する工程、
(2) 前記多型が一塩基多型である、(1)に記載の方法
(3) 前記多型が、配列番号:1に記載の塩基配列の3798位における一塩基多型である、(1)又は(2)に記載の方法、
(4) 以下の(a)〜(f)の工程を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法
(a)トラフグ属に属する被検フグからDNA試料を調製する工程
(b)amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列に相補的な塩基配列を有し、レポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素が標識されたオリゴヌクレオチドプローブを調製する工程
(c)前記DNA試料に、前記オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせる工程
(d)前記オリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズした前記DNA試料を鋳型として、amhrII遺伝子領域の前記多型を含む塩基配列を増幅する工程
(e)前記増幅に伴うオリゴヌクレオチドプローブの分解により、前記レポーター蛍光色素が発する蛍光を検出する工程
(f)工程(e)で検出した前記蛍光を対照と比較する工程、
(5) 以下の(a)〜(d)の工程を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法
(a)トラフグ属に属する被検フグからDNA試料を調製する工程
(b)DNA二重鎖間に挿入されると蛍光を発するインターカレーターを含む反応系において、前記DNA試料を鋳型として、amhrII遺伝子領域の前記多型を含む塩基配列を増幅する工程
(c)前記反応系の温度を変化させ、前記インターカレーターが発する蛍光の強度の変動を検出する工程
(d)工程(c)で検出した前記温度の変化に伴う前記蛍光の強度の変動を対照と比較する工程、
(6) (1)〜(5)のうちのいずれか一項に記載の方法に用いられるための試薬であって、amhrII遺伝子領域の塩基配列に相補的な少なくとも15塩基の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む試薬。
(7) オリゴヌクレオチドが、以下の(a)〜(b)に記載のオリゴヌクレオチドのうちのいずれかである、(6)に記載の試薬。
(a)amhrII遺伝子領域の多型を挟み込むように設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマー
(b)amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブ
【発明の効果】
【0017】
本発明により、amhrII遺伝子領域の多型を標的として、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別する方法、および該方法に用いられる試薬が提供された。これにより、簡便かつ迅速に、かつ、性成熟前の種苗段階においても、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】トラフグの性染色体上のamhrII遺伝子領域内に存在するSNPの一例を示す図である。図1中、斜字で記載されているのがSNPであり、X染色体においてはCとなっており、Y染色体においてはGとなっていること、すなわちX/X遺伝子型を有する雌はC/Cであり、X/Y遺伝子型を有する雄はC/Gであることを示す。また図1中の数字はamhrII遺伝子の第一エクソンの5’末端を1番目とした時に何番目の塩基であることを示す。
【図2】トラフグ属に属するフグの雌雄を判別するための方法の作業工程の一形態を示す概略図である。
【図3】トラフグの性染色体上のamhrII遺伝子領域内における、トラフグの雌雄を判別するために用いたダブルダイプローブ法用のオリゴヌクレオチドプローブと、ダブルダイプローブ法及びHRM法用のオリゴヌクレオチドプライマーセットとの位置関係を示す概略図である。なお図3中、5’側の下線が付されており且つ大文字で表記されている塩基配列はフォワードプライマーの塩基配列を示し、3’側の下線が付されており且つ大文字で表記されている塩基配列はリバースプライマーに相補的な塩基配列を示す。また図3中、四角で囲まれており且つ大文字で表記されている塩基配列はオリゴヌクレオチドプローブの配列を示し、その中で斜字で記載されているのがSNPであり、文字の前に+が付された塩基はLNAであることを示している。さらに図3中の数字はamhrII遺伝子の第一エクソンの5’末端を1番目とした時に何番目の塩基であることを示す。
【図4】ダブルダイプローブ法によるトラフグの雌雄の判別結果を示すプロット図である。緑色のプロットは雌、赤色は雄を示す。他の色は、後述の解析ソフトでは他のグループに属すると判断したプロットである。なお図4中、縦軸は533〜580nm、横軸は465〜510nmの蛍光強度を表している。また、縦軸に平行なプロット(緑色のプロット)は雌であることを示し、60°程度の角度の直線状にプロット(赤色のプロット)は雄であることを示している。さらに、灰色のプロットは蛍光量が少なかったもの、他の色は解析ソフトが他のグループに区分したものを示している。
【図5】HRM法によるトラフグの雌雄の判別結果を示すグラフである。図5中、左側は、HRM解析の結果を示し、それらの縦軸は標準サンプルと他のサンプルの蛍光強度の差を表わし、横軸は融解温度を表わす(なお、明らかに解析不能であるサンプルは除去して表示してある)。また図5中右側はメルティングカーブの微分値のカーブの中から,典型的な雌雄のカーブを示した。すなわち、メルティングカーブ微分曲線のグラフにおいて,高い1本のピークのみを示しているのが雌個体由来のサンプルを示しており,その左側に低いピークを併せ持っているカーブが雄個体由来のサンプルを示している。図5中A及びBは方法1(インターカレーターとしてLCGreen Plus(Roche社製)を使用した方法)、C及びDは方法2(インターカレーターとしてEvaGreen(Bio−Rad社製)を使用した方法)、E及びFは方法3(インターカレーターとしてLCGreen Plus(Idaho Tchnology 社製)を使用した方法)による結果を各々示している。また、図5左側において、HRM解析において,基線とその付近の線は青で示し,基線から逸脱して別のグループであると後述の解析ソフトが判断した線を赤で示した。なお、図5左側において、Aは雌個体由来のサンプルを基線とし、C及びEは雄個体由来のサンプルを基線としている。
【図6】HRM法によるヒガンフグの雌雄の判別結果を示すグラフである。図6中、雌雄それぞれ4個体のメルティングカーブの微分値のカーブを示す。なお、トラフグと同様に、高い1本のピークのみを示しているのが雌個体由来のサンプルを示しており(赤線),その左側に低いピークを併せ持っているカーブが雄個体由来のサンプルを示している(灰色の線)。
【図7】HRM法によるコモンフグの雌雄の判別結果を示すグラフである。図7中、雌雄それぞれ4個体のメルティングカーブの微分値のカーブを示す。なお、トラフグと同様に、高い1本のピークのみを示しているのが雌個体由来のサンプルを示しており(赤線),その左側に低いピークを併せ持っているカーブが雄個体由来のサンプルを示している(灰色の線)。
【図8】HRM法によるゴマフグの雌雄の判別結果を示すグラフである。図8中、雌雄それぞれ4個体のメルティングカーブの微分値のカーブを示す。なお、トラフグと同様に、高い1本のピークのみを示しているのが雌個体由来のサンプルを示しており(赤線),その左側に低いピークを併せ持っているカーブが雄個体由来のサンプルを示している(灰色の線)。
【図9】ヒガンフグ、コモンフグ、及びゴマフグの性染色体上のamhrII遺伝子領域内に存在するSNPの一例を示す図である。図9中、斜字で記載されているのがSNPであり、トラフグと同様に、X染色体においてはCとなっており、Y染色体においてはGとなっている。また図9中の数字はトラフグamhrII遺伝子を参照配列として用い、その第一エクソンの5’末端を1番目とした時に何番目の塩基であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のトラフグ属に属するフグの雌雄を判別するための方法は、下記工程を含むことを特徴とする方法である。
(a)トラフグ属に属する被検フグが有する、amhrII遺伝子領域の多型を検出する工程
(b)工程(a)で検出した前記多型に基づいて前記被検フグの雌雄を判別する工程。
【0020】
本発明において「トラフグ属に属するフグ」とは、フグ目(Tetraodontiformes)フグ科(Tetraodontidae)トラフグ属(Takifugu)に属する硬骨魚を意味する。しかしながら、魚類において、属を超えて雑種が発生する場合は多々あることから、本発明においては、トラフグ属に属する硬骨魚と他の硬骨魚との雑種として発生した硬骨魚をも含む。トラフグ属に属するフグとしては、例えば、トラフグ、ヒガンフグ、コモンフグ、ゴマフグおよびこれらの雑種が挙げられる。
【0021】
本発明において「amhrII(anti−Mullerian hormone receptor type II)遺伝子」とは、典型的には配列番号:1に記載のDNA配列からなる、トラフグ由来の遺伝子である。しかしながら、遺伝子のDNA配列は、その変異などにより、自然界において(すなわち、非人工的に)変異しうる。従って、本発明においては、このような天然の変異体もamhrII遺伝子に含まれる。
【0022】
なお、amhrII遺伝子がコードするタンパク質は、TGFβ受容体ファミリーII型に属する受容体であり(Schmiereら、Nature Rev.Mol.Cell.Biol.8巻、970〜981ページ 参照)、哺乳類においては、精巣のセルトリ細胞から分泌されたanti−Mullerianホルモンが、精巣の間質細胞表面上の受容体(amhrII)に結合し、ミューラー管の発達を抑制することが知られている(Jaminら、Molecular and Cellular Endocrinology、2003年、211巻、15〜19ページ 参照)。さらに、メダカのamhrII遺伝子に変異が生じた個体の生殖腺は、精巣、卵巣とも肥大し、さらにY染色体を持った個体の半数が性転換していること(Morinagaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、2007年、104巻、9691〜9696ページ 参照)から、amhrII遺伝子が生殖腺の発達にとってなんらかの役割を果たしていることは示唆されている。
【0023】
また、本発明において「amhrII遺伝子領域」とはamhrII遺伝子を含むゲノムDNA上の一定領域を意味する。該領域には、amhrII遺伝子の発現制御領域(例えば、プロモーター領域、エンハンサー領域)やamhrII遺伝子の3’末端非翻訳領域などが含まれる。
【0024】
本発明において「多型」とは、遺伝学的には、母集団中1%以上の頻度で存在している塩基変化と一般的に定義される。しかしながら、本発明における「多型」は、この定義に制限されず、1%未満の塩基の変化も「多型」に含む。本発明における多型の種類としては、例えば、一塩基多型、一から数十塩基(時には数千塩基)が欠失、置換あるいは挿入している多型等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、多型部位の数についても特に制限はなく、1個以上の多型を有していてもよい。
【0025】
本発明における多型としては、amhrII遺伝子領域内に存在し、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別することに利用することができるものであれば特に制限はないが、好ましくはamhrII遺伝子領域内に存在する1塩基多型であり、より好ましくはamhrII遺伝子の第一エクソンの5’末端を1番目とした時に3798番目(例えば、配列番号:1に記載の塩基配列において、3798位の塩基)の塩基部位における1塩基多型である。また、前記3798番目の多型としては、好ましくはGまたはCである。そして、かかる場合、前記3798番目の多型としてGが検出された場合、トラフグ属に属する被検フグは雄と判断され、前記3798番目の多型としてCのみが検出された場合、トラフグ属に属する被検フグは雌と判断される。
【0026】
本発明において「多型を検出する」とは、原則として、ゲノムDNA上の多型を検出することを意味するが、当該ゲノムDNA上の多型が転写産物における塩基の変化や翻訳産物におけるアミノ酸の変化に反映される場合には、これら転写産物や翻訳産物における当該変化を検出すること(即ち、間接的な検出)をも含む意味である。
【0027】
以下、本発明の方法の好ましい態様を記載するが、本発明の方法はそれらの方法に限定されるものではない。
【0028】
本発明の方法の好ましい態様は、被検フグのamhrII遺伝子領域の塩基配列を直接決定することにより、多型を検出する方法である。この方法においては、先ずトラフグ属に属する被検フグからDNA試料を調製する。DNA試料は、例えば被検フグの粘膜(体表粘膜、口腔粘膜等)、皮膚、血液、鰭から調製することができるが、被検フグに対する侵襲性が低く、また試料の調製が容易であるという観点から、体表粘膜から調製することが好ましい。DNA試料としては、ゲノムDNA試料、およびRNAからの逆転写によって調製されるcDNA試料が挙げられる。
【0029】
かかる被検フグの組織からゲノムDNAまたはRNAを抽出する方法としては特に制限はなく、公知の手法を適宜選択して用いることができ、例えば、ゲノムDNAを抽出する方法としては、SDSフェノール法(尿素を含む溶液又はエタノール中に保存した組織を、タンパク質分解酵素(proteinase K)、界面活性剤(SDS)、及びフェノールで該組織のタンパク質を変性させ、エタノールで該組織からDNAを沈殿させ抽出する方法)、Clean Columns(登録商標、NexTec社製)、AquaPure(登録商標、Bio-Rad社製)、ZR Plant/Seed DNA Kit(Zymo Research社製)、AquaGenomicSolution(登録商標、Mo Bi Tec社製)、prepGEM(登録商標、ZyGEM社製)、BuccalQuick(登録商標、TrimGen社製)を用いるDNA抽出方法が挙げられる。これらの中では、10分以内に粘液からDNAを抽出する方法を選択する場合、迅速にフグの粘液からDNAを効率良く抽出できるという観点から、BuccalQuickを用いるDNA抽出方法が好ましい。また、RNAを抽出する方法としては、例えば、フェノールとカオトロピック塩とを用いた抽出方法(より具体的には、トリゾール(Invitrogen社製)、アイソジェン(和光純薬社製)等の市販キットを用いた抽出方法)や、その他市販キット(RNAPrepトータルRNA抽出キット(Beckman Coulter社製)、RNeasy Mini(QIAGEN社製)、RNA Extraction Kit(Pharmacia Biotech社製)等)を用いた方法が挙げられる。さらに、抽出したRNAからcDNAを調製するのに用いられる逆転写酵素としては特に制限されることなく、例えば、RAV(Rous associated virus)やAMV(Avian myeloblastosis virus)等のレトロウィルス由来の逆転写酵素や、MMLV(Moloney murine leukemia virus)等のマウスのレトロウィルス由来の逆転写酵素が挙げられる。
【0030】
この態様においては、次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを単離し、単離したDNAの塩基配列を決定する。該DNAの単離は、例えば、後述する、amhrII遺伝子領域の多型を挟み込むように設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ゲノムDNA、あるいはRNAを鋳型としたPCR等によって行うことができる。単離したDNAの塩基配列の決定は、マキサムギルバート法やサンガー法など当業者に公知の方法で行うことができる。
【0031】
決定したDNAの塩基配列を対照(トラフグ属に属するフグの雄のDNAの塩基配列又は雌のDNAの塩基配列)と比較することにより、被検フグの雌雄を判別することができる。
【0032】
本発明の雌雄を判別するための方法は、上記の如く被検フグ由来のDNAの塩基配列を直接決定する方法以外に、多型の検出が可能な種々の方法によって行うことができる。
【0033】
例えば、本発明における多型の検出は、以下のような方法によっても行うことができる。まず、トラフグ属に属する被検フグからDNA試料を調製する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列に相補的な塩基配列を有し、レポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素が標識されたオリゴヌクレオチドプローブを調製する。そして、前記DNA試料に、前記オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、さらに前記オリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズした前記DNA試料を鋳型として、amhrII遺伝子領域の前記多型を含む塩基配列を増幅する。そして、前記増幅に伴うオリゴヌクレオチドプローブの分解により、前記レポーター蛍光色素が発する蛍光を検出し、次いで検出した前記蛍光を対照と比較する。このような方法としては、ダブルダイプローブ法、いわゆるTaqMan(登録商標)プローブ法が挙げられる。
【0034】
具体的には、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブの5’末端にレポーター蛍光色素を標識する。本発明において用いるレポーター蛍光色素としては、例えば、FAM、VIC(登録商標)、Yakima Yellow(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、上記プローブの3’末端にクエンチャー蛍光色素を標識する。本発明において用いるクエンチャー蛍光色素としては、レポーター蛍光を消光できる物質であれば特に制限されず、例えば、Eclipse(登録商標)Dark Quencher、TAMRA、DABCYLが挙げられる。次いで、レポーター蛍光色素およびクエンチャー蛍光色素が標識されたオリゴヌクレオチドプローブを、被検フグから調製したDNAにハイブリダイズさせる。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを、5’−3’エクソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを用いて増幅する。この増幅過程において、DNAポリメラーゼの5’−3’エクソヌクレアーゼ活性により、レポーター蛍光色素とクエンチャー蛍光色素とを標識したオリゴヌクレオチドプローブが分解されて、レポーター蛍光色素が遊離する。本発明において、5’−3’エクソヌクレアーゼを有するDNAポリメラーゼとしては、好適にはTaqDNAポリメラーゼが例示できるが、これに限定されるものではない。本方法においては、次いで、遊離したレポーター蛍光色素が発する蛍光を検出し、さらに、該蛍光を対照と比較する。なお、本方法においては、amhrII遺伝子領域の多型部位の塩基がY染色体由来である場合とX染色体由来である場合で異なるレポーター蛍光色素を標識した2種類のオリゴヌクレオチドプローブを用いることで、1回の反応でタイピングすることが可能である。
【0035】
さらに別の方法においては、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、DNA二重鎖間に挿入されると蛍光を発するインターカレーターを含む反応系において、前記DNA試料を鋳型として、amhrII遺伝子領域の前記多型を含む塩基配列を増幅する。そして、前記反応系の温度を変化させ、前記インターカレーターが発する蛍光の強度の変動を検出し、検出した前記温度の変化に伴う前記蛍光の強度の変動を対照と比較する。このような方法としては、HRM(high resolution melting、高分解
融解曲線解析)法が挙げられる。
【0036】
本発明において、インターカレーターとしてはDNA二重鎖間に挿入されると蛍光を発するものであれば特に制限されず、例えば、SYBR Green、LCGreen、LCGreenPlus、EvaGreen、SYTO9が挙げられる。
【0037】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを増幅する。さらに、増幅したDNAを制限酵素により切断する。次いで、DNA断片をその大きさに応じて分離する。次いで、検出されたDNA断片の大きさを、対照と比較する。このような方法としては、例えば、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism/RFLP)を利用した方法やPCR−RFLP法等が挙げられる。
【0038】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを増幅する。さらに、増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる。次いで、解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離する。分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度を対照と比較する。このような方法としては、例えばPCR−SSCP(single−strand conformation polymorphism、一本鎖高次構造多型)法が挙げられる。
【0039】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを増幅する。さらに、増幅したDNAを、DNA変性剤の濃度が次第に高まるゲル上で分離する。次いで、分離したDNAのゲル上での移動度を対照と比較する。このような方法としては、例えば、変性剤濃度勾配ゲル(denaturant gradient gel electrophoresis:DGGE法)が挙げられる。
【0040】
さらに別の方法としては、被検フグから調製したamhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNA、および、該DNAにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが固定された基板、を用いる方法がある。このような方法としては、例えば、DNAアレイ法等が挙げられる。
【0041】
本発明において「基板」とは、オリゴヌクレオチドプローブを固定することが可能な板状の材料を意味する。本発明の基板は、オリゴヌクレオチドプローブを固定することができれば特に制限はないが、一般にDNAアレイ技術で使用される基板を好適に用いることができる。一般にDNAアレイは、高密度に基板にプリントされた何千ものヌクレオチドで構成されている。通常これらのDNAは非透過性(non−porous)の基板の表層にプリントされる。基板の表層は、一般的にはガラスであるが、透過性(porous)の膜、例えばニトロセルロースメンブレムを使用することができる。本発明において、ヌクレオチドの固定(アレイ)方法として、Affymetrix社開発によるオリゴヌクレオチドを基本としたアレイが例示できる。オリゴヌクレオチドのアレイにおいて、オリゴヌクレオチドは通常インサイチュ(in situ)で合成される。例えば、photolithographicの技術(Affymetrix社)、および化学物質を固定させるためのインクジェット(Rosetta Inpharmatics社)技術等によるオリゴヌクレオチドのインサイチュ合成法が既に知られており、いずれの技術も本発明の基板の作製に利用することができる。
【0042】
基板に固定するオリゴヌクレオチドプローブは、amhrII遺伝子領域の多型を検出することができるものであれば、特に制限されない。該プローブは、例えば、amhrII遺伝子領域の多型部位を含む塩基配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブである。特異的なハイブリダイズが可能であれば、オリゴヌクレオチドプローブは、amhrII遺伝子領域の多型部位を含む塩基配列に対し、完全に相補的である必要はない。本発明において基板に結合させるヌクレオチドプローブの長さは、オリゴヌクレオチドを固定する場合は、通常15〜100塩基であり、好ましくは15〜50塩基であり、さらに好ましくは15〜25塩基である。
【0043】
本方法においては、次いで、該DNAと該基板を接触させる。この過程により、上記オリゴヌクレオチドプローブに対し、DNAをハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの反応液および反応条件は、基板に固定するヌクレオチドプローブの長さ等の諸要因により変動しうるが、一般的に当業者に周知の方法により行うことができる。
【0044】
本方法においては、次いで、該DNAと該基板に固定されたヌクレオチドプローブとのハイブリダイズの強度を検出する。この検出は、例えば、蛍光シグナルをスキャナー等によって読み取ることによって行うことができる。なお、DNAアレイにおいては、一般的にスライドガラスに固定したDNAをプローブといい、一方溶液中のラベルしたDNAをターゲットという。従って、基板に固定された上記ヌクレオチドを、本明細書においてヌクレオチドプローブと記載する。本方法においては、さらに、検出したハイブリダイズの強度を対照と比較する。
【0045】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。また、「amhrII遺伝子領域の多型部位の塩基の1塩基3’側の塩基およびその3’側の塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマ―」を調製する。次いで、該DNAを鋳型とし、該プライマーを用いて、ddNTPプライマ―伸長反応を行う。次いで、プライマ―伸長反応産物を質量分析機にかけ、質量測定を行う。次いで、質量測定の結果から遺伝子型を決定する。次いで、決定した遺伝子型を対照と比較する。このような方法としては、例えば、MALDI−TOF/MS法が挙げられる。
【0046】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、5’−「amhrII遺伝子領域の多型部位の塩基およびその5’側の塩基配列と相補的な塩基配列」−「amhrII遺伝子領域の多型部位の1塩基3’側の塩基およびその3’側の塩基配列とハイブリダイズしない塩基配列」−3’(フラップ)からなるオリゴヌクレオチドプローブを調製する。また、「amhrII遺伝子領域の多型部位の塩基およびその3’側の塩基配列と相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプローブ」を調製する。次いで、調製したDNAに、上記2種類のオリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせる。次いで、ハイブリダイズしたDNAを一本鎖DNA切断酵素で切断し、フラップを遊離させる。本発明において、一本鎖DNA切断酵素としては、特に制限はなく、例えばcleavaseが挙げられる。本方法においては、次いで、フラップと相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドプローブであって、レポーター蛍光およびクエンチャー蛍光が標識されたオリゴヌクレオチドプローブをフラップにハイブリダイズさせる。次いで、発生する蛍光の強度を測定する。次いで、測定した蛍光の強度を対照と比較する。このような方法としては、例えば、Invader法が挙げられる。
【0047】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを増幅する。そして、増幅したDNAを一本鎖に解離させ、解離させた一本鎖DNAのうち、片鎖のみを分離する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位の塩基の近傍より1塩基ずつ伸長反応を行い、その際に生成されるピロリン酸を酵素的に発光させ、発光の強度を測定する。そして、測定した蛍光の強度を対照と比較する。このような方法としては、例えば、Pyrosequencing法が挙げられる。
【0048】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを増幅する。次いで、「amhrII遺伝子領域の多型部位の塩基の1塩基3’側の塩基およびその3’側の塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマ―」を調製する。次いで、蛍光ラベルしたヌクレオチド存在下で、増幅したDNAを鋳型とし、調製したプライマーを用いて一塩基伸長反応を行う。そして、蛍光の偏光度を測定する。次いで、測定した蛍光の偏光度を対照と比較する。このような方法としては、例えば、AcycloPrime法が挙げられる。
【0049】
さらに別の方法においては、まず、被検フグからDNA試料を調製する。次いで、amhrII遺伝子領域の多型部位を含むDNAを増幅する。次いで、「amhrII遺伝子領域の多型部位の塩基の1塩基3’側の塩基およびその3’側の塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマ−」を調製する。次いで、蛍光ラベルしたヌクレオチド存在下で、増幅したDNAを鋳型とし、調製したプライマ−を用いて、一塩基伸長反応を行う。次いで、一塩基伸長反応に使われた塩基種を判定する。次いで、判定された塩基種を対照と比較する。このような方法として、例えば、SNuPE法が挙げられる。
【0050】
また、上記以外の方法として、特定位置の変異のみを検出する目的にはアレル特異的オリゴヌクレオチド(Allele Specific Oligonucleotide/ASO)ハイブリダイゼーション法が利用できる。変異が存在すると考えられる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを作製し、これとDNAでハイブリダイゼーションを行わせると、変異が存在する場合、ハイブリッド形成の効率が低下する。それをサザンブロット法や、特殊な蛍光試薬がハイブリッドのギャップにインターカレーションすることにより消光する性質を利用した方法等により検出することができる。
【0051】
以上、本発明の好ましい態様について説明したが、本発明のトラフグ属に属するフグの雌雄を判別するための方法は上記態様に限定されるものではない。例えば、多型がamhrIIタンパク質におけるアミノ酸の変化(例えば、置換、欠失、挿入)を伴うものであれば、トラフグ属に属する被検フグから調製される試料はタンパク質であってもよい。このような場合、多型を検出するには、該多型によりアミノ酸の変化が生じた部位に特異的に結合する分子(例えば、抗体、アプタマー)を用いる方法を用いることができる。かかる方法としては、例えば、ウェスタンブロッティング法、ELISA法、免疫沈降法、表面プラズモン共鳴法、抗体アレイを用いた解析方法が挙げられる。
【0052】
さらに、本発明は、本発明のトラフグ属に属するフグの雌雄を判別するための方法に用いられるための試薬であって、amhrII遺伝子領域の塩基配列に相補的な少なくとも15塩基の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む試薬を提供する。当該オリゴヌクレオチドには、オリゴヌクレオチドプライマーおよびオリゴヌクレオチドプローブの双方が含まれる。当該オリゴヌクレオチドは、上記本発明の方法に使用し得る限り、amhrII遺伝子領域の塩基配列に対して完全に相補的である必要はない。
【0053】
本発明のオリゴヌクレオチドの一つの好ましい態様は、amhrII遺伝子領域の多型を挟み込むように設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマーである。該オリゴヌクレオチドプライマーの長さは、通常15〜100塩基であり、好ましくは17〜30塩基である。
【0054】
本発明のオリゴヌクレオチドの他の好ましい態様は、amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(例えば、アニーリング温度を50℃としたPCR反応)において、amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列にハイブリダイズし、一方、他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないものが好ましい。このような特異的なハイブリダイズが可能であれば、該オリゴヌクレオチドプローブは、amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列に対し、完全に相補的である必要はない。
【0055】
該オリゴヌクレオチドプローブは、適宜標識して用いることが好ましい。標識する方法としては、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて、オリゴヌクレオチドの5’端を32Pでリン酸化することにより標識する方法、およびクレノウ酵素等のDNAポリメラーゼを用い、ランダムヘキサマーオリゴヌクレオチド等をプライマーとして32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識された基質塩基を取り込ませる方法(ランダムプライム法等)を例示することができる。
【0056】
本発明のオリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブは、例えば市販のオリゴヌクレオチド合成機により作製することができる。オリゴヌクレオチドプローブは、制限酵素処理等によって取得される二本鎖DNA断片として作製することもできる。また、本発明のオリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブは、天然のヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド(DNA)やリボヌクレオチド(RNA))のみから構成されていなくともよく、非天然型のヌクレオチドにてその一部又は全部が構成されていてもよい。本発明に用いられる非天然型のヌクレオチドとしては、天然のヌクレオチドと同様の機能を有するものであれば特に制限されないが、amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列等に対するハイブリダイゼーションの効率を上昇させ、オリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブの鎖長を短くすることができるという観点から、PNA(polyamide nucleic acid)、LNA(登録商標、locked nucleic acid)、ENA(登録商標、2’−O,4’−C−Ethylene−bridged nucleic acids)、及びこれらの複合体が好ましい。なお、PNAは、DNAやRNAのリン酸と5炭糖からなる主鎖をポリアミド鎖に置換したものである。LNAとはBNA(Bridged Nucleic Acid、架橋化核酸)とも称され、ヌクレオチドの2’の酸素と4’の炭素を架橋したRNAである。
【0057】
上記の試薬においては、有効成分であるオリゴヌクレオチド以外に、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、緩衝剤、保存剤等が必要に応じて混合されていてもよい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
<簡易DNA抽出法>
トラフグからのDNAの抽出は、DNA抽出キット BuccalQuick(登録商標、TrimGen社製)を用いて行った。すなわち、先ずキット付属のマニュアルに従い、キット中の300μLの溶液と7μLの酵素液とを均一に混ぜてDNA抽出液を調製し、8連PCRチューブ(QSP(登録商標)435440、Quality Scientific Plastics社製)に1チューブあたり25μLずつ分注した。なお、この状態で、室温にて1日保存しても十分に使用に耐え得ることは確認した。
【0060】
次に、90〜180日齢のトラフグを飼育水槽から柄つき網で掬い取り、平板なテーブルの上に乗せた(図2中(1)及び(2)参照)。トラフグは体型上、背面を真上にしてうつぶせの状態で静止するため、背鰭の根元側面を、木製の爪楊枝の太い先端(爪楊枝として使用する場合は指先でつまむ側)でなぞり、前記DNA抽出液中に入れた(図2中(2)及び(3)参照)。そして、チューブに差し込んだままにして、約5分間以内に爪楊枝を溶液中で撹拌したうえで廃棄した。このようにして粘膜(体表粘膜)を加えたDNA抽出液が入っているチューブを、サーマルサイクラー(MP TP3300、タカラバイオ社製)にて、55℃で4分間、90℃で6分間処理し、室温に戻し、粘膜中の細胞からDNAを抽出した。そして、3,200×gで約10秒間遠心分離し、後述のSNP判別法に供した。なお、一回のSNP判別の検査あたり384個体を使用した。
【0061】
また、粘液を採取したトラフグはただちに個別仕切り網に回収した。本実施例に用いた個別仕切り網は、図2中(1)に示したものであり、体長(口吻先端から尾柄基部までの長さ)約5cmのトラフグ(90日齢前後)を回収するための仕切り網で、64個体を回収できる。また網の周囲にはフロートを取り付け、水面に浮かべることができる。サイズは縦1050mm×横1050mm×高260mmで、8×8区画に分けてある。別に、トラフグの体サイズに合わせて、同様の仕切り網を使用する。
【0062】
(実施例1) ダブルダイプローブ法によるトラフグの雌雄判別
先ず、トラフグから調製した前記DNA試料を用いた雌雄(SNP)判別方法として、いわゆるTaqMan(登録商標)プローブ法を試した。本法に用いたオリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブを、表1及び図3に示す。なお、プライマーとプローブの設計および合成は株式会社ニッポンイージーティーに委託した。いずれもHPLC精製標品である。
【0063】
表1及び図3に示す通り、X染色体SNP検出用プローブ及びY染色体SNP検出用プローブは、amhrII遺伝子領域の多型(配列番号:1に記載の塩基配列の3798位)を含む塩基配列に相補的な塩基配列であり、各々のプローブが検出する多型に対応して、5’末端から数えて11番目の塩基がCまたはGとなっている。また、プローブ配列の一部にLNA(登録商標、locked nucleic acid、図中文字の前に+が付された塩基がLNAである)を用いた。LNAとはBNA(Bridged Nucleic Acid、架橋化核酸)とも称され、ヌクレオチドの2’の酸素と4’の炭素を架橋したRNAである。LNAを2塩基ごとにプローブに配置することによって、ハイブリダイゼーションの効率が上昇する。そのため、プローブ長を短くすることができる。本実施例のようなSNPを検出する際には、この特徴が生かされる。すなわち、プローブ長を短くすれば、1塩基違うだけでアニーリング効率が大きく異なることになり、SNPの検出を容易にすることができるため、本実施例においてはかかるLNAを含むプローブを用いた。
【0064】
【表1】
【0065】
さらに、表1に示す通り、レポーター蛍光色素として、Y染色体SNP検出用プローブの5’端にはFAM(最大励起波長494nm、最大蛍光波長520nm)を結合させ、X染色体SNP検出用プローブの5’端にはYakima Yellow(登録商標、最大励起波長549nm、最大蛍光波長530.5nm)を結合させた。また、3’端には各々クエンチャー蛍光色素として、Eclipse(登録商標)Dark Quencherを結合させた。なお、このクエンチャー蛍光色素のエネルギー吸収能力によって、FAM、Yakima Yellow等から生じる蛍光エネルギーは吸収されるため、PCR反応前の状態、すなわち、鋳型(トラフグから調製した前記DNA)に結合している状態等においてはこれらのプローブから蛍光は発されない。しかし、PCR反応時、鋳型に結合しているプローブのヌクレオチド結合は、DNAポリメラーゼの5’−3’エクソヌクレアーゼ活性によって解離するため、レポーター蛍光色素とクエンチャー蛍光色素との物理的距離が離れて蛍光を発するようになる。従って、各レポーター蛍光色素が発する蛍光を検出することにより、トラフグから調製した前記DNA試料におけるX染色体及び/又はY染色体の有無を調べることができる。
【0066】
また、1反応あたりの反応液組成は表2に示した通りである。( )内はそれぞれプライマー名、プローブ名を示す。この反応液をLightCycler(登録商標)480 Multiwell Plate 384(Roch Applied Science社製)の各穴に加え、LightCycler(登録商標)480 System II(Roch Applied Science社製)でリアルタイムPCR反応を行った。
【0067】
【表2】
【0068】
反応条件は、プレインキュベーションを95℃で3分間行い、反復増幅蛍光測定反応は50サイクル(95℃で10秒間、50℃で10秒間、蛍光測定60℃で10秒間)、クーリングは40℃で行った。そして、測定した蛍光強度は、LightCyclerR 480ソフトウェア Version 1.5(Roche Diagnostics GmbH社製、カタログ番号:4994884)を用いて解析した。得られた結果を図4に示す。なお図4中、縦軸は533〜580nm、横軸は465〜510nmの蛍光強度を表している。
【0069】
図4に示した結果から明らかなように、X染色体SNP検出用プローブに結合したYakima Yellowの最大蛍光波長は530.5nmであるため、X染色体のみを有するトラフグは縦軸に平行なプロット(緑色のプロット)となり、雌のグループとして確認された。また、X染色体SNP検出用プローブ(雄検出用のプローブ)に結合したFAMの最大蛍光波長は520nmであるが、雄もX染色体を持つため、Yakima Yellow及びFAMの蛍光を発し、グラフ上では雄のグループは60°程度の角度の直線状にプロット(赤色のプロット)が配置される。
【0070】
このように、amhrII遺伝子領域の多型(配列番号:1に記載の塩基配列の3798位)に基づいて、ダブルダイプローブ法を用いることにより、トラフグの雌雄の判別を行うことができることが明らかになった。また、この方法を用いて384個体の雌雄を判別するのに要した時間は粘液採取から2時間程度であり、さらに、2009年7月〜8月にかけて6160個体の判別をこの方法によって行うことができた。うち、2696個体(44%)が雄、2551個体(41%)が雌、913個体が不明と判定された。不明個体から任意に16個体を選別し、再判定を行うと、判別が可能であったことから、不明と判定された理由はSNPにあるのではなく、粘液採取、その他の不定な要因が関わっていると考えられる。然るに、amhrII遺伝子領域の多型(配列番号:1に記載の塩基配列の3798位)とダブルダイプローブ法によるSNPの検出とを組み合わせることにより、トラフグの種苗を生かしたまま、簡単かつ効率良く雌雄の判別を行うことができることも明らかになった。
【0071】
(実施例2) HRM法によるトラフグの雌雄判別
次に、トラフグから調製した前記DNA試料を用いた雌雄(SNP)判別方法として、いわゆるHRM(high resolution melting、高分解融解曲線解析)法を試した。
【0072】
HRM法はインターカレーションダイリアルタイムPCR法を応用したものである。インターカレーションダイPCR法では、2本鎖DNAの溝に嵌り込んだ蛍光物質の量によって鋳型の量を決定することができる。SNP検出のために本法を用いる場合、増幅したDNAに熱を加え、水素結合の解離に伴う蛍光量減少の曲線(メルトカーブ)を求め、さらに解離度合いの差から塩基多型の有無を判断する。
【0073】
また、HRM法においては、多数検体を同時に測定するが、解析時にあるひとつの検体を任意に選び、グラフ上で水平直線として表示する。既知の検体を標準として用いても良い。その検体と同一の塩基配列を持っている他の検体の曲線は標準直線から大きく乖離しない。しかし、SNPがある場合には標準直線から大きくずれた曲線を描く。この曲線パターンの類似度から、塩基配列の異なるいくつかのグループに分けることができる。さらに、この解析での有利な点は、HRM解析ソフトではグルーピングが不明とされた場合でも、メルトカーブの微分曲線からグループを推定できることである。
【0074】
本法においては、HRM解析試薬として市販されている3種類の蛍光色素(インターカレ―タ―)として用い、オリゴヌクレオチドプライマーはダブルダイプローブ法で用いたものと同一の塩基配列を使用した。各インターカレ―タ―を含む反応系の組成は表3〜5に示す。また、本法を行うにあたっては、サーマルサイクラー内の各チューブ間の温度差を機械的に少なくするか、高い精度で補正することが要求されるため、それを可能とするLightCycler(登録商標)480 System IIを用いて行った。
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
いずれの方法においても、反応は、95℃で10分間プレインキュベーション行い、増幅反応は45サイクル(95℃で10秒間、50℃で15秒間、蛍光測定60℃で10秒間)行った後、メルトカーブ作成(95℃で1分間、40℃で1分間、65℃で1秒間、95℃まで25秒毎に1℃上昇)を行い、クーリングは40℃で10秒間かけて行った。そして、測定した蛍光強度は、LightCyclerR 480 Gene Scanningソフトウェア(Roche Diagnostics GmbH社製、カタログ番号:5103908)を用いて解析した。得られた結果を図5に示す。
【0079】
図5に示した結果から明らかなように、表3〜5に示したいずれの試薬を用いても、HRM法により雌雄差を判別することができた。また、同一のデータをもとにメルティングカーブを微分しても雌雄差を判別することができた(図5中右側のグラフ 参照)。すなわち、HRM法による解析では,図5中右側のグラフにおいて、雌のゲノムを用いた場合は単相性を示し、雄のゲノムを用いた場合は2相性を示すので、X染色体とY染色体とのSNPによってメルトカーブの位相が変化したことが分かる。また、雄の二つのピークの内、右側のピークが雌のピークと一致することから、これがX染色体由来であると判断される。
【0080】
このように、amhrII遺伝子領域の多型(配列番号:1に記載の塩基配列の3798位)に基づいて、HRM法を用いることにより、トラフグの雌雄の判別を行うことができることが明らかになった。また、この方法を用いて384個体の雌雄を判別するのに要した時間は粘液採取から2時間程度であり、雌雄の判別ができた割合は90%以上と非常に高いものであった。然るに、amhrII遺伝子領域の多型(配列番号:1に記載の塩基配列の3798位)とHRM法によるSNPの検出とを組み合わせることにより、トラフグの種苗を生かしたまま、簡単かつ効率良く雌雄の判別を行うことができることも明らかになった。
【0081】
(実施例3) トラフグ以外のトラフグ属に属するフグの雌雄判別
トラフグ属に属するフグ:ヒガンフグ、コモンフグ、及びゴマフグに関しても、amhrII遺伝子領域の多型(配列番号:1に記載の塩基配列の3798位)とHRM法によるSNPの検出とを組み合わせて、前述のトラフグの雌雄判別の方法と同様にして、これらフグにおける雌雄の判別を行った。得られた結果を図6〜8に示す。なお、かかるHRM法において、インターカレーターとしてLCGreen Plus(Idaho Tchnology 社製)を用いた。また、図9に示す通り、図に示した範囲においては、ヒガンフグ、コモンフグ、ゴマフグの性染色体上のamhrII遺伝子領域内の配列は、トラフグのその配列と同じである。
【0082】
図6〜8に示した結果から明らかなように、トラフグ同様、トラフグ属に属する他のフグ:ヒガンフグ、コモンフグ、及びゴマフグにおいても、種苗を生かしたまま、簡単かつ効率良く雌雄の判別を行うことができることが確認できた
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本発明により、amhrII遺伝子領域の多型を標的としたトラフグ属に属するフグの雌雄を判別する方法、並びにその方法に用いられる試薬が提供された。本発明の方法は、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別を簡便かつ迅速に実施することができるのみならず、性成熟前の種苗段階のフグに対して実施することもできる。従って、本発明は、トラフグの生産管理等において特に有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0084】
配列番号2〜3
<223> 人工的に合成されたプライマーの配列
配列番号4〜5
<223> 人工的に合成されたプローブの配列
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を含む、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別するための方法
(a)トラフグ属に属する被検フグが有する、amhrII遺伝子領域の多型を検出する工程
(b)工程(a)で検出した前記多型に基づいて前記被検フグの雌雄を判別する工程。
【請求項2】
前記多型が一塩基多型である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多型が、配列番号:1に記載の塩基配列の3798位における一塩基多型である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
以下の(a)〜(f)の工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法
(a)トラフグ属に属する被検フグからDNA試料を調製する工程
(b)amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列に相補的な塩基配列を有し、レポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素が標識されたオリゴヌクレオチドプローブを調製する工程
(c)前記DNA試料に、前記オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせる工程
(d)前記オリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズした前記DNA試料を鋳型として、amhrII遺伝子領域の前記多型を含む塩基配列を増幅する工程
(e)前記増幅に伴うオリゴヌクレオチドプローブの分解により、前記レポーター蛍光色素が発する蛍光を検出する工程
(f)工程(e)で検出した前記蛍光を対照と比較する工程。
【請求項5】
以下の(a)〜(d)の工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法
(a)トラフグ属に属する被検フグからDNA試料を調製する工程
(b)DNA二重鎖間に挿入されると蛍光を発するインターカレーターを含む反応系において、前記DNA試料を鋳型として、amhrII遺伝子領域の前記多型を含む塩基配列を増幅する工程
(c)前記反応系の温度を変化させ、前記インターカレーターが発する蛍光の強度の変動を検出する工程
(d)工程(c)で検出した前記温度の変化に伴う前記蛍光の強度の変動を対照と比較する工程。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の方法に用いられるための試薬であって、amhrII遺伝子領域の塩基配列に相補的な少なくとも15塩基の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む試薬。
【請求項7】
オリゴヌクレオチドが、以下の(a)〜(b)に記載のオリゴヌクレオチドのうちのいずれかである、請求項6に記載の試薬
(a)amhrII遺伝子領域の多型を挟み込むように設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマー
(b)amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項1】
次の工程を含む、トラフグ属に属するフグの雌雄を判別するための方法
(a)トラフグ属に属する被検フグが有する、amhrII遺伝子領域の多型を検出する工程
(b)工程(a)で検出した前記多型に基づいて前記被検フグの雌雄を判別する工程。
【請求項2】
前記多型が一塩基多型である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多型が、配列番号:1に記載の塩基配列の3798位における一塩基多型である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
以下の(a)〜(f)の工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法
(a)トラフグ属に属する被検フグからDNA試料を調製する工程
(b)amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列に相補的な塩基配列を有し、レポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素が標識されたオリゴヌクレオチドプローブを調製する工程
(c)前記DNA試料に、前記オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせる工程
(d)前記オリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズした前記DNA試料を鋳型として、amhrII遺伝子領域の前記多型を含む塩基配列を増幅する工程
(e)前記増幅に伴うオリゴヌクレオチドプローブの分解により、前記レポーター蛍光色素が発する蛍光を検出する工程
(f)工程(e)で検出した前記蛍光を対照と比較する工程。
【請求項5】
以下の(a)〜(d)の工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法
(a)トラフグ属に属する被検フグからDNA試料を調製する工程
(b)DNA二重鎖間に挿入されると蛍光を発するインターカレーターを含む反応系において、前記DNA試料を鋳型として、amhrII遺伝子領域の前記多型を含む塩基配列を増幅する工程
(c)前記反応系の温度を変化させ、前記インターカレーターが発する蛍光の強度の変動を検出する工程
(d)工程(c)で検出した前記温度の変化に伴う前記蛍光の強度の変動を対照と比較する工程。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の方法に用いられるための試薬であって、amhrII遺伝子領域の塩基配列に相補的な少なくとも15塩基の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む試薬。
【請求項7】
オリゴヌクレオチドが、以下の(a)〜(b)に記載のオリゴヌクレオチドのうちのいずれかである、請求項6に記載の試薬
(a)amhrII遺伝子領域の多型を挟み込むように設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマー
(b)amhrII遺伝子領域の多型を含む塩基配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−135271(P2012−135271A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290463(P2010−290463)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、農林水産省、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(507157045)公立大学法人福井県立大学 (22)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、農林水産省、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(507157045)公立大学法人福井県立大学 (22)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
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