説明

フック装置

【課題】 スイベル継手に対するエンド金具の抜け止めが確実に行われるフック装置を提供する。
【解決手段】 ワイヤロープ7の先端部にフック20を回動可能に連結するフック装置30において、ワイヤロープ7の先端部にカシメ固定される円柱状のエンド金具31と、このエンド金具31の先端部に環状に拡がる拡径部32と、ワイヤロープ7の基端部側から挿通される筒状のスイベル継手41と、このスイベル継手41に形成され拡径部32に回動可能に当接するように環状に縮径する縮径部42とを備え、スイベル継手41にフック20の基端部を回動可能に連結するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤロープにフックを回動可能に連結するフック装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフック装置として、フックが連結される筒状のスイベル継手と、ワイヤロープの先端部に固定されるエンド金具と、エンド金具に形成されたネジ部に螺合する抜け止め用のナットとを備え、ワイヤロープの先端部にフックを回動可能に連結するものがあった。
【0003】
このフック装置の組立時、スイベル継手に対してワイヤロープの先端部側からエンド金具を嵌合させた後、エンド金具のネジ部にナットを螺合し、スイベル継手に形成された縮径部にこのナットを当接させてスイベル継手に対するエンド金具の抜け止めをするようなっている。
【非特許文献1】東京製綱株式会社平成11年発行、「ワイヤロープ No.17」第220頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、旋回クレーン式フック装置は、ナットが緩んでネジ部から外れると、スイベル継手からエンド金具が抜ける可能性があった。この対策として、ネジ部にナットを螺合した後にネジ部とナットを溶接により固着することが行われていたが、この溶接作業に手間がかかるという問題点があった。また、現場等で行われるフック装置の組み付け時にこの溶接作業が行われない心配があった。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、スイベル継手に対するエンド金具の抜け止めが確実に行われるフック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ワイヤロープの先端部に固定されるエンド金具と、フックが連結される筒状のスイベル継手とを備え、このスイベル継手に対してエンド金具を回転可能に抜け止めし、ワイヤロープの先端部にフックを回動可能に連結するフック装置に適用する。
【0007】
そして、エンド金具の先端部に予め形成される拡径部と、スイベル継手に予め形成される縮径部とを備え、ワイヤロープの基端部側からスイベル継手を挿通した後にスイベル継手にフックを連結したことを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、ワイヤロープの先端部にフックを組み付ける際、筒状のスイベル継手に対してワイヤロープをその基端部側から挿通してその先端部に固定されたエンド金具を嵌合させるため、スイベル継手に予め形成された縮径部にエンド金具に予め形成された拡径部が当接し、スイベル継手に対するエンド金具の抜け止めが確実に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を船舶の旋回クレーン式揚艇装置に適用した実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1、図2に示すように、本船1の甲板2上には複合式搭載艇(RIB)4を載せる艇レスト11が設置され、この搭載艇4を吊り下げて搬入出する旋回クレーン式揚艇装置5を備える。
【0011】
揚艇装置5は垂直軸回りに回動して甲板2上から振出されるクレーンブーム6と、このクレーンブーム6を駆動する旋回装置8と、クレーンブーム6の先端部からシーブ12を介して繰り出される一本のワイヤロープ7と、このワイヤロープ7を巻き取る1台のウィンチ9とを備える。
【0012】
ワイヤロープ7の先端部にはフック20が結合され、このフック20が搭載艇4のスリング19の吊り環18に対して着脱可能に連結される。スリング19は吊り環18から四方に延びる4本のワイヤロープによって構成され、各ワイヤロープの一端が搭載艇4の前後部の4カ所に連結されている。
【0013】
ステンレス製ワイヤロープ7は非自転性の構造を有し、張力の増減に伴うワイヤロープ7の捩れを小さくすることによって、これに吊り下げられた搭載艇4が回動することを抑えるようになっている。
【0014】
図3、図4は、ワイヤロープ7の先端部にフック20を回動可能に連結するフック装置30を示す。このフック装置30は、ワイヤロープ7の先端部にカシメ固定される円柱状のエンド金具31と、このエンド金具31の先端部に環状に拡がる拡径部32と、ワイヤロープ7の基端部側から挿通される筒状のスイベル継手41と、このスイベル継手41形成され拡径部32に対して回動可能に当接するように環状に縮径する縮径部42と、スイベル継手41に形成される二又に分岐したフォーク部43と、このフォーク部43に支持されるピン50とを備え、このピン50にフック20の基端部を回動可能に連結支持する。
【0015】
エンド金具31の拡径部32とスイベル継手41の縮径部42の間には環状の樹脂製座金60が介装され、エンド金具31とスイベル継手41がこの座金60を介して円滑に回動するようになっている。
【0016】
スイベル継手41の縮径部42とエンド金具31の拡径部32は、切削加工、鋳造または鍛造等によって予め形成される。
【0017】
エンド金具31の先端面33とフック20の基端面21の間には円盤状の樹脂製座金70が介装され、エンド金具31とフック20がこの座金70を介して円滑に回動するようになっている。
【0018】
ピン50にフック20の穴22の間にはスペーサ23,24が介装され、フック20が二又に分岐したフォーク部43の中央部に位置するように回動可能に支持される。
【0019】
ピン50の先端部にはネジ部51が形成され、このネジ部51に螺合するナット52を介してフォーク部43に締結される。
【0020】
フック20は係止爪25がピン26を介して回動可能に設けられ、図示しないバネの付勢力によってこの係止爪25がフック20の開口部を閉じることにより、フック20に係合した吊り環18の抜け止めがはかられる。
【0021】
フック装置30の組立時は以下の手順で行われる。
・座金60及び筒状のスイベル継手41に対してワイヤロープ7をその基端部側から挿通してその先端部に固定されたエンド金具31を嵌合させる。
・スイベル継手41の内側に座金70を介装する。
・スイベル継手41のフォーク部43にスペーサ23,24及びピン50を介してフック20を組み付ける。
・ピン50のネジ部51にナット52を締結する。
【0022】
以上のようにフック装置30は構成され、ワイヤロープ7の先端部に対してフック20を回動可能に連結するので、フック20を吊り環18に連結する玉掛け作業を容易に行える。
【0023】
フック装置30は、ワイヤロープ7の先端部にフック20を組み付ける際、筒状のスイベル継手41に対してワイヤロープ7をその基端部側から挿通してその先端部に固定されたエンド金具31を嵌合させるため、スイベル継手41に形成された縮径部42にエンド金具31に形成された拡径部32が当接し、スイベル継手41に対するエンド金具31の抜け止めが確実に行われる。
【0024】
これに対して従来装置は、ワイヤロープの先端部にフックを組み付ける際、筒状のスイベル継手に対してワイヤロープをその先端部側から挿通してその先端部に固定されたエンド金具を嵌合させた後、エンド金具に形成されたネジ部にナットを螺合し、スイベル継手に形成された縮径部にこのナットを当接させてスイベル継手に対するエンド金具の抜け止めが行われるようになっていたため、ナットが緩んでネジ部から外れると、スイベル継手からエンド金具が抜ける可能性があった。この対策として、ネジ部にナットを螺合した後にネジ部とナットを溶接により固着することが行われていたが、この溶接作業に手間がかかるという問題点があった。また、現場で行われるフック装置の組み付け時にこの溶接作業が行われない心配があった。
【0025】
本発明のフック装置30は、スイベル継手41とエンド金具31の間にナット等が介在しないため、ナットを溶接する作業が不要であり、スイベル継手41に対するエンド金具31の抜け止めが確実に行われる。
【0026】
また、スイベル継手41の縮径部42とエンド金具31の拡径部32は切削加工、鋳造または鍛造等によって予め形成されているため、組み付け後に行われるカシメ加工等による抜け止め機構に比べて抜け止めが確実に行われる。
【0027】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、ワイヤロープにフックを回動可能に連結するフック装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態を示す揚艇装置の正面図。
【図2】同じく搭載艇等の側面図。
【図3】同じくフック装置の正面図。
【図4】同じくフック装置の断面図。
【符号の説明】
【0030】
4 搭載艇
5 揚艇装置
9 ウィンチ
20 フック
30 フック装置
31 エンド金具
32 拡径部
41 スイベル継手
42 縮径部
43 フォーク部
50 ピン
60 座金
70 座金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープの先端部に固定されるエンド金具と、
フックが連結される筒状のスイベル継手とを備え、
このスイベル継手に対して前記エンド金具を回転可能に抜け止めし、
前記ワイヤロープの先端部に前記フックを回動可能に連結するフック装置において、
前記エンド金具の先端部に予め形成される拡径部と、
前記スイベル継手に予め形成される縮径部とを備え、
前記ワイヤロープの基端部側から前記スイベル継手を挿通した後に前記スイベル継手に前記フックを連結したことを特徴とするフック装置。
【請求項2】
前記エンド金具の前記拡径部と前記スイベル継手の前記縮径部の間に環状の座金を介装したことを特徴とする請求項1に記載のフック装置。
【請求項3】
前記エンド金具の前記先端面と前記フックの間に円盤状の座金を介装したことを特徴とする請求項1または2に記載のフック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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