説明

フッ化ジスルフィド化合物の製造方法

【課題】スルフェニルハライド化合物とアルカリ金属フッ化物との反応において、フッ化ジスルフィド化合物の収率を向上させることができる製造方法を提供する。
【解決手段】


で表される化合物の少なくとも1種を、イオン性液体の存在下、アルカリ金属フッ化物又アルカリ土類金属フッ化物と反応させることによる


で表されるフッ化ジスルフィド化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルフェニルハライド化合物からフッ化ジスルフィド化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医農薬やポリマー原料、有機合成用の触媒等として使用されるトリフルオロメタンスルホン酸(CFSOH)等のハロゲン化スルホン酸の合成法の一つとして、以下の方法が知られている。
【0003】
CClSCl等のスルフェニルハライド化合物をNaF 、KF等のアルカリ金属フッ化物と反応させてCFSSCF等のフッ化ジスルフィド化合物を製造し、その後、酸化、加水分解を経てCFSOH等のハロゲン化スルホン酸を製造する。
【0004】
ここで、スルフェニルハライド化合物とアルカリ金属フッ化物との反応は、従来、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒中で行われていたが、フッ化ジスルフィド化合物の収率は高くはなかった(非特許文献1)。そのため、フッ化ジスルフィド化合物の収率の向上のための改善手段が望まれていた。
【0005】
【非特許文献1】J.Org.Chem.,Vol.25(1960)、2016-2017
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、スルフェニルハライド化合物とアルカリ金属フッ化物との反応において、フッ化ジスルフィド化合物の収率を向上させることができる製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、CClSClを原料としてCFSOHを製造する研究を行う過程において、CClSClをNaFと反応させてCFSSCFを製造する際に、溶媒としてイオン性液体を使用することにより、反応原料であるCClSClの分解が抑えられ、CFSSCFの収率が大幅に向上することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)式(I)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R,R及びRは、夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基又はC6−C10アリール基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは1〜20のいずれかの整数を示す。nが2以上の場合、R同士、R同士は同一でも相異なっていてもよい。但し、R,R及びRのうち、少なくとも1つはフッ素以外のハロゲン原子を示す)で表される化合物の少なくとも1種を、イオン性液体の存在下、アルカリ金属フッ化物又アルカリ土類金属フッ化物と反応させることにより、式(II)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R1a、R2a、R3a、R1b、R2b及びR3bは、夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基又はC6−C10アリール基を示し、na及びnbは、夫々独立して、1〜20のいずれかの整数を示す。na及びnbは、夫々2以上の場合、R2a同士、R2b同士、R3a同士及びR3b同士は同一でも相異なっていてもよい。但し、R1a、R2a、R3a、R1b、R2b及びR3bのうち、少なくとも1つはフッ素原子を示す)で表されるフッ化ジスルフィド化合物を製造する方法、
(2)式(I)で表される化合物中、R,R及びRがハロゲン原子であって、R,R及びRのうち、少なくとも1つはフッ素以外のハロゲン原子であることを特徴とする上記(1)記載のフッ化ジスルフィド化合物を製造する方法、
(3)式(I)で表される化合物が、CClSClであり、式(II)で表される化合物がCFSSCFであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のフッ化ジスルフィド化合物を製造する方法、及び、
(4)イオン性液体が、イミダゾリウム塩又は第4級アンモニウム塩であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のフッ化ジスルフィド化合物を製造する方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、CClSCl等のスルフェニルハライド化合物をNaF、KF等のアルカリ金属フッ化物と反応させてCFSSCF等のフッ化ジスルフィド化合物を製造する方法において、フッ化ジスルフィド化合物を収率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、式(I)で表されるスルフェニルハライド化合物をアルカリ金属フッ化物と反応させて式(II)で表されるフッ化ジスルフィド化合物を製造する方法において、溶媒としてイオン性液体を使用することを特徴とする。
本発明の詳細は以下のとおりである。
【0015】
1.式(I)で表されるスルフェニルハライド化合物
【0016】
【化3】

【0017】
式(I)において、R,R及びRは、夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基又はC6−C10アリール基を示す。
「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
「C1−C6アルキル基」は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
「C6−C10アリール基」は、単環又は多環のアリール基を意味する。ここで、多環アリール基の場合は、完全不飽和に加え、部分飽和の基も包含する。例えばフェニル基、ナフチル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基等が挙げられる。
上記「C1−C6アルキル基」及び「C6−C10アリール基」は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、
ビニル基、アリル基等のアルケニル基;
エチニル基、1−プロピニル基等のアルキニル基;
フェニル基、ナフチル基等のアリール基;、
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基等のアルコキシ基;
2−チエニル基、2−フリル基、2−ピロール基等の複素環基;等が挙げられ、これ等のうちの少なくとも1種を少なくとも1つ置換基として有することができる。
【0018】
Xはハロゲン原子を示し、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
nは1〜20の整数を示し、好ましくは、1〜10、さらに好ましくは1〜6である。nが2以上の場合、R同士、R同士は同一でも相異なっていてもよい。
又、本発明においては、R,R及びRのうち、少なくとも1つはフッ素以外のハロゲン原子を示す。
【0019】
式(I)で表されるスルフェニルハライド化合物としては、具体的には、CClSCl、CCl(F)SCl、CH(Cl)SCl、CH(Cl)CClSCl、CBrSBr、CBr(Cl)SCl、CF(Cl)SCl、CH(Cl)CClSCl、CClSF、CClSBr、CClSI、CCl(Ph)SCl、CCl(Ph)SCl、CClC(CH)(Ph)SCl、CH(Cl)CH(Ph)SCl、CClCHCHCHSCl、CClCHCHCHCHCHCHSCl等が挙げられ、これらのうちの、1種又は2種以上の混合物を使用することができる。好ましくは、R、R及びRがフッ素以外のハロゲン原子である化合物であり、特にCClSClが好ましい。
【0020】
2.アルカリ金属フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物
式(I)で表される化合物のハロゲンをフッ素置換するために使用される。アルカリ金属フッ化物としてはLiF、NaF、KF、RbF、CsF等、アルカリ土類金属フッ化物としてはBaF、CaF、MgF、SrF等が挙げられる。
アルカリ金属フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物の使用量は、式(I)で表される化合物の種類により異なるが、通常、ハロゲン原子1個に対して1〜10当量、好ましくは1.0〜1.1当量使用される。
【0021】
3.イオン性液体
イオン性液体とは、通常、有機カチオン種とアニオン種とから構成される塩であり、その融点が100℃以下程度であり、300℃程度の高温まで安定で液体状態を保つ化合物である。イオン性液体 としては、例えばアルキル置換イミダゾリウム塩、アルキル置換ピリジニウム塩、第四級アンモニウム塩、第四級ホスフォニウム塩、第三級スルホニウム塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、アルキル置換イミダゾリウム塩、アルキル置換ピリジニウム塩および第四級アンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種であり、なかでもアルキル置換イミダゾリウム塩又は第四級アンモニウム塩が好ましい。
【0022】
アルキル置換イミダゾリウム塩とは、通常、イミダゾリン環上の少なくとも一つの窒素原子が置換されていてもよいアルキル基と結合したイミダゾリウムカチオンと、例えばテトラフルオロボレートアニオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミドアニオン、アルキルカルボキシレートアニオン、アルカンスルホネートアニオン等のアニオン種とから構成される塩である。ここで、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基等の炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。これらアルキル基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;等の基で置換されていてもよい。かかる基で置換されたアルキル基の具体例としては、クロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。かかる置換されていてもよいアルキル基は、イミダゾリン環上の炭素原子にも結合していてよい。
【0023】
アルキル置換イミダゾリウム塩の具体例としては、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−イソブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−メトキシエチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3,5−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジエチル−5−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等のアルキル置換イミダゾリウムテトラフルオロボレート及び前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンが塩化物イオンに代わったアルキル置換イミダゾリウムクロリド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンが臭化物イオンに代わったアルキル置換イミダゾリウムブロミド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがヨウ化物イオンに代わったアルキル置換イミダゾリウムヨーダイド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがヘキサフルオロホスフェートアニオンに代わったアルキル置換イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミドアニオンに代わったアルキル置換イミダゾリウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルキルカルボキシレートアニオンに代わったアルキル置換イミダゾリウムアルキルカルボキシレート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルカンスルホネートアニオンに代わったアルキル置換イミダゾリウムアルカンスルホネート;等が挙げられる。
【0024】
アルキル置換ピリジニウム塩とは、通常、ピリジン環上の窒素原子が前記置換されていてもよいアルキル基と結合したピリジニウムカチオンと、前記アニオン種とから構成される塩である。その具体例としては、N−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−プロピルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−ブチル−4−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−イソブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−ペンチルピリジニウムテトラフルオロボレート等のアルキル置換ピリジニウムテトラフルオロボレート及び前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンが塩化物イオンに代わったアルキル置換ピリジニウムクロリド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンが臭化物イオンに代わったアルキル置換ピリジニウムブロミド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがヨウ化物イオンに代わったアルキル置換ピリジニウムヨーダイド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがヘキサフルオロホスフェートアニオンに代わったアルキル置換ピリジニウムヘキサフルオロホスフェート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミドアニオンに代わったアルキル置換ピリジニウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルキルカルボキシレートに代わったアルキル置換ピリジニウムアルキルカルボキシレート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルカンスルホネートアニオンに代わったアルキル置換ピリジニウムアルカンスルホネート;等が挙げられる。
【0025】
第四級アンモニウム塩とは、通常、同一または相異なる前記置換されていてもよいアルキル基4つと窒素原子とから構成されるアンモニウムカチオンと、前記アニオン種とから構成される塩である。その具体例としては、トリメチルペンチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリメチルヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリメチルヘプチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリメチルオクチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルペンチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の第四級アンモニウムテトラフルオロボレート及び前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがヘキサフルオロホスフェートアニオンに代わった第四級アンモニウムヘキサフルオロホスフェート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミドアニオンに代わった第四級アンモニウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルキルカルボキシレートアニオンに代わった第四級アンモニウムアルキルカルボキシレート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルカンスルホネートアニオンに代わった第四級アンモニウムアルカンスルホネート;トリエチルアミントリヒドロフルオライド等のトリアルキルアミンヒドロフルオライド等が挙げられる。
【0026】
第四級ホスフォニウム塩とは、通常、同一または相異なる前記置換されていてもよいアルキル基4つとリン原子とから構成されるホスフォニウムカチオンと、前記アニオン種とから構成される塩である。その具体例としては、トリメチルペンチルホスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルホスフォニウムテトラフルオロボレートの第四級ホスフォニウムテトラフルオロボレート及び前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがヘキサフルオロホスフェートアニオンに代わった第四級ホスフォニウムヘキサフルオロホスフェート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミドアニオンに代わった第四級ホスフォニウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルキルカルボキシレートアニオンに代わった第四級ホスフォニウムアルキルカルボキシレート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルカンスルホネートアニオンに代わった第四級ホスフォニウムアルカンスルホネート;等が挙げられる。
【0027】
第三級スルホニウム塩とは、通常、同一または相異なる前記置換されていてもよいアルキル基3つとイオウ原子とから構成されるスルホニウムカチオンと、前記アニオン種とから構成される塩である。その具体例としては、トリエチルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリブチルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリプロピルスルホニウムテトラフルオロボレート等の第三級スルホニウムテトラフルオロボレート及び前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがヘキサフルオロホスフェートアニオンに代わった第三級スルホニウムヘキサフルオロホスフェート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミドアニオンに代わった第三級スルホニウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルキルカルボキシレートアニオンに代わった第三級スルホニウムアルキルカルボキシレート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルカンスルホネートアニオンに代わった第三級スルホニウムアルカンスルホネート;等が挙げられる。
【0028】
イオン性液体の使用量は、特に制限されないが、式(I)で表される化合物1モルに対して、通常、0.1L〜10L、好ましくは、0.4L〜2.0Lである。
【0029】
4.式(II)で表されるフッ素化ジスルフィド化合物
【0030】
【化4】

【0031】
式(II)で表される化合物は、式(I)で表される化合物がハロゲン置換されると共に、2量体化した化合物である。原料である式(I)で表される化合物が1種である場合は、−SS−結合の両側は同一の基であるが、原料である式(I)で表される化合物が2種以上の混合物である場合は、−SS−結合の両側は異なる基のものも得られる。
【0032】
ここで、R1a、R2a、R3a、R1b、R2b及びR3bは、夫々独立して、水素原子、フッ素原子、C1−C6アルキル基又はC6−C10アリール基を示し、「C1−C6アルキル基」及び「C6−C10アリール基」は、式(I)で表される化合物における例示と同様のものを例示することができる。
na及びnbは、夫々独立して、1〜20のいずれかの整数を示す。na及びnbが夫々2以上の場合、R2a同士、R2b同士、R3a同士及びR3b同士は同一でも相異なっていてもよい。但し、R1a、R2a、R3a、R1b、R2b及びR3bのうち、少なくとも1つはフッ素原子を示す。
【0033】
式(II)で表される化合物としては、具体的には、CFSSCF、CFCHSSCHCF、CH(F)SSCH(F)、CF(Ph)SSCF(Ph)、CF(Ph)SSF(Ph)、CFC(CH)(Ph)SSC(CH)(Ph) CF、CH(F)CH(Ph)SSCH(Ph)CH(F)、CFCHCHCHSSCHCHCHCF、CFSSCHCF、CFSSCH(F)等が挙げられる。
【0034】
5.反応
本発明の反応方法は、特に限定はないが、通常、以下のようにして行われる。
即ち、アルカリ金属フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物とイオン性液体との混合物中に、式(I)で表される化合物を滴下などの方法により添加して、加熱する。加熱は、昇温しながら行うのが好ましく、室温から所定の温度まで、あるいは100℃以上の温度から所定の温度まで昇温する。式(I)で表される化合物と溶媒との混合物中にアルカリ金属フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物を添加することも可能である。
【0035】
昇温後の温度は、式(I)で表される化合物、アルカリ金属フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物及びイオン性液体の種類と量によって適宜選択されるが、通常、約50℃〜約250℃、好ましくは約100℃〜約200℃の範囲である。室温ではほとんど反応が進行しない。
【0036】
また、反応時間は式(I)で表される化合物、アルカリ金属フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物及びイオン性液体の種類と量、さらに反応温度などで異なるが、通常1時間〜10時間、好ましくは2〜4時間の範囲である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。略号は以下のとおりである。
〔bmim〕〔BF〕:1-butyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate
TMS: tetramethylene sulfone
PCMM: trichloromethanesulfenyl chloride (CClSCl)
PFDS: bis(trifluoromethyl)disulfide (CFSSCF)
[実施例1〜4]
冷却管の先にガス捕集袋を取り付けた半月型攪拌羽根付き反応容器をオイルバスに入れて使用した。反応容器にNaF及び〔bmim〕〔BF〕を表に示された量仕込み、室温下で攪拌を開始した。次に、オイルバスを室温又は110℃〜130℃まで昇温し、PCMMを滴下ロートから表に示された量滴下した。
滴下後、攪拌を続けながら、速やかにオイルバスを199℃まで昇温し、ガス捕集袋に捕集した。滴下ロートから小流量のNガスを導入し、捕集袋が満タンになった後、Nガスを停止し、ガスを採取してGCにより分析した。
【0038】
収率は以下のようにして算出した。
PCMM仕込み量(mol)=PCMM仕込み量(g)×GC分析値(a%)/100/185.89(MW)・・・(A)
捕集した全成分の量(mol)=捕集ガス量(L)/(273(K)+ガス化温度(K)×273(K)/22.4(L) ・・・(B)
捕集したPFDSの量(mol)=(B)×GC分析値(a%)/100・・・(C)
PFDSの収率(%)=(C)/((A)/2)×100
【0039】
[比較例1及び2]
TMSを〔bmim〕〔BF〕の代わりに使用する以外は、実施例1と同様にして行った。
【0040】
上記、実施例及び比較例の結果を表にまとめて示す。
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、R,R及びRは、夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基又はC6−C10アリール基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは1〜20のいずれかの整数を示す。nが2以上の場合、R同士、R同士は同一でも相異なっていてもよい。但し、R,R及びRのうち、少なくとも1つはフッ素以外のハロゲン原子を示す)で表される化合物の少なくとも1種を、イオン性液体の存在下、アルカリ金属フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物と反応させることにより、式(II)
【化2】

(式中、R1a、R2a、R3a、R1b、R2b及びR3bは、夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基又はC6−C10アリール基を示し、na及びnbは、夫々独立して、1〜20のいずれかの整数を示す。na及びnbは、夫々2以上の場合、R2a同士、R2b同士、R3a同士及びR3b同士は同一でも相異なっていてもよい。但し、R1a、R2a、R3a、R1b、R2b及びR3bのうち、少なくとも1つはフッ素原子を示す)で表されるフッ化ジスルフィド化合物を製造する方法。
【請求項2】
式(I)で表される化合物中、R,R及びRがハロゲン原子であって、R,R及びRのうち、少なくとも1つはフッ素以外のハロゲン原子であることを特徴とする請求項1記載のフッ化ジスルフィド化合物を製造する方法。
【請求項3】
式(I)で表される化合物が、CClSClであり、式(II)で表される化合物がCFSSCFであることを特徴とする請求項1又は2記載のフッ化ジスルフィド化合物を製造する方法。
【請求項4】
イオン性液体が、イミダゾリウム塩又は第4級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフッ化ジスルフィド化合物を製造する方法。


【公開番号】特開2010−53051(P2010−53051A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217274(P2008−217274)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】