説明

フッ化水素酸処理装置

【課題】 フッ酸を含む排水にカルシウムを添加してフッ化物イオンを除去するフッ酸処理装置において、被処理水のpHを調整する必要があるが、カルシウムとフッ化物イオンとの反応槽でpH調整を行うと処理効率が低下する。また、pH調整のためのpH計が直接フッ酸を含む排水に晒されると、pH計のセンサが破損する問題がある。
【解決手段】 pH調整部の処理槽にフッ酸が投入される際にアルカリ薬剤も投入し、処理槽内の第1の被処理水のpHを排水のpHより大きくする。また、処理槽に第3の経路P3(循環経路)を接続し、第1の被処理水を循環させて、所望の範囲のpH値を有する第2の被処理水が生成されるまでpH調整を行う。所望の値に調整したpH調整後の第2の被処理水をカルシウムと反応させる反応槽に移送するので、処理効率の低下を防げる。またpH計は循環経路に設けられ、排水に直接晒されることはなくフッ酸から保護することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化水素酸を含む排水からフッ化カルシウムを分離するフッ化水素酸処理装置に係り、特に、クリーンルーム内で半導体処理装置と近接して配置可能な小型化のフッ化水素酸処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、産業廃棄物を減らすこと、また産業廃棄物を分別し再利用することは、エコロジーの観点から重要なテーマであり、緊急の企業課題である。この産業廃棄物の中には、被除去物が含まれた色々な流体がある。
【0003】
これらは、汚水、廃液、排水等の色々な言葉で表現されているが、以下、水や薬品等の流体中に被除去物である物質が含まれているものを排水と称して説明する。
【0004】
半導体装置を製造する工程の途中では大量の排水が発生する。半導体工場で使用されたフッ素は、そのほぼ全量が再利用困難な排水として排出される。
【0005】
例えば、ドライ(プラズマ)エッチング装置やプラズマCVD装置では、ウエハ加工または、装置(チャンバー内のクリーニングにおいて四フッ化炭素(CF)、ヘキサフルオロエタン(C)、パーフルオロシクロロブタン(C)など、フッ素系のガスが使用される場合が多い。これらのガスの多くは、CFとしてチャンバー外に排出されることになるが、地球温暖化促進作用を有する物質(Perfluorocompounds(PFCs)ガス)であるため、除害処理が必要となる。この除害処理においてフッ素は水に吸収され、希薄フッ化水素酸排水(廃液)が排出される。またフッ素系材料(例えばフッ化水素酸)を用いるウエットエッチング装置では、ウエハ加工後の廃薬液である濃厚フッ化水素酸排水(廃液)や、純水リンスの排水である希薄フッ化水素酸排水(廃液)が排出される。尚、以降フッ化水素酸をフッ酸と称して説明する。
【0006】
フッ素濃度が高い排水が自然界に流出すると、生態系のバランスを狂わせることが知られている。従って、排水からフッ素の除去を行うことは、産業上にてきわめて重要なことである。例えば、フッ素を含む排水の放流条件は水質汚濁防止法や地方自治体の条例等で基準値が決められている。具体的には、排水中に含まれるフッ素の濃度は8mg/L以下でなければならない。更に、排出されるフッ素の総量規制も行われる可能性がある。
【0007】
一方、排水から除去されたフッ素は、フッ酸などにすることにより上述の如く半導体処理装置において再利用が可能である。除去法の一例を挙げると、フッ素を含有した排水(廃液)をカルシウム化合物と反応させ、フッ化カルシウムを生成することにより、排水からフッ素を除去できる(沈殿法)。また同様にフッ化カルシウムを得る方法として、フッ素を含む排水をカルシウム剤と共に導入して、固体粒子上にフッ化カルシウムを析出させる方法も知られている(晶析法)(例えば特許文献1参照。)。
【0008】
ところで、フッ酸を含む排水の処理設備は大型であり、例えばタンク等に貯留した後、当該タンクをクリーンルーム外の排水処理設備に運搬するなどして排水の処理を行っている。
【0009】
つまり、排水を処理してフッ酸とすることで再び半導体処理装置で再利用することができるが、既存のクリーンルーム内にはフッ酸を含む排水の処理設備が設置できず、クリーンルーム内で排水処理を完結することができないのが現状である。
【特許文献1】特開2005−21855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
フッ酸を含む排水の処理において、上記の例では、晶析法にて高純度のフッ化カルシウムペレットを形成するために、フッ素を含む排水(廃液)をpH調整剤にて中和した後、フッ酸とカルシウムを反応させながら、反応槽内の処理水のpHを測定し、所望の範囲にpH値を調整している。
【0011】
従って、カルシウムとの反応前にpH値を上げる必要がある。フッ酸(フッ化水素酸)をカルシウムと反応させてフッ化カルシウムにするには、フッ酸を解離させてフッ化物イオン(F)にしなければならない。しかし、フッ酸とフッ化物イオンの割合はpHに依存している。つまり、カルシウムとの反応時に、被処理水が酸性の場合には、ほとんどがフッ酸となり、処理効率が低下してしまう問題がある。
【0012】
一方、例えばフッ素を含む排水とpH調整剤とが混入される中和槽のpH値を測定すべく、中和槽内にpH計を設置する場合を考えると、一般にpH計はガラス電極を用いているため、例えばフッ素を含む排水の濃度が非常に高い場合などにはガラスが溶け、センサの破損の原因となる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はかかる課題に鑑みてなされ、第1に、クリーンルーム内でフッ素系材料を用いる半導体処理装置に近接して配置され、前記半導体処理装置から排出されるフッ化水素酸が混入した排水を前記クリーンルーム内から未搬出で処理するフッ化水素酸処理装置であって、処理槽と、前記処理槽に接続する第1の経路および第2の経路と、該処理槽に設けられて循環する第3の経路とを有し、前記第1の経路を介して前記処理槽に前記排水を投入する際に、前記第2の経路からアルカリ薬剤を投入して前記排水より大きいpH値の第1の被処理水を生成し、該第1の被処理水が所望の範囲のpH値を有する第2の被処理水になるまで前記第3の経路で循環しながらpH値の測定および調整を行うpH調整部と、前記第2の被処理水を移送する第4の経路と、前記第2の被処理水にカルシウム分を添加してフッ化カルシウムを生成する反応槽と、前記フッ化カルシウムを前記第2の被処理水から分離する分離槽とを具備することにより解決するものである。
【0014】
また、前記pH調整部は、前記第3の経路の途中に接続されたpH計を具備し、前記pH計の値により前記第3の経路の開閉を制御することを特徴とするものである。
【0015】
また、前記pH調整部は、前記pH計の測定値が第1のpH値より低い場合に、前記第3の経路を閉じて前記処理槽内の前記第1の被処理水に前記アルカリ薬剤を投入することを特徴とするものである。
【0016】
また、前記pH調整部は、前記pH計の測定値が第1のpH値以上で、第2のpH値より小さい場合に、前記第3の経路を開いたまま前記処理槽内の前記第1の被処理水に前記アルカリ薬剤を投入することを特徴とするものである。
【0017】
また、前記pH調整部は、前記pH計の測定値が第2のpH値以上で第3のpH値以下の場合に、前記第3の経路を閉じて前記第2の被処理水を前記処理槽に貯留することを特徴とするものである。
【0018】
また、前記pH調整部は、前記pH計の測定値が第3のpH値より大きい場合に、前記第3の経路を開いたまま前記処理槽内の前記第1の被処理水に酸性溶液を投入することを特徴とするものである。
【0019】
また、前記pH調整部は、前記第1の被処理水の循環が開始されてから所定の時間経過後に該第1の被処理水のpH値を測定することを特徴とするものである。
【0020】
また、前記pH調整部は、前記第1の被処理水のpH調整を行う酸性溶液に前記排水を用いることを特徴とするものである。
【0021】
また、前記第4の経路は、前記pH調整部内の前記第2の被処理水の全量を前記反応槽に移送することを特徴とするものである。
【0022】
また、前記第2の被処理水は、pH8以上pH10以下であることを特徴とするものである。
【0023】
また、前記分離槽は、前記第2の被処理水に浸漬された濾過装置であることを特徴とするものである。
【0024】
更に、前記濾過装置の表面に形成された自己形成膜により、前記第2の被処理水を濾過することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本実施形態のフッ酸処理装置に依れば、第1に、半導体処理装置から排出されるフッ酸が混入した排水を処理するフッ酸処理装置において、排水をカルシウムと反応させる反応槽に送水する以前のpH調整部で、排水のpH値を大きくし、所望のpH値を有する被処理水(第2被処理水)を生成できるので、処理効率を向上させることができる。
【0026】
既述の如く、フッ酸とカルシウムを反応させてフッ化カルシウムを生成するには、フッ酸を解離させてフッ化物イオン(F)にする必要があるが、フッ酸とフッ化物イオンの割合はpHに依存するため、処理水が酸性の場合は殆どがフッ酸であるため処理効率が低下する。
【0027】
本実施形態によれば、カルシウムとの反応させる前に、排水のpHを調整して所望のpH値(中性)するので、解離するフッ化物イオンを増加させることができ、処理効率を向上させることができる。
【0028】
第2に、処理槽に第3の経路を設け、第3の経路にpH計を設けることにより、フッ酸によるpH計の破損を防止できる。pH計は一般的にガラス電極を用いるため、直接的にフッ酸溶液の測定を行うとガラスが溶解し、センサの破損の原因となる。
【0029】
本実施形態では、処理槽外部に第3の経路を設け、当該第3の経路にpH計を設置する。更に、処理槽ではあらかじめアルカリ薬剤が投入された中にフッ酸を混入し、処理水のpH値をpH計に悪影響がでない値(排水のpH値より大きい値)の被処理水(第1被処理水)にシフトした後、循環させpH値を測定するので、pH計がフッ酸溶液に直接接触することを回避でき、pH計を保護することができる。
【0030】
第3に、pH調整後、被処理水(第1の被処理水または第2の被処理水)を所定の時間循環させた後、当該被処理水のpH値を測定するので、pHが安定した状態で調整することができる。また特に第2被処理水のpHが安定することにより、次工程での処理(カルシウムとの反応)を効率よく行うことができる。
【0031】
第4に、pH調整に用いる酸性溶液として、半導体処理装置から排出されるフッ酸を含む排水を利用するので、別途酸性溶液及び酸性溶液槽が不要となり、コストの低減およびフッ酸処理装置の小型化に寄与できる。
【0032】
具体的には、酸性溶液槽が不要になるので、フッ酸処理装置をクリーンルーム内に配置可能な程度まで小型化することができ、既存のクリーンルーム内(特に排水を排出するエッチング装置などの近傍)に後付けすることができる。これにより、フッ酸を含む排水からフッ素を除去するフッ酸処理をクリーンルーム内で完結させることができる。
【0033】
第5に、pH調整部によってカルシウムとの反応に好適な範囲のpH値を有する第2の被処理水を生成した後、フッ化カルシウムを生成している。従って、被処理水に含まれるフッ化物イオンを固定化する為に必要十分なカルシウム分を第2の被処理水に添加することが可能となり、フッ化カルシウムの含有率を高めることができる。従って、得られるフッ化カルシウムの再利用を容易にすることができる。更には、被処理水から高度にフッ化物イオンを除去することができる。
【0034】
第6に、フッ化カルシウムの固液分離に濾過膜を用いるが、第2の被処理水は濾過膜のpH許容範囲内であるpH8〜10に調整されているので、濾過膜を破損することなく分離が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1から図7を参照して、本発明の一実施形態として、フッ化水素酸(フッ化水素(HF)の水溶液)を含む排水の処理を行うフッ化水素酸処理装置と、それを用いたフッ化水素酸の処理方法を説明する。尚、以下フッ化水素酸をフッ酸と称する。
【0036】
図1はフッ酸処理装置100の構成を示す図であり、図2はフッ酸を含む排水の処理方法を示すフローチャートである。
【0037】
図1を参照して、フッ酸処理装置100の構成を説明する。本実施の形態のフッ酸処理装置100は、pH調整部10と、第4の経路P4と、反応槽11Bと、分離槽11Cを有し、クリーンルーム内でフッ素系材料を用いる半導体処理装置に近接して配置され、半導体処理装置から排出されるフッ化水素酸が混入した排水を、クリーンルームから未搬出で処理するものである。
【0038】
pH調整部10は、処理槽11Aと、処理槽11Aに接続する第1の経路P1および第2の経路P2と、処理槽11Aに設けられて循環する第3の経路P3とを有する。またpH調整部10は、第1の経路P1を介して処理槽11Aに排水を投入する際に、予め薬剤槽15Aからアルカリ薬剤を投入しておき、排水より大きいpH値の第1の被処理水12Aを生成し、第1の被処理水12Aが所望の範囲のpH値を有する第2の被処理水12Bになるまで第3の経路P3で循環しながらpH値の測定および調整を行う。
【0039】
反応槽11Bは、第2の被処理水12Bに含まれるフッ素成分にカルシウム成分を添加してフッ化カルシウムを生成する。分離槽11Cは、第2の被処理水12Bからフッ化カルシウムを分離する。このような構成のフッ酸処理装置10により、フッ酸を含む排水からフッ化物イオンが除去され、高純度のフッ化カルシウムを得ることができる。
【0040】
先ず、被処理水12に付いて説明する。被処理水12は、本実施形態のフッ酸処理装置100で処理される、第1の被処理水12Aと第2の被処理水12Bの総称である。
【0041】
第1の被処理水12Aは、フッ酸処理装置100に投入された排水と、アルカリ薬剤とが混入した被処理水である。第2の被処理水12Bは、第1の被処理水12Aを所望の範囲のpH値になるまでpH調整した後の被処理水である。具体的には、第2の被処理水12BのpH値は8以上10以下である。また第1の被処理水12Aは、これ以外のpH値を有する被処理水である。
【0042】
フッ酸処理装置100に投入される排水は、半導体処理工場から排出されるものであり、たとえば半導体、ガラス、金属等のエッチング工程、CVD膜の形成などのウエハ加工工程、あるいは半導体処理装置のクリーニングによって排出される。
【0043】
例えば、ドライ(プラズマ)エッチング装置やプラズマCVD装置では、CF、C、Cなど、フッ素系のガスが使用される場合が多い。またこれらのガスはウエハ加工後にチャンバー内をクリーニングする際にも、使用される。
【0044】
これらのガスの多くは、CFとしてチャンバー外に排出されることになるが、地球温暖化促進作用を有する物質(Perfluorocompounds(PFCs)ガス)であるため、除害処理が必要となる。この除害処理において燃焼、分解されたフッ素は水に吸収され、希薄フッ化水素酸排水が排出される。またウエットエッチング装置では、エッチングの際の腐食性を向上させるためにフッ酸を用いるため、ウエハ加工後の廃薬液である濃厚フッ化水素酸排水や、純水リンスの排水である希薄フッ化水素酸排水が排出される。
【0045】
本実施の形態のフッ酸処理装置100を構成する各要素を以下に詳述する。
【0046】
第1の経路P1は、パイプ等の水路であり、この経路によりフッ酸を含む排水がクリーンルームから未搬出の状態で処理槽11Aに輸送される。ここで、本実施形態のフッ酸処理装置100における未搬出の状態での排水の輸送とは、クリーンルーム内から搬出されることなく、半導体処理装置から略直接的に輸送されることをいい、例えばタンクに貯留した排水を、クリーンルーム内から別の施設に輸送して処理するような場合を除く。
【0047】
一方、フッ酸処理装置100は、クリーンルーム内に配置されるものであれば、半導体処理装置と直接的に接続していなくてもよい。
【0048】
フッ酸処理装置100は、半導体製造工場のクリーンルーム内で、半導体処理装置と近接して配置されるものである。そして、例えば半導体処理装置から排出された、除害処理が不要なフッ酸を含む排水が直接、第1の経路P1に輸送される。あるいは、半導体処理装置から排出されたPFCsガスについて所定の除害処理を施した後フッ酸を含む排水が、第1の経路P1に輸送される。尚、フッ酸処理装置100に輸送される排水量を調節するため、第1の経路P1の前段に排水の貯留槽が備えられていてもよく、第1の経路P1の途中にポンプが介装されても良い。
【0049】
第1の経路P1から供給される排水(フッ酸のみの排水の場合はpH3〜4程度)には、フッ化物イオン(F)が10、000mg/L程度含まれている。
【0050】
第2の経路P2は、薬剤槽15Aに貯留されたアルカリ薬剤を処理槽11Aに供給する。ここでは、アルカリ薬剤として例えばNaOHを25重量%含む水溶液が採用される。第2の経路P2には第1のポンプPo1が設けられる。
【0051】
第3の経路P3は、処理槽11A内の被処理水12が循環して、再び処理槽11Aに流入するよう、処理槽11Aに設けられた循環経路である。第3の経路P3の途中には、pH計14が設けられ、第3の経路P3を循環する被処理水12のpHを計測する。第3の経路P3にpH計14を設けることにより、第1の経路P1を介して流入する排水よりpHが大きい被処理水12(第1の被処理水12A、第2の被処理水12B)を計測することになるので、pH計14に及ぼすダメージを回避できる。また第3の経路には第2のポンプPo2が設けられる。更に第3の経路P3には、当該第3の経路P3を開閉する第1のバルブAV1が設けられる。
【0052】
本実施形態では、第2の経路P2を介して、あらかじめ処理槽11Aに所定量のアルカリ薬剤を供給しておき、そこに第1の経路P1を介して排水を供給して第1の被処理水12Aを生成する。
【0053】
処理槽11Aにて、排水中のフッ化水素(HF)は、水素イオン(H)とフッ素イオン(F)に99.9%以上解離される(下記式A)。
【0054】
HF → H+F (式A)
【0055】
また、処理槽11Aでは、この解離を促進させる為に、プロペラ等の攪拌手段Mにより被処理水12を攪拌しても良い。
【0056】
pH調整部10は、処理槽11A内の第1の被処理水12Aを第3の経路P3で循環させながら、第1の経路P1から酸性溶液を供給し、あるいは第2の経路P2からアルカリ薬剤を供給して第1の被処理水12Aを、所望の範囲のpH値を有する第2の被処理水12Bになるよう調整する。本実施形態では、pH調整の酸性溶液として、第1の経路P1から供給されるフッ酸を含有した排水を用いる。これにより、別途酸性溶液の薬剤槽を設ける必要がなく、コストの低減および装置の小型化が実現する。
【0057】
具体的には、pH調整のための酸性溶液槽が不要になるので、フッ酸処理装置100をクリーンルーム内に配置可能な程度まで小型化することができ、既存のクリーンルーム内、特に排水を排出するエッチング装置やCVD装置などの近傍に後付けすることができる。これにより、フッ酸を含む排水からフッ素を除去するフッ酸処理をクリーンルーム内で完結させることができる。尚、pH調整部10の詳細については、後述する。
【0058】
第3の経路P3には、第1のバルブAV1が設けられ、処理槽11Aの水位が所定の下限値以上になると循環経路である第3の経路P3に設けられた第1のバルブAV1が開き、下限値以下で閉じる。
【0059】
第4の経路P4は、処理槽11AにてpH調整された第2の被処理水12Bが、フッ化物イオンを固定するための反応槽11Bに輸送される経路である。第4の経路P4には、第2のバルブAV2が設けられる。第2のバルブAV2を開くことにより、処理槽11A内の第2の被処理水12Bが、第4の経路P4を介して反応槽11Bに移送される。
【0060】
第5の経路P5は、他の薬剤槽15Bからカルシウム成分を反応槽11Bに供給する経路である。具体的には、他の薬剤槽15Bに貯留された例えば塩化カルシウム(CaCl)の水溶液(例えば30重量%)が、第5の経路P5を介して反応槽11Bに供給される。塩化カルシウムを加えることにより、上式Aのごとく解離して第2の被処理水12Bに含まれるフッ化物イオンは、CaF(フッ化カルシウム)として固定化される(下記式B)。
【0061】
Ca2++2F→CaF (式B)
【0062】
塩化カルシウムは溶解度積が非常に高いので、被処理水12に対して大量に供給することが可能である。例えば、カルシウムイオン(Ca2+)が200mg/L以上になるように塩化カルシウムを第2の被処理水12Bに対して加えることで、第2の被処理水12Bに含まれるフッ素イオン(F)の濃度を8mg/L以下にすることができる。このフッ素イオンの濃度は、一般的な放流基準を満たしている。
【0063】
更に、反応槽11Bに貯留された塩化カルシウムは、固液分離を行う分離槽11Cに導入されても良い。このことにより、分離槽11Cの内部においてもフッ化物イオンを固定化することができるので、濾過水に含まれるフッ化物イオンを更に低減させることができる。
【0064】
反応槽11Bには、上記した塩化カルシウムとは別に消石灰(Ca(OH))が添加されても良い。添加された消石灰が、フッ化物イオンを固定する為の種剤として機能するので、フッ化物イオンの固定化を促進させることができる。
【0065】
更に反応槽11Bでは、被処理水12を熟成させることにより、フッ化カルシウムの粒子を例えば0.25μm以上に大きくすることができる。このことにより、フッ化カルシウムの膜分離が容易になる利点がある。また、反応槽11Bで処理する第2の被処理水12Bは、pHが8から10の間に保たれる。これらのことにより、コロイド状の物質が生成されずに、後の工程に於いて濾過膜が閉塞せずに濾過が容易になる利点がある。
【0066】
本実施形態における第2の被処理水12Bは、排水のためpHを排水基準内(pH5.8〜8.6)にする必要がある。反応槽11Bで塩化カルシウムを使用してフッ化カルシウムを生成した場合、下記の式Cにより、塩酸が生成される。
【0067】
2HF+CaCl→CaF+2HCl (式C)
【0068】
従って、反応槽11BでのpHが1〜2下がるため、これを考慮して第2の被処理水12BのpHを8から10の間に調整する。
【0069】
第6の経路P6は、フッ化カルシウムを含む第2の被処理水12Bを反応槽11Bから分離槽11Cに輸送する経路である。
【0070】
分離槽11Cでは、フッ化カルシウムを第2の被処理水12から分離する。ここでは、分離槽11Cに収納された被処理水12に浸漬された濾過膜13の濾過作用により、第2の被処理水12からフッ化カルシウムを分離する。
【0071】
濾過膜13は、分離槽11Cに収納された第2の被処理水12に浸漬されて、第2の被処理水12の濾過を行う働きを有する。採用される濾過膜13としては、流体中にて濾過を行うことが可能な濾過機構を全般的に採用可能である。本実施形態では、濾過膜13の表面に形成された自己形成膜を用いた濾過を行うことで、フッ化カルシウムと第2の被処理水12との固液分離を行っている。この自己形成膜の詳細については後述する。
【0072】
上記した自己形成膜は、第2の被処理水12B中にて生成されたフッ化カルシウムを含む被除去物から成る自己形成膜でも良い。即ち、濾過膜13の濾過面に吸着された被除去物により、第2の被処理水12Bが濾過される。また、フッ化カルシウムの回収を行う際には、この自己形成膜も、濾過膜13から剥離して回収される。
【0073】
散気装置18は、第2の被処理水12B中にて、下方から濾過膜13に気泡を供給する働きを有する。具体的には、散気装置18には、外部に設けた不図示のポンプ等から気体が供給され、気泡を発生させる。散気装置18から発生した気泡は、濾過膜13の濾過面に沿って上方に移動していく。このように、散気装置18から気泡を発生させることにより、濾過膜13の表面に形成される自己形成膜の厚みを一定以下にすることが可能となる。このことから、自己形成膜の閉塞を抑制し、有る程度のフラックスを確保しつつ、第2の被処理水12Bの濾過を行うことが可能となる。
【0074】
散気装置18から発生される気体としては、ヘリウム、ネオン、アルゴンまたは窒素等の不活性ガスを採用することができる。空気を散気装置18から第2の被処理水12Bに供給した場合は、空気に含まれる炭酸ガスと第2の被処理水12Bに含まれるフッ化物イオンとが反応して、フッ化カルシウムの濃度が低下する恐れがある。散気装置18から供給されるガスとして不活性ガスを採用することにより、その恐れを排除することができる。
【0075】
第7の経路P7は、濾過膜13にて濾過された濾過水が通過する経路である。第7の経路P7の途中に設けられた貯留槽15Cには、濾過水16が貯留されている。第7の経路P7を通過する大部分の濾過水は、再利用されるか河川等の自然界に放流される。
【0076】
貯留槽15Cは、濾過膜13により濾過された濾過水の一部分が貯留されるか、あるいは第13の経路P13から供給された水道水が貯留される。貯留槽15Cの位置は分離槽11Cに貯留された第2の被処理水12Bの液面よりも上方に設定されている。貯留槽15Cに貯留された濾過水または水道水は、濾過膜13の表面に形成された自己形成膜を剥離させる際に、第7の経路P7を逆流させて用いられる。
【0077】
すなわち、第7の経路P7から分岐して濾過水を貯留槽15Cに供給する第12の経路P12と、第12の経路P12の途中に設けた第3のバルブAV3を有し、第7の経路P7に第3のポンプPo3が設けられる。
【0078】
そして再利用または放流の際には、分離槽11C内の濾過水を第3のポンプPo3で吸い上げ、第3のバルブAV3を閉じて外部に排出する。
【0079】
一方、逆流の場合には、分離槽11C内の濾過水を第3のポンプPo3で吸い上げて第3のバルブAV3を開放し、貯留層15Cに濾過水を貯留する。または貯留層15Cには第13の経路13Pを介して水道水が貯留される。そして、貯留槽15C内の濾過水又は水道水を分離槽11Cに逆流させ、濾過膜13から自己形成膜を剥離する。
【0080】
第8の経路P8は、固形化されたフッ化カルシウムを含む被除去物を、分離槽11Cからフィルタプレス17に輸送する経路である。具体的には、濾過膜13の表面に堆積した被除去物、分離槽11Cの下部に沈殿した被除去物が、フィルタプレス17に輸送される。輸送される第2の被処理水12Bには、フッ化カルシウムが高純度に含まれている。また、pH調整部10のpH調整にて形成された中和塩も含まれている。
【0081】
フィルタプレス17には、フッ化カルシウムを含む被除去物が第8の経路P8により供給され、脱水処理を行うことにより被除去物の含水率を低下させる。フィルタプレス17により脱水処理された被除去物の含水率は、例えば50重量%程度である。更に、被除去物を乾燥すると、フッ化カルシウムの純度が85重量%程度のブロックが得られる。被除去物に高純度に含まれるフッ化カルシウムは、フッ素源として再利用される。
【0082】
第9の経路P9は、フィルタプレス17に水を注入し、フィルタプレス17に収納された被除去物に含有される中和塩を洗浄する経路である。処理槽11AにてpH調整された第2の被処理水中の被除去物には、15重量%程度の中和塩(NaCl)が含有されている。第9の経路P9から、フィルタプレス17に水を注入することで、中和塩の大部分はフィルタプレス17から外部に放出される。また、中和塩と比較してサイズが大きいフッ化カルシウムは、フィルタプレス17の内部に留まる。
【0083】
つまり、フィルタプレス17に水を注入することで、フィルタプレス17に収納された被除去物に含まれるフッ化カルシウムの純度を向上させることができる。
【0084】
受入槽19には、フィルタプレス17に注入された水が暫定的に貯留される。受入槽19に貯留された第2の被処理水は、第10の経路P10を介して分離槽11Cに返送されて、濾過処理される。
【0085】
第11の経路P11は、フィルタプレス17にて脱水された被除去物が、フッ化カルシウムを生成する反応槽11Bに輸送される経路である。フィルタプレス17には、濾過膜18の表面に堆積した被除去物が収納されており、この被除去物はフッ化カルシウムを高濃度に含まれている。従って、主にフッ化カルシウムから成る被除去物を反応槽11Bに返送することにより、反応槽11Bに於ける化学反応を促進させて、第2の被処理水12Bに含有されるフッ化物イオンの殆どをフッ化カルシウムとして固定化させることができる。
【0086】
以上が本実施の形態であるフッ酸処理装置100の構成である。ここで、上述した反応槽11Bおよび分離槽11Cは、同一の処理槽にしてもよい。このことにより、フッ化物イオンの固定および固液分離を同一の槽で行うことが可能となり、設備全体を更に小型化することができる。
【0087】
図2を参照して、上記したフッ酸処理装置100を用いたフッ酸処理方法を説明する。本実施の形態のフッ酸処理方法は、フッ酸排水とアルカリ薬剤により第1の被処理水を生成し、第1の被処理水をpH調整して第2の被処理水を生成する第1のステップ(ステップS1)と、フッ化カルシウムを生成する第2のステップ(ステップS2)と、フッ化カルシウムの固液分離を行う第3のステップ(ステップS3)と、被除去物から中和塩を除去する第4のステップ(ステップS4)と、フッ化カルシウムを回収する第5のステップ(ステップS5)とから成る。図1も合わせて参照して、各ステップを詳細に説明する。
【0088】
ステップS1:フッ酸排水とアルカリ薬剤を貯留して第1の被処理水を生成し、第1の被処理水を循環しながらpH調整し、第2の被処理水を生成する。
【0089】
まず、処理槽11Aに所定量のアルカリ薬剤(NaOH)を貯留する。また半導体処理装置(たとえばエッチング装置あるいはCVD装置など)から排出されるフッ酸が混入した排水を、処理槽11Aに貯留する。ここで、フッ酸はpH4程度である。アルカリ薬剤と排水を混合することにより、排水よりpHの大きい第1の被処理水12Aが生成される。
【0090】
処理槽11Aに貯留された第1の被処理水12Aは、第3の経路P3である循環経路を介して循環され、循環経路に設けたpH計14によりpH値が測定され、第1の被処理水12AのpHが8〜10の第2の被処理水12Bになるまで、循環しながらpH調整が行われる。
【0091】
pH調整のアルカリ薬剤としては、既述の如くNaOHが用いられるが、他にもKOHを採用することができる。一方、pH調整の酸性溶液としては、第1の経路P1から供給されるフッ酸を含有した排水を用いる。
【0092】
pH調整により所望の範囲のpH値(pH8〜10)を有する第2の被処理水が生成された後、第3の経路P3の循環を停止する。その後、第4の経路を介して、処理槽11A内の第2の被処理水12Bが反応槽11Bに移送される。尚、ステップS1(pH調整部10)のフロー(pH調整部10の処理)の詳細については、後述する。
【0093】
ステップS2:フッ化物イオンを含む第2の被処理水12Bにカルシウム分を加えることでフッ化物イオンを固定してフッ化カルシウムを生成する。
【0094】
第2の被処理水12Bにはフッ化物イオンや、中和塩(NaCl)が含有されている。添加されるカルシウム分(カルシウム成分)は、例えば塩化カルシウム(CaCl)、水酸化カルシウム(Ca(OH))等のカルシウム塩であり、ここでは、塩化カルシウムの水溶液(例えば30重量%)が採用される。第2の被処理水12Bにフッ化物イオンが多量に含まれた場合でも、塩化カルシウムは溶解度が高いので、第2の被処理水12Bに対して多量に塩化カルシウムを添加することが可能となり、含有されるフッ化物イオンの殆どを固定化することができる。含有されるフッ化物イオンがフッ化カルシウムとして固定化された第2の被処理水12Bは、分離槽11Cに輸送される。
【0095】
ステップS3:膜濾過を行うことにより、フッ化カルシウムを含む被除去物を第2の被処理水12Bから分離する。
【0096】
濾過を行う機構としては、本実施形態では、濾過膜13の表面に堆積した被除去物から成る自己形成膜が採用される。濾過膜13により濾過された濾過水は、外部に放出され再利用されるかまたは自然界に放出される。自己形成膜を用いた濾過方法では、自己形成膜のフラックスが徐々に低下するので、定期的に自己形成膜を剥離して再び形成する。
【0097】
自己形成膜を剥離させる際は、貯留槽15Cから濾過水を濾過膜13に対して逆流させる。すなわち、第3のポンプPo3で、貯留槽15Cの濾過水または水道水を吸い上げて分離槽11Cに逆流させ、濾過膜13から自己形成膜を剥離する。このことにより、濾過膜13の表面に堆積した濾過膜は剥離され、分離槽11Cの下部に沈殿する。
【0098】
また、濾過膜13により第2の被処理水12Bの濾過を行っている間は、散気装置18により濾過膜13の表面に気泡を通過させる。このことにより、濾過膜13の表面に形成される自己形成膜の膜厚を制御して、濾過能力を保持させることができる。このステップにて濃縮された被除去物は、フィルタプレス17に輸送される。
【0099】
ステップS4:フィルタプレス17に水を注入することにより、第2の被処理水12Bに含有された中和塩(NaCl)を洗浄して除去する。
【0100】
pH調整された第2の被処理水12Bには中和塩が含まれているので、第2の被処理水12Bから分離した被除去物にも、フッ化カルシウムの他に中和塩や、他のカルシウム塩(例えば炭酸カルシウム)が含有されている。また、例えばウェットエッチング装置からの排水の場合には、ケイ素が含まれる場合もある。フィルタプレス17に水を注入することにより、中和塩は水に溶解して外部に放出される。フッ化カルシウムは径が大きいので、水により洗浄されてもフィルタプレス17から外部に放出されない。このステップにより、被除去物に含有されるフッ化カルシウムの濃度が向上される。
【0101】
ステップS5:フッ化カルシウムを回収する。
【0102】
具体的には、フィルタプレス17により被除去物を脱水した後に、半固形化された状態の被除去物を取り出す。この状態で被除去物の含水率は50重量%程度に成っている。次に、被除去物を乾燥させることで、固形化された被除去物のブロックが形成される。本形態では、フッ化カルシウムを85重量%含む被除去物が得られる。
【0103】
本実施の形態では、高分子凝集剤等の凝集剤を用いずに固液分離処理を行うことから、フッ化物イオンを含む排水から、固定化されたフッ化カルシウムを高純度に得ることができる。得られたフッ化カルシウムは、強酸(例えば硫酸)と反応させることにより、フッ酸として半導体製造工程にて再利用することができる。
【0104】
更には、本願で得られる高純度のフッ化カルシウムを、鉄鋼に混入されるフラックスとして用いることも可能である。また、得られたフッ化カルシウムに塩酸を添加したら、塩化カルシウムを得ることもできる。更にまた、フッ化カルシウムを再利用するために添加する硫酸や塩酸等は、半導体工場にて常備される薬品であるので、工場内に新たな設備を追加する事なく、フッ化カルシウムの再利用を行うことができる。
【0105】
更に本実施の形態では、NaOH等を用いて被処理水12のpH調整を行った後に、塩化カルシウム(CaCl)によりフッ化物イオンを固定している。従って、添加されるカルシウム分は、殆どが被処理水に含まれるフッ化物イオンと反応するので、被除去物に対するフッ化カルシウムの割合を向上させることができる。
【0106】
更にまた、pH調整を行うことにより発生する中和塩は、洗浄処理を行うことにより除去される。このことも、被除去物に対するフッ化カルシウムの純度を高めることに寄与する。
【0107】
図3は、図2に示すステップS1で説明した、pH調整部10での処理の詳細を示すフロー図である。
【0108】
pH調整部10のpH調整方法は、処理槽11Aにアルカリ薬剤および排水を投入し、当該排水よりpH値の大きい第1の被処理水12Aを生成するステップ(ステップS101〜S104)と、処理槽11Aと第3の経路P3で第1の被処理水12Aを循環しながらpHを測定し、pH調整を行うステップ(ステップS103〜S108)と、pH調整により、所望の範囲のpH値を有する第2の被処理水12Bが生成された後、第2の被処理水12Bの循環を停止し、第4の経路P4を介して第2の被処理水を反応槽11Bへ移送するステップ(ステップS108〜S112)と、から構成される。
【0109】
ステップS101:処理槽11Aの水位Lcを判定する。
【0110】
pH調整部10での処理開始直後、あるいはpH調整後の第2の被処理水12Bの全量を次段の反応槽11Bに移送した後は、処理槽11A内に貯留された被処理水は存在しないか、所定の水位Lv以下である。本実施形態では、処理槽11Aにフッ酸を含む排水が投入される以前に、処理槽11Aにアルカリ薬剤を投入するので、まず処理槽11Aの水位Lcを判定し、所定の水位Lv以下の場合は、次のステップにて所定量のアルカリ薬剤を投入する。一方、所定の水位Lvを超えている場合は、ステップS105の処理を行う。
【0111】
ステップS102:第1のポンプPo1を起動し、アルカリ薬剤を投入する。
【0112】
第1のポンプPo1を、例えば5分間起動する。これにより所定量のNaOHが薬剤槽15Aから第2の経路P2を介して、処理槽11Aに投入される。NaOHはpH7.3であり、後のステップS103で所定量投入される排水(pH4)によって、処理槽11A内の被処理水(第1の被処理水)のpHが6になる程度の量を予測して、投入される。
【0113】
ここで、後のステップS103で投入される排水のpHは必ずしも一定値(pH4)であるとは限らない。また、排水の投入量も、半導体処理装置から排出されるタイミングによっては、所定量に満たない場合がある。従って、これらは後のステップで調整することとし、ここでは初期の予測値として投入量が決定される。
【0114】
ステップS103:フッ酸含有の排水を投入する。
【0115】
第1の経路P1を介して、半導体処理装置から排出される所定量の排水を、クリーンルーム内から未搬出の状態で処理槽11Aに投入する。所定量とは例えば、間欠的に10L/10minで投入される。
【0116】
排水は、フッ酸を含み、pHが4程度である。処理槽11A内には予めアルカリ薬剤が投入されており(ステップS102)、投入される排水よりpHが大きい第1の被処理水12Aが生成される。
【0117】
尚、排水のpHは必ずしも一定値であるとは限らない。また、半導体処理装置から排出されるタイミングによっては、10分間投入しても投入量は10Lに満たない場合がある。
【0118】
ステップS104:処理槽11Aの水位を判定する。
【0119】
処理槽11A内の第1の被処理水12Aの水位Lcが所定の水位Lvに達しているか判定し、達していない場合(排水の投入量が少なかった場合)には、再びステップS103でフッ酸含有の排水を投入する。
【0120】
第1の被処理水12Aの水位Lcが所定の水位Lvに達している場合は、次のステップS105で循環を開始する。
【0121】
ステップS105:被処理水12の循環を開始する。
【0122】
循環経路である第3経路P3の第1のバルブAV1を開放し、第4経路P4の第2のバルブAV2を閉じて、第2のポンプPo2で吸引し、処理槽11A内の第1の被処理水12Aを循環させる。第1の被処理水12Aは第3経路P3を通過して再び処理槽11Aに流入する。
【0123】
ステップS106:被処理水12のpH値を測定する。
【0124】
所定時間(例えば15秒)循環した後、第3経路P3に設けられたpH計14により、第3経路P3を通過する第1被処理水12AのpH値を測定する。pH14計は被処理水12(第1の被処理水12A)に連続して接しているが、第1の被処理水12AのpHを安定させるため、所定時間経過後にpH値を測定する。
【0125】
pH値が6以上の場合には、更に所望のpH(アルカリ性)に調整すべく、ステップS108の処理を行う。一方、pH値が6以下の場合は、循環を停止するステップS107の処理を行う。
【0126】
本実施形態では、排水を投入するステップ(ステップS103)の後は、処理槽11Aの水位Lcが所定の水位Lvに達している場合、すなわち、所定量のアルカリ薬剤(あるいは排水よりアルカリ傾向の第1の被処理水12A)が処理槽内11Aに存在することを判定した後、循環を開始する。従って、循環経路に設けたpH計14は、常に排水よりpHが大きい被処理水を測定することになる。つまりpH計14がフッ酸に直接接することはなく、pH計のガラスの溶解によるセンサの破損を防止できる。
【0127】
また、排水とアルカリ薬剤を投入後、15秒循環させてからpH値を測定するので、第1の被処理水12AのpHを安定させることができる。
【0128】
ステップS107:第1の被処理水12Aの循環を停止し、第1のポンプPo1を起動してアルカリ薬剤を添加する。
【0129】
pHが6より小さい場合、(排水そのものよりpHは大きいが)pH計14にとっては酸性が強い状態である。そこで、第3の経路P3に接続する第2のポンプPo2を停止(第1のバルブAV1は開放)して、酸性傾向の第1の被処理水12Aの循環を停止する。
【0130】
その後、第2の経路P2に設けられた第1のポンプPo1を一定時間(たとえば10秒)起動し、一定量のアルカリ薬剤を処理槽11Aに投入する。その後再びステップS105によって循環を開始し、ステップS106により所定時間経過後のpH値を測定する。
【0131】
本ステップのアルカリ薬剤は、所定量ずつ投入されるとし、第1の被処理水12AのpHが6以上になるまでステップS105〜ステップS107を繰り返す。
【0132】
pH計14のガラスが溶解するなどの悪影響を回避するには、pH6程度が望ましいが、処理開始直後の第1被処理水12Aは、上記の如くpHが6に達していない場合がある。しかしpH6に満たない場合は、本ステップによって、循環を停止した後、更にアルカリ薬剤が添加され、第1の被処理水12Aは次第にアルカリ性にシフトしてゆくので、問題はない。
【0133】
ステップS108:第1の被処理水12AのpHを測定し、所定の範囲内のpH値であるか、判定する。
【0134】
ステップS106において、第1の被処理水12AのpH値が6以上の場合、そのpH値が所望の範囲(pH8〜pH10)であるか判定し、pHが8より小さい場合は、アルカリ薬剤を添加すべくステップS109の処理を行い、pHが10より大きい場合は、酸性溶液を添加すべくステップS103の処理を行う。
【0135】
ステップS109:アルカリ薬剤を添加する。
【0136】
第1の被処理水12AのpH値が6以上で8より小さい場合、第2の被処理水12Bを生成すべく、アルカリ薬剤を更に添加する。第1の被処理水12Aの循環は継続したまま、第2の経路P2の第1のポンプPo1を起動し、アルカリ薬剤を添加する。
【0137】
ステップS110:第1の被処理水12AのpH値を測定する。
【0138】
ステップS109のアルカリ薬剤の添加ご再びpH計14によりpH値を測定し、pHがより8に近く(たとえばpH7.5)なった場合には、ステップS111にて第1のポンプPo1を停止する。pH計14は循環経路(第3の経路P3)途中に設けられており、ここでのpH測定は、ステップS109でアルカリ薬剤が添加された処理槽11A内の被処理水12(第2の被処理水12B)のpHではなく、それ以前の循環経路内に残った第1の被処理水12Aの値が測定されるためである。
【0139】
pHが7.5に満たない場合は、第1のポンプPo1を起動したまま(アルカリ薬剤の投入を継続したまま)、ステップS108によってpH値を測定する。
【0140】
ステップS111:第1のポンプPo1を停止する。
【0141】
ステップS109において添加したアルカリ薬剤によって、第3の経路P3のpHが例えば7.5まで上昇した場合は、それ以上アルカリ薬剤を添加しなくても、所定時間(15秒)循環した後の第1の被処理水12Aは、所望のpH値の範囲に入る場合がある。そこで、一旦第1のポンプPo1を停止(アルカリ薬剤の添加を停止)し、ステップS108にてpH値の測定を行う。
【0142】
ステップS112:第2のバルブAV2を開放して反応槽11Bへ第2の被処理水12Bを排出する。
【0143】
処理槽11A内の被処理水12が所望の範囲のpH値を有する場合には、第2の被処理水12Bが生成されたとして、第4経路P4の第2のバルブAV2を開いて、第2の被処理水12Bの全量を反応槽11Bへ移送する。これにより処理槽11Aの水位Lcは低下し、以降ステップS101からの処理を繰り返す。尚、第2のバルブAV2が開放され、反応槽11Bへ第2の被処理水12Bを移送している間も、循環回路は停止しない。これは、処理槽11A内の被処理水12のpHが変化する場合(例えば反応槽11Bへの移送中に排水が供給される場合)があるため、常にpHを監視する必要があるからである。
【0144】
ここでの第2の被処理水12Bは、ステップS106にて所定の時間(15秒)循環した後に、pHが8〜10となっている。このステップ(ステップS106、ステップS108)を経由することで、反応槽11Bに供給する第2の被処理水12BのpHを安定させることができる。
【0145】
本ステップ以降の第2の被処理水12Bは、図2に示すステップS2以降に従って処理される。
【0146】
このように本実施形態では、pH調整部10にてpH8〜pH10に調整され、pHが安定した第2の被処理水12Bを生成した後、反応槽11Bに移送してカルシウムと反応させることができる。
【0147】
既述の如く、フッ酸をカルシウムと反応させてフッ化カルシウムにするには、、フッ酸(HF)を解離させてフッ化物イオン(F)にする必要があるが、フッ酸とフッ化物イオンの割合はpHに依存し、酸性では殆どがフッ酸であるため処理効率が劣化する。本実施形態では、カルシウムとの反応前にフッ酸が含まれる第2の被処理水12BのpHを8〜10にできるので、処理効率を向上させることができる。
【0148】
次に、図4を参照して、第2の被処理水12Bに浸漬される濾過膜13として適用可能な濾過機構(フィルタ装置13’)の詳細を説明する。下記の形態では、自己形成膜を用いた濾過機構を説明するが、本発明には他の形態の濾過装置を適用することも可能である。
【0149】
図4以降を参照して、本実施形態の濾過膜13としての濾過機構は、フッ化カルシウムである被除去物が混入された流体(第2の被処理水12B)を、被除去物から形成した自己形成膜から成るフィルタで除去するものである。
【0150】
具体的に説明すると、本実施形態のフィルタ装置13’は、有機高分子の第1のフィルタ21表面に、被除去物であるフッ化カルシウムから形成した第2のフィルタ22となる自己形成膜が形成されたものである。この自己形成膜である第2のフィルタ22を用いて、被除去物が入った被処理水が濾過される。
【0151】
第1のフィルタ21は、自己形成膜を付着させることができれば原理的に考えて有機高分子系、セラミック系とどちらでも採用可能である。ここでは、平均孔径0.25μm、厚さ0.1mmのポリオレフィン系の高分子膜を採用した。このポリオレフィン系から成るフィルタ膜の表面写真を図5(B)に示した。
【0152】
また、第1のフィルタ21はフレーム24の両面に設けられた平膜構造を有し、流体に垂直になるように浸漬されている。フレーム24の中空部25からポンプ26により吸引することで、ろ液27を取り出せる。
【0153】
次に、第2のフィルタ22は第1のフィルタ21の表面全体に付着され、被除去物の凝集した粒子を吸引することで固形化された自己形成膜である。この自己形成膜は、ゲル状あるいはケーキ状に凝集したものでも良い。
【0154】
上記した被除去物の自己形成膜である第2のフィルタ22を形成し、被除去物を取り除く濾過について説明する。フッ化カルシウムが混入された流体(第2の被処理水12B)は、微粒子の状態で第2の被処理水12B中に拡散している。
【0155】
図5(A)を参照して、第1のフィルタ21は多数のフィルタ孔21Aを有し、このフィルタ孔21Aの開口部および第1のフィルタ21の表面に層状に形成されている被除去物の自己形成膜が第2のフィルタ22である。第1のフィルタ21の表面にはフッ化カルシウムから成る被除去物の凝集粒子があり、この凝集粒子はポンプからの吸引圧力により第1のフィルタ21を介して吸引され、流体の水分が吸い取られるために乾燥(脱水)してすぐに固形化して第1のフィルタ21表面に第2のフィルタ22が形成される。
【0156】
第2のフィルタ22は被除去物の凝集粒子から形成されるので直ちに所定の膜厚になり、この第2のフィルタ22を利用して被除去物の凝集粒子の濾過が開始される。従ってポンプ26(図4参照)で吸引しながら濾過を続けると、第2のフィルタ22の表面には凝集粒子の自己形成膜が積層されて厚くなり、やがて第2のフィルタ22は目詰まりして濾過を続けられなくなる。この間に被除去物のフッ化カルシウムは固形化されながら、第2のフィルタ22の表面に付着して被処理水が第1のフィルタ21を通過して濾過水として取り出される。
【0157】
図5(A)において、第1のフィルタ21の片面には、被除去物が混入された被処理水があり、第1のフィルタ21の反対面には、第1のフィルタ21を通過した濾過水が生成されている。矢印の方向に被処理水は吸引されて流れ、この吸引により第2の被処理水12B中の凝集粒子が第1のフィルタ21に近づくにつれて固形化されていく。更に、いつかの凝集粒子が結合した自己形成膜が第1のフィルタ21表面に吸着されて第2のフィルタ22が形成される。この第2のフィルタ22の働きで溶液中の被除去物は固形化されながら被処理水の濾過が行われる。
【0158】
このように第2のフィルタ22を介して溶液の被処理水をゆっくりと吸引することで、被処理水中の水が濾過水として取り出せ、被除去物は乾燥して固形化し第2のフィルタ22表面に積層されて被除去物の凝集粒子は自己形成膜として捕獲される。
【0159】
第1のフィルタ21は被処理水に垂直に立って浸漬され、被処理水は被除去物が分散した状態となっている。ポンプ26により第1のフィルタ21を介して被処理水を微弱な吸引圧力で吸引をすると、第1のフィルタ21の表面に被除去物の凝集粒子が互いに結合して、第1のフィルタ21の表面に吸着される。なおフィルタ孔21Aより径の小さい凝集粒子S1は第1のフィルタ21を通過するが、第2のフィルタ22を成膜する工程では濾過水は再び被処理水に循環されるので問題はない。
【0160】
この成膜する工程では、極めて微弱な吸引圧力で吸引されているので凝集粒子S1はいろいろな形状の隙間を形成しながら積層され、極めて膨潤度の高い柔らかな自己形成膜の第2のフィルタ22となる。被処理水中の水はこの膨潤度の高い自己形成膜を浸透して吸引されて第1のフィルタ21を通過して濾過水として取り出され、最終的に被処理水は濾過されることになる。
【0161】
また、被処理水の底面(図1に示す散気装置18)から空気の気泡Aを送ることで、第1のフィルタ21の表面に沿って被処理水に並行流を形成している。これは第2のフィルタ22が第1のフィルタ21の表面全体に均一に付着するためと第2のフィルタ22に隙間を形成して柔らかく付着するためである。具体的には1.8リットル/分のエアー流量に設定をしているが、第2のフィルタ22の膜質により選択される。
【0162】
次に濾過工程では、この第2のフィルタ22の表面に微弱な吸引圧力によりフッ化カルシウムから成る凝集粒子S1が吸着されながら徐々に積層される。このときに精製水は第2のフィルタ22および更に積層される凝集粒子S1を浸透して第1のフィルタ21から濾過水として取り出される。
【0163】
しかし、長時間濾過を続けると、第2のフィルタ22表面には厚く自己形成膜が付着されるために上述した隙間もやがて目詰まりを起こし、濾過水は取り出せなくなる。このために濾過能力を再生するにはこの積層された自己形成膜を除去することが必要になる。
【0164】
濾過能力の再生の一例を説明すると以下の通りである。
【0165】
例えば、第1のフィルタ21の中空部25は微弱な吸引圧力によりは外側と比較すれば負圧となっているので、第1のフィルタ21は内側に窪んだ形状になっている。従って、その表面に吸着される第2のフィルタ22も同様に内側に窪んだ形状になっている。更に第2のフィルタ22の表面に徐々に吸着される自己形成膜も同様である。
【0166】
再生工程ではこの微弱な吸引圧力が停止させてほぼ大気圧に戻すことにより、第1のフィルタ21は元の状態に戻る。これにより第2のフィルタ22およびその表面に吸着された自己形成膜も同様に戻る。この結果、まず自己形成膜を吸着していた吸引圧力がなくなるので、自己形成膜はフィルタ装置23への吸着力を失うと同時に外側に膨らむ力を受ける。これにより、吸着した自己形成膜は自重で離脱を始める。
【0167】
更に、この再生工程で中空部25に濾過水を逆流させると、第1のフィルタ21が元の状態に戻るのを助け且つ濾過水の静水圧が加わり更に外側に膨らむ力を加わる。更に、第1のフィルタ21の内側からフィルタ孔21Aを通して濾過水が第1のフィルタ21と第2のフィルタ22の境界にしみ出して第1のフィルタ21の表面から第2のフィルタ22の自己形成膜が離脱するのを促進する。上記逆流は、図1に示す貯留槽15Cに暫定的に貯留された濾過水16を、濾過膜に流入させることで行うことができる。
【0168】
上述のように第2のフィルタ22を再生させながら濾過を続けると、第2の被処理水12Bの被除去物の濃度が上昇し、やがて第2の被処理水12Bの粘度も増加する。従って、第2の被処理水12Bの被除去物の濃度が所定の濃度を超えたら、濾過作業を停止し沈殿させるために放置する。すると分離槽11Cの底に濃縮スラリーが貯まり、このケーキ状の濃縮スラリーを回収する。回収された濃縮スラリーは圧縮または熱乾燥してその中に含まれる水を除去して更にその量を圧縮する。
【0169】
このスラリーはフッ酸原として再利用することができる。つまり、貯留槽15Cに貯留された濾過水16や、貯留槽15Cに供給される水道水を逆流させて自己形成膜の形成、剥離、堆積を繰り返すことで、フッ酸の原料となる濃縮スラリーの濃縮効率を向上させることができる。
【0170】
図6を参照して、図1に示す濾過膜13を用いて第2の被処理水12Bの濾過を行った実験を説明する。図6は、濾過処理を行う際のフラックスの経時変化を示すグラフである。このグラフにて横軸は処理を連続して行った時間を示し、縦軸はフラックスの大きさを示している。
【0171】
先ず、この実験の条件を説明する。本実験では、0.1mの面積の濾過膜に、7kPaの吸引圧を与えて濾過を行った。被処理水では、フッ素イオンを1000mg/L含む排水に塩化カルシウムを加えて、フッ化物イオンがフッ化カルシウムとして固定化してある。フッ化カルシウムの径は、0.25μm程度である。そして、処理される被処理水の量とフッラックスとを定期的に計量することで実験を行った。
【0172】
この実験により、平均フラックスは0.4m/dayであり、本形態の濾過膜13は実用に十分耐えうることが証明された。更に、濾過膜により得られる濾過水に含まれるフッ化物イオンの濃度は、3.5mg/Lであり、この値は一般的な放流基準を満たしている。
【0173】
実験方法を具体的に説明すると、先ず、フッ化カルシウム等の被除去物を循環させることにより濾過膜の表面に自己形成膜を形成し、一定以上の透明度を有する濾過水が得られるようになった時点で、濾過を開始する。
【0174】
濾過を開始した時点のフラックスは、0.7m/day程度であり、濾過を継続するとフラックスは徐々に低下する。この原因は、濾過の経過に伴い自己形成膜の閉塞が進行するからである。濾過を開始してから130分経過した時点のフラックスは0.2m/day程度である。この時点で自己形成膜を濾過膜から剥離して、被処理水中にて濃縮された被除去物を回収する。
【0175】
自己形成膜の剥離および被除去物の回収が終了したら、新たな自己形成膜を濾過膜の表面に形成して、再び被処理水を濾過する。以上の工程を繰り替えることで、フッ化カルシウムを含む被除去物を、被処理水から分離することができる。
【0176】
上述実験により、定期的に自己形成膜の剥離および再生を行うことで、十分なフラックスが確保できることが明らかになった。
【0177】
本実施形態は、上記の如く、濾過膜13を用いてフッ化カルシウムの固液分離を行っている。従って、排水中に含まれるフッ酸のpH調整を行わず、直接反応槽11Bに排水を送水すると、排水のpHが3から4以下のため、濾過膜13のpH許容範囲外となり濾過膜13が破損する問題がある。
【0178】
しかし、本実施形態では反応槽11Bに送水する以前に、pH値を8〜10に調整した第2の被処理水12Bを生成するので、濾過膜13の破損を防止できる。
【0179】
図7は、本実施形態のフッ酸処理装置100の外観図であり、図7(A)が上面図、図7(B)が前面図、図7(C)が側面図である。
【0180】
図1に示す本実施形態のフッ酸処理装置100は、図7に示すハウジング101内に収納されている。具体的には、フッ酸処理装置100は、幅W×奥行きD×高さHが例えば1140mm×1140mm×1800mm程度のハウジング101内に収まる大きさである。
【0181】
ハウジング101の上部には、ハウジング101内部で第1の経路P1に接続する排水受け入れ口102が設けられる。またハウジング101の上部には、ハウジング101内の第9の経路P9または第13の経路P13に接続する補給水受け入れ口103や、濾過水を排出する濾過水口104、排気口105等が設けられる(図7(A))。
【0182】
ハウジング101前面には、処理中の各情報が表示される表示パネル106が設けられ(図7(B))、ハウジング101側面の下方には、フッ酸の原料となる濃縮スラリーを回収する濃縮液抜き取り口107やエアー供給口108が設けられる(図7(C))。
【0183】
このように本実施形態のフッ酸処理装置100は、非常に小型であるのでクリーンルーム内に配置でき、特に既存のクリーンルームであっても、排水を排出するエッチング装置やCVD装置などの近傍に後付けすることができる。
【0184】
これにより、フッ酸を含む排水からフッ素を除去するフッ酸処理をクリーンルーム内で完結させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】本発明の実施形態におけるフッ酸処理装置を説明する概要図である。
【図2】本発明の実施形態におけるフッ酸処理装置を用いた処理方法を説明するフロー図である。
【図3】本発明の実施形態におけるフッ酸処理装置を用いたpH調整方法を説明するフロー図である。
【図4】本発明の実施形態におけるフッ酸処理装置に適用されるフィルタ装置を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態におけるフッ酸処理装置に適用されるフィルタ装置の(A)動作原理を説明する図、(B)第1のフィルタの拡大図である。
【図6】本発明の実施形態におけるフッ酸処理装置を説明するための特性図である。
【図7】本発明の実施形態におけるフッ酸処理装置を説明するための(A)上面図、(B)前面図、図7(C)側面図である。
【符号の説明】
【0186】
10 pH調整部
11A 処理槽
11B 反応槽
11C 分離槽
12 被処理水
12A 第1の被処理水
12B 第2の被処理水
13 濾過膜
14 pH計
15A 薬剤槽
15B 他の薬剤槽
15C 貯留槽
16 濾過水
17 フィルタープレス
18 散気装置
19 受入槽
100 フッ酸処理装置
P1 第1の経路
P2 第2の経路
P3 第3の経路
P4 第4の経路
Po1 第1のポンプ
Po2 第2のポンプ
Po3 第3のポンプ
AV1 第1のバルブ
AV2 第2のバルブ
AV3 第3のバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルーム内でフッ素系材料を用いる半導体処理装置に近接して配置され、前記半導体処理装置から排出されるフッ化水素酸が混入した排水を前記クリーンルーム内から未搬出で処理するフッ化水素酸処理装置であって、
処理槽と、前記処理槽に接続する第1の経路および第2の経路と、該処理槽に設けられて循環する第3の経路とを有し、前記第1の経路を介して前記処理槽に前記排水を投入する際に、前記第2の経路からアルカリ薬剤を投入して前記排水より大きいpH値の第1の被処理水を生成し、該第1の被処理水が所望の範囲のpH値を有する第2の被処理水になるまで前記第3の経路で循環しながらpH値の測定および調整を行うpH調整部と、
前記第2の被処理水を移送する第4の経路と、
前記第2の被処理水にカルシウム分を添加してフッ化カルシウムを生成する反応槽と、
前記フッ化カルシウムを前記第2の被処理水から分離する分離槽とを具備することを特徴とするフッ化水素酸処理装置。
【請求項2】
前記pH調整部は、前記第3の経路の途中に接続されたpH計を具備し、前記pH計の値により前記第3の経路の開閉を制御することを特徴とする請求項1に記載のフッ化水素酸処理装置。
【請求項3】
前記pH調整部は、前記pH計の測定値が第1のpH値より低い場合に、前記第3の経路を閉じて前記処理槽内の前記第1の被処理水に前記アルカリ薬剤を投入することを特徴とする請求項2に記載のフッ化水素酸処理装置。
【請求項4】
前記pH調整部は、前記pH計の測定値が第1のpH値以上で、第2のpH値より小さい場合に、前記第3の経路を開いたまま前記処理槽内の前記第1の被処理水に前記アルカリ薬剤を投入することを特徴とする請求項2に記載のフッ化水素酸処理装置。
【請求項5】
前記pH調整部は、前記pH計の測定値が第2のpH値以上で第3のpH値以下の場合に、前記第3の経路を閉じて前記第2の被処理水を前記処理槽に貯留することを特徴とする請求項2に記載のフッ化水素酸処理装置。
【請求項6】
前記pH調整部は、前記pH計の測定値が第3のpH値より大きい場合に、前記第3の経路を開いたまま前記処理槽内の前記第1の被処理水に酸性溶液を投入することを特徴とする請求項2に記載のフッ化水素酸処理装置。
【請求項7】
前記pH調整部は、前記第1の被処理水の循環が開始されてから所定の時間経過後に該第1の被処理水のpH値を測定することを特徴とする請求項1に記載のフッ化水素酸処理装置。
【請求項8】
前記pH調整部は、前記第1の被処理水のpH調整を行う酸性溶液に前記排水を用いることを特徴とする請求項1または請求項6に記載のフッ化水素酸処理装置。
【請求項9】
前記第4の経路は、前記pH調整部内の前記第2の被処理水の全量を前記反応槽に移送することを特徴とする請求項1または請求項5に記載のフッ化水素酸処理装置。
【請求項10】
前記第2の被処理水は、pH8以上pH10以下であることを特徴とする請求項1に記載のフッ化水素酸処理装置。
【請求項11】
前記分離槽は、前記第2の被処理水に浸漬された濾過装置であることを特徴とする請求項1に記載のフッ化水素酸処理装置。
【請求項12】
前記濾過装置の表面に形成された自己形成膜により、前記第2の被処理水を濾過することを特徴とする請求項11記載のフッ化水素酸処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−72714(P2009−72714A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244964(P2007−244964)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】