説明

フッ素および重金属類含有燃焼灰の処理方法

【課題】路盤材や埋戻し材といった土壌分野へ利用される土木資材の原料となる燃焼灰からのフッ素および重金属類を土壌環境基準値以下にすることであり、特にセメントの固化が進みにくい冬期においても、好適に使用できる処理方法の提供。
【解決手段】平成15年環境庁告示18号に基づく溶出試験方法で溶出させた場合にフッ素0.8mg/Lおよび重金属類として6価クロム0.05mg/L、鉛0.01mg/Lの少なくとも1項目以上が超過する成分を含有する燃焼灰に、粘土質土壌、セメント、耐寒剤および水を加えて混練して養生することにより、10℃以下の養生条件下においても、前述溶出量が基準値以下となるように不溶化するフッ素および重金属類含有燃焼灰の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素および重金属類含有燃焼灰の処理方法に関する。さらに詳しくは、環境省で2003年2月に施行された土壌汚染対策法での規制対象物質であるフッ素および重金属類の溶出規制値に適合するため、これらを含む燃焼灰に、産業廃棄物として有効利用されていない粘土質土壌、セメント、塩化カルシウム系耐寒剤および水を加えて混練して養生することにより、その燃焼灰中に含まれるフッ素の溶出量を0.8mg/L以下、六価クロムの溶出量を0.05mg/L以下、鉛溶出量を0.01mg/L以下にする燃焼灰の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止策の一環として、非化石燃料である廃タイヤや木屑、RPFといった新エネルギーを燃料としたボイラの稼動が進んでいる。ただし、新エネルギーボイラから排出される燃焼灰の量は、化石燃料ボイラの場合に比べて非常に多く、一部セメント原料として利用される場合もあるが、燃料由来の塩素分や有害物質を多く含有する場合は、セメント原料としての引き取りも難しく、埋立て処分されている場合が多く、有効活用するために無害化処理方法が求められており、多くの処理方法が開示されている。
中でもセメントを用いる処理方法が多く開示されているが、寒冷地をはじめとして温度が低い状態ではセメントの固化が進まず、養生の効果が十分でなく、フッ素やその他重金属の溶出抑制が不十分であることがある。
【0003】
セメントを用いる技術として、例えば、焼却灰や溶融飛灰に製鋼スラグ微粉末、フライアッシュ、を水とともに加えて混合し、押し出し成型機にて成型する方法が開示されている(特許文献1)。しかしこの方法は、溶出を抑制するために混合物を成型した後、養生に6週間以上かける。または養生期間短縮のために蒸気養生やオートクレーブ養生を必要とし、取り扱う作業者の安全面の確保もさることながらコストがかかり過ぎ、加えて使用する製鋼スラグやフライアッシュの粒度に制限を受ける等々、溶出抑制が如何に困難であるかの一端を示している。
【0004】
土、炭および焼却灰などからの重金属の溶出を抑える方法として、水砕スラグ、二水石膏に消石灰またはセメントを混合した固化主剤と塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、炭酸カリウム、等々の10種類から5種以上を選択し、且つクエン酸等3種類から1種以上を選択してなる固化助剤を配合して土質固化剤とし、さらに得られた土質固化剤と土類、炭類、多孔質体、等々の物質を混合固化する技術が開示(特許文献2)されているが、非常に数多くの薬品が必要であり処理の手間やコストもかかることに加え、結果的に実施例で示された鉛溶出量は0.03mg/Lと土壌環境基準値を超過しており多種多様な薬品を加えただけでは焼却灰中のフッ素および重金属類の十分な溶出抑制は期待できない。
【0005】
焼却灰の無害化固化処理方法として、焼却灰100質量部と砂10〜30質量部の混合物100質量部に対し、セメント主体の固化剤(セメント、リグニンスルホン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、ジルコニウム、ソーダ灰/塩化カルシウム、酸化第一鉄の混合物)を15〜30質量部及び合成エマルジョン樹脂溶液を、焼却灰、砂、セメント主体助剤の混合物量に対し、7〜15質量部混合し、成型して養生する方法が特許化されている(特許文献3)。記載の固化剤にはセメント以外に6種類と多くの薬品を組み合わせ、製造工程としては複雑化している。ただし、実施例と比較例の効果比較において文献本文にも記載されているとおり、重金属の溶出有無は合成エマルジョンの有無のみでの差異だけであることから、溶出抑制物質は単に合成エマルジョンだけであったことが容易に読み取れる。
また、いずれの文献においても常温、または加温した条件にて溶出抑制の処方を行われている。
【0006】
このように燃焼灰中のフッ素および重金属類を土壌環境基準値以下に溶出抑制できる技術が容易でないことの一端が伺われるが、さらにセメントの使用が制限される冬期養生条件下での溶出抑制技術は皆無であった。
【特許文献1】特開1999−165144号公報
【特許文献2】特開2005−272510号公報
【特許文献3】特許第3077644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、路盤材や埋戻し材といった土壌分野へ利用される土木資材の原料となる燃焼灰からのフッ素および重金属類を土壌環境基準値以下にすることであり、特にセメントの固化が進みにくい冬期においても、好適に使用できる処理方法である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためには、燃焼灰とシルト等の粘土質土壌、セメントおよび耐寒剤を加えて、燃焼灰からのフッ素および重金属の溶出抑制を達成する方法であり、以下の発明を包含する。
(1)平成15年環境庁告示18号に基づく溶出試験方法で溶出させた場合に溶出量がフッ素0.8mg/Lおよび重金属類として6価クロム0.05mg/L、鉛0.01mg/Lの少なくとも1項目以上が超過する成分を含有する燃焼灰に、粘土質土壌、セメント、耐寒剤および水を加えて混練して養生することにより、溶出量が基準値以下となるように不溶化するフッ素および重金属類含有燃焼灰の処理方法。
(2)前記養生条件が10℃以下であることを特徴とする(1)記載のフッ素および重金属類含有燃焼灰の処理方法。
(3)記粘土質土壌が0.004〜0.06ミリメートルからなるシルト主体である(1)又は(2)記載のフッ素および重金属類含有燃焼灰の処理方法。
(4)前記耐寒剤が燃焼灰とセメントの混合物固形分100質量部に対し、固形分換算で1〜10質量部添加する(1)〜(3)のいずれか1項に記載のフッ素および重金属類含有燃焼灰の処理方法。
(5)前記耐寒剤が塩化カルシウム系耐寒剤であり、前記燃焼灰とセメントの混合物固形分100質量部に対し、塩化カルシウム系耐寒剤中の塩化カルシウム分1.0〜5質量部を混合する(1)〜(4)のいずれか1項に記載のフッ素および重金属類含有燃焼灰の処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の燃焼灰の処理方法は、フッ素および重金属類の溶出量を土壌環境基準値以下に溶出抑制することが可能で、特に気温の低い冬期においても溶出抑制が可能な方法である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細を説明する。
本発明者らは、フッ素及び重金属類含有燃焼灰を無害化し有効活用するために、該燃焼灰に粘土質土壌およびセメント、更に種々のセメント混和剤について鋭意研究を進めた結果、耐寒剤を添加することで、冬期養生条件下においてもフッ素および重金属類を同時に溶出抑制させる効果があることを見出した。
本発明で使用される燃焼灰としては、石炭などの固形燃料、木屑・樹皮などのバイオマス燃料、RPF、RDF、廃タイヤなどの廃棄物燃料、廃紙・黒液・製紙スラッジ活性汚泥などの廃棄物系バイオマスを燃焼した際に発生する燃焼灰であり、詳しくはこれらを燃焼した際に排出されるガスをサイクロン電気集塵器(EP)やバグフィルター等で捕獲した飛灰(それぞれEP灰とバグ灰と略す)等であり、粒度は特に範囲を選ばない。
燃焼灰は、1種または複数から選ばれた燃料または廃棄物を燃焼させて得られた燃焼灰であればよく、複数の燃焼灰を混合しても原料の燃焼灰として用いることもできる。
【0011】
本発明で使用される粘土質土壌としてはシルトを主体としたものを使用する。シルトとは砂と粘土の中間の大きさのもので、一般に微砂とも呼ばれている。地質学・岩石学では1/16〜1/256ミリメートル(約0.004〜0.06ミリメートル)、土壌学では0.002〜0.02ミリメートルの粒子をさし、1/256ミリメートルより小さなものを泥土、1/16ミリメートルより大きなものを砂として分類されている。本発明においては1/16〜1/256ミリメートルの大きさのものをシルトとして有効利用するものである。ただ、シルトは発生する産業においても厳密に分画している事例は多くなく、砂分を回収した後に沈殿池にて沈降したものを廃棄処理しているのが実情である。こうした事情も鑑み、シルト分以外の粒径のものが多少含まれても本発明においては好適に使用できるものである。
【0012】
本発明に使用するセメントとしては、高炉セメントが挙げられるが、ポルトランドセメントに対する高炉スラグの配合によってA種、B種、C種に分類されるが、特に限定されるものではない。
本発明においてはセメントの配合が必須であるが、配合量は燃焼灰、粘土質土壌、セメントの各固形分量合計からの比率で表され、セメントは10〜60質量%の間で選択される。10質量%より小さい配合率ではセメントによる固化への寄与率が小さく、耐寒剤効果の差異が不明瞭となるので好ましくない。一方、60質量%を越えるセメントの配合率では固化への効果はあるもののコストアップにつながることから経済的に好ましくない。
【0013】
本発明において、使用する耐寒剤は、セメントの水和反応を促進するものであり一般に市販されているものでよい、防凍剤とて市販されているものでもよい、形状は固液どちらでも良いが均一な撹拌、綱混練時間短縮のため液状がより好ましく、主成分に、無機質窒素化合物、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等を用いて市販されている。中でも塩化カルシウム主体の耐寒剤は塩化物イオン量が多いため、鉄を腐食する弊害が認められているが、比較的安価で取り扱いが容易であることから鉄筋を使用しない場所、例えば再生路盤材として好適に使用できる。
耐寒剤は燃焼灰とセメントの固形分の合計100質量部に対して固形分換算1〜10質量部で添加することが好ましい。1質量部未満ではセメントの水和反応の促進に寄与せず、溶出抑制効果が発現しないため好ましくない。また10質量部を超えて添加しても効果が頭打ちになり経済的に好ましくない。
燃焼灰とセメント、粘土質土壌および塩化カルシウム系耐寒剤で処理する際は、燃焼灰、セメント固形分の合計100質量部に対して、塩化カルシウム系耐寒剤中の塩化カルシウム分は1.0〜5質量部、特に好ましくは1〜3質量部加える。塩化カルシウム系耐寒剤は添加水の一部として添加し、その分を考慮して調整水は減らして添加する。
【0014】
また、セメントとともに水和反応に必要な水を付与させるが、一般水道、工業用水、または工場排水等の不純物を取除く目的で別途薬品を添加した処理水も好適に使用できる。
【0015】
添加する水の量は、極端に多い場合は水和反応に時間がかかり、強度は低くなり、極端に少ない場合は、十分な水和反応が進まず固化が困難となるなどの養生後の固化品の強度に影響を与えることが知られている。ただ、一般的に耐寒剤を添加する際の注意点として、耐寒剤が液体品の場合は含まれる水分は添加する水の一部として換算する。さらに耐寒剤の使用説明書には一般的に最大水セメント比(W/C比)は50%程度と記載されている例が多く見られるが、本発明においてはシルトを含み、且つ燃焼灰が吸水性に富むことから必ずしも前述の一般的な水セメント比とは一致しない。燃焼灰を含むことにより水の保持性能に優れ、安定した水和反応が進められることも他には類を見ない本発明の特徴の一つに挙げられ、例えば混練後の取扱い易さで水量を決めるなど、水和反応に必要な量を常識的な範囲で採用すれば良い。
【0016】
本発明においては、乾燥状態の燃焼灰とセメントを予め均一に分散するように混合し、ついで水分を含む粘土質土壌、塩化カルシウム系耐寒剤と必要な水分を加えて、全材料の混合および混練を行うことが好ましい。ただしこれらを別々の装置で行う必要はなく、公知の混合・混練装置を用いて混練することが好ましい。
【0017】
以下に機器の一例を挙げると日工ダッシュミキサ、ドラムミキサ、傾胴ミキサ、リボンミキサ、アイリッヒインテンシブミキサ、ペレガイアミキサ等の公知の混合攪拌装置を好適に用いることができる。また、攪拌時間については、機器により攪拌能力に特徴があるため規定はあえて行わないが、目安として1〜15分程度である。
【0018】
本発明は混練後の養生温度が低い場合でも溶出抑制効果がある。10度以下の条件となる冬期においてもハウスや室などで加温することなく、屋外で養生を行う。10度以上の養生条件においても、耐寒剤添加によってセメントの水和反応は促進されフッ素や重金属類の溶出を抑制する効果はあるが、無添加の場合でもセメントの水和反応は進むため、差が少なくなる。用途によって異なるが、再生路盤材として使用する場合、固化後の粉砕が行いやすい形状にて養生して固化する。養生日数は、およそ1〜28日間、好ましくは7日間〜14日で養生する。
【実施例】
【0019】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、もちろん本発明はこれによって何等制限されるものではない。なお、特に示さない限り、燃焼灰は以下の燃焼灰を、シルトは以下の粒径分布のものを用いた。また、特に示さない限り、実施例及び比較例における薬品の添加率は燃焼灰、セメント等の全固形分の割合として質量%で示す。また、実施例1に処理に関する詳細を示し、他の実施例と比較例においては差異を明らかにするため主な変更点を示す。
【0020】
燃焼灰(1)の性状
廃タイヤ50質量部、廃材等の木質原料25質量部、製紙スラッジ25質量部を燃料とした流動床炉のバグフィルター捕集燃焼灰を燃焼灰とした。また、燃焼灰のフッ素および重金属類の溶出量を測定し、表1に記載した。
【0021】
燃焼灰(2)の性状
廃タイヤ48質量部、廃材等の木質原料32質量部、製紙スラッジ20質量部を燃料とした流動床炉のバグフィルター捕集燃焼灰を燃焼灰とした。また、燃焼灰のフッ素および重金属類の溶出量を測定し、表1に記載した。
【0022】
シルトの粒径分布
採石場にて砕石後、製品として分級した残さについて沈殿池で沈殿させて濃縮したものを原料のシルトとして使用した。
このときのシルトについてレーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(Microtrac_MT−3300EX)を用いて粒径を測定すると平均粒径11.44μm、62μm以上が5.6%、3.9μm以下が28.0%含有からなるものであった。
【0023】
(A)溶出試験方法
平成15年環境省告示第18号に順じて行なった。すなわち、試料を十分風乾後、非金属製である目開き2mmの篩を通過させたもの50gを、1,000mLの蓋つきのポリエチレン容器に取り、純水(pH5.8〜6.3)を500mL加えて試料液を調整した。この試料液を、常温、大気圧下で、産廃溶出振とう機(タイテック社製)を用いて6時間連続振とうした(振とう幅4〜5cm、振動数200回/分)。ついで、振とう後の試料液を、30分間静置した後、毎分約3,000回転で20分間遠心分離した。上澄み液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ろ液を取り、定量に必要な量を計り取り、これを検液とした。
【0024】
(B)フッ素の測定方法
検液をイオンクロマトグラフ(ICS−2000/(株)日本ダイオネクス社製)で定量した(JIS K 0102の34.2、水質環境基準告示付表6)。
【0025】
(C)六価クロムの測定方法
検液をジフェニルカルバジド吸光光度法で定量した(JIS K 0102の65.2.1)。
【0026】
(D)鉛の測定方法
検液をICP質量分析法で定量した(JIS K 0102の54.4)。
【0027】
実施例1
絶乾質量1,166gの燃焼灰(1)に対し(固形分21.2質量%相当)、高炉Bセメント2,134g(固形分38.8質量%相当)添加し、アイリッヒインテンシブミキサ((株)日本アイリッヒ社製)を用いて予備攪拌として1分間混合した。ついで固形分濃度56.7%のシルトを、シルトの持ち込み水分を考慮して全部で3,880g(固形分40質量%)添加し、塩化カルシウム系耐寒剤(ボース耐寒剤25%溶液、(株)ボース社製)275g、および調整水を534g加えて、混練を2分間行った。これら原料の配合比と添加剤の質量%については、表2に記載した。5℃での固化養生期間(材齢)を7日間経た後、固化したサンプルについて平成15年環境省告示第18号に従い溶出試験を行ったところ、表3に示すようにフッ素、鉛、六価クロムいずれの元素の溶出量も土壌環境基準値以下であった。
【0028】
実施例2
調整水の量を369gとした以外は実施例1と同様に処理を行った(表2)。5℃養生での材齢7日間の固化サンプルからのフッ素、鉛、六価クロムの溶出量は、表3に示すように土壌環境基準値以下であった。
【0029】
実施例3
絶乾質量954gの燃焼灰(1)に対し、高炉Bセメント1,746g添加し、アイリッヒインテンシブミキサを用いて予備攪拌として1分間混合した。ついで固形分濃度56.7%のシルトを、シルトの持ち込み水分を考慮して1,800g添加し、AE剤0.45g、亜硝酸カルシウム系耐寒剤(ポズテック99、BASFポゾリス(株)社製)225gおよび調整水を297g加えて、混練を2分間行った(表2)。5℃での固化養生期間(材齢)を7日間経た後、固化したサンプルについて平成15年環境省告示第18号に従い溶出試験を行い、表3に示すようにフッ素、六価クロムおよび鉛の溶出量は土壌環境基準値以下であった。
【0030】
実施例4
絶乾質量6,600gの燃焼灰(2)に対し、高炉Bセメント8,800g添加し、ついで固形分濃度50%のシルトを13,200g添加し、耐寒剤として塩化カルシウム(塩化カルシウム35%溶液、(株)トクヤマ社製)1,100gおよび調整水を2,367g加えて、2軸式のダッシュ200N型ミキサー(日工(株)社製)を用いて混練を2分間行った。これら原料の配合比と添加剤の質量%については、表4に記載した。5℃での固化養生期間(材齢)を7日間経た後、固化したサンプルについて平成15年環境省告示第18号に従い溶出試験を行い、表5に示すようにフッ素、六価クロムおよび鉛の溶出量は土壌環境基準値以下であった。
【0031】
実施例5
塩化カルシウム系耐寒剤1,987gおよび調整水を909g加えた以外は、実施例4と同様に処理を行った(表4)。5℃での固化養生期間(材齢)を7日間経た後、固化したサンプルについて平成15年環境省告示第18号に従い溶出試験を行ったが、表5に示すようにフッ素および六価クロム、鉛の溶出量は土壌環境基準値以下であった。
【0032】
実施例6
混練処理後の固化養生温度として、夏期を想定して26℃とした以外は、実施例4と同様に処理を行った(表4)。26℃での固化養生期間(材齢)を7日間経た後、固化したサンプルについて平成15年環境省告示第18号に従い溶出試験を行ったが、表5に示すようにフッ素および六価クロム、鉛の溶出量は土壌環境基準値以下であった。
【0033】
比較例1
絶乾質量1,166gの燃焼灰(1)に対し、高炉Bセメントを2,134g添加し、アイリッヒインテンシブミキサを用いて予備攪拌として1分間混合した。ついで固形分濃度56.7%のシルトを3,880g(固形分総質量の40%)添加し、調整水を1,015g加えて、混練を2分間行った。これら原料の配合比と添加剤の質量%については、表2に記載した。5℃での固化養生期間(材齢)を7日間経た後、固化したサンプルについて平成15年環境省告示第18号に従い溶出試験を行ったが、表3に示すようにフッ素の溶出量は土壌環境基準値以下であったが、六価クロム溶出量が0.067mg/L、鉛溶出量が0.011mg/Lとそれぞれ土壌環境基準値を超過した。
【0034】
比較例2
リグニン成分としてクラフト蒸解後の黒液(固形分濃度20%)275gおよび調整水520gを加えた以外は比較例1と同様に処理を行った(表2)。5℃での固化養生期間(材齢)を7日間経た後、固化したサンプルについて平成15年環境省告示第18号に従い溶出試験を行ったが、六価クロムの溶出量は土壌環境基準値以下であったが、フッ素の溶出量が0.84mg/Lと鉛溶出量が0.012mg/Lとそれぞれ土壌環境基準値を超過した(表3)。
【0035】
比較例3
調整水1,015gの代わりに人工海水を1,015g加えた以外は比較例1と同様に処理を行った(表2)。5℃での固化養生期間(材齢)を7日間経た後、固化したサンプルについて平成15年環境省告示第18号に従い溶出試験を行ったが、鉛の溶出量は土壌環境基準値以下であったが、フッ素および六価クロム溶出量がそれぞれ、0.81mg/Lおよび0.054mg/Lと土壌環境基準値を超過した(表3)。
【0036】
比較例4
絶乾質量6,600gの燃焼灰(2)に対し、高炉Bセメント8,800g添加し、ついで固形分濃度50%のシルトを13,200g(固形分総質量の30%)添加し、調整水を4,180g加えて、2軸式のダッシュ200N型ミキサー(日工(株)社製)を用いて混練を2分間行った。これら原料の配合比と添加剤の質量%については、表4に記載した。5℃での固化養生期間(材齢)を7日間経た後、固化したサンプルについて平成15年環境省告示第18号に従い溶出試験を行ったが、表5に示すようにフッ素および六価クロムの溶出量は土壌環境基準値以下であったが、鉛溶出量が0.014mg/Lと土壌環境基準値を超過した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0042】
実施例1〜6と比較例1〜4を比較することから明らかなように、冬期養生条件下および夏期の条件下においても、燃焼灰に由来するフッ素および重金属類は土壌環境基準値以下に溶出抑制されており、1年をとおして再生路盤材や埋め戻し材といった土壌分野へ安全に土木材料として利用することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平成15年環境庁告示18号に基づく溶出試験方法で溶出させた場合に溶出量がフッ素0.8mg/Lおよび重金属類として6価クロム0.05mg/L、鉛0.01mg/Lの少なくとも1項目以上が超過する成分を含有する燃焼灰に、粘土質土壌、セメント、耐寒剤および水を加えて混練して養生することにより、前記溶出量が基準値以下となるように不溶化するフッ素および重金属類含有燃焼灰の処理方法。
【請求項2】
前記養生条件が10℃以下であることを特徴とする請求項1記載のフッ素および重金属類含有燃焼灰の処理方法。
【請求項3】
前記粘土質土壌が0.004〜0.06ミリメートルからなるシルト主体である請求項1又は2に記載のフッ素および重金属類含有燃焼灰の処理方法。
【請求項4】
前記耐寒剤が燃焼灰とセメントの混合物固形分100質量部に対し、固形分換算で1〜10質量部添加する請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ素および重金属類含有燃焼灰の処理方法。
【請求項5】
前記耐寒剤が塩化カルシウム系耐寒剤であり、前記燃焼灰とセメントの混合物固形分100質量部に対し、塩化カルシウム系耐寒剤中の塩化カルシウム分1.0〜5質量部を混合する請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素および重金属類含有燃焼灰の処理方法。

【公開番号】特開2012−254433(P2012−254433A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130252(P2011−130252)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000122298)王子ホールディングス株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】