説明

フッ素ガス生成装置

【課題】電解槽において生成した溶融塩由来の成分を含むフッ化水素を電解槽に再利用することができるフッ素ガス生成装置を提供する。
【解決手段】フッ化水素を含む溶融塩からなる電解浴中でフッ化水素を電解する電解槽1を備え、ガスの発生に随伴する溶融塩のミストと、溶融塩から気化したフッ化水素ガスとを電解槽1上部の配管9,10に接続した還流装置14,17,18、および、13,15,16により液化還流させることで、フッ化水素及び溶融塩のミストを電解槽1に戻すことを特徴とするフッ素ガス生成装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素ガス生成装置に関し、特に生成ガスに随伴するミストによる配管閉塞を防止することが可能なガス生成装置、及び、ガス生成装置の配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フッ化水素を含む溶融塩からなる電解浴中でフッ化水素を電解する電解槽を備え、陽極側にフッ素ガスを主成分とする主生ガスを発生させると共に、陰極側に水素ガスを主成分とする副生ガスを発生させるフッ素ガス生成装置が知られている。
【0003】
この種のフッ素ガス生成装置では、電解槽の陽極から発生するフッ素ガスを主成分とする主生ガス中に、溶融塩から気化したフッ化水素ガスが混入すると同時に、溶融塩自体のミストも同時に混入するため、長時間使用していくうちに配管の閉塞が生じてしまう。
【0004】
同様に、陰極から発生する水素ガスを主成分とする副生ガス中にも、溶融塩から気化したフッ化水素ガスが混入すると同時に、溶融塩自体のミストも混入する。そのため、長時間使用していくうちに配管の閉塞が生じてしまう。
【0005】
また、上記フッ素ガス生成装置では、電解槽で生成したフッ素ガス(主生ガス)は、圧力調整弁を通過させたのち、NaFなどの吸着剤を使用した精製塔を通過させ、不純物の除去を行うのが一般的である。この際、フッ素ガス中に含まれているミストは、上記記載の配管の閉塞問題以外にも、圧力調整弁の閉塞や、精製塔の閉塞および吸着剤の劣化を引き起こす恐れがある。
【0006】
したがって、一定期間ごとに配管および圧力調整弁を取り外し、洗浄しなければならない。また、精製塔の吸着剤の交換作業も頻度多く行わなければならない。そのためには電解槽の運転を停止し、配管の置換作業が必要となる。
【0007】
特許文献1には、配管途中にフィルターを差し込むことで、フィルター上にミストをトラップする技術が開示されているが、この方法においても、一定期間ごとにフィルターが目詰まりすることがあり、フィルターを定期的に交換するか、もしくはトラップしたミストを定期的に洗浄しなければならない。
【0008】
フィルターの交換もしくは洗浄を行うためには、配管の解体作業が必要となり、そのためには、電解槽の運転を停止し、配管の置換作業が必要となる。したがって、作業が繁雑になるばかりではなく、生産性の悪化を招く。
【0009】
また、特許文献2には、フィルターの寿命を長寿命化することを目的として、配管の一部に温度を調節する温度調節機構を設け、温度調節された部分で液化されたフッ化水素ガスを、配管途中に差し込まれたフィルターに接触させることにより、フィルター面に堆積した固形物を溶解させ、閉塞を防ぎ、フィルターの機能を復活させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−179709号公報
【特許文献2】特開2006−111900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に記載のガス発生装置では、配管の一部に設置された温度調節機構の下流にフィルターを設置する構造となっており、温度調節された部分で液化されたフッ化水素を温度調節機構の下流に設置されたフィルターに接触させることでフィルターに付着した閉塞物質を溶解させ、さらに、フィルターの下部に設けられた廃液槽にフィルターの目詰まりの原因となる閉塞物質を残留させる構成となっている。
【0012】
しかしながら、フィルターに付着した閉塞物質には、溶融塩由来の成分が含まれており、そのまま廃棄してしまうことは、電解槽の原料の使用効率の観点から好ましくない。
【0013】
特許文献2に記載のガス発生装置の構成では、温度調節機構の下流にフィルターを設置する構造となっており、電解槽からフィルターまでの経路が長くなってしまう。そのため、溶融塩由来の成分を含むフッ化水素と配管などの部材との接触による不純物濃度の増加が懸念されるため、フィルターに付着した閉塞物質を電解槽の原料として再利用することは好ましくないという問題点があった。
【0014】
また、フィルターに付着した閉塞物質を残留させる廃液槽を設ける場合、一定期間ごとに、廃液槽の交換や洗浄などの作業負荷が増え、電解槽の運転を停止しなければならない場合があった。
【0015】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、電解槽において発生した生成ガス中の溶融塩由来の成分、特にフッ化水素を電解槽に還流再利用することができるフッ素ガス生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、溶融塩由来の成分、特にフッ化水素を還流させるための温度調節機構を、電解槽のガスの出口付近に設けることによって、該配管の閉塞を招く溶融塩由来の物質を残留させる廃液槽を設けることなく、溶融塩由来の成分、特にフッ化水素を電解槽に、効率的に還流再利用できることを見出し、本発明に至った。
【0017】
すなわち、本発明は、フッ化カリウムおよびフッ化水素から成る溶融塩中のフッ化水素を電気分解することによって、フッ素ガスを生成するフッ素ガス生成装置であって、フッ化カリウムおよびフッ化水素を含む溶融塩からなる電解浴中でフッ化水素を電気分解することによって陽極側にフッ素ガスを主成分とする主生ガスを発生させると共に、陰極側に水素ガスを主成分とする副生ガスを発生させる電解槽と、前記電解槽の溶融塩から気化したフッ化水素ガスと、前記主生ガスと前記副生ガスの発生に随伴する溶融塩由来のミストとが混入した前記主生ガスおよび前記副生ガスを電解槽からそれぞれ誘導する第1配管と、前記第1配管に設けられ、該第1配管の一部の温度を調節する熱交換機構と、を備え、前記熱交換機構により温度調節された前記第1配管の一部で液化されたフッ化水素を、還流させ前記電解槽に戻すことを特徴とするフッ素ガス生成装置である。
【0018】
また、本発明は、前記第1配管の下部に接続され、前記液化されたフッ化水素を電解槽に戻すためのディップ管と、前記電解槽及び前記第1配管に接続され、前記電解槽の溶融塩から気化したフッ化水素ガスと、前記主生ガスと前記副生ガスの発生に随伴する溶融塩由来のミストとが混入した前記主生ガスおよび前記副生ガスのそれぞれを誘導する第2配管とを備え、前記ディップ管を前記電解槽の電解浴中に浸漬させることによって、前記電解槽にて生成された前記主生ガスおよび前記副生ガスのそれぞれを誘導する通路と、前記液化されたフッ化水素を還流させ電解槽に戻す通路を別々に設けることを特徴とするフッ素ガス生成装置である。
【0019】
本構成にすることによって、電解槽で発生した各生成ガスが誘導される通路と該生成ガス中に含まれるフッ化水素を還流するための通路を別々にすることができ、該生成ガスの流量が増加した場合においても、正常にフッ化水素を還流することが可能となる。
【0020】
なお、ここで言う下部とは、前記電解槽にて発生した該生成ガスを外部に誘導するための第1配管の下部、つまり、電解槽の溶融塩が貯留されている電解浴側を表す。
【0021】
また、前記第1配管と前記第2配管の接続部分を、前記第1配管の一部の温度を調節する熱交換機構の内部に位置させることによって、配管の接続部分において、溶融塩由来の析出物による閉塞を低減させることが可能となる。
【0022】
また、本発明は、前記熱交換機構が、前記電解槽の天板上部からの距離が200cm以下の位置に設けられることを特徴とするフッ素ガス生成装置である。
【0023】
なお、ここで言う天板上部から熱交換機構までの距離とは、電解槽の天板上部に設けられた前記第1配管のガスの出口部分から熱交換機構として用いる温度調節器の下部までの距離を表す。
【0024】
また、本発明は、前記熱交換機構を備えた前記第1配管に、フッ化水素を供給するための配管を接続し、前記熱交換機構を備えた前記第1配管の内部にフッ化水素を供給することを特徴とするフッ素ガス生成装置である。
【0025】
前記熱交換機構を備えた前記第1配管内部の温度が−83℃〜−50℃の範囲において、フッ化水素を0.01〜0.12当量添加することにすることによって、電解槽中の溶融塩の突沸や液面変動がなく、効率的にフッ化水素を還流させることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電解槽のガスの出口付近において、溶融塩由来の成分、特にフッ化水素を液化還流させることによって電解槽の原料として再利用することができ、かつ、電解槽から発生するフッ素ガスを主成分とする主生ガスおよび水素ガスを主成分とする副生ガスを誘導する配管および弁の解体洗浄作業を無くし、安定かつ連続的にフッ素ガスを供給可能なフッ素ガス生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るフッ素ガス生成装置の系統図の一例である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るフッ素ガス生成装置の系統図の一例である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るフッ素ガス生成装置の系統図の他例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0029】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るフッ素ガス生成装置100について説明する。
【0030】
フッ素ガス生成装置100は、電気分解によってフッ素ガスを主成分として含有する主生ガスを生成するとともに、水素ガスを主成分として含有する副生ガスを生成する装置である。
【0031】
フッ素ガス生成装置100は、電気分解によってフッ素ガスを生成する電解槽1と、電解槽1から生成した主生ガス(フッ素ガス)を外部へと供給するフッ素ガス供給系統2と、フッ素ガスの生成に伴って生成された副生ガス(水素ガス)を外部へと供給する水素ガス供給系統3とを備える。
【0032】
まず、電解槽1について、説明する。
【0033】
電解槽1には、フッ化水素(HF)を含む溶融塩が貯留される。本実施例の形態では、溶融塩として、フッ化水素とフッ化カリウム(KF)の混合物(KF・2HF)が用いられる。
【0034】
電解槽1内は、溶融塩に浸漬させたスカート6によって陽極室7と陰極室8に区画される。陽極室7及び陰極室8のそれぞれには、陽極4と陰極5が浸漬され、陽極4と陰極5の間に電源(図示せず)から電流が供給されることによって、陽極4では主生ガスとしてフッ素ガス(F)が生成され、陰極5では副生ガスとして水素ガス(H2)が生成される。陽極4には炭素電極が用いられ、陰極5には、軟鉄、モネル、ステンレス、又はニッケルからなる電極が用いられる。
【0035】
KF・2HFの融点が71.7℃であるため、溶融塩の温度は90〜100℃に調節される。電解槽1の陽極4及び陰極5から生成したフッ素ガスを主成分とする主生ガスおよび水素ガスを主成分とする副生ガスのそれぞれには、溶融塩からフッ化水素が蒸気圧分だけ気化して混入するとともに、溶融塩成分であるフッ化カリウム(KF)とフッ化水素(HF)の混合物KF・nHFがミストとして混入する。
【0036】
このように、陽極4にて生成され、陽極室7に導かれるフッ素ガスを主成分とする主生ガス(以下、単に「フッ素ガス」ともいう)、及び、陰極5にて生成され、陰極室8に導かれる水素ガスを主成分とする副生ガス(以下、単に「水素ガス」ともいう)のそれぞれには、溶融塩から気化したフッ化水素ガスおよび溶融塩由来のミスト成分が含まれている。
【0037】
次に、フッ素ガス供給系統2の構成について説明する。
【0038】
陽極室7には、陽極4にて生成した主生ガスを外部に導くための第1フッ素ガス配管9が、電解槽1の上部天板1aに接続される。
【0039】
陽極室7に接続された第1フッ素ガス配管9の一部の外周には、第1フッ素ガス配管9の温度を調節する熱交換機構として供するジャケット13が設けられている。第1フッ素ガス配管9のジャケット13の下流側には、バルブ11が設けられている。
【0040】
熱交換機構としては、配管内部の温度を調節できるものであれば、特に限定されないが、例えば、温媒(熱媒又は冷媒)を流通可能なジャケットを用いる方式、外管の中に伝熱管を同心円状に挿入し、それぞれ流体を流して熱交換させるシェルアンドチューブ方式(多管式熱交換器)、ペルチェ素子を用いる方式などが挙げられる。
【0041】
ジャケット13には、熱媒を流通させるための熱媒入口配管15および熱媒出口配管16が接続され、ジャケット13に熱媒を流通させることにより、第1フッ素ガス配管9の温度調節を行うことができる。使用する熱媒としては、第1フッ素ガス配管9の温度調節を行うことのできるものであれば特に限定されない。
【0042】
さらに、ジャケット13は、電解槽1の上部天板1aからできるだけ近い位置、つまり、電解槽1のガスの出口付近に配置することが好ましい。電解槽1の上部天板1aからジャケット13までの距離が長くなると、ジャケット13に覆われていない上部天板1aからジャケット13間の配管部分での閉塞が起きやすくなるため、電解槽1の天板上部1aからジャケット13の下部までの距離は、0cm以上、200cm以下とすることが好ましく、特に、10cm以上、100cm以下とすることが好ましい。
【0043】
また、ジャケット13を設置した第1フッ素ガス配管9部分の内部には、ジャケット13からの熱伝導を効率的に行うために充填材を充填することが好ましい。
【0044】
該充填材の材質としては、フッ素ガス及びフッ化水素ガスに対して耐食性のあるものを用いることが好ましく、例えばニッケル、モネル、ステンレス、鉄、銅等の材料が挙げられる。
【0045】
該充填材としては、規則充填材や不規則充填材等が挙げられ、特に限定されない。規則充填材としては、例えば孔、凹凸等を施した薄板や、金網状のものなど、これらを組み合わせたものが挙げられ、不規則充填材としては、例えばラシヒリング、ポールリング、テラレット、マクマホンパッキン、ヘリパック等の汎用品を挙げることができる。
【0046】
なお、ここで言う規則充填材とは、規則的に積み重ねるのに適した充填材を表し、不規則充填材とは、充填する際に、不規則で無秩序に雑然と積まれる充填材を表す。
【0047】
充填材の配置方法として、特に限定されず、充填材をランダムに配置することが可能である。また、充填材の間隔は、充填材同士が接触する部分が多くなりすぎて、ガスの流れを妨げるものでなければ、特に限定されず、充填材同士が一部接触していたり、数mm程度の間隔を有してもよい。
【0048】
例えば、不規則充填材として、直径4mm〜10mmのラシヒリングを用いる場合、充填材は一部接触している部分や2mm〜10mm程度の間隔を有する部分を含む。
【0049】
次に、以上のように構成されるフッ素ガス供給系統2の還流工程について説明する。
【0050】
陽極4にて生成したフッ素ガス(主生ガス)は、第1フッ素ガス配管9に誘導され、熱媒を流通させたジャケット13を通過することにより冷却される。
【0051】
陽極4にて生成したフッ素ガス(主生ガス)中には、フッ素ガス以外にフッ化水素及び溶融塩由来のミストが含まれている。例えば、電解槽1の原料としてKF・2HFを用い、大気圧で操業する場合、陽極室7から誘導されるフッ素ガス中にフッ化水素は分圧で50mmHg程度含まれる。
【0052】
第1フッ素ガス配管9を、外周に設置したジャケット13によって温度調節し、第1フッ素ガス配管9を通過するフッ素ガスの温度を、フッ化水素の蒸気圧以下に冷却することによってフッ素ガス中のフッ化水素を液化させる。第1フッ素ガス配管9内のフッ素ガスの温度を、フッ化水素の温度を融点以上、沸点以下、すなわち、−83℃〜19℃とするように、温度を調節することが好ましい。
【0053】
第1フッ素ガス配管9内の温度は、フッ化水素の融点(−83℃)に近いほうが好ましい。配管9内の温度が、−83℃〜−50℃の温度範囲においては、フッ化水素を効率的に液化することが可能であるが、−50℃〜19℃の温度範囲では、フッ化水素の蒸気圧の影響から、フッ化水素の液化が生じにくくなる。
【0054】
そのため、特開2006−111900号公報に記載されているように、電解槽にて生成されたフッ素ガスを導出する配管(第1フッ素ガス配管9)の温度調節された部位に、フッ化水素供給用の配管を接続することによって、フッ化水素を前記部位に供給してフッ化水素の濃度を増加させ、液化されるフッ化水素の量を多くするようにしてもよい。
【0055】
しかしながら、添加するフッ化水素の量が多すぎると、電解槽にて生成された主生ガス(F2)中のフッ化水素濃度が増加し、後段のフッ化水素の除去精製工程に負荷がかかることや、フッ化水素の還流量が増加し、電解槽にフッ化水素が戻る際に、溶融塩の突沸や液面の変動が生じる。このため、添加するフッ化水素を適切な量に制御することが必要となる。
【0056】
すなわち、添加するフッ化水素の量は、電解槽において生成された主生ガス(F2)中のフッ化水素濃度が必要以上に増加しない、かつ、溶融塩の突沸や液面の変動が起きない程度にすることが特に好ましい。
【0057】
フッ化水素の蒸気圧は温度に依存するため、フッ化水素の蒸気圧を考慮し、第1フッ素ガス配管9内の温度によって、フッ化水素の添加量を適宜調整することが好ましく、配管9内の温度が、−50℃〜19℃の温度範囲においては、フッ化水素の添加量は0.13〜1.0当量とすることが好ましい。なお、適切なフッ化水素の添加量は、溶融塩(KF・nHF)及びフッ化水素の蒸気圧曲線より算出することができる。
【0058】
上述のように、第1フッ素ガス配管9内の温度が、−83℃〜−50℃の範囲においては、フッ化水素を添加せずにフッ化水素を効率的に液化することが可能であり、第1フッ素ガス配管9内温度を、フッ化水素の融点(−83℃)付近にすることが好ましいが、−83℃付近に温度を設定する場合、温度調節機(熱交換機構)に対する負担や冷却能力の観点から、配管9内の温度を、−65℃〜−50℃の範囲に設定し、適切な量のフッ化水素を添加することが特に好ましい。
【0059】
第1フッ素ガス配管9内の温度が、−83℃〜−50℃の温度範囲においては、フッ化水素の添加量は0.01〜0.12当量とすることが特に好ましく、フッ化水素の添加量を調整することによって、生成された主生ガス(F2)中のフッ化水素濃度の増加が少なく、さらに、溶融塩の突沸や液面の変動なく、効率的にフッ化水素を還流させることが可能となる(後述の実施例3、4及び比較例3参照)。
【0060】
なお、電解槽における反応式は、2HF→F2+H2(陽極:2F-→F2+2e-、陰極:2H+2e-→H2)となり、ここでフッ化水素の1当量とは、電解に必要なフッ化水素の投入量を表し、フッ素ガス(F2)1モル及び水素ガス1モル(H2)を発生させるのに必要なフッ化水素(HF)のモル数を表す。
【0061】
また、フッ化水素を供給する配管は、電解槽上部天板1aの上部から、ジャケット13によって温度調節された第1フッ素ガス配管9の該部分までに位置すれば特に限定されない。
【0062】
上述したフッ化水素を第1フッ素ガス配管9に添加する方法は、本発明の第1の実施の形態および第2の実施の形態(後述にて説明)の何れにおいても適用可能である。また、同様に、フッ化水素を添加する方法は、水素ガス供給系統3の第1水素ガス配管10にも適用可能である。
【0063】
液化したフッ化水素は、自重により第1フッ素ガス配管9を逆流し、陽極室7へと戻る。この液化したフッ化水素が陽極室7へ戻る際に、溶融塩成分を含むミストを吸着し、溶融塩ミストとともに陽極室7へ戻すことが可能となる。
【0064】
本発明のフッ素ガス生成装置は、第1フッ素ガス配管内に充填材を充填せずに運転可能である(後述の実施例1参照)が、第1フッ素ガス配管9内には、充填材を配置することもできる(後述の実施例2参照)。充填材を配置する場合、充填材の表面に溶融塩由来の成分が析出するが、液化したフッ化水素は自重によって第1フッ素水素配管9を逆流し、充填材の表面に析出した溶融塩由来の成分を溶解させ、溶融塩由来の成分を陽極室7へ戻すことが可能となる。
【0065】
次に、水素ガス供給系統3の構成及び還流工程について説明する。
【0066】
水素ガス供給系統3についても、フッ素ガス供給系統2と同様の形態をとり、第1水素ガス配管10に設置されたジャケット14に、熱媒入口配管17及び熱媒出口配管18間に流通させた熱媒により第1水素ガス配管10の内部を冷却し、第1水素ガス配管10中のフッ化水素を液化還流することで、配管10内に誘導された水素ガス中の溶融塩成分を含むミストを、フッ化水素とともに陰極室8へと戻すことが可能となる。なお、第1水素ガス配管10のジャケット14よりも下流側には、バルブ12が設けられている。
【0067】
以上の第1の実施の形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0068】
本発明の第1の実施の形態によるフッ素ガス生成装置では、電解槽にて生成される主生ガス(フッ素ガス)及び副生ガス(水素ガス)のそれぞれを誘導する配管に設けられる熱交換機構が、電解槽のガスの出口付近に設置されており、電解槽から誘導される各ガス中に含まれるフッ化水素を液化還流する部分が該ガスの出口付近となる。そのため、液化したフッ化水素によって、電解槽にて発生した溶融塩由来の成分を該ガスの出口付近で吸着させ、極めて溶融塩の原料に近い形で電解槽に戻すことができる。
【0069】
また、電解槽にて生成される各ガスを誘導する配管に充填材を配置することにより、配管内の熱伝導を向上させ、配管内部の温度勾配を均一にし、配管内部のフッ化水素を効率的に液化させることができる。
【0070】
さらに、本発明に用いる充填材同士の間隔は、数mm程度であり、これまでの従来に用いられてきた目開きが数μm程度のフィルターと比較して極めて大きい。そのため、目開きが数μm程度のフィルターと比べ、配管内におけるガスの圧力損失が極めて少なく、溶融塩由来の成分の固形物による目詰まりを起こしにくいという特徴を有する。
【0071】
以上、本発明の第1の実施の形態について説明したが、第1の実施の形態においては、電解槽1における各ガスの発生量を増加させた場合、発生ガスを誘導する各配管内のガスの線速度が速くなり、液化したフッ化水素が自重により落下する力よりも、電解槽において発生したガスが上部に流通する力が上回ってしまい、正常に還流されない場合がある。
【0072】
そこで、本発明者らは、フッ素ガス生成装置から発生した溶融塩由来の成分、特にフッ化水素を還流させる方法について、鋭意検討した結果、より効率的に還流を行う配管構造を見出した。
【0073】
以下に、その配管構造について、第2の実施の形態として説明する。
【0074】
<第2の実施の形態>
次に、図2を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るフッ素ガス生成装置200について説明する。以下では、上記第1の実施の形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施の形態と同様な構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
以下、第2の実施の形態では、上記第1の実施の形態と異なるフッ素ガス供給系統2及び水素ガス供給系統3の構成について説明する。
【0076】
陽極室7には、陽極4にて生成した主生ガスを誘導するための第2フッ素ガス配管19が、電解槽1の上部天板1aに接続されている。さらに、第2フッ素ガス配管19は、下流にて、第1フッ素ガス配管9と接続される。
【0077】
第1フッ素ガス配管9の下部には、ディップ管20が接続され、さらに、ディップ管20は陽極室7を通り、電解槽1内の溶融塩に浸漬される。
【0078】
ディップ管20を浸漬させる浸漬長については特に限定されないが、ディップ管20の材質としては、Ni、モネル等の耐食性材料が好ましい。また鉄、ステンレス等を使用する場合は、ディップ管20の外周にPTFE等の耐食材料で保護することが好ましい。
【0079】
第2フッ素ガス配管19と第1フッ素ガス配管9の接続部分の下流には、第1フッ素ガス配管9の温度調節を行うジャケット13が設けられる。
【0080】
第1の実施の形態と同様に、温度調節を行うジャケット13は電解槽1の上部天板1aにできるだけ近い位置とすることが好ましい。
【0081】
次に、以上のように構成されるフッ素ガス供給系2の還流工程について説明する。
【0082】
陽極4にて生成され、溶融塩から気化したフッ化水素ガス及び溶融塩ミスト等の溶融塩由来の成分を含んだ主生ガス(フッ素ガス)は、第2フッ素ガス配管19に誘導され、直接第1フッ素ガス配管9には誘導されない。さらに、第2フッ素ガス配管19を通過した該ガスは、フッ化水素を還流させるための第1フッ素ガス配管9に導かれ、温度調節されたジャケット13を配置した第1フッ素ガス配管9部分において、該ガス中のフッ化水素が液化される。
【0083】
液化したフッ化水素は、自重により第1フッ素ガス配管9を逆流し、陽極室7へと戻る。この液化したフッ化水素が陽極室7へ戻る際に、溶融塩ミストを吸着し、溶融塩ミストとともに陽極室7へ戻すことが可能となる。
【0084】
水素ガス供給系統3についても、フッ素ガス供給系2と同様の構成とし、陰極室8には、陰極5にて生成した副生ガス(水素ガス)を誘導するための第2水素ガス配管21が、電解槽1の上部天板1aに接続されている。さらに、第2水素ガス配管21は、下流にて、第1水素ガス配管10と接続される。
【0085】
第1水素ガス配管10の下部(上流側)には、ディップ管22が接続され、さらに、ディップ管22は陰極室8を通り、電解槽1内の溶融塩に浸漬される。
【0086】
第2水素ガス配管21と第1水素ガス配管10の接続部分の下流には、第1水素ガス配管10の温度調節を行うジャケット14が設けられる。ジャケット14は、電解槽1の上部天板1aにできるだけ近い位置とすることが好ましい。
【0087】
次に、以上のように構成される水素ガス供給系3の還流工程について説明する。
【0088】
陰極5にて生成され、溶融塩から気化したフッ化水素ガス及び溶融塩ミスト等の溶融塩由来の成分を含んだ副生ガス(水素ガス)は、第2水素ガス配管21に誘導され、直接第1水素ガス配管10には誘導されない。さらに、第2水素ガス配管21を通過した該ガスは、フッ化水素を還流させるための第1水素ガス配管10に導かれ、温度調節されたジャケット14を配置した第1水素ガス配管10部分において、該ガス中のフッ化水素が液化される。
【0089】
液化したフッ化水素は、自重により第1水素ガス配管10を逆流し、陰極室8へと戻る。この液化したフッ化水素が陰極室8へ戻る際に、溶融塩ミストを吸着し、溶融塩ミストとともに陰極室8へ戻すことが可能となる。
【0090】
以上の第2の実施の形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0091】
陽極室7にて生成され、溶融塩から気化したフッ化水素ガス及び溶融塩由来のミスト成分を含んだ主生ガス(フッ素ガス)を誘導する第2フッ素ガス配管19と、液化させたフッ化水素を還流させるための第1フッ素ガス配管9とを別々に設けるとともに、陰極5にて生成され、溶融塩から気化したフッ化水素ガス及び溶融塩由来のミスと成分を含んだ副生ガス(水素ガス)を誘導する第2水素ガス配管21と、液化させたフッ化水素を還流させるための第1水素ガス配管10とを別々に設ける。この構成によって、電解槽1より生成した各ガスの流れと液化させたフッ化水素の流路を別々に分離することができる。
【0092】
そのため、電解槽にて生成される主生ガス及び副生ガスの生成量を増加させ、各ガスが誘導される配管内の各ガスの線速度が速くなる場合においても、液化したフッ化水素が自重により落下する力より、発生ガスが電解槽1から上部に流通する力が上回ってしまうことなく、液化させたフッ化水素を正常に還流することが可能となる。
【0093】
特に、電解槽にて生成される主生ガス及び副生ガスを誘導する配管での各ガスの線速度が10cm/sec以上になる場合に、本発明の第2の実施の形態は有効である。
【0094】
<第2の実施の形態の変更形態>
以上の第2の実施の形態は、電解槽で生成した主生ガス及び副生ガスを誘導する配管と生成した各ガス中に含まれるフッ化水素を還流する配管を別々に設けることによって、電解槽で発生させる各ガスの流量を増加させた場合においても、正常にフッ化水素を液化還流させることを可能にしたものである。
【0095】
しかし、第2の実施の形態では、電解槽で発生した主生ガス及び副生ガスを誘導する配管と、各ガス中に含まれるフッ化水素を還流する配管の接続部分が、ジャケットなどの熱交換機構に覆われていないことや、電解槽にて発生した各ガスの流れと液化したフッ化水素の流れが複雑になるため、該接続部分において配管の閉塞が起こる可能性が高くなることがある。
【0096】
そこで、図3に示されるフッ素ガス生成装置300において、電解槽1で発生した主生ガス及び副生ガスを誘導する各配管9、10と、発生した各ガス中に含まれるフッ化水素を還流するため各配管19、21の接続部分を、各ジャケット13、14の内部に配置する。この構成によって、該接続部分における配管の閉塞を低減させることも可能である。
【0097】
なお、図3に示される第2の実施の形態の変更形態における他の構成は、第2の実施の形態と同様である。
【実施例】
【0098】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0099】
[実施例1]
本例に用いる実験装置の概略図を図1に示す。
【0100】
第1フッ素ガス配管9及び第1水素ガス配管10にはφ1/4インチのステンレス配管を用いた。ジャケット13にはφ=1インチでL=15cmのステンレス配管を使用し、第1フッ素ガス配管9を冷却できるように設置した。またジャケット13は、電解槽1の上部天板1aからの距離が20cmの位置に設置した。
【0101】
ジャケット部分の冷却温度は、熱媒を流通させて−50℃に温度調整を行った。熱媒にはシリコンオイルを使用した。
【0102】
第1フッ素ガス配管9にガス線速を7cm/secになるように電解槽1の電流値を固定し、電解槽1の連続運転を行ったところ、150時間連続運転を行っても電解槽1の配管部分に閉塞は見られなかった。
【0103】
また、電解槽1とジャケット13の間の第1フッ素ガス配管9の一部をステンレス配管からPFA配管へと材質変更し、液化還流の有無を目視による観察を行ったところ、フッ化水素の液化を確認した。
【0104】
また、電解停止後、第1フッ素ガス配管9のジャケット13による冷却部より後段の部分を解体し、内部観察を行ったところ、KF成分の固着物は確認されなかった。またバルブ11についても同様に目視観察を行ったところ、KF成分の固着物は確認されなかった。
【0105】
[比較例1]
実施例1と同様の装置を用い、ジャケット13に熱媒を流通させず、第1フッ素ガス配管9を室温に保持した。その他の条件は実施例1と同様の条件で同様の操作を行ったところ、約40時間電解を行ったところで、陽極室7の圧力が上昇し始めたため、配管9に閉塞が生じたものとみなし、電解を停止した。
【0106】
また、電解停止後、第1フッ素ガス配管9を解体し、内部観察を行ったところ、白色の固体が確認された。またバルブ11にも白色の固体の付着を確認した。
【0107】
該固体の元素分析を、蛍光X線分析装置を用いて実施したところ、溶融塩由来のKF成分が含まれていることが確認できた。
【0108】
[実施例2]
第1フッ素ガス配管9にはφ1インチのステンレス配管を用い、ジャケット13にはφ2インチおよびL=300mmのステンレス配管を使用した。ジャケット13は、電解槽1の上部天板1aからの距離が30cmの位置にある第1フッ素ガス配管9部分に設置した。また、ジャケット13を設置したフッ素ガス配管9の内部にはφ=6mmのステンレス製ラシヒリングを充填した。
【0109】
ジャケット部分の冷却温度は、熱媒を流通させて−55℃に温度調整を行った。熱媒にはシリコンオイルを使用した。
【0110】
第1フッ素ガス配管9にガス線速を7cm/secになるように電解槽1の電流値を固定し、電解槽1の連続運転を行ったところ、1年間経過しても、該配管が閉塞することなく、安定に連続運転が可能であった。
【0111】
従来のフィルターを用いて溶融塩成分をトラップするフッ素ガス生成装置を用いる場合(例えば、特開2006−111900号公報等)では、フィルターの交換や再生させるために、数十時間ごとに電解槽を停止させる必要があった。
【0112】
それに対し、上述の実施例1及び実施例2に示されるように、本発明におけるフッ素ガス生成装置によれば、電解槽において生成される主生ガス及び副生ガスを誘導する配管や弁の洗浄、及び、電解槽の運転停止等をすることなく、かつ、長時間安定的に生成ガスを供給可能である点においても、本発明は極めて大きな効果を有することが判明した。
【0113】
[比較例2]
第1フッ素ガス配管9にはφ1インチのステンレス配管を用い、ジャケット13を取り付けていない状態で、ガス線速を7cm/secになるように電解槽1の電流値を固定し、電解槽1の連続運転を行ったところ、3ヶ月経過後に該配管の閉塞が生じた。
【0114】
第1フッ素ガス配管9及びバルブ11を解体し、内部観察を行ったところ、バルブ11の内部に白色の固化物が付着しており、この固化物が閉塞の原因となっていたことが判明した。
【0115】
該固化物の元素分析を、蛍光X線分析装置を用いて実施したところ、比較例1と同様に溶融塩由来のKF成分が含まれていることが確認できた。
【0116】
[実施例3]
第1フッ素ガス配管9及び第1水素ガス配管10にはφ1/4インチのステンレス配管およびPFA(ポリテトラフルオロエチレン)配管を用いた。ジャケット13にはφ=1インチでL=15cmのステンレス配管を使用し、第1フッ素ガス配管9を冷却できるように設置した。またジャケット13は、電解槽1の上部天板1aからの距離が30cmの位置にある第1フッ素ガス配管9部分に設置した。なお、ジャケット13の下部に位置するφ1/4インチ配管についてはPFA配管を用い、目視観察ができるようにした。電解槽の液面変動については、電解槽に目視観察用の窓を設け、目視観察を行った。フッ化水素を供給する配管は、フッ素ガス配管9のジャケット13より下部に設置した。
【0117】
ジャケット13部分の冷却温度は、熱媒を流通させて−55℃に温度調整を行った。熱媒にはシリコンオイルを使用した。
【0118】
第1フッ素ガス配管9にガス線速を7.8cm/secになるように電解槽1の電流値を固定し、電解槽1の運転を行い、第1フッ素ガス配管9にフッ化水素ガスを17sccm(0.12当量)添加し、第1フッ素ガス配管9の後段(ジャケット13の後段)におけるフッ化水素濃度をフーリエ変換赤外分光計(FT−IR)により分析した。また、還流時の溶融塩液面の目視観察をし、溶融塩液面の突沸および液面変動の有無を確認した。
【0119】
第1フッ素ガス配管9の後段(ジャケット13の後段)におけるフッ化水素濃度をフーリエ変換赤外分光計(FT−IR)により分析したところ、9.6%であった。
【0120】
フッ化水素の液化還流の有無を目視により観察したところ、フッ化水素の液化を確認することができた。また、還流時の溶融塩液面の目視観察を行ったところ、溶融塩液面の突沸および液面変動は観察されなかった。
【0121】
[比較例3]
第1フッ素ガス配管9に添加するフッ化水素ガスを34sccm(0.24当量)にする以外は、実施例3と同様の条件で同様の操作を行った。液化フッ化水素の還流時の溶融塩液面の目視観察を行ったところ、溶融塩液面の突沸および液面変動が観察された。
【0122】
[実施例4]
第1フッ素ガス配管9に添加するフッ化水素ガスを8sccm(0.06当量)、ジャケット13部分の冷却温度を−59℃にする以外は、実施例3と同様の条件で同様の操作を行った。
【0123】
その結果、第1フッ素ガス配管9の後段(ジャケット13の後段)におけるフッ化水素濃度は8.0%であった。また、フッ化水素の液化還流の有無を目視による観察を行ったところ、フッ化水素の液化を確認することができた。また、液化フッ化水素の還流時の溶融塩液面の目視観察を行ったところ、溶融塩液面の突沸および液面変動は観察されなかった。
【0124】
[実施例3、4]および[比較例3]の結果より、添加するフッ化水素の濃度を調整することにより、溶融塩液面の突沸および液面変動を生じることなく、液化フッ化水素を還流させることできることが分かる。
【0125】
[参考例1]
第1フッ素ガス配管9にフッ化水素ガスを添加せずに、実施例3と同様の条件で同様の操作を行い、第1フッ素ガス配管9の後段(ジャケット13の後段)におけるフッ化水素濃度をフーリエ変換赤外分光計(FT−IR)により分析したところ、9.8%であった。
【0126】
[参考例1]及び[実施例3]より、適切な量のフッ化水素を加えることによって、生成ガス(F2)中のフッ化水素濃度を増加させることなく、フッ化水素を還流させることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、フッ素ガスを生成する装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0128】
100、200、300 フッ素ガス生成装置
1 電解槽
1a 上部天板
2 フッ素ガス供給系
3 水素ガス供給系
4 陽極
5 陰極
6 スカート
7 陽極室
8 陰極室
9 第1フッ素ガス配管
10 第1水素ガス配管
11、12 バルブ
13、14 ジャケット
15、17 熱媒入口配管
16、18 熱媒出口配管
19 第2フッ素ガス配管
21 第2水素ガス配管
20、22 ディップ管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化カリウムおよびフッ化水素から成る溶融塩中のフッ化水素を電気分解することによって、フッ素ガスを生成するフッ素ガス生成装置であって、
フッ化カリウムおよびフッ化水素を含む溶融塩からなる電解浴中でフッ化水素を電気分解することによって陽極側にフッ素ガスを主成分とする主生ガスを発生させると共に、陰極側に水素ガスを主成分とする副生ガスを発生させる電解槽と、
前記電解槽の溶融塩から気化したフッ化水素ガスと、前記主生ガスと前記副生ガスの発生に随伴する溶融塩由来のミストとが混入した前記主生ガスおよび前記副生ガスを電解槽からそれぞれ誘導する第1配管と、
前記第1配管に設けられ、該第1配管の一部の温度を調節する熱交換機構と、を備え
前記熱交換機構により温度調節された前記第1配管の一部で液化されたフッ化水素を、前記電解槽に戻すことを特徴とするフッ素ガス生成装置。
【請求項2】
前記第1配管の下部に接続され、前記液化されたフッ化水素を電解槽に戻すためのディップ管と、
前記電解槽及び前記第1配管に接続され、前記電解槽の溶融塩から気化したフッ化水素ガスと、前記主生ガスと前記副生ガスの発生に随伴する溶融塩由来のミストとが混入した前記主生ガスおよび前記副生ガスのそれぞれを誘導する第2配管と、を備え
前記ディップ管を前記電解槽の電解浴中に浸漬させることによって、前記電解槽にて生成された前記主生ガスおよび前記副生ガスのそれぞれを誘導する通路と、前記液化されたフッ化水素を電解槽に戻す通路を別々に設けることを特徴とする請求項1に記載のフッ素ガス生成装置。
【請求項3】
前記第1配管と前記第2配管の接続部分が、前記第1配管の一部の温度を調節する熱交換機構の内部に位置することを特徴とする請求項2に記載のフッ素ガス生成装置。
【請求項4】
前記熱交換機構が、前記電解槽の天板上部からの距離が0cm以上、200cm以下の位置に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のフッ素ガス生成装置。
【請求項5】
前記熱交換機構を備えた前記第1配管の内部に充填材を充填することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のフッ素ガス生成装置。
【請求項6】
前記熱交換機構を備えた前記第1配管の内部に充填する前記充填材が、規則充填材もしくは不規則充填材である請求項5に記載のフッ素ガス生成装置。
【請求項7】
前記熱交換機構に、熱媒又は冷媒を流通させることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載のフッ素ガス生成装置。
【請求項8】
前記熱交換機構を備えた前記第1配管の一部のガスの温度を、フッ化水素の融点以上かつ沸点以下に調節することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載のフッ素ガス生成装置。
【請求項9】
前記熱交換機構を備えた前記第1配管に、フッ化水素を供給するための配管を接続し、前記熱交換機構を備えた前記第1配管の内部の温度が−83℃〜−50℃の範囲において、フッ化水素を0.01〜0.12当量添加することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れかに記載のフッ素ガス生成装置。
【請求項10】
前記熱交換機構が、前記電解槽の天板上部からの距離が10cm以上、100cm以下の位置に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のフッ素ガス生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−84806(P2011−84806A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108931(P2010−108931)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】