説明

フッ素ゴム組成物およびその成形品

【課題】発明は、圧縮永久ひずみに優れたフッ素ゴム組成物およびそれからなる成形品を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は
(i)フッ素ゴム100重量部、および
(ii)下記式(1)
Ca(OH)・A (1)
(但し、式Aは珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を表す。)
で表される水酸化カルシウム化合物0.1〜10重量部、
からなるフッ素ゴム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の添加剤を含有する水酸化カルシウム化合物よりなる加硫促進助剤を配合するフッ素ゴム組成物およびその成形品に関する。さらに、詳しくは、フッ素ゴムに対し、優れた圧縮永久ひずみを付与する加硫促進助剤を一定割合配合したフッ素ゴム組成物およびその成形品に関する。さらに特定の添加剤を含有した水酸化カルシウムよりなる加硫促進助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素ゴムは耐熱性、耐油性、耐薬品性、耐候性など多くの優れた特性をもつため、自動車、船舶、建築、航空機、ロケット、電子機器、化学プラントの部品等多岐にわたって使用されている。
フッ素ゴムの加硫剤としては、ポリオール系加硫剤が主流であるが、この場合助剤として水酸化カルシウムが使用されている。
【特許文献1】特開2000−34379号公報
【特許文献2】特開2001−192482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これら水酸化カルシウム加硫助剤は、多量に使用すると、圧縮永久ひずみが悪くなるという欠点があり、これを解決するために、特開2000−34379は、水酸化カルシウムの平均粒子径を7.5μm以下で、比表面積20m/g以上に限定している。(ただし、測定方法は記載されてない。)また、特開2001−192482は、加硫成形時にサーマルブラックと瀝青炭を配合することで、問題の解決を試みている。
【0004】
しかしながら、十分な解決には至ってなく、優れた圧縮永久ひずみを持つフッ素ゴムが求められている。
従って、本発明は、水酸化カルシウムに、特定の添加剤を含有させることにより、優れた圧縮永久ひずみを持つフッ素ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的を達成するために、水酸化カルシウムを各種物質によって改質する研究を重ねた。
その結果、水酸化カルシウムに、珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(以下添加剤ということがある)を含有させた加硫促進助剤をフッ素ゴムに配合すると、優れた圧縮永久ひずみを有するフッ素ゴム組成物が得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は
(i)合成樹脂100重量部、および
(ii)下記式(1)
Ca(OH)・A (1)
(但し、式中Aは珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を表す。)
で表される水酸化カルシウム化合物0.1〜10重量部、
からなるフッ素ゴム組成物である。
【0007】
また本発明は、
(i)フッ素ゴム100重量部、および
(ii)珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の存在下で、
(ii−1)酸化カルシウムを水中で消化反応させるか、または
(ii−2)水溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物とを反応させることにより得られた水酸化カルシウム化合物0.1〜10重量部、
からなるフッ素ゴム組成物である。
【0008】
さらに、本発明は、上記フッ素ゴム組成物からなる成形品を包含する。また、本発明は下記式(1)
Ca(OH)・A (1)
(式中Aは珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を表す)
で表されるフッ素ゴム用加硫促進助剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に用いるフッ素ゴム用加硫促進助剤は、水酸化カルシウムに、珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸を含有させることで、水酸化カルシウム、または珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸のそれぞれの単品での使用では出せない効果を発揮する。
【0010】
すなわち本発明によれば、フッ素ゴムに、珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有した水酸化カルシウム化合物である加硫促進助剤を配合することにより、圧縮永久ひずみが改善されたフッ素ゴム組成物およびそれからなる成形品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明においては、下記式(1)
Ca(OH)・A (1)
で表される水酸化カルシウム化合物をフッ素ゴム用加硫促進助剤として用いる。
式中Aは珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を表す。
すなわち、上記式(1)で表される水酸化カルシウム化合物は、珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を水酸化カルシウムが含有してなる化合物である。
【0012】
本発明の水酸化カルシウム化合物は、珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の存在下で、
(i)酸化カルシウムを水中で消化反応させるか、または、
(ii)水溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物とを反応させることにより得られた水酸化カルシウムである。
【0013】
珪素系化合物として、珪酸アルカリ、珪酸塩、含水珪酸、無水珪酸および結晶性珪酸(例えばクオーツ)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の珪素系化合物が好ましい。特にシリカ(二酸化珪素)が好ましい。燐系化合物として、燐酸、その塩、縮合燐酸、その塩、ポリ燐酸およびその塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種の燐系化合物が好ましい。アルミニウム系化合物として、アルミニウム塩、結晶性水酸化アルミニウムおよび無定形水酸化アルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも一種のアルミニウム系化合物が好ましい。無機酸として、塩酸、硝酸および硫酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の無機酸が好ましい。有機酸として、クエン酸、酒石酸、エチレンジアミンの四酢酸、リンゴ酸、コハク酸およびそれらの塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種の有機酸が好ましい。
【0014】
水酸化カルシウムは、天然石灰または合成石灰である。水酸化カルシウム化合物中の塩素元素含有量は、好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.03重量%以下、ナトリウム元素含有量は、好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。ナトリウム元素含有量は原子吸光法、塩素元素含有量は吸光光度法により測定する。
【0015】
(水酸化カルシウム化合物)
本発明の式(1)で表される上記水酸化カルシウム化合物の平均2次粒子径およびBET法比表面積には、特に制限はないが、レーザー回折散乱法により測定した平均2次粒子径が細かく分散が良すぎると、フッ素ゴム組成物中での分布が密になりすぎ、また凝集して粒度が荒く、分散が悪くなることにより、架橋点分布に偏りが生じ、成形品が割れやすくなる。
BET法比表面積が高すぎると加硫剤との反応の機会が多く、加硫反応が速く、架橋密度が高くなっていると推測できる。
架橋点が多くなることでゴムの変形幅が少なくなり、圧縮による変形に耐えられず、割れると思われる。また、BET法比表面積が低すぎると成形品が割れやすい。
従って、式(1)で表される水酸化カルシウム化合物は、レーザー回折散乱法により測定した平均2次粒子径が好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.5〜8μmであり、BET法比表面積が好ましくは2〜50m/g、さらに好ましくは15〜45m/gである。
【0016】
(製造方法)
上記水酸化カルシウム化合物は、第1に、珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(添加剤)を含有する水中にて生石灰(酸化カルシウム)を消化反応させ製造することができる。好適には添加剤を含有する10〜60℃好ましくは30〜60℃の水中に、攪拌下、生石灰を供給して消化反応させる。反応温度は、生石灰を加えることによって、自成熱により上昇し、例えば90℃以上に達する。
【0017】
第2に、水溶性カルシウム塩の水溶液と、アルカリ金属水酸化物の水溶液との反応時に添加剤を存在させて製造することができる。すなわち、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の水溶性カルシウム塩の水溶液と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液とを、珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の存在下で反応させることにより製造することができる。このときアルカリ金属水酸化物の水溶液は、カルシウムに対し当量以上のアルカリ量(好ましくは1.0〜1.3倍当量)になるようにすることが好ましい。反応の後、得られた白色沈殿を約60〜150℃、好ましくは80〜120℃で0.5〜4時間加熱熟成し、アニオン系界面活性剤などにより表面処理することが好ましい。この後、ろ過、水洗、乾燥、粉砕、分級などを適宜選択して行うことにより製造することができる。
【0018】
第3に、生石灰を水に投入し消化反応して得られる水酸化カルシウム粒子懸濁液に、珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種を添加し、熟成により本発明の水酸化カルシウム化合物を得ることも可能である。
添加剤は、生成する水酸化カルシウムに対し、0.05〜20重量%、好ましくは、1〜15重量%の割合で存在させることが好ましい。0.05重量%より少ないと、生成する水酸化カルシウム化合物の比表面積が小さくなる。20重量%を超えると、フッ素ゴムへ配合した場合、フッ素ゴム組成物の物性が低下する。
水酸化カルシウムのフッ素ゴム100重量部に対する配合量は、特開2001−192482では0.5〜3重量部、特開2000−34379では4〜6重量部であるが、本発明の、式(1)で表される水酸化カルシウム化合物は、水酸化カルシウムに特定の添加剤を含有させることにより、フッ素ゴムへの配合量を増やしても成形品の割れもなく圧縮永久ひずみが良好である。
これらの製造方法によれば、BET法比表面積の大きい水酸化カルシウム粒子が得られる。添加剤がどのような作用により水酸化カルシウム粒子のBET法比表面積を大きくするのかは明らかではないが、添加剤が結晶成長阻害剤として働き結晶成長を制御するためと思われる。
【0019】
(熟成)
上記方法によると、高比表面積を有する水酸化カルシウム化合物を得ることができるが、反応後さらに反応混合物を熟成することによって、さらに高品質の水酸化カルシウム化合物を得ることができる。この熟成は反応混合物を60〜170℃、好ましくは80〜120℃、最も好ましくは90〜100℃の温度で、5分〜3時間、好ましくは10分〜2時間、より好ましくは20分〜1時間実施することができる。
【0020】
(粉砕)
さらに反応終了後、もしくは熟成終了後、必要に応じて得られた水酸化カルシウム化合物を懸濁液中にて湿式ボールミルなどの粉砕手段で粉砕することもできる。粉砕することによって平均2次粒子径が2μmより小さい粒子を得ることができる。
【0021】
(表面処理剤)
上記水酸化カルシウム化合物は、所望により、それ自体公知の表面処理剤により、表面処理することもできる。表面処理により、樹脂等への相溶性を改良することができる。かかる表面処理剤としては、例えば、(a)高級脂肪酸、(b)高級脂肪酸のアルカリ金属塩、(c)高級アルコールの硫酸エステル塩、(d)アニオン系界面活性剤、(e)燐酸エステル、(f)カップリング剤(シラン系、チタネート系、アルミニウム系)および(g)多価アルコールの脂肪酸エステル、(h)ソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
表面処理剤として好ましく用いられるものを例示すれば次のとおりである。
(a)ステアリン酸、エルカ酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸等の炭素数10以上の高級脂肪酸;
(b)前記高級脂肪酸のアルカリ金属塩;
(c)ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールの硫酸エステル塩;
(d)ポリエチレングリコールエーテルの硫酸エステル塩、アミド結合硫酸エステル塩、エステル結合硫酸エステル塩、エステル結合スルホネート、アミド結合スルホン酸塩、エーテル結合スルホン酸塩、エーテル結合アルキルアリールスルホン酸塩、エステル結合アルキルアリールスルホン酸塩、アミド結合アルキルアリールスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤;
(e)オルトリン酸とオレイルアルコール、ステアリルアルコール等のモノまたはジエステルまたは両者の混合物であって、それらの酸型またはアルカリ金属塩またはアミン塩等のリン酸エステル;
(f)ビニルエトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタネート系カップリング剤;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤;
(g)グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等の多価アルコールの脂肪酸エステル。
(h)ソルビタンモノステアレート。
水酸化カルシウム化合物の表面コーティング処理は、それ自体公知の湿式または、乾式法により実施できる。例えば湿式法としては、水酸化カルシウム化合物のスラリーに表面処理剤を液状またはエマルジョン状で加え、約100℃までの温度で機械的に十分混合すればよい。乾式法としては、水酸化カルシウム化合物をヘンシェルミキサー等の混合器により攪拌し、表面処理剤を液状、エマルジョン状、固形状で加え、加熱または非加熱下に、十分混合すればよい。表面処理剤の添加量は、適宜選択できるが、水酸化カルシウム粒子の重量に基づいて、約10重量%以下とするのが好ましい。表面処理した水酸化カルシウム化合物は、必要により、例えば水洗、脱水、造粒、乾燥、粉砕、分級等の手段を適宜選択して実施し、最終製品形態とすることができる。
フッ素ゴム用加硫促進助剤としての水酸化カルシウムは、フッ素ゴム100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜8重量部、さらに好ましくは0.5〜6重量部配合される。
【0022】
(フッ素ゴム)
本発明の水酸化カルシウムが配合されるフッ素ゴムは、特に限定されるものではなく、汎用フッ素ゴム、より具体的にはポリオール加硫可能なフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン共重合体またはフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン−テトラフルオロエチレン3元共重合体であるフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン系共重合ゴムが用いられる。
【0023】
本発明のフッ素ゴム組成物に配合される加硫剤は、ポリオール系で、例えばビスフェノール類がある。一般的にこれら加硫剤は原料フッ素ゴムに内添されて市販されているので下記のポリオール加硫フッ素ゴムを使用すれば、加硫剤を配合する必要はない。例えば、昭和電工・デュポン(株)社製のバイトンE−430,E−60C、A−23J、A−32J、A−41J、A−44J、B−23J、B−32J、B−61J、B−64J、B−70等や、ダイキン工業(株)社製のダイエルG−701、G−702、G−704、G−731、G−751、G−755、G−763、G−783、G−555、G−602、G−603、G−607、G−621等や、住友スリーエム(株)社製のFluorel FC−2120、FC−2121、FC−2122、FC−2123、FC−2170、FC−2176、FC−3009、FC−2177、FC−2174、FC−2144、FC−2181、FC−2152、FC−2179、FT−2320、FX−9143、FT−2350、FX−9038、FLS−2530等がある。
【0024】
本発明のフッ素樹脂組成物は上記成分以外にも慣用の他の添加剤を配合してもよい。
このような添加剤としては、例えば受酸剤、充填剤、着色顔料がある。
受酸剤としては酸化マグネシウムが一般的であるがその他、ハイドロタルサイト類化合物、リサージ、酸化カルシウム、亜鉛華十二塩基性亜リン酸鉛等が使用される。これらを2種以上配合してもよい。
受酸剤としての酸化マグネシウム及び/またはハイドロタルサイト類化合物の配合量は2〜15重量部、好ましくは3〜10重量部である。
充填剤としては、MTカーボンブラック、FTカーボンブラック、FET、AAPF等のカーボンブラック、タルク、クレー、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン等の無機充填剤、着色顔料としては、ベンガラ、シアニングリーン、シアニンブルー、酸化チタン等がある。
【実施例1】
【0025】
以下実施例に基づき、本発明をより詳細に説明する。(1)平均2次粒子径、(2)BET法比表面積、(3)SiOの分析、(4)キュラスト、(5)引張りテスト、(6)硬さ、(7)圧縮永久ひずみの各測定は以下に記載する測定法によって測定された値を意味する。
(1)平均2次粒子径;
MICROTRAC粒度分析計SPAタイプ[LEEDS&NORTHRUPINSTRUMENTS社製]を用いてレーザー回折散乱法により測定する。すなわち試料粉末700mgを70mlの水に加えて、超音波(NISSEI社製、MODEL US−300、電流300μA)で3分間分散処理した後、その分散液の2〜4mlを採って、250mlの脱気水を収容した上記粒度分析計の試料室に加え、分析計を作動させて8分間その懸濁液を循環した後、粒度分布を測定する。合計2回の測定を行い、それぞれの測定について得られた50%累積2次粒子径の算術平均値を算出して、試料の平均2次粒子径とする。
(2)BET法比表面積;
液体窒素の吸着法により測定する。すなわち、液体窒素吸着法装置(ユアサアイオニックス社製のNOVA2000)を用いて測定する。試料粉末0.5gを測定用専用セルに正確に秤り取り、真空度10mTrr以下、105℃で30分間、前処理をする(装置:ユアサアイオニックス社製Flovac Degasser)。前処理後、セルを冷却し、測定装置室に入れ比表面積を測定する。
(3)SiOの分析;
吸光光度法により分析する。すなわち、試料粉末0.5gを正確に白金ルツボに秤量し、ホウ酸2gと無水炭酸ナトリウム3gを加え混合する。950℃で2時間溶融後、冷却し、希塩酸40mlに溶かしイオン交換水を加え250mlとする。
溶液250mlを取り、100mlメスフラスコに移し、モリブデン酸アンモニウム溶液(10%液)5mlを加え、さらにイオン交換水を加え100mlとし測定用溶液とする。定量は、分光光度計装置(日立製作所社製ダブルビーム分光光度計150−20型)を用いて420nmの吸光度を測定する。
(4)キュラスト;JIS K6300により測定した。
(5)引張りテスト;JIS K6251により測定した。
(6)硬さ;JIS;K6262により測定した。
(7)圧縮永久ひずみ;JIS K6262により測定した。
【0026】
(実施例1−1)
2L容の反応槽(オーバーフロー 1.03L)を用い、1.5mol/LのCaCl6,415mlと3.4NのNaOH 5,943mlと150g/Lの水ガラス2.37mlを同時注加し、連続反応を行った。全ての原料が60分で同時に注加終了するように流量調節した。得られた反応物をろ過、乾燥し、粉砕した。この化学分析および物性測定結果は表1のとおりである。
得られた水酸化カルシウム化合物に下記方法で表面処理を行った。
得られた反応後の水酸化カルシウム化合物を60℃、30分間加熱熟成しラウリン酸で表面処理剤1kgを上記反応物に注加した。
【0027】
(実施例1−2)
2L容の反応層(オーバーフロー 1.03L)を用い、1.5mol/Lの CaCl6,391mlと3.4NのNaOH 5,922mlと150g/Lの水ガラス47mlを同時注加し、連続反応を行った。全ての原料が60分で同時に注加終了するように流量調節した。得られた反応物をろ過、乾燥し、粉砕した。この化学分析および物性測定結果は、表1のとおりである。
【0028】
(実施例1−3)

CaCl2 が6,343ml, NaOHが5,877ml, 水ガラスが140mlである以外は、実施例1−2と同じ方法で水酸化カルシウム化合物を得た。この化学分析および物性測定結果は、表1のとおりである。
【0029】
(実施例1−4)
CaCl2 が6,295ml、NaOH が5,833ml、水ガラスが232mlである以外は、実施例1−2と同じ方法で水酸化カルシウム化合物を得た。この化学分析および物性測定結果は、表1のとおりである。
【0030】
(実施例1−5)
2L容反応槽にイオン交換水1Lと150g/Lの水ガラス4.4mlを入れ、さらに生石灰50gを入れ20分間反応させた。得られた反応物を実施例1−1と同様の方法で表面処理をした。
この化学分析および物性測定結果は、表1のとおりである。
【0031】
(実施例1−6)
CaCl2 が6,067ml、NaOHが5,621ml、水ガラスが672mlである以外は、実施例1−2と同じ方法で水酸化カルシウム化合物を得た。この化学分析および物性測定結果は、表1のとおりである。
(比較例1)
CaCl2 が6,416ml、NaOHが 5,944ml、水ガラスが0mlである以外は、実施例1−2と同じ方法で水酸化カルシウム化合物を得た。この化学分析および物性測定結果は表1のとおりである。

【0032】
【表1】

【実施例2】
【0033】
(実施例2−1〜2−6)
実施例1−1〜1−6で得られた水酸化カルシウム化合物を添加剤として下記に示す割合で配合し、水冷されたロールを用いてフッ素ゴム組成物を作成し、1次加硫を170℃、15分で行う。次に2次加硫を230℃、24時間で行い物性を測定した。測定結果は、表2の通りである。

【0034】

【0035】
(比較例2)
比較例1で得られた水酸化カルシウムを用い実施例2と同様のテストをした。測定結果は表2の通りである。
【0036】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のフッ素ゴム組成物は圧縮永久ひずみが優れているので、大なる利用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)フッ素ゴム100重量部、および
(ii)下記式(1)
Ca(OH)・A (1)
(但し、式中Aは珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を表す)
で表される水酸化カルシウム化合物0.1〜10重量部、
からなるフッ素ゴム組成物。
【請求項2】
(i)(1)式で表される水酸化カルシウム化合物が
(ii)珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の存在下で、
(ii−1)酸化カルシウムを水中で消化反応させるか、または
(ii−2)水溶性カルシウム塩とアルカリ金属水酸化物とを反応させることにより得られた請求項1に記載のフッ素ゴム組成物。
【請求項3】
式(1)のCa(OH)2
: Aが重量比で100:0.1〜20である請求項1および2に記載のフッ素ゴム組成物
【請求項4】
珪素系化合物がシリカである請求項1または2に記載のフッ素ゴム組成物。
【請求項5】
式(1)の水酸化カルシウム化合物のレーザー回折散乱法により測定した平均2次粒子径が0.5〜15μmである請求項1および2に記載のフッ素ゴム組成物。
【請求項6】
式(1)の水酸化カルシウム化合物のBET法比表面積が、2〜50m/gである請求項1および2に記載のフッ素ゴム組成物。
【請求項7】
式(1)の水酸化カルシウム化合物が(a)高級脂肪酸、(b)高級脂肪酸のアルカリ金属塩、(c)高級アルコールの硫酸エステル塩、(d)アニオン系界面活性剤、(e)リン酸エステル、(f)シラン系、チタネート系、アルミニウム系のカップリング剤および(g)多価アルコールと脂肪酸エステル(h)ソルビタン脂肪酸エステル、からなる群から選ばれる少なくとも一種の表面処理剤により表面処理されたものである請求項5に記載のフッ素ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載のフッ素ゴム組成物からなる成形品。
【請求項9】
下記式(1)
Ca(OH)・A (1)
(但し、式中Aは珪素系化合物、燐系化合物、アルミニウム系化合物、無機酸および有機酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を表す。)
で表される水酸化カルシウム化合物であるフッ素ゴム用加硫促進助剤。

【公開番号】特開2006−124623(P2006−124623A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328605(P2004−328605)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000162489)協和化学工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】