説明

フッ素化オリゴマーシランの水性送達用組成物

本発明は、基材へのフッ素化オリゴマーシランの水性送達に使用される、希釈可能な非水性濃縮物および水性希釈液、水性希釈組成物で基材を処理して、撥水撥油性を付与する方法、および水性希釈液から製造されるコーティングを有する物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材へのフッ素化オリゴマーシランの水性送達(aqueous delivery)に関する。さらに詳しくは、本発明は、少なくとも1種類のフッ素化オリゴマーシランと少なくとも1種類の界面活性剤とを含有する、希釈可能な非水性濃縮物であり、それは水または水性溶媒混合物と共に、基材上にコーティングされ、硬化される水性希釈液を形成する。
【背景技術】
【0002】
溶融状態のフッ素化シラン、または揮発性有機溶媒中に溶解されたフッ素化シランを基材に塗布することによって、良好な撥油および撥水コーティングを特定の基材に設けることができる。塗布されたフッ素化シランは、基材にフッ素化シランを化学的に結合させるために、触媒と共に加熱することによって硬化される。(例えば、米国特許第3,012,006号明細書(Holbrookら)参照)。しかしながら、揮発性有機溶媒の使用は一般に、環境に有害であり、溶媒が引火性であるため危険である。したがって、水性送達が用いられる、基材にフッ素化シランを適用するための代替の手段が開発された。(例えば、米国特許第5,274,159号明細書(Pelleriteら)、米国特許第5,702,509号明細書(Pelleriteら)、および米国特許第5,550,184号明細書(Halling)参照)。
【0003】
基材に水性送達するための公知の組成物の1つの問題は、貯蔵寿命が長くないことである。もう1つの問題は、基材上に組成物をコーティングする前に、高せん断混合が必要であることである。公知の組成物は高い固形分を有し、そのため、コーティングが厚くなる。
【0004】
基材へのフッ素化シランの水性送達の使用は当技術分野で公知であるが、1)比較的長期間保存することができる;2)高せん断混合または力学的エネルギーの他の入力を必要としない;3)比較的低い固形分を有し、それによって、ガラスおよび他の基材上に薄くコーティングするのが容易となる;4)同時に、基材に塗布し、硬化させると、耐久性のあるコーティングを提供することができる;フッ素化シランの水性送達のための組成物を提供することが依然として必要とされている。かかる組成物は、フッ素化シランおよびフッ素化界面活性剤を使用して、最近記述されている。例えば、国際公開第03/044075号パンフレットおよび国際公開第03/046056号パンフレットを参照のこと。フルオロケミカルオリゴマーシランを含有するコーティング組成物は、米国特許第5,739,369号明細書、米国特許第5,527,931号明細書、EP 222,157号明細書、EP 225,187号明細書およびEP 225,188号明細書に記載されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、フッ素化オリゴマーシランの水性送達用の組成物を提供する。一実施形態は、希釈可能な非水性濃縮物であり、他の実施形態は、希釈可能な非水性濃縮物と、水または水性溶媒混合物を含有する希釈媒体とを使用した水性希釈液である。この組成物は、長期間保存することができ、高せん断乳化の必要なく、単に混合することによって容易に製造される。組成物からのコーティングは、硬質または軟質基材に撥水撥油性および清浄容易性を提供する。
【0006】
本発明は、
(a)次式I:
【化1】

(式中、Aは、水素または開始種の残基であり;Mfは、1種または複数種のフッ素化モノマーから誘導される単位を表し;Mhは、1種または複数種の非フッ素化モノマーから誘導される単位を表し;Maは、シリル基;SiY3を有する1種または複数種の非フッ素化モノマーから誘導される単位を表し、式中、Yは加水分解可能な基であり;Gは、次式:
−S−Q−Y3
の連鎖移動剤の残基であり、式中、Yは、加水分解可能な基であり、Qは、有機二価結合基であり;nは、1〜100の整数であり;mは、0〜100の整数であり;rは、0〜100の整数である)
の少なくとも1種類のフッ素化オリゴマーシランと、
(b)少なくとも1種類の界面活性剤と、を含有する、非水性の均一な混合物を含有する希釈可能な非水性濃縮物を提供する。
【0007】
希釈可能な非水性濃縮物は、基材上にコーティングする前に、水または水性溶媒混合物で希釈しなければならない。有利なことに、この希釈可能な非水性濃縮物は、適切な保存条件下にて、約1日よりも長い、好ましくは約14日よりも長い、最も好ましくは約6ヶ月よりも長い、比較的長い貯蔵寿命を有する。希釈可能な非水性濃縮物は、希釈状態でよりも経済的に輸送および保存することができる。希釈可能な非水性濃縮物は、それがコーティングされる場所で希釈され、有利なことに、それによって、希釈度の選択の自由度、したがってコーティングの厚さの自由度が高くなる。希釈可能な非水性濃縮物は、希釈可能な非水性濃縮物と、水または水性溶媒混合物との混合物を手で単に振盪することによって水または水性溶媒混合物中に分散される(水性希釈液を形成するために)。高せん断混合または超音波処理などの更なる機械的処理を行う必要がない。
【0008】
他の態様において、本発明は、(a)水、または水および少なくとも1種類の水混和性共溶媒を含有する水性溶媒混合物を含む希釈媒体と、(b)(i)上記で定義される少なくとも1種類のフッ素化オリゴマーシラン;(ii)少なくとも1種類の界面活性剤;を含む、非水性の均一な混合物を含有する希釈可能な非水性濃縮物と、を含有する水性希釈組成物を提供する。
【0009】
水性希釈組成物は基材上にコーティングされ、耐久性コーティングが提供される。有利なことには、本発明の水性希釈組成物は、比較的低い固形分を有し、それによって、例えば、厚さに影響を受けやすい光学的性質を有し得るガラスまたは他のシリカ質基材上に薄くコーティングするのが容易となる。本発明の水性希釈液は、引火性であり、かつ/または環境に有害であり得るプロセスでの有機溶媒の使用を排除または実質的に低減することを可能にする。水性希釈組成物は、適切な保存条件下で少なくとも数時間の貯蔵寿命も有する。
【0010】
本発明の他の実施形態は、基材を処理する方法、および基材と、水性希釈組成物をコーティングして硬化させることによって形成されるコーティングと、を含む物品に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
希釈可能な非水性濃縮物
本発明の希釈可能な非水性濃縮物は、少なくとも1種類のフッ素化オリゴマーシランおよび少なくとも1種類の界面活性剤を含有する、非水性の均一な混合物を含有する。希釈可能な非水性濃縮物は任意に、少なくとも1種類の有機共溶媒、および/または少なくとも1種類の添加剤をさらに含む。
【0012】
希釈可能な非水性濃縮物に言及する場合に、「均一な混合物」とは、希釈可能な非水性濃縮物が安定性であると定義され、つまり、少なくとも、実質的な沈殿または実質的な相分離が、希釈可能な非水性濃縮物から水性希釈液を調製するのに必要な時間に起こらないが、好ましくは、かつ実用化するために、希釈可能な濃縮物は、適切な保存条件(密閉容器、水なし、室温)下にて、少なくとも約1日、好ましくは約6ヶ月まで、またはそれ以上の間、安定性である。希釈可能な非水性濃縮物は、透明または多少濁っている。
【0013】
「非水性」という用語は、希釈可能な非水性濃縮物の成分として水が添加されないことを意味する。しかしながら、組成物の他の成分中に付随的に水が存在する場合があるが、水の総量は希釈可能な非水性濃縮物の貯蔵寿命または安定性に悪影響を及ぼすものではない(つまり、好ましくは、希釈可能な非水性濃縮物の約0.1重量%未満)。
【0014】
フッ素化オリゴマーシラン
希釈可能な非水性濃縮物のフッ素化オリゴマーシランは、次式:
【化2】

を有し、上記式中、
Aは、水素または開始種の残基、例えばラジカルを有し、かつラジカル開始剤の分解から得られる、または連鎖移動剤から得られる有機化合物を表し;
fは、上述の1種または複数種のフッ素化モノマーから誘導される単位を表し;
hは、1種または複数種の非フッ素化モノマーから誘導される単位を表し;
aは、式SiY3によって表されるシリル基を有する単位を表し;式中、Yは独立して、アルキル基、アリール基または以下に定義される加水分解可能な基を表し;
Gは、連鎖移動剤の残基を含有し、かつ式:−S−Q−Y3を有する一価有機基であり、式中、Qは、以下に定義される有機二価結合基であり、Yは独立して、加水分解可能な基を表す。
【0015】
n、mおよびrの合計によって表される単位の総数は一般に、化合物をオリゴマーにするために、少なくとも2、好ましくは少なくとも3である。フルオロケミカルオリゴマーにおけるnの値は、1〜100、好ましくは1〜20である。mおよびrの値は、0〜100、好ましくは0〜20である。好ましい実施形態に従って、mの値は、nよりも小さく、n+m+rは少なくとも2である。
【0016】
フルオロケミカルオリゴマーは一般に、平均分子量400〜100000、好ましくは600〜20000、さらに好ましくは1000〜10000を有する。フルオロケミカルオリゴマーは好ましくは、加水分解可能な基を少なくとも5モル%(Mf、MhおよびMa単位の総モル量を基準にして)含有する。
【0017】
本発明において有用なフルオロケミカルオリゴマーの製造によって、化合物の混合物が得られ、したがって、一般式Iは、化合物の混合物を表すことは、当業者であれば理解されよう。ここで、式Iにおける指数n、mおよびrは、かかる混合物中の相当する単位のモル量を表す。したがって、n、mおよびrは、分数の値であることは明らかであるだろう。
【0018】
フルオロケミカルオリゴマーの単位Mfnは、フッ素化モノマー、好ましくはフルオロケミカルアクリレートおよびメタクリレートから誘導される。
【0019】
フルオロケミカルオリゴマーを製造するためのフッ素化モノマーの例としては、一般式:
f−Q−E (II)
(式中、Rfは、少なくとも3個の炭素原子を有する部分または完全フッ素化脂肪族基を表し、Qは、有機二価結合基を表し、Eは、エチレン性不飽和基を表す)によって示すことができるオリゴマーが挙げられる。エチレン性不飽和基Eは、フッ素化または非フッ素化であることができる。
【0020】
フルオロケミカルモノマーにおけるフルオロ脂肪族基Rfは、フッ素化、安定性、不活性、好ましくは飽和、非極性、一価脂肪族基である。それは、直鎖、分岐鎖または環状またはその組み合わせであることができる。それは、酸素、二価または六価硫黄、または窒素などのヘテロ原子を含有することができる。Rfは好ましくは、完全フッ素化基である。Rf基は、炭素原子を少なくとも2個または18個まで、好ましくは3〜14個、さらに好ましくは2〜8個、特に4個含有する。Rf基の末端部分は、好ましくは少なくとも5個のフッ素原子を含有する過フッ素化部位、例えばCF3CF2−、CF3CF2CF2−、および(CF32CF−である。好ましいRf基は、完全に、または実質的にフッ素化されており、好ましくは式Cn2n+1(nは、2〜6、特に3〜5である)の過フッ素化脂肪族基である。Rf基がC49−である化合物は一般に、Rf基がより多くの炭素原子を有する過フッ素化基からなる化合物よりも環境に優しい。驚くべきことに、C4過フッ素化基が短いにもかかわらず、それで製造されたフルオロケミカルオリゴマー化合物は非常に有効である。
【0021】
上記の式(II)における結合性基Qは、ラジカル重合性基Eにフルオロ脂肪族またはフッ素化ポリエーテル基Rfを結合させ、かつ一般には非フッ素化有機結合基である。その結合基は、化学結合であるが、好ましくは、炭素原子1〜約20個を含有し、任意に、酸素、窒素、または硫黄含有基またはその組み合わせを含有する。結合基は好ましくは、ラジカルオリゴマー化を実質的に妨げる官能基(例えば、重合性オレフィン性二重結合、チオール、および当業者に公知の他の官能基)を含まない。適切な有機二価結合性基の例としては:
*−COQ’−R1−Q’’−CO−、*−COO−CH2−CH(OH)−R1−Q’−CO−、*−L1−Q’−CONH−L2−、*−R1−Q’−CO−*−COQ’−R1−、−R1−、*−COQ’−R1−Q’−、*−SO2NRa−R1−Q’−、*−SO2NRa−R1−、および*−SO2NRa−R1−Q’−CO−が挙げられ、ただし、
Q’およびQ’’は独立して、OまたはNRaを表し、Raは、水素または炭素原子1〜4個のアルキル基であり、R1は、OまたはNなどの1種または複数種のヘテロ原子によって割り込まれない、直鎖状、環状または分岐状アルキレン基を表し、L1およびL2はそれぞれ独立して、例えばアルキレン基、カルボニル基、カルボンアミドアルキレン基および/またはカルボキシアルキレン基を含む非フッ素化有機二価結合基を表し、*は、結合基が式(II)におけるRf基に結合される位置を示す。好ましい結合基としては、−SO2N(R1)−OC(O)−、および−(CH2d−OC(O)−(R1は、水素またはC1−C4アルキル基であり、dは、1〜20の整数である)が挙げられる。
【0022】
上述のフルオロケミカルモノマーRf−Q−Eおよびその製造方法は公知であり、例えば米国特許第2,803,615号明細書に開示されている。かかる化合物の例としては、一般的な種類のフルオロケミカルアクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、およびフッ素化スルホンアミド基を含有するアリル化合物、フルオロケミカルテロマーアルコールから誘導されるアクリレートまたはメタクリレート、フルオロケミカルカルボン酸から誘導されるアクリレートまたはメタクリレート、およびEP−A−526 976号明細書に開示されるパーフルオロアルキルアクリレートまたはメタクリレートが挙げられる。
【0023】
パーフルオロポリエーテルアクリレートまたはメタクリレートは、米国特許第4,085,137号明細書に記載されている。
【0024】
フルオロケミカルモノマーの好ましい例としては:
CF3(CF22CH2OC(O)CH=CH2
CF3(CF22CH2OC(O)C(CH3)=CH2
CF3(CF23CH2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF23CH2OCOCH=CH2
【化3】

(式中、R1は、メチル、エチルまたはn−ブチルを表す)が挙げられる。
【0025】
フルオロケミカルオリゴマーのMh単位(存在する場合に)は一般に、非フッ素化モノマー、好ましくは重合性基および炭化水素部位からなるモノマーから誘導される。炭化水素基含有モノマーはよく知られており、一般に市販されている。炭化水素含有モノマーの例としては、次式:
h−Q−E (III)
(式中、Rhは、炭化水素基を表し、Qは、化学結合または上記で定義される二価結合基を表し、Eは、上記で定義されるエチレン性不飽和基である)によるモノマーが挙げられる。炭化水素基は好ましくは、直鎖状、分岐状または環状アルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基およびアリール基からなる群から選択される。好ましい炭化水素基は、炭素原子4〜30個を含有する。更なる非フッ素化モノマーとしては、式(III)における炭化水素基がオキシアルキレン基を含むか、または1種または複数種の反応性基、例えばヒドロキシ基、エポキシ基、塩素および臭素などのハロゲンを含有するモノマーが挙げられる。
【0026】
単位Mhがそれから誘導される非フッ素化モノマーの例としては、ラジカル重合することができる一般的な種類のエチレン化合物、例えば、酢酸アリルおよびヘプタン酸アリルなどのアリルエステル;セチルビニルエーテル、ドエシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテルまたはアルキルアリルエーテル;アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸、例えばビニル、アリル、メチル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、ラウリル、ステアリル、イソボルニルまたはアルコキシエチルアクリレートおよびメタクリレートなどの不飽和酸の無水物およびエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−クロロアクリロニトリル、2−シアノエチルアクリレート、アルキルシアノアクリレートなどのα−β不飽和ニトリル;アリルグリコレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、n−ジイソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−t−ブチルアミノエチルメタクリレート;スチレンおよびその誘導体、例えばビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−シアノメチルスチレン;ハロゲンを含有することができる低級オレフィン系炭化水素、例えばエチレン、プロピレン、イソブテン、3−クロロ−1−イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロおよびジクロロブタジエンおよび2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、およびアリルまたはビニルハロゲン化物、例えば塩化ビニルおよび塩化ビニリデンが挙げられる。好ましい非フッ素化モノマーとしては、炭化水素基含有モノマー、例えば、オクタデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ブチルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、イソブチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレートおよびエチルヘキシルメタクリレート;および塩化ビニルおよび塩化ビニリデンから選択されるモノマーが挙げられる。
【0027】
本発明において有用なフルオロケミカルオリゴマーは一般に、以下に定義される1種または複数種の非フッ素化モノマーから誘導される単位の末端にシリル基および加水分解可能な基を有する単位Maをさらに含む。単位Maの例としては、一般式:
H−Q−E−G−SiY3 (IV)
に相当する単位が挙げられる。かかるモノマーの一般的な例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0028】
フルオロケミカルオリゴマーは好都合なことには、連鎖移動剤の存在下にて、フッ素化モノマーを任意にフッ素化モノマーおよびシリル基を含有するモノマーと共にラジカル重合することによって製造される。ラジカル開始剤が一般に使用され、重合またはオリゴマー化反応が開始される。使用することができる一般に知られているラジカル開始剤およびその例としては、アゾビスイソブチロニトリル(ABIN)、アゾ−2−シアノ吉草酸等のアゾ化合物、クメン、t−ブチルおよびt−アミルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルおよびジクミルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド、t−ブチルパーベンゾエートおよびジ−t−ブチルパーオキシフタレートなどのパーオキシエステル、過酸化ベンゾイルおよび過酸化ラウロイルなどのジアシルペルオキシドが挙げられる。
【0029】
オリゴマー化反応は、有機ラジカル反応に適しているいずれかの溶媒中で行うことができる。反応物は、適切な濃度で、例えば反応混合物の全重量を基準にして約5重量%〜約90重量%で溶媒中に存在する。適切な溶媒の例としては、脂肪族および脂環式炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン)、芳香族溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、グリム、ジグライム、ジイソプロピルエーテル)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル)、アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ハロゲン化溶媒、例えばメチルクロロホルム、フレオン(FREON)(登録商標)113、トリクロロエチレン、α,α,α−トリフルオロトルエン等、およびその混合物が挙げられる。
【0030】
オリゴマー化反応は、有機ラジカル反応を行うのに適した温度で行うことができる。使用される特定の温度および溶媒は、試薬の溶解性、特定の開始剤を使用するために必要な温度、所望の分子量などの要素に基づいて、当業者によって容易に選択することができる。すべての開始剤およびすべての溶媒に適している特定の温度を列挙するのは実際的ではないが、一般に適している温度は、約30℃〜約200℃、好ましくは50〜100℃である。
【0031】
フルオロケミカルオリゴマーは一般に、連鎖移動剤の存在下で製造される。適切な連鎖移動剤は、ヒドロキシ、アミノ、メルカプトまたはハロゲン基を含有し得る。連鎖移動剤は、かかるヒドロキシ、アミノ、メルカプトまたはハロゲン基のうちの2つ以上を含み得る。フルオロケミカルオリゴマーの製造において有用な一般的な連鎖移動剤としては、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−エチルアミン、ジ(2−メルカプトエチル)スルフィド、オクチルメルカプタン、およびドデシルメルカプタンから選択されるものが挙げられる。
【0032】
好ましい実施形態において、フルオロケミカルオリゴマーを製造するために、加水分解可能な基を有するシリル基を含有する連鎖移動剤がオリゴマー化において使用される。かかるシリル基を含有する連鎖移動剤は、式V:
HS−Q−SiY3 (V)
(式中、Qは、例えば直鎖、分岐鎖または環状アルキレン、アリーレンまたはアラルキレンなどの有機二価結合基を表す)
による基を含む。炭素原子1〜20個を有するアルキレン基が好ましく、Yは独立して、上記で定義される加水分解可能な基である。
【0033】
1種類の連鎖移動剤または異なる種類の連鎖移動剤の混合物を使用することができる。好ましい連鎖移動剤は、2−メルカプトエタノール、オクチルメルカプタンおよび3−メルカプトプロピルトリメトキシシランである。連鎖移動剤は一般に、オリゴマー中の重合モノマー単位の数を制御するのに十分な、かつオリゴマーフルオロケミカルシランの所望の分子量を得るのに十分な量で存在する。連鎖移動剤は一般に、フッ素化および非フッ素化モノマーを含むモノマー1当量につき、約0.05〜約0.5当量、好ましくは約0.25当量の量で使用される。
【0034】
本発明において有用なフルオロケミカルオリゴマーは、加水分解可能な基を含有する。これらの加水分解可能な基は、加水分解可能な基を含有するシリル基を有する連鎖移動剤、例えば式V(式中、Yは加水分解可能な基を表す)による連鎖移動剤の存在下にてオリゴマー化することによって、フルオロケミカルオリゴマー中に導入される。代替方法としては、オリゴマー化の後に、シリル基含有試薬と反応することができる、官能化連鎖移動剤または官能化コモノマーを使用することができる。
【0035】
このように、第1実施形態に従って、フルオロケミカルオリゴマーは、任意にシリル基も含有し得る連鎖移動剤、例えば上記の式V(式中、Yは加水分解可能な基を表す)による連鎖移動剤の存在下にて、フッ素化モノマーおよび任意の非フッ素化モノマーを上記の式IV(式中、Yは加水分解可能な基を表す)によるモノマーと共にオリゴマー化することによって製造される。
【0036】
上記の方法の変形形態として、シリル基含有モノマーを使用せず、シリル基を含有する連鎖移動剤を使用して、オリゴマー化が行われる。
【0037】
界面活性剤
界面活性剤は、システム中に低濃度で存在する場合に、システムの表面または界面上に吸着し、かつこれらの表面の表面または界面自由エネルギーを著しい程度に変更する特性を有する「物質」として定義される。(Milton J.Rosen、“Surfactants and Interfacial Phenomena”、第2版、ニューヨーク州ニューヨークのジョン・ウィリー&サンズ(John Wiley & Sons,New York,NY)、1989年、p.1)。これらの界面活性剤は、「親液性基と呼ばれる、溶媒に対して強い引力を有する基と共に、疎液性基として知られる、溶媒に対して非常に弱い引力を有する構造基(structural group)からなる特有の分子構造」を有する。(Milton J.Rosen、“Surfactants and Interfacial Phenomena”、第2版、ニューヨーク州ニューヨークのジョン・ウィリー&サンズ(John Wiley & Sons,New York,NY)、1989年、p.3−4)。溶媒が水性である場合には、疎液性基は一般に、アルキルまたはフッ素化アルキルなどの非極性基であり、親液性基は、極性基である。
【0038】
「フッ素化」という用語は(フッ素化界面活性剤という用語のように)、アルキル部位の水素原子の少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、さらに好ましくは少なくとも約95%がフッ素原子で置換されていることを意味する。任意に、残存する水素原子は、塩素原子などの他のハロゲン原子によって置換することができる。
【0039】
フッ素化界面活性剤は、エマルジョン(つまり、一方の液相に分散された、もう一方の液相の液体粒子)を安定化する働きをし、フッ素化シランおよび希釈可能な非水性濃縮物の有機共溶媒(1種または複数種の有機共溶媒が存在する場合には)の溶解性または相溶性を助ける。
【0040】
本発明において有用なフッ素化界面活性剤は、1種または複数種の疎水性フルオロケミカルセグメントおよび1種または複数種の可溶性および親水性セグメントを含む両親媒性物質である。かかる物質は、Fluorinated Surfactants and Repellents、第2版、E.Kissa,Surfactant Science Series、第97巻、ニューヨークのマーセル・デッカー社(Marcel Dekker,Inc.:New York)、2001年、p.1−21に記載されている。フッ素化界面活性剤は、少なくとも10重量%のフッ素含有率を有する。これらのフッ素化界面活性剤は、分子量約300〜約100,000g/モル、好ましくは約400〜約20,000g/モルを有する低分子量または高分子量物質である。疎水性フルオロケミカル基は例えば、炭素原子約3〜約20個を含有するパーフルオロアルキル、または分子量約300〜約10,000g/モルを有する一価または二価パーフルオロポリエーテル基である。フッ素化界面活性剤上の親水性基は、それらが、本発明の濃縮物において不安定さおよびフッ化物イオンによる汚染を引き起こす官能基、例えば強酸性基、強塩基性基を含有しない限り、アニオン性(カルボキシレートなど)、カチオン性(第4級アンモニウムなど)、非イオン性(オリゴ(オキシエチレン)など)または両性(アミンオキシドなど)の性質である。
【0041】
代表的なフッ素化界面活性剤としては、限定されないが、以下の:
715CO2-NH4+
817SO2N(C25)(C24O)7CH3
817(C24O)10H、
(C49SO22-NH4+
49SO2N(CH3)(C24O)nCH3(navg約7)、および
37O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)CO2-NH4+(navg約13)が挙げられる。
【0042】
本発明のこれらのおよび他のフッ素化界面活性剤の例は、例えば、参照により本明細書に援用される、米国特許第3,772,195号明細書(Francen)、米国特許第4,090,967号明細書(Falk)、米国特許第4,099,574号明細書(Cooperら)、米国特許第4,242,516号明細書(Mueller)、米国特許第4,359,096号明細書(Berger)、米国特許第4,383,929号明細書(Bertocchioら)、米国特許第4,472,286号明細書(Falk)、米国特許第4,536,298号明細書(Kameiら)、米国特許第4,795,764号明細書(Almら)、米国特許第4,983,769号明細書(Bertocchioら)および米国特許第5,085,786号明細書(Almら)に記載されている。これらのフッ素化界面活性剤の多くは、商品名FLUORAD(登録商標)で3M社(Minnesota Mining and Manufacturing Company)(ミネソタ州セントポール(St.Paul,Minnesota))から市販されているか、または商品名ゾニール(ZONYL)(登録商標)でデュポン社(E.I.DuPont de Nemours and Co.)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware))から市販されている。
【0043】
ポリマーフッ素化界面活性剤もまた本発明で使用することができる。本発明で使用することができるポリマーフッ素化界面活性剤の例は、参照により本明細書に援用される、米国特許第3,787,351号明細書(Olson)、米国特許第4,668,406号明細書(Chang)、および国際特許出願、国際公開第01/30873号パンフレットに記載されている。
【0044】
使用することができるポリマーフッ素化界面活性剤の例としては、ランダムコポリマーフッ素化界面活性剤が挙げられる。ランダムコポリマーフッ素化界面活性剤の例としては、以下の構造:
【化4】

(式中、a:b:cのモル比が約30:約1:約32であり、かつ界面活性剤の分子量が約1,000〜約4,000g/モルである)
【化5】

(式中、a’:b’:c’のモル比が約3:約3:約1であり、かつ界面活性剤の分子量が約1,000〜約40,000g/モルである)
が挙げられる。
【0045】
界面活性剤は、炭化水素またはシリコーン界面活性剤であることもできる。炭化水素またはシリコーン界面活性剤は、上記で定義されるフッ素化界面活性剤を有する共界面活性剤(cosurfactant)であることができる。一般に、炭化水素界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、例えば、アルキレンジオールポリエチレングリコール、アルキルフェノール−ポリエチレングリコールまたはその混合物、例えばトリトン(Triton)(登録商標)X−305、サーフィノール(Surfynol)(登録商標)465またはTween(登録商標)80;アーカード(Arquad)(登録商標)2C−75などのカチオン界面活性剤;Witcolate(登録商標)4085などのアニオン界面活性剤、塩化ジココメチルアンモニウムなどの両性界面活性剤が挙げられる。一般に、シリコーン界面活性剤としては、例えば、シルウェット(Silwet)(登録商標)L−77およびシルガード(Sylgard)(登録商標)309などのアルキレンオキシ含有シリコーンオリゴマーが挙げられる。
【0046】
界面活性剤は一般に、希釈可能な非水性濃縮物の約50重量%まで、好ましくは約30重量%まで、最も好ましくは約15重量%までの量で、希釈可能な非水性濃縮物中に含有される。
【0047】
任意の有機共溶媒
本発明の希釈可能な非水性濃縮物は任意に、1種または複数種の有機共溶媒も含有する。有機共溶媒は、界面活性剤およびフッ素化シランを相溶性にし(有機共溶媒の存在下でそれらが相溶性ではない場合には)、かつ希釈可能な非水性濃縮物の粘度を下げる、液体有機成分である。
【0048】
適切な有機共溶媒は、限定されないが、メタノール、エタノール、およびイソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコール;アセトンまたはメチルエチルケトンなどのケトン;酢酸エチルまたはギ酸メチルなどのエステル;ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、およびジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル;およびN−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミドなどの、有機溶媒または有機溶媒の混合物である。ヘプタフルオロブタノール、トリフルオロエタノールおよびヘキサフルオロイソプロパノール、またはヒドロフルオロエーテルなどのフッ素化溶媒、例えばHFE−7100(3M社から入手可能な)を単独で、または非フッ素化有機共溶媒と共に使用することができる。
【0049】
好ましい有機共溶媒は脂肪族アルコールである。好ましい脂肪族アルコールのいくつかの例は、エタノールおよびイソプロピルアルコールである。他の例としては、ダワノール(DOWANOL)(登録商標)DPnP(ウィスコンシン州ミルウォーキーのシグマ・アルドリッチ社(Sigma−Aldrich,Milwaukee,WI)から市販の)、およびダワノール(DOWANOL)(登録商標)DPM(シグマ・アルドリッチ社から市販の)等の、アルキレンオキシド含有アルコールが挙げられる。
【0050】
好ましくは、有機共溶媒は水混和性である。また、好ましくは、有機共溶媒は、200℃未満の沸点を有する。
【0051】
使用される場合、有機共溶媒は一般に、希釈可能な非水性濃縮物の約75重量%まで、好ましくは約50重量%までの量で、希釈可能な非水性濃縮物中に含有される。
【0052】
任意の添加剤
希釈可能な非水性濃縮物は、1種または複数種の任意の添加剤もまた含有し得る。
【0053】
任意の添加剤のいくつかの例は、それが希釈され、基材上にコーティングされた後に希釈可能な非水性濃縮物の硬化および/または架橋を助ける触媒である。硬化を促進する必要がある場合には、硬化用添加剤が添加される。かかる硬化用添加剤は、熱、紫外線、可視光、電子ビーム照射、またはマイクロ波照射にさらされると、酸を放出する、酸前駆物質の形をとり得る。酸前駆物質としては、例えば、スルホニウムおよびヨードニウム塩、ならびにアルカンまたはフルオロアルカンスルホン酸のアルキルエステルが挙げられ、参照により本明細書に援用される米国特許第6,204,350号明細書(Liuら)に記載されている。
【0054】
パーフルオロカルボン酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸およびパーフルオロアルキルスルホンイミドなどの酸のアンモニウム塩などのいくつかの添加剤は、潜在性または熱活性化硬化用添加剤として機能し、ならびに界面活性剤として機能することができる。したがって、希釈可能な非水性濃縮物は、これらの二元機能界面活性剤のうちの1つを含み、別の触媒を必要としない。
【0055】
可能性のある他の任意の添加剤としては、限定されないが、抗微生物剤、紫外線吸収剤、炭化水素シラン、アルコキシシラン、チタネート、ジルコネート、およびシリカまたはチタニアなどの無機材料のミクロまたはナノ粒子が挙げられる。
【0056】
任意の添加剤が、希釈可能な非水性濃縮物の約50重量%まで、好ましくは約5重量%までの量で、希釈可能な非水性濃縮物中に含有される。
【0057】
希釈可能な非水性濃縮物は、いずれかの順序で、当技術分野で公知の手法で成分を合わせることによって調製される。好ましくは、少なくとも1種類のフッ素化オリゴマーシラン、少なくとも1種類の界面活性剤および少なくとも1種類の有機共溶媒を含有する実施形態に関しては、界面活性剤および有機共溶媒を最初に混合し、次いでフッ素化オリゴマーシランを混合物に添加する。
【0058】
成分を混合した直後に、希釈可能な非水性濃縮物が均一でない場合には、濃縮物は、時間が経過した後に均一になる。しかしながら、均一性を促進するために、希釈可能な非水性濃縮物を加熱してもよい。
【0059】
製造を容易にするため等、希釈可能な非水性濃縮物は一般に、使用直前に希釈媒体で希釈される(または、水性希釈組成物が一般に調製される)。
【0060】
特定の化学官能基、例えば強酸(つまり、スルホン酸、鉱酸、リン酸、および過フッ素化酸)およびフッ化物イオンなどの種の存在は、それらが相当する水性希釈液および/または希釈可能な非水性濃縮物自体を不安定にする場合には、希釈可能な非水性濃縮物において避けることが好ましい。
【0061】
水性希釈液
本発明の他の実施形態は、上記の希釈可能な非水性濃縮物;水と、水および水混和性共溶媒を含有する水性溶媒混合物と、を含む希釈媒体;を含む水性希釈液である。水性希釈液は、任意の添加剤もまた含有し得る。
【0062】
希釈媒体
水性希釈液の希釈媒体は、水または水性溶媒混合物を含む。水性溶媒混合物は、水および水混和性共溶媒を含む。
【0063】
水混和性共溶媒の例としては、限定されないが、アルコール、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、ダワノール(DOWANOL)(登録商標)DPM;ケトン、例えば、アセトン;エーテル、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、例えばN−メチルピロリジノンが挙げられる。
【0064】
水性希釈液(水性溶媒混合物を使用する場合)中に含まれる水混和性共溶媒の量は、水性希釈液をコーティングするために用いられるコーティング技術、ならびに得られたコート基材に望まれる性能特性に依存する。
【0065】
任意の添加剤
水性希釈液は任意に、少なくとも1種類の添加剤も含有する。いくつかの例示的な添加剤は以下に記載されている。水性希釈液の任意の添加剤は、希釈可能な非水性濃縮物における添加剤に加えての添加剤である。希釈可能な非水性濃縮物に関して上述のように、水性希釈液の安定性に悪影響を及ぼす添加剤は避けることが好ましい。これらの添加剤は、強酸性種およびフッ化物イオンを含む。水性希釈液のpHは、約2〜約11、最も好ましくは約4〜約8の範囲である。
【0066】
水性希釈液は、希釈可能な非水性濃縮物の成分を最初に合わせ、続いて希釈可能な非水性濃縮物を希釈媒体に添加することによって調製される。しかしながら、希釈媒体を希釈可能な非水性濃縮物に添加することによって、水性希釈液を調製することが好ましい。
【0067】
一般に水性希釈液中の希釈可能な非水性濃縮物の量は、水性希釈液の約0.05重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5重量%である。水性希釈液は、透明な溶液であり、ならびに多少濁った溶液である。
【0068】
希釈可能な非水性濃縮物を希釈した後に、任意の添加剤を水性希釈液に添加することができる。好ましい任意の添加剤は、水性希釈液の約3重量%までの量で水性希釈液に添加される、上述の添加剤等の硬化添加剤である。
【0069】
水性希釈液は一般に、撥水性および撥油性であるコーティングを製造するのに十分な量で基材に適用される(その方法に関して以下に詳細に記述されている基材)。このコーティングは、非常に薄く、例えば厚さ約10〜約20ナノメートルであることができるが、実際には、コーティングは、それより厚く、例えば厚さ約50〜100ナノメートルである。
【0070】
本発明の水性希釈液は有利なことに、基材上によく広がり、処理基材の表面全体にわたって均一性が得られる。さらに、水性希釈液は、揮発性有機化合物(VOC)の使用を最小限にするか、または使用を無くし、それによって、汚染が低減され、潜在的有害な、しばしば引火性の溶媒蒸気への曝露が低減される。
【0071】
方法
本発明は、上述の本発明の水性希釈液を基材に適用する工程と、その水性希釈液を硬化させて処理基材を形成する工程と、を含む、基材を処理する方法もまた提供する。
【0072】
本発明の水性希釈液で処理することができる適切な基材としては、限定されないが、シランと反応することができる、シリカ質または金属基材上に存在する−OH基などの官能基を有することが好ましい硬質表面を有する基材が挙げられる。好ましくは、基材表面のかかる反応性は、−OHなどの活性水素原子を有する官能基によって付与される。かかる活性水素原子が存在しない場合、酸素を含有するプラズマ中で、またはコロナ雰囲気中で基材を最初に処理し、フッ素化シランに対して基材を反応性にする。
【0073】
基材を処理することによって、処理表面の汚れの保持性が低くなり、処理表面の撥水撥油性の性質のために、容易に清浄可能となる。処理表面の耐久性が高い程度であることから、長期間にわたる曝露または使用および繰り返される清浄にもかかわらず、これらの望ましい特性は維持される。
【0074】
好ましくは、基材は、最適な特性、特に耐久性を得るために、本発明の水性希釈液を適用する前に清浄される。つまり、コーティングされる基材の表面は、コーティング前に有機物質汚染が実質的にないことが好ましい。清浄技術は、基材の種類に応じて異なり、例えばアセトンまたはエタノールなどの有機溶媒での溶媒洗浄工程、または空気プラズマまたは紫外線/オゾンなどの反応性気相処理にかけることを含む。
【0075】
有用な基材としては、限定されないが、布帛、服飾品、革、紙、厚紙、カーペット、セラミック、光沢セラミック、磁器、板ガラス、中空ガラス、金属(アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、銅等)、金属酸化物、天然および人口石、熱可塑性材料(ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ビニル、ポリスチレン、スチレンコポリマー、例えばスチレン/アクリロニトリルコポリマー、およびポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートなど)、塗料(アクリル樹脂をベースとする塗料など)、粉体コーティング(ポリウレタン、エポキシまたはハイブリッド粉体コーティング)、および木材が挙げられる。
【0076】
好ましい基材としては、金属およびシリカ質基材、例えばセラミック、光沢セラミック、ガラス、コンクリート、モルタル、グラウトおよび天然および人工石が挙げられる。特に好ましい基材としては、光沢セラミックおよびガラスが挙げられる。少なくとも1種類の基材を有する種々の物品を本発明の水性希釈液で有効に処理して、基材上に撥水撥油コーティングを提供することができる。例としては、光沢セラミックタイル、エナメルバスタブまたはトイレ、ガラスシャワーパネル、建築用ガラス、乗り物の様々な部品(鏡またはフロントガラスなど)および光学セラミックまたはエナメル陶磁器材料が挙げられる。
【0077】
他の特に好ましい基材は、その上に反射防止(AR)フィルムを有する基材である。ガラスまたはプラスチック製の基材上に、金属酸化物薄膜を真空スパッタリングすることによって形成される反射防止(AR)フィルムは、電子装置のディスプレイデバイスにおいて特に有用である。かかる金属酸化物フィルムは、比較的多孔性であり、比較的粗いプロファイルを形成する粒子のクラスターからなる。ARフィルムは、まぶしさおよび反射を低減するのに役立つ。ARフィルムが導電性である場合には、静電放電および電磁放射を低減するのにも役立つ。したがって、ARフィルムの主な応用例は、コンピューターのモニターなどディスプレイデバイスの読みやすさを改善するために、コントラスト強調および反射防止性を提供することである。ARフィルムは、参照により本明細書に援用される、米国特許第5,851,674号明細書(Pelleriteら)に記載されている。
【0078】
スパッタ金属酸化物反射防止フィルムは一般に、耐久性があり、かつ均一である。また、それらの光学的性質は制御可能であり、そのため非常に望ましい。それらは、非常に高い表面エネルギーおよび屈折率も有する。しかしながら、スパッタ金属酸化物面の表面エネルギーが高いと、有機不純物(皮膚の油など)による汚染を生じやすくなる。表面混入物が存在することによって、金属酸化物コーティングの反射防止性の重大な劣化が起こる。さらに、屈折率が高いために、最終使用者が、表面汚染に気が付くようになる。本発明の方法は、比較的耐久性があり、反射防止フィルム単独よりも、汚染に対して耐性があり、清浄が容易である反射防止フィルム上の保護コーティングを提供する。
【0079】
好ましくは、反射防止物品上の水性希釈液の所望のコーティングの全塗り厚(「ドライダウンコーティング(dried down coating)」)は、単層(一般に、厚さ約1.5ナノメートル(nm)を超える)よりも高い。つまり、好ましくは、水性希釈液からのコーティングは、ARフィルムを有する物品上の防汚目的のためには少なくとも厚さ約2.0nm、さらに好ましくは少なくとも厚さ約3.0nmである。水性希釈液からのコーティングは一般に、反射防止物品の反射防止特性を実質的に変化させない量で存在する。
【0080】
基材への水性希釈液の適用方法は、限定されないが、吹付け塗り、スピンコーティング、浸し塗り、流し塗りおよびロール塗布法等が挙げられる。水性希釈液の適用に好ましいコーティング法としては、吹付け塗りが挙げられる。吹付けは、ストリームまたは噴霧ミストの形で、基材表面上に適切なジェット、ノズルまたはオリフィスに加圧水性希釈液を通すことによって行われる。
【0081】
コーティングされる基材は一般に、室温(一般に、約20〜約25℃)で水性希釈液と接触させることができる。代替方法としては、水性希釈液は、例えば60〜150℃の温度で予熱された基材に適用することができる。これは、例えば、製造ラインの最後で焼成した直後にセラミックタイルが処理される工業生産にとって特に興味深い。適用に続いて、周囲温度または高温で、乾燥または硬化するのに十分な時間、処理された基材を乾燥および硬化させる。
【0082】
基材上の得られたコーティングは、紫外線によって、または熱的に硬化される。紫外線硬化の場合には、硬化用添加剤(上記の任意の添加剤など)を添加することができる。熱硬化は、約40〜約300℃の高温で行われるが、高温は必須ではない。硬化用の熱は、硬化用の熱を提供するのに十分な熱容量を有する基材を最初に予熱するか、またはコーティングに続いて外部熱源によって被覆基材を加熱することにより、供給することができる。
【0083】
物品
本発明の他の実施形態は、(a)基材(上述の);(b)前記基材上に水性希釈液(上述の)を適用し、前記水性希釈液を硬化させることによって得られた前記基材上のコーティング;を含む物品である。
【実施例】
【0084】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例に記載の特定の材料およびその量、ならびに条件および詳細は、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。
【0085】
【表1】

【0086】
MeFBSEA、C49SO2N(CH3)CH2CH2OC(O)CH=CH2は、国際公開第01/30873 A1号パンフレットの実施例2、パートAおよびBに記載のように製造することができる。
【0087】
FCS−1;C49SO2N(CH3)(CH2CH2O)7.5CH3は、国際公開第01/30873 A1号パンフレットの実施例1、パートAおよびBに記載のように製造することができる。
【0088】
FCS−2;は、国際公開第01/30873 A1号パンフレットの実施例16に記載のように製造することができる。
49SO2N(CH3)Hは、国際公開第01/30873 A1号パンフレットの実施例1、パートAに記載のように製造することができる。
【0089】
接触角の測定
処理基材をオリンパス(Olympus)TGHMゴニオメーター(フロリダ州ポンパノビーチのオリンパス社(Olympus Corp,Pompano Beach Fl))を使用して、水(W)およびn−ヘキサデカン(O)に対するその接触角について試験した。別段の指定がない限り、研磨の前(初期)および研磨の後(研磨)に、接触角を測定した。適用または研磨して少なくとも24時間後に、水およびヘキサデカンでの接触角を測定した。その値は、4回の測定の平均値であり、度で報告される。接触角の最小測定可能値は20であった。値<20は、液体が表面に広がることを意味する。
【0090】
研磨/スクラブ(Abrasion/Scrub)法
Erichsen洗浄機(ベルギーのDCI社から市販されている)、3M(登録商標)ハイパフォーマンスクロス(HIGH PERFORMANCE(登録商標)Cloth)(ミネソタ州セントポールの3M社から市販されている)およびCIF(登録商標)クリームクレンザー(フランスのレーヴァ・ファベルゲ社(Lever Faberge,France)から市販されている)を使用して、40サイクルを用いて、摩耗試験を達成した。
【0091】
製造1:MeFBSEA/A−160=4/1
凝縮器、スターラーおよび温度計を備えた500mL三つ口丸底フラスコに、MeFBSEA(41.1g;0.1モル)、A−160(4.9g;0.025モル)、エチルアセテート(46.0g)、およびAIBN(0.1g)を装入した。吸引装置真空を用い、窒素で再び満たして、混合物を3回ガス抜きした。その混合物を75℃で窒素下にて8時間反応させた。AIBN(0.05g)をさらに添加し、反応を75℃でさらに3時間続けた。AIBN(0.05g)のさらなるアリコートを添加し、反応を82℃で2時間続けた。オリゴマーフルオロケミカルシランMeFBSEA/A−160=4/1の透明な溶液が得られた。
【0092】
製造2:MeFBSEA/ODMA/TMPMA/A−160=6/1/1/1
MeFBSEA(61.6g;0.15モル)、ODMA(8.5g;0.025モル)TMPMA(6.2g;0.025モル)、A−160(4.9g;0.025モル)、およびAIBN(0.1g)をフラスコに装入したことを除いては、製造1で記載の手順に従って、MeFBSEA/ODMA/TMPMA/A−160=6/1/1/1の製造を行った。
【0093】
製造3:(MeFBSEA)4SCH2CH2OHおよびOCN(CH23Si(OCH2CH33との反応生成物
フルオロケミカルシラン(MeFBSEA)4SCH2CH2OHおよびOCN(CH23Si(OCH2CH33との反応生成物を2段階反応に従って製造した。第1段階で、フルオロケミカルオリゴマー、(MeFBSEA)4SCH2CH2OHを以下の手順に従って製造した:
2つの還流冷却器、羽根攪拌機、窒素入口および真空出口を備えた3L反応フラスコに、MeFBSEA(2.4モル)およびエチルアセテート(987g)を装入した。すべての材料が溶解するまで、混合物を40℃に加熱した。HSCH2CH2OH(0.6モル)およびAIBN(0.15%)を添加し、160rpmで攪拌しながら、その溶液を80℃に加熱した。反応は、窒素雰囲気下にて80℃で16時間行われ、その後に95%を超える転化が得られた。
【0094】
第2段階において、以下の方法に従って、得られたフルオロケミカルオリゴマーを等モル量のOCN(CH23Si(OCH2CH33と反応させた:
凝縮器、スターラーおよび温度計を備えた500mL三つ口丸底フラスコに、上記で製造されたMeFBSEA/HSCH2CH2OH(フルオロケミカルオリゴマーの60%溶液0.02モル)、エチルアセテート(22g)、OCN(CH23Si(OCH2CH33(5g)およびオクタン酸第一スズ触媒2滴を窒素雰囲気下にて装入した。混合物を窒素下で75℃に加熱し、16時間反応させた。残留イソシアネートは、赤外分析法によって検出されなかった。透明な溶液が得られた。
【0095】
製造4:MeFBSEA/TMPMA/A−160=4/1/1
フラスコにTMPMA(6.2g;0.025モル)をさらに装入したことを除いては、製造1に記載の手順に従って、MeFBSEA/TMPMA/A−160(4/1/1)の製造を行った。
【0096】
製造5:C49SO2N(CH3)(CH23Si(OCH33
比較例C−2で使用されるフルオロケミカル化合物C49SO2N(CH3)(CH23Si(OCH33を以下の手順に従って製造した:
凝縮器、スターラー、窒素入口および温度計を備えた500mL三つ口反応フラスコにC49SO2N(CH3)H0.1モルおよび乾燥ジメチルホルムアミド30gを装入した。NaOCH3(0.1モル;メタノール中の30%溶液)を添加し、反応混合物を窒素下にて50℃で1時間加熱した。温度を50℃に維持しながら、メタノールを吸引真空下にて除去した。反応を25℃に冷却し、その後にCl(CH23Si(OCH33(0.1モル)を添加した。反応混合物を窒素下にて90℃で16時間加熱した。反応中に形成されたNaClを濾過除去した。反応が完了した後、GLCを行った。透明な黄褐色溶液が得られた。DMFを真空蒸留によって除去し、フルオロケミカル反応生成物を120〜150℃(約0.4mmHg)で蒸留し、その結果、薄い黄色の液体が得られた。
【0097】
実施例1
150mLガラス瓶に製造2(60.0g;フルオロケミカル固体約50%を含有する)およびFCS−2(20.0g;エチルアセテート中のフルオロケミカルオリゴマー界面活性剤の50%溶液)を装入した。穏やかに2分間攪拌した後、フルオロケミカル固体50%を含有する透明な溶液が得られた。この混合物のうち2gを脱イオン水97gで希釈し、37%HCl 1gを添加した。次いで、この水性希釈液を、ドイツのビレロイ&ボッホ(Villeroy & Boch,Germany)から市販の熱い(温度約120℃)の白い壁用化粧タイル上に吹付けた。ソフトワイプを使用して約10分後に、余分なコーティングを除去した。研磨前および研磨後の上記の手順に従って、接触角を測定した。その結果を表1に示す。
【0098】
実施例2〜8および比較例C1およびC2
表1に記載の成分および量を用いて、実施例2〜8および比較例C1およびC2を実施例1の手順に従って製造した。生成物の適用および試験は、実施例1に従って行った。その結果を表1に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
本発明の実施例の研磨後の接触角の値は、比較例の値よりも著しく高い。これは、実施例のコーティングの耐摩擦性が向上したことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)次式:
【化1】

(式中、Aは、水素または開始種の残基であり;
fは、1種または複数種のフッ素化モノマーから誘導される単位を表し;
hは、1種または複数種の非フッ素化モノマーから誘導される単位を表し;
aは、シリル基、SiY3を有する1種または複数種の非フッ素化モノマーから誘導される単位を表し、式中、Yは加水分解可能な基であり;
Gは、次式
−S−Q−Y3
の連鎖移動剤の残基であり、式中、Yは加水分解可能な基であり、Qは有機二価結合基であり;
nは、1〜100の整数であり:
mは、0〜100の整数であり;
rは、0〜100の整数である)
の少なくとも1種類のフッ素化オリゴマーシランと、
(b)少なくとも1種類の界面活性剤と、
の混合物を含有する希釈可能な非水性濃縮物。
【請求項2】
前記フッ素化モノマーが、次式:
f−Q−E
(式中、Rfは、C2−C8パーフルオロアルキル基であり;
Qは、有機二価結合基であり;
Eは、エチレン性不飽和基である)のモノマーである、請求項1に記載の濃縮物。
【請求項3】
(a)次式:
【化2】

(式中、Rfは、C2−C8パーフルオロアルキル基であり;
Rは、1種または複数種の反応性基によって置換されてもよい炭素原子4〜30個の炭化水素基であり;
1およびR2は独立して、水素またはC1−C4アルキル基であり;
Qは、−(CH2)−dであり、n’は、1〜20の整数であり;
Q’は、式−SO2N(R1)(CH2d−OC(O)−の結合基であり;
Q’’は、式−(CH2d−OC(O)−の結合基または化学結合であり;
nは、1〜20の整数であり;
mおよびrは、0〜20の整数であり;
dは、1〜20の整数である)の少なくとも1種類のフッ素化オリゴマーシランを含有する、請求項1に記載の濃縮物。
【請求項4】
少なくとも1種類の有機共溶媒および少なくとも1種類の添加剤うちの1つまたは両方をさらに含有する、請求項1に記載の濃縮物。
【請求項5】
前記共溶媒が、アルコール、ケトン、エーテル、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、またはその混合物である、請求項4に記載の濃縮物。
【請求項6】
前記少なくとも1種類の界面活性剤が、フルオロカーボン、炭化水素、シリコーン界面活性剤またはその混合物を含む、請求項1に記載の濃縮物。
【請求項7】
少なくとも1種類のフルオロカーボン界面活性剤が:
49SO2N(CH3)(C24O)nCH3
(式中、navgが約7である)を含む、請求項6に記載の濃縮物。
【請求項8】
前記少なくとも1種類のフルオロカーボン界面活性剤が:
37O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)CO2-NH4+
(式中、navgが約13である)を含む、請求項6に記載の濃縮物。
【請求項9】
前記少なくとも1種類のフルオロカーボン界面活性剤が、ポリマー界面活性剤である、請求項6に記載の濃縮物。
【請求項10】
前記少なくとも1種類のフルオロカーボン界面活性剤が、ランダムコポリマー界面活性剤である、請求項6に記載の濃縮物。
【請求項11】
前記ランダムコポリマー界面活性剤が:
【化3】

(式中、a:b:cのモル比が約30:約1:約32である)を含み、かつ前記ランダムコポリマーフッ素化界面活性剤が、分子量約1,000〜約4,000g/モルを有する、請求項10に記載の濃縮物。
【請求項12】
前記ランダムコポリマー界面活性剤が:
【化4】

(式中、a’:b’:c’のモル比が約3:約3:約1である)を含み、かつ前記ランダムコポリマーフッ素化界面活性剤が、分子量約5,000〜約40,000g/モルを有する、請求項10に記載の濃縮物。
【請求項13】
前記少なくとも1種類の炭化水素界面活性剤が、塩化ジココメチルアンモニウムである、請求項6に記載の濃縮物。
【請求項14】
前記少なくとも1種類の炭化水素界面活性剤が、アルキレンジオールポリエチレングリコール、アルキルフェノール−ポリエチレングリコールまたはその混合物を含む、請求項6に記載の濃縮物。
【請求項15】
前記少なくとも1種類のシリコーン界面活性剤が、アルキレンオキシ含有シリコーンオリゴマーを含む、請求項6に記載の濃縮物。
【請求項16】
fが、C3−C5パーフルオロアルキル基である、請求項2に記載の濃縮物。
【請求項17】
fが、C4パーフルオロアルキル基である、請求項2に記載の濃縮物。
【請求項18】
Yが独立して、−Cl、OCH3、OC25であるか、またはカテナリー酸素原子によって割り込まれるC3−C6アルコキシである、請求項1に記載の濃縮物。
【請求項19】
Yが、−Cl、−OCH3または−OC25である、請求項18に記載の濃縮物。
【請求項20】
(a)水、または、水と少なくとも1種類の水混和性共溶媒とを含有する水性溶媒混合物を含む希釈媒体と;
(b)請求項1に記載の非水性の均一な混合物を含む希釈可能な非水性濃縮物と;
を含む水性組成物。
【請求項21】
(a)水、または、水と少なくとも1種類の水混和性共溶媒とを含有する水性溶媒混合物を含む希釈媒体と;
(b)請求項3に記載の希釈可能な非水性濃縮物の均一な混合物と;
を含む水性組成物。
【請求項22】
請求項20に記載の水性組成物を基材に適用する工程と、前記水性組成物を硬化させる工程とを含む基材を処理する方法。
【請求項23】
(a)基材と;
(b)請求項22に記載の方法によって得られた前記基材上のコーティングと;
を含む物品。
【請求項24】
前記基材がガラスを含む、請求項23に記載の物品。
【請求項25】
前記基材がセラミックを含む、請求項23に記載の物品。
【請求項26】
前記基材が反射防止フィルムを含む、請求項23に記載の物品。

【公表番号】特表2007−518854(P2007−518854A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546999(P2006−546999)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/038258
【国際公開番号】WO2005/066258
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】