説明

フッ素樹脂成形品およびその製造方法

【課題】 成形後の溶出フッ素イオン濃度が低減されたフッ素樹脂成形品を提供することであり、溶出フッ素イオン濃度が低減されたフッ素樹脂成形品の製造方法、フッ素樹脂成形品及びフッ素樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 フッ素樹脂を、フッ素イオン低減化合物の存在下で溶融成形をするフッ素樹脂成形品の製造方法、それにより得られる成形品及びフッ素樹脂組成物。アンモニア、尿素、アンモニアを生成し得る窒素化合物およびアルカリは、フッ素イオン低減化合物の好適例である。本発明はまた、フッ素イオン濃度が1ppm以下であるテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体の成形品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶出フッ素イオン濃度が低減されたフッ素樹脂成形品、及び溶出フッ素イオン濃度が低減されたフッ素樹脂成形品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱溶融性フッ素樹脂のテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)は、耐熱性、耐薬品性、高周波電気特性、非粘着性、難燃性などの優れた特徴を有しているため、酸、アルカリなどの薬液、溶剤、塗料などの移送用の配管、薬液貯蔵容器やタンクなどの化学工業製造用品、またはチューブ、ローラ、電線などの電気工業用品等にも広く利用されている。
【0003】
半導体製造の分野においても、フッ素樹脂は、製造ラインに使用されるウェーハキャリヤや装置などとして、汎用されているが、高温の溶融成形温度で溶融成形されると、フッ素樹脂の自身が熱分解するので、多くのフッ素イオンが発生する。結果としては、フッ素樹脂の成形品から溶出するフッ素イオンが多いので、製造工程に侵入する不純物の影響が深刻化している。また、溶出したフッ素イオンは、水溶液にフッ化水素酸になって製造中の半導体デバイス上に腐蝕及び/又はエッチング効果をもたらし、直ちに又はデバイス故障の原因となるので、フッ素イオンの低減が望まれており、フッ素樹脂及びその成形品に対する問題の重要性が指摘されるようになった(Solid State Technology、33、65 (1990))。
【0004】
そして、半導体製造技術が更に高度に発展するなかで、フッ素樹脂製品からの溶出フッ素イオン量を効果的かつ劇的に低減する方法の開発が行なわれ、現在では、不安定末端基をフッ素化して安定化したフッ素樹脂が半導体用途に使用されているが、半導体ウエハーの大口径化に伴い、より大型な容器が必要とされるようになったため、半導体メーカーや半導体用薬液メーカーからは、フッ素樹脂製品から溶出フッ素イオン量の更なる低減が強く求められている。
【0005】
更に、微量分析の分野では、試料の濃縮や分解にフッ素樹脂容器を用いるが、より精度の高い分析のため、溶出フッ素イオンなどが少ないフッ素樹脂が要求されている。
そのため、上記のフッ素樹脂製品からの溶出フッ素イオン問題を解決する方法として、重合による変性フッ素樹脂、フッ素樹脂の末端基アミド化法、フッ素樹脂の末端基フッ素化法などが提案されている。
【0006】
米国特許第6,939,495B2には、0.3〜1.6wt%のパーフルオロチオソルの存在下でテトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)をマイクロエマルション重合して得られるパーフルオロチオソル変性(テトラフルオロエチレン/パーフルオロメチルビニルエーテル)共重合体(原料)を溶融成形して得られる溶出フッ素イオン濃度が約1ppmであるフッ素樹脂成形品が記載されている。しかしながら、その溶出フッ素イオン濃度の低減効果は低く、パーフルオロチオソルで変性しない(テトラフルオロエチレン/パーフルオロメチルビニルエーテル)共重合体(原料)を溶融成形して得られる成形品の溶出フッ素イオン濃度の約1/2程度であり、半導体用途としては不十分である。また、変性剤としてパーフルオロチオソルを用いているため、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)共重合体の優れた物性を維持できない問題がある。更に、該US公報には、パーフルオロチオソルとパーフルオロ(メチルビニルエーテル)以外の他のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)との共重合体についての記載は無い。
【0007】
米国特許第4,599,386号または特許2921026号には、フッ素樹脂をアンモニアガスやアンモニアガスを生成する化合物で処理することにより(以下、末端基アミド化法という)、フッ素樹脂の-CH2OH、-COOH、-COFなどの不安定末端基を熱安定末端基(アミド(-CONH2))へ変換する方法が記載されている。また、この末端基アミド化法によって、フッ素樹脂の溶出フッ素イオン濃度が1ppmに低減したとの記述がある。しかしながら、該末端基アミド化処理したフッ素樹脂を溶融成形する際、-CONH2末端基が酸化、加水分解及び/または熱分解し、得られるフッ素樹脂成形品の溶出フッ素イオン濃度が高くなる。(後記比較例2と3参照)
【0008】
更に、米国特許第4,743,658号には、熱的にアミド基より安定な末端基化法として、フッ素樹脂をフッ素ガスで処理することにより(以下、フッ素化法という)、前記熱不安定末端基の全てが熱安定末端基である-CF3末端基に変換する方法が記載されている。また、このフッ素化によって溶出フッ素イオン濃度が3ppm以下のフッ素樹脂が記載されている。しかしながら、該フッ素化処理したフッ素樹脂(原料)は不安定末端基をまったく含有していないが、溶融成形する際にフッ素樹脂の自身が熱分解し、フッ素イオンが発生するため、得られるフッ素樹脂成形品の溶出フッ素イオン濃度は高くなる(後記比較例1参照)。
【0009】
上記の先行技術では、フッ素樹脂は、溶融成形する際にフッ素樹脂自身やフッ素樹脂の不安定末端基が熱分解するため、結局最終成形品のフッ素イオン濃度を下げることができないので、本発明者らは、最終成形品の溶出フッ素イオン濃度をさらに下げる方法を鋭意検討した結果、上記の問題点を解決し得る方法を見出し本発明に達成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6、939、495号
【特許文献2】米国特許第4、599,386
【特許文献3】米国特許第4,743、658
【特許文献4】特許第2921026号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Solid State Technology、33、65 (1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来提案の技術では、成形前のフッ素樹脂の熱安定末端基化やフッ素化処理されても、高温の溶融成形温度で溶融成形する際、熱安定末端基やフッ素樹脂自身が熱分解するためにフッ素イオンが発生し、結果としてフッ素樹脂成形品から溶出フッ素イオンが多くなり、フッ素イオン濃度が低減されたフッ素樹脂成形品を得ることができなかった。そのために、そのフッ素樹脂成形品を使用する半導体製造工程においてデバイス故障の原因となるという問題点があった。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、成形後の溶出フッ素イオンが低減されたフッ素樹脂成形品を提供することを課題とする。
本発明は、溶出フッ素イオンが低含量であるフッ素樹脂成形品の製造方法、及び溶出フッ素イオンが低含量であるフッ素樹脂成形品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、フッ素樹脂を、フッ素イオン低減化合物の存在下で成形をするフッ素樹脂成形品の製造方法を提供する。
前記フッ素イオン低減化合物が、アンモニア、尿素、アンモニアを生成し得る窒素化合物およびアルカリから選ばれた少なくとも1種の化合物であるフッ素樹脂成形品の製造方法は本発明の好ましい態様である。
【0014】
前記アンモニアを生成し得る窒素化合物が、アンモニウム塩および有機アミン化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物である前記フッ素樹脂成形品の製造方法は本発明の好ましい態様である。
また前記アルカリが、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも1種の化合物である前記フッ素樹脂成形品の製造方法も本発明の好ましい態様である。
【0015】
前記フッ素イオン低減化合物が、成形の前にフッ素樹脂に混合されている前記フッ素樹脂成形品の製造方法は本発明の好ましい態様である。
前記フッ素イオン低減化合物が、フッ素樹脂の成形時にフッ素イオン低減化合物を添加される前記フッ素樹脂成形品の製造方法は本発明の好ましい態様である。
【0016】
フッ素樹脂の成形が、フッ素樹脂組成物を溶融押出成形、射出成形、トランスファー成形、回転成形、圧縮成形、ブロー成形の何れかの成形方法により行なわれる前記フッ素樹脂成形品の製造方法は本発明の好ましい態様である。
【0017】
本発明は、また前記したフッ素樹脂成形品の製造方法のいずれかの方法によって得られるフッ素樹脂の成形品を提供する。
【0018】
本発明は、さらにテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体の成形品であって、成形品36gを超純水40gに入れて大気圧中25℃にて24時間の溶出条件で溶出を行い、溶出したフッ素イオンをJIS K0127(イオンクロマトグラフ法)に従い測定して得られるフッ素イオン濃度が1ppm以下であるフッ素樹脂成形品を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、フッ素樹脂の優れた耐熱性、耐薬品性、力学物性などを維持しながら、溶出フッ素イオン濃度が低減されたフッ素樹脂成形品が提供される。
本発明が、最終溶融成形の際、フッ素樹脂と共に微量のフッ素イオン低減化合物を存在させることにより、フッ素樹脂の優れた耐熱性、耐薬品性、力学物性などを維持しながら、溶出フッ素イオン濃度が大幅低減されたフッ素樹脂成形品の提供を可能としたことは、従来技術からは予想外であり格段に優れた効果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において使用されるフッ素樹脂は、すでに公知のものである。
本発明は、溶融成形可能なフッ素重合体に適用される。溶融成形とは、重合体が溶融状態で流動し、それによって押出機や射出成形機などの従来公知の溶融成形装置を用いて、例えば、溶融物からフィルム、繊維、チューブなどの成形品であって、それぞれの所定の目的に適用するのに十分な強度及び耐久性(toughness)を示す成形品に成形することができることを意味する。
【0021】
そのような溶融成形可能なフッ素樹脂として、テトラフルオロエチレン(TFE)と、通常共重合体の融点をTFEの単独重合体(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))の融点よりも実質的に低い、例えば315℃以下の融点に下げるのに十分な量で重合体中に存在する、少なくとも一種の共重合可能なフッ素化モノマー(コモノマー)との共重合体を挙げることができる。
【0022】
溶融成形可能なTFE共重合体は、一般的には、ASTM D−1238に準じてその特定の共重合体の標準である温度で測定したメルトフローレート(MFR)が約0.5〜100g/10分である共重合体となる量のコモノマーを含有している。溶融粘度は、米国特許第4,380,618号に記載されているように修正されたASTM D−1238の方法によって372℃で測定して、少なくとも約10Pa・s、より好ましくは10Pa・s〜約10Pa・s、最も好ましくは約10〜約10Pa・sであることが望ましい。他の溶融成形可能なフッ素樹脂として、エチレン(E)またはプロピレン(P)と、TFE、CTFEとの共重合体で、通常ETFE、ECTFE及びPCTFEと呼ばれる共重合体を挙げることができる。
【0023】
本発明に好適に使用される溶融成形可能な共重合体は、少なくとも約40〜98モル%のテトラフルオロエチレン単位と約2〜60モル%の少なくとも1種の他のモノマーを含む共重合体である。TFEの好ましいコモノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)(アルキル基は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐アルキル基である)などを挙げることができる。PAVEモノマーとしては、炭素数1,2,3または4のアルキル基を含むものが好ましい。PAVEモノマーを複数種使用して共重合体としてもよい。
【0024】
好ましいTFE共重合体として、FEP(TFE/HFP共重合体)、PFA(TFE/PAVE共重合体)、TFE/HFP/PAVEでPAVEがパーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)および/またはパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)である共重合体、MFA(TFE/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)/PAVEでPAVEのアルキル基が炭素数2以上である共重合体)、THV(TFE/HFP/VF2)などを挙げることができる。共重合体中のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位は、1〜10重量%であることが好ましい。さらに、これらの重合体または共重合体は、混合して使用してもよい。
【0025】
使用するフッ素樹脂がパーフルオロフッ素樹脂であることは、本発明の好ましい態様である。本発明の好ましい態様の一つは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルとの共重合体(TFE/PAVE共重合体)である。この共重合体は、ヘキサフルオロプロピレンなどの他のモノマーを含んでいてもよい。
【0026】
本発明によって製造されるフッ素樹脂成形品は、すべての充填物を除いて、少なくとも50重量%のフッ素樹脂、好ましくはテトラフルオロエチレン(TFE)と少なくとも1種の共重合可能なフッ素化モノマーとの共重合体からなることが特徴である。すべての充填物を除いて、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%のフッ素重合体からなるフッ素樹脂成形品は、好ましい態様である。
【0027】
使用されるフッ素樹脂の形態としては、粉状物、粉状物の造粒品、粒状物、フレーク、ペレット、ビーズなどあらゆる形態のフッ素樹脂であってよい。溶出するフッ素イオン量を減少させるために、溶融成形後にほとんどすべての不安定な末端基を熱的に安定な−CF末端基に変換されたフッ素樹脂は、非フッ素化物または部分的にフッ素化物と比較して、好ましく使用される。
【0028】
本発明の好ましい態様においては、フッ素樹脂成形品は、TFEと少なくとも1種の共重合可能なフッ素化モノマーを重合させてフッ素樹脂粒子を調製し、得られたフッ素樹脂粒子を、米国特許第4,743,658号に従って、不安定末端基をフッ素化して低減された不安定末端基を有するフッ素化フッ素樹脂粒子とし、そのフッ素化フッ素樹脂粒子に不活性ガスを接触させて抽出され得るフッ素イオン濃度を減少させたフッ素化フッ素樹脂粒子とし、得られたフッ素化フッ素樹脂粒子をフッ素イオン低減化合物の存在下に溶融成形してフッ素樹脂成形品とすることにより製造することができる
【0029】
本発明の他の態様においては、溶融成形可能なフッ素樹脂組成物は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルとの溶融成形可能な共重合体とさらにフッ素イオン低減化合物を含む。フッ素樹脂は、粉状、フレーク、ペレット、キューブ、ビーズなどの溶融成形の使用に適合する粒子形態であることが好ましい。また本発明の他の態様では、フッ素イオン低減化合物は、上記粒子上に被覆されて存在している。
【0030】
また本発明の他の態様では、溶融成形可能なフッ素樹脂組成物は、フッ素樹脂の不安定末端基がフッ素化され以下の特徴を有するテトラフルオロエチレンとパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルとの共重合体を含んでおり、さらにフッ素低減物質を含む。
(a)−CFCHOH、−CONHおよび−COFの末端基が10炭素原子当り6個未満である。
(b)抽出可能フッ素が重量で3ppm以下である。
【0031】
また、溶融成形するためには目的に応じて使用する樹脂の溶融粘度またはメルトフローレート(MFR)の範囲を選択することが出来る。例えば、フッ素樹脂共重合体組成物の溶融粘度は、溶融押出成形、射出成形などの溶融成形用としては、メルトフローレート(MFR、372℃)が0.5〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分の範囲である。
【0032】
本発明で用いられるフッ素イオン濃度を低減する効果がある化合物としては、弱塩基であることが好ましい、具体的にはアンモニアまたはNHを生成し得る窒素化合物、アルカリなどを挙げることができる。アンモニアまたはNHを生成し得る窒素化合物としては、アンモニウム塩、有機アミン化合物などを挙げることができる。アンモニアまたはNHを生成し得る窒素化合物の具体例としては、例えば、アンモニア、アンモニア水(NH4OH)、尿素(NH2CONH2)および炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)、カルバミン酸アンモニウム(NH4CO2NH2)、炭酸グヤニジン((NH2)2(C=NH)H2CO3)、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)、スルフアミン酸アンモニウム(NH4SO3NH2)、修酸アンモニウム((NH4)2C2O4)、ギ酸アンモニウム(NH4HCO3)、チオシアン酸アンモニウム(NH4SCN)、燐酸アンモニウム((NH4)2HPO4、(NH4)H2PO4、(NH4)PO4)、ビユウレット(NH2-CO-NH-CO-NH2)、チオ硫酸アンモニウム((NH4)2S2O)、過塩素酸アンモニウム(NH4ClO4)、アジピン酸アンモニウム(NH4OOC(CH2)4COONH4)、安息香酸アンモニウム(C6H5COONH4)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、酢酸アンモニウム(CH3COONH4)、サリチル酸アンモニウム(C6H4(OH)COONH4)、セバシン酸アンモニウム(NH4OOC(CH2)8COONH4)、フタル酸ニアンモニウム(C6H4(COONH4)2)、マレイン酸水素アンモニウム(HCHC=CHCOONH4)などのアンモニウム塩などを挙げることができる。
また、アルカリとしては、具体的には、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(Cs(OH))、水酸化ルビジウム(RbOH)などのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム(Na2CO3)などのアルカリ金属の炭酸塩を挙げることが出来る。これら化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0033】
また、前記の塩基、アンモニア塩、有機アミン化合物などのような窒素化合物またはアルカリは、水に対する溶解性が高いものが好ましく、これらのフッ素イオン低減化合物の形状は特に限定されず、気体でも、液体でも、微粉状などの固体であってもよく、使用時には水性溶媒に溶解、分散もしくは懸濁させたものが好ましく使用できる。
【0034】
さらに、フッ素イオン低減化合物処理フッ素樹脂を溶融成形する前に、放置したり、成形機のホッパに投入した際、フッ素イオン低減化合物が蒸発したり分解すると、フッ素イオン低減効果が低下したり、得られなくなるので、フッ素イオン低減化合物の沸点及び分解温度は、担体溶液の沸点より高いものが好ましい。例えば、水溶液の場合は、フッ素イオン低減化合物の沸点が50℃以上、好ましくは100℃以上、更に好ましくは130℃以上である。
【0035】
本発明では、微量のフッ素イオン低減化合物とフッ素樹脂とを混合させ、フッ素イオン低減化合物含有フッ素樹脂組成物を得ることができ、このフッ素樹脂組成物を最終溶融成形することによりフッ素イオンが非常に少ない成形品を得ることができる。
【0036】
フッ素樹脂とフッ素イオン低減化合物との混合は、溶融成形前に行ってもいいし、溶融成形時に行っても良い。また、混合方法としては、特には限定されず、一般的に用いられている混合方法を挙げることができる。例えば、プラネタリーミキサー、高速インペラー分散機、ロータリードラム型ミキサー、スクリュー型ミキサー、ベルトコンベヤ混合方式、ボールミル、ペブルミル、サンドミル、ロールミル、アトライター、ビードミルなどの公知慣用の分散・混合機を用いて行うことが出来る。なかでも、フッ素樹脂にフッ素イオン低減化合物を均一に分散出来る装置がより好ましい。また、前記の混合方法以外に次のようなウェット混合方法を採用してもよい。例えば、フッ素イオン低減化合物を、担体として働く水溶媒或いは有機溶媒に溶かしてから、フッ素樹脂にスプレーさせることによって微量のフッ素イオン低減化合物をフッ素樹脂に分散することが出来る。そして、前記の溶液を飛ばすため軽く乾燥することが好ましい。前記有機溶液としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、クロロホルム、アセトン、トルエンなどを挙げることが出来る。また、フッ素イオン低減化合物に対する溶解性が高いものがより好ましい。このようなウェット混合方法によって、フッ素イオン低減化合物をフッ素樹脂表面に被覆させることもできる。
【0037】
フッ素樹脂固形成分に対するフッ素イオン低減化合物の割合は、フッ素樹脂組成物の用途にもよるが、0.1〜1000ppm、更に好ましくは1〜500ppm、もっとも好ましくは10〜250ppmである。フッ素イオン低減化合物の割合が低すぎる場合は、溶出フッ素イオン低減効果が期待できなくなり、フッ素イオン低減化合物の割合が高すぎる場合は、過剰のフッ素イオン低減化合物が成形品に有機不純物として残る恐れがあるので、半導体分野に使用出来ない。
【0038】
フッ素樹脂の成形方法には特に制限はなく、従来公知の成形方法を採用することができ、成形方法として圧縮成形、押出成形、トランスファー成形、ブロー成形、射出成形、回転成形、ライニング成形、発泡体押出成形、フィルム成形などを挙げることができるが、なかでも好ましい成形方法は押出成形および射出成形である。
【0039】
本発明のフッ素樹脂の溶融成形方法により得られる成形品は、溶出しうるフッ化物イオンの低減された成形品である。本発明によれば、後記する測定方法で測定して、溶出しうるフッ化物イオンを重量で1ppm以下でしか含んでいない成形品を提供することが可能となる。
【0040】
本発明のフッ素樹脂の成形方法により得られる成形品として、バルブ、ウェーハキャリヤ、ボトル、パイプ、フィルム、チューブ、シートなどを挙げることができる。
【実施例】
【0041】
以下に本発明を、実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、この説明が本発明を限定するものではない。
本発明において各物性の測定は、下記の方法によって行った。
【0042】
A.物性の測定
(1)融点(融解ピーク温度)
示差走査熱量計(Pyris1型DSC、パーキンエルマー社製)を用いた。試料約10mgを秤量して本装置用に用意したアルミパンに入れ、本装置用に用意したクリンパーによってクリンプした後、DSC本体に収納し、150℃から360℃まで10℃/分で昇温をする。この時得られる融解曲線から融解ピーク温度(Tm)を求めた。
【0043】
(2)メルトフローレート(MFR)
ASTM D−1238−95に準拠した耐食性のシリンダー、ダイ、ピストンを備えたメルトインデクサー(東洋精機製)を用いて、5gの試料粉末を372±1℃に保持されたシリンダーに充填して5分間保持した後、5kgの荷重(ピストン及び重り)下でダイオリフィスを通して押出し、この時の押出速度(g/10分)をMFRとして求めた。
【0044】
(3)引っ張り物性(引っ張り強度、伸び率、引っ張り弾性率)
フッ素樹脂複合体組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって作成された厚み約1mm試料より、JIS K7127に準じて、引っ張り速度50mm/分で測定した。
【0045】
(4)溶出フッ素イオン濃度の測定
イオンクロマトグラフ法:JIS K0127に準拠されたイオンクロマトグラフ法を用いてフッ素イオンを測定した。下記(5)射出成形の方法で調製した36gの成形品を溶出液としての超純水40gに浸入させ、25℃で24時間の溶出条件でスタチック浸出テストを行った。本発明で用いた超純水はすべて日本ミリポア株式会社製、Milli−Q Gradient 1.2L用により精製されたものを用いた。一般に化学分析用の水はJIS K0557に準拠されたA1−A4に規定されるが、本精製装置によって得られる水の純度はA4であり、一般的に微量成分の試験などに用いられる純粋性を有する。次に、溶出イオンを含む溶液をイオンクロマトグラフ(Dionex、DX−120型式)にて測定した。検出したフッ素イオン濃度を水中の濃度を基に算出した。水中のフッ素イオン濃度を、実施例で報告されている成形品中のフッ素濃度を決定するのに用いた。
【0046】
(5)射出成形
前記のフッ素樹脂組成物を射出成形機(三菱重工業製、160msp−10型式)にて金型温度180℃、成形温度380℃、射出速度10mm/sで溶融成形した。射出成形バー(幅12.55mm、厚み6.13mm、長さ122.25mm)が得られた。
【0047】
B.原料
本発明の実施例、及び比較例で用いた原料は下記の通りである。
(1)フッ素樹脂(TFE/PAVE共重合体、PFA)
PFA−1:長径2.5mm×短径2mm×厚さ3mmの楕円状(ペレット)、
MFR15g/10分、融点309℃、PPVE含有量3.6重量%のTFE/PPVE共重合体。
米国特許第5,760,151号記載の方法及び実施例で使用した界面活性剤、重合開始剤、連鎖移動剤を用いて重合されたTFE/PPVE共重合体を、米国特許第4743658号に従って、不安定末端基が熱的により安定な-CF3の末端基としたTFE/PPVE共重合体である。
【0048】
PFA−2:長径2.5mm×短径2mm×厚さ3mmの楕円状(ペレット)、
MFR15g/10分、融点309℃、PPVE含有量3.8重量%のTFE/PPVE共重合体。
米国特許第5,760,151号記載の方法及び実施例で使用した界面活性剤、重合開始剤、連鎖移動剤を用いて重合されたTFE/PPVE共重合体。
【0049】
PFA−3:TFE/PAVE共重合体 (ダイキン工業製、PFA AP211SH)
【0050】
(2)フッ素イオン低減化合物
a)尿素
NHCONH(CAS番号:57−13−6、純度:>99.0%、関東化学株式会社)。
b)炭酸水素アンモニウム
NHHCO(CAS番号:1066−33−7、和光純薬工業株式会社)。
c)水酸化ナトリウム
NaOH(CAS番号:1310−73−2、純度:97%、関東化学株式会社)。
【0051】
(実施例1)
ビーカー(200ml)に尿素120mgと純水200mlを入れ、マグネチックスターラーにより10分間で攪拌し、尿素を純水に完全に溶かした。そして、ステンレストレイ(長さ30cm×幅20cm)に上記PFA−1を4kg入れ、その上に尿素水溶液をスプレーさせた。得られたPFAと尿素との混合物を乾燥機に入れ、120℃、3時間で乾燥をした。この尿素処理PFAペレットの射出成形(成形温度380℃、射出速度10mm/秒)を行った。得た射出成形バー36gを超純水40gに入れて24時間、25℃の溶出条件で、溶出試験を行った。射出成形バーから溶出したフッ素イオンの溶液をイオンクロマトグラフ法にて測定した。フッ素イオンの測定濃度をppm単位で表1にまとめた。表1に示したように、成形品のフッ素イオン濃度は0.14ppmであった。
【0052】
(実施例2)
ビーカー(200ml)に尿素480mgと純水200mlを入れ、マグネチックスターラーにより10分間で攪拌し、尿素を純水に完全に溶かした。そして、ステンレストレイ(長さ30cm×幅20cm)にPFA−1を4kg入れ、尿素水溶液をスプレーさせた。得られたPFAと尿素との混合物を乾燥機に入れ、120℃、3時間で乾燥をした。この尿素処理PFAペレットの射出成形(成形温度380℃、射出速度10mm/秒)を行った。得た射出成形バー36gを超純水40gに入れて、25℃で24時間の溶出条件で溶出試験を行った。射出成形バーから溶出したフッ素イオンの溶液をイオンクロマトグラフ法にて測定した。フッ素イオンの測定濃度をppm単位で表1にまとめた。表1に示した様に、成形品のフッ素イオン濃度は0.06ppmであった。
【0053】
(実施例3)
ポリビニル袋(25L)にPFA−1を4kgと炭酸水素アンモニウム800mgを入れ、5分間、手で振った。炭酸水素アンモニウムを処理したPFAペレットの前記射出成形と同条件で成形した。得られた射出成形品バー36gを超純水40gに入れて、25℃で24時間の溶出条件で溶出試験を行った。射出成形バーから溶出したフッ素イオンの溶液をイオンクロマトグラフ法にて測定した。フッ素イオンの測定濃度をppm単位で表1にまとめた。表1に示した様に、成形品のフッ素イオン濃度は0.12ppmであった。
【0054】
(実施例4)
ポリビニル袋(25L)にPFA−1を4kgと炭酸水素アンモニウム2gを入れ、5分間、手で振った。炭酸水素アンモニウム処理したPFAペレットの前記射出成形と同条で成形した。得た成形品バー36gを超純水40gに入れて、25℃で24時間の溶出条件で溶出試験を行った。射出成形バーから溶出したフッ素イオンの溶液をイオンクロマトグラフ法にて測定した。フッ素イオンの測定濃度をppm単位で表1にまとめた。表1に示した様に、成形品のフッ素イオン濃度は0.04ppmであった。
【0055】
(実施例5)
ビーカー(200ml)に水酸化ナトリウム400mgと純水200mlを入れ、マグネチックスターラーにより10分間で攪拌し、水酸化ナトリウムを純水に完全に溶かした。そして、ステンレストレイ(長さ30cm×幅20cm)にPFA−1を4kg入れ、水酸化ナトリウム水溶液をスプレーさせた。得られたPFAと水酸化ナトリウムとの混合物を乾燥機に入れ、120℃、3時間で乾燥をした。得た水酸化ナトリウム処理PFAペレットの射出成形(成形温度380℃、射出速度10mm/秒)を行った。得られた射出成形バー36gを超純水40gに入れて、25℃で24時間の溶出条件で溶出試験を行った。射出成形バーから溶出したフッ素イオンの溶液をイオンクロマトグラフ法にて測定した。フッ素イオンの測定濃度をppm単位で表1にまとめた。表1に示した様に、成形品のフッ素イオン濃度は0.15ppmであった。
【0056】
(比較例1)
PFA−1は射出成形する前に、原料としてのペレットからの溶出フッ素イオン濃度をイオンクロマトグラフ法にて測定したところ0.04ppmであった。PFA−1のペレット4kgを射出成形(成形温度380℃、射出速度10mm/秒)した。得られた射出成形バー36gを超純水40gに入れて24時間、25℃の条件で溶出試験を行った。射出成形バーから溶出したフッ素イオンの溶液をイオンクロマトグラフ法にて測定した。フッ素イオン濃度をppm単位で表1に計算結果をまとめて示した。表1に示した様に、成形品のフッ素イオン濃度は3.67ppmであった。
【0057】
(比較例2)
米国特許第4599386号に記載された末端基分析法により、炭素数10個あたり90個の−CONH2の末端基数を測定したPFA−2を用いた。PFA−2は射出成形する前に、原料としてのペレットからの溶出フッ素イオン濃度をイオンクロマトグラフ法にて測定したところ0.11ppmであった。このPFA−2のペレット4kgの射出成形(成形温度380℃、射出速度10mm/秒)を行った。得られた射出成形バー36gを超純水40gに入れて、25℃で24時間の条件で溶出試験を行った。射出成形バーから溶出したフッ素イオンの溶液をイオンクロマトグラフ法にて測定した。表1に示した様に、成形品のフッ素イオン濃度は9.3 ppmまで増えた。
【0058】
(比較例3)
特許2921026号の末端基分析法により、炭素数10個あたり47個の−CONH2の末端基数があることが測定されたPFA−3を用いた。PFA−3は射出成形する前に、原料としてのペレットからの溶出フッ素イオン濃度をイオンクロマトグラフ法にて測定したところ0.01ppmを測定した。このPFA−3のペレット4kgの射出成形(成形温度380℃、射出速度10mm/秒)を行った。得た射出成形バー36gを超純水40gに入れて、25℃で24時間の条件で溶出試験を行った。射出成形バーから溶出したフッ素イオンの溶液をイオンクロマトグラフ法にて測定した。フッ素イオン濃度をppm単位で表1に計算結果をまとめて示した。表1に示した様に、成形品のフッ素イオン濃度は9.8ppmに増えた。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
表1に示したように、尿素(30〜120ppm)、炭酸水素アンモニウム(200〜500ppm)または水酸化ナトリウム(100ppm)で処理したフッ素樹脂の成形品フッ素イオン濃度は、フッ素低減化合物で処理しないフッ素樹脂成形品のフッ素イオン濃度の1/37〜1/92であった。
【0062】
また、表2に示したように、DSC結果と引張り物性においては、尿素120ppmで処理したフッ素樹脂の成形品と尿素処理しないフッ素樹脂からなる成形品との間には有意差が無かった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明により、フッ素樹脂の優れた耐熱性、耐薬品性、力学物性などを維持しながら、溶出フッ素イオン濃度が低減されたフッ素樹脂成形品が提供される。
本発明が、最終溶融成形の際、フッ素樹脂と共に微量のフッ素イオン低減化合物を存在させることにより、そのフッ素イオン低減の機構は不明であるが、フッ素樹脂の優れた耐熱性、耐薬品性、力学物性などを維持しながら、溶出フッ素イオン濃度が大幅低減されたフッ素樹脂成形品の提供を可能とした。
本発明により、溶出しうるフッ化物イオンを重量で1ppm以下でしか含んでいない成形品を提供することが可能となる。
本発明により提供される溶出しうるフッ化物イオンが低減されたフッ素樹脂成形品は、半導体や半導体用薬液分野に好適に使用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素イオン低減化合物の存在下で、フッ素樹脂を溶融成形することを特徴とするフッ素樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記フッ素イオン低減化合物が、アンモニア、尿素、アンモニアを生成し得る窒素化合物およびアルカリから選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記アンモニアを生成し得る窒素化合物が、アンモニウム塩および有機アミン化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項2に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリが、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項2に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記フッ素イオン低減化合物が、溶融成形前にフッ素樹脂に混合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記フッ素イオン低減化合物が、その溶液をフッ素樹脂と接触させて、乾燥することにより、溶融成形前にフッ素樹脂に混合されていることを特徴とする請求項5に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記フッ素イオン低減化合物が、溶融成形時にフッ素樹脂に添加されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
フッ素樹脂に対して0.1〜1000ppmのフッ素イオン低減化合物の存在下で、フッ素樹脂を溶融成形することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
前記フッ素樹脂が、パーフルオロフッ素樹脂であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
【請求項10】
前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンと、テトラフルオロエチレンと共重合可能な少なくとも1種のフッ素化モノマーとの共重合体であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
【請求項11】
前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)との共重合体であることを特徴とする請求項10に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
【請求項12】
前記フッ素樹脂が、溶融成形の前にフッ素化されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
【請求項13】
前記フッ素樹脂の溶融成形が、溶融押出成形、射出成形、トランスファー成形、回転成形、圧縮成形、ブロー成形の何れかの溶融成形方法により行なわれる請求項1〜12のいずれか1項に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
【請求項14】
テトラフルオロエチレンと少なくとも1種の共重合可能なフッ素化モノマーを重合させて、フッ素樹脂粒子を調製し、
得られたフッ素樹脂粒子をフッ素化し、その後不活性ガスと接触させた、フッ素化フッ素樹脂粒子を、フッ素イオン低減化合物の存在下に溶融成形する
ことを特徴とするフッ素樹脂成形品の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項の方法によって得られるフッ素樹脂成形品。
【請求項16】
前記成形品が、少なくとも50重量%のフッ素樹脂を含むことを特徴とする請求項15に記載のフッ素樹脂成形品。
【請求項17】
前記成形品が、バルブ、ウェーハキャリヤ、ボトル、パイプ、フィルム、チューブ、シートまたは電線である請求項15に記載のフッ素樹脂成形品。
【請求項18】
テトラフルオロエチレン/パ−フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体の溶融成形品であって、成形品36gを超純水40gに入れて大気圧中25℃にて24時間の溶出条件で溶出を行い、溶出したフッ素イオンをJIS K0127(イオンクロマトグラフ法)に従い測定して得られるフッ素イオン濃度が1ppm以下であるフッ素樹脂成形品。
【請求項19】
溶融成形可能なテトラフルオロエチレンとパ−フルオロ(アルキルビニルエーテル)との共重合体と、さらにフッ素イオン低減化合物を含むフッ素樹脂組成物。
【請求項20】
前記共重合体が溶融成形法に適合する粒子形状である請求項19に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項21】
前記粒子形状が、粉末、フレーク、ペレット、キューブ、またはビーズである請求項20に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項22】
前記フッ素イオン低減化合物が、前記粒子上に被覆されて存在する請求項20に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項23】
前記共重合体が、
(a)10炭素原子当り−CFCHOH、−CONHおよび−COFの末端基が6個未満であり、
(b)抽出され得るフッ素が重量で3ppm以下
であることを特徴とする請求項19に記載のフッ素樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−231267(P2011−231267A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104776(P2010−104776)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000174851)三井・デュポンフロロケミカル株式会社 (59)
【Fターム(参考)】